説明

歯磨用顆粒の製造方法

【課題】歯磨用顆粒の製造における乾燥負荷の抑制と生産性の向上との両立を実現する。
【解決手段】水不溶性無機粉末と水不溶性無機結合剤とを含有する歯磨用顆粒の製造方法では、水溶性アルカリ剤を含むpHが8.0以上11.0以下の水スラリーを調整する(A)工程と、(A)工程で調整した水スラリーを噴霧乾燥する(B)工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯磨剤における審美的効果や清掃効果を補助的に高める歯磨用顆粒の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、虫歯や歯周病の原因となる歯垢を効率よく除去し、その効果を触知できるような歯磨用顆粒を配合した歯磨剤が知られている。歯磨用顆粒は、実質的に球状凝集粒子であり、口の中で触知できる程度の強度と大きさを保有し、歯を磨いている過程で徐々に崩壊することにより、歯の表面のみならず、歯と歯のすき間の歯垢除去効果を有する。また、かかる歯磨用顆粒には、薬剤、酵素剤、研磨剤等の機能性材料を含有させたものや、その審美的効果を狙ったものもある。
【0003】
そして、これらの歯磨用顆粒として、例えば、水不溶性無機粉末を水不溶性無機結合剤で結着させて得られるもの(特許文献1)、多孔質シリカ、カチオン性殺菌剤、水不溶性無機結合剤を含有するもの(特許文献2)、水酸化マグネシウム及び/又は水酸化カルシウムを含む水不溶性アルカリ化合物及び水不溶性無機結合剤からなるもの(特許文献3)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1−299211号公報
【特許文献2】特開平6−279247号公報
【特許文献3】特開平9−2927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1〜3には、造粒物である歯磨用顆粒の形状がほとんど真球となって歯を傷つける恐れが少なく、また、ハンドリングも容易であるという理由により、噴霧乾燥造粒法が歯磨用顆粒の好適な製造方法の1つとして開示されている。
【0006】
しかしながら、噴霧乾燥造粒法により歯磨用顆粒を製造する場合には、水スラリーを一流体ノズルや二流体ノズル、あるいは、ディスクアトマイザー等により所望の液滴径となるように噴霧しなければならない為、水スラリーを噴霧が可能な範囲の粘度に調整する必要がある。また、水スラリーはその粘度が低いほど取扱い性が良いが、水に代表される溶媒等により水スラリーを希釈して粘度を低下させると、乾燥時の負荷が増大して生産効率が低下する。一方、固形分濃度を高めて水スラリーの粘度を上昇させると、微粒化に多大なエネルギーを必要としたり、噴霧不良やノズル閉塞などの生産トラブルが多発したり、配管圧力損失が増大するといった製造上の問題を生じる。
【0007】
本発明の課題は、歯磨用顆粒の製造における乾燥負荷の抑制と生産性の向上との両立を実現可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、水不溶性無機粉末と水不溶性無機結合剤とを含有する歯磨用顆粒の製造方法であって、水溶性アルカリ剤を含むpHが8.0以上11.0以下の水スラリーを調整する(A)工程と、その(A)工程で調整した水スラリーを噴霧乾燥する(B)工程とを含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明の歯磨用顆粒の製造方法によれば、水溶性アルカリ剤を含むpHが8.0以上11.0以下の水スラリーを噴霧乾燥するので、水不溶性無機粉末及び/又は水不溶性無機結合剤の選定に制約を受けず、水スラリーとしたときに中性乃至酸性を呈する水不溶性無機粉末及び/又は水不溶性無機結合剤を用いる場合でも、効果的に水スラリーを低粘度化させ、延いては、固形分濃度の高い水スラリーを低粘度で調整することが可能となり、乾燥負荷の抑制と生産性の向上との両立を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明者らは、歯磨用顆粒の製造において、水スラリーを低粘度化する手法について、鋭意検討を重ねた結果、水スラリーに水溶性アルカリ剤を含ませることで、非常に効果的に水スラリーの低粘度化を図ることができることを見出し、延いては、固形分濃度の高い水スラリーを低粘度で調整することが可能となり、乾燥負荷の抑制と生産性の向上との両立を実現可能にした。また、本発明者らは、水スラリーに配合する水不溶性無機粉末及び/又は水不溶性無機結合剤としてアルカリ化合物を用いた場合よりも、水スラリーとしたときに中性乃至酸性を呈する水不溶性無機粉末及び/又は水不溶性無機結合剤を用いる場合に、その驚くべき効果を発現することをも見出し、あらゆる材料に対応可能な歯磨用顆粒の製造方法を完成させた。
【0011】
以下、具体的な実施形態について説明する。
【0012】
本実施形態に係る歯磨剤顆粒の製造方法は、水不溶性無機粉末と水不溶性無機結合剤とを含有する歯磨用顆粒を製造するものであって、水溶性アルカリ剤を含むpHが8.0以上11.0以下の水スラリーを調整する(A)工程と、その(A)工程で調整した水スラリーを噴霧乾燥する(B)工程とを含む。
【0013】
