説明

歯科治療装置の清浄水供給装置

【課題】歯科治療装置に組み込まれ、原水を清浄水に除菌する機能、およびその除菌機能の有効な限界、すなわち適切な交換時期を表示、警告できる機能を備えた清浄水供給装置を提供する。
【解決手段】清浄水供給装置は、歯科治療装置1に組み込まれ、口腔内洗浄等に使用される清浄水の供給装置において、原水給水源14から清浄水吐出口9・10・11に到る水流路5中に除菌装置3および流量センサ4を備え、流量センサ4からの検知信号により、除菌装置3の有効使用可能限界を表示または/および警告する手段2を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科治療装置に組み込まれ、嗽水や噴流水である清浄水の供給装置であって、原水を清浄水に除菌する機能、およびその除菌機能の有効な限界を表示、警告できる機能を備えた装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
歯科治療では、治療の事前、あるいは途中に頻繁に嗽が行われる。また加圧した噴流水で口腔内を洗浄したり、噴流水を動力源として治療器具を動作させることもある。そのため、歯科治療装置には清浄水を供給する水流路が設けられている。
【0003】
特許文献1には、逆浸透膜フィルタ、紫外線殺菌装置を含む浄水装置と、銀イオン殺菌装置とを水回路に配設した歯科治療診察台が記載されている。また、特許文献2には、固形物除去用フィルター層及び通水性殺菌剤放出材層を備えてなる殺菌性水生成器付き歯科診療装置が記載されている。
【0004】
これらの装置は、使用水量の表示機能を備えていないため、定期的に除菌フィルターの交換が行われている。しかし除菌フィルターは、使用水量によって交換時期が異なる。そのため、正確な交換時期を把握できずに、まだ使用できる除菌フィルターを交換してしまい、除菌フィルターを有効に活用できていなかった。逆にフィルター能を失っても使用し続けて、除菌されていない水を使用したりしていた。こうしたことから、除菌フィルターの交換時期を正確に把握できる機能を備えた清浄水供給装置の開発が望まれていた。
【0005】
【特許文献1】特開2005−87568号公報
【特許文献2】特開平06−296626号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、歯科治療装置に組み込まれ、原水を清浄水に除菌する機能、およびその除菌機能の有効な限界、すなわち適切な交換時期を表示、警告できる機能を備えた清浄水供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するためになされた、特許請求の範囲の請求項1に記載された清浄水供給装置は、歯科治療装置に組み込まれ、口腔内洗浄等に使用される清浄水の供給装置において、原水給水源から清浄水吐出口に到る水流路中に除菌装置および流量センサを備え、該流量センサからの検知信号により、該除菌装置の有効使用可能限界を表示または/および警告する手段を有することを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に記載された清浄水供給装置は、請求項1に記載の清浄水供給装置であって、前記流量センサが磁石の付された水流羽根車、および該水流羽根車の回転による磁界変化を検出するホール素子であることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載された清浄水供給装置は、請求項1に記載の清浄水供給装置であって、前記流量センサが磁石の付された水流羽根車、および該水流羽根車の回転による磁界変化を検出するコイルであることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載された清浄水供給装置は、請求項3に記載の清浄水供給装置であって、前記表示または/および警告手段の作動電力が、該コイルの出力電力で作動することを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載された清浄水供給装置は、請求項1に記載の清浄水供給装置であって、前記流量センサが光学マークの付された水流羽根車、および該光学マークを検出する光電変換素子であることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載された清浄水供給装置は、請求項1に記載の清浄水供給装置であって、前記表示または/および警告手段が、該流量センサからの検知信号をカウントするカウンタ出力で作動することを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載された清浄水供給装置は、請求項1に記載の清浄水供給装置であって、該清浄水が、嗽水および/または噴流水であることを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載された清浄水供給装置は、請求項1に記載の清浄水供給装置であって、該清浄水吐出口が嗽水吐出口であって、該水流路中の嗽水吐出口の上流に電磁弁を有し、該流量センサの検知信号により該電磁弁が作動して嗽水吐出口からの嗽水を遮断することを特徴とする。
【0015】
請求項9に記載された清浄水供給装置は、請求項8に記載の清浄水供給装置であって、該電磁弁が作動回数のN倍の検知信号により、表示または/および警告手段が作動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明を適用する清浄水供給装置によれば、積算流量表示器により積算流量が表示され除菌フィルターの適切な交換時期を正確に確認することができ、除菌フィルターを有効に活用することができる。したがって、清浄水供給装置は常に除菌機能を発揮できる状態に維持できるとともに、除菌フィルターの必要外の交換を抑えることができるので、省資源の面からも、経済的な面からも有効である。
【実施例】
【0017】
以下、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
本発明を適用する清浄水供給装置が組み込まれた歯科治療装置の概要図を図1に示し、説明する。清浄水供給装置は、原水給水源14から嗽水供給管9、口腔洗浄用シリンジノズル10及びハンドピース11に至る水流路5に、止水バルブ38、除菌フィルター3及び流量センサ4が備えられて構成される。流量センサ4は除菌フィルター3に付され、配線15を介して積算流量表示器2と接続されている。嗽水供給管9の嗽水吐出口24の上流には、嗽水用電磁弁23が備えられている。また、口腔洗浄用シリンジノズル10及びハンドピース11に繋がる水流路5には、加圧エアー6が備えられている。嗽水コップ台7の上面には給水スイッチ13が取り付けられている。
【0018】
図2は、図1に示した清浄水供給装置の流量センサ4を付した除菌フィルター3及び積算流量表示器2を拡大した断面図を示している。除菌フィルター3は、スリーブ22に収納され中空糸膜からなるフィルターエレメント20が水流を横切って配置されている。フィルターエレメント20はスリーブ22とともに脱着可能に取り付けられている。
【0019】
除菌フィルター3の下流側であって、ケーシング34の内面に固着されたリブ25と26との間に、磁石21を備えた水流羽根車16が回転可能に軸支される。ケーシング34の外側であって磁石21に対向する位置にホール素子17が配置される。この磁石21とホール素子17が流量センサ4を構成する。
【0020】
流量センサ4は、配線15を介して積算流量表示器2に接続される。積算流量表示器2の外観は、図3に示すように、表示用の7個の発光ダイオード33、警報ブザー30、およびボタンスイッチ32が配置されている。流量センサ4と積算流量表示器2の回路は、図4に示すとおり、ホール素子17が電源Vccに接続し、ホール素子17の出力はカウンタ19に繋がっている。カウンタ19は、ボタンスイッチ32を介して発光ダイオード33と、給水スイッチ13を介して電磁弁23とに接続している。電源Vccは商用電源から変圧器、整流回路を経て得られる半導体回路用の低電圧電源であり、発光ダイオード33の電源電圧としても繋がっている。
【0021】
治療用椅子8に座った患者が給水スイッチ13を押すと嗽水用電磁弁23が開く。原水給水源14より供給された原水は水流路5を通り、止水バルブ38により水圧が調整され、次いで除菌フィルター3により除菌されて清浄水となり、嗽水供給管9を通り、嗽水吐出口24から嗽水として嗽用コップ12に供給される。また、清浄水は、加圧エアー6により加圧されて噴流水として口腔内洗浄用シリンジノズル10及びハンドピース11にも供給される。
