説明

歯科用セラミック物品のための着色溶液及びそれに関連する方法

本発明は、歯科用セラミック物品を着色するための着色溶液に関し、この溶液は、溶媒と、少なくとも約0.05mol/L(溶媒)の量で溶液中に存在する希土類元素金属又はイオンと、約0.00001〜約0.05mol/L(溶媒)の量で溶液中に存在する遷移金属又はイオンとを含む着色剤とを含む。本発明はまた、歯科用セラミック物品の着色のための方法にも関し、歯科用セラミック物品は着色溶液で処理されるか又は歯科用セラミック物品を焼成させる工程を含む方法により得ることができるかのいずれかである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、歯科用フレームワークなどの歯科用セラミック物品のための着色溶液、及び歯科分野における着色溶液を使用するための方法に関する。より特定的には、本発明は、a)溶媒と、b)金属イオンの混合物を含む着色剤とを含む着色溶液に関する。
【0002】
(関連出願の相互参照)
本出願は、欧州特許出願公開第07112920.9号(2007年7月23日出願)に対する優先権を主張する。
【背景技術】
【0003】
歯科用セラミックフレームワークは、セラミック材料の中に色素を組み込むことによって、又は部分的に焼結された歯科用セラミックフレームワークの表面上に適用される金属塩含有溶液を使用することによって、のいずれかで着色できる。
【0004】
この点において、独国特許第196 19 168(A1)号は、セラミック着色溶液が本質的には、水と、水に溶解したパラジウム含有化合物とからなることを記載している。この溶液は更に、アルコール、グリコール、グリコールエーテル又はポリエチレングリコールなどの共溶媒を含有してよい。
【0005】
国際公開第2004/110959号(米国特許出願公開第2006/117989(A1)号に対応)は、セラミックフレームワークのための着色溶液に関する。この溶液は、溶媒と、金属塩と、1,000〜200,000の範囲の分子量を有するポリエチレングリコールとを含む。
【0006】
独国特許第196 19 165(C1)号は、TiとFe構成成分を錯化剤とともに含有する水溶液でセラミック敷石を着色するための方法を記載している。
【0007】
国際公開第00/46168(A1)号(米国特許第6,709,694(B1)号に対応)は、イオン又は錯体を含有する溶液が、希土類元素若しくはそのサブグループの元素の少なくとも1つの塩又は錯体を既定の濃度で含有することによって、セラミックスを着色することを言及している。この溶液は、安定剤、錯体ビルダー、色素、及び叩解添加剤のような添加剤を含有してよい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、歯科用フレームワークなどの歯科用セラミック物品を着色するための着色溶液に関する。この着色溶液は、
溶媒、及び
少なくとも約0.05mol/L(溶媒)の量で溶液中に存在する希土類元素金属又はイオンと、
約0.00001〜約0.05mol/L(溶媒)の量で溶液中に存在する遷移金属又はイオンとを含む1つ又は複数の着色剤を含む。
【0009】
本発明はまた、歯科用フレームワークなどの歯科用セラミック物品を着色するための方法にも関する。この方法は、
本明細書に記載される着色溶液を供給し、歯科用セラミックフレームワークを供給する工程と、
着色溶液でセラミック物品(例えば、フレームワーク)を処理する工程と、
所望により、処理されたセラミック物品(例えば、フレームワーク)を乾燥させる工程と、
所望により、処理されたセラミック物品(例えば、フレームワーク)を焼成する工程とを含む。
【0010】
別の態様では、本発明は、着色溶液で処理されるか、又は歯科用セラミック物品を焼成する工程を含む方法により得ることができるかのいずれかである、歯科用フレームワークなどの、歯科用セラミック物品に関する。
【0011】
更なる態様では、本発明は、溶媒と、希土類元素金属又はイオン及びこれらの混合物を含む着色剤とを含む着色溶液を使用する方法に関し、金属イオンは、焼結工程の間又は後での歯科用セラミック物品(例えば、フレームワーク)の焼結ひずみを低減するために少なくとも約0.05mol/L(溶媒)の量で存在する。
【0012】
本発明の着色溶液で処理された予備焼結された歯科用セラミック物品(例えば、フレームワーク)は通常、焼結工程後に歯のような色を有し、焼結工程後にひずみも少ない。
【0013】
本発明の他の実施形態、特徴及び利点は、以下の「発明を実施するための形態」、「図面」及び「特許請求の範囲」から明らかになるであろう。
【0014】
定義
本発明の意味内で、用語「歯科用物品」は、セラミック材料に基づいた又はこれを含む任意の物品、歯科技工室などの歯科領域において使用できる物品、として理解される。
本発明の意味内で、用語「歯科用セラミックフレームワーク」は、歯科領域で使用できる任意のセラミックフレームワークとして理解される。この点において、歯科用セラミックフレームワークは十分な強度を有するべきである。例には、インレー、アンレー、クラウン、アバットメント、及びブリッジ(2、3、4、5、6、7、更には8個のブリッジ)、並びにインプラントが挙げられる。歯科用セラミックフレームワークは通常、凸状及び凹状の構造を含む3次元の内側表面及び外側表面を有する。陶器又は敷石などの他のセラミックフレームワークと比較して、歯科用セラミックフレームワークは小さくて繊細である。歯科用セラミックフレームワークの厚さは、例えば、端部と周縁部におけるように(約0.1mmを下回る)、非常に薄いものから、例えば、咬合領域におけるように(最大約7mm)、かなり厚いものまで、様々であり得る。
【0015】
本発明の意味内で、「溶媒」は、少なくとも部分的に着色剤を溶解することができる任意の溶媒又は液体である。
【0016】
本発明の意味内で、「着色剤」は、着色剤によるセラミックフレームワークの処理の直後か又は処理された歯科用セラミックフレームワークの焼成工程後かのいずれかで、歯科用セラミックフレームワークの色変化を引き起こすことができる任意の剤である。
【0017】
本発明の意味内で、「錯化剤」は、着色剤と錯体を形成できる任意の剤である。
【0018】
配位化合物としても知られる「錯体」は化学において通常、配位子と金属イオンとの組み合わせにより形成される分子又は集合を記載するために使用される。元々は、錯体は、弱い化学結合を介しての、分子、原子、又はイオンの可逆的な結合を意味した。配位化学に応用されるにつれて、この意味は進展してきている。いくつかの金属錯体が実質上不可逆的に形成され、多くはきわめて強力である結合によりともに結び付けられる。
【0019】
金属を囲むイオン又は分子は、配位子と呼ばれる。配位子は一般に配位結合(孤立電子対からルイス酸性金属中心への電子供与)により金属イオンに結び付けられ、これにより、イオンに配位されていると言われる。本発明の意味内で、これらの配位子は、「配位している配位子」と称される。
【0020】
配位化学の領域は、配位子の性質により分類できる。錯体は、「古典的」錯体又は「有機金属」錯体として分類できる。
【0021】
古典的(例えば、いわゆる「ウェルナー錯体」):古典的配位化学における配位子は、ほぼ専ら、[Co(EDTA)]]又は[Co(NH]Clなどの配位子の主原子団に存在する電子の「孤立対」を介して、金属に結合している。
【0022】