本実施形態に係る歯磨用顆粒の製造方法によれば、水溶性アルカリ剤を含むpHが8.0以上11.0以下の水スラリーを噴霧乾燥するので、水不溶性無機粉末及び/又は水不溶性無機結合剤の選定に制約を受けず、水スラリーとしたときに中性乃至酸性を呈する水不溶性無機粉末及び/又は水不溶性無機結合剤を用いる場合でも、効果的に水スラリーを低粘度化させ、延いては、固形分濃度の高い水スラリーを低粘度で調整が可能となり、乾燥負荷の抑制と生産性の向上との両立を実現することができる。なお、この作用効果のメカニズムは定かではないが、水スラリー中に分散している粒子の表面電荷に影響し、それが電気二重層を形成することによる静電反発により粒子の分散性が向上して粘度が低下しているものと考えられる。
【0014】
[(A)工程]
(A)工程では、水不溶性無機粉末、水不溶性無機結合剤、及び水溶性アルカリ剤を含むpHが8.0以上11.0以下の水スラリーを調整する。
【0015】
(水不溶性無機粉末)
本願における「水不溶性無機粉末」とは、25℃において水1Lへの溶解量が1g以下であり、且つ体積平均粒子径が1μm以上の無機粉末である。水不溶性無機粉末は、特に限定されるものではないが、上記作用効果が著しいという観点から、水スラリーに配合したときにアルカリ性を呈するアルカリ化合物よりも水スラリーに配合したときに中性乃至は酸性を呈する化合物が好ましい。かかる水不溶性無機粉末としては、例えば、第一リン酸カルシウム、第二リン酸カルシウム、不溶性メタリン酸ナトリウム、リン酸マグネシウム、ピロリン酸カルシウム、複合アルミノケイ酸塩、合成ケイ酸アルミニウム、合成ヒドロタルサイト、酸化マグネシウム、ベンガラ、ベントナイト、モンモリナイト、カオリン、硫酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、無水ケイ酸、ケイ酸ジルコニウム等が挙げられる。これらのうち歯磨用顆粒としての清掃効果が高いこと、また、取扱いのし易さや汎用性の観点から、複合アルミノケイ酸塩、合成ケイ酸アルミニウム、無水ケイ酸が好ましく、中でも無水ケイ酸が特に好ましい。水不溶性無機粉末は、単一種で構成されていてもよく、また、複数種で構成されていてもよい。
【0016】
水不溶性無機粉末の体積平均粒子径は、水スラリーの適正な粘度が得られ、また、製造される歯磨用顆粒の研磨性、即ち、歯表面や歯と歯のすき間の歯垢や着色汚れの清掃性が優れるという観点から、1μm以上であることが好ましく、3μm以上であることが更に好ましく、5μm以上であることが特に好ましく、一方、製造される歯磨用顆粒が口腔内で低為害性を有し、また、使用感が良好であるという観点から、50μm以下であることが好ましく、20μm以下であることが更に好ましく、10μm以下であることが特に好ましい。水不溶性無機粉末の体積平均粒子径は、例えば、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所社製 LA−920等)を用いて測定される。
【0017】
水不溶性無機粉末の吸油量は、製造される歯磨用顆粒の清掃性が優れるという観点から、50ml/100g以上であることが好ましく、80ml/100g以上であることが更に好ましく、90ml/100g以上であることが特に好ましく、一方、水スラリーの適正な粘度が得られるという観点から、200ml/100g以下であることが好ましく、150ml/100g以下であることが更に好ましく、130g/100g以下であることが特に好ましい。水不溶性無機粉末の吸油量は、JIS K5101−13−2に基づいた方法により、吸収される煮あまに油の量として求められる。具体的には、測定対象の水不溶性無機粉末に煮あまに油を滴下しつつ鋼ヘラで練り合わせ、全体が鋼ヘラでラセン状にまくことができた時点を終点とし、吸収される煮あまに油の量を求める。なお、煮あまに油はJIS K5421に規定するものが用いられる。
【0018】
水不溶性無機粉末のRDA値(研磨性)は、製造される歯磨用顆粒が口腔内で低為害性を有し、また、使用感が良好であるという観点から、160以下であることが好ましく、150以下であることが更に好ましく、140以下であることが特に好ましい、一方、製造される歯磨用顆粒の清掃性が優れるという観点から、90以上であることが好ましく、100以上であることが更に好ましく、110以上であることが特に好ましい。水不溶性無機粉末のRDA値は、ISO11609研磨性の試験方法 付随書Aに基づいて測定される。
【0019】
水不溶性無機粉末は、製造される歯磨用顆粒の清掃性が優れるという観点から、歯磨用顆粒中の含有量が40質量%以上となる量であることが好ましく、50質量%以上となる量であることが更に好ましく、60質量%以上となる量であることが特に好ましく、一方、水スラリーの適正な粘度が得られ、また、取扱い性及び製造適性が優れるという観点から、歯磨用顆粒中の含有量が90質量%以下となる量であることが好ましく、85質量%以下となる量であることが更に好ましく、80質量%以下となる量であることが特に好ましい。なお、水スラリー中においては、水不溶性無機粉末の含有量は、15〜60質量%であることが好ましく、20〜50質量%であることが更に好ましく、25〜40質量%であることが特に好ましい。
【0020】
