説明

歯ブラシ

【課題】ヘッド部及びネック部の欠損や折れを防止でき、かつ容易に製造できる歯ブラシを提供する。
【解決手段】植毛面20に複数の毛束22が植毛されたヘッド部2と、該ヘッド部2に延設されたネック部4と、該ネック部4に延設されたハンドル部6とを備えるハンドル体10を備え、該ハンドル体10には、硬質樹脂で構成された基台11の表面に、前記ヘッド部2の表面積と前記ネック部4の表面積との合計の70%以上を覆う軟質樹脂からなる被覆層12が形成された歯ブラシ1において、前記被覆層12には、前記基台11が露出した露出部14が1以上形成され、前記ネック部4の軸線O1を対称軸とした線対称の領域に露出部14が形成されていないことよりなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
歯ブラシとしては、ハンドル体の先端近傍に複数の用毛を束ねた毛束が植毛されたものが知られている。一般に、ハンドル体は、毛束が植毛されるヘッド部と、ネック部を介してヘッド部に延設されたハンドル部とを備え、全体として長尺状の形状とされている。
ヘッド部は、口腔内での操作性が考慮され、できるだけ薄く成形されることが多い。また、ネック部は、口腔内での操作性が考慮され、ヘッド部より縮径された形状とされていることが多い。
【0003】
一般に、ハンドル体は、ポリプロピレン等の硬質樹脂で構成されているが、口腔内を清掃する際にヘッド部やネック部を強く噛んだりして過度な負担を掛けると、ヘッド部やネック部が折れたり、一部が欠損したりすることがある。
【0004】
ヘッド部又はネック部の強度を高めるために、ヘッド部やネック部の厚みを増したり、ネック部の径を大きくしたりすると、口腔内での操作性が損なわれる。
あるいは、ネック部にリブ等を形成してネック部の強度を高めると、リブが口腔内に接触するため、使用感が損なわれる。
【0005】
こうした問題に対し、例えば、ヘッド部及びネック部の一方の面、又はハンドル体の全面をエラストマー樹脂等の軟質樹脂で被覆した歯ブラシが提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平02−143035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の技術のように、単にヘッド部及びネック部を軟質樹脂で被覆すると、ハンドル体の芯となる硬質樹脂の体積が小さくなり、強度が低下する。
硬質樹脂の体積を大きくすると、ヘッド部やネック部が厚くなり、操作性や使用感が損なわれやすい。
加えて、ヘッド部及びネック部の一方の面だけを軟質樹脂で被覆しても、ヘッド部及びネック部の欠損や折れを十分に防止できない。
ハンドル体を軟質樹脂で被覆するには、ハンドル体の芯を硬質樹脂で成形し(一次成形)、これを金型に入れ、金型内に軟質樹脂を射出する(二次成形)。このため、二次成形において、軟質樹脂を射出した際に、芯の姿勢が動き、安定した厚みで軟質樹脂を被覆しにくいという問題がある。特に、ハンドル体の全面を安定した厚みの軟質樹脂で被覆するのは困難である。
そこで、本発明は、ヘッド部及びネック部の欠損や折れを防止でき、かつ容易に製造できる歯ブラシを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の歯ブラシは、植毛面に複数の毛束が植毛されたヘッド部と、該ヘッド部に延設されたネック部と、該ネック部に延設されたハンドル部とを備えるハンドル体を備え、該ハンドル体には、硬質樹脂で構成された基台の表面に、前記ヘッド部の表面積と前記ネック部の表面積との合計の70%以上を覆う軟質樹脂からなる被覆層が形成された歯ブラシにおいて、前記被覆層には、前記基台が露出した露出部が1以上形成され、前記ネック部の軸線を対称軸とした線対称の領域に露出部が形成されていないことを特徴とする。
前記硬質樹脂は、ポリブチレンテレフタレートであることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の歯ブラシによれば、ヘッド部及びネック部の欠損や折れを防止でき、かつ容易に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(a)本発明の第一の実施形態にかかる歯ブラシの平面図である。(b)本発明の第一の実施形態にかかる歯ブラシの底面図である。(c)図1(a)のC−C断面図である。
