説明

歯科治療用遮光器具、および歯科治療用照射装置

【課題】歯科治療用の光を遮光して目への負担を軽減し、かつ、大きな動作を伴わずに瞬時に視界を良好にして患部を確認できる歯科治療用遮光器具、および歯科治療用照射装置の提供。
【解決手段】光透過帯と遮光帯とが交互に配されているルーバー層の両側に、透明樹脂層が積層した遮光板10と、該遮光板10を光照射器30に装着する装着部材20とを備え、前記遮光板10は、前記光照射器30に対して回転自在であり、かつ、遮光板10と光照射器30との角度α1が可変とされていることを特徴とする歯科治療用遮光器具1、および該歯科治療用遮光器具1が光照射器30に装着された歯科治療用照射装置2。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科治療用遮光器具、および歯科治療用照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、齲蝕などの歯の治療では、齲蝕を削った部分に金属を詰めるのが主流であった。金属は、耐久性があり口腔内の環境に適してはいるものの、周囲の歯と比べ目立ってしまい、抵抗を感じることがあった。近年、歯の詰めものへの審美性や耐久性が要求されており、コンポジットレジンを用いた歯の修復が開発されている。
コンポジットレジンとは、光を当てると固まる歯の色をした硬化樹脂であり、多官能モノマーをベースとし、レジン(樹脂)中にジルコニアやシリカなどのフィラーを充填したものである。該コンポジットレジンを用いた修復術式は前歯から臼歯へと拡大し、大きな窩洞にも適用できるようになり、天然歯に近い審美修復が可能となった。また、粒径の異なるフィラーを数種類用いることにより、物理的強度も高めることができた。
【0003】
このような修復術式に用いられる歯科治療用の機器としては、発光ダイオードを照射し、かつ、口腔内での操作が容易な手持ち式の光照射器が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
また、中心部と外周部の光量が均一な状態で平行に光照射できる歯科治療用の平行光ヘッドも開発されている。
【0004】
ところで、光照射器には、光源として可視光線領域の青色発光ダイオードを用いる場合が多い。しかし、この光源から照射される光は非常に眩しいため、患部が見えにくくなり治療が困難となり、また目への負担も大きかった。
そこで、可視光線の光を吸収し目への負担を軽減できる、レーザー光吸収メガネや保護プレートなどの診療補助材が開発されている。これらの診療補助材は、青色の光を吸収し、かつ、目にも優しいことから、補色関係にあるオレンジ色からなる材質のものが多かった。
【特許文献1】特開2008−29850号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、オレンジ色の診療補助材は、口腔内の色が同化して見えるため充填物(レジン)と天然歯とが区別しづらく、特に出血した場合に患部が見えにくくなることがあった。そのため、光を患部に照射する際は上記メガネをかけたり、プレートを視界の中に収まるように移動させ、患部の様子を確認する際はメガネを外したり、プレートを視界の外へ移動させるといった大きな動作を必要とし、緻密な作業を行う医師へ負担がかかっていた。
【0006】
本発明は上記事情を鑑みてなされたもので、歯科治療用の光を遮光して目への負担を軽減し、かつ、大きな動作を伴わずに瞬時に視界を良好にして患部を確認できる歯科治療用遮光器具、および歯科治療用照射装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の歯科治療用遮光器具は、光透過帯と遮光帯とが交互に配されているルーバー層の両側に、透明樹脂層が積層した遮光板と、該遮光板を光照射器に装着する装着部材とを備え、前記遮光板は、前記光照射器に対して回転自在であり、かつ、遮光板と光照射器との角度が可変とされていることを特徴とする。
また、本発明の歯科治療用照射装置は、前記歯科治療用遮光器具が、光照射器に装着されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、歯科治療用の光を遮光することにより目への負担を軽減し、かつ、大きな動作を伴わずに瞬時に視界を良好にし、患部を確認できる歯科治療用遮光器具、および歯科治療用照射装置を提供できる。
また、本発明の歯科治療用照射装置は、医師本人の単独操作で遮光したり遮光を解除したりできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図を用いて本発明について詳細に説明する。