有機金属化学:配位子は、有機配位子(アルケン、アルキン、アルキル)、並びに(C)Fe(CO)CHなどの「有機様」配位子である。これらの配位子は、金属中心に対して直接共有結合を形成すると考えられている。
【0023】
本発明の意味内で、用語「溶解するのに十分な量」は、保存安定組成物を得ることができるように特定の溶媒に特定の物質を完全に溶解するために必要とされる剤の量を表す。保存安定は、一定の時間周期にわたって周囲条件(例えば、少なくとも3ヶ月、23℃)で保存された溶液が単一又は複数の構成成分の溶液又は沈殿の分解なしに安定性を維持することを意味する。剤は、化学量論より下の量(例えば、0.1モル剤、0.5モル物質)、等量(例えば、0.1モル剤、0.1モル物質)、又は更には過剰(例えば、0.2モル剤、0.1モル物質)で使用してよい。物質を溶解するのに必要とされる時間は特に制限されないが、しかしながら、溶解は、機械的撹拌機及び加熱器のような一般的な装置を使用して合理的な時間(例えば、約5分〜約24時間)以内で行うべきである。
【0024】
希土類元素金属及び/又は希土類元素のサブグループには、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuが挙げられる。
【0025】
IIIA、IVA、VA、VIA、VIIA、VIIIA、IB、IIB族(前のIUPAC分類に従う)の遷移金属は、元素Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu及びZnで始まる周期表の欄に列記されている金属及びこれらの元素の下に列記されている金属を含む。新しいIUPAC分類に従うと、これらの欄は、3、4、5、6、7、8、9、10、11及び12として番号付けられる。本発明に従うと、用語「遷移金属又はイオン」は、「希土類元素金属又はイオン」を含まない。
【0026】
用語「金属」又は「金属イオン」又は「金属カチオン」は、文脈及び現状に応じて互換的に使用される。溶液と他の構成成分(錯化剤など)の存在又は不在とに応じて、金属は、金属として(すなわち、純粋な元素形態で)、又はイオン若しくは通常+1、+2、+3又は+4の電荷を有するカチオンとして、存在できる。
【0027】
歯科用セラミック物品又は歯科用フレームワークは、歯科用セラミックフレームワークが、歯科用セラミック物品又は歯科用フレームワークの傷破断強度(ワイブル強度シグマ0)が約15〜約55MPa又は約30〜約50MPa(DIN EN ISO 6872、1999年3月版に記載されている「パンチオンスリーボール試験」(2軸曲げ強度)に従って、以下の修正(スティールボールの直径:6mm;支持円:14mm;フラットパンチ:3.6mm;サンプルディスクの直径:25mm、サンプルディスクの厚さ:2mm;試料の研削及び研磨は行わない)を加えて、測定される)の範囲内になる程度(extend)まで、熱(約900〜約1100℃の温度範囲)により約1時間〜約3時間にわたって処理された場合に、本発明の意味内で、「予備焼結」として分類される。
【0028】
予備焼結された歯科用セラミック物品又は予備焼結された歯科用フレームワークは典型的には多孔質構造を有し、その密度(イットリウム安定化ZrOセラミックについては通常、3.0g/cm)は、完全焼結された歯科用セラミックフレームワーク(イットリウム安定化ZrOセラミックについては通常、6.1g/cm)と比較して低い。細孔の直径は、約50nm〜約150nm(約5〜約15Åに相当)の範囲内であることができる。典型的な細孔径は、約120nmである。
【0029】
用語「焼結(sintering)」又は「焼成(firing)」は互換的に使用される。予備焼結されたセラミックフレームワークは、焼結工程の間に、すなわち、適切な温度が加えられる場合に、収縮する。加える焼結温度は、選択されるセラミック材料に依存する。ZrO系セラミックスについて典型的な焼結温度範囲は、約1200℃〜約1500℃である。Al系セラミックスは、典型的には、約1300℃〜約1700℃の温度範囲で焼結する。
【0030】
本発明の意味内で、歯科用セラミックフレームワークは、歯科用セラミックフレームワークが、スポンジと比較可能に、一定量の液体を吸収できる場合に、「吸収性物質」として分類される。吸収できる液体の量は、例えば、歯科用セラミックフレームワークの化学的性質、溶媒の粘性、歯科用セラミックフレームワークの多孔性又は細孔容量に依存する。例えば、予備焼結された歯科用セラミック物品、すなわち、完全密度まで焼結させていない物品は、一定量の液体を吸収できる。
【0031】
本発明の意味内で、用語「焼結変形」は、例えば、歯科用セラミックフレームワークが作られている材料の不均質性によって引き起こされる焼結プロセス中に生じ得る歯科用セラミックフレームワークの幾何学的な形状の変化を表す。歯科用セラミックフレームワークの焼結変形は、1次元のみにおいて、若しくは2次元において、又は3次元において生じ得る。焼結変形は、焼結プロセスの前後の歯科用セラミックフレームワークの形状を比較して測定できる。形状の違いは、例えば顕微鏡などを使用する歯科用セラミックフレームワークの精確な幾何学的測定によるか、又は本明細書の以下で記載するようなモデル上で歯科用セラミックフレームワークの精密な嵌合を検査することによるか、のいずれかで測定できる。焼結後の着色されたセラミックフレームワークの変形の評価に使用できる試験は以下の通りである。棒状の試料を、市販の3M ESPEラヴァ(Lava)(商標)装置を用いて、3M ESPEラヴァ(商標)ブリッジと同様に加工する(フライス加工、染色及び焼結)。予備焼結された試料(ブリッジ用の3M ESPEラヴァ(商標)フレームブランク)をフライス加工し、その後、粉塵をマイクロブラシ及び圧縮空気で除去する。フライス加工された試料を、着色溶液に約2分間にわたって浸漬する。その後、あらゆる過剰に付着している染色液を吸収紙で除去する。試料を後部ブリッジ(曲がった白金ワイヤ)に対して2つの3M ESPEラヴァ(商標)焼結された支持体(20mmの距離)に置く。試料の長さとワイヤ間距離との比は、ブリッジの焼結と同様である。焼成は、3M ESPEラヴァ(商標)サーム(Therm)加熱炉中で標準的な焼結プログラムを用いて行うことができる。焼結後、試料の変形を輪郭投影機を用いて測定する。より詳細な説明は、実施例の項で与えられる。
【0032】
本発明の意味内で、用語「精密な嵌合」は、歯科用セラミックフレームワークが用意されたモデルに適合する正確さ、すなわち、どの程度まで歯科用セラミックフレームワークの内表面が、用意された歯の残根などの歯の構造の外表面に嵌合するかどうかを表す。特に、幅広の歯科用ブリッジに関しては、これは、2つの歯の残根上に固定されるべきブリッジの前後及び上下の動きを防止するために、歯科用セラミックフレームワークが満たすべき重要な特徴であり得る。
【0033】
歯科用セラミックフレームワークは、焼結プロセス後に歯科用セラミックフレームワークの表面上に人間の目で色の斑点が同定できない場合に、本発明の意味内で「均質に着色されている」ものとして特徴付けることができる。より正確には、これは、それぞれの使用についての説明を適用しながら市販のハンターLabシステム(Hunter Lab System)を使用してDIN 6174(セクション2)に従ってL値を測定することにより、検証できる。この測定システムに対する更なる指針は、米国特許第6,756,421号、第4欄、26〜55行に見ることができる。