(水不溶性無機結合剤)
本願における「水不溶性無機結合剤」とは、25℃において水1Lへの溶解量が1g以下であり、且つ体積平均粒子径が500nm以下の無機粉末である。水不溶性無機結合剤としては、例えば、コロイダルシリカ、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム等のケイ素系化合物、ベントナイト、モンモリロナイト、カオリン、水酸化アルミニウムゲル、アルミナゾル、合成ヒドロタルサイト等が挙げられる。これらのうち、ケイ素系化合物が好ましく、中でも噴霧造粒法での操作性が優れるという観点から、コロイダルシリカ、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウムが好ましく、特にコロイダルシリカが好ましい。水不溶性無機結合剤は、単一種で構成されていてもよく、また、複数種で構成されていてもよい。なお、上記の水不溶性無機結合剤の例示において、コロイダルシリカのように溶媒中に分散された物質があるが、本出願において、「水不溶性無機結合剤」とは、溶媒を除いた実質的な無機結合物質を意味する。
【0021】
水不溶性無機結合剤の粒子径は、製造される歯磨用顆粒に適正な崩壊強度を得ることができるという観点から、40nm以下であることが好ましく、30nm以下であることが更に好ましく、20nm以下であることが特に好ましく、一方、水スラリーで高濃度とした際の取扱い性が容易であるという観点から、7nm以上であることが好ましく、8nm以上であることがより好ましく、9nm以上であることが特に好ましい。水不溶性無機結合剤の粒子径は、通常商品カタログに記載されているが、BET法、シアーズ法、動的光散乱法、及び、透過型電子顕微鏡による観察でも測定できる。
【0022】
水不溶性無機結合剤の体積占有率及び水不溶性無機粉末とのパッキング性は水スラリーの粘度にも大きく影響することから、水不溶性無機結合剤の粒子径/水不溶性無機粉末の体積平均粒子径は1/20以下であることが好ましく、1/100以下であることが更に好ましく、1/800以下であることが特に好ましい。
【0023】
水不溶性無機結合剤は、製造される歯磨用顆粒に適正な崩壊強度を得ることができるという観点から、歯磨用顆粒中の水不溶性無機結合剤の含有量が10質量%以上となる量であることが好ましく、15質量%以上となる量であることが更に好ましく、20質量%以上となる量であることが特に好ましく、一方、経済性の観点から、歯磨用顆粒中の水不溶性無機結合剤の含有量が45質量%以下となる量であることが好ましく、40%以下となる量であることが更に好ましく、35質量%以下となる量であることが特に好ましい。なお、水スラリー中においては、水不溶性無機結合剤の含有量は、5〜30質量%であることが好ましく、10〜27質量%であることが更に好ましく、15〜25質量%であることが特に好ましい。
【0024】
(水溶性アルカリ剤)
本願における「水溶性アルカリ剤」とは、25℃において水1Lへの溶解量が100g以上のアルカリ剤である。水溶性アルカリ剤としては、例えば、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩及びそれらの水和物、アンモニア塩等が挙げられる。具体的には、水溶性アルカリ剤としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、炭酸アンモニウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウムカリウム、炭酸カルバミン酸水素アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸セシウム等が挙げられる。これらのうち、溶解度が高いという観点から、アルカリ金属の水酸化物やその塩類である水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が好ましい。また、水スラリー中で低粘度化に好適な電荷密度分布を生じるという観点からは、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムが好ましく、汎用性や経済性の観点からは、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリムが好ましい。以上の諸観点から、最も好ましい水溶性アルカリ剤は水酸化ナトリウムである。水溶性アルカリ剤は、単一種で構成されていてもよく、また、複数種で構成されていてもよい。
【0025】
水溶性アルカリ剤の含有量は、水スラリーを低粘度化する効果を高める観点から、水スラリー1kgに対し60mmol以上であることが好ましく、80mmol以上であることが更に好ましく、100mmol以上であることが特に好ましく、一方、経済性や安全性の観点から、500mmol以下であることが好ましく、400mmol以下であることが更に好ましく、300mmol以下であることが特に好ましい。
【0026】
(その他の成分)
水スラリーには、上記の他に、製造される歯磨用顆粒の崩壊性及び歯垢除去性の観点から、水不溶性繊維を含有させてもよい。
【0027】
