説明

歩行面の滑り止め施工方法

【課題】床面のような歩行面が珪素/珪素化合物を主成分とする材質であるか他の無機材質であるかにかかわらず、施工作業中の安全性が向上しかつ環境汚染の危険が低減された、歩行面に滑り止めを施す方法を提供する。
【解決手段】本発明によれば、無機材質で形成された歩行面に、保水性シートを介して、該無機材質と反応して溶出作用をし得る薬剤の水性溶液を接触させることにより該歩行面を粗面化し、次いで該保水性シートを除去することを特徴とする歩行面の滑り止め施工方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は歩行面の滑り止め施工方法に関する。より詳細には、本発明は保水性シートを用いた歩行面の滑り止め施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭酸塩や珪素を主成分とするタイル、石材等の無機材質の歩行面(例えば床面)に水分や油分が付着すると非常に滑り易くなり、しばしば転倒事故が起こる。
床面の滑り止めに関する技術としては、滑り防止処理剤組成物及び滑り防止処理タイル(特許文献1)や床面の滑り止め施工方法(特許文献2)等が知られている。
【0003】
上記のような従来の施工方法では、浸蝕性の強酸等及び/又はフッ素のような環境負荷物質を含む表面処理剤を滑り止め処理すべき表面に直接塗布又は散布し、表面をデッキブラシやポリッシャー等でブラッシングする。また、施工後に表面に残留する薬剤溶液は水などで洗い流すのが一般的であった。
【0004】
このため、従来の施工方法は作業環境上で大きな危険を抱え、また環境に与える負荷も大きかった。
フッ化水素酸以外の酸を用いて処理を行う技術によれば、このような危険をある程度は低減できるものの、珪素を主成分とする歩行面に対しては効果を期待することは出来ない。
【特許文献1】特開平6−279748号公報
【特許文献2】特開2002−227392号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、床面のような歩行面が珪素/珪素化合物を主成分とする材質であるか他の無機材質であるかにかかわらず、施工作業中の安全性が向上しかつ環境汚染の危険が低減された、歩行面に滑り止めを施す方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、無機材質で形成された歩行面に、該無機材質と反応して溶出作用をし得る薬剤の水性溶液を保水性シートを介して接触させることにより該歩行面を粗面化し、次いで該保水性シートを除去することを特徴とする歩行面の滑り止め施工方法が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明においては、薬剤水性溶液を、処理すべき面である歩行面に保水性シートを介して接触させるため、より少量の薬剤及び/又はより短い時間で滑り止め処理を行うことができる。
薬剤水性溶液は保水性シートに保持されているため、歩行面の粗面化処理中に薬剤水性溶液が飛散する危険が低減されて施工作業時の安全性が向上する。
【0008】
また、粗面化処理後には薬剤水性溶液を保水性シートと共に除去できるので歩行面(処理面)上に残留する薬剤水性溶液の量が減少し、その結果、フッ素や酸等の環境負荷物質を含む薬剤の排水や周辺環境中への拡散/混入を抑制することができる。
更に、保水性シートを用いるので、液ダレ等が発生することがなく、傾斜面に対しても施工が容易になる。また、処理面が平面であるか斜面であるかを問わず、薬剤水性溶液を略均一に適用することができるので、平面及び傾斜面が混在する場合に、一体的に施工してもムラなく仕上げることが可能である。
【0009】
本発明においてはまた、ブラッシングを行う必要がないので、ブラッシングのバラツキによる処理面(歩行面)の粗面化のムラが生じず、その結果、施工区域内で、又は施工の度ごとに、滑り止め効果を略均質化することができる。
保水性シートの使用により、薬剤水性溶液の液性(例えば粘性)や処理面の濡れ性などに依存することなく、薬剤水性溶液を処理面に容易に略均一に適用できるので、薬剤水性溶液の選択の幅が広がる。
【0010】
保水性シートを枠体に取り付けて使用する場合には、保水性シートの取り扱いが容易になり、更に安全性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の滑り止め施工方法は、無機材質で形成された歩行面に、該無機材質と反応して溶出作用をし得る薬剤の水性溶液を保水性シートを介して接触させることにより該歩行面を粗面化し、次いで該保水性シートを除去することを特徴とする。