【図2】(a)本発明の第二の実施形態にかかる歯ブラシの平面図である。(b)本発明の第二の実施形態にかかる歯ブラシの底面図である。(c)本発明の第二の実施形態にかかる歯ブラシの側面図である。(d)図2(a)のD1−D1断面図である。
【図3】(a)本発明の第三の実施形態にかかる歯ブラシの平面図である。(b)本発明の第三の実施形態にかかる歯ブラシの底面図である。(c)本発明の第三の実施形態にかかる歯ブラシの側面図である。(d)図3(a)のD2−D2断面図である。
【図4】(a)本発明の第四の実施形態にかかる歯ブラシの平面図である。(b)本発明の第四の実施形態にかかる歯ブラシの底面図である。(c)本発明の第四の実施形態にかかる歯ブラシの側面図である。(d)図4(a)のD3−D3断面図である。
【図5】(a)比較例に用いた歯ブラシの平面図である。(b)比較例に用いた歯ブラシの底面図である。(c)比較例に用いた歯ブラシの側面図である。(d)図5(a)のD4−D4断面図である。
【図6】(a)比較例に用いた歯ブラシの平面図である。(b)比較例に用いた歯ブラシの底面図である。(c)比較例に用いた歯ブラシの側面図である。(d)図6(a)のD5−D5断面図である。
【図7】(a)比較例に用いた歯ブラシの平面図である。(b)比較例に用いた歯ブラシの底面図である。(c)比較例に用いた歯ブラシの側面図である。(d)図7(a)のD6−D6断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第一の実施形態)
本発明の第一の実施形態にかかる歯ブラシについて、以下に図1を用いて説明する。
図1に示す歯ブラシ1は、ヘッド部2と、ヘッド部2に延設されたネック部4と、ネック部4に延設されたハンドル部6とを備えるハンドル体10と、ヘッド部2の植毛面20に植毛された複数の毛束22とを備えるものである。
【0012】
ヘッド部2の平面視形状は、ヘッド部先端21からネック部4に向かう方向を長手とする略長方形であり、その四隅が曲線で隅切された形状とされている。ネック部4は、平面視においてヘッド部基端からハンドル部6に向かい、縮幅した後に略同等の幅で延び、次いで拡幅しハンドル部6に接続されている。ハンドル部6は、ハンドル部基端から略同じ太さで延設されている。
本実施形態におけるヘッド部基端、即ちヘッド部2とネック部4との境界は、ヘッド部2の平面視形状の隅切を形成する曲線の終点(即ち、隅切を形成する曲線の曲がり方向が変化する位置)P1である(図1(a)参照)。
本実施形態におけるハンドル部基端、即ちネック部4とハンドル部6との境界は、平面視において、ネック部4の拡幅が終了する位置(ネック部終点)P2である(図1(a)参照)。
【0013】
ヘッド部2の幅W1は、口腔内での操作性等を勘案して決定でき、例えば、8〜12mmとされる。
ヘッド部2の長さL1は、口腔内での操作性等を勘案して決定でき、例えば、15〜30mmとされる。
ヘッド部2の厚みT1は、口腔内での操作性やハンドル体10に求める強度等を勘案して決定でき、例えば、3〜5mmとされる。
【0014】
ハンドル体10は、基台11と、基台11の表面を覆う被覆層12とを備え、被覆層12は、ヘッド部先端21から、ハンドル部基端よりもハンドル部6の先端寄りにかけて形成されている。被覆層12には、基台11が露出した3つの露出部14が形成され、露出部14は、略真円形とされ、被覆層12の外面と略面一とされている。
また、ネック部4の軸線O1を対称軸とし、任意の露出部14と線対称の領域には、基台11が露出した領域が形成されていない。即ち、本実施形態においては、ヘッド部2の表面の内、植毛面20と反対側の面(底面)にのみ露出部14が形成されている。
軸線O1は、ヘッド部基端とハンドル部基端とを結び、かつネック部4の中心を通る線である。
【0015】
基台11は、ハンドル体10の芯となる部材であり、ヘッド部2、ネック部4及びハンドル部6を形成する部分が一体成形されたものである。
基台11の材質としては、歯ブラシ1に求める剛性や機械特性等を勘案して決定でき、例えば、曲げ弾性率(JIS K7203)が500〜3000MPaの範囲にある硬質樹脂が挙げられる。このような硬質樹脂としては、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート(PCT)、ポリアセタール(POM)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)、セルロースプロピオネート(CP)、ポリアリレート、ポリカーボネート、アクリロニトリル・スチレン共重合樹脂(AS)等が挙げられ、中でもPBTが好ましい。PBTは、折れ強度が高いため、ハンドル体10が折れたり、一部が欠損するのをより防止できる。これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0016】