[歯科治療用遮光器具]
図1は本発明の歯科治療用遮光器具(以下、「遮光器具」という場合がある。)の一例を示す斜視図であり、図2は図1のA−A’線に沿う断面図であり、図3は図1に示す遮光器具が光照射器に装着された状態(すなわち、本発明の歯科治療用照射装置)の一例を示す斜視図である。また、図4は本発明の歯科治療用照射装置(以下、「照射装置」という場合がある。)の他の例を示す斜視図である。
【0010】
図1、2に示すように、本発明の遮光器具1は、遮光板10と、該遮光板10を光照射器に装着する装着部材20とを備える。
ここで、遮光板10について具体的に説明する。
【0011】
<遮光板>
図6は、本発明の遮光器具1を構成する遮光板10の一実施形態を分解して示した分解斜視図である。なお、図面は遮光板10の一部を拡大して模式的に示している。
本実施形態の遮光板10は、光透過帯11aと遮光帯11bとを交互に配してなるルーバー層11の一方の面上に、第一の透明樹脂層12が積層一体化されており、他方の面上に、第二の透明樹脂層13が積層一体化されている。本発明においては、ルーバー層11は1層で十分であるが、例えば図6に示すように、前記ルーバー層(第一のルーバー層)11上に第二のルーバー層14が積層していてもよい。
以下、ルーバー層11の厚さ方向をZ方向、Z方向に垂直な面内における互いに垂直な二方向をそれぞれX方向、Y方向とする。
X―Y平面(Z方向に垂直な面)内における、遮光板10の全体の平面形状は、例えば矩形であるが、適用する遮光器具の形状に応じて適宜変更できる。
【0012】
(ルーバー層(第一のルーバー層))
ルーバー層11を構成している光透過帯11aおよび遮光帯11bはいずれもX方向に延びる帯状であり、Y方向において複数の光透過帯11aと複数の遮光帯11bとが交互に配されている。複数の光透過帯11aのY方向の幅は均一であり、かつX方向において一定である。また複数の遮光帯11bのY方向の幅も均一であり、かつX方向において一定である。
ルーバー層11において、該ルーバー層11の表面と遮光帯11bとのなす角度α2は略90°(85°より大きく95°より小さい)であり、90°であることが好ましい。
【0013】
光透過帯11aの材料としては、透明性が高い樹脂が用いられる。具体的には、光透過帯11aのみに対して、図中Z方向に光を透過させたときの光線透過率が75%以上、好ましくは85%以上であるような、高い透明性を有する樹脂材料が好ましい。例えば、透明性が高い熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂が用いられ、具体例としては、セルロース系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、シリコーン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。中でもシリコーン樹脂が好ましく、特に耐熱性の点でシリコーンゴムが特に好ましい。
【0014】
なお、本発明における「光線透過率」の値は、光源としてJIS Z 8720に規定されるD65を用い、光源から出射された検査光の強度を受光センサーで測定する装置において、前記検査光の光路上に被測定物が無い状態での受光センサーの出力値をA、検査光の光路上に被測定物をセットし、被測定物を透過した透過光が受光センサーで受光される状態での出力値をBとするとき、光線透過率=(B/A)×100(単位;%)で求められる値とする。
【0015】
遮光帯11bの材料としては、光透過帯11aの材料として上記に挙げた樹脂を基材とし、これに顔料や染料等の着色剤を添加してなる着色樹脂が好適に用いられる。遮光帯11bの色調は、遮光帯11bにおける好ましい遮光性が得られればよく、例えば黒、赤、白、黄、緑、青、水色等とすることができる。遮光帯11bの色調は、着色剤の種類および添加量によって調整できる。具体的には、遮光帯11bのみに対して、その幅方向(図中ではY方向)に光を透過させたときの光線透過率が40%以下、好ましくは10%以下となるような遮光性を有することが好ましい。また、遮光帯11bの色調は、ルーバー層11を見たときに認識される色調を構成するので装飾性も考慮して設計することが好ましい。
【0016】
着色剤の具体例としては、カーボンブラック、ベンカラ、酸化鉄、酸化チタン、黄色酸化鉄、ジスアゾイエロー、フタロシアニンブルー等の一般的な有機顔料あるいは無機顔料が挙げられる。着色剤は1種でもよく、2種以上を用いてもよい。また黒色顔料を用いない場合は、良好な遮光性を得るために白色顔料を併用することが好ましい。