水不溶性繊維は水不溶性食物繊維であることが好ましい。かかる水不溶性食物繊維としては、例えば、セルロース、水不溶性ヘミセルロース、リグニン、キチン、キトサン等が挙げられる。これらのうち製造される歯磨用顆粒の崩壊性、歯垢及び着色汚れ除去性が優れるという観点からセルロースが特に好ましい。セルロースは、パルプ等を原料として粉末状の乾燥品として精製されたセルロースの他、加工処理された結晶構造が認められる微結晶粉末セルロース等であってもよい。また、その他の植物を原料とする精製された水不溶性食物繊維としては、例えば、ビートファイバ、コーンファイバ、アップルファイバ等が挙げられる。これらはセルロース、水不溶性ヘミセルロース、リグニン等からなる。
【0028】
水不溶性繊維の体積平均粒子径は、製造される歯磨用顆粒の清掃性の観点から、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることが更に好ましく、20μm以上であることが特に好ましく、一方、製造される歯磨用顆粒の平均粒子径や水不溶性無機粉末の体積平均粒子径とのバランスの観点から、200μm以下であることが好ましく、100μm以下であることが更に好ましく、50μm以下であることが特に好ましい。水不溶性繊維の体積平均粒子径は、例えば、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所社製 LA−920等)で測定される。
【0029】
水不溶性繊維は、製造される歯磨用顆粒の崩壊性、歯垢及び着色汚れ除去性が優れるという観点から、歯磨用顆粒中水不溶性繊維の含有量が1質量%以上となる量であることが好ましく、2質量%以上となる量であることが更に好ましく、3質量%以上となる量であることが特に好ましく、一方、水スラリーの適正な粘度が得られ、また、生産性が優れるという観点から、歯磨用顆粒中の水不溶性繊維の含有量が40質量%以下となる量であることが好ましく、30質量%以下となる量であることが更に好ましく、20質量%以下となる量であることが特に好ましい。なお、水スラリー中においては、水不溶性繊維の含有量は、0.4〜30質量%であることが好ましく、0.9〜27質量%であることが更に好ましく、1.5〜10質量%であることが特に好ましい。
【0030】
水スラリーには、歯磨用顆粒の形成、強度、及び崩壊性を阻害しない範囲で、酸化チタン、群青等の着色剤を含有させてもよく、これにより、製造される歯磨用顆粒に着色剤による審美的効果を付加することができる。水スラリー中における着色剤の含有量は、歯磨用顆粒中の着色剤の含有量が0.01〜10質量%となる量であることが好ましく、0.1〜5質量%となる量であることが特に好ましい。
【0031】
(溶媒)
溶媒は、基本的には水であるが、歯磨用顆粒の製造を阻害しない範囲で有機溶剤を含有してもよい。
【0032】
(水スラリーの構成)
水スラリーの固形分濃度は、ハンドリング性が良好となって、また、製造される歯磨用顆粒の微粒化が容易になるという観点から、65質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることが更に好ましく、55質量%以下であることが特に好ましく、一方、生産性が優れ、また、製造される歯磨用顆粒に適正な崩壊強度を得ることができるという観点から、40質量%以上であることが好ましく、45質量%以上であることが更に好ましく、50質量%以上であることが特に好ましい。水スラリーの固形分濃度は、水スラリー2gを電気乾燥機内の105℃の雰囲気下で1時間乾燥させた後の乾燥残量から算出される。
【0033】
水スラリーの粘度は、水スラリーの取扱い性が優れ、また、製造される歯磨用顆粒の微粒化が容易になるという観点から、1000mPa・s以下であることが好ましく、500mPa・s以下であることが更に好ましく、250mPa・s以下であることが特に好ましく、一方、生産性が優れ、また、製造される歯磨用顆粒に適正な崩壊強度を得ることができるという観点から、30mPa・s以上であることが好ましく、50mPa・s以上であることが更に好ましく、80mPa・s以上であることが特に好ましい。水スラリーの粘度は、B型粘度計(測定時間1分、No.2ローター(500mPa・s以下の場合)、No.3ローター(500〜2000mPa・sの場合)、ローター回転数60r/min)を用いて測定される。なお、スラリーの粘度は、水溶性アルカリ剤の含有量の他に、溶媒による希釈によっても調整が可能である。
【0034】
水スラリーのpHは、水溶性アルカリ剤による低粘度化効果を高める観点から、8.0以上であり、8.5以上であることが更に好ましく、9.0以上であることが特に好ましく、一方、水スラリーの安定性の観点から、11.0以下であり、10.5以下であることが更に好ましく、10.0以下であることが特に好ましい。水スラリーのpHは、pHメーター(例えば、堀場製作所製 pHメーターD−50シリーズ)を用いて測定される。
【0035】
(スラリーの調整操作)
(A)工程における水スラリーの混合調整は公知の方法で行うことができ、また、バッチ式、連続式、セミバッチ式の何れであってもよい。
【0036】
水スラリーの混合調整に用いる攪拌翼としては、十分な混合がなされれば特に制限はないが、例えば、プロペラ翼、アンカー翼、パドル翼、タービン翼、ディスパー翼等が挙げられる。これらのうち比較的高速回転させるタービン翼、ディスパー翼が好ましい。