ヘッド部2における基台11の厚みT2は、基台11の材質等を勘案して決定でき、例えば、2〜4mmとされる。
ネック部4における基台11の厚みは、ヘッド部11における基台11の厚みT2と同様である。
【0017】
被覆層12は、ヘッド部2の表面積とネック部4の表面積との合計の70%以上を覆う(被覆率70%)ものであり、例えば、70〜95%を覆うものが好ましく、80〜90%を覆うものがより好ましい。被覆層12による被覆率が高まるほど、ヘッド部及びネック部の欠損や折れをより高度に防止できる。
【0018】
被覆層12の材質は、ハンドル体の破損等を防止できる軟質樹脂であればよく、例えば、ポリオレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー等のエラストマー樹脂が挙げられ、中でも、基台11の欠損をより確実に防ぐ観点からスチレン系エラストマーが好ましい。スチレン系エラストマーとしては、例えば、セプトン(商品名、株式会社クラレ製)、レオストマー(商品名、リケンテクノス株式会社製)等が挙げられる。
また、被覆層12の材質は、基台11の材質を勘案して決定することがより好ましい。例えば、基台11の材質がPBTであれば、被覆層12の材質は、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマーが好ましく、ポリエステル系エラストマーがより好ましい。また、基台11の材質がPPであれば、ポリオレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマーが好ましく、ポリオレフィン系エラストマーがより好ましい。基台11の材質と被覆層12の材質とをこのような組み合わせとすることで、基台11から被覆層12が剥離するのをより低減できる。
【0019】
被覆層12の厚みT3は、被覆層12を構成する樹脂の材質等を勘案して決定でき、例えば、0.5〜2mmが好ましく、0.8〜1.5mmがより好ましい。上記下限値未満であると、ハンドル体10の破損を有効に防止できないおそれがあり、上記上限値超であると、ヘッド部2又はネック部4の厚みが厚くなりすぎて、ハンドル体10の操作性が損なわれるおそれがある。
【0020】
露出部14の直径R1は、特に限定されず、ヘッド部2の大きさ等を勘案して決定できる。
[露出部の面積の合計]/[被覆面積]で表される露出比は、被覆層12の被覆率等を勘案して決定でき、0.05〜0.3が好ましく、0.1〜0.2がより好ましい。上記下限値未満であると、後述する二次成形において二次金型内で基台を固定しにくくなるおそれがあり、上記上限値超であると、被覆層12が剥離しやすくなるおそれがある。
なお、被覆面積とは、被覆層12の面積と露出部14の面積との合計である。
【0021】
毛束22は、複数の用毛を束ねたものである。
植毛面20から毛束22の先端までの長さ(毛丈)は、毛束22に求める毛腰等を勘案して決定でき、例えば、6〜13mmとされる。
全ての毛束22は同じ毛丈であってもよいし、相互に異なっていてもよい。
【0022】
毛束22の太さ(毛束径)は、毛束22に求める毛腰等を勘案して決定でき、例えば、1〜2mmとされる。全ての毛束22は同じ毛束径であってもよいし、相互に異なっていてもよい。
【0023】
毛束22を構成する用毛としては、例えば、毛先に向かって漸次その径が小さくなり、毛先が先鋭化された用毛(テーパー毛)、植毛面20から毛先に向かいその径がほぼ同一である用毛(ストレート毛)等が挙げられる。ストレート毛としては、毛先が植毛面20に略平行な平面とされたものや、毛先が半球状に丸められたものが挙げられる。
【0024】
用毛の材質は、例えば、6−12ナイロン(6−12NY)、6−10ナイロン(6−10NY)等のポリアミド、PET、PBT、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)等のポリエステル、PP等のポリオレフィン、ポリオレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー等のエラストマー樹脂等が挙げられる。