ルーバー層11において、光透過帯11aをなしている樹脂材料と、遮光帯11bの基材としての樹脂材料とは同じであってもよく、異なっていてもよいが、光透過帯11aと遮光帯11bとの接着性の点からは両者が同じであることが好ましい。
【0017】
図7は、ルーバー層11をY―Z平面で切断した断面図である。ルーバー層11において、Y―Z平面(図6における紙面)内における視野角θは、遮光板10を遮光器具1に適用した際の左右方向における視野角に相当し、光透過帯11aのZ方向における厚さおよびY方向における幅によって決まる。また、Y方向における光透過帯11aの幅と遮光帯11bの幅の比は、Z方向に平行な光線の透過率に影響する。
具体的に、ルーバー層11における前記視野角θは30〜150°の範囲が好ましく、より好ましくは60〜120°である。
光透過帯11aのZ方向における厚さTは、0.1〜2.5mm程度が好ましく、0.14〜0.4mm程度がより好ましい。
光透過帯11aのY方向における幅W1は、50μm〜0.3mmの範囲内が好ましく、75μm〜0.2mmの範囲内がより好ましい。
遮光帯11bのY方向における幅W2は、5μm〜50μmの範囲内が好ましく、15μm〜30μmの範囲内がより好ましい。
遮光帯11bのZ方向における厚さTは、光透過帯11aの厚さTと同じである。
【0018】
かかる構成のルーバー層11は、以下のようにして製造することができる。まず、光透過帯11aの構成材料からなり厚さが上記W1である第1のシートの複数枚と、遮光帯11bの構成材料からなり厚さが上記W2である第2のシートの複数枚とを交互に積層し、加熱および加圧してこれら複数のシートが一体化してなるブロック体を形成する。
次いで、該ブロック体をシート表面に垂直な切断面でスライスすることによりルーバー層10が得られる。スライスする際の厚さ(スライス幅)は上記Tである。
【0019】
(第二のルーバー層)
第二のルーバー層14は、光透過帯14aと遮光帯14bとがX方向において交互に配されている。
前記ルーバー層(第一のルーバー層)11上に、第二のルーバー層14を積層させる場合、これら2層のルーバー層に配されている遮光耐の長さ方向が互いに直交するように積層するのが好ましい。すなわち、ルーバー層11における光透過帯11aおよび遮光帯11bはいずれもX方向に延びる帯状であれば、第二のルーバー層14における光透過帯14aおよび遮光帯14bはいずれもY方向に延びる帯状であることが好ましい。なお、第二のルーバー層14において、該第二のルーバー層14の表面と遮光帯14bとのなす角度α3は略90°(85°より大きく95°より小さい)であり、90°であることが好ましい。
【0020】
第二のルーバー層14における光透過帯14aおよび遮光帯14bの材料については、前記ルーバー層11における光透過帯11aおよび遮光帯11bと同様である。
また、第二のルーバー層14における光透過帯14aと遮光帯14bの幅は、ルーバー層11における光透過帯11aの幅W1と遮光帯11bの幅W2とそれぞれ同様である。
さらに、第二のルーバー層14のZ方向における厚さは、ルーバー層11のZ方向における厚さTと同じ範囲が好ましく、ルーバー層11の厚さT1と第二のルーバー層14の厚さとが同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0021】
かかる構成の第二のルーバー層14の製造は、前記ルーバー層11の製造に用いたのと同様のブロック体(シート積層物)を用いることができる。
【0022】
ルーバー層11と第二のルーバー層14とを一体化させる方法は、特に限定されず、公知の手法を適宜用いることができる。
例えば、硬化後に透明性を有する接着剤を用いて両者を接着する方法が好ましい。かかる接着剤としては、硬化後に透明性を有する熱硬化型接着剤、多液反応型接着剤、紫外線硬化型接着剤等が挙げられ、具体的にはエポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、メラミン系接着剤、ポリエステル系接着剤、シリコーン系接着剤等を好適に用いることができる。
なお、本実施形態におけるルーバー層11と第二のルーバー層14の積層順序は逆にしても構わない。
【0023】
また、本実施形態においてルーバー層11の光透過帯11aおよび遮光帯11bはX方向に平行に延びており、第二のルーバー層14の光透過帯14aおよび遮光帯14bはY方向に平行に延びている。すなわちルーバー層11の遮光帯11bの長さ方向と、第二のルーバー層14の遮光帯14bの長さ方向とが成す角度は90°となっているが、この角度は必ずしも90°でなくてもよく90°±15°(75〜105°)が許容範囲である。特に好ましいのは90°である。
