説明

歯科用ホワイトニング組成物および方法

ポリマーと歯用ホワイトニング剤とを含む、歯科用ホワイトニング組成物が提供される。任意に硬化性であってもよい歯科用ホワイトニング組成物は、口腔表面のコーティングに関して有用である。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
歯をホワイトニングする製品および方法に対する消費者需要がある。歯用ホワイトニング製品は、歯科医および消費者の両方にとって入手可能であるが、全ての製品が、簡単で費用のかからない器具を使用して都合よく施行できるというわけではない。さらに、いくつかの製品は、歯のホワイトニングプロセスを実行するために十分な時間、繰り返し適用されなければならない。非効率的なホワイトニングを導き得る問題としては、例えば、所望の表面からの流動をしばしば生じる口腔表面への適用時の温度増加、および唾液による希釈が挙げられる。
【0002】
【特許文献1】米国特許第5,607,663号明細書
【特許文献2】米国特許第5,662,887号明細書
【特許文献3】米国特許第5,866,630号明細書
【特許文献4】米国特許第5,876,208号明細書
【特許文献5】米国特許第5,888,491号明細書
【特許文献6】米国特許第6,312,668号明細書
【特許文献7】米国特許第4,871,786号明細書
【特許文献8】米国特許第3,786,116号明細書
【特許文献9】米国特許第3,842,059号明細書
【特許文献10】米国特許第5,468,477号明細書
【特許文献11】米国特許第5,725,882号明細書
【特許文献12】米国特許第5,545,676号明細書
【特許文献13】米国特許第4,071,424号明細書
【特許文献14】欧州特許公報第173,567号明細書
【特許文献15】米国特許第5,154,762号明細書
【特許文献16】米国特許第6,136,885号明細書
【特許文献17】米国特許出願第10/327,411号明細書
【特許文献18】米国特許出願公開第2003−0166740号明細書
【特許文献19】米国特許出願公開第2003−0195273号明細書
【特許文献20】米国特許第5,501,727号明細書
【特許文献21】米国特許第4,693,935号明細書
【特許文献22】国際公開第01/30873号パンフレット
【非特許文献1】ポリマー ジャーナル(Polymer J.)14,913(1982)
【非特許文献2】ACS ポリマー プレプリンツ(ACS Polymer Preprints 25(1),245(1984)
【非特許文献3】マクロモレキュラー ケミストリー(Makromol.Chem.)185,9(1984)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
歯をホワイトニングする新規歯科用ホワイトニング組成物および方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一態様において、本発明は、口腔表面をコーティングするために適切な歯科用ホワイトニング組成物を提供する。この組成物は、歯用ホワイトニング剤と、極性基または分極性基を含む繰り返し単位、およびフッ化物放出基を含む繰り返し単位を含むポリマーとを含むが、ただし、ポリマーがペンダントエチレン系不飽和部分を含まない。好ましくは、歯用ホワイトニング剤は、次亜塩素酸塩、有機過酸化物、無機過酸化物、ヒドロ過酸化物、過酸、過酸化カルバミドまたはそれらの組み合わせを含む。
【0005】
もう1つの態様において、本発明は、口腔表面をコーティングするために適切な歯科用ホワイトニング組成物を提供する。この組成物は、歯科用ホワイトニング組成物の総重量を基準として、10重量%より多い歯用ホワイトニング剤と、極性基または分極性基を含む繰り返し単位、およびフッ化物放出基を含む繰り返し単位を含むポリマーとを含む。好ましくは、フッ化物放出基の繰り返し単位は、テトラフルオロホウ酸アニオンを含む。任意に、ポリマーは反応基をさらに含む。
【0006】
もう1つの態様において、本発明は、口腔表面をコーティングするために適切な、過酸化水素を含まない歯科用ホワイトニング組成物を提供する。この組成物は、歯用ホワイトニング剤と、極性基または分極性基を含む繰り返し単位、およびフッ化物放出基を含む繰り返し単位を含むポリマーとを含む。任意に、ポリマーは反応基をさらに含む。
【0007】
もう1つの態様において、本発明は、口腔表面をコーティングするために適切な歯科用ホワイトニング組成物を提供する。この組成物は、歯用ホワイトニング剤と、極性基または分極性基を含む繰り返し単位、およびテトラフルオロホウ酸アニオンを含むフッ化物放出基を含む繰り返し単位を含むポリマーとを含む。任意に、ポリマーは反応基をさらに含む。
【0008】
もう1つの態様において、本発明は、口腔表面をコーティングするために適切な歯科用ホワイトニング組成物を提供する。この組成物は、歯用ホワイトニング剤と、ペンダントエチレン系不飽和部分を含まないポリマーとを含む。ポリマーは、極性基または分極性基を含む繰り返し単位、ならびに疎水性炭化水素基、グラフトポリシロキサン鎖、疎水性フッ素含有基およびそれらの組み合わせよりなる群から選択される基を含む繰り返し単位を含む。
【0009】
もう1つの態様において、本発明は、口腔表面をコーティングするために適切な歯科用ホワイトニング組成物を提供する。この組成物は、歯科用ホワイトニング組成物の総重量を基準として、10重量%より多い歯用ホワイトニング剤と、極性基または分極性基を含む繰り返し単位、ならびに疎水性炭化水素基、グラフトポリシロキサン鎖、疎水性フッ素含有基およびそれらの組み合わせよりなる群から選択される基を含む繰り返し単位を含むポリマーとを含む。任意に、ポリマーは反応基をさらに含む。
【0010】
もう1つの態様において、本発明は、口腔表面をコーティングするために適切な、過酸化水素を含まない歯科用ホワイトニング組成物を提供する。この組成物は、歯用ホワイトニング剤と、極性基または分極性基を含む繰り返し単位、ならびに疎水性炭化水素基、グラフトポリシロキサン鎖、疎水性フッ素含有基およびそれらの組み合わせよりなる群から選択される基を含む繰り返し単位を含むポリマーとを含む。任意に、ポリマーは反応基をさらに含む。
【0011】
もう1つの態様において、本発明は、歯のホワイトニング方法を提供する。この方法は、本明細書に開示された歯科用ホワイトニング組成物を、硬組織表面または口腔環境の表面に適用する工程を含む。好ましくは、組成物は、分散系、懸濁液、乳濁液または溶液の形態である。好ましくは、組成物は水性組成物である。好ましくは、組成物を適用する工程としては、組成物をペイントする工程、組成物をブラッシングする工程、組成物を注射する工程、組成物をミスト塗布する工程、組成物を噴霧する工程、その上に組成物を有する基材を適用する工程、またはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0012】
また本発明は、本明細書に開示された歯科用ホワイトニング組成物の、口腔環境の硬組織表面上のコーティングを提供する。
【0013】
本明細書で使用される場合、「反応」基は、選択された条件下(例えば、フリーラジカルの存在下、または縮合反応条件下)で、もう1つの反応基またはもう1つの成分(例えば、架橋剤または縮合反応部位を有する化合物)と反応可能な基である。例えば、反応基を含むポリマーにおいて、反応基は、もう1つの反応基および/またはもう1つの成分と反応して、二量体化、オリゴマー化および/または重合反応を通して架橋を形成し得る。
【0014】
本明細書で使用される場合、「繰り返し単位」または「モノマー単位」は、エチレン系不飽和モノマーから誘導されるポリマー中の単位を指す。例えば、ポリプロピレンは、エチレン系不飽和モノマーのプロピレンCH=CH(CH)から誘導される−CHCH(CH)−モノマー単位を含む。
【0015】
本明細書で使用される場合、「硬化性」は、「硬化」可能である材料を指す。本明細書で使用される場合、「硬化」は、例えば、架橋、二量体化、オリゴマー化および/または重合反応を含むプロセスを包括することを意味する。
【0016】
本明細書で使用される場合、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」および/または「メタクリル」を集合的に指すように意図された略語である。