これらの樹脂材料は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、用毛としては、芯部と該芯部の外側に設けられた少なくとも1層以上の鞘部とを有する多重芯構造を有するポリエステル製用毛が挙げられる。
【0025】
用毛の横断面形状は、特に限定されず、真円形、楕円形等の円形、多角形、星形、三つ葉のクローバー形、四つ葉のクローバー形等としてもよい。全ての用毛の断面形状は同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0026】
用毛の太さは、材質等を勘案して決定でき、横断面が円形の場合、例えば、6〜9milとされる。また、使用感、刷掃感、清掃効果、耐久性等考慮して、太さの異なる複数本の用毛を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0027】
歯ブラシ1の製造方法は、例えば、基台11を成形し(一次成形)、得られた基台11に被覆層12を形成する(二次成形)成形工程と、次いでヘッド部2に毛束22を植毛する植毛工程とを備えるものが挙げられる。
【0028】
一次成形は、基台11の形状に対応するキャビティを形成する一対の一次金型を用い、前記キャビティに基台11を構成する硬質樹脂(一次樹脂ということがある)を射出して、基台11を成形する操作である。
【0029】
続く二次成形は、被覆層12の形状に対応するキャビティが形成された一対の二次金型を用い、一次成形で得られた基台11を二次金型のキャビティ内に装填し、二次金型に被覆層12を構成する軟質樹脂(二次樹脂ということがある)を射出し、被覆層12を形成する操作である。二次金型のキャビティは、キャビティ内に基台11が装填された際、装填された基台11とキャビティとの間に形成された空間が、被覆層12に対応する形状とされたものである。
二次成形の際、基台11には、露出部14に対応する形状の凸部が形成されており、この凸部が二次金型の内面に当接する。このため、二次金型の内部には、被覆層12に対応する形状の隙間が安定的に形成される。加えて、二次樹脂を射出した際にも、被覆層12に対応した形状の隙間が確保されるため、被覆層12を所望した厚みで、安定的に形成できる。
【0030】
植毛工程は、ヘッド部2に毛束22を植毛し、歯ブラシ1とする工程である。毛束22の植毛方法は、公知の方法を用いることができ、例えば、複数本の用毛からなる毛束を二つ折りにし、その間に抜け止め部材(平線)を挟み、この平線を植毛穴に打ち込んで毛束を固定する平線植毛法が挙げられる。この平線は、従来公知のものを用いることができ、例えば、真鍮製、アルミニウム製の平板状のものが挙げられる。
【0031】
上述した通り、本実施形態の歯ブラシによれば、硬質樹脂で構成された基台の表面に、ヘッド部の表面積とネック部の表面積との合計の70%以上を覆う軟質樹脂からなる被覆層が形成されているため、ヘッド部やネック部に過度な負担を掛けても、ハンドル体が折れにくい。また、ヘッド部又はネック部においてハンドル体が折れた場合でも、折れた部分が露出するのを防止したり、欠落した部材を被覆層で保持したりできる。
本実施形態の歯ブラシによれば、被覆層には、基台が露出した露出部が1以上形成されているため、被覆層を所望する厚さで安定的に形成できる。
本実施形態の歯ブラシによれば、ネック部の軸線を対称軸とした線対称の領域に露出部が形成されていないため、ヘッド部又はネック部を歯で噛んだ際に、上顎歯及び下顎歯のいずれかは露出部に直接接することがない。加えて、ヘッド部又はネック部にいずれの方向から荷重が掛けられた場合でも、被覆層により荷重を緩和できる。このため、ヘッド部又はネック部に過度な負担が掛かるの防止し、ヘッド部及びネック部の欠損や折れを防止できる。
【0032】
(第二の実施形態)
本発明の第二の実施形態にかかる歯ブラシについて、図2を用いて説明する。なお、第一の実施形態と同一の構成には同一の符号を付してその説明を省略すると共に、主に第一の実施形態と異なる点について説明する。本実施形態において第一の実施形態と異なる点は、露出部の形状及び露出部の位置である。
【0033】
本実施形態の歯ブラシ100は、基台111の表面に被覆層112が形成されたハンドル体110を備えるものである。ヘッド部2の底面には、略半円形の露出部114がヘッド部先端21寄りに形成され、略四角形の露出部116がヘッド部基端寄りに形成されている。また、ネック部4の底面には、ヘッド部基端からハンドル部基端に掛けて軸線O1方向に伸びる略長方形の露出部118が形成されている。