【0037】
水スラリーの混合調整温度は、水スラリーを低粘度化させる観点から、5℃以上とすることが好ましく、15℃以上とすることが更に好ましく、20℃以上とすることが特に好ましく、一方、エネルギー効率を高める観点から、40℃以下とすることが好ましく、35℃以下とすることが更に好ましく、30以下とすることが特に好ましい。
【0038】
水スラリーの混合調整時間は、特に制限はないが、固形分濃度や粘度がほぼ定常になるという観点から、0.2時間以上とすることが好ましく、1時間以上とすることが更に好ましく、3時間以上とすることが特に好ましく、一方、生産性が優れるという観点から、10時間以下とすることが好ましく、8時間以下とすることが更に好ましく、5時間以下とすることが特に好ましい。なお、連続式の場合の混合時間は混合器内での平均滞留時間を意味する。
【0039】
水溶性アルカリ剤の添加は、固体状態で行ってもよく、また、予め水に溶解させた水溶液の状態で行ってもよい。保管、計量、添加操作が容易であるという観点からは、後者が好ましい。
【0040】
水溶性アルカリ剤の添加は、十分に均一な混合がなされる状態であれば連続的に行うことが好ましく、また、そうでない場合には間欠的に行うことが好ましい。
【0041】
水溶性アルカリ剤を添加する順序は、水不溶性無機粉末や水不溶性無機結合剤の特性に応じて適宜決定することが望ましい。従って、溶媒に水不溶性無機粉末や水不溶性無機結合剤を添加した後に水溶性アルカリ剤を添加してもよく、また、溶媒に水不溶性無機粉末や水不溶性無機結合剤を添加する前に水溶性アルカリ剤を添加してもよい。
【0042】
[(B)工程]
(B)工程では、(A)工程で調整した水スラリーを噴霧乾燥して歯磨用顆粒を得る。
【0043】
(噴霧乾燥操作)
(B)工程における噴霧乾燥は公知の方法で行うことができる。その方法としては、熱効率及び生産性が優れ、また、製造される歯磨用顆粒に適正な崩壊強度及び真球度が得られるという観点から、気流式噴霧乾燥機を用いた方法がより好ましい。気流式噴霧乾燥機を用いた方法は、気流式噴霧乾燥塔において、乾燥塔上部の微細化装置から水スラリーを噴霧して微粒化し、それに対して熱風を供給して両者を接触させ、そして、乾燥塔底部から噴霧乾燥した歯磨用顆粒を回収する方法である。
【0044】
気流式噴霧乾燥機における微粒化装置としては、2流体ノズル、3流体ノズル、ディスクアトマイザー、及び加圧噴霧ノズルのうちいずれであってもよい。これらのうち、設備の簡素化が図れ、また、生産性が優れ、さらに、製造される歯磨用顆粒に適正な崩壊強度及び粒度が得られるという観点から、2流体ノズル、加圧噴霧ノズルが好ましい。特に、粒度の揃った歯磨用顆粒を得ることができるという観点からは、加圧噴霧ノズルが好ましい。また、気流式噴霧乾燥塔としては、乾燥塔下部から熱風を供給する並流方式のもの、及び乾燥塔上部から熱風を供給する向流方式のもののうちいずれであってもよい。
【0045】
気流式噴霧乾燥塔内に供給する熱風としては、例えば、窒素ガスやアルゴン等の不活性ガスが挙げられるが、空気であってもよい。熱風の温度は、乾燥性が優れるという観点から、100℃以上とすることが好ましく、120℃以上とすることが更に好ましく、140℃以上とすることが特に好ましく、一方、熱効率が優れ、また、着色や燃焼を防止する観点から、250℃以下とすることが好ましく、230℃以下とすることが更に好ましく、210℃以下とすることが特に好ましい。
【0046】
(歯磨用顆粒)
得られる歯磨用顆粒は、多数の水不溶性無機粉末を含む凝集粒子であって、水不溶性無機結合剤により外殻が形成されて強度が高められた構造を有する。この外殻形成メカニズムについて、水スラリーが噴霧された時点では、水不溶性無機粉末と水不溶性無機結合剤とが一体となった液滴が形成されるが、その液滴が乾燥する際に、水分の蒸発と共に液滴が小さくなり、それと同時に水不溶性無機結合剤が液滴内部から液滴表面に移動して集積し、そして、外殻を形成するものと考えられる。このようにして得られた歯磨用顆粒は、水不溶性無機結合剤が内部よりも表面近傍に多く存在して外殻を形成した構造を構成し、その外殻により適度な崩壊強度を有することとなる。
【0047】
歯磨用顆粒の水分率は、保存安定性の観点から、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることが更に好ましく、5質量%以下であることが特に好ましく、一方、生産性の観点から、1.0質量%以上であることが好ましく、1.5質量%以上であることが更に好ましく、2.0質量%以上であることが特に好ましい。歯磨用顆粒の水分率は、電気乾燥機を用い、105℃、2時間の乾燥減量により測定される値である。
【0048】
歯磨用顆粒の平均粒子径は、口腔内で、触知でき、また、効果感を認識でき、さらに、崩壊することを要するという観点から、500μm以下であることが好ましく、400μm以下であることが更に好ましく、300μm以下であることが特に好ましく、一方、歯ブラシによるブラッシング圧により歯の表面や歯と歯のすきまの歯垢や着色汚れの除去が可能であるという観点から、30μm以上であることが好ましく、50μm以上であることが更に好ましく、75μm以上であることが特に好ましい。歯磨用顆粒の平均粒子径は、JIS K8801に規定された標準ふるいを用いたふるい分け法から求められた篩下重量分布についての50%平均径として求められる。
