説明

歯ブラシ

ヘッドに組み込まれたポリウレタンゲル材料の塊にブリッスル端部が包埋されている、歯ブラシヘッドを提供する。歯ブラシヘッドのブリッスルに用いられる典型的なナイロン材料はポリウレタンゲルに結合することが見出され、それにより、有利なことにブリッスルのためのホルダーを用いる必要がない。当該歯ブラシヘッドを製造するための成形方法もまた提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯ブラシ、特に柔軟に植設されたブリッスルを有する歯ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
ブリッスル(毛)に加えられた圧力に弾性的で柔軟な変形によって植設部が応答することにより、過剰なブラッシング圧を吸収しかつブリッスルを歯の形に合わせるように、歯ブラシのブリッスルを軟質マウント(支え)に植設することは、一般に知られている。
【0003】
例えば、ヘッドに固定されたブリッスルの端部(「近接」端部)が、弾性エラストマー材料の膜に接して柔軟に植設されている歯ブラシは公知である。US-A-4,633,542には、タフト(毛束)の近接端部が軟質膜に接していることにより、個々のタフトの端部が可動的に植設された歯ブラシが開示されている。US-A-5,373,602には、ブリッスルの端部がゴム状軟質の先端延長部でヘッドに固定された歯ブラシが開示されている。WO-A-96/02165には、タフトが熱可塑性エラストマーのマウントに固定された歯ブラシが開示されている。US-A-5,454,133には、個々のタフトの近接端部が軟質パッドまたは非常に軟らかなゲルもしくは液体を保持するカプセルに接して植設された歯ブラシが開示されている。DE-A-41 22 524 Aには、ブリッスルの近接端部がプレートに固定されており、該プレートの裏側が弾性パッドに接触している歯ブラシが開示されている。WO-A-98/43514には、タフト中のブリッスルがホルダー内に固定され、かつ柔軟な弾性材料中に包埋されている歯ブラシヘッドが開示されている。WO-A-00/60980には、タフト中のブリッスルの端部が、柔軟な弾性材料中に包埋されたウェブにより連結されている歯ブラシヘッドが開示されている。WO-A-98/35584には、ブリッスル端部がエラストマー材料に設けられた堅い穴の中に取り付けられている歯ブラシヘッドが開示されている。
【0004】
そのような歯ブラシにおいては、ブリッスルを固定することに関して問題がある。その問題とは、一般的にブリッスルに用いられるポリアミド材料(例えばTynexTMのようなナイロン)が、普通のエラストマー材料(例えば公知のSEBS熱可塑性エラストマー)には簡単に結合しないことである。US-A-4,633,542では、ブリッスルのタフトは、ヘッドに近接する端部が融着して丸い塊を形成し、該塊が単純に膜と接触している。WO-A-93/24034では、この場合もブリッスルの近接端部が丸い塊へと形成され、該塊が膜中の穴に保持されている。US-A-5,454,133では、ブリッスルのタフトは、その近接端部がゴム製基材に固定され、該基材がパッドまたはカプセルの外表面に付着されている。
【0005】
また、歯ブラシヘッド中の歯ブラシブリッスルの柔軟な取り付けを、例えば歯ブラシ製造のための改良された材料や方法を確認することにより、改善し最適化するという問題も常に存在している。
【0006】
近年、ポリウレタンゲルとして知られる種類のポリマー材料が、主にBayer AGにより開発されている。そのような材料およびその製造方法(典型的にはイソシアネート成分とポリオール成分との反応による)は、例えばUS-A-4,456,642 (Bayer AG)、US-A-5,362,834 (Bayer AG)、およびUS-A-2002/0123562 (Bayer Corp.)に開示されている。多くの場合、それらのゲルは粘着性の表面を有しており、それらのゲルを軟質(通常は弾性の)フィルム(例えばポリウレタンやその他のポリマーを含んでいてもよい)で覆った形態で提供することも公知である。例えばUS-A-2002/0123562 (Bayer Corp.)からは、そのようなゲルから作られる物品を製造するための金型の中でそのようなコーティングをその場で形成させること、すなわち、いわゆる金型内コーティング法(「IMC」)が公知である。一部のポリウレタンゲルは射出成形が可能であるが、イソシアネート成分とポリオール成分を金型内に導入してそれらを反応させることにより、金型内でゲルを現場形成させることも一般的である。そのようなポリウレタンゲルは、例えばTechnogel社グループによりTechnogelTMの商品名で市販されている。現在までに、そのようなポリウレタンゲルは靴の中敷、クッション材、車のダッシュボードの軟質部品、自転車のサドルおよび他のパッド付き物品として用いられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、ブリッスルがヘッドに柔軟に植設された歯ブラシを提供することであり、かかる歯ブラシは上記の従来技術の歯ブラシが直面している問題を少なくとも部分的に解決するものである。
【0008】
本発明の課題はまた、上記のポリウレタンゲルの新規用途を提供することでもある。
【0009】
本発明の課題はまた、歯ブラシヘッドを製造するための新規方法を提供することでもある。
【0010】
本発明の他の課題および利点は、以下の記載により明らかとなるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、ブリッスルが歯ブラシヘッドからブリッスル方向に突き出ている歯ブラシヘッドであって、個々のブリッスルはヘッドに近接する端部とヘッドから離れている端部とを有し、
該ヘッドにはゲル材料の塊が組み込まれていること、およびヘッドに近接する端部に近いブリッスルの少なくとも一部分が該ゲル材料の塊に包埋されていること、を特徴とする歯ブラシヘッドが提供される。
【0012】
ゲル材料は、ゲルの粘弾性特性によって、エラストマーと区別することができる。すなわち、ゲルは加圧下または張力下で弾性的に変形するが、圧力または張力から解放されても、エラストマーのようにはすぐにもとの形へと跳ね返ることがなく、より緩慢にもとの形に戻る。
