説明

歯のストリップが取り付けられているコンベヤベルト

無端コンベヤベルト(10)は、平ベルト部(12)を備え、平ベルトの側縁(26)の近くで平ベルトの一方の面に歯(28)のストリップ(20)が取り付けられる。別の実施形態では、ストリップの側縁は平ベルトの側縁に取り付けられる。いずれの実施形態でも、ストリップは、最初に平ベルトに取り付けられてから、各ストリップに複数の歯を形成するように機械加工される。ストリップは平ベルトとは異なる材料から成り得る。コンベヤベルトは、小径のプーリ(54)及びノーズバー(58)を有するコンベヤと共に用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンベヤの無端(endless:継目なし)ベルトに関し、より詳細には、歯を形成するように機械加工される別個に取り付けられているストリップを有する無端ベルトに関する。
【0002】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2006年3月14日に出願された米国仮出願第60/743,474号の利益を請求し、当該出願の全体が本明細書に援用される。
【背景技術】
【0003】
コンベヤは、無端ベルトの上側スパン(span:支間)上で荷物を運搬することによって2つの場所間で荷物を移送する。ベルトは通常、ベルトにトルクを伝達する駆動プーリ(drive pulley:駆動滑車)と1つ又は複数のアイドラプーリ(idler pulleys:遊び車)との間に設置される。食品産業等の或る環境では、清潔さが極めて重要である。したがって、衛生的な状態で維持することができる熱可塑性材料製の滑らかな連続表面を有するコンベヤベルトを用いることが一般的である。薄い可撓性ベルトの使用も、食品産業では一般的である。薄いベルトは軽量であるため、運搬される製品をコンベヤベルト上にある間に秤量するスケールコンベヤで用いられる。スケールコンベヤ用のベルトは、ベルトがスケールに最小限の荷重しか加えないように軽量でなければならず、且つベルトが製品の重量を少しも支えることがないように最小の張力下になければならい。コンベヤはさらに、2つのコンベヤ間で荷物を移送するために様々な角度で合わさることができなければならないが、移送点でコンベヤ間の隙間を最小にするように互いに密接して配置されなければならない。半径が小さいプーリ及びノーズバーがコンベヤ間の隙間をより小さくすることができるため、薄い可撓性コンベヤは、こうしたプーリ及びノーズバーが用いられるような用途で用いられる。
【0004】
1つのタイプの薄い可撓性ベルトは、ピンベルトであり、このベルトは、一方の面に連続表面を、他方の面に、ドットマトリックスプリンタが紙を前進させるのによく似た方法で駆動プーリのピンと係合するようになっている孔を備える。このベルトは、駆動プーリと係合するために歯ではなく孔を有するため、ピンベルトを比較的薄く可撓性にすることができる。しかしながら、従来のピンベルトは、運搬される荷物の重量によって伸びると、ピンと孔とが互いに一致しなくなりピン及び孔を通じてトルクをベルトに適切に伝達することができなくなるため、理想的ではない。さらに、ピンベルトは、ピンを有する駆動プーリと共に用いなければならず、歯付き駆動プーリと共に用いるように変更することができない。
【0005】
ベルトの伸びに関連する問題を軽減する歯付き熱可塑性ベルトの一例が、その全体が参照により本明細書に援用される国際公開第2006/078890号に開示されている。開示されている熱可塑性ベルトは、一方の面に滑らかな連続表面を、他方の面にベルトの幅に延びて駆動スプロケットの溝又はシーブ(sheaves:綱車)と係合するようになっている歯を有する、低張力の直結駆動歯付きベルトである。ベルトの伸びを考慮に入れて、歯は、ベルトピッチよりも大きなスプロケットピッチでスプロケットと係合するようになっている。歯は、ベルト材料片に歯形を機械加工することによってベルトと一体形成される。歯は、ベルト材料片の機械加工によって形成されるため、ベルトの残りの部分と同じ材料でできていなければならない。機械加工によって失われる材料もベルトの費用を増大させる。さらに、このベルトは、比較的厚く重いため、スケールコンベヤ及び小径のプーリ及びノーズバーを有するコンベヤで用いることができない。
【0006】