【0034】
歯科用セラミックフレームワークは、その色が歯科技工士に既知の昼光条件下でヴィタ(VITA)(商標)色調調整システム(shading system)により分類できる場合に、本発明の意味内で「歯のような色」を有する。
【0035】
本発明の意味内で「周囲条件」は、本発明の溶液が保存時及び操作時に通常曝される条件を意味する。周囲条件は、例えば、約0.09MPa〜約0.11MPa(約900〜約1100ミリバール)の圧力、約−10〜約60℃の温度、及び約10〜約100%の相対湿度であり得る。実験室周囲条件は、約23℃及び約0.10MPa(1013ミリバール)に調節される。
【0036】
組成物又は溶液は、組成物又は溶液が本質的な特徴として特定の構成成分を含有しない場合、本発明の意味内でこの特定の構成成分を「本質的に含まない」。それゆえに、この構成成分は、そのものとして、若しくは他の構成成分と組み合わせて、又は他の構成成分の成分としてのいずれかで、組成物又は溶液に意図的には添加されない。特定の構成成分を本質的に含まない組成物は、通常、その構成成分を組成物全体に関して、約1重量%未満、又は約0.1重量%未満、又は約0.01重量%未満(又は約0.05モル/L(溶媒)未満、又は約0.005モル/L(溶媒)未満、又は約0.0005モル/L(溶媒)未満)の量で含有する。理想的には、この組成物又は溶液は、この構成成分を全く含有しない。しかしながら、例えば、不純物のために、時には、少量のこの構成成分の存在を回避できない。
【0037】
本明細書で使用する時、「a」、「an」、「the」、「少なくとも1つの」、及び「1つ以上の」は、同じ意味で使用されている。用語「含む」又は「含有する」及びこれらの変化形は、これらの用語が明細書及び特許請求の範囲で用いられた場合、制限的な意味を有しない。また本明細書において、端点による数の範囲の列挙には、その範囲内に包含される全ての数(例えば、1〜5には、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5、など)が包含される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】支持構造体上の4片のひずんだ焼結された歯科用セラミック物品(例えば、フレームワーク)。
【図3】測定値のボックスプロット。
【発明を実施するための形態】
【0039】
特定の条件下で、本発明の着色溶液で処理された歯科用セラミック物品は、いくつかの場合には、市販の着色溶液で処理された歯科用セラミック物品と比較して、焼結又は焼成プロセス後に、より少ない欠陥(例えば、より少ない焼結変形)を示す。
【0040】
特定の理論に束縛されるのを望むものではないが、本発明の着色溶液中で使用される金属又は金属イオンのサイズが、歯科用セラミック物品が焼成プロセス後に示し得るひずみの程度において影響をもたらすと考えられる。
【0041】
歯科用セラミック物品における大きなイオン半径を有する金属イオンの分布は、より小さなイオン半径を有する金属イオンと比較して、より良好であると考えられる。このことはまた、歯科用セラミック物品のより均質な着色を導き得る。
【0042】
予備焼結された歯科用セラミック物品の孔径が約50〜約150nmの範囲内である事実を考慮すると、孔径は着色溶液に存在するイオンに関しての限定要因ではない。しかしながら、着色溶液中に存在するイオンのイオン直径がより大きいほど、イオンはより多くの配位している配位子を有することができる。典型的には、Feは配位数6を有し、一方で、希土類元素金属イオンは配位数8、9、10、更には12(例えば、酸化物中で)を有し得る。金属が有することができる配位している配位子の数は、金属を囲む領域の安定性に影響を与えると考えられる。
【0043】
正方晶系ジルコニア及び立方晶系ジルコニア(ZrO)は通常、いわゆる蛍石(Flurorite)型構造を有する。このような構造内では、カチオンは第一配位圏において8個のアニオンにより囲まれる。
【0044】
それゆえに、正方晶系ジルコニア又は立方晶系ジルコニアを含む歯科用セラミック物品は、より大きな原子若しくはイオン半径を有する希土類元素金属若しくはイオンが大体嵌合し得るセラミック構造内の領域を有する。
【0045】
特定の理論に束縛されるのを望むものではないが、大きな原子若しくはイオン半径を有する金属又はイオンは焼成工程後の歯科用セラミック物品のひずみを改善するのを助け得ること、かつより小さな原子若しくはイオン半径を有する金属又はイオンは焼成工程後の着色された歯科用セラミック物品の視覚的外観に貢献することが考えられる。
【0046】
それゆえに、本発明の着色溶液を使用することにより、用意された歯の構造体上に幅広の歯科用フレームワーク(例えば、3、4又は5を超えるユニットを有する歯科用ブリッジ)の精密嵌合を改善することが可能である。
【0047】
焼結された歯科用セラミック物品のひずみにおけるこの可能な低減はまた、焼成プロセス全体の簡潔化を可能にする。本発明のいくつかの実施形態に関して、有意な時間遅延なしに、例えば従来の市販の色調調整液について通常行われるべき追加的な乾燥工程の必要なしに、加熱炉の中で歯科用セラミックフレームワークの濡れた状態の物品を焼結することが可能である。乾燥工程は、最大約3時間にわたって続き得る。本発明の着色溶液を使用すると、費用節約とともに焼結サイクル時間の短縮が達成可能になるように思われる。炭化水素などの有機溶媒のような比較的低い蒸気圧を有する溶媒の使用は、サイクル時間を更に一層短縮し得る。
【0048】
更に、特定の実施形態では、本発明の着色溶液で処理された歯科用セラミックフレームワークは、焼成工程後に歯のような色を示す。
【0049】
数ヶ月間にわたって保存することができる安定な着色溶液を有することが、必須ではないが、一般的に望ましい。本発明の着色溶液の特定の実施形態は通常、相当長い時間周期(周囲条件下で少なくとも約4週間〜約12ヶ月間)にわたって安定なままである。これらは典型的には、周囲条件(23℃、常圧)下での保存中に、着色剤のいかなる可視的な沈殿を示さない。
【0050】
本発明の特定の実施によれば、使用できる対イオン及び/又は錯化剤は純粋有機物質であり、それゆえにH、N、O、Cなどのような元素のみを含有し、焼結プロセス中に有害残留物を残さないで完全燃焼できる。熱分解は、水、窒素又は二酸化炭素のような非腐食性ガスのみを主に生じ得る。
【0051】
大量のハロゲンイオンの存在は、焼結プロセス中の高温での着色溶液の分解により、問題を引き起こすことがある。分解は、焼結炉内に塩素又はHClのような腐食性物質の形成に至ることがある。いかなる理論にも束縛されるのを望むものではないが、これらの気体は加熱している要素の表面で腐食を引き起こし、加熱している要素の材料(例えばMoSi及び微量の鉄を含有し得る)との反応により、MoCl又はFeClなどの、他の揮発性化合物を生じることがある。いくつかの場合では、生じる反応生成物は、歯科用セラミック物品の表面上で縮合又は分解して焼結し、これにより、冷却後の焼結された歯科用セラミックフレームワークの表面上の変色を引き起こすことがある。
【0052】