【0017】
本明細書で使用される場合、「a(数量について特に記されていないもの)」、「少なくとも1つ」および「1以上」は、交換可能に使用される。
【0018】
本明細書で使用される場合、全ての数は、「約」という用語によって修飾されると思われる。また、終点による数範囲の記述は、その範囲内に包含される全ての数を含む(例えば、1〜5は、例えば、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5等を含む)。
【0019】
本発明の上記要約は、本発明のそれぞれの開示された実施形態または全ての実施例を説明する意図を持たない。以下の記載に、特に、実例となる実施形態を例示する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、口腔表面をコーティングするために適切な歯科用ホワイトニング組成物を提供する。歯科用ホワイトニング組成物は、ポリマーと、歯用ホワイトニング剤とを含む。歯科用ホワイトニング組成物は、任意に、例えば、溶媒および添加剤を含んでもよい。好ましくは、組成物は、分散系、懸濁液、乳濁液または溶液の形態である。好ましくは、組成物は水性組成物である。
【0021】
歯科用ホワイトニング組成物は、硬化性であってもよい。硬化性組成物は、好ましくは、反応性ポリマーおよび/またはポリマーとは異なる重合性成分、ならびに開始剤系(例えば、1以上の開始剤)を含む。反応性ポリマーおよび/または重合性成分は、フリーラジカルとの反応を受けてよい。あるいは、反応性ポリマーおよび/または重合性成分は、例えば、水分の存在を含む縮合反応を受けてもよい。縮合反応を促進するために適切な触媒が任意に含まれてもよい。ポリマーおよび/または重合性成分の間で架橋化合物として作用するように、縮合反応部位を有する追加化合物が任意に含まれてもよい。
【0022】
上記成分を組み合わせることによって、単一部の液体またはゲルとして、本発明の歯科用ホワイトニング組成物を調製することができる。例えば、所望の温度(例えば、室温)で、ポリマーおよび歯用ホワイトニング剤を混合してよい。あるいは、組織に送達される前に混合される多数部の液体および/またはゲルとして、本発明の組成物を調製することができる。かかる多数部の系は、例えば、二成分酸化還元化学に基づく開始剤系を含む組成物および組成物中の他の材料と適合しない添加剤を含む組成物を含む、単一部の組成物において存在し得ない貯蔵安定性を提供し得る。
【0023】
本発明において使用されるホワイトニング剤は、歯をホワイトニングする効果を有するいずれの材料であってもよい。有用なホワイトニング剤としては、例えば、次亜塩素酸塩(例えば、次亜塩素酸ナトリウム)、有機過酸化物、無機過酸化物、ヒドロ過酸化物、過酸化水素、過酸(ペルオキシ酸としても既知である)、過酸化カルバミド(すなわち、尿素過酸化水素、過酸化水素カルバミドまたはペルハイドロール−尿素としても既知である過酸化水素の尿素錯体CO(NH)、およびそれらの組み合わせが挙げられる。組成物中のホワイトニング剤の濃度は、例えば、その活性次第で変更可能である。
【0024】
好ましくは、歯科用ホワイトニング組成物は、歯用ホワイトニング剤およびポリマーの総重量を基準として、少なくとも0.05重量%、より好ましくは少なくとも0.1重量%、そして最も好ましくは少なくとも0.5重量%の歯用ホワイトニング剤を含む。好ましくは、歯科用ホワイトニング組成物は、歯用ホワイトニング剤およびポリマーの総重量を基準として、多くても50重量%、より好ましくは多くても45重量%、そして最も好ましくは多くても40重量%の歯用ホワイトニング剤を含む。
【0025】
本願に開示されたポリマーは、以下、本明細書に記載されるような極性基または分極性基を含む繰り返し単位を含む。特定の実施形態において、ポリマーは、以下、本明細書に記載されるようなフッ化物放出基を含む繰り返し単位、疎水性炭化水素基を含む繰り返し単位、グラフトポリシロキサン鎖を含む繰り返し単位、疎水性フッ素含有基を含む繰り返し単位、調節基を含む繰り返し単位、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、ポリマーは反応基を任意に含む。適切な反応基(例えば、縮合反応を受けることが可能であるエチレン系不飽和基、エポキシ基またはシラン部分)は、例えば、(特許文献1)(ロッジ(Rozzi)ら)、(特許文献2)(ロッジ(Rozzi)ら)、(特許文献3)(ミトラ(Mitra)ら)、(特許文献4)(ミトラ(Mitra)ら)、(特許文献5)(ミトラ(Mitra)ら)および(特許文献6)(ミトラ(Mitra)ら)に開示されている。
【0026】
特に、一実施形態において、歯科用ホワイトニング組成物は、歯用ホワイトニング剤と、極性基または分極性基を含む繰り返し単位、およびフッ化物放出基を含む繰り返し単位を含むポリマーとを含むが、ただし、ポリマーがペンダントエチレン系不飽和部分を含まない。好ましくは、極性基または分極性基を含む繰り返し単位は、フッ化物放出基を含む繰り返し単位とは異なる。
【0027】
もう1つの実施形態において、歯科用ホワイトニング組成物は、歯科用ホワイトニング組成物の総重量を基準として、10重量%より多い歯用ホワイトニング剤と、極性基または分極性基を含む繰り返し単位、およびフッ化物放出基を含む繰り返し単位を含むポリマーとを含む。任意に、ポリマーは反応基を含む。好ましくは、極性基または分極性基を含む繰り返し単位は、フッ化物放出基を含む繰り返し単位とは異なる。
【0028】
もう1つの実施形態において、歯科用ホワイトニング組成物は、歯用ホワイトニング剤と、極性基または分極性基を含む繰り返し単位、およびフッ化物放出基を含む繰り返し単位を含むポリマーとを含むが、ただし、過酸化水素を含まない。任意に、ポリマーは反応基を含む。好ましくは、極性基または分極性基を含む繰り返し単位は、フッ化物放出基を含む繰り返し単位とは異なる。
【0029】
もう1つの実施形態において、歯科用ホワイトニング組成物は、歯用ホワイトニング剤と、極性基または分極性基を含む繰り返し単位、およびテトラフルオロホウ酸アニオンを含むフッ化物放出基を含む繰り返し単位を含むポリマーとを含む。任意に、ポリマーは反応基を含む。好ましくは、極性基または分極性基を含む繰り返し単位は、フッ化物放出基を含む繰り返し単位とは異なる。
【0030】
もう1つの実施形態において、歯科用ホワイトニング組成物は、歯用ホワイトニング剤と、極性基または分極性基を含む繰り返し単位、ならびに疎水性炭化水素基、グラフトポリシロキサン鎖、疎水性フッ素含有基およびそれらの組み合わせよりなる群から選択される基を含む繰り返し単位を含むポリマーとを含むが、ただし、ポリマーがペンダントエチレン系不飽和部分を含まない。好ましくは、疎水性炭化水素基は、160より多い分子量を有する。好ましくは、グラフトポリシロキサン鎖は、少なくとも500の分子量を有する。好ましくは、極性基または分極性基を含む繰り返し単位は、疎水性炭化水素基、グラフトポリシロキサン鎖、疎水性フッ素含有基およびそれらの組み合わせよりなる群から選択される基を含む繰り返し単位とは異なる。
【0031】
もう1つの実施形態において、歯科用ホワイトニング組成物は、歯科用ホワイトニング組成物の総重量を基準として、10重量%より多い歯用ホワイトニング剤と、極性基または分極性基を含む繰り返し単位、ならびに疎水性炭化水素基、グラフトポリシロキサン鎖、疎水性フッ素含有基およびそれらの組み合わせよりなる群から選択される基を含む繰り返し単位を含むポリマーとを含む。好ましくは、疎水性炭化水素基は、160より多い分子量を有する。好ましくは、グラフトポリシロキサン鎖は、少なくとも500の分子量を有する。任意に、ポリマーは反応基を含む。好ましくは、極性基または分極性基を含む繰り返し単位は、疎水性炭化水素基、グラフトポリシロキサン鎖、疎水性フッ素含有基およびそれらの組み合わせよりなる群から選択される基を含む繰り返し単位とは異なる。
【0032】
もう1つの実施形態において、歯科用ホワイトニング組成物は、歯用ホワイトニング剤と、極性基または分極性基を含む繰り返し単位、ならびに疎水性炭化水素基、グラフトポリシロキサン鎖、疎水性フッ素含有基およびそれらの組み合わせよりなる群から選択される基を含む繰り返し単位を含むポリマーとを含むが、ただし、過酸化水素を含まない。好ましくは、疎水性炭化水素基は、160より多い分子量を有する。好ましくは、グラフトポリシロキサン鎖は、少なくとも500の分子量を有する。任意に、ポリマーは反応基を含む。好ましくは、極性基または分極性基を含む繰り返し単位は、疎水性炭化水素基、グラフトポリシロキサン鎖、疎水性フッ素含有基およびそれらの組み合わせよりなる群から選択される基を含む繰り返し単位とは異なる。