【0049】
歯磨用顆粒の崩壊強度は、口腔内で、触知でき、また、効果感を認識できるにも関わらず、異物感をほとんど感ずることなく、さらに、歯を傷つけることなく歯垢や着色汚れの除去が可能であるという観点から、9.8〜196.1mNであることが好ましく、29.4〜147.1mNであることが更に好ましく、49.0〜117.7mNであるのが特に好ましい。歯磨用顆粒の崩壊強度は、微小圧縮試験機(例えば、島津製作所社製 MCTM−500)を用いて、所定の粒子径(例えば180〜200μm)の歯磨用顆粒10個の崩壊強度をそれぞれ測定し、得られた10点の崩壊強度を平均したものである。なお、歯磨用顆粒の崩壊強度は、練り歯磨剤に配合された場合(湿潤状態)においても同様の強度を有することが好ましい。
【0050】
歯磨用顆粒の平均粒子径及び崩壊強度は、水不溶性無機結合剤の種類、含有量、及び噴霧乾燥条件などの製造条件等により適宜設計することができる。また、歯磨用顆粒として適さない粗粒ものや微粉などは適宜篩分けにより除去してもよい。
【0051】
以上のようにして製造された歯磨用顆粒は、歯磨剤に含められる配合要素として用いられる。
【実施例】
【0052】
[試験評価1]
以下の実施例1〜4及び比較例1〜3の顆粒の製造を行った。それぞれの内容については表1〜3にも示す。
【0053】
【表1】

【0054】
(実施例1)
容量180Lの配合槽にコロイダルシリカ(商品名:スノーテックスS、日産化学工業株式会社製、有効分:30.5%、粒子径 カタログ値 8〜11nm)75.7kgを投入し、それをディスパー翼(型式:HS−P3、アシザワ・ニロアトマイザー株式会社製)で攪拌しつつ、無水ケイ酸1(商品名:Sorbosil AC77、INEOS Silicas Indonesia社製、体積平均粒子径9.5μm、吸油量129ml/100g、RDA値125)38.3kgを投入した。コロイダルシリカの粒子径/無水ケイ酸1の体積平均粒子径は1/1188〜1/864である。
【0055】
次に、そこに48質量%に調整した水酸化ナトリム水溶液2.76kgを間欠的に滴下し、更に、セルロース末(商品名:KCフロック W−400G、日本製紙ケミカル株式会社製、体積平均粒子径41.7μm)3.4kgを投入し、液温を35±5℃に保って攪拌を3時間行うことにより水スラリーを得た((A)工程)。
【0056】
得られた水スラリーの固形分の組成は、無水ケイ酸1が58質量%、コロイダルシリカが35質量%、セルロース末が5質量%、及び水酸化ナトリウムが2質量%である。また、水酸化ナトリウムの添加量は水スラリー1kgに対して276mmolである。
【0057】
得られた水スラリーについて、pHメーター(堀場製作所製 pHメーターD−50シリーズ)を用いてpHを測定したところ9.8であった。水スラリー2gを電気乾燥機内の105℃の雰囲気下で1時間乾燥させた後の乾燥残量から算出した固形分濃度は55質量%であった。B型粘度計(測定時間1分、No.2ローター、ローター回転数60r/min)を用いて粘度を測定したところ155mPa・sであった。
【0058】
そして、気流式噴霧乾燥機を用い、気流式噴霧乾燥塔において、乾燥塔上部の微細化装置のノズル(1/4KD03S303型 (株)いけうち社製)から水スラリーを噴霧して微粒化し、それに対して並流方式で190℃の熱風(空気)を供給して両者を接触させ、そして、乾燥塔底部から噴霧乾燥した顆粒を回収した((B)工程)。水スラリーは取り扱いの容易なものであり、良好に顆粒の製造を行うことができた。
【0059】
得られた顆粒について、105℃、2時間の乾燥減量により水分率を測定したところ3.7質量%であった。JIS K8801に規定された標準ふるいを用いたふるい分け法から求められた篩下重量分布についての50%平均径(平均粒子径)は251μmであった。微小圧縮試験機(島津製作所社製 MCTM−500)を用いて、10個の顆粒の崩壊強度を測定したところ、崩壊強度は61.8mNであった。
【0060】
なお、以下、各測定項目の測定方法は、特に断らない限り、本実施例1の方法と同一である。
【0061】
(実施例2)
容量180Lの配合槽にコロイダルシリカ(商品名:スノーテックスS、日産化学工業株式会社製)76.2kgを投入し、それをディスパー翼(型式:HS−P3、アシザワ・ニロアトマイザー株式会社製)で攪拌しつつ、無水ケイ酸1(商品名:Sorbosil AC77、INEOS Silicas Indonesia社製)47.0kgを投入した。
【0062】
次に、そこに48質量%に調整した水酸化ナトリム水溶液1.44kgを間欠的に滴下し、更に、セルロース末(商品名:KCフロック W−400G、日本製紙ケミカル株式会社製)3.4kgを投入し、液温を35±5℃に保って攪拌を3時間行うことにより水スラリーを得た((A)工程)。
【0063】
得られた水スラリーの固形分の組成は、無水ケイ酸1が59質量%、コロイダルシリカが35質量%、セルロース末が5質量%、及び水酸化ナトリウムが1質量%である。また、水酸化ナトリウムの添加量は水スラリー1kgに対して135mmolである。