【0022】
上記により除菌されて清浄水の流れが水流羽根車16を回転させる。それと共に磁石21が回転して磁界変化を起こす。ホール素子17はこの磁界変化を電気的信号に変換し、カウンタ19に出力する。カウンタ19に伝達された電気的信号から積算した流量が設定した嗽用コップ12に容量に達したら信号を出力して給水スイッチ13をオフにし、電磁弁23を閉じる。
【0023】
また一方で、ボタンスイッチ32が押されると、カウンタ19は伝達された電気的信号から積算流量を算出し、信号を出力して発光ダイオード33、33、33、33、33、33又は33のいずれかを点灯させる。発光ダイオード33の点灯信号では警報ブザー30が音を発する。この状態になったら、止水バルブ38を閉め、フィルターエレメント20を交換する。
【0024】
図5は本発明の清浄水供給装置の上記とは別な実施例である流量センサ部分を示す断面図である。流量センサ4は、磁石21を備えた水流羽根車16が回転可能に軸支され、磁石21に対向する位置にコイル31が配置されている。
【0025】
図6には、図5に断面を示した流量センサと積算流量表示器の回路を示してある。コイル31は整流素子のブリッジである整流回路35に繋がり、その整流出力がカウンタ19の入力となる。また、整流回路35には蓄電池18が接続されている。カウンタ19は、ボタンスイッチ32を介して発光ダイオード33と、給水スイッチ13を介して電磁弁23とに接続している。この回路では、コイル31の起電力で回路動作をさせるので、電源電池を必要としていない。
【0026】
水流羽根車16と共に磁石21が回転すると、コイル31が起電し整流回路35で直流変換されそのパルスをカウンタ19がカウントする。カウント数が設定値に達したら給水スイッチ13から、嗽水用電磁弁23を閉じる。また、ボタンスイッチ32が押されると、カウンタ19は伝達されたパルスから積算流量を算出し、信号を出力して発光ダイオード33、33、33、33、33、33又は33のいずれかを点灯させる。発光ダイオード33の点灯信号では警報ブザー30が音を発する。一方、整流回路35には蓄電池18が接続されているから、羽根車16が回転しているときには蓄電池18に浮遊充電し、羽根車16が回転していないときには、蓄電池18からの電力で回路は動作する。
【0027】
図7は本発明の清浄水供給装置の上記とはさらに別な実施例である流量センサ部分を示す断面図である。流量センサ4は、反射ミラーからなる光学マーク37を備えた水流羽根車16が回転可能に軸支され、回転通過する光学マーク37に1箇所で焦点を向ける位置に発光ダイオード33とフォトトランジスタ36が配置されている。
【0028】
図8には、図7に示した流量センサと積算流量表示器の回路を示してある。発光ダイオード33とフォトトランジスタ36は電源Vccに接続している。フォトトランジスタ36の出力がカウンタ19の入力となる。カウンタ19は、ボタンスイッチ32を介して発光ダイオード33と、給水スイッチ13を介して嗽水用電磁弁23とに接続している。
【0029】
水流羽根車16と共に光学マーク37が回転し、発光ダイオード33とフォトトランジスタ36の焦点位置にきたとき、発光ダイオード33の発光に照らされた光学マーク37の反射光がフォトトランジスタ36に検知されフォトトランジスタ36からカウンタ19に出力信号が出る。この出力信号をカウントし、カウント数が設定値に達したら給水スイッチ13から、電磁弁23を閉じる。また、ボタンスイッチ32が押されると、カウンタ19は伝達された出力信号から積算流量を算出し、信号を出力して発光ダイオード33、33、33、33、33、33又は33のいずれかを点灯させる。発光ダイオード33の点灯信号では警報ブザー30が音を発する。
【0030】
本発明を適用する清浄水供給装置において、止水バルブ38、流量センサ4、除菌フィルター3及び積算流量表示器2は水流路に設置してあればその設置場所に関係なく本発明の効果が得られる。たとえば、これらを治療用椅子8後部のサプライボックス内に設置したり、治療用椅子8後部の原水給水源14付近に水平に設置したりすることが可能である。流量センサは、除菌フィルターより下流に設置すると、清浄水が通過するので汚れにくく、性能を保ちやすい。
【0031】