【0033】
上記ポリマーを調製するための代表的な方法は、当該分野において周知であり、そして例えば、(特許文献1)(ロッジ(Rozzi)ら)、(特許文献2)(ロッジ(Rozzi)ら)、(特許文献3)(ミトラ(Mitra)ら)、(特許文献4)(ミトラ(Mitra)ら)、(特許文献5)(ミトラ(Mitra)ら)および(特許文献6)(ミトラ(Mitra)ら)に開示されるようなフリーラジカル重合条件を含む。
【0034】
本発明の歯科用ホワイトニング組成物は、好ましくは、歯用ホワイトニング剤およびポリマーの総重量を基準として、少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも55重量%、そして最も好ましくは少なくとも60重量%のポリマーを含む。本発明の歯科用ホワイトニング組成物は、好ましくは、歯用ホワイトニング剤およびポリマーの総重量を基準として、多くても99.95重量%、より好ましくは多くても99.9重量%、そして最も好ましくは多くても99.5重量%のポリマーを含む。
【0035】
極性基または分極性基を含む繰り返し単位は、アクリレート、メタクリレート、クロトネート、イタコネート等のようなビニルモノマーから誘導される。極性基は、酸性、塩基性または塩であり得る。またこれらの基は、イオン性または中性であり得る。
【0036】
極性基または分極性基の例としては、ヒドロキシ、チオ、置換および未置換アミド、環式エーテル(例えば、オキサン、オキセタン、フランおよびピラン)のような中性基、塩基性基(例えば、ホスフィン、および第一級、第二級、第三級アミンを含むアミン)、酸性基(例えば、C、S、P、Bのオキシ酸およびチオオキシ酸)、イオン性基(例えば、第四級アンミニウム、カルボン酸塩、スルホン酸塩等)、ならびにこれらの基の前駆体および保護された形態が挙げられる。加えて、極性基または分極性基はマクロモノマーであり得る。かかる基のより具体的な例は以下の通りである。
【0037】
極性基または分極性基は、一般式:
CH=CRG−(COOH)
(式中、R=H、メチル、エチル、シアノ、カルボキシまたはカルボキシメチル、d=1〜5、そしてGは、結合であるか、または原子価d+1の1〜12個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基連結基であって、置換もしくは未置換ヘテロ原子(例えば、O、S、NおよびP)によって任意に置換されており、そして/または中断されている)によって表される、一官能性または多官能性カルボキシル基含有分子から誘導されてよい。任意に、この単位は塩の形態で提供されてもよい。この種類の好ましいモノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸およびN−アクリロイルグリシンである。
【0038】
極性基または分極性基は、例えば、一般式:
CH=CR−CO−L−R−(OH)
(式中、R=H、メチル、エチル、シアノ、カルボキシまたはカルボキシアルキル、L=O、NH、d=1〜5、そしてRは、1〜12個の炭素原子を含有する原子価d+1のヒドロカルビル基である)によって表される、一官能性または多官能性ヒドロキシ基含有分子から誘導されてよい。この種類の好ましいモノマーは、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、モノ(メタ)アクリル酸グリセロール、モノアクリル酸トリス(ヒドロキシメチル)エタン、モノ(メタ)アクリル酸ペンタエリスリトール、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドおよびヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミドである。
【0039】
あるいは、極性基または分極性基は、一般式:
CH=CR−CO−L−R−(NR
(式中、R、L、Rおよびdは、上記で定義された通りであり、そしてRおよびRは、Hまたは1〜12個の炭素原子のアルキル基であるか、あるいはそれらは、一緒になって炭素環または複素環基を構成する)によって表される、一官能性または多官能性アミノ基含有分子から誘導されてよい。この種類の好ましいモノマーは、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸アミノプロピル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジエチルアミノエチル、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドおよび4−メチル−1−アクリロイル−ピペリジンである。
【0040】
また、極性基または分極性基は、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−(2−エトキシエトキシ)エチル、モノ(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールまたはモノ(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコールのようなアルコキシ置換(メタ)アクリレートまたは(メタ)アクリルアミドから誘導されてもよい。
【0041】
極性基または分極性基単位は、例えば、一般式:
【化1】

(式中、R、R、R、R、Lおよびdは、上記で定義された通りであり、そしてRは、Hまたは1〜12個の炭素原子のアルキル基であり、そしてQは、有機または無機アニオンである)の置換または未置換アンモニウムモノマーから誘導されてよい。かかるモノマーの好ましい例としては、(メタ)アクリル酸2−N,N,N−トリメチルアンモニウムエチル、(メタ)アクリル酸2−N,N,N−トリエチルアンモニウムエチル、(メタ)アクリル酸3−N,N,N−トリメチルアンモニウムプロピル、N(2−N’,N’,N’−トリメチルアンモニウム)エチル(メタ)アクリルアミド、N−(ジメチルヒドロキシエチルアンモニウム)プロピル(メタ)アクリルアミド、またはそれらの組み合わせが挙げられ、対イオンとしては、フッ化物、塩化物、臭化物、アセテート、プロピオネート、ラウレート、パルミテート、ステアレートまたはそれらの組み合わせが挙げられる。またモノマーは、有機または無機対イオンのN,N−ジメチルジアリルアンモニウム塩でもあり得る。
【0042】
また、極性基または分極性基として、上記のいずれかのアミノ基含有モノマーを使用して、そして得られたポリマーを、有機または無機酸によってペンダントアミノ基が実質的にプロトン化されるpHまで酸性化することによってアンモニウム基含有ポリマーを調製することができる。上記アミノポリマーをアルキル化基によってアルキル化することによって、完全置換アンモニウム基含有ポリマーを調製してもよい。この方法は、メンシュトキン(Menschutkin)反応として当該分野において一般的に既知である。
【0043】
また、極性基または分極性基は、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アリルオキシベンゼンスルホン酸等のようなスルホン酸基含有モノマーからも誘導され得る。あるいは、極性基または分極性基は、亜リン酸またはボロン酸基含有モノマーから誘導されてもよい。これらのモノマーは、モノマーとしてプロトン化酸型で使用されてよく、そして得られた相当するポリマーを、有機または無機塩基で中和して、塩型のポリマーを得てもよい。
【0044】
代表的な極性基または分極性基は、例えば、(特許文献1)(ロッジ(Rozzi)ら)、(特許文献2)(ロッジ(Rozzi)ら)、(特許文献3)(ミトラ(Mitra)ら)、(特許文献4)(ミトラ(Mitra)ら)、(特許文献5)(ミトラ(Mitra)ら)および(特許文献6)(ミトラ(Mitra)ら)に開示されている。
【0045】
好ましい極性基または分極性基の繰り返し単位としては、アクリル酸、イタコン酸、N−イソプロピルアクリルアミドまたはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0046】