【0064】
得られた水スラリーについて、pHを測定したところ8.8であった。固形分濃度は55質量%であった。粘度を測定したところ218mPa・sであった。
【0065】
そして、気流式噴霧乾燥機を用い、気流式噴霧乾燥塔において、乾燥塔上部の微細化装置のノズル(TN−SSTC6型 スプレーイングシステムスジャパン製)から水スラリーを噴霧して微粒化し、それに対して並流方式で190℃の熱風(空気)を供給して両者を接触させ、そして、乾燥塔底部から噴霧乾燥した顆粒を回収した((B)工程)。水スラリーは取り扱いの容易なものであり、良好に顆粒の製造を行うことができた。
【0066】
得られた顆粒について、水分率を測定したところ4.5質量%であった。50%平均径(平均粒子径)は248μmであった。崩壊強度は55.9mNであった。
【0067】
(比較例1)
容量180Lの配合槽にコロイダルシリカ(商品名:スノーテックスS、日産化学工業株式会社製)76.6kgを投入し、それをディスパー翼(型式:HS−P3、アシザワ・ニロアトマイザー株式会社製)で攪拌しつつ、無水ケイ酸1(商品名:Sorbosil AC77、INEOS Silicas Indonesia社製)40.1kgを投入した。
【0068】
次に、セルロース末(商品名:KCフロック W−400G、日本製紙ケミカル株式会社製)3.4kgを投入し、液温を35±5℃に保って攪拌を3時間行うことにより水スラリーを得た。
【0069】
得られた水スラリーの固形分の組成は、無水ケイ酸1が60質量%、コロイダルシリカが35質量%、及びセルロース末が5質量%である。
【0070】
得られた水スラリーについて、pHを測定したところ7.6であった。固形分濃度は56質量%であった。B型粘度計(測定時間1分、No.3ローター、ローター回転数60r/min)を用いて粘度を測定したが2000mPa・sより高く、測定不可能であった。
【0071】
そして、気流式噴霧乾燥機を用いた噴霧乾燥法による顆粒の製造を試みたが、水スラリーの流動性に乏しく、そのため配管移送及びスプレー噴霧が困難を極め、噴霧乾燥することができなかった。
【0072】
【表2】

【0073】
(実施例3)
容量180Lの配合槽にイオン交換水6.7kgを投入し、次いで、コロイダルシリカ(商品名:スノーテックスS、日産化学工業株式会社製)64.9kgを投入し、それをディスパー翼(型式:HS−P3、アシザワ・ニロアトマイザー株式会社製)で攪拌しつつ、無水ケイ酸1(商品名:Sorbosil AC77、INEOS Silicas Indonesia社製)20.5kg、及び無水ケイ酸2(商品名:Zeodent 124、HUBER社製、体積平均粒子径8.6μm、吸油量70ml/100g、RDA値150)20.5kgを投入した。コロイダルシリカの粒子径/無水ケイ酸2の体積平均粒子径は1/1075〜1/782である。
【0074】
次に、そこに48質量%に調整した水酸化ナトリム水溶液4.08kgを間欠的に滴下し、更に、セルロース末(商品名:KCフロック W−400G、日本製紙ケミカル株式会社製)3.4kgを投入し、液温を35±5℃に保って攪拌を3時間行うことにより水スラリーを得た((A)工程)。
【0075】
得られた水スラリーの固形分の組成は、無水ケイ酸1が31質量%、無水ケイ酸2が31質量%、コロイダルシリカが30質量%、セルロース末が5質量%、及び水酸化ナトリウムが3質量%である。また、水酸化ナトリウムの添加量は水スラリー1kgに対して408mmolである。
【0076】
得られた水スラリーについて、pHを測定したところ10.6であった。固形分濃度は55質量%であった。粘度を測定したところ265mPa・sであった。
【0077】
そして、気流式噴霧乾燥機を用い、気流式噴霧乾燥塔において、乾燥塔上部の微細化装置のノズル(1/4KD03S303型 (株)いけうち社製)から水スラリーを噴霧して微粒化し、それに対して並流方式で190℃の熱風(空気)を供給して両者を接触させ、そして、乾燥塔底部から噴霧乾燥した顆粒を回収した((B)工程)。水スラリーは取り扱いの容易なものであり、良好に顆粒の製造を行うことができた。
【0078】
得られた顆粒について、水分率を測定したところ3.7質量%であった。50%平均径(平均粒子径)は251μmであった。崩壊強度は83.4mNであった。
【0079】
(比較例2)
容量180Lの配合槽にイオン交換水19.0kgを投入し、次いで、コロイダルシリカ(商品名:スノーテックスS、日産化学工業株式会社製)59.0kgを投入し、それをディスパー翼(型式:HS−P3、アシザワ・ニロアトマイザー株式会社製)で攪拌しつつ、無水ケイ酸1(商品名:Sorbosil AC77、INEOS Silicas Indonesia社製)19.6kg、及び無水ケイ酸2(商品名:Zeodent 124、HUBER社製)19.6kgを投入した。
【0080】
次に、セルロース末(商品名:KCフロック W−400G、日本製紙ケミカル株式会社製)3.0kgを投入し、液温を35±5℃に保って攪拌を3時間行うことにより水スラリーを得た。
【0081】
