説明

歪ゲージ

【課題】ゼーベック効果による熱起電力の発生を抑制することができる歪ゲージを提供する。
【解決手段】歪ゲージ1には、2つの接続端11A,11Bを有し第1の種類の金属で形成された歪ゲージ本体11が備えられている。2つの接続端11A,11Bそれぞれには第1の種類の金属と同一種類の金属で形成された2本の第1のリード線12A,12Bの一方の接続端が接続されてそれぞれ延在している。その2本の第1のリード線12A,12Bの2つの他方の端どうしを中継端子100上で接続する。この中継端子100には、2つの他方の端どうしでは12A1,12B1を伝熱させつつ2つの他方の端12A1,12B1を除く周囲からは熱的に隔離する機能を持たせてあるのでゼーベック効果による熱起電力の発生が抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歪を検出するための歪ゲージに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、歪を検出するための歪みゲージが知られている(特許文献1から特許文献3参照)。これらの特許文献に示すような歪ゲージは、母体金属を被測定物に貼付し被測定物が変化したときに共に変化する母体金属の伸びにより断面積が減るとともに長さが長くなった母体金属の抵抗値を歪みとして外部へ通知するものである。歪ゲージは、熱応力の測定にも用いられるものであるので母体金属としてはコンスタンタンなどのように電気抵抗の温度係数の小さいものが用いられる。
【0003】
ところで、歪ゲージの母体金属として用いられるコンスタンタンは、熱電対の一方の金属として用いられる金属材料であることが知られている。このため、歪ゲージを外部の測定器と接続するためにコンスタンタンをリード線として中継端子まで引き出し、さらに中継端子で別の金属材料からなるリード線を接続して測定器と歪ゲージとを接続したときには、ゼーベック効果により熱起電力が発生して測定器で測定された測定値に誤差が与えられてしまう。
【特許文献1】特許第3596565号公報
【特許文献2】特許第2992857号公報
【特許文献3】特開平6−34310号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みて、ゼーベック効果による熱起電力の発生を抑制することができる歪ゲージを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成する本発明の第1の歪ゲージは、2つの接続端を有し第1の種類の金属で形成された歪ゲージ本体と、
上記2つの接続端それぞれに一方の接続端が接続されて延在する、上記第1の種類の金属と同一種類の金属で形成された2本の第1のリード線と、
上記2本の第1のリード線の2つの他方の端どうしが近接配置されその2つの他方の端どうしでは伝熱させつつその2つの他方の端を除く周囲からは熱的に隔離する中継端子と、
上記2つの他方の端それぞれに接続された、上記第1の種類の金属とは異なる第2の種類の金属からなる2本の第2のリード線とを有することを特徴とする。
【0006】
上記本発明の第1の歪ゲージによれば、上記中継端子が有する、2つの他方の端を等温度に維持するための伝熱作用とその2つ他方の端を除く周囲からは熱的に隔離する断熱作用との双方によって上記第1のリード線の2つの他方の端どうしがほぼ等温度に維持される。
【0007】
このため、その他方の2つの端に第2の種類の金属からなる2本のリード線が接続されたとしてもゼーベック効果による熱起電力の発生が抑制される。
【0008】
ここで、上記第1の種類の金属がコンスタンタンであり、上記第2の種類の金属が銅であっても良く、また第1の種類の金属と上記第2の種類の金属は、他の異種の金属の組み合わせであっても良い。
【0009】
また上記中継端子は、別に設けられたものではなく、回路基板上に配置されたものであっても良い。
【0010】
上記目的を達成する本発明の第2の歪ゲージは、互いに近接配置された2つの接続端子を有し、第1の種類の金属で形成された歪ゲージ本体と、
上記2つの接続端を、その2つの接続端どうしでは伝熱させつつ2つの接続端を除く周囲からは熱的に隔離する中継端子と、
上記2つの接続端それぞれに接続された、上記第1の種類の金属とは異なる第2の種類の金属からなる2本の第2のリード線とを有することを特徴とする。
【0011】