適切なフッ化物放出基としては、例えば、(特許文献1)(ロッジ(Rozzi)ら)、(特許文献2)(ロッジ(Rozzi)ら)、(特許文献3)(ミトラ(Mitra)ら)、(特許文献4)(ミトラ(Mitra)ら)、(特許文献5)(ミトラ(Mitra)ら)および(特許文献6)(ミトラ(Mitra)ら)に開示されるようなフッ化物塩が挙げられる。好ましいフッ化物放出基としては、例えば、(特許文献7)(アーセン(Aasen)ら)に開示されるようなテトラフルオロホウ酸アニオンが挙げられる。好ましいフッ化物放出基の繰り返し単位としては、メタクリル酸テトラメチルアンモニウムエチルが挙げられる。
【0047】
代表的な疎水性炭化水素基は、160より多い重量平均分子量を有するエチレン系不飽和予形成炭化水素部分から誘導される。好ましくは、炭化水素部分は、少なくとも160の分子量を有する。好ましくは、炭化水素部分は、多くても100,000、好ましくは多くても20,000の分子量を有する。炭化水素部分は、本質的に芳香族であっても非芳香族であってもよく、そして部分的または完全飽和環を任意に含有してもよい。好ましい疎水性炭化水素部分は、アクリル酸ドデシルおよびオクタデシルならびにメタクリル酸ドデシルおよびオクタデシルである。他の好ましい疎水性炭化水素部分としては、エチレン、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンおよびメタクリル酸メチルのような重合性炭化水素から調製される所望の分子量のマクロモノマーが挙げられる。
【0048】
代表的な疎水性炭化水素基は、例えば、(特許文献1)(ロッジ(Rozzi)ら)、(特許文献2)(ロッジ(Rozzi)ら)、(特許文献3)(ミトラ(Mitra)ら)、(特許文献4)(ミトラ(Mitra)ら)、(特許文献5)(ミトラ(Mitra)ら)および(特許文献6)(ミトラ(Mitra)ら)に開示されている。
【0049】
代表的な疎水性フッ素含有基の繰り返し単位としては、1,1−ジヒドロペルフルオロアルカノールおよび相同体:CF(CFCHOHおよびCF(CF(CHOH(式中、xは0〜20であり、そしてyは、少なくとも1〜10である);ω−ヒドロキシフルオロアルカノール(HCF(CF(CHOH)(式中、xは0〜20であり、そしてyは、少なくとも1〜10である);フルオロアルキルスルホンアミドアルコール;環式フルオロアルキルアルコール;ならびにCF(CFCFO)(CFO)(CHOH(式中、qは2〜20であり、かつxより大きく、xは0〜20であり、そしてyは、少なくとも1〜10である)のアクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルが挙げられる。
【0050】
好ましい疎水性フッ素含有基の繰り返し単位としては、アクリル酸2−(メチル(ノナフルオロブチル)スルホニル)アミノ)エチル、メタクリル酸2−(メチル(ノナフルオロブチル)スルホニル)アミノ)エチルまたはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0051】
代表的な疎水性フッ素含有基は、例えば、(特許文献1)(ロッジ(Rozzi)ら)、(特許文献2)(ロッジ(Rozzi)ら)、(特許文献3)(ミトラ(Mitra)ら)、(特許文献4)(ミトラ(Mitra)ら)、(特許文献5)(ミトラ(Mitra)ら)および(特許文献6)(ミトラ(Mitra)ら)に開示されている。
【0052】
グラフトポリシロキサン鎖は、エチレン系不飽和予形成有機シロキサン鎖から調製される。この単位の分子量は、一般的に500より高い。グラフトポリシロキサン鎖の好ましい繰り返し単位は、シリコーンマクロマーを含む。
【0053】
本発明のグラフトポリシロキサン鎖を提供するために使用されるモノマーは、単一官能基(ビニル、エチレン系不飽和、アクリロイルまたはメタクリロイル基)を有する末端官能性ポリマーであり、そして末端マクロモノマーまたは「マクロマー」であることもある。かかるモノマーは既知であり、そして例えば、(特許文献8)(ミルコビッチ(Milkovich)ら)および(特許文献9)(ミルコビッチ(Milkovich)ら)に開示されるような方法によって調製されてもよい。ポリジメチルシロキサンマクロモノマーの調製およびその次のビニルモノマーとの共重合については、Y.ヤマシタらによるいくつかの文献[(非特許文献1);(非特許文献2);(非特許文献3)]に記載されている。
【0054】
代表的なポリシロキサン鎖は、例えば、(特許文献10)(クマー(Kumar)ら)、(特許文献1)(ロッジ(Rozzi)ら)、(特許文献2)(ロッジ(Rozzi)ら)、(特許文献11)(クマー(Kumar)ら)、(特許文献3)(ミトラ(Mitra)ら)、(特許文献4)(ミトラ(Mitra)ら)、(特許文献5)(ミトラ(Mitra)ら)および(特許文献6)(ミトラ(Mitra)ら)に開示されている。
【0055】
代表的な調節基は、アクリレートもしくはメタクリレートまたは他のビニル重合性出発モノマーから誘導され、そしてガラス転移温度、担体媒体における溶解性、親水性−疎水性バランス等のような特性を調節する官能基を任意に含有する。
【0056】
調節基の例としては、1〜12炭素の直鎖、分枝鎖または環式アルコールの低級から中級のメタクリル酸エステルが挙げられる。調節基の他の例としては、スチレン、ビニルエステル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロイルモノマー等が挙げられる。
【0057】
追加的な代表的な調節基は、例えば、(特許文献1)(ロッジ(Rozzi)ら)、(特許文献2)(ロッジ(Rozzi)ら)、(特許文献3)(ミトラ(Mitra)ら)、(特許文献4)(ミトラ(Mitra)ら)、(特許文献5)(ミトラ(Mitra)ら)および(特許文献6)(ミトラ(Mitra)ら)に開示されている。
【0058】
本発明の歯科用ホワイトニング組成物は、組成物の硬化を可能にする開始剤系または触媒を任意に含む。例えば、可視および/または近赤外光開始剤系を使用して、フリーラジカル重合成分を含む組成物における光重合を開始することができる。例えば、モノマーを、増感剤、電子供与体、および例えば(特許文献12)(パラゾット(Palazzotto)ら)に開示されるようなヨードニウム塩を含む三成分または三元光開始剤系と組み合わせることができる。あるいは、組成物は、増感剤(例えば、カンファキノン)および電子供与体(例えば、(特許文献13)(ダート(Dart)ら)に開示されるような第二級または第三級アルキルアミン化合物)を含む二元開始剤系を含んでもよい。
【0059】
有用な光開始剤のもう1つの種類としては、(特許文献14)(イン(Ying))に開示されるようなアシルホスフィンオキシドが挙げられる。かかるアシルホスフィンオキシドは、一般式(R)P(=O)C(=O)−R(式中、各Rは、個々に、ハロ−、アルキル−またはアルコキシ−基によって置換されていてもよいヒドロカルビル基(例えば、アルキル、シクロアルキル、アリールおよびアルアルキル)であり得るか、または2個のR基は、結合してリン原子と一緒になって環を形成し、そしてRは、ヒドロカルビル基、S−、O−もしくはN−含有5員または6員複素環基、あるいは−Z−C(=O)−P(=O)−(R)基であり、Zは、2〜6個の炭素原子を有する二価ヒドロカルビル基(例えば、アルキレンまたはフェニレン)を表す)のものである。
【0060】
本発明において有用な好ましいアシルホスフィンオキシドは、RおよびR基が、フェニルまたは低級アルキルもしくは低級アルコキシ置換フェニルであるものである。「低級アルキル」および「低級アルコキシ」によって、1〜4個の炭素原子を有するかかる基が意味される。最も好ましくは、アシルホスフィンオキシドは、チバ スペシャルティー ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)(ニューヨーク州、タリータウン(Tarrytown,NY))から商品名イルガキュア(IRGACURE)819で入手可能であるビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシドである。
【0061】