本発明の着色溶液は溶媒を含む。溶媒は、組成物の構成成分、特に選択された着色剤(1つ又は複数)を少なくとも部分的に溶解できるべきである。単独又は混和材料中のいずれかで使用できる典型的な溶媒には、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコールのようなアルコール、アセトン、エチルアセトンなどのケトンのような極性非プロトン性液、並びにアルコール及び/又はケトンと水との混合物が挙げられる。純粋形態で使用できる好ましい溶媒には、例えば水及びアルコールが挙げられる。溶媒の有用な混合物の例には、水とエチルアルコールが挙げられる。これらの溶媒は極性錯体に関して特に有用である。非極性錯体に関しては、エーテル(ジエチルエーテル、THFなど)又は炭化水素(ペンタン、ヘキサン、ヘプタン及びオクタンなど;そのn−、sec−、tert−異性体など)を使用できる。
【0053】
使用される溶媒の量は、達成されるべき結果を得ることができなくならない限り、特に制限されない。本発明による典型的な着色溶液は、組成物全体の重量に関して、少なくとも約60重量%の溶媒、少なくとも約75重量%の溶媒、又は少なくとも約90重量%の溶媒を含有する。
【0054】
着色溶液はまた、着色剤を含む。着色剤は、異なる原子若しくはイオン半径を有する、少なくとも2つの異なる金属又は金属イオンの混合物を含む。これらの金属又は金属イオンは一定の量で存在する。
【0055】
希土類元素金属又はイオンには、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuが挙げられる。
【0056】
遷移金属又はイオンには、IIIA、IVA、VA、VIA、VIIA、VIIIA、IB、IIB族の金属が挙げられる。本発明の目的に特に有用であることが判明している金属には、Mn、Er及びPrが挙げられる。
【0057】
金属は、少なくとも2つの異なる金属又はイオンが存在するという条件で、単独又は他の金属との混和材料中のいずれかで使用できる。
【0058】
本発明の特定の実施形態では、着色剤は、少なくとも約2つの異なる種の希土類元素金属又はイオンと、少なくとも1種の遷移金属又はイオンとを含む。特定の実施形態では、着色剤は、Pr、Er及びMnを含む。
【0059】
希土類元素金属又はイオンは、遷移金属若しくはイオンの原子又はイオン半径よりも大きな原子又はイオン半径を有する。典型的には、希土類元素金属イオンのイオン半径は約0.9Åを超え、一方で、遷移金属イオンのイオン半径は約0.9Åを下回るか又は約0.8Åを下回る。イオン半径のサイズは通常、イオンの電荷及び配位数に依存する。上記半径は、配位数6を指す(有効イオン半径は、例えば「CRCハンドブック・オブ・ケミストリー・アンド・フィジックス(CRC Handbook of Chemistry and Physics)」第76版、1995年〜1996年、CRCプレス(CRC Press)、ボカ・ラトン(Boca Raton)、12−14〜12−15に報告されている)。
【0060】
着色溶液中に含有される金属イオンの量は、特に焼成プロセス後に、セラミックフレームワークの適切な着色を達成するのに十分であるべきである。使用される着色剤の総量は、達成されるべき結果を得ることができなくならない限り、特に制限されない。
【0061】
良好な結果は、例えば、総量すなわち着色溶液中に存在する着色剤が、組成物全体の重量に関して、約0.01〜約20重量%の範囲内、又は約0.1〜約17.0重量%の範囲内、又は約1〜約15重量%の範囲内、又は約2〜約13重量%の範囲内、又は約2〜約12重量%の範囲内の金属イオンであれば、達成できる。
【0062】
希土類元素金属又はイオンは、着色溶液中に、少なくとも約0.05mol/L(溶媒)、又は少なくとも約0.06mol/L(溶媒)、少なくとも約0.07mol/L、又は少なくとも約0.08mol/L、又は少なくとも約0.1mol/L、又は少なくとも約0.2mol/L(溶媒)の量で存在する。
【0063】
着色溶液中に存在する希土類元素金属又はイオンに関して特定の上限はない。好ましくは、量は、保存安定溶液を得ることができるようにすべきである。典型的には、量の上限は、約1mol/L(溶媒)又は約0.8mol/L(溶媒)又は約0.7mol/L(溶媒)又は約0.6mol/L(溶媒)の値を超えない。
【0064】
遷移金属又はイオンは、溶液中に、約0.00001〜約0.05mol/L(溶媒)の量で、又は約0.0001〜約0.03mol/L(溶媒)の量で、又は約0.0005〜約0.02mol/L(溶媒)の量で、又は約0.0008〜約0.01mol/L(溶媒)の量で存在する。
【0065】
通常、着色剤は、カチオン及びアニオンを含む塩を含む。有用であることが判明しているアニオンには、Cl(Y=1)、OAc(Y=1)、NO(Y=1)、NO(Y=1)、CO2−(Y=1)、HCO(Y=1)、ONC(Y=1)、SCN(Y=1)、SO(Y=1)、SO2−(Y=1)、グルタレート(gluturate)(Y=2)、ラクテート(Y=1)、グルコネート(Y=1)、プロピオネート(Y=1)、ブチラート(Y=1)、グルクロネート(Y=1)、ベンゾエート(Y=1)、フェノラート(Y=1)が挙げられる(ここで、Yは、アニオン中に存在する配位している配位子の数を示す)。
【0066】
上記イオンの一部はまた、本発明の意味内で1又は2を超える錯化配位子を有する。しかしながら、シトレート(Y=3)などの、本発明の意味内で2を超える錯化配位子を含有する他のアニオンを使用してもよい。それゆえに、アニオンは2つの機能を果たすことができる。第一に、アニオンは着色剤中に存在する金属イオンについての対イオンとして単純に作用でき、第二にアニオンは錯化剤として作用できる。
【0067】
本発明の着色溶液に使用できる着色剤の具体例には、Er、Mn及びPrの酢酸塩、炭酸塩及び塩化物が挙げられる。
【0068】
特定の実施形態では、本発明の着色溶液はまた錯化剤を含んでもよい。錯化剤が存在する場合には、錯化剤は、典型的には、溶媒中に着色剤を溶解するのに、又は着色剤の沈殿を防ぐのに、十分な量で溶液中に存在する。錯化剤は、組成物全体の量に関して、少なくとも約2重量%、又は少なくとも約5重量%、又は少なくとも約15重量%の量で存在できる。上限はないが、しかしながら、通常、使用される錯化剤の量は、組成物全体の量に関して、約60重量%又は約50重量%又は約40重量%の量を超えない。
【0069】
例えば、錯化剤は、着色剤中に含有されるイオンのモル量に関して、化学量論比で使用できる。
【0070】
良好な結果は、着色剤中に存在する金属イオンのモル量に対する錯化剤のモル量の比が約1又は約2又は約3以上の場合に達成できる。
【0071】
錯化剤が添加される場合には、錯化剤は通常、組成物の別個の構成成分として添加される。しかしながら、錯化剤はまた、例えば、着色構成成分中に存在する金属イオンの対イオンとして、着色剤の一部として添加できる。例には、シトレート及びアスコルベートが挙げられる。
【0072】
いかなる理論にも束縛されるのを望むものではないが、錯化剤は、着色剤の金属イオン(1つ又は複数)と錯体を形成して、選択された溶媒に着色剤が溶解するのを助け、並びに特に保存時に着色剤が溶液から沈殿するのを防ぎ、これによってより良好な保存安定組成物を得るのを助けることができると考えられる。
【0073】
着色剤の金属と錯体を形成できる錯化剤は、様々な構造を有することができる。形状は通常、「配位数」、すなわち金属に結合している配位子の数に依存する。通常、結合している配位子は数えることができるが、場合によっては計数さえ曖昧になることがある。配位数は通常2〜12であるが、多数の配位子も稀ではない。結合の数は、金属イオンの、サイズ、電荷、及び電子配置に依存する。ほとんどの金属イオンは1を超える配位数を有することができる。