ベルトの伸びに関連する問題を軽減する歯付き熱可塑性ベルトの別の例は、その全体が参照により本明細書に援用される米国特許第5,911,307号に開示されている。開示されているコンベヤベルトは、プーリと係合するようにベルトの一方の面から延びているタイミングベルトを有する平ベルトを含む。タイミングベルトは、予備成形されたタイミング歯を有し、平ベルトの両側縁から等しく離間するように平ベルトに貼り合わせられる。このベルトは、ベルトを伸ばすことを当然意味する予張力をかける必要がない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のコンベヤベルトは、ピンベルトに関連する伸び問題、並びに‘493号特許出願からのベルトに関する材料及び応用の制限は有しないが、ベルトがノーズバーの周りを自由に移動するのをタイミングベルトが妨げるため、ノーズバーがある場合には用いることができない。さらに、タイミング歯がタイミングベルトに予備成形されることで、タイミングベルトが通常の取り扱いに耐えるのに十分なほど頑丈である必要がある。換言すれば、タイミングベルトは歯間の空間で厚くしなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、対向する側縁を有する薄い平ベルト部と、互いに離間して平ベルト部の側縁に取付けられている歯の2つのストリップとを備える、無端コンベヤベルトを備える直結駆動コンベヤを提供することによって、上述の問題を解決する。ベルトはその長さを伸張可能であり、歯はストリップを平ベルト部に取付けた後で形成される。
【0009】
一態様では、ストリップは側縁を有し、各ストリップの側縁は平ベルト部の側縁と面一である。別の態様では、歯は機械加工によって形成される。ストリップは、平ベルト部とは異なる材料から形成されてもよい。
【0010】
結果として、歯付きコンベヤベルトは、薄く軽量且つ可撓性であり、ベルトの使用の適用範囲を広げることができる。本発明の用途では、無端コンベヤベルトは、ループの一端にある少なくとも1つの駆動プーリと、ループの別端にあるノーズバーとに巻き付けられ得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明によるコンベヤベルトは、従来技術のピンベルトによって通常行われる用途で用いられるのに十分なほど薄く軽量且つ可撓性であると共に、直結駆動コンベヤシステムで用いることができるベルトを提供する。
【0012】
ここで図面を参照すると、図1は、本発明による無端コンベヤベルト10の第1の実施形態を示す。コンベヤベルトは、外側荷重表面14と、内側プーリ表面16と、2つの側縁18とを有する平ベルト12を備える。外側表面14は、非常に滑らかで不連続部(discontinuities:切れ目)がない。平ベルト12は、Pebax(登録商標)樹脂、ポリエステル、又はポリウレタン等の熱可塑性材料でできていることが好ましい。平ベルト12は、側縁18間に画定される横幅W、及び外側表面14と内側表面16との間に画定される厚さTを有する。例示的な平ベルト12は、約8インチ〜約42インチ(20cm〜110cm)の範囲の幅W、及び約0.0392インチ(1mm)の厚さTを有する。
【0013】
さらに図2を参照すると、コンベヤベルト10は、平ベルト12の内側表面16に取り付けられている一対の横方向に離間したストリップ20をさらに備える。ストリップ20の一方に仮想輪郭線で示されているように、ストリップ20は、ストリップ20の機械加工前に平ベルト12に取り付けられる。ストリップ20は、下側表面22及び上側表面24と2つの側縁26とを有する。ストリップ20は、側縁26間に画定される横幅W、及び上側表面22と下側表面24との間に画定される厚さTを有する。厚さTは、ストリップ20に歯を機械加工するときに除去しなければならない材料の量を最小限に抑えるために、コンベヤベルト10の歯の所望の歯厚と等しいか又はそれよりもわずかに厚いことが好ましい。Tが概してTよりも厚いことで、ストリップ20を非常に薄いベルトに取り付けることができる。例示的なストリップは、約1.5インチ(38mm)の幅W、及び約0.16インチ(4mm)の厚さTを有する。
【0014】
ストリップ20は、各ストリップ20の一方の側縁26が平ベルト12の側縁18とほぼ面一であるように取り付けられることが好ましいが、側縁26が平ベルト12の側縁18を越えて延びるか又は側縁18がストリップ20の側縁26を越えて延びるようにストリップ20が平ベルト12に取り付けられることは、本発明の範囲内にある。
【0015】