多成分系においてフリーラジカル重合を誘導するための酸化剤および還元剤を含む酸化還元触媒の使用も、硬化ゲルを生じるために有用である。重合反応の好ましい開始様式において、酸化還元触媒系として酸化剤および還元剤が使用される。(特許文献15)(ミトラ(Mitra)ら)には、マイクロカプセル化還元剤および/または酸化剤を任意に含む様々な酸化還元系が開示されている。
【0062】
好ましくは、フリーラジカルを生じるために、酸化剤は、還元剤と反応するか、あるいは協力するフリーラジカルは、エチレン系不飽和部分の重合を開始することができる。酸化剤および還元剤は、(特許文献16)(ルシン(Rusin)ら)に開示されるように、好ましくは十分に可溶性であり、そして十分なフリーラジカル反応速度を可能にするために十分な量で存在する。
【0063】
酸化剤の好ましい種類としては、過硫酸塩(例えば、過硫酸ナトリウム、カリウム、アンモニウムおよびアルキルアンモニウム)が挙げられる。酸化剤のもう1つの好ましい種類としては、過酸化物または過酸化物塩(例えば、過酸化水素、過酸化ベンゾイル、ならびに例えば、ヒドロ過酸化クメン、ヒドロ過酸化第三級ブチル、ヒドロ過酸化第三級アミルおよび2,5−ジヒドロペルオキシ−2,5−ジメチルヘキサンを含むヒドロ過酸化物)が挙げられる。他の好ましい酸化剤としては、コバルト(III)および鉄(III)の塩、過ホウ酸およびその塩、ならびに過マンガン酸アニオンの塩が挙げられる。いずれかの上記酸化剤の組み合わせも使用可能である。
【0064】
好ましい還元剤としては、例えば、アミン(例えば、芳香族アミン)、アスコルビン酸、金属錯体アスコルビン酸、塩化コバルト(II)、塩化第一鉄、硫酸第一鉄、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、シュウ酸、チオ尿素、ならびに亜ジチオン酸、チオ硫酸、ベンゼンスルフィン酸塩または亜硫酸アニオンの塩が挙げられる。
【0065】
本発明の組成物に開始剤が含まれる場合、組成物は、好ましくは、組成物の総重量を基準として、少なくとも0.01重量%の開始剤、そしてより好ましくは、少なくとも0.1重量%の開始剤を含む。本発明の組成物に開始剤が含まれる場合、組成物は、好ましくは、組成物の総重量を基準として、多くても10重量%の開始剤、そしてより好ましくは、多くても5重量%の開始剤を含む。
【0066】
本発明の硬化性歯科用ホワイトニング組成物は、好ましくは、反応性ポリマーおよび/またはポリマーとは異なる重合性成分(例えば、二次重合性成分)を含む。
【0067】
特定の実施例において、組成物は光重合性であり、すなわち、組成物は、化学放射による照射時に組成物の重合(または硬化)を開始する光開始剤(すなわち、光開始剤系)を含有する。かかる光重合性成分は、好ましくはフリーラジカル重合性である。
【0068】
特定の実施例において、組成物は化学重合性であり、すなわち、組成物は、化学放射による照射に依存することなく組成物を重合、硬化することが可能である化学開始剤系を含有する。かかる化学重合性成分は、「自己硬化」組成物と称されることがあり、そして例えば、ガラスイオノマーセメント(例えば、従来の樹脂変性ガラスイオノマーセメント)、酸化還元硬化系、縮合反応を受けることが可能なシラン部分(本明細書で上記に記載の通り)およびそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0069】
エチレン系不飽和化合物としては、例えば、重合性モノマー、重合性オリゴマー、重合性ポリマーおよびそれらの組み合わせが挙げられる。好ましくは、重合性成分はフリーラジカル重合性である。好ましいモノマー、オリゴマーおよびポリマーは、部分的または完全に水と混和性であるものである。
【0070】
適切な重合性モノマーおよびオリゴマーとしては、例えば、ポリ(エチレングリコール)ジメタクリレート(PEGDMA)、テトラヒドロフルフラルメタクリレート、ならびに例えば、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、グリシジルジメタクリレート(GDMA)、およびグリシジルモノメタクリレート(GMMA)を含むヒドロキシル官能性モノマーが挙げられる。例えば、ビス(グリシジルメタクリレート)(ビス−GMA)、トリ(エチレングリコール)ジメタクリレート(TEGDMA)およびウレタンジメタクリレートを含む疎水性モノマーおよびオリゴマーも利用可能である。
【0071】
適切な重合性ポリマーとしては、例えば、官能化ポリ(アクリル酸)ポリマー、セルロース、ポリ(ビニルアルコール)ポリマー、ポリ(オキシエチレン)−ポリ(オキシプロピレン)ブロックコポリマー、ポリ(エチレングリコール)ポリマー等を含む、部分的または完全アクリレートまたはメタクリレート官能化ポリマーが挙げられる。
【0072】
化学重合性成分は、それらの主成分として典型的に、エチレン系不飽和カルボン酸(例えば、ポリアクリル酸、コポリ(アクリル、イタコン酸)等)のホモポリマーまたはコポリマー、フルオロアルミノシリケート(「FAS」)、ガラス、水および酒石酸のようなキレート剤を利用する従来のガラスイオノマーセメントのようなガラスイオノマーセメントを含んでよい。従来のガラスイオノマー(すなわち、ガラスイオノマーセメント)は、典型的に、使用直前に混合される粉末/液体製剤に供給される。ポリカルボン酸の酸性繰り返し単位とガラスから浸出したカチオンとの間のイオン反応のため、混合物は暗い場所においても自己硬化を受ける。ガラスイオノマーセメントとしては、樹脂変性ガラスイオノマー(「RMGI」)セメントも挙げられる。代表的な化学重合性組成物は、例えば、出願人の譲受人の同時係属中の2002年12月20日出願の出願(特許文献17)に記載されている。
【0073】
化学重合性成分は、重合性成分(例えば、エチレン系不飽和重合性成分)および酸化還元剤を含む酸化還元硬化系を含んでもよい。酸化還元剤は、酸化剤および還元剤を含み得る。本発明において有用である適切な重合性成分、酸化還元剤、任意の酸官能性成分および任意の充填剤は、出願人の譲受人の同時係属中の2003年9月4日公開の(特許文献18)および2003年10月16日公開の(特許文献19)に記載されている。
【0074】
還元剤および酸化剤は、樹脂系(例えば、エチレン系不飽和成分)の重合を開始可能であるフリーラジカルを生じるために、互いに反応するか、または協力するべきである。この種類の硬化は暗反応であり、すなわち、光の存在に依存せず、光の不在下で進行可能である。還元剤および酸化剤は、好ましくは、典型的な歯科条件下での貯蔵および使用を可能にするために十分に貯蔵安定性であり、そして望まれない着色が生じない。重合性組成物の他の成分における容易な溶解を可能にする(かつ分離を回避する)ために、それらは樹脂系と十分に混和性(および好ましくは水混和性)であるべきである。
【0075】
有用な還元剤としては、(特許文献20)(ワン(Wang)ら)に記載されるようなアスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体および金属錯体アスコルビン酸化合物;アミン、特に、4−第三級ブチルジメチルアニリンのような第三級アミン;p−トルエンスルフィン酸塩およびベンゼンスルフィン酸塩のような芳香族スルフィン酸塩;1−エチル−2−チオ尿素、テトラエチルチオ尿素、テトラメチルチオ尿素、1,1−ジブチルチオ尿素および1,3−ジブチルチオ尿素のようなチオ尿素;ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。他の二次還元剤としては、塩化コバルト(II)、塩化第一鉄、硫酸第一鉄、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン(酸化剤の選択に依存する)、亜ジチオン酸または亜硫酸アニオンの塩、およびそれらの混合物が挙げられる。好ましくは、還元剤はアミンである。
【0076】
適切な酸化剤は、当業者に周知であり、そして限定されないが、過硫酸ならびにナトリウム、カリウム、アンモニウム、セシウムおよびアルキルアンモニウム塩のようなその塩が挙げられる。追加的な酸化剤としては、過酸化ベンゾイルのような過酸化物、ヒドロ過酸化クミル、ヒドロ過酸化t−ブチルおよびヒドロ過酸化アミルのようなヒドロ過酸化物、ならびに塩化コバルト(III)および塩化第二鉄、硫酸セリウム(IV)のような遷移金属塩、過ホウ酸およびその塩、過マンガン酸およびその塩、過リン酸およびその塩、ならびにそれらの混合物が挙げられる。