つまり、本発明における「2層のルーバー層に配されている遮光帯の長さ方向が互いに直交する」とは、ルーバー層11の遮光帯1abの長さ方向と第二のルーバー層14の遮光帯14bの長さ方向との角度が90°±15°(75〜105°)の範囲であることを意味しており、特に好ましい角度は90°である。
【0024】
(第一、第二の透明樹脂層)
第一の透明樹脂層12と第二の透明樹脂層13は上記ルーバー層の保護の役割を果たしている。これら透明樹脂層の材料としては、ルーバー層11の透過帯11aの材料として上記に挙げた樹脂を用いることができる。透明性の点からは、第一の透明樹脂層12と第二の透明樹脂層13各々の単体に対して、図中、Z方向に光を透過させたときの光線透過率が75%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましい。
第一の透明樹脂層12と第二の透明樹脂層13の材料は、特に、透明性と耐熱性の点からポリカーボネート樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン系樹脂(特に、シクロオレフィンポリマー)、セルロース系樹脂が好ましく、中でもポリカーボネート、およびポリエステル樹脂がより好ましい。
【0025】
第一の透明樹脂層12と第二の透明樹脂層13のZ方向における厚さは、薄すぎると十分な保護機能が得られず、厚いほど光線透過率が低下するので、0.01〜0.5mm程度が好ましく、0.1〜0.2mm程度がより好ましい。
なお、第一の透明樹脂層12と第二の透明樹脂層13とは同じ材料からなっていてもよく、互いに異なる材料からなっていてもよい。また両者の厚さは同じであっても異なっていてもよい。
【0026】
ルーバー層11と第二のルーバー層12が一体化した層と、第一の透明樹脂層12と第二の透明樹脂層13とを各々一体化させる方法は特に限定されず、公知の手法を適宜用いることができる。
例えば、ルーバー層11と第二のルーバー層12が一体化した層の表面に接着剤を塗布し、第一の透明樹脂層12と第二の透明樹脂層13の材料からなるシートを貼り合わせた後、接着剤を硬化させる方法でもよい。このとき用いる接着剤は硬化後における光線透過率が高いものが好ましい。具体的には、硬化後の接着剤層の単体における光線透過率が65%以上であるものが好ましく、80%以上がより好ましい。
かかる接着剤としては、硬化後に透明性を有する、熱硬化型接着剤、多液反応型接着剤、紫外線硬化型接着剤等が挙げられ、具体的にはエポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、メラミン系接着剤、ポリエステル系接着剤、シリコーン系接着剤等を好適に用いることができる。
【0027】
遮光板10の全体における光線透過率は45%以上であることが好ましく、55%以上であることがより好ましい。該光線透過率の上限は高い方が好ましいが、本発明の機能を達成するためには80%程度が限界である。
なお、図1に示す遮光器具1における遮光板10の光線透過率は77%である。
【0028】
(その他)
遮光板10の一方の面上、または両面上には、アンチグレイ処理として反射防止剤を塗工してもよい。反射防止剤としては、例えば、フィラーを含有した樹脂インクが挙げられる。樹脂としては、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂などが挙げられ、中でもアクリル樹脂が好ましい。また、フィラーとしては、シリカ粉末(二酸化珪素粉末)、アクリル樹脂系のフィラーなどが挙げられ、中でもシリカ粉末が好ましい。フィラーの形状には、球状、粉状、フレーク状、相船状、不定形状などがあるが、本発明においては特に限定されない。アンチグレイ処理をすることにより、遮光器具1として使用する際に遮光板10上に室内灯などの映り込みを防止できるので望ましい。
また、遮光板10の一方の面上、または両面上には、意匠や広告を目的として、印刷を施してもよい。
【0029】
本発明においては図3に示すように、遮光板10は、光照射器30に対してB−B’方向に回転自在であり、かつ、遮光板10と光照射器30との角度α1が可変とされている。
【0030】
遮光板10と光照射器30との角度α1が可変となることで、該角度α1の大きさによって、光を遮光したり光の遮光を解除したりできる。具体的には、口腔M内に光照射器30から光を照射する際は、図7に示すルーバー層の視野角θから視界が外れるように角度α1を変化させるだけで、光を遮光することができる。また、光照射が終了した後は、視野角θ内に視界が収まるように再度角度α1を変化させるだけで、瞬時に口腔M内の患部を確認できるようになる。