図2(d)に示すように、露出部118は、被覆層112の外面と略面一とされている。露出部114及び露出部116も露出部118と同様に被覆層112の外面と略面一とされている。
また、軸線O1を対称軸とし、露出部114、116及び118と線対称の領域には、基台111が露出した領域が形成されていない。
【0034】
露出部114の長さl1は、ヘッド部2の長さ等を勘案して決定でき、例えば、5〜15mmとされる。露出部114の幅w1は、ヘッド部2の幅を勘案して決定でき、例えば、3〜8mmとされる。
露出部116の長さl2は、ヘッド部2の長さ等を勘案して決定でき、例えば、3〜5mmとされる。露出部116の幅は、露出部114の幅w1と同様である。
露出部118の幅w2は、ネック部4の幅等を勘案して決定でき、例えば、1〜4mmとされる。
【0035】
本実施形態によれば、ヘッド部及びネック部に露出部が形成されているため、二次金型内で基台をより安定して固定できる。
【0036】
(第三の実施形態)
本発明の第三の実施形態にかかる歯ブラシについて、図3を用いて説明する。なお、第一の実施形態と同一の構成には同一の符号を付してその説明を省略すると共に、主に第一の実施形態と異なる点について説明する。本実施形態において第一の実施形態と異なる点は、露出部の形状及び露出部の位置である。
【0037】
本実施形態の歯ブラシ200は、基台211の表面に被覆層212が形成されたハンドル体210を備えるものである。被覆層212には、底面にヘッド部2からネック部4にかけて、軸線O1方向に伸びる略長方形の露出部214が形成されている。
図3(d)に示すように、露出部214は、被覆層212の外面と略面一とされている。
また、軸線O1を対称軸とし、露出部214と線対称の領域には、基台211が露出した領域が形成されていない。
【0038】
露出部214の幅w3は、ネック部4の幅等を勘案して決定でき、例えば、1〜4mmとされる。
【0039】
本実施形態によれば、複雑な形状の露出部を形成する必要がないため、より容易に二次金型内で基台を安定して固定できる。
【0040】
(第四の実施形態)
本発明の第四の実施形態にかかる歯ブラシについて、図4を用いて説明する。なお、第一の実施形態と同一の構成には同一の符号を付してその説明を省略すると共に、主に第一の実施形態と異なる点について説明する。本実施形態において第一の実施形態と異なる点は、ネック部の底面に略長方形の露出部が形成されている点である。
【0041】
本実施形態の歯ブラシ300は、基台311の表面に被覆層312が形成されたハンドル体310を備えるものである。被覆層312には、ヘッド部2の底面に3つの露出部14が形成されると共に、ネック部4の底面に軸線O1方向を長手とする略長方形の露出部316が1つ形成されている。
図4(d)に示すように、露出部316は、被覆層312の外面と略面一とされている。
また、軸線O1を対称軸とし、露出部316と線対称の領域には、基台311が露出した領域が形成されていない。
【0042】
露出部316の長さl3は、ヘッド部2の長さ等を勘案して決定でき、例えば、1〜5mmとされる。露出部316の幅w4は、ネック部4の幅等を勘案して決定でき、例えば、1〜4mmとされる。
【0043】
本実施形態によれば、ヘッド部及びネック部の双方に露出部が形成されているため、二次金型内で基台をより安定して固定できる。
【0044】
(その他の実施形態)
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
第一〜第四の実施形態では、露出部が被覆層の外面と略面一とされているが、本発明は、これに限定されず、露出部が被覆層の外面から突出したものであってもよいし、露出部が被覆層の外面から凹んだものであってもよい。
【0045】
第一〜第四の実施形態では、底面にのみ露出部が形成されているが、本発明は、これに限定されず、植毛面と同方向に向く面(上面)又は側面に露出部が形成されていてもよい。あるいは、底面、上面及び側面のいずれか2面以上に露出部が形成されていてもよい。底面、上面及び側面のいずれか2面以上に露出部が形成されていると、二次金型内で基台をより安定して固定できる。
【0046】
第一及び第四の実施形態では、ヘッド部に略真円形の露出部が形成されているが、本発明は、これに限定されず、露出部の形状は、楕円形、又は略多角形等であってもよい。略多角形とは、角部が直線又は曲線で隅切された形状を含む概念である。
なお、露出部の形状は、被覆層の剥離を抑制するため、真円形もしくは楕円形等の円形、又は曲線で隅切された多角形であることが好ましい。