【0077】
2以上の酸化剤または2以上の還元剤を使用することが望ましい。酸化還元硬化速度を促進するために、少量の遷移金属化合物を添加してもよい。いくつかの実施形態において、出願人の譲受人の同時係属中の2003年10月16日公開の(特許文献19)に記載されているような、重合性組成物の安定性を増強するための二次イオン塩を含むことが好ましい。
【0078】
還元剤および酸化剤は、十分なフリーラジカル反応速度を可能にするために十分な量で存在する。任意の充填剤を除く重合性組成物の全成分を組み合わせて、そして硬化質量が得られるかどうかを観察することによって、これを評価することができる。
【0079】
(特許文献15)(ミトラ(Mitra)ら)に記載されるように、還元剤または酸化剤はマイクロカプセル化可能である。これによって一般的に重合性組成物の貯蔵安定性が増強され、そして必要であれば、還元剤および酸化剤を一緒に包装することを可能にする。例えば、カプセル化剤の適切な選択によって、酸化剤および還元剤を酸官能性成分および任意の充填剤と組み合わせて、貯蔵安定状態に保持することができる。同様に、水混和性カプセル化剤の適切な選択によって、還元剤および酸化剤をFASガラスおよび水と組み合わせて、貯蔵安定状態に保持することができる。
【0080】
他の硬化系と、例えば、ガラスイオノマーセメントと、そして(特許文献15)(ミトラ(Mitra)ら)に記載されるような光重合性成分と、酸化還元硬化系を組み合わせることができる。
【0081】
酸化還元硬化系を利用する硬化性組成物を、2部粉末/液体、ペースト/液体およびペースト/ペースト系を含む様々な形態で供給することができる。それぞれが粉末、液体、ゲルまたはペーストの形態である多数部の組み合わせ(すなわち、2以上の部の組み合わせ)を利用する他の形態も可能である。多数部系において、一部は典型的に還元剤を含有し、そしてもう一部は典型的に酸化剤を含有する。従って、還元剤が系の一部に存在する場合、酸化剤は典型的に系のもう一部に存在する。しかしながら、マイクロカプセル化技術によって、還元剤および酸化剤を系の同一部に組み合わせることができる。
【0082】
いくつかの実施形態において、本発明の組み合わせは、添加剤(例えば、身体内および身体上での使用のために適切である医薬組成物のための医薬添加剤、口腔環境における使用のために適切である歯科用組成物のための歯科用添加剤)を含むか、または任意に含んでもよい。代表的な添加剤としては、例えば、フッ化物供給源、抗カリエス剤(例えば、キシリトール)、再ミネラル化剤(例えば、リン酸カルシウム化合物)、ブレスフレッシュナー、麻酔剤、凝固剤および中和剤、化学療法剤、免疫応答変性剤、薬剤、指示薬、染料、顔料、湿潤剤、界面活性剤、緩衝剤、粘度変性剤、チキソトロープ剤、充填剤、ポリオール、抗微生物剤、抗菌剤、安定化剤、口内乾燥症治療剤、およびそれらの組み合わせが挙げられる。好ましくは、添加剤は、口腔環境における使用のために適切な歯科用添加剤である。
【0083】
所望の特定の適用のために、有用な添加剤を選択してよい。特定の適用に所望の添加剤量を含むように、本発明の歯科用ホワイトニング組成物を所望の通り調節してよい。
【0084】
本発明の歯科用ホワイトニング組成物は、好ましくは、溶媒から適用される。有用な溶媒としては、例えば、アルコール、グリコール、ポリ(オキシアルキレン)グリコール、水およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0085】
本発明の歯科用ホワイトニング組成物は、非重合性ポリマーを含んでもよい。好ましくは、非重合性ポリマーは、水性環境において部分的または完全に混和性であり、そして例えば、ポリ(アクリル酸)ポリマー、セルロース、ポリ(ビニルアルコール)ポリマー、ポリ(オキシエチレン)−ポリ(オキシプロピレン)ブロックコポリマー、ポリ(エチレングリコール)ポリマーおよびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0086】
本発明の方法は、ヒトおよび動物組織を含む軟組織および硬組織の治療をもたらす。硬組織としては、例えば、骨、歯および歯の構成部分(例えば、エナメル、象牙質およびセメント質)が挙げられる。軟組織としては、例えば、粘膜(例えば、舌、歯肉および咽喉)が挙げられる。
【0087】
本発明の歯科用ホワイトニング組成物は、いずれかの所望の方法によって所望の部位に送達されてよい。例えば、組成物は、容器またはディスペンサーから組織上へと直接送達されてよい。適切な容器またはディスペンサーとしては、例えば、ボトル、バイアル瓶、注射器およびチューブが挙げられる。ニードルチップからバルク液体として、またはエアゾールからファインミストとして組成物を送達する能力によって、適用における融通性がもたらされる。あるいは、ブラシ、スポンジ、アプリケーターまたはスワッブを使用して組成物を組織上にペイントまたはコーティングすることによって、組成物を送達することができる。いくつかの適用に関して、大きな面積に組成物を適用することが望ましい。それらの特定の適用に関して、スプレーまたはエアゾールディスペンサーによって、または液体によって全組織面積(例えば、口腔)を単にすすぐことによって組成物を送達してよい。もう1つの代わりとなる送達様式は、トレイ型ディスペンサーの使用を含む。
【0088】
あるいは、組成物を基材に適用することができ、そして上に組成物を有する基材を所望の表面に適用することができる。適切な基材としては、例えば、ポリマーフィルム、紙、ならびに不織物および織物シートが挙げられる。所望の表面に適用する前に、組成物を、ブラシ、スパチュラ、医用/歯科用器具、またはアプリケーターに適用することもできる。
【0089】
本発明の歯科用ホワイトニング組成物が2以上の部を含む場合、2以上の部は、好ましくは適用プロセスの直前または間に混合される。適切な混合装置としては、例えば、静的混合装置が挙げられる。
【0090】
組成物は、好ましくは、所望の効果を提供するために十分な長さで組織表面上に静置することが可能である。静置時間は、利用される特定の組成物、組織の種類、意図された用途、および手順を実行するために利用可能な時間に依存して変化する。多くの適用に関して、組成物は長期間、組織上に残ることが可能である。
【0091】
本発明のいくつかの実施形態に関して、例えば反応性ポリマーの反応を誘導することによって、歯科用ホワイトニング組成物を硬化することができる。歯科用ホワイトニング組成物が反応性ポリマーとは異なる任意の重合性成分を含む場合、組成物の硬化は重合性成分の重合も含む。例えば、反応性ポリマーまたは重合性成分は、エチレン系不飽和基を含み、化学放射の適用によって重合を誘導することができる。好ましくは、400ナノメートル〜1200ナノメートルの波長を有する放射によって、より好ましくは可視放射によって、組成物を照射する。可視光源としては、例えば、太陽、レーザー、金属蒸気(例えば、ナトリウムおよび水銀)ランプ、白熱ランプ、ハロゲンランプ、水銀アークランプ、蛍光室内灯、懐中電灯、発光ダイオード、タングステンハロゲンランプおよびキセノンフラッシュランプが挙げられる。
【0092】
あるいは、反応性ポリマーまたは重合性成分がエチレン系不飽和基を含む本発明の実施形態に関して、組成物は、2以上の部を含んでもよく、一部は酸化剤を含み、そしてもう一部は還元剤を含む。
【0093】
本発明の組成物が硬化したら、組成物は容易に除去されない。しかしながら、硬化組成物は一般的に、例えば、ブラッシング、ワイピング、スクレーピングおよび溶媒(例えばアルコール)の使用を含む機械的または化学的方法によって除去することができる。
【0094】
以下の実施例によって本発明の対象および利点をさらに説明するが、これらの実施例に記載された特定の材料およびそれらの量、ならびに他の条件および詳細は、本発明を過度に限定するように解釈されるべきではない。他に特記されない限り、全ての部およびパーセントは重量基準であり、全ての水は脱イオン水であり、そして全ての分子量は重量平均分子量である。
【実施例】
【0095】
【表1】

【0096】
出発材料
SM−1:トリメチルアンモニウムエチルメタクリレートテトラフルオロボレート(TMA−BF)の合成