【0013】
ゲル材料は、好ましくはポリウレタンゲル材料である。ゲル材料の例は、例えば上記のUS-A-4,456,642、US-A-5,362,834およびUS-A-2002/0123562に開示されている。例えば、そのようなポリウレタンゲルは、15〜62重量%の共有結合で架橋した高分子量ポリウレタンマトリックスと、該マトリックスに強固に結合した38〜85重量%の液体分散剤とに基づく高分子量ポリウレタンを含み、ここで該液体分散剤は、約1000〜12000の数平均分子量および約20〜112のOH価を有する1種以上のポリヒドロキシル化合物を含有し、また分子量800未満のヒドロキシル化合物を実質的に含まないものである。そのようなゲルは、歯ブラシヘッドにかかる重力の作用下ではその形状を保持する、変形可能に弾性の塊を形成する。すなわち、それらは寸法安定性を有するが、加圧下では変形する。ゲルの特性は出発成分およびそれらの割合を変えることによって変化させることができるが、軟質で、いくぶん粘着性で、ゼラチン状の粘稠度を有するゲルが好ましい。TechnogelTMの商品名で本出願時に入手可能なゲル材料が好ましいゲル材料であり、例えばTechnogel Konigsee (Gewerbegiet Alle Garnerei, 37339 Berlingerode (DE))から販売されている、例えばゲル材料BTG 120が好ましい。このタイプの好適なゲル材料は、Shore A硬度が10未満、好ましくは2未満でありうる。ゲルの硬度はIRHDスケールで表現することもでき、好適なIRHD硬度はL 0〜100、例えばL 25〜65である。上記のタイプのポリウレタンゲルは、様々な硬度をもつものを製造することができる。
【0014】
好適には、ゲル材料の塊は弾性フィルムコーティング(すなわち、ゲル塊が力の影響下に変形するときには弾性的に変形し、かつゲル塊が張力もしくは圧締圧力下に膨張もしくは収縮するときには伸展または収縮するコーティング)に少なくとも部分的に覆われている(例えばその中に包まれている)。上記のポリウレタンゲルの場合、好適なフィルムコーティングは当該技術分野で公知であり、例えばポリウレタンフィルム、熱可塑性ポリエステルフィルム、熱可塑性エラストマー(例えば熱可塑性ポリエステルエラストマーまたはスチレンとブタジエンに基づくブロックコポリマー)、エチレン-酢酸ビニルポリマー、天然もしくは合成ゴム、または可塑化ポリ塩化ビニルに基づくフィルムである。このようなコーティングを上記のゲル塊に施すための種々の方法が当該技術分野で公知であるが、好ましい方法は公知のIMC法である。周囲の環境に露出された表面を有する少なくともゲル塊の部分が、そのようなコーティングにより覆われていることが好ましい。そのようなコーティングは表面の感触を改善することができる(例えば、滑らかなコーティングで粘着性のゲルを覆うことができる)。それらのフィルムの厚さは、ポリウレタンゲル物品の技術分野で通常用いられるものでよい。
【0015】
ゲル材料および/またはフィルムは、美観上の理由のために、またはゲル塊の存在に消費者の注意を引くために、例えば着色剤を含有してもよい。
【0016】
ブリッスルは通常用いられるブリッスル材料、例えばポリアミド材料(例えば上記のTynexTM(DuPont)のようなナイロン)またはポリエステルで作られていてよい。例えば直径約0.10〜0.75mmのナイロンモノフィラメント(例えば、DuPontからDuPont Tynexの商品名で市販されている、ナイロン612から作られたもの)を用いることができる。そのような材料の複数本のブリッスルフィラメントは、通常はタフトに束ねられているが、そのようなフィラメントが歯ブラシヘッド中に個々のブリッスルのパターンとして設置されていてもよい。
【0017】
上記のポリウレタンゲル材料(例えばTechnogelTM)に固有の利点は、当該分野の技術水準で用いられるホルダー(ウェブ等)を用いなくとも、上記のようなブリッスル材料がゲル材料と容易に結合することが見出されている点である(ただし、そのようなホルダーまたはウェブを本発明において用いてもよい)。例えば、複数本のTynexTMブリッスルからなる慣用のタフト(タフト径約1mm)がTechnogelTMポリウレタンゲルのパッドに約2〜3mmの深さまで包埋されている場合、それを引き抜くには最大19Nの力が必要である。
【0018】
ポリアミドブリッスルとポリウレタンゲル材料との密着は、ポリウレタンとナイロンの両者にアミド基が存在するためであるかもしれないし、また、このことはゲル以外のポリウレタン、例えば弾性ポリウレタンにも当てはまることかもしれない。
【0019】
従って、本発明の別の態様は、ブリッスルが歯ブラシヘッドからブリッスル方向に突き出ている歯ブラシヘッドであって、個々のブリッスルはヘッドに近接する端部とヘッドから離れている端部とを有し、
該ヘッドにはポリウレタン材料の塊が組み込まれていること、およびヘッドに近接する端部に近いブリッスルの少なくとも一部分が該ポリウレタン材料の塊に包埋されていることを特徴とする、歯ブラシヘッドを提供する。
【0020】
ポリウレタン材料の塊は、例えば本明細書中に開示されているようなポリウレタンゲル材料、またはポリウレタンエラストマー材料でありうる。
【0021】
従って、本発明の歯ブラシにおいては、ゲル材料またはポリウレタン材料の塊に包埋されているブリッスルもしくはそのタフトの部分の全体にわたって、ブリッスルもしくはタフトがゲルまたはポリウレタン材料と直接的に接触していてもよい。すなわち、ブリッスルを保持するために当該分野の技術水準で現在までに用いられているウェブまたはホルダーによる手段は必要ない。
【0022】
ブリッスルまたはタフトの近接端部と、それに隣接した、ヘッドから離れている端部に向かう、ある長さのブリッスルをゲル塊中に包埋することができる。
【0023】
ゲルまたはポリウレタン材料塊の厚みは、最大で、通常の歯ブラシヘッドの厚み(すなわちブリッスル方向でのその寸法)、例えば3〜5mmでありうる。歯ブラシヘッドは通常、歯ブラシハンドルに連結されているか、またはヘッドが交換可能な歯ブラシの場合には連結できるようになっており、ヘッド−ハンドル長軸方向が規定される。ブリッスル方向に対して垂直な方向(例えば長軸方向)において、また長軸方向に対して直角の幅方向において、ゲル塊は通常の歯ブラシヘッドの全長または全幅まで(典型的には、最大3cm長または最大1.5cm幅)の寸法を有しうる。実際には、ゲル塊の寸法は、歯ブラシブリッスルの所望の程度の軟質植設を提供するように、ゲル塊と合わせて選択することができる。