得られた水スラリーの固形分の組成は、無水ケイ酸1が32.5質量%、無水ケイ酸2が32.5質量%、コロイダルシリカが30質量%、及びセルロース末が5質量%である。
【0082】
得られた水スラリーについて、pHを測定したところ7.7であった。固形分濃度は50質量%であった。粘度を測定したところ130mPa・sであった。
【0083】
そして、気流式噴霧乾燥機を用い、気流式噴霧乾燥塔において、乾燥塔上部の微細化装置のノズル(1/4KD03S303型 (株)いけうち社製)から水スラリー噴霧して微粒化し、それに対して並流方式で190℃の熱風(空気)を供給して両者を接触させ、そして、乾燥塔底部から噴霧乾燥した顆粒を回収した。水スラリーは取り扱いの容易なものであり、良好に顆粒の製造を行うことができた。但し、実施例3と比べると水スラリーの水分が10%多く、多大な乾燥エネルギーを要した。
【0084】
得られた顆粒について、水分率を測定したところ2.8質量%であった。50%平均径(平均粒子径)は202μmであった。崩壊強度は47.1mNであった。このような低い崩壊強度では歯磨用顆粒として不適である。
【0085】
【表3】

【0086】
(実施例4)
容量2Lのステンレス容器にイオン交換水510.1gを投入し、次いで、コロイダルシリカ(商品名:スノーテックスS、日産化学工業株式会社製)442.6gを投入し、それを6枚タービン翼(φ60mm、500r/min)で攪拌しつつ、無水ケイ酸2(商品名:Zeodent 124、HUBER社製)533.3gを投入した。
【0087】
次に、そこに48質量%に調整した水酸化ナトリム水溶液14.1gを連続的に滴下し、液温を35±5℃に保って攪拌を60分間行うことにより水スラリーを得た((A)工程)。
【0088】
得られた水スラリーの固形分の組成は、無水ケイ酸2が79質量%、コロイダルシリカが20質量%、及び水酸化ナトリウムが1質量%である。また、水酸化ナトリウムの添加量は水スラリー1kgに対して113mmolである。
【0089】
得られた水スラリーについて、pHを測定したところ9.3であった。固形分濃度は45質量%であった。粘度を測定したところ143mPa・sであった。得られた水スラリーは取り扱いの容易なものであった。
【0090】
(比較例3)
容量2Lのステンレス容器にイオン交換水517.4gを投入し、次いで、コロイダルシリカ(商品名:スノーテックスS、日産化学工業株式会社製)442.6gを投入し、それを6枚タービン翼(φ60mm、500r/min)で攪拌しつつ、無水ケイ酸2(商品名:Zeodent 124、HUBER社製)540.0gを投入し、液温を35±5℃に保って攪拌を60分間行うことにより水スラリーを得た。
【0091】
得られた水スラリーの固形分の組成は、無水ケイ酸2が80質量%、及びコロイダルシリカが20質量%である。
【0092】
得られた水スラリーについて、pHを測定したところ7.5であった。固形分濃度は45質量%であった。粘度を測定したところ417mPa・sであった。得られた水スラリーは粘度が高く、取扱いに労力を要した。
【0093】
[試験評価2]
実施例1〜3で得られた顆粒のそれぞれを歯磨用顆粒として、表4に示す組成の歯磨剤を配合した。具体的には、配合は、歯磨用顆粒15.0質量%、ポリエチレングリコール10.5質量%、ソルビット液30.0質量%、イオタカラギーナン2.0質量%、ラウリル硫酸ナトリウム1.2質量%、サッカリンナトリウム0.1質量%、パラベン0.1質量%、香料0.8質量%、及び水を残量とした。そして、香料の安定化のために各歯磨剤を製造後1週間放置した。
【0094】
【表4】

【0095】
その後、パネラー(当該技術分野に5年以上従事した研究員)により得られた各歯磨剤を評価したところ、実施例1〜3のいずれで得られた歯磨用顆粒を用いた歯磨剤についても良好な使用感と清掃効果が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明は、歯磨剤における審美的効果や清掃効果を補助的に高める歯磨用顆粒の製造方法について有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水不溶性無機粉末と水不溶性無機結合剤とを含有する歯磨用顆粒の製造方法であって、
水溶性アルカリ剤を含むpHが8.0以上11.0以下の水スラリーを調整する(A)工程と、
上記(A)工程で調整した水スラリーを噴霧乾燥する(B)工程と、
を含む、歯磨用顆粒の製造方法。
【請求項2】
上記水溶性アルカリ剤が水酸化ナトリウムである、請求項1に記載の歯磨用顆粒の製造方法。
【請求項3】
上記水不溶性無機粉末が無水ケイ酸である、請求項1又は2に記載の歯磨用顆粒の製造方法。
【請求項4】
上記水不溶性無機結合剤がコロイダルシリカである、請求項1〜3のいずれかに記載の歯磨用顆粒の製造方法。

【公開番号】特開2011−84530(P2011−84530A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−240047(P2009−240047)
【出願日】平成21年10月19日(2009.10.19)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】