本発明の別の態様によれば、歯付きコンベヤベルト10を製造する方法が提供される。当該方法は、歯材料の少なくとも2つのストリップ20を平ベルト12に取り付けること、及びストリップ20を機械加工して歯28を形成することを含む。ストリップ20は、任意の適切な取り付け法を用いて平ベルト12に取り付けることができる。1つの適切な方法は、糊等の接着剤を用いてストリップ20を平ベルト12に取り付けることである。ストリップ20の下側表面22及び/又は平ベルト12の内側表面16の一部又は全体に糊を塗布し、双方を互いに接触させてストリップ20及び平ベルト12をしっかりと結合させる。他の適切な貼り合わせ法を用いることもできる。別の適切な取り付け法は、ストリップ20を平ベルト12に溶接してそれらの2つの材料を接合することである。透明又は半透明の材料、例えば透明ポリウレタンがストリップ20に用いられる場合、レーザ溶接等の溶接技法を用いることができる。
【0016】
平ベルト12への取り付け後、図1のストリップ20の一方に示されているように、ストリップ20を機械加工して複数の歯28を形成することができる。ストリップ20は、歯間から材料を除去するように従来の研削盤又はフライス盤を用いて機械加工することができる。歯28は、任意の適切な形状及び寸法を有するように機械加工することができる。図示のように、歯28はほぼ台形である。他の例示的な形状は、矩形、正方形、三角形、及び円筒形である。歯28は、形状に関わらず横幅W及び高さHを有する。機械加工によって除去される必要がある材料が最少量であるように、横幅Wは、ストリップの幅Wと概ね等しいか又はそれよりもわずかに短いことが好ましく、高さHは、ストリップの厚さTと概ね等しいか又はそれよりもわずかに低いことが好ましい。約38mmの幅W及び約4mmの厚さTを有するストリップ20の場合、歯の例示的な幅W及び高さHは、それぞれ約38mm及び約4mmである。隣接する歯28間の空間すなわち隙間30は、ストリップ30上に等距離の歯28を設けるように等しくなっている。機械加工時には、ストリップ材料の帯32が隙間30に残るように、材料が隙間30から除去される。ストリップ20は、平ベルト12に取り付けられた後で機械加工されるため、帯32を非常に薄くすることができる。換言すれば、帯32は歯の高さHよりもはるかに低い厚さTを有する。上記の例で与えられた歯の寸法の場合、例示的な帯の厚さTは0.25mmである。ストリップ20は別個に取り付けられるため、平ベルト12及び歯28は異なる材料でできていてもよい。歯28は、平ベルト12よりも硬質の材料、例えばポリウレタンでできていてもよい。
【0017】
無端コンベヤベルト10を用いる2つの異なるコンベヤを、図3及び図4に示す。これらのコンベヤは、コンベヤベルト10が設置及び駆動されることができる方法の考えられる例として挙げられており、本発明を図示の配置に限定するものと解釈すべきではない。コンベヤベルト10は、本明細書で具体的に意図されていない任意の他のコンベヤと共に用いてもよい。図3を参照すると、第1のコンベヤ34は、2つのプーリ組36、38間の通常の設置状態でのコンベヤベルト10を備え、プーリ組36、38のそれぞれは、各自の軸40、42に回転するように取り付けられる。プーリ組の少なくとも一方、例えば組36は、一対の実質的に同一の離間した駆動プーリ44を備える。他方のプーリ組38は、一対の実質的に同一の離間したアイドラプーリ46を備える。各プーリ44、46は、その円周の周りで離間している複数の半径方向に延びるシーブ48を有する。シーブ48は、コンベヤベルト10の歯28と係合する。この構成では、コンベヤベルト10は、コンベヤベルト10が矢印50で示す方向に進むときに平ベルト12の上外側表面14上で荷物を運搬する。
【0018】
図4を参照すると、第2のコンベヤ52は、軸56に回転するように取り付けられている1つのプーリ組54とノーズバー58との間に設置されるコンベヤベルト10を備える。プーリ組54は、一対の実質的に同一の離間した駆動プーリ60を備える。各プーリ60は、その円周の周りで離間している複数の半径方向に延びるシーブ62を有する。シーブ62は、コンベヤベルト10の歯28と係合する。ノーズバー58は、軸64に回転するように取り付けられ、歯28によって妨げられずに自由に回転することができるようにストリップ20間に位置決めされる。ノーズバー58の半径が小さいことで、2つのコンベヤ間の隙間を小さくすることができるため、小さい半径を有するノーズバー58は、コンベヤ52が別のコンベヤに荷物を移送するのに特に適するようになる。この構成では、コンベヤベルト10は、コンベヤベルト10が矢印66で示す方向に進むときに平ベルト12の上外側表面14上で荷物を運搬する。
【0019】