【0024】
本発明の歯ブラシヘッドは、ゲルまたはポリウレタン材料の塊を1つ含んでいてもよいし、またはゲルまたはポリウレタン材料の塊を複数(例えば2つ以上)含んでいてもよい。そのような塊が2つ以上存在する場合には、それらは同じゲルまたはポリウレタン材料であってもよいし、異なる材料(例えば異なる組成、コーティング、硬度、色等を有するもの)であってもよい。複数の塊が存在する場合には、それらは同じ寸法であってもよいし、または異なる寸法(例えば厚さが異なる等)であってもよい。2つ以上の塊は、歯ブラシヘッドに様々な様式で配置することができ、例えば長軸方向に連続的に、幅方向に連続的に、またはある塊がもう1つの塊を取り囲むように配置されていてもよい。
【0025】
ゲルまたはポリウレタン材料の塊は、ブリッスル方向に見下ろした平面図で、多角形、円形、卵形、細長い形であってもよいし、または歯ブラシヘッドもしくはその一部の形にほぼ一致するものでもよい。例えば該材料は、ブリッスルが突き出ているヘッドの全面を実質的に占めていてもよい。材料塊は、ハンドルに最も近いヘッドの端部もしくはハンドルから最も遠いヘッドの端部に近接して配置してもよいし、または長軸方向の中間位置に配置してもよい。典型的には、該塊は、長軸方向および幅方向の寸法が厚みよりも大きいパッドの形状である。ブリッスルは該塊の表面から突き出ており、かつその表面(「ブリッスル表面」)は平面状、凸状、凹状、もしくは起伏のある形(例えば複数の丸い半球または円錐を含む表面を有する)か、または波形であってもよい。
【0026】
典型的には、本発明の歯ブラシヘッドは、歯ブラシ製造で一般的に用いられるような硬質プラスチック材料(例えばポリプロピレン(「PP」)、ポリアミド(「PA」)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(「ABS」)等)で作られた、該塊を支持するための外枠を含む。そのような外枠は例えば、塊の外周にあって塊を支持するヘッドの周囲を規定する、リング形状のプラスチック材料からなる。あるいはまた、外枠は塊が接触する裏面を含んでいてもよい。あるいはまた、外枠は、それぞれが1つ以上の材料塊を支持する1つ以上のキャビティーを有していてもよい。あるいはまた、外枠は、長軸方向に長い骨格を含んでいてもよい。外枠および塊は、塊と外枠を堅固な物理的噛み合わせで保持するために、それぞれの噛み合わせ構造を備えていてもよいし、かつ/または外枠と塊が、例えば外枠と塊との間の溶接、接着または粘着により、結合していてもよい。上記のゲルおよびポリウレタン材料、特にポリウレタンゲル(例えばTechnogelTMポリウレタンゲル材料)は、歯ブラシ製造に一般的に用いられるプラスチック材料、特にPAおよびABSとよく結合することがわかっている。
【0027】
典型的には、ブリッスルフィラメントは、通常のブリッスル数を有する、広く一般に用いられる形状および寸法のタフトとして配置される。例えば、タフトは、1タフト当たり5〜100本のブリッスル、好ましくは10〜75本、例えば30〜60本のブリッスルを含有しうる。そのようなタフトは例えば、円形または非円形(例えば長軸方向もしくは幅方向に長い横断面)をしており、その長さを横切る典型的な寸法として0.75〜5mmを有する。円形の断面を有するタフトは典型的には直径約0.9〜1.5mmであり、ヘッドに近いその端部が、0.5〜5mm(典型的には1〜3mm)の深さまでゲル材料塊中に包埋されていてもよく、例えばそれにより近接端部をブリッスル表面から塊の厚みの一部に配置するようにする。そのようなタフトにおいては、ゲル塊への包埋に先立って、個々のブリッスルの近接端部を熱により溶融し、一緒に融着させてブロブ(小さな固まり)を形成させ、その後冷却して固化させる。歯ブラシのブリッスルタフトの端部を融着させる方法は当該技術分野で公知である。あるいはまた、ブリッスルはまとまったタフトとしてではなく、ばらばらに包埋されてもよい。
【0028】
ブリッスルの近接端部がゲルまたはポリウレタン材料の塊中に配置される深さは、ブリッスルの植設の結果生じる柔軟性を決定する要因に含まれる(他の要因としては、例えばブリッスル材料、寸法等が含まれる)。また別々のタフトもしくは個々のブリッスルの近接端部を塊中にそれぞれ異なる深さで配置することにより、植設柔軟性の異なるブリッスルもしくはタフトを提供することができる。ブリッスルは歯ブラシの長軸方向に対して実質的に垂直のブリッスル方向に突き出ているが、垂直に対してある角度で偏向していてもよい。
【0029】
上記のポリウレタンゲル材料(例えばTechnogelTM)の別の固有の利点は、ゲル内へのブリッスルの軟質植設を大きく改善する軟度のゲルを入手できることにある。例えば、歯磨き中にブリッスルにかかる圧力の影響下で該ゲル材料は容易に変形し、それにより例えば過剰なブラッシング圧を吸収し、かつ/またはブリッスルの端部の表面を歯および/または歯肉の形に適合させることができる。
【0030】
歯ブラシハンドルのような歯ブラシの他の部分は、広く一般に用いられる構造であってよい。例えば、EP-A-0 336 641に開示されるように、ハンドルに1ヶ所以上の「S」字型屈曲部を組み込んでもよい。加えて、もしくは別に、例えばWO-A-92/17092またはWO-A-97/24949に開示されるように、歯ブラシはその構造中の他の部位(例えばヘッドとハンドルのすぐ隣接した部分との間、すなわちネック)に柔軟性の連結部を組み込んでもよく、または、例えばWO-A-92/17093またはWO-A-97/07707に開示されるように、ヘッドが柔軟に連結された2つ以上の部分を含んでいてもよく、あるいは、例えばWO-A-98/37788に開示されるように、柔軟性の連結部がヘッドとネックの間にあり、もう1つの連結部がヘッドを柔軟に連結された部分へと分割していてもよい。
【0031】