【0074】
配位数から様々な配位子構造配置が得られる。ほとんどの構造は、球上点パターン(すなわち、中心原子が、形状の隅が配位子の位置である多面体の真ん中にあるかのようである)に従い、ここで、軌道の重複(配位子と金属軌道との間)と配位子同士の斥力とが、特定の規則的形状に導く傾向を有する。
【0075】
ほとんどの観察される形状は以下に列挙されるが、例えば、異なる種の配位子の使用(不規則的な結合距離を生じ、配位原子は球上点パターンに従わない)により、配位子のサイズにより、又は電子効果により、規則的形状から逸脱する多くの場合がある。
2配位のための直線、
3配位のための三方平面、
4配位のための四面体又は平面四角形
5配位のための三方両錘又は四方錘、
6配位のための八面体(直交)又は三角柱、
7配位のための五方両錐、
8配位のための四方逆プリズム、及び
9配位のための三冠三角柱(三側錐三角柱)。
【0076】
キレート化錯体の増加した安定性は、キレート効果と呼ばれる。この点において、錯化剤はキレート化剤(又は多座配位子)としても特徴付けることができ、中心原子上の1つを超える配位部位に結合できる。配位子が完全に置換されるためには中心原子に対する全ての結合を破断する必要があるので、分離分子の数を増やすためにより多くのエネルギーを必要とする。キレートがいくつかの単座配位子(水又はアンモニアなど)により置換される場合には分子の総数は減少するが、一方で、いくつかの単座配位子がキレートにより置換される場合には遊離分子の数は増加する。したがって、この効果は、より多くの部位がより少ない配位子に使用される点でエントロピー的であり、これによりより多くの未結合分子が残される:溶液中の分子数の全体的な増加及び対応するエントロピーの増加。
【0077】
少なくとも2、3、4、5又は6個の配位している配位子を有する錯化剤を使用して、良好な結果を達成できることが判明している。
【0078】
本発明の意味内での配位している配位子は、金属イオンと相互作用できる分子構造内の位置として定義される。この相互作用は多くの場合、上記に概説したような錯体構造の形成を導く。
【0079】
本発明によれば、錯化剤は以下のように分類できる:
6個の配位している配位子を有する錯化剤(Y=6)、例えば、EDTA(エチレンジアミン四酢酸);18−クラウン−6;2,2,2−クリプタンド(crypatand);ポリアクリレート、ポリアスパラゲートのようなポリマー性配位子、「無限」数の配位している配位子を有する酸性ペプチドは、6個の配位している配位子を有する錯化剤として数えられている。
5個の配位している配位子を有する錯化剤(Y=5)、例えば、15−クラウン−5;シクロ−ペンタジエン。
4個の配位している配位子を有する錯化剤(Y=4)、例えば、NTA(ニトリロトリアセテート);12−クラウン−4;トリエチレンテトラミン;ポルフィン2−;フタロシアニン2−ビス(サリチレート)エチレンビス(イミン)サレン2−
3個の配位している配位子を有する錯化剤(Y=3)、例えば、CO(COO)3−
2個の配位している配位子を有する錯化剤(Y=2)、例えば、HC2−;サリチレート、グリシネート;ラクテート;アセチルアセトネート;プロピレンジアミン;アスコルベートC2−;CO(COOH)(COO)2−
【0080】
シトレートは、クエン酸のイオン形態であり、例えば、CO(COO)3−、すなわち、クエン酸マイナス3水素イオンが挙げられる。シトレートはこの基を含有する化合物であり、イオン性化合物、塩、又は類似の共有結合性化合物、エステルのいずれかである。クエン酸は三塩基酸であるので、中間体イオンが存在し、これはクエン酸水素イオン、HC2−、及び二水素性クエン酸イオン、Hである。これらは同様に、酸性塩と呼ばれる塩を形成できる。クエン酸水素イオンの塩は弱酸性であり、一方、クエン酸イオン自体の(ナトリウムイオンなどの不活性イオンとの)塩は弱塩基性である。
【0081】
一般に、水系では、錯化配位子としてアニオン性基を有する錯化剤が好ましいであろう。少なくとも一部の錯化配位子はアニオン性であるべきである。純粋なアミン(例えば、pH値8〜14のエチレンジアミン)のような非電荷錯化配位子(又は更にはカチオン性配位子)を有する錯化剤は、不十分にしか安定でない溶液を生じる場合がある。
【0082】
錯化剤が存在する場合には、錯化剤は、典型的には、溶媒中に着色剤を溶解するのに十分な量で存在する。有用な量は式:X1/X2Yが約5、約6又は約7を超えるか又は等しい(ただし、X1は錯化剤の[mol]での量であり、X2は着色剤中に存在する金属イオンの[mol]での量であり、Yは使用される錯化剤の配位している配位子の数である)式を満たす。
【0083】
着色溶液は着色剤の部分として少なくとも2つの異なる金属を含有するので、存在する金属イオンのそれぞれの量を加算しなければならない。例えば、着色剤が1molのMnClと2molのErAcとを含有する場合には、X2は3となる。
【0084】
着色溶液が一定量の特定の錯化剤及び着色剤を含有する場合には、着色剤中に存在する金属イオンについての対イオンは錯化剤として作用することができ(シトレートなど)、それゆえに、錯化剤の量と着色剤のアニオンの量もまた加算しなければならない。例えば、1molのEDTAが1molのシトレートとともに使用される場合には、X1は2となる。
【0085】
本発明の着色溶液はまた、安定剤(メトキシフェノールヒドロキノン又はトパノールAなど)、一時的結合剤、緩衝剤(アセテート又はアミノ緩衝剤など)又はチキソトロピー物質(多糖、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール(PEG)、セルロース誘導体など)のような添加剤を含むことができる。
【0086】
これらの添加剤のいずれも存在する必要性はないが、しかしながら、これらの添加剤は存在できる。これらが存在する(すなわち、添加剤の量が約0.01重量%を超える)場合には、これらは通常、組成物全体の重量に関して、最大約4重量%又は最大約6重量%又は最大約12重量%の量で存在する。
【0087】
非常に特定的な実施形態では、本発明の着色溶液は、有機エルビウム塩(例えば、酢酸エルビウム)、有機プラセオジム塩(例えば、酢酸プラセオジム)、微量の有機マンガン塩(例えば、酢酸マンガン(II))、錯化剤(例えば、EDTA)及び溶媒(例えば、水)を含む。
【0088】
溶媒として水を含む着色溶液のpH値は、特に制限されない。有用なpH値の例は、1、2、3、4、5、6、7、8、又は9以上である。それゆえに、pH値は、約1〜約9の範囲内、又は約2〜約8の範囲内であることができる。pH値の測定は、当業者により既知の手段で行うことができる。例えば、メトローム(Metrohm)(商標)826のような装置又はpH変動試験紙(pH mobile indicator paper)を使用できる。
【0089】
好ましい実施形態では、着色溶液は透明である。可視光線(約400nm〜約700nm)のビームが溶液により散乱せず、側面から観察できない(チンダル現象が生じない)場合に、溶液は本発明の意味内において透明として特徴付けることができる。しかしながら、ビームの方向における可視光線の透過ビームの強度は、着色性金属イオンによる光の吸収により、弱められ得る。
【0090】