このように、大きな動作を伴わずとも、角度α1を変化させるといった小さな動作のみで、光から目を保護して目の負担を軽減したり、視界を良好にしたりできる。
【0031】
ところで、歯の治療を行う場合、特に奥歯や上顎歯に患部がある場合、光照射器の先端31の向きを患部の位置に併せて変えて、患部に光を照射する。そのため、幹部の位置によっては角度α1を変化させても光が遮光されない場合もある。よって、光を照射する際は、例えば図6に示すルーバー層11の光透過帯11aおよび遮光帯11bの長さ方向(X方向)と視線の方向とが直行するように、顔の向きを変える必要がある。しかし、本発明の遮光器具であれば、遮光板が光照射器に対して回転自在であるので、遮光板を回転させるだけでX方向と視線の方向とが直行するようになる。従って、顔の向きを変える必要がなく、顔の向きを固定していても、小さな動作で光を遮光して目を保護したり、視界を良好にしたりできるので、医師の負担を軽減できる。
【0032】
遮光板の形状としては、図1等に示す円形に限らず、多角形などでもよい。遮光板が多角形であれば、治療の合間などで照射装置を台上に置く際に安定するので、作業しやすくなる。安定性および遮光範囲を考慮すると、6角形、7角形、8角形が好ましい。
また、図2に示すように、遮光板10には、穿孔15が設けられており、その穿孔15を光照射器の先端31が貫通することで遮光板10が光照射器に装着される。穿孔15の位置はいずれでもよいが、効果的に光を遮光するには遮光板10の中心部に穿孔が設けられているのが好ましい。ただし、遮光板10が楕円状等である場合、穿孔の位置は遮光板10の中心軸からずれた位置、例えば図4に示すように遮光板10の端部に位置する方が、患者の顔、鼻、あご等に接触したとしても自由度があり左右に振れることができるので使用しやすい。また、穿孔15の大きさやその形状については、光照射器の径や断面形状に依存し、装着する光照射器の径や断面形状に併せて設定すればよい。
【0033】
遮光板の大きさとしては、遮光範囲を十分に確保できる面積であれば特に制限されないが、例えば遮光板が円形の場合、直径が2cm以上であることが好ましい。直径が2cm以上であれば遮光範囲を十分に確保できるので、光を遮光する際は目への負担をより軽減でき治療を円滑に行うことができる。また、口腔内に遮光板が入ったとしても、患者への負担が少ない。一方、直径の上限値については特に制限されないが、製造コストや取り扱い性の観点から25cm以下が好ましい。
【0034】
本発明では、遮光板が光照射器に対して回転自在、かつ、遮光板と光照射器との角度が可変となるように、遮光器具の装着部材によって遮光板が光照射器に装着される。
装着部材としては、遮光板が光照射器に対して回転自在、かつ、遮光板と光照射器との角度が可変となるように、遮光板を光照射器に装着できるものであれば、特に制限されない。
ここで、図を用いて装着部材の一例について具体的に説明する。
【0035】
<装着部材>
図5は、本発明の遮光器具を構成する装着部材20の一実施形態を示す斜視図である。この例の装着部材20は、内側が球面状の2つの外輪21(21a、21b)と外側が球面状であり内側が円筒状の内輪22とからなる。外輪21の内径と内輪22の外径はほぼ同一である。内輪22は2つの外輪21の内側に配置され、球面案内され自在に動くことができる。
2つの外輪21はネジ23等で連結されるが、ネジ23の締め具合によって内輪の動きを調整する。すなわち、ネジ23の締めが緩くなるに従って、内輪の動きが滑らかになる。
【0036】
装着部材20は、図1、2に示すように、外輪21が遮光板10に設けられた穿孔15と重なるように、遮光板10に取り付けられ、ネジ24等で固定され、遮光器具1を形成する。遮光板と装着部材の固定の方法については特に制限されず、例えば図2に示すように、遮光板10と接する方の装着部材の外輪21aと、遮光板10とを固定するのが好ましい。このように固定することで、2つの外輪21同士を連結するネジ23を緩めたり締めたりすることで、内輪22の動きを調整できる。
このようにして得られた遮光器具1は、光照射器に装着されて照射装置を形成する。
【0037】
[歯科治療用照射装置]
図3に示すように、本発明の照射装置2は、本発明の遮光器具1が光照射器30に装着されている。
光照射器30としては、通常の歯科治療に用いられる照射器であれば特に制限されず、市販のものを使用できる。