本発明のさらなる態様は、歯ブラシヘッドの製造方法であって、該歯ブラシヘッドはそこからブリッスル方向に突き出ているブリッスルを有し、個々のブリッスルはヘッドに近接する端部とヘッドから離れている端部とを有し、該ヘッドにゲルまたはポリウレタン材料の塊を組み込み、そしてヘッドに近接する端部に近いブリッスルの少なくとも一部分を該ゲル材料またはポリウレタン材料の塊に包埋する、上記製造方法を提供する。
【0032】
ヘッド、ゲルまたはポリウレタン塊、ブリッスル等の好ましい特徴は上記で述べた通りである。
【0033】
ポリウレタンエラストマー材料の場合、ブリッスルが包埋されているポリウレタン材料の塊を形成するための方法は、上記で述べた当該分野の技術水準から公知である。
【0034】
この方法の好ましい形態は、以下の工程を含む:
(1)ゲル材料の塊を形成するための金型キャビティーを有する金型を用意すること、ただし、該金型は該キャビティーから金型の外部に通じている少なくとも1つの開口部を有し、該開口部は、ブリッスルの一端が該キャビティー内に突き出るように、少なくとも1本の歯ブラシブリッスルを該開口部から挿入するためのものであること、
(2)コーティング形成材料を前記キャビティーの内表面に付着させること、
(3)少なくとも1本のブリッスルを前記開口部から挿入して、該ブリッスルの一端をキャビティー内に延在させること、
(4)ゲル材料をキャビティー内に導入し、その結果として該キャビティー内に延在するブリッスルの少なくとも一部分がゲル材料中に包埋されるようにし、かつコーティング形成材料がゲル材料塊の少なくとも一部分のまわりにコーティングを形成するようにすること。
【0035】
金型は広く一般に用いられるものであってよく、例えばスチールのような通常用いられる金属で作られており、分割線に沿って2以上の部品に分かれ、各部品は部分キャビティー(それらが合わさって金型キャビティーを形成しうる)を構成し、ゲル材料導入のための少なくとも1つの入口を有し、そのように形成された塊を金型から押し出すための通常用いられる突出手段を有する、といった金型である。金型のそのような特徴の多くは、歯ブラシ製造の分野で広く一般的に用いられている。
【0036】
コーティング形成材料は、例えばゲル塊のまわりに弾性ポリウレタンコーティングを形成するための、ポリウレタンゲル技術の分野で用いられる通常のコーティング形成材料でよい(例えばUS-A-2002/0123562に開示されているIMC法を参照のこと)。コーティング形成材料は例えば液体として提供され、そしてキャビティーの内表面に噴霧されるかまたは他の方法で付着され、それは好ましくは部分金型が閉じられる前に行われるが、部分金型を閉じた後で金型キャビティーの内表面に材料を噴霧するようにしてもよい。キャビティーの内表面上にコーティング形成材料を付着させた後、例えば穏やかに加熱することにより、該材料からコーティングを形成させるか、または例えばゲル材料の導入の後で、コーティング形成材料を硬化または固化させることにより、該材料からコーティングを形成させてもよい。
【0037】
そしてここで、少なくとも1つのブリッスルのタフトを開口部から挿入し、それによりブリッスルの一端がキャビティー内に延在するようにする。この挿入操作は、いわゆる「アンカーレス」(anchorless)植毛歯ブラシヘッドの分野では通常行われており、そこでは、ヘッドの硬質プラスチック材料が金型に注入されてヘッドを形成するとき、ブリッスルまたはタフトの端部が該プラスチック材料中に包埋されるもので、以前に使用された小さな金属「アンカー」により保持されるものではない。また、慣用の挿入装置(例えばZahoransky Formgebau GmbH (DE)から供給されるもの)を用いてもよい。コーティング形成材料の付着を1本以上のブリッスルの挿入の前に行うのが好ましく、そうしなければコーティング形成材料がブリッスル上に付着して、ブリッスルへのゲル材料の結合もしくは接着を妨げるようになる。複数本のブリッスルを慣用方法で一緒に束ねてタフトを形成させ、開口部から金型内にタフトを挿入する前、好ましくは挿入した後に、タフトの近接端部を従来の方法(例えばEP-A-0 142 885に開示される)で熱によって溶融し、それにより端部同士を融着させてブロブを形成させ、その後冷却して固化させてもよい。また、通常の挿入装置およびタフトと開口部の相対寸法の好適な選択により、タフトと開口部との間の液体密封シールを可能にすることができる。例えばブリッスルを束ねてタフトを形成させ、金型が開いているときに複数の部分からなる金型の1つの部分に開口部からタフトの一端を挿入し、それにより該一端が金型の内表面から突き出るようにし、上記のように端部を融着させて冷却し、その後金型を閉じてもよい。好ましくは、タフトの近接端部を、開口部から、金型キャビティー内に未融着ブリッスルがいくらか存在するような距離まで挿入する。すなわち、近接端部の短い部分のみを融着させて、ゲルをキャビティー内に導入したとき未融着ブリッスルの間にゲルが浸透して、ゲル塊へのタフトの固着が促進されるようにする。
【0038】
金型を閉じたとき、ゲル材料を金型キャビティー内に導入する。ゲル材料を導入するために、慣用の方法を用いることができる。一部のゲル材料(例えば熱可塑性ポリウレタン(「TPU」))は、従来の射出成形法により(すなわち熱い流動状態で)金型に加圧下で注入し、冷却して最終的なゲル状態にすることができる。
【0039】
あるいはまた、ゲル材料は、その最終的なゲル状態に硬化させるために化学反応を行う必要がある流体前駆物質として金型内に導入してもよい。例えば、そのような前駆物質はキャビティー内で反応してゲル材料を形成する試薬の混合物を含み、例えば反応してポリウレタンゲルを形成するイソシアネート成分とポリオール成分(例えばUS-A-5,362,834に開示されるもの)を含む。そのような試薬は、予め混合した状態で金型キャビティー内に導入してもよいし、またはキャビティー内に別々に導入して、その中で現場混合してもよい。従来のこのタイプの試薬を用いると、成形サイクル時間は約10〜20秒でよく、その後の貯蔵の間にゲル材料が徐々に固化する。ポリウレタンゲルは、金型内で周囲温度および圧力においてこのように形成されうるが、上昇した温度では、一般に反応プロセスが加速される。金型キャビティー内に導入される前駆物質は、ゲル形成反応を誘導する触媒を含んでいてもよく、また前駆物質中の触媒がコーティング形成材料を弾性フィルムへと変換するように機能してもよい。そうでなければ、公知の硬化プロセスを用いて、コーティング形成材料を弾性コーティングへと変換してもよい。ゲルの粘着性表面を覆うことにより、コーティング材料はゲル塊が金型キャビティーの内表面に付着するのを防止することができ、すなわち、ある程度は離型剤としてさらに機能することができる。