メカニカルスターラー、滴下漏斗および冷却管を備えた三つ口フラスコに、80部のテトラフルオロホウ酸ナトリウム(マサチューセッツ州、ワードヒルのアルファ アーサー インオーガニックス(Alfa Aesar Inorganics,Ward Hill,MA))および130部のDI水を充填した。混合物を15分間撹拌し、そして透明溶液を得た。滴下漏斗から、202.4部のメタクリル酸ジメチルアミノエチル−塩化メチル(トリメチルアンモニウムエチルメタクリレートクロリド;イリノイ州、クリスタルレークのCPS カンパニー チバ(CPS Company,Ciba,Crystal Lake,IL))および80部のDI水の溶液をゆっくり添加した。固体生成物が直後に沈殿を開始する。添加完了後、混合物を30分間撹拌し、そして固体を濾過によって単離し、30部のDI水で洗浄し、そして真空下40℃で乾燥させた。固体生成物のNMR分析によって、構造が、純粋なトリメチルアンモニウムエチルメタクリレートテトラフルオロボレートであることが明らかとなった。
【0097】
SM−2:ジメチルヘキサデシルアンモニウムエチルメタクリレートブロミド(DMA−C16Br)の合成
500ml丸底フラスコに、42.2部のDMAEMA、154.7部のアセトン、93.2部の1−ブロモヘキサデカン(シグマ−アルドリッチ(Sigma−Aldrich))および0.34部のBHTを充填した。混合物を16時間、35℃で撹拌し、次いで室温まで冷却した。得られた白色固体沈殿物を濾過により単離し、冷酢酸エチルで洗浄し、そして真空下40℃で乾燥させた。固体生成物のNMR分析によって、構造が、純粋なジメチルヘキサデシルアンモニウムエチルメタクリレートブロミドであることが明らかとなった。
【0098】
実施例1
THF中でのポリ(AA(40)/ITA(20)/NIPAAM(20)/TMA−BF(20))の調製
反応容器中で、AA(40部)、ITA(20部)、NIPAAM(20部)、TMA−BF(20部)、VAZO−67(1.0部)およびTHF(300部)を組み合わせて、得られた混合物に2分間、窒素パージした。容器を密封し、そして18時間、装置を回転させながら65℃の一定温度に維持し、この間、白色沈殿が形成した。室温まで冷却後、固体が溶解するまで、撹拌しながら水(300部)を混合物に添加した。得られたポリマー溶液を実施例1と名付け、そしてカッコ内に示された重量比を有するAA(40部)、ITA(20部)、NIPAAM(20部)およびTMA−BF(20部)のポリマーであることを確認した。ポリマー溶液は、18.4%固体を有することが決定された。
【0099】
実施例2〜8
THF溶媒中でのNIPAAM含有ポリマーの調製
実施例1に関して記載される通り、実施例2〜8と名付けられたポリマー溶液を調製し、以下に記載する。モノマー単位、重量比および%固体を示す。
実施例2:AA(40)/ITA(20)/NIPAAM(20)/TMA−BF(18)/LA(2);21.7%固体
実施例3:AA(40)/ITA(20)/NIPAAM(20)/TMA−BF(18)/SiMac(2);19.2%固体
実施例4:AA(40)/ITA(20)/NIPAAM(20)/TMA−BF(18)/ODA(2);18.8%固体
実施例5:AA(40)/ITA(20)/NIPAAM(20)/TMA−BF(19)/SiMac(1);25.7%固体
実施例6:AA(40)/ITA(17)/NIPAAM(20)/TMA−BF(18)/ODA(2)/A−174(3);20.0%固体
実施例7:AA(40)/ITA(20)/MeFBSEA(1)/NIPAAM(20)/TMA−BF(19);15.3%固体
実施例8:AA(40)/ITA(20)/MeFBSEA(1)/NIPAAM(20)/TMA−BF(19);13.3%固体
*実施例6ポリマー溶液は、1:1THF−エタノール溶媒において製造され、重合後、水を添加しなかった。
【0100】
実施例9
水中でのポリ(AA(40)/ITA(20)/NIPAAM(20)/TMA−BF(18/SiMac(2))の調製
反応容器中で、AA(40部)、ITA(20部)、NIPAAM(20部)、TMA−BF(18部)、SiMac(2部)、V−50(1部)およびDI水(300部)を組み合わせて、得られた混合物に5分間、窒素パージした。容器を密封し、そして30時間、装置を回転させながら60℃の一定温度に維持した。室温まで冷却時に、粘性ポリマー溶液が得られ、これを実施例9と名付け、そしてカッコ内に示された重量比を有するAA(40)、ITA(20)、NIPAAM(20)、TMA−BF(20)およびSiMac(2部)のポリマーであることを確認した。ポリマー溶液は、20.0%固体を有することが決定された。
【0101】
実施例10〜13
水中での様々な性ポリマーの調製
実施例9に関して記載される通り、実施例10〜13と名付けられたポリマー溶液を調製し、以下に記載する。モノマー単位、重量比および%固体を示す。
実施例10:AA(40)/ITA(20)/NIPAAM(20)/TMA−BF(14)/DMA−C16Br(4)/SiMac(2);19.7%固体
実施例11:AA(40)/ITA(20)/F127(20)/TMA−BF(18)/SiMac(2);19.0%固体
実施例12:AA(10)/ITA(10)/NIPAAM(60)/TMA−BF(20);15.2%固体
実施例13:AA(20)/ITA(20)/NIPAAM(20)/NVP(20)/TMA−BF(20);17.0%固体
【0102】
実施例14〜16
IEMによって誘導されたポリマー
反応容器中で、AA(40部)、ITA(20部)、NIPAAM(20部)、TMA−BF(18部)、ODA(2部)、VAZO−65(1部)およびTHF(300部)を組み合わせて、得られた混合物に2分間、窒素パージした。容器を密封し、そして18時間、装置を回転させながら65℃の一定温度に維持し、この間、白色沈殿が形成した。室温まで冷却後、DMF(30部)を混合物に添加して固体を溶解させ、そして得られた溶液にIEM(1.1部)、DBTDL(0.04部)およびBHT(0.001部)を添加した。40℃で1時間加熱後、得られたポリマー溶液を大過剰量の酢酸エチル中に注ぎ入れ、そして沈殿固体を濾過によって回収した。固体を酢酸エチルで2回洗浄し、乾燥させ、そしてDI水中に溶解し、22.5%固体溶液を製造し、これを実施例14と名付け、そしてカッコ内に示された重量比を有し、かつ以下の構造(Me=CH):
CH=C(Me)COCHCHNHC(O)−ポリマー骨格鎖
のモノマー単位を提供するためにIEMによって誘導された多数(約10モル%)のカルボキシ酸単位を有するAA(40)、ITA(20)、NIPAAM(20)、TMAEMA−BF(18)およびODA(2)のポリマーであることを確認した。
【0103】
同様の様式で実施例15および実施例16を調製した。以下に記載する。
実施例15:AA(40)/ITA(20)/NIPAAM(20)/MeFBSEMA(1)TMA−BF(19)/〜IEM;12.8%固体
実施例16:AA(40)/ITA(20)/NIPAAM(20)/MeFBSEMA(5)TMA−BF(15)/〜IEM;21.8%固体
【0104】
実施例17〜24
イソプロパノール中でのポリ(NIPAAM(55)/AA(20)/IBMA(20)/LA(5))の調製
反応容器中で、NIPAAM(55部)、AA(20部)、IBMA(20部)、LA(5部)、VAZO−67(1.0部)およびイソプロパノール(200部)を組み合わせて、得られた混合物に2分間、窒素パージした。容器を密封し、そして18時間、装置を回転させながら65℃の一定温度に維持し、この間、透明粘性ポリマー溶液が形成した。二回目のVAZO−67(0.20部)の充填を反応容器に添加し、そして溶液を65℃でさらに8時間加熱した。室温まで冷却後、得られたポリマー溶液を大過剰量の酢酸エチル中に注ぎ入れ、そして沈殿固体ポリマーを濾過によって回収した。固体を酢酸エチルで2回洗浄し、真空オーブン中40℃で乾燥させた。乾燥固体を実施例17と名付け、そしてカッコ内に示された重量比を有するNIPAAM(55)、AA(20)、IBMA(20)およびLA(5)のポリマーであることを確認した。
【0105】
実施例17に関して記載される通り、実施例18〜24と名付けられた乾燥ポリマーを調製し、以下に記載する。モノマー単位、重量比および%固体を示す。
実施例18:NIPAAM(45)、AA(20)、ITA(10)、IBMA(20)、LA(5)
実施例19:NIPAAM(45)、AA(30)、IBMA(20)、SiMac(5)