以下に本発明の滑り止め施工方法を詳細に説明する。
【0012】
本発明において、歩行面は、建造物の内外を問わず人が一般に歩行する面であり、例えば、建造物のエントランス、アプローチ、ロビー又は廊下の床面、階段の踏み板(踏み面)、スロープ、厨房・浴室/浴場の床面、浴槽の底面、プールサイド、大型商業施設や駅などのコンコース、建物周囲の公開空地、歩道などの人工的に設けられた面をいう。
【0013】
歩行面は、珪素/珪素化合物、炭酸塩、カルシウム塩のような無機材質で形成される。より具体的には、歩行面は、無機材質を主成分とするタイル(磁器タイル又は陶器タイル)、石材(例えば大理石、花崗岩)の表面である。
本発明においては、歩行面は水平面であってもよいし、傾斜面であってもよいし、両者が混在していてもよい。
本発明の方法は、表面が滑り易い(特に濡れ時)歩行面に適用にされ得る。
【0014】
本発明の滑り止め施工方法に使用できる薬剤は、滑り止め処理すべき歩行面を形成する無機材質と反応して溶出作用をし得、該歩行面を粗面化することができる任意の薬剤であり、該無機材質に依存して当業者が容易に決定できる。
【0015】
例えば、無機材質が珪素化合物(例えば二酸化珪素)である場合、フッ化水素酸又は溶液中でフッ化水素酸を生じる化合物を含有する薬剤を選択できる。溶液中でフッ化水素酸を生じる化合物としては、例えばフッ化水素アンモニウム(酸性フッ化アンモン)、フッ化水素ナトリウム、フッ化水素カリウムのようなフッ化水素塩(酸性フッ化アルカリ塩)、ホウフッ化水素酸、ケイフッ化水素酸、ホウフッ化ソーダ、ホウフッ化カリウム、フッ化カリウムが挙げられる。フッ化水素酸及び/又は溶液中でフッ化水素酸を生じる化合物は2種以上を組み合せて使用してもよい。溶液中でフッ化水素酸を生じる化合物は、例えば1〜40重量%の溶液として使用できる。
無機材質が珪素化合物である場合、薬剤は好ましくは酸性フッ化アンモンを含有する。
【0016】
例えば、無機材質が炭酸塩(例えば炭酸カルシウムや炭酸マグネシウム)である場合、酸を含有する薬剤を選択できる。酸としては、クエン酸、リンゴ酸のような有機酸、及び塩酸、硫酸、硝酸、リン酸のような無機酸のいずれであってもよい。これら酸は、1種を用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
無機材質が炭酸塩である場合、薬剤は好ましくはクエン酸、リンゴ酸、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸からなる群より選択される1種の酸又は2種以上の酸の混合物を含有する。
酸は、例えば0.1〜35重量%の溶液として使用できる。
【0017】
例えば、無機材質がカルシウム塩(例えば炭酸カルシウム)である場合、カルシウムキレート剤を含有する薬剤を選択し得る。カルシウムキレート剤としては、例えばEDTA-4Na、EDTA-2Na、ニトリロ三酢酸が挙げられる。
キレート剤は、例えば0.1〜20重量%の溶液として使用できる。
【0018】
薬剤は、水性溶液中で共存可能であれば、フッ化水素酸、フッ化水素酸を生じる化合物、酸、カルシウムキレート剤の2種以上を含有していてもよい。
薬剤の溶媒には水、有機溶剤、又はこれらの混合物を使用できる。有機溶剤としては、例えば、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコールのようなアルキルグリコール系溶剤が挙げられる。
薬剤の水性溶液には、界面活性剤が添加されていてもよい。界面活性剤としては、ノニオン系、アニオン系、カチオン系、両イオン性のいずれも使用できる。なかでも、ノニオン系界面活性剤は、生分解性に優れ、TOC(全有機炭素)値も低いので、環境への配慮から好ましい。界面活性剤は例えば0.1〜10重量%で添加される。
【0019】
薬剤又は薬剤の水性溶液として、市販の滑り止め処理剤を用いることができる。例えば、フッ化水素ナトリウムを含む処理剤としてリフレマックス3-F万能液剤(メンテックカンザイ)、酸性フッ化アルカリ塩、塩酸及び硫酸を含む処理剤としてトメリット滑り止め(メンテックカンザイ)が挙げられる。
【0020】
本発明の方法において、薬剤の水性溶液は、処理すべき歩行面(処理面)に保水性シートを介して接触させる。
薬剤水性溶液は、歩行面と接触すると、該歩行面を形成している無機材質と反応して該無機材質の一部を該歩行面から溶出させる。その結果、歩行面の表面は粗面化する。粗面化によって、摩擦係数が大きくなり滑りが防止される。