【0040】
ゲルまたはその前駆物質は、タフト中の個々のブリッスルの間にゲル材料が浸透するような圧力下および流動状態で、金型キャビティー内に導入しなければならない。このようにして、タフトをゲル塊中に堅固に固着させることができる。
【0041】
その後、金型を開放し(例えば部分金型をその分割線で分離し)、通常の突出装置を用いて、タフトが包埋されたゲル塊を金型から取り出すことができる。
【0042】
上記のプロセスは、種々の様式で行うことができる。ある様式では、タフトが包埋されているゲル塊を、歯ブラシヘッドの硬質プラスチック部品(例えば上記の外枠)とは別個の部品として製造し、その後、このように製造されたタフト包埋ゲル塊をヘッドの中に固定してもよい。そのような固定は、例えばゲル塊と外枠の噛み合わせ部品によるような機械的固定によって、または適切な位置にゲル塊をしっかり保持するための好適な保持手段を有するヘッドを用いて、行うことができる。例えば、ヘッドは、ゲル塊を少なくとも部分的に包み込み、かつ/またはしっかりつかむように連結する連結部品を含んでいてもよい。例えば、ゲル塊、特にコーティングは、例えば接着剤または溶接により、ヘッドに接着させてもよい。
【0043】
他の様式では、歯ブラシヘッドの少なくとも一部分がそれ自体金型キャビティー内に収容される。これは、開口部からのブリッスルの挿入と同時に、または挿入の前もしくは後に行うことができ、それによりヘッド(例えば外枠)の表面はキャビティーの内部に露出されるようになり、また、ブリッスルが挿入された状態で金型が閉じられたときに、ブリッスルの端部はヘッドに非常に近接するようになる。その後、ゲルもしくはその前駆物質を金型内に導入してヘッドの所定の位置でゲル塊を現場形成させ、そこに固定させる。コーティング形成材料がヘッドの硬質プラスチックへのゲル材料の密着を妨げる可能性がある場合には、ヘッドの少なくとも一部分をキャビティー内に収容する前に金型キャビティーの内表面上にコーティング形成材料を付着させ、それによりコーティング形成材料をヘッドに付着させないようにするのが好ましい。上記のポリウレタンゲル材料は、歯ブラシ製造で一般的に用いられる硬質プラスチック材料の種類(例えばPA、ABSおよびPP)によく付着することが見出されている。それらがTPUとして流動状態で金型キャビティーに注入される場合でも、または上記のように前駆物質から硬質プラスチック材料と接触した状態で現場形成される場合でも、よく付着する。これとは別に、もしくはこれに加えて、ヘッドは1以上の噛み合わせ手段を有していてもよく、その結果、ゲルが(例えばTPU注入により、または前駆物質として)流動状態で金型内に導入され、その後その最終状態へと硬化するときに、ヘッドとゲル塊が、例えば噛み合わせ手段のまわりを流れる流体により、機械的にしっかりと連結される。
【0044】
代替方法は当業者に明らかであり、例えばブリッスルが包埋されたゲル材料の塊をまず形成し、次いで公知の方法を用いて、例えばコーティング材料の溶液または前駆物質を流動状態で加えて、これをコーティングへと形成させてもよい。
【0045】
本発明の歯ブラシのヘッドおよびハンドルの原材料となる好適なプラスチック材料は、歯ブラシ製造に用いられる公知のプラスチック材料などのプラスチック材料を含む。例えば、公知のPP、PAおよびABS材料を、場合によってはエラストマー材料(いわゆるツーコンポーネント(two-component)歯ブラシの構成成分として一般に用いられる)と組み合わせて用いてもよい。そのようなプラスチック材料およびエラストマー材料から本発明の歯ブラシを製造するために公知の射出成形法を用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
ここで、添付の図面を参照しながら、例を用いて本発明を説明することにする。
【0047】
図1および2を参照すると、そこには本発明の歯ブラシのヘッド10が示されている。ヘッド10は細長い形状をしており、一方の長軸端部11Aにおいてグリップハンドル12(ヘッド10に近接した部分のみ示されている)に一体的に接続されており、また反対側の先端部11Bを有している。ヘッド10およびハンドル12は、長軸方向A--Aに沿って配置されている。ヘッド10およびハンドル12はプラスチック材料、典型的にはPA、ABSまたはPPにより一体的に作られる。
【0048】
図2の平面図により明確に示されるように、ヘッド10は、歯ブラシヘッドの分野で通常用いられる全体形状のリング形外枠13の形をしている。図1に示されるように、この外枠13は開放した上側および下側面を有し、図1に破線で示されるように、閉鎖された裏面14を有してもよい。リング形外枠の内部は、中央部キャビティー15を画定する。図1に示されるように、外枠13内にはキャビティーが1つ存在する。外枠は、例えば一体型プラスチック材料仕切り部16によって、橋架けされて、2つの分離したキャビティー17、18を形成してもよい(図2Bを参照のこと)。外枠13はその内周のまわりに噛み合わせフランジ19をもつように形成される。
【0049】
外枠13内にはゲル材料の塊20が固定され、該塊の中にブリッスル30が包埋される。ブリッスル30は、矢印で示されたブリッスル方向に塊20から突き出ている。ブリッスル30は、ゲル材料塊に包埋された、ヘッドに近接する端部30Aと、ヘッドから離れている端部30Bとを有する。塊20は一般的には、外枠13の内部形状に一致し、かつキャビティー15を占める平らなパッドの形をしている。図1に示されるように、塊は平坦な上側(すなわちブリッスル方向に面する)表面を有するが、この上側表面は凸状、凹状、起伏のある形または他のどのような表面形状であってもよい。反対側の下側表面は、裏面14が存在する場合にはそれに接していてもよく、または下側表面と裏面壁との間に隙間があってもよい。ゲル塊20は、噛み合わせフランジ19との噛み合わせによって所定の位置に保持されるが、以下に記載する方法で製造されるように、外枠13の材料にしっかりと結合されてもよい。