【0047】
第二〜第四の実施形態では、ネック部に形成された露出部の形状が略長方形とされているが、本発明はこれに限定されず、ネック部に形成される露出部の形状が円形であってもよい。
【0048】
第一〜第四の実施形態では、被覆層が、ヘッド部先端から、ハンドル部基端を含む領域に形成されている。しかしながら、被覆層は、ヘッド部の表面積とネック部の表面積との合計の70%以上を覆っていればよく、例えば、ヘッド部先端からハンドル部基端の手前までに被覆層が形成されていてもよいし、ハンドル部の先端まで被覆層が形成されていてもよい。
【0049】
本発明において、毛束の植毛パターンは、特に限定されず、いわゆる格子状、千鳥状及びこれらの組み合わせのいずれであってもよい。
【実施例】
【0050】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。
【0051】
(実施例1)
表1に示す基台材質を一次樹脂として基台を製造し、次いで表1に示す被覆層材質を二次樹脂として基台に被覆層を形成して、下記仕様の図2の歯ブラシ100と同様の歯ブラシを製造した。得られた歯ブラシについて、ヘッド部強度、ネック部強度、分離の有無及び成形性を評価し、その結果を表1に示す。
なお、表中の被覆層の材質において、「ポリエステル系」はポリエステル系エラストマーを示し、「ポリオレフィン系」はポリオレフィン系エラストマーを示し、「スチレン系」はスチレン系エラストマーを示す。
【0052】
<仕様>
ヘッド部幅:8.5mm
ヘッド部長さ:22mm
ヘッド部の厚み:4.5mm
ネック部幅:5mm
ネック部長さ:50mm
露出部114の長さl1:5mm
露出部114の幅w1:4mm
露出部116の長さl2:3mm
露出部118の幅w2:2mm
被覆層の厚み:0.8mm
【0053】
(実施例2)
基台材質及び被覆層材質を表1のものとし、露出部を下記仕様とした以外は、実施例1と同様にして図3の歯ブラシ200と同様の歯ブラシを製造した。得られた歯ブラシについて、ヘッド部強度、ネック部強度、分離の有無及び成形性を評価し、その結果を表1に示す。
【0054】
<仕様>
露出部214の幅w3:2mm
【0055】
(実施例3)
基台材質及び被覆層材質を表1のものとし、露出部を下記仕様とした以外は、実施例1と同様にして図4の歯ブラシ300と同様の歯ブラシを製造した。得られた歯ブラシについて、ヘッド部強度、ネック部強度、分離の有無及び成形性を評価し、その結果を表1に示す。
【0056】
<仕様>
露出部14の直径:3mm
露出部316の長さl3:3mm
露出部316の幅w4:2mm
【0057】
(比較例1)
基台材質及び被覆層材質を表1のものとした以外は、実施例1と同様にして図5の歯ブラシ700と同様の歯ブラシを製造した。得られた歯ブラシについて、ヘッド部強度、ネック部強度、分離の有無及び成形性を評価し、その結果を表1に示す。
なお、歯ブラシ700は、基台711の全体が被覆層712により覆われたハンドル体710を備えるものである。ハンドル体710は、ヘッド部2の表面とネック部4の表面積の合計の100%が被覆層712で覆われており、露出部が形成されていないものである。
【0058】
(比較例2)
基台材質を表1のものとし、二次成形をしなかった以外は、実施例1と同様にして図6の歯ブラシ800と同様の歯ブラシを製造した。得られた歯ブラシについて、ヘッド部強度、ネック部強度、分離の有無及び成形性を評価し、その結果を表1に示す。
なお、歯ブラシ800は、ハンドル体810に被覆層が形成されておらず、基台のみで構成されたものである。
【0059】
(比較例3)
基台材質及び被覆層材質を表1のものとし、露出部を下記仕様とした以外は、実施例1と同様にして図7の歯ブラシ900と同様の歯ブラシを製造した。得られた歯ブラシについて、ヘッド部強度、ネック部強度、分離の有無及び成形性を評価し、その結果を表1に示す。
歯ブラシ900は、基台911の表面に被覆層912が形成されたハンドル体910を備えるものである。被覆層912には、ネック部4の上面に略長方形の露出部914が形成されると共に、ネック部4の底面に略長方形の露出部916が形成されている。図7(d)に示すように、露出部914と露出部916とは、軸線O1を対称軸として線対称の領域に形成されている。
【0060】
<仕様>
露出部914の幅w5:2mm
露出部916の幅w6:2mm
【0061】
(評価方法)
<ヘッド部強度>