着色溶液はまた、十分な、歯科用セラミックフレームワークの濡れ及びその孔への浸透が達成できるように、適切な粘度を有すべきである。良好な結果は、約1.0mPas、最大100mPas又は最大約80mPas又は最大約60mPasの動的粘度を有する溶液で得ることができる。
【0091】
動的粘度は、円錐平板形状、直径50mm、角度(円錐)1°を使用するフィジカ(Physica)MCR301装置により23℃で測定できる。典型的な剪断速度は200回転/秒であるが、しかしながら、一般に液体の粘度は広い範囲の剪断速度から独立している。
着色溶液の粘度が高すぎる場合には、着色された歯科用セラミックフレームワークの明度は明るくなり過ぎることがある。着色溶液の粘度が低すぎる場合には、着色された歯科用セラミックフレームワークの明度は均質ではなくなることがある。
【0092】
1つの実施形態によれば、本発明の着色溶液は、組成物全体(1つ又は複数の溶媒を含む)の重量に関する重量%で、
約60〜約96重量%の量又は約70〜約94重量%の量又は約80〜約90重量%の量の溶媒、
約0.1〜約20重量%の量又は約0.5〜約10重量%の量又は約0.9〜約5.0重量%の量の、希土類元素金属及び遷移金属を含む着色剤、
約0〜約60重量%の量又は約5〜約50重量%の量又は約15〜約40重量%の量の錯化剤、及び
所望により、約0.1〜約12重量%の量又は約1〜約6重量%の量又は約2〜約4重量%の量の添加剤(例えば、安定剤、一時的結合剤、緩衝剤及び/又はチキソトロピー物質のような)を含むことができる。
【0093】
本発明はまた、歯科用セラミック物品を着色溶液で着色する方法にも関し、この方法は、
本発明の文脈内で記載されている着色溶液及び好ましくは予備焼結された歯科用セラミック物品を供給する工程と、
好ましくは着色溶液で予備焼結された歯科用セラミック物品を処理する工程と、
所望により、処理された歯科用セラミック物品を乾燥させる工程と、
所望により、処理された歯科用セラミック物品を好ましくは完全密度に焼成させる又は焼結させる工程とを含む。
【0094】
更なる実施形態では、歯科用物品(例えば、フレームワーク)は、例えば、シェイドガイドからのヴィタ(Vita)(商標)シェイドなどの、所定の又は望ましい歯の色に適合するように着色される。この点において、本発明に記載される方法はまた、所望により、処理される患者の歯(1つ又は複数)が有する色に基づいて様々な着色溶液のセットから好適な着色溶液を選択する工程を含んでもよい。この選択工程は、処理工程に先立って行われる。
【0095】
それゆえに、本発明の着色溶液は、それぞれが特定の歯の色に調整された複数の様々な着色溶液を含有するキットの一部であることができる。
【0096】
焼成又は焼結工程は、受容可能な歯に似た色(例えば、ヴィタ(Vita)(商標)シェイドガイドに適合する色)を有する歯科用セラミック物品を得られる条件下で行われるべきである。
【0097】
歯科用セラミック物品の着色は通常、溶液中に物品を浸漬することにより達成される。しかしながら、溶液はまた、噴霧、ブラッシング、塗装により若しくはスポンジ又は布地を使用することにより、物品に適用できる。
【0098】
歯科用セラミック物品は通常、室温(約23℃)で約1〜5分間、好ましくは約2〜約3分間にわたって、溶液で処理される。
【0099】
好ましくは、圧力は使用されない。
【0100】
着色溶液の歯科用セラミック物品内への浸入深さの約5mmは十分であると考えられる。浸入深さは以下のようにして測定することができる。
【0101】
一定量の有機着色剤(例えば、100ppmのローダミンB)を含有する着色溶液で満たされた平坦なカップの中に、プラスチックメッシュ(メッシュサイズ500μm)を配置する。直径=約24mm、高さ=30mmのサイズを有する予備焼結された歯科用セラミックフレームワーク(ラヴァ(LAVA)(商標)フレーム;3M ESPE)の試験片をプラスチックメッシュ上に配置し、着色溶液に2分間にわたって、浸漬深さ5mmで浸す。歯科用セラミックフレームワークを溶液から取り出し、薄切りにする。切断端を仕上加工し、溶液の歯科用セラミックフレームワーク内への浸透を蛍光顕微鏡で分析する。添加された有機着色剤が浸漬深さの全範囲で、小さな境界領域(約2mm)においてだけでなく、検出できる場合には、溶液の浸透作用は施術者の必要性を満たすと考えられる。
【0102】
着色された歯科用セラミック物品の乾燥は必要不可欠ではないが、焼成に必要とされる時間を削減するため及び望ましくない不均質な色効果を防止するために、好ましいことがある。乾燥は、周囲条件下で数時間(約1〜約3時間)にわたって表面上で歯科用セラミック物品をただ保存することにより、作用を発揮できる。
【0103】
焼成条件は、使用されるセラミック材料に依存する。使用できる加熱炉は、市販のラヴァ(LAVA)(商標)サーム(Therm)(3M ESPE)である。焼成プロセスの間、着色された歯科用セラミックフレームワークはその最終形状に焼結され、これにより、外形寸法、密度、硬さ、傷破断強度及び/又は粒度に関して変化を受ける。
【0104】
ZrO系セラミックに関しては、焼成は通常、約1300℃超、好ましくは約1400℃超、より好ましくは約1450℃超の温度で生じ、少なくとも約0.5時間、好ましくは少なくとも約1時間、より好ましくは少なくとも約2時間にわたって続く。
【0105】
Al系セラミックに関しては、焼成は通常、約1350℃超、好ましくは約1450℃超、より好ましくは約1650℃超の温度で生じ、少なくとも約0.5時間、好ましくは少なくとも約1時間、より好ましくは少なくとも約2時間にわたって続く。
【0106】
一般に、焼結又は焼成条件は、焼結された歯科用セラミック物品が理論的に達成可能な密度と比較して約98%以上の密度を有するように、調節される。1つの実施形態では、これは約1300℃超の温度を使用して達成できる。
【0107】
本発明はまた、本発明の着色溶液で処理された歯科用セラミック物品(好ましくは予備焼結された歯科用セラミックフレームワーク)、並びにこのような処理工程及び焼結工程後に得ることができる歯科用セラミック物品にも関する。
【0108】
本発明による液体で色調調整された歯科用セラミック物品は、典型的には、例えば純粋な酢酸プラセオジムの溶液とは異なって、「暖かい」、歯のような色を呈する。
【0109】
このような焼結工程後の歯科用セラミック物品は通常、以下の特徴の少なくとも1つ以上を呈する。
【0110】
ワイブル強度(シグマ0):少なくとも約800MPa、又は少なくとも約900MPa又は少なくとも約1000MPa、
b値:
約65〜約80の範囲内又は約67〜約78の範囲内のL
約−1.5〜約4の範囲内又は約−1.1〜約3.5の範囲内のa
約5〜約32の範囲内又は約7〜約28の範囲内のb
ただし、これらは本発明の文脈内で記載されているように測定される。
【0111】
値の測定のより詳細な記載は、下記の実施例の部分に与えられる。
【0112】
焼結された歯科用セラミック物品のワイブル強度(シグマ0)は、DIN EN ISO6872、1999年3月版に記載されている「パンチオンスリーボール試験」(2軸曲げ強度)に従って、以下の修正(スティールボールの直径:6mm;支持円:14mm;フラットパンチの直径:3.6mm;サンプルディスクの直径:19〜20mm、サンプルディスクの厚さ:1.6mm(+/−0.1mm)、試料の研削及び研磨は行わない)を加えて、測定できる。
【0113】