流量センサを付した除菌フィルターと積算流量表示器とを清浄水供給装置の水流路に設置した例を示したが、除菌フィルターと流量センサと積算流量表示器とを個別に設置してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明を適用する清浄水供給装置の実施例を示す概要図である。
【0033】
【図2】本発明を適用する清浄水供給装置の除菌フィルター、流量センサ及び積算流量表示器の実施例を示す断面図である。
【0034】
【図3】本発明を適用する清浄水供給装置の積算流量表示器の実施例を示す外観図である。
【0035】
【図4】本発明を適用する清浄水供給装置の流量センサと積算流量表示器の回路図である。
【0036】
【図5】本発明を適用する清浄水供給装置の別な流量センサの実施例を示す断面図である。
【0037】
【図6】本発明を適用する清浄水供給装置の別な流量センサと積算流量表示器の回路図である。
【0038】
【図7】本発明を適用する清浄水供給装置のさらに別な流量センサの実施例を示す断面図である。
【0039】
【図8】本発明を適用する清浄水供給装置の別な流量センサと積算流量表示器の回路図である。
【符号の説明】
【0040】
1は歯科治療装置、2は積算流量表示器、3は除菌フィルター、4は流量センサ、5は水流路、6は加圧エアー、7は嗽水コップ台、8は治療用椅子、9は嗽水供給管、10は口腔洗浄用シリンジノズル、11はハンドピース、12は嗽用コップ、13は給水スイッチ、14は原水給水源、15は配線、16は水流羽根車、17はホール素子、18は蓄電池、19はカウンタ、20はフィルターエレメント、21は磁石、22はスリーブ、23は嗽水用電磁弁、24は嗽水吐出口、25及び26はリブ、27は球面上加圧突起、28は凹孔、29は印刷配線基板、30は警報ブザー、31はコイル、32はボタンスイッチ、33は発光ダイオード、34はケーシング、35は整流回路、36はフォトトランジスタ、37は光学マーク、38は止水バルブである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科治療装置に組み込まれ、口腔内洗浄等に使用される清浄水の供給装置において、原水給水源から清浄水吐出口に到る水流路中に除菌装置および流量センサを備え、該流量センサからの検知信号により、該除菌装置の有効使用可能限界を表示または/および警告する手段を有することを特徴とする清浄水供給装置。
【請求項2】
前記流量センサが磁石の付された水流羽根車、および該水流羽根車の回転による磁界変化を検出するホール素子であることを特徴とする請求項1に記載の清浄水供給装置。
【請求項3】
前記流量センサが磁石の付された水流羽根車、および該水流羽根車の回転による磁界変化を検出するコイルであることを特徴とする請求項1に記載の清浄水供給装置。
【請求項4】
前記表示または/および警告手段の作動電力が、該コイルの出力電力で作動することを特徴とする請求項3に記載の清浄水供給装置。
【請求項5】
前記流量センサが光学マークの付された水流羽根車、および該光学マークを検出する光電変換素子であることを特徴とする請求項1に記載の清浄水供給装置。
【請求項6】
前記表示または/および警告手段が、該流量センサからの検知信号をカウントするカウンタ出力で作動することを特徴とする請求項1に記載の清浄水供給装置。
【請求項7】
該清浄水が、嗽水および/または噴流水であることを特徴とする請求項1に記載の清浄水供給装置。
【請求項8】
該清浄水吐出口が嗽水吐出口であって、該水流路中の嗽水吐出口の上流に電磁弁を有し、該流量センサの検知信号により該電磁弁が作動して嗽水吐出口からの嗽水を遮断することを特徴とする請求項1に記載の清浄水供給装置。
【請求項9】
該電磁弁が作動回数のN倍の検知信号により、表示または/および警告手段が作動することを特徴とする請求項8に記載の清浄水供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−99946(P2008−99946A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−285985(P2006−285985)
【出願日】平成18年10月20日(2006.10.20)
【出願人】(000103921)オリオン機械株式会社 (450)
【Fターム(参考)】