上記本発明の第1の歪ゲージでは、第1のリード線を設けて第1のリード線と第2のリード線とを中継端子上で接続したが、上記本発明の第2の歪ゲージでは、本発明の第1の歪ゲージが備える第1のリード線を省略して歪ゲージ本体が備える第1の種類の金属を直接第2のリード線に接続する構成に変更している。この構成でも良い。
【発明の効果】
【0012】
以上、説明したようにゼーベック効果による熱起電力の発生を抑制することができる歪ゲージが実現する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0014】
図1は本発明の一実施形態である歪ゲージの構成を示す図である。
【0015】
図1(a)には、歪ゲージの構成が示されており、図1(b)には図1(a)に示す中継端子100の構成が示されている。
【0016】
図1に示す歪ゲージ1は、2つの接続端11A,11Bを有し第1の種類の金属11で形成された歪ゲージ本体と、2つの接続端11A,11Bそれぞれにそれぞれの一方の接続端が接続されて延在する、第1の種類の金属と同一種類の金属で形成された2本の第1のリード線12A,12Bと、2本の第1のリード線12A,12Bの2つの他方の端120A,120Bどうしが近接配置されその2つの他方の端どうし12A1,12B1では伝熱させつつ2つの他方の端12A1,12B1を除く周囲からは熱的に隔離する中継端子100と、2つの他方の端12A1,12B1それぞれに接続された、第1の種類の金属11とは異なる第2の種類の金属からなる2本の第2のリード線13A,13Bとを有する。
【0017】
ここでは第1の種類の金属がコンスタンタンであり、第2の種類の金属が銅である場合の例が示されている。なお、第1の種類の金属と第2の種類の金属との組み合わせは他の組み合わせであっても良い。
【0018】
ここで、ゼーベック効果による熱起電力の発生を抑制するための工夫が凝らされている中継端子100の構成を詳細に説明する。図1(b)には、図1(a)の中継端子100の構成が示されている。
【0019】
図1(b)に示す中継端子100には、土台となるサブストレート101上に断熱材102が積層されており、さらにその断熱材102の上に中継端子ベース103が積層されている。その中継端子ベースに中継接続用の2つの接点120A,120Bが形成されている。これらの接点120A,120B上で第1のリード線が有する2つの接続端12A1,12B1と第2のリード線の端13A1,13B1が接続される。さらに、それらの接点120A,120B上が熱伝導性の良い材料104によってモールドされている。
【0020】
中継端子100が図1(b)に示す構成であると、2本の第1のリード線の2つの他方の端12A1,12B1どうしを近接配置し2つの他方の端12A1,12B1どうしを伝熱させつつ2つの他方の端12A1,12B1を除く周囲からは熱的に隔離することができるので、2つの他方の端12A1、12B1を常にほぼ等温に維持することが可能となる。この異種の金属が接合する2つの接合点(2つの他方の端12A1,12B1)の温度がほぼ等温度に維持されると、異種金属からなる第2のリード線の接続端13A,13Bが接点120A,120Bに接続されたとしてもゼーベック効果による熱起電力の発生が抑制される。
【0021】
すなわち、熱起電力の影響を抑制して正確に測定を行なうことができる歪ゲージ1が実現する。
【0022】
図2は、図1に示す中継端子100の別の構成を示す図である。
【0023】
図2に示す様に図1に示す中継端子100の断熱効果と伝熱効果との双方を高めるために、2つの接点120A,120Bを囲うように熱伝導性の良い材料でモールドしている部分の上から断熱材14を被せている。図2の構成にしても良い。
【0024】
図3は、図1に示す中継端子100の別の構成を示す図である。
【0025】
図3に示す様に図1に示す中継端子が有する2つの120A,120B間の伝熱効果を高めるために中継端子自体103Aを熱伝導性の良い材料130Aで構成しても良い。
【0026】
ここで上記第1実施形態においては中継端子100を別途設けてその中継端子100と測定器とを接続する場合の例を説明したが、歪ゲージ1を測定器に接続するときに回路基板を通して接続される場合もあるのでその場合には回路基板上に中継端子を設けても良い。
【0027】
図4は、回路基板上に中継端子を設けた場合の例を説明する図である。
【0028】