【0050】
あるいはまた、ゲル塊を他の方法によって所定の位置に固定することも可能であり、例えば外枠を上側枠部分および下側枠部分として製造し、それらの間にゲル塊をはさむようにしてこれらを固定する。
【0051】
図2Aは、図1のヘッドの平面図を示す。図1に示されるように1つの塊20が存在するが、図2に示されるように2つ以上の塊を存在させてもよい。図2Bは、一体型仕切り部16により分離された2つの塊21、22を示す。図2Cは、互いに接しており、長軸方向に連続して配置された3つの塊23、24、25を示す。図2Dは、2つの塊26、27を示し、一方の塊26が他方の塊27に取り囲まれている。個々の塊21〜27は同じであってもよいし、相対的な軟度もしくは他の特性(例えば色)の点で異なっていてもよい。例えば、塊23および25は塊24よりも相対的に軟らかくてよいし、その逆でもよい。例えば、塊23、24、25は順に軟らかくなっていってもよいし、あるいは塊26が塊27よりも軟らかくてもよく、その逆でもよい。塊26と27、および23と24と25が互いに接して、一緒に結合されていてもよい。図示されるブリッスルタフト30のパターンは単なる代表にすぎず、簡単明瞭にするために図2Cおよび2Dではブリッスルを省いてある。図2Bでは、ブリッスルタフト30は長軸方向または幅方向に長い断面を有するものとして示されている。
【0052】
ポリウレタンゲル塊に包埋されたブリッスルを有する、硬質プラスチック材料製の外枠または骨格を含む好適なヘッドの他の多数の構成が、当業者には明らかであろう。例えば外枠が歯ブラシヘッドの裏面を形成するプレートを含み、該プレートの反対面にゲル塊が付着されていてもよい。
【0053】
図3を参照すると、複数本のブリッスルからなるタフト30の近接端部30Aと、それにすぐ隣接するゲル塊20の部分が示されている。近接端部30Aでは、タフト30中の個々のブリッスルが、通常の方法(例えば放射熱、高熱ガスまたは高熱面との接触)で熱を加えることによって、長さ30Bにわたって融着され、その後冷却されてブロブへと固化されている。この近接端部30Aはゲル材料の塊20に包埋されている。近接端部30Aでは、ゲル材料に包埋されているブリッスル部分全体がゲル材料と直接接触している。タフト30の短い部分30B(ヘッドから遠い端部の方に面しているタフト30の近接端部に隣接している)のみが融着されており、それによりゲル材料20がタフト30の個々のブリッスルの間に浸透している(すなわち、融着されていない個々のブリッスルの長さ30Cが、部分30Bより上に存在し、つまり部分30Bとゲル塊20の上側表面20Aとの間に残っている)。ゲル塊20は商品名TechnogelTMとして市販されているタイプのゲル、すなわち軟らかなポリウレタンゲルであり、ポリウレタンの薄い弾性コーティング28(その厚さは図3では非常に誇張してある)により覆われている。該材料はTechnogel Konigsee GmbHから入手可能なTechnogelTM、例えば材料BTG 120であってもよい。
【0054】
示されているように、塊20に植設されているブリッスルタフト30は、円錐(その頂点は植設点にある)のいずれの軸のまわりにも、その植設部の周囲を弾性的に回転することができ、かつ歯磨きの際に受ける圧力下で弾性的に上下に移動することが可能である、という利点を有する。これらの動きは、ブリッスルを歯と歯肉の表面(例えば歯間空隙)に適応させるのに役立ち、また過剰なブラッシング圧を和らげるのに役立ちうる。塊20では、タフト30の全ては、その近接端部30Aが塊20中に同じ深さまで植設されていてもよいし、あるいはまた、ブリッスル、タフトまたはタフトの群がそれぞれ異なる深さにまで植設されていて、それらに異なる弾性的回転および異なる上下柔軟性を与えるようにしてもよい。一般的には、植設が浅いほど、ブリッスルまたはタフトを回転させるのに要する力は少なくてすむ。例えば図2A〜2Dに示されるような、2つ以上の塊20を有するヘッドにおいて、そこに包埋されたそれぞれのタフト30は、その近接端部30Aがゲル塊20中に異なる深さで植設され得る。
【0055】
図4を参照すると、本発明の歯ブラシヘッドを製造するための方法が模式的に示されている。
【0056】
図4Aでは、金型40(概略的)が断面で示されている。金型40は2つの部分金型41、42を含み、これらは通常は分割されて、これらの間に2つの部分キャビティー43、44を画定する(金型が閉じられたときには金型キャビティー43、44を形成する)。部分金型41には、部分キャビティー43から金型の外部につながる複数の開口部45が設けられており、個々のタフトの端部がキャビティー内に突き出るように歯ブラシブリッスルの複数のタフト(図1〜3では30)のそれぞれを該開口部から挿入するのに適している。開口部を有するこのタイプの金型、および開口部からブリッスルのタフトを挿入するための装置は、歯ブラシ製造の分野で公知である。部分金型42の部分キャビティー44は、図1および2に示される歯ブラシヘッド10の外枠13を受け入れるように形作られている。部分金型42はキャビティー43、44に流動性の材料を導入するための入口46を有する。
【0057】
コーティング形成材料(示していない)は、例えば弾性ポリウレタンフィルム形成材料のような液体コーティング形成材料(IMC法に適することが知られているタイプの材料であってよい)の噴霧または刷毛塗りにより、キャビティー43、44の内表面に付着させる。その後、典型的には公知の方法で穏やかに熱することにより、このコーティング形成材料からコーティングを形成させる。
【0058】
図4Bに示されるように、複数のブリッスルタフト30を開口部45から挿入して、タフト30の近接端部30Aがキャビティー43の内表面から突き出て延在するようにする。近接端部30Aは、(図4Eに示されるように)その後金型が閉じられたときに端部30Aが部分キャビティー44の相対する内表面から離されるような距離まで、部分キャビティー43の内表面から延びている。
【0059】
図4Cに示されるように、ここでタフト30の端部30Aを、熱を加えることにより融着させ、その後冷却して、端部30Aにおいて固化した材料のブロブ30Bを形成させる。
【0060】
図4Dに示されるように、上記の操作と平行して、外枠13をキャビティー44内に収容する。