典型的には、b値は約32を下回り、又は約28を下回り、一方で、L及びaについての値は自由に選択できる。
【0114】
本発明の着色溶液は、色素のような、表面のみを色付けして本体を色付けしないいずれかの有機着色剤又は着色手段を必ずしも含まない。
【0115】
必須ではないが、可能である場合には、着色溶液は、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)のような、焼結プロセス中に焼成装置にとって有害となり得る成分を含有すべきではなく、又は少量しか含有すべきではない。本発明の特定の実施形態ではこの点において、着色溶液中に含有されるハロゲンイオンの量は、例えば約0.3mol/Lを下回るか又は約0.2mol/Lを下回るか又は約0.15mol/Lを下回るように、低く維持すべきである。
【0116】
更に、本発明の別の実施形態では、着色剤は、鉄又は鉄イオンを本質的に含まない。それゆえに、鉄又は鉄イオンの量は通常、約0.001mol/Lを下回るか又は約0.0001mol/Lを下回るか又は更には約0.00001mol/L(溶媒)を下回る。
【0117】
本発明の着色溶液は、特に、それぞれ、ZrO及び/若しくはAlを含むか又はこれらから本質的に構成される種々の組成物の予備焼結されたセラミック体に適用することができる。これらの組成物は、当該技術分野において当業者に既知である(有用な組成物の例は、例えば、米国特許第6,709,694号に記載されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる)。ZrOは、好ましくはYで安定化される。使用できる他の予備焼結されたセラミック物品には、例えば米国特許出願公開第2004/0119180号又は米国特許6,713,421号に記載されているものが挙げられ、これらの両方の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0118】
それゆえに、本発明はまた、焼結若しくは焼成工程の間又は後での歯科用セラミック物品の焼結ひずみを低減するために、本文で記載したような、溶媒と、希土類元素金属又はイオン及びこれらの混合物を含む着色剤とを含む着色溶液を使用する方法にも関する。
【0119】
本発明は、以降、実施例によって記述され、その内容は、本発明の範囲を制限することを意図しない。
【0120】
実施例
測定
pH値
メルク社(Merck KGaA)(ドイツ、ダルムシュタット(Darmstadt))から入手可能な変動pH試験紙(pH0〜14、pH試験片、ノンブリード型、商品コード(Art. Nr.)1.09535.0001)を使用して、pH値を測定した。
【0121】

市販のハンターLabシステム(Hunter Lab System)(ハンターLab社(Hunter Lab., Corp.))を使用して、DIN 6174(セクション2)に与えられた方式に従う製造者の操作マニュアルの所与の使用説明書に従って、L値を測定した。緻密焼結された試料(直径:12〜20mm、厚さ:1.5mm)を使用して、値を測定した。試料の表面を掻き傷がないように研磨した(研削工程;74μm、10μm、9μm、3μm)。ハンターLabにおいて以下の調整を行った:測定開口部:6mm、測定スポットサイズ:6mm。
【0122】
値の測定についての更なる指針を米国特許第6,756,421号、第4欄、26〜55行に見ることができ、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0123】
「L」は、明度(100=白、0=黒)を指し、「a」は赤−緑軸を指し、「b」は黄−青軸を指す。
【0124】
焼結ひずみ−試験片の着色及び焼結工程の間のひずみにおける影響を示すためのモデル実験
市販のラヴァ(LAVA)(商標)スライス加工ユニットを使用することにより、41.0×4.0×3.0mmのサイズを有する市販の予備焼結されたラヴァ(LAVA)(商標)フレームジルコニア材料の試験片を調製した。試験片の長軸に垂直な2つの溝を試験片の4mm側部上に互いに30mmの距離にあるように調製した。溝は試験片の長軸に関して対称に配置されたので、試験片の端部とのそれぞれの溝の距離は(長軸方向で)5.5mmであった。研削砥石用工具ホルダにより、厚さ0.5mmのソフレックス(Soflex)(商標)ディスク及び直径約15mmの研削砥石を使用して、溝を調製した。それぞれの溝は、幅約0.4mm及び深さ0.1mmを有した。粉塵は圧縮空気流を適用して表面から取り除いた。次に、試験片をそれぞれの着色溶液に約120秒間にわたって浸した。試験片の表面上の過剰な液体を湿潤パルプで優しく取り除いた。
【0125】
白金ワイヤ焼結器具(スイング式、3M ESPE商品番号78990244697、「スイング」ワイヤの直径0.32mm、支持ワイヤ0.65mm、器具全体の高さ約35mm)上に、ワイヤが上記溝内に固定されるように、調製した試験片を配置した。ムライト製「ハニカム(honeycomb)」焼結支持キャリアに焼結器具自体を配置して、焼結の間の十分な機械的安定性を確保した(中空コームの直径約1.85mm、高さ約11.5mm)。焼結支持キャリアは市販されている(例えば3M ESPE;商品番号78990243988)。焼結器具の下方部分は大体固定され、支持キャリア内でほんのわずかだけ動くことができる一方で、上方部分は国際公開第2006/108677(A1)号の図4に記載されているように、スイングのように自由に動くことができる。ハニカム本体をアルミナのボウルの中に配置した。ハニカムアルミナ焼結支持体上の試験片の得られる高さは、約10mmであった。次に、3M ESPEラヴァ(LAVA)(商標)ジルコニア歯科用材料のために使用される典型的な焼結プロセス(室温での3.5時間の乾燥、加熱速度10℃/分で最大1500℃に加熱、1500℃で2時間にわたっての保持、及び室温への受動的冷却、全サイクル時間約11時間)に試験片を曝した。得られたジルコニア材料は十分に稠密であり、典型的な3M ESPEラヴァ(LAVA)(商標)材料に相当した。
【0126】
図1は、どのようにセラミックフレームワークの焼結が達成されたかを模式的に示す。焼結器具(1)を支持キャリア(2)内に配置して、試験片(3)を焼結器具(1)上に配置する。試験片(1)は焼結プロセス後にわずかに変形する。図1による実施形態では、4つの個別試験片を同時に焼結させる。
【0127】
図2は、どのようにひずみを測定したかを図表で示す。較正した光学測定顕微鏡(測定顕微鏡ニコン(Nikon)MM−40)を使用して、ひずみを測定した。それぞれのひずんだジルコニア試験片(3)を顕微鏡の測定用バーの近くに取り付けた。試験片は典型的には測定用バーにその2つの端部で(試験片の長軸に関して)接触させた。次に、入射光線モードの顕微鏡を、試験片の2つの端部に、測定バーと接触させた上側で焦点合わせした。顕微鏡のSKEW機能(SKEW:測定方法を容易にする測定顕微鏡により提供される機能)を使用することにより、ひずんだ試験片の端部の間に基準線を描いた。続いて、顕微鏡のxy−ボードをシフトすることにより、最大変位点を基準線に調節した。シフトする前後でのxy−ボードの値を読み取ることにより、最大変位についての値を計算した。
【0128】
測定値は下の表1に与えられる。
着色溶液の調製
概要
希土類元素金属又は遷移金属のそれぞれの塩を23℃で撹拌しながら好適な溶媒に溶解させた。所望され、適切である場合には、一定量の錯化剤及び/又は他の添加剤を加えた。