【0021】
粗面化に要する薬剤水性溶液と歩行面との接触時間は、歩行面の材質、使用する薬剤の種類・濃度などに依存して変わり得る。適切な接触時間は、例えば、処理予定の歩行面と同じ材質のモデル床材において、使用予定の薬剤水性溶液を用いて事前に試験を行うことによって容易に決定できる。
本発明の方法によれば、接触時間は、従来方法で必要とされる接触時間に比べて短時間であり得る。例えばブラッシングにより薬剤溶液を処理面に塗布する従来方法において5分間の接触時間で得られる粗面化(滑り防止効果)が、本発明の方法では1〜5分間で得られうる。
【0022】
歩行面への薬剤の水性溶液の保水性シートを介する接触は、該歩行面に、該薬剤の水性溶液を予め保持させた保水性シートを接触させることにより行なってもよいし、歩行面に保水性シートを接触させた後に該保水性シートに該薬剤の水性溶液を保持させることによって行なってもよい。
処理すべき歩行面は、事前に、油脂、スケールなどの汚れを除去するために洗浄を行なってもよい。洗浄は、水、洗剤、アルカリ性溶液、酸性溶液などを用いる通常の手段(例えばブラッシング)で行うことができる。
【0023】
本発明に使用される保水性シートは、水性溶液を可逆的に吸収して保持できる薬品耐性素材からなるシートである。保水性シートの保水機能は、素材自体が吸水性を有することによっても、非吸水性素材が構成する構造(例えば、網目構造や多孔質構造)中に水性溶液を保持することによっても、その両方によってもよい。
保水性シートの素材は、例えば、綿や絹のような天然繊維、アクリルやポリエチレンのような化学繊維、紙、パルプ、ポリアクリルアミドのような高分子ゲル、ポリアクリル酸ナトリウムのような高吸水性樹脂である。高分子ゲルは保水力が高いので好ましい。綿はコスト面から好ましい。
保水性シートは、天然繊維又は化学繊維からなる場合、織布又は不織布の形態であり得る。保水性シートの形状・大きさは特に限定されないが、保水性シートの厚さは例えば0.1〜50mmである。
【0024】
保水性シートは、滑り止め処理すべき歩行面と接触する側と反対側の面からは薬剤水性溶液が排水されないような構成であってもよい。このような構成は、例えば、保水性シートの片面が、防水加工されるか、又は防水層(例えば防水シート)と接着されるなどして二層以上の構造を有することにより実現できる。或いは、上記のような構成の保水性シートは、高分子ゲル(例えばポリアクリルアミド)又は高吸水性樹脂(例えばポリアクリル酸ナトリウム)を用いて容易に作製することができる。このような保水性シートを使用することで本発明の方法をより安全に実施することができる。
【0025】
保水性シートは、取り扱いの容易性及び/又は取り扱い時の安全性の確保ために、枠体に取り付けられていてもよい。
枠体は、保水性シートが処理面と接触するように該保水性シートを保持できる構造でありさえすればよく、形状や大きさは特に限定されないが、例えば50cm〜2m×50cm〜2mであり得る。枠体は、枠の内側に、補強のための筋交いや、保水性シートを処理面に適切に接触させるための補助材として格子状若しくは網目状の構造を有していてもよい。
枠体を構成する枠材は、その横断面が四角形、三角形、円形、L字などであり得る。
枠体(存在する場合には、及び補助材)の底面(使用時に処理すべき歩行面に対向する面)は、同一平面内に存在し得る。
枠体は、底面、上面、外側面又は内側面に、保水性シートを保持できる機構(例えば挟持機構)を備え得る。
【0026】
枠体に取っ手が付属していれば、本発明の方法をより安全に実施できるので好ましい。取っ手は、人の手に馴染む形状であれば任意の形状であることができ、そのような形状は当該分野において周知である。図1に、本発明の方法において使用できる枠体の一例を示す。
枠体は、使用する薬剤水性溶液に対して耐腐蝕性の材料、例えばポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、フッ素樹脂からなる。
【0027】
薬剤による表面の粗面化後、保水性シートを除去する。本発明においては、保水性シートの除去と同時に薬剤水性溶液も除去される。保水性シートの除去後に処理面(歩行面)に残留する薬剤水性溶液は、別の吸水性シート又はモップなどで吸収して除去するか、又は大量の水で洗い流すことができる。本発明の方法によれば、保水性シートの除去後に残留する薬剤水性溶液の量は従来方法に比して少量であるので、吸水性シートなどによる除去は容易であり、また大量の水などにより洗い流しても排水又は周囲環境への混入の程度も従来方法に比べて非常に低く抑えられる。