光照射器30は、その先端31が遮光板10の穿孔、および装着部材20の内輪の内側を貫通することで、遮光器具1が装着される。この際、装着部材20の内輪にパッキンやOリング等を設ければ、光照射器30を内輪に隙間なく嵌合して固定できる。また、内輪の内側をテーパー状にすることでも光照射器30を固定できる。このように光照射器30を装着部材20の内輪に嵌合して固定する方法は、接着や溶着して固定する方法と異なり、光照射器30から遮光器具1を容易に取り外すことができる。従って、別の光照射器に遮光器具1を装着することも可能となるので好ましい。
【0038】
照射装置2は、光照射器30の先端31付近に遮光器具1が装着されると、特に奥歯などの治療をする際に治療の妨げになりやすく、また、患者の顔に遮光器具1が接触するおそれがある。そこで、遮光器具1は、先端31から光照射器30の全長の1/10〜1/2の位置に装着されるのが好ましい。装着位置が1/10未満では、遮光器具1を口腔M内に入れることを想定した場合、治療の妨げになりやすくなる。一方、装着位置が1/2を超えると、照射装置2を握りにくくなり、取り扱い性が低下しやすくなる。
遮光器具1が上述した領域に装着されることで、光照射器30の先端31が口腔M内に入っても、遮光板10は治療の妨げになりにくい。また、患者の顔にも接触する恐れがない。従って、奥歯を治療する場合など、特に光照射器30の先端31が口腔M内の奥に向けられる場合であっても、遮光板10が治療を妨げることはなく、円滑に歯の治療を行うことができる。
【0039】
上述した装着部材20の内輪は、球面案内され自在に動くことができる。その動きに連動して光照射器30も自在に動くことができるので、遮光板10と光照射器30の角度α1を可変できる。また、光照射器30の先端31が遮光板10の穿孔を貫通するので、光照射器30が軸となり、遮光板10が光照射器30に対してB−B’方向に回転自在となる。
【0040】
従って、本発明の照射装置2は、遮光板10と光照射器30との角度α1を変化させたり、遮光板10を回転させたりするといった、小さな動作を行うだけで、光を遮光したり光の遮光を解除したりできる。よって、歯科治療用の光を遮光して目への負担を軽減し、かつ、大きな動作を伴わずに瞬時に視界を良好にして患部を確認できる。
【0041】
また、本発明の照射装置2によれば、角度α1を調整することで、遮光の度合いを制御できる。従って、光を照射しながら患部を確認する際などは、光を完全に遮光せずに、適度に患部も確認できる程度に角度α1を調整すればよい。
さらに、本発明の照射装置2は、医師自身が遮光の操作を行うことができるので、本人の単独操作で容易に光を遮光したり解除したりできる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の歯科治療用遮光器具の一例を示す斜視図である。
【図2】図1のA−A’線に沿う断面図である。
【図3】本発明の歯科治療用照射装置の一例を示す斜視図である。
【図4】本発明の歯科治療用照射装置の他の例を示す斜視図である。
【図5】歯科治療用遮光器具に使用される装着部材の一実施形態を示す斜視図である。
【図6】歯科治療用遮光器具に使用される遮光板の一実施形態を示す分解斜視図である。
【図7】図6のY−Z平面における断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1:歯科治療用遮光器具、2:歯科治療用照射装置、10:遮光板、11:ルーバー層、11a:光透過帯、11b:遮光帯、12:第一の透明樹脂層、13:第二の透明樹脂層、14:第二のルーバー層、14a:光透過帯、14b:遮光帯、20:装着部材、30:光照射器、α1:角度。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過帯と遮光帯とが交互に配されているルーバー層の両側に、透明樹脂層が積層した遮光板と、該遮光板を光照射器に装着する装着部材とを備え、
前記遮光板は、前記光照射器に対して回転自在であり、かつ、遮光板と光照射器との角度が可変とされていることを特徴とする歯科治療用遮光器具。
【請求項2】
請求項1に記載の歯科治療用遮光器具が、光照射器に装着されていることを特徴とする歯科治療用照射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−219711(P2009−219711A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−68462(P2008−68462)
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【出願人】(591248348)学校法人松本歯科大学 (22)
【Fターム(参考)】