各例の歯ブラシの毛束を切断し、ヘッド部の植毛面を平滑にしたサンプルを用意した。このサンプルのヘッド部基端をクランプで把持して、サンプルをデジタル衝撃試験機(DG−1型、株式会社東洋精機製作所製)に固定し、植毛面を0.5Jで加重し、ヘッド部が破断したときの吸収エネルギー(J)を測定(n=10)した。この測定値の平均値を下記評価基準に分類し、ヘッド部強度を評価した。
≪評価基準≫
◎:0.3J以上
○:0.2J以上0.3J未満
△:0.1J以上0.2J未満
×:0.1J未満
【0062】
<ネック部強度>
各例のサンプルのハンドル部基端をクランプで把持して固定し、植毛面側から2kgで加重し、ネック部が破断したときの破断強度(N)を測定(n=10)した。この測定値の平均値を下記評価基準に分類し、ヘッド部強度を評価した。
≪評価基準≫
◎:100N以上
○:70N以上100N未満
△:40N以上70N未満
×:40N未満
【0063】
<分離の有無>
ヘッド部強度及びネック部強度を測定した後のハンドル体を目視で観察し、ハンドル体の分離の有無を評価した。
○:分離していない。
×:分離している。
【0064】
<成形性>
各例の歯ブラシを目視で確認し、軟質樹脂の充填不良(ショートショット)の程度を下記評価基準に従って評価した。各例10個について成形性を評価し、その平均点が4.0点以上を「◎」、3.0点以上4.0点未満を「○」、2.0点以上3.0点未満を「△」、2.0点未満を「×」とした。
≪評価基準≫
5:被覆層の厚みが均一で、被覆層の変形や欠けがまったく認められない。
4:被覆層の変形や欠けは認められないが、所定の厚さに達していない領域が被覆層の10%未満の領域に認められる。
3:被覆層の変形や欠けは認められないが、所定の厚さに達していない領域が10%以上50%未満の領域に認められる。
2:被覆層の変形や欠けは認められないが、所定の厚さに達していない領域が50%以上の領域に認められる。
1:被覆層に変形や欠けが認められる。
【0065】
<総合評価>
ヘッド部強度、ネック部強度、分離の有無及び成形性の評価結果に基づき、下記評価基準に従って総合評価をした。
≪評価基準≫
◎:全ての評価結果が「○」又は「◎」で、「◎」が2つ以上。
○:全ての評価結果が「○」又は「◎」で、「◎」が1つ以下。
△:全ての評価結果が「△」、「○」又は「◎」で、「△」が1つ以上。
×:評価結果の1つ以上が「×」である。
【0066】
【表1】

【0067】
表1に示すように、本発明を適用した実施例1〜3は、いずれも総合評価が「○」又は「◎」であった。また、実施例1〜3は、いずれも口腔内での操作性及び使用感が良好であった。
一方、露出部を形成しなかった比較例1は、成形性が「×」であり、被覆層を形成しなかった比較例2は、ハンドル体の分離が認められた。ネック部の軸線を対称軸とし、線対称となる領域に露出部を形成した比較例3は、ネック部強度が「△」であった。
以上の結果から、本発明を適用することで、ヘッド部及びネック部の欠損や折れを防止でき、かつ容易に製造できる歯ブラシを得られることが判った。
【符号の説明】
【0068】
1、100、200、300 歯ブラシ
2 ヘッド部
4 ネック部
6 ハンドル部
10、110、210、310 ハンドル体
11、111、211、311 基台
12、112、212、312 被覆層
14、114、116、118、214、316 露出部
20 植毛面
22 毛束
O1 軸線


【特許請求の範囲】
【請求項1】
植毛面に複数の毛束が植毛されたヘッド部と、該ヘッド部に延設されたネック部と、該ネック部に延設されたハンドル部とを備えるハンドル体を備え、該ハンドル体には、硬質樹脂で構成された基台の表面に、前記ヘッド部の表面積と前記ネック部の表面積との合計の70%以上を覆う軟質樹脂からなる被覆層が形成された歯ブラシにおいて、
前記被覆層には、前記基台が露出した露出部が1以上形成され、前記ネック部の軸線を対称軸とした線対称の領域に露出部が形成されていないことを特徴とする歯ブラシ。
【請求項2】
前記硬質樹脂は、ポリブチレンテレフタレートであることを特徴とする、請求項1に記載の歯ブラシ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−458(P2013−458A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−136480(P2011−136480)
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】