【実施例】
【0028】
以下、本発明の内容を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら制限されるものではない。
(比較例1)
歩行面のモデルとして11cm×11cmの大きさの珪素を主成分とする白色タイルを水平に配置した。
薬剤水性溶液として、6%の塩酸、8%の硫酸、12%の酸性フッ化アンモン、15%のアルキルグリコール系溶剤(プロピレングリコール)、1%のノニオン系界面活性剤を含有するものを5倍に希釈し使用した。上記薬剤水性溶液は、5mlをタイルに散布してブラシで擦り付けた。5mlの量は、同様な薬剤水性溶液を従来方法で用いる場合の標準的な単位面積あたりの使用量を考慮して決定した。5分間の接触時間の後、タイル上に残留する薬剤水性溶液を水で洗い流した後に乾燥させて比較例1とした。
【0029】
(比較例2)
同様のタイルを15°の傾斜をつけて配置した以外は比較例1と同様の処理を行い比較例2とした。
(比較例3)
未処理のものを比較例3とした。
【0030】
(実施例1)
比較例1と同様のタイルを水平に配置し、タイル上に11cm×11cmの綿100%の布を敷き、綿布に上記薬剤水性溶液を保持させたところ、タイル全面に薬剤水性溶液が接触するために必要な量は4mlであった。
1分間の接触時間の後に綿布を除去した。除去の際同時に、3.8ml(使用量の95%)の薬剤水性溶液が除去できた。
タイル上に僅かに残留する薬剤水性溶液を水で洗い流し乾燥させて実施例1とした。
【0031】
(実施例2)
接触時間を5分間とした以外は実施例1と同様の処理を行って実施例2とした。
(実施例3)
同様のタイルを15°の傾斜をつけて配置した以外は実施例2と同様の処理を行って実施例3とした。
【0032】
比較例1〜3及び実施例1〜3で得られたタイルにおいて、表面の深さ方向に関する粗さの状態を、株式会社小阪研究所製の微細形状測定器Surfcorder ET3000を用いて測定した(評価長さ40mm;送り速さ2mm/秒)。
また、タイル表面の滑り易さを、新東科学株式会社製の表面性測定器3K-34Bを用いて摩擦抵抗を測定することにより評価した。摩擦抵抗値は、滑走体として550mm×230mmのポリ塩化ビニル製ゴムを用い、荷重を500gとして、滑走速度を500mm/分に設定して測定した。歩行面は乾燥状態よりも濡れ状態で滑り易くなるので、測定は乾燥時と濡れ時の両方で行った。上記の測定条件で、摩擦抵抗値が0.3kg以上である場合を滑り難いと判定した。
【0033】
表面の深さ方向に関する粗さの測定データの一部を図2〜7に示す。
未処理の表面(比較例3)は、滑らかであることが確認できる(図4)。
比較例1による表面は起伏に富み、表面が粗面化されていることが理解できる(図2)。
比較例2による表面は概して滑らかであり、粗面化が不十分であることが理解できる(図3)。
実施例1〜3による表面は比較例1と同程度かそれ以上に起伏に富み、十分に粗面化されていることが理解できる(図5〜7)。
【0034】
表面の深さ方向に関する粗さ及び表面滑り易さの両方の結果を表1にまとめた。
【表1】

【0035】
比較例1と比較例3の結果から理解されるように、従来方法は、水平なタイル表面については、5分間の接触時間で良好に粗面化し、乾燥時の摩擦抵抗値を変化させないが濡れ時の摩擦抵抗値を上昇させたので、良好な滑り防止効果が得られたと評価できる。しかし、比較例2の結果から理解されるように、傾斜状態のタイル表面については、従来方法では粗面化できず、濡れ時の摩擦抵抗は無処理状態(比較例3)からほとんど変化させなかったので、滑り易いままであると評価される。
【0036】
一方、実施例1及び2の結果から、本発明の方法により、水平に配置されたタイル表面が、従来方法による場合(比較例1)と同程度かそれ以上に粗面化し、濡れ時の摩擦抵抗値も同程度かそれ以上に増大させることが分かる。使用した薬剤水性溶液の量が、比較例1では5mlであったのに対して実施例では4mlであったことを考慮すると、本発明の方法によれば、より少ない量の薬剤の使用で同程度かそれ以上の滑り止め効果が得られることが理解できる。
【0037】
また、実施例1では接触時間が1分間であったことを考慮すれば、本発明の方法は、従来方法に比べて短時間で同程度かそれ以上の滑り止め効果が得られることも理解される。
まとめると、本発明の方法は、従来の方法に比べて効率的な施工方法である。