図5及び図6を参照すると、本発明による無端コンベヤベルト10’の第2の実施形態が示されており、この場合、同様の要素はプライム(’)符号付きの同様の番号で示されている。この実施形態では、ストリップ20’の内側縁26’が、上述のような任意の適切な取り付け法を用いて平ベルト12’の側縁18’に取り付けられる。したがって、隙間30’は、平ベルトの厚さT’と実質的に等しい厚さT’を有する帯32’を有するように機械加工されることが好ましい。有効ベルト幅Wは、ベルト幅W’及びストリップ幅W’の和として定義され、コンベヤベルト10’がコンベヤと共に用いられるときに荷物を運搬するのに利用可能な空間量に相当する。コンベヤベルト10’は、第1の実施形態に関して上述した全ての利点を有し、より小さな幅W’を有する平ベルト12’を用いることをさらに可能にするため、ベルト材料の節約になる。
【0020】
上述のコンベヤベルトは、薄く軽量且つ可撓性の歯付きコンベヤベルトを提供する。このコンベヤベルトは、小径のプーリ、ノーズバー、及びスケールコンベヤ等の、こうした特性が不可欠である用途で有用である。さらに、このコンベヤベルトを、国際公開第2006/078890号に開示されているような低張力の直結駆動歯付きベルトコンベヤで用いて、当該明細書で示されているベルトよりも薄く軽量且つ可撓性であるコンベヤベルトを同様のコンベヤに提供することができる。したがって、本発明のこの態様は、その長さを伸張可能であり、歯の2つの別個のストリップがベルトの縁に取付けられている、薄い無端ベルトとなる。退出点まで歯をプーリの駆動シーブと係合させておくために、国際公開第2006/078890号に記載されているように位置制限器を設けてもよい。それでも、ベルトは、2つの歯ストリップの中間にある、他端の小径のノーズバーに巻き付くのに十分なほど薄い。上述の方法を用いてベルトを製造することによって、コンベヤ動作に十分な完全性を有するコンベヤベルトを提供しながらも、材料を節約することができる。
【0021】
上記説明は、直結駆動の熱可塑性ベルトに関して行われているが、本発明は、他のタイプのコンベヤベルトにも同じく適用可能である。概説すると、本発明は、その或る特定の実施形態に関連して具体的に記載されているが、これは説明のためであり限定のためではないことを理解されたく、添付の特許請求の範囲は、従来技術で可能な限り広義に解釈すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明による無端ベルトの第1の実施形態の斜視図である。
【図2】図1のベルトの側面図である。
【図3】2つのプーリ組間に設置されている図1の無端ベルトの斜視図である。
【図4】1つのプーリ組とノーズバーとの間に設置されている無端ベルトの斜視図である。
【図5】本発明による無端ベルトの第2の実施形態の斜視図である。
【図6】図5のベルトの側面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端コンベヤベルトであって、
対向する側縁(18)を有する薄い平ベルト部(12)と、互いに離間して該平ベルト部の前記側縁に取付けられている歯(28)の2つのストリップ(20)とを備え、その長さを伸張可能であり、前記ストリップを前記平ベルト部に取付けられた後で前記歯が形成される、無端コンベヤベルト。
【請求項2】
前記ストリップ(20)は側縁(26)を有し、該ストリップそれぞれの該側縁が前記平ベルト部(12)の前記側縁(18)と面一である、請求項1に記載の無端コンベヤベルト。
【請求項3】
前記歯は機械加工によって形成される、請求項1又は2に記載の無端コンベヤベルト。
【請求項4】
前記ストリップ(20)は、前記平ベルト部(12)とは異なる材料から形成される、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の無端コンベヤベルト。
【請求項5】
ループの一端にある少なくとも1つの駆動プーリ(54)と、前記ループの別端にあるノーズバー(58)とに巻き付けられる、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の無端コンベヤベルト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−530210(P2009−530210A)
【公表日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−500593(P2009−500593)
【出願日】平成19年3月14日(2007.3.14)
【国際出願番号】PCT/US2007/063952
【国際公開番号】WO2007/106845
【国際公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(507244057)サーモドライヴ エルエルシー (7)
【Fターム(参考)】