使用された水は、脱イオン水であった。使用された錯化剤及び着色剤は、シグマ・アルドリッチ社(Sigma Aldrich Co.)又はABCR社(ABCR GmbH & CO.KG)(ドイツ、カールスルーエ(Karlsruhe))から市販されている。
【0129】
上記概要に従って、溶液No.2〜6を調製した。使用された構成成分及び分量は下の表1の通りである。着色溶液No.1は、FS4ラヴァ(LAVA)(商標)フレームシェイド染色液(Frame Shade dying Liquid)(3M ESPE;商品番号68577)として市販されている。着色溶液No.2は比較例である。
【0130】
焼結ひずみを低減する能力、pH値及びLb値に関して、溶液1〜6を試験した。括弧内の値は、標準偏差である。

【表1】


n.a.は、該当なしを意味する;Ac=アセテート
1)PrAcの0.75重量%水溶液。
2)EDTAジアンモニウム塩として添加した。
【0131】
図3は、ひずみに関する表1の結果をボックスプロットとしてグラフで示す。それぞれの着色溶液について4回の個別測定を行い、平均値を求めた。箱の中の線は平均値を表す。箱のサイズは標準偏差を示す。平均値(y軸)はmmで与えられる。着色溶液の数(x軸)は、上の表1の番号に相当する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科用セラミック物品を着色するための着色溶液であって、
溶媒、及び
少なくとも約0.05mol/L(溶媒)の量で前記溶液中に存在する希土類元素金属又はイオンと、前記希土類元素金属又はイオンとは異なりかつ約0.00001〜約0.05mol/L(溶媒)の量で前記溶液中に存在する遷移金属又はイオンとを含む着色剤を含む、着色溶液。
【請求項2】
前記着色剤が、金属カチオン及びアニオンを含む塩であり、前記アニオンが、Cl、OAc、NO、NO、CO2−、HCO、ONC、SCN、SO、SO2−、グルタレート、ラクテート、グルコネート、プロピオネート、ブチラート、グルクロネート、ベンゾエート及びフェノラートからなる群から選択される、請求項1に記載の着色溶液。
【請求項3】
前記希土類元素金属が、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1又は2に記載の着色溶液。
【請求項4】
前記遷移金属が、元素Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu及びZnで始まる周期表の欄、並びにこれらの元素の下に列記されている金属及びこれらの混合物から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の着色溶液。
【請求項5】
前記溶媒が、水、アルコール若しくは双極性非プロトン性液、非極性液、又はアルコール及び/又は双極性非プロトン性液と水との混合物からなる群から選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の着色溶液。
【請求項6】
以下の特徴:
23℃で約100mPasを下回る動的粘度、
水含有溶液に関して約1〜約9の範囲内のpH値、
可視光線に対して透明、
のうちの少なくとも1つを有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の着色溶液。
【請求項7】
本質的にFeイオンを含まない、請求項1〜6のいずれか一項に記載の着色溶液。
【請求項8】
安定剤、一時的結合剤、緩衝剤、チキソトロピー物質、及びこれらの混合物からなる群から選択される添加剤を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の着色溶液。
【請求項9】
前記着色剤中に存在する前記金属イオンに関して、好ましくは少なくとも化学量論比で錯化剤を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の着色溶液。
【請求項10】
前記錯化剤が、クラウンエーテル、クリプタンド、エチレンジアミン三酢酸及びその塩、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)及びその塩、ニトリロトリアセテート(NTA)及びその塩、クエン酸及びその塩、トリエチレンテトラミン及びポルフィン並びにれらの混合物からなる群から選択される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の着色溶液。
【請求項11】
a.約0.05〜約1mol/L(溶媒)の量の前記希土類元素金属又はイオン、
b.約0.00001〜約0.05mol/L(溶媒)の量の前記遷移金属又はイオン、
c.約0〜約0.3mol/L(溶媒)の量のハロゲンイオン、
d.約0〜約60重量%の量の錯化剤及び
e.約0〜約15重量%の量の添加剤、
を含む(重量%は組成物全体に関してである)、請求項1〜10のいずれか一項に記載の着色溶液。
【請求項12】
歯科用セラミック物品を着色する及び/又は歯科用セラミック物品の焼結ひずみを低減する方法であって、
a)請求項1〜11のいずれか一項に記載の着色溶液と、歯科用セラミック物品とを供給する工程と、
b)前記着色溶液で前記セラミック物品を処理する工程と、
c)所望により、前記処理されたセラミック物品を乾燥させる工程と、
d)所望により、前記処理されたセラミック物品を最終密度に焼結させる工程とを含む、方法。
【請求項13】
前記焼結された歯科用セラミック物品が理論的に達成可能な密度と比較して約98%以上の密度を有するように、前記焼結条件が、調節される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の方法により得ることができる歯科用セラミック物品であって、
ZrO及び/又はAlを含み、クラウン、インレー、アンレー、アバットメント、ブリッジ又はインプラントの形状を有する、歯科用セラミック物品。
【請求項15】
前記焼結工程後に以下の特徴:
ワイブル強度(シグマ0):少なくとも約800MPa、又は少なくとも約900MPa、又は少なくとも約1000MPa、
値:約65〜約80の範囲内のL、約−1.5〜約4の範囲内のa、約5〜約32の範囲内のb
の少なくとも1つ以上を満たす、請求項12又は13に記載の方法により得ることができる歯科用セラミック物品。
【請求項16】
溶媒と、希土類元素金属又はイオン及びこれらの混合物を含む着色剤と、を含む着色溶液を使用する方法であって、
前記金属イオンが、焼結工程の間又は後での歯科用セラミックフレームワークの焼結ひずみを低減するために、少なくとも約0.05mol/L(溶媒)の量で存在する、方法。

【図1】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−534245(P2010−534245A)
【公表日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−518273(P2010−518273)
【出願日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際出願番号】PCT/US2008/069595
【国際公開番号】WO2009/014903
【国際公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】