【0038】
更に、実施例3の結果から、本発明の方法では、傾斜状態のタイル表面も水平状態の場合と同様に粗面化することができ、濡れ時の摩擦抵抗を増大させることが分かる。すなわち、本発明の方法によれば、従来方法とは対照的に、傾斜面においても水平面と同様に滑り止め効果が得られることが理解できる。
【0039】
滑り止め効果の評価に加え、施工作業時の安全性及び環境配慮の観点からも評価した総合評価の結果を表2に示す。
【表2】

【0040】
比較例1及び2では、ブラッシング時に薬剤水性溶液の飛散が観察されたので、作業の安全性に問題がある(「×」:悪い)と評価した。
一方、実施例では、薬剤水性溶液の飛散はほとんど観察されなかったことから、作業の安全性が向上している(「○」:良い)と評価した。
【0041】
また、比較例1及び2では、使用した5mlの薬剤水性溶液全てが水洗などにより廃水として排出されるので、環境汚染を引き起こす虞がある(「×」:悪い)と評価した。
一方、実施例では、使用した4mlの薬剤水性溶液のうち95%に相当する3.8mlを保水性シートと共に除去できたので環境にやさしい(「○」:良い)と評価した。
【0042】
以上の結果をまとめると、本発明の方法は、従来方法より効率的で、安全性が向上し、しかも環境により配慮した(環境にやさしい)施工方法である。
【0043】
上記の実施形態及び実施例は、本発明の理解を容易にするために例示として記載されたのであって、本発明は本明細書及び添付図面に記載された具体的な構成のみに限定されない。本明細書に記載した具体的構成、手段、及び方法が、本明細書の記載から理解される本発明の本質的部分を変更しない限りにおいて、同等物に変更可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の方法において使用できる、保水性シートを取り付けるための枠体の一例を示す図である。
【図2】比較例1で得られたタイルにおける表面の深さ方向に関する粗さの測定結果(一部)を示すグラフである。
【図3】比較例2で得られたタイルにおける表面の深さ方向に関する粗さの測定結果(一部)を示すグラフである。
【図4】比較例3で得られたタイルにおける表面の深さ方向に関する粗さの測定結果(一部)を示すグラフである。
【図5】実施例1で得られたタイルにおける表面の深さ方向に関する粗さの測定結果(一部)を示すグラフである。
【図6】実施例2で得られたタイルにおける表面の深さ方向に関する粗さの測定結果(一部)を示すグラフである。
【図7】実施例3で得られたタイルにおける表面の深さ方向に関する粗さの測定結果(一部)を示すグラフである。
【符号の説明】
【0045】
1・・・ポリ塩化ビニル製枠体
2・・・保水性シート
3・・・取っ手

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機材質で形成された歩行面に、該無機材質と反応して溶出作用をし得る薬剤の水性溶液を保水性シートを介して接触させることにより該歩行面を粗面化し、次いで該保水性シートを除去することを特徴とする歩行面の滑り止め施工方法。
【請求項2】
前記保水性シートを介する接触が、前記歩行面に、前記薬剤の水性溶液を予め保持させた前記保水性シートを接触させることによる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記保水性シートを介する接触が、前記歩行面に前記保水性シートを接触させた後に、該保水性シートに前記薬剤の水性溶液を保持させることによる請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記保水性シートの素材が綿、絹、化学繊維、紙、高分子ゲル、高吸水性樹脂からなる群より選択される請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記保水性シートが前記薬剤の水性溶液に対して耐腐蝕性の枠体に取り付けられている請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−248609(P2008−248609A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−92469(P2007−92469)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(390016540)内外化学製品株式会社 (8)
【Fターム(参考)】