実施例20:NIPAAM(35)、AA(30)、ITA(10)、IBMA(25)
実施例21:NIPAAM(55)、AA(20)、IBMA(20)、SiMac(5)
実施例22:NIPAAM(20)、AA(50)、IBMA(25)、SiMac(5)
実施例23:NIPAAM(60)、AA(20)、IBMA(20)
実施例24:NIPAAM(55)、AA(20)、IBMA(20)、LA(5)
【0106】
評価
歯表面におけるポリマー保持時間の評価
実施例2〜5および21と名付けられたポリマー溶液に、0.014重量%の赤色顔料(D&C レッド30 タルク レーク センシエント コード(D&C Red 30 Talc Lake Sensient code):K7094,ミズーリ州、セントルイスのセンシエント テクノロジー(Sensient Technologies,St.Louis,MO))を添加し、表1に記載された試料A〜Dを提供した。同様に、商品名シンプリー ホワイト(SIMPLY WHITE)(ニューヨーク州、ニューヨークのコルゲート(Colgate,New York,NY))で入手可能な生成物に赤色顔料を添加し、対照試料A(CR−A)を提供した。次いで、以下の手順を使用することによって、歯の上での保持に関してこれらの試料を評価した。
【0107】
5本の抜き取られたウシの歯を、水が充填されたそれらの貯蔵容器から取り出し、そしてペーパータオルで軽くたたいた。次いで、試料A〜DおよびCR−Aをそれぞれの歯の上で個々にブラッシングし、そして1分後、コーティングされた歯を37℃に維持された水浴に浸し、そして連続的に撹拌した。歯の赤色の強度および連続性における変化に関して1時間、歯を視覚的にモニターした。赤色ポリマーが歯の上に残っていた時間を、「保持時間」として報告した。1時間後、コーティングされた歯を水浴から取り出し、そして歯のコーティングの完全性を測定するために慎重に調査した。結果を表1に示す。全体的に、色の強度および連続性の直接観察に基づき、試料A〜Dは全て1時間より長く保持力のあるフィルムを維持するようであるが、試料CR−Aは、5分以内に実質的に全ての赤色コーティングを損失する。
【0108】
【表2】

【0109】
歯表面におけるポリマー/ホワイトニング剤の評価
実施例2〜5と名付けられたポリマー溶液に、18重量%の過酸化カルバミド(シグマ−アルドリッチ(Sigma−Aldrich))を添加して、表2に記載された試料E〜Hを提供した。次いで、以下の手順を使用することによって、歯のホワイトニングに関してこれらの試料を評価した。
【0110】
8本の抜き取られたウシの歯を、水が充填されたそれらの貯蔵容器から取り出し、そしてクラッシック コーク(Classic Coke)およびコーヒーの溶液に38℃で24時間浸漬することによって着色した。ビタ シェード ガイド(VITA Shade Guide)(カリフォルニア州、ブレアのビデント(Vident,Brea,CA))と明度を比較することによって、それぞれの歯に対して歯の明度の初期決定を決定した。次いで、試料E〜Hを個々にブラシでそれぞれの歯の表面上にペイントし、そして30秒間空気乾燥させた。それぞれのポリマー溶液試料によって、2本の歯を個々にコーティングした。コーティングされた歯を37℃に維持された水浴に浸し、そして連続的に撹拌した。30〜45分後、コーティングされた歯を水浴から取り出し、そして同様の様式で試料によって再びコーティングした。歯が全部で10回コーティングされるまで、この手順を繰り返した。次いで、歯を水浴から取り出し、そしてビタ シェード ガイド(VITA Shade Guide)と明度を比較することによって、それぞれの歯に対して歯の明度の最終決定を決定した。初期ステイン値と最終ステイン値との差異を計算した。差異が大きいほど、歯の白色化が増加していることを示す。試料あたり2回の繰り返しの平均を結果として表2に示す。全ての試料は、この試験法の条件下で評価した場合、歯の白色化の増加を示す。
【0111】
【表3】

【0112】
本明細書に引用された特許、特許文献および刊行物の全開示は、それぞれが個々に組み入れられるように、それらの全体で参照によって組み入れられる。本発明に対する様々な修正および変更は、本発明の範囲および精神から逸脱することなく当業者に明白となるであろう。本明細書に明らかにされた実例となる実施形態および実施例によって本発明が過度に限定されるように意図されず、そしてかかる実施例および実施形態は、一例としてのみ提供され、本発明の範囲は、明示された請求の範囲によってのみ限定されるように意図されることは理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
口腔表面をコーティングするために適切な歯科用ホワイトニング組成物であって、
歯用ホワイトニング剤と、
極性基または分極性基を含む繰り返し単位、および
フッ化物放出基を含む繰り返し単位
を含むポリマーと、
を含み、
前記ポリマーがペンダントエチレン系不飽和部分を含まない、歯科用ホワイトニング組成物。
【請求項2】
口腔表面をコーティングするために適切な歯科用ホワイトニング組成物であって、
歯用ホワイトニング剤と、
極性基または分極性基を含む繰り返し単位、ならびに
疎水性炭化水素基、グラフトポリシロキサン鎖、疎水性フッ素含有基およびそれらの組み合わせよりなる群から選択される基を含む繰り返し単位
を含むポリマーと、
を含み、
前記ポリマーがペンダントエチレン系不飽和部分を含まない、歯科用ホワイトニング組成物。
【請求項3】
歯用ホワイトニング剤が、次亜塩素酸塩、有機過酸化物、無機過酸化物、ヒドロ過酸化物、過酸、過酸化カルバミドおよびそれらの組み合わせよりなる群から選択される、請求項1または2に記載の歯科用ホワイトニング組成物。
【請求項4】
口腔表面をコーティングするために適切な歯科用ホワイトニング組成物であって、
歯用ホワイトニング剤と、
極性基または分極性基を含む繰り返し単位、および
フッ化物放出基を含む繰り返し単位
を含むポリマーと、
を含み、
過酸化水素を含まない、歯科用ホワイトニング組成物。
【請求項5】
口腔表面をコーティングするために適切な歯科用ホワイトニング組成物であって、
歯用ホワイトニング剤と、
極性基または分極性基を含む繰り返し単位、ならびに
疎水性炭化水素基、グラフトポリシロキサン鎖、疎水性フッ素含有基およびそれらの組み合わせよりなる群から選択される基を含む繰り返し単位
を含むポリマーと、
を含み、
過酸化水素を含まない、歯科用ホワイトニング組成物。
【請求項6】
歯科用ホワイトニング組成物の総重量を基準として、10重量%より多い歯用ホワイトニング剤と、
極性基または分極性基を含む繰り返し単位、および
フッ化物放出基を含む繰り返し単位
を含むポリマーと、
を含む、口腔表面をコーティングするために適切な、請求項1または5に記載の歯科用ホワイトニング組成物。
【請求項7】
歯科用ホワイトニング組成物の総重量を基準として、10重量%より多い歯用ホワイトニング剤と、
極性基または分極性基を含む繰り返し単位、ならびに
疎水性炭化水素基、グラフトポリシロキサン鎖、疎水性フッ素含有基およびそれらの組み合わせよりなる群から選択される基を含む繰り返し単位
を含むポリマーと、
を含む、口腔表面をコーティングするために適切な、請求項2または5に記載の歯科用ホワイトニング組成物。
【請求項8】
ポリマーが、調節基を含む繰り返し単位をさらに含む、口腔外科に適切な、請求項1〜7のいずれか一項に記載の歯科用ホワイトニング組成物。
【請求項9】
極性基または分極性基を含む繰り返し単位が、アクリル酸、イタコン酸、N−イソプロピルアクリルアミドおよびそれらの組み合わせよりなる群から選択される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の歯科用ホワイトニング成分。

【公表番号】特表2006−519164(P2006−519164A)
【公表日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−568051(P2004−568051)
【出願日】平成15年12月29日(2003.12.29)
【国際出願番号】PCT/US2003/041406
【国際公開番号】WO2004/069215
【国際公開日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】