【0061】
図4Eに示されるように、金型40をここで閉じ、ポリオール成分とイソシアネート成分の流動混合物を入口46からキャビティー内に導入することにより、ポリウレタンゲル材料をキャビティー43、44内に導入する。ただし、かかる導入は、該混合物がタフト30の個々のブリッスルの間に浸透し、その後硬化してポリウレタンゲルを形成するような条件下で行う。あるいはまた、熱可塑性ポリウレタンゲル材料を従来の射出成形法において熱い流動状態で金型内に加圧下に注入してもよい。この場合も、熱い流動材料がタフト30の個々のブリッスルの間に浸透し、その後固化してポリウレタンゲルを形成するような条件下で行う。このようにして、キャビティー内に延びている端部30Aはゲル材料中に包埋されるようになる。ポリオール成分とイソシアネート成分からポリウレタンゲルを現場形成させる条件下でも、または固化する流動体として注入する条件下でも、ゲル塊20は、噛み合わせフランジ19と噛み合って、外枠13にしっかりと固着され、さらにタフトのブリッスル30がゲル材料20中に堅固に固定されるようになる。
【0062】
その後、金型40を開き、すなわち部分金型41、42をその分割線で分離し、そして、慣用の突出装置(示していない)を用いて、タフト30が包埋されたゲル塊20を有する形成された歯ブラシヘッド47を部分金型42から取り出すことができる。
【0063】
閉鎖された裏面14を有する、図1に示されたタイプの歯ブラシヘッドを製造するのに、同様の方法を用いることができる。しかしながら、この場合、ポリウレタンゲルを入口46から導入することになっているならば、ゲル材料が入口46から金型キャビティー43、44へと流入しうるように、閉鎖された裏面14を貫通するオリフィス(示していない)を設ける必要がある。あるいは、入口46を部分金型41または42の別の場所に配置してもよい。入口46のための様々な他の位置は、当業者には明らかであろう。
【0064】
同様の方法により、ゲル塊のパッド20を外枠13とは分離してそれ自体を製造し、その後外枠13内に導入し、そこに固定させうることが、当業者には理解されるであろう。
【実施例】
【0065】
材料TechnogelTMは、ポリウレタンコーティングで覆われたポリウレタンゲルであり、Technogel Konigsee社(Gewerbegiet Alle Garnerei, 37339 Berlingerode (DE))から、例えばゲル材料BTG 120として、約5mm厚のポリウレタンフィルムコーティングシートの形で入手することができる。これらのシートは、IMC法を用いて、ポリウレタンゲル前駆物質試薬を金型内に導入し、それらを反応させてゲルを形成させることにより製造される。通常用いられるTynexTM歯ブラシブリッスルフィラメントは、白色と青色の2種類のフィラメントを用いて、通常のブリッスル密度で直径約1.0〜1.2mmの円形断面のタフトに束ねた。また、このようなフィラメントを、長径:短径寸法が6mm:4mmの卵形断面のタフトに束ねた。これらタフトのそれぞれの一端を、高熱表面に触れさせることにより溶融し、冷却し、再固化させて、約0.5mm長の融着したブリッスル材料のブロブを形成させた。融着させた端部を金型内に保持し、上記の標準条件下にゲルを形成させて、融着端部に隣接するタフトの約4.5mmがゲル塊に包埋されるようにした。これらのタフトは、ゲル塊に堅固に固定されていることが明らかとなり、それらを引き抜くには少なくとも19Nの力を要した。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の歯ブラシヘッドの長軸断面図を示す。
【図2】図1のものに基づく種々の歯ブラシヘッドの平面図を示す。
【図3】図1のゲル塊の拡大断面図を示す。
【図4A−C】図1および図2の歯ブラシヘッドの製造プロセスを模式的に示す。
【図4D−F】図4A−Cに示した歯ブラシヘッドの製造プロセスの続き。
【符号の説明】
【0067】
10 歯ブラシのヘッド
11A ハンドル側の端部
11B 先端側の端部
12 グリップハンドル
13 リング形外枠
14 閉鎖された裏面(任意)
15 中央部キャビティー
16 仕切り
17,18 キャビティー
19 噛み合わせフランジ
20 ゲル材料の塊
21,22 2つのゲル材料塊
23,24,25 3つのゲル材料塊
26,27 2つのゲル材料塊
28 ポリウレタンの薄い弾性コーティング
30 包埋されたブリッスル
30A ブリッスルの近接端部
30B 融着されたブリッスル
30C ゲルが浸透した未融着ブリッスル
40 一般的な金型
41,42 2つの部分金型
43,44 2つの部分キャビティー
45 タフト挿入のための複数の開口部
46 入口
47 形成された歯ブラシヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブリッスルが歯ブラシヘッドからブリッスル方向に突き出ている歯ブラシヘッドであって、個々のブリッスルはヘッドに近接する端部とヘッドから離れている端部とを有し、該ヘッドにはゲル材料の塊が組み込まれていること、およびヘッドに近接する端部に近いブリッスルの少なくとも一部分が該ゲル材料の塊に包埋されていることを特徴とする、上記歯ブラシヘッド。
【請求項2】
ゲル材料がポリウレタンゲル材料であることを特徴とする、請求項1に記載の歯ブラシヘッド。
【請求項3】
ゲル材料のShore A硬度が10未満であることを特徴とする、請求項2に記載の歯ブラシヘッド。
【請求項4】
ゲル材料のShore A硬度が2未満であることを特徴とする、請求項3に記載の歯ブラシヘッド。
【請求項5】
ゲル材料のIRHD硬度がL 25〜65であることを特徴とする、請求項2に記載の歯ブラシヘッド。
【請求項6】
ゲル材料の塊が、力の作用下でゲル塊が変形するように弾性的に変形可能な弾性フィルムコーティングで少なくとも部分的に覆われていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の歯ブラシヘッド。
【請求項7】
ゲル材料がポリウレタンゲルであり、かつフィルムコーティングがポリウレタンフィルムであることを特徴とする、請求項6に記載の歯ブラシヘッド。
【請求項8】