図4では、図1の中継端子100を回路基板P1上に設けて、図1(b)に示す断熱材の代わりに接点P1A,P1Bの周りに空気孔P1Cを設けることにより断熱効果を持たせている。このときには第1のリード線12の2つの他方の端12A1.12B1を、回路基板上の2つの接点P1A,P2Bそれぞれに接続する構成にしておいて、2つの接点の間では伝熱させつつ2つの他方の端12A1,12B1を除く周囲からは熱的に隔離している。このような構成でも良い。
【0029】
図5は、図4の変形例を説明する図である。
【0030】
図5の様に一方の接点P2Aを囲むように他方の接点P2B´を設けると、接点P2A,P2B´間の伝熱効果がより一層高まって双方の接点の間の温度がより確実に等温度に保たれる。
【0031】
図6は、別の実施形態を示す図である。
【0032】
第1実施形態では、第1のリード線12A,12Bを設けてリード線を長くして配線のし易さを提供したが、配線にそれほど長さが必要ない場合にはこの第1のリード線12A,12Bを省略することもできる。
【0033】
図6に示す歪ゲージ10は、互いに近接配置された2つの接続端11A,11Bを有し、第1の種類の金属(コンスタンタン)で形成された歪ゲージ本体1Aと、2つの接続端11A,11Bを、2つの接続端11A,11Bどうしでは伝熱させつつ2つの接続端11A,11Bを除く周囲からは熱的に隔離する中継端子100と、2つの接続端11A,11Bそれぞれに接続された、第1の種類の金属とは異なる第2の種類の金属からなる2本の第2のリード線13A,13Bとを有する。図1(a)、図1(b)に示す構成の代わりに図6(a)、図6(b)に示す構成にしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態である歪ゲージの構成を示す図である。
【図2】図1に示す中継端子100の別の構成を示す図である。
【図3】図1に示す中継端子100の別の構成を示す図である。
【図4】回路基板上に中継端子を設けた場合の例を説明する図である。
【図5】図4の変形例を説明する図である。
【図6】第2実施形態を示す図である。
【符号の説明】
【0035】
1 2 歪ゲージ
11 第1の種類の金属(コンスタンタン)
11A 11B 接続端
12A 12B 第1のリード線(コンスタンタン)
12A1 12B1 第1のリード線が有する2つの接続端
120A 120B 接点
13A 13B 第2のリード線(銅)
13A1 13B1 第2のリード線(銅)が有する2つの接続端
14 断熱材
100 中継端子
101 サブストレート
102 断熱材
103 中継端子
103A 熱伝導性の良い材料で構成された中継端子
104 熱伝導性の良い材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの接続端を有し第1の種類の金属で形成された歪ゲージ本体と、
前記2つの接続端それぞれにそれぞれの一方の接続端が接続されて延在する、前記第1の種類の金属と同一種類の金属で形成された2本の第1のリード線と、
前記2本の第1のリード線の2つの他方の端どうしが近接配置され該2つの他方の端どうしでは伝熱させつつ該2つの他方の端を除く周囲からは熱的に隔離する中継端子と、
前記2つの他方の端それぞれに接続された、前記第1の種類の金属とは異なる第2の種類の金属からなる2本の第2のリード線とを有することを特徴とする歪ゲージ。
【請求項2】
前記第1の種類の金属がコンスタンタンであり、前記第2の種類の金属が銅であることをを特徴とする請求項1記載の歪ゲージ。
【請求項3】
前記中継端子が、回路基板上に配置されたものであることを特徴とする請求項1記載の歪ゲージ。
【請求項4】
互いに近接配置された2つの接続端子を有し、第1の種類の金属で形成された歪ゲージ本体と、
前記2つの接続端を、該2つの接続端どうしでは伝熱させつつ該2つの接続端を除く周囲からは熱的に隔離する中継端子と、
前記2つの接続端それぞれに接続された、前記第1の種類の金属とは異なる第2の種類の金属からなる2本の第2のリード線とを有することを特徴とする歪ゲージ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−191093(P2008−191093A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−28146(P2007−28146)
【出願日】平成19年2月7日(2007.2.7)
【出願人】(000145806)株式会社小野測器 (230)
【Fターム(参考)】