ブリッスルが歯ブラシヘッドからブリッスル方向に突き出ている歯ブラシヘッドであって、個々のブリッスルはヘッドに近接する端部とヘッドから離れている端部とを有し、該ヘッドにはポリウレタン材料の塊が組み込まれていること、およびヘッドに近接する端部に近いブリッスルの少なくとも一部分が該ポリウレタン材料の塊に包埋されていることを特徴とする、上記歯ブラシヘッド。
【請求項9】
ゲル材料またはポリウレタン材料の塊に包埋されているブリッスルもしくはそのタフトの部分の全体にわたって、ブリッスルもしくはそのタフトがゲルまたはポリウレタン材料と直接的に接触していることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の歯ブラシヘッド。
【請求項10】
ゲル材料またはポリウレタン材料の塊を支持する硬質プラスチック材料の外枠を特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の歯ブラシヘッド。
【請求項11】
硬質プラスチック材料がポリプロピレン、ポリアミドまたはアクリロニトリルブタジエンスチレンであることを特徴とする、請求項10に記載の歯ブラシヘッド。
【請求項12】
歯ブラシヘッドの製造方法であって、該歯ブラシヘッドはそこからブリッスル方向に突き出ているブリッスルを有し、個々のブリッスルはヘッドに近接する端部とヘッドから離れている端部とを有し、該ヘッドにゲルまたはポリウレタン材料の塊を組み込み、そしてヘッドに近接する端部に近いブリッスルの少なくとも一部分を該ゲル材料またはポリウレタン材料の塊に包埋させる、上記製造方法。
【請求項13】
(1)ゲル材料の塊を形成するための金型キャビティーを有する金型を用意すること、ただし、該金型は該キャビティーから金型の外部に通じている少なくとも1つの開口部を有し、該開口部は、ブリッスルの一端が該キャビティー内に突き出るように、少なくとも1本の歯ブラシブリッスルを該開口部から挿入するためのものであること、
(2)コーティング形成材料を前記キャビティーの内表面に付着させること、
(3)少なくとも1本のブリッスルを前記開口部から挿入して、該ブリッスルの一端をキャビティー内に延在させること、
(4)ゲル材料をキャビティー内に導入し、その結果として該キャビティー内に延在するブリッスルの少なくとも一部分がゲル材料中に包埋されるようにし、かつコーティング形成材料がゲル材料塊の少なくとも一部分のまわりにコーティングを形成するようにすること、
を特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
1本以上のブリッスルを開口部から挿入する前に、コーティング形成材料をキャビティーの内表面に付着させることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
複数本のブリッスルを束ねてタフトを形成し、かつ該タフトの一端を熱により溶融して端部同士を融着させてブロブを形成させ、その後冷却して固化させることを特徴とする、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記タフトの近接端部を、いくらかの未融着ブリッスルが金型キャビティー内に存在するような距離にまで開口部から挿入し、その結果として、ゲルをキャビティー内に導入した際にゲルが未融着ブリッスルの間に浸透できるようにすることを特徴とする、請求項13〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
ゲル材料を熱い流動状態で通常の射出成形法により金型内に加圧下に注入し、冷却させて最終的なゲル状態にすることを特徴とする、請求項13〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
ゲル材料を、最終的なゲル状態へと硬化させる化学反応を行う必要がある流体前駆物質として金型内に導入することを特徴とする、請求項13〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
ゲル材料がタフトの個々のブリッスルの間に浸透するような加圧下および流動状態で、該ゲル材料を金型キャビティー内に注入するか、またはその前駆物質を金型キャビティーに導入することを特徴とする、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
タフトが包埋されているゲル材料を、歯ブラシヘッドの硬質プラスチック部品から分離した部品として製造し、その後この形成された、タフトが包埋されているゲル塊をヘッド内に固定することを特徴とする、請求項13〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
歯ブラシヘッドの少なくとも一部分を金型キャビティー内に入れ、その後ゲルまたはその前駆物質を該金型内に導入して、ヘッドの所定の位置にその場でゲル塊を形成させることを特徴とする、請求項13〜19のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A−C】
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【図4D−f】
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【公表番号】特表2006−528501(P2006−528501A)
【公表日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−520800(P2006−520800)
【出願日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【国際出願番号】PCT/EP2004/008248
【国際公開番号】WO2005/013762
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(501390806)グラクソスミスクライン・コンシューマー・ヘルスケア・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト (20)
【氏名又は名称原語表記】GlaxoSmithKline Consumer Healthcare GmbH & Co. KG
【Fターム(参考)】