説明

歯科用口腔外バキューム装置

【課題】歯科用口腔外バキューム装置において、先端に吸引フードを備えたアーム側の重量と均衡する弾性部材を、アームの回動方向の周方向に伸縮する構成として全体的構成のコンパクト化を図った歯科用口腔外バキューム装置を提供する。
【解決手段】歯科用口腔外バキューム装置1であって、固定用ポール7とアーム13とを回動自在に接続した関節機構11又は各アーム13,17を回動自在に接続した関節機構に、基準側フランジ49を備えると共に、当該基準側フランジ49に対して相対的に回動自在な回動側フランジ53を備え、前記基準側フランジ49と回動側フランジ53との間にリング部材59を回動自在に備え、前記基準側フランジ49に備えたフック87と前記リング部材59に備えたフック69との間に第1の弾性部材89を介在して備えると共に、前記リング部材59に備えた前記フック67と前記回動側フランジ53に備えたフック65との間に第2の弾性部材69を介在して備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科診療時に、患者の口から飛散する傾向にある血液、唾液、切削粉塵等の飛散物を吸引除去するための歯科用口腔外バキューム装置に係り、さらに詳細には、適数のアームを上下に回動自在に接続した関節機構に、前記アームの重量にバランスするバランススプリングを備えた歯科用口腔外バキューム装置に関する。
【背景技術】
【0002】
歯科用口腔外バキューム装置には、床面に立設した、又は天井から垂設した固定用ポールの先端部に第1のアームを回動自在に備え、この第1のアームの先端部に第2のアームを上下に回動自在に備えるごとく、複数のアームを直列にかつ互いに相対的に回動自在に備えた構成である。そして、先端部のアームの先端に吸引用のフードを備えた構成である。
【0003】
そして、前記吸引用のフードを患者の口に対応した位置に位置決め保持するために、アームを回動する関節機構に対応した位置にシリンダを備えた構成(例えば特許文献1参照)や、アームの重量に均衡するバランススプリングを備えた構成がある(例えば特許文献2参照)。また、関節機構にボールプランジャなどのクリック機構を備えた構成がある(例えば特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−182695号公報
【特許文献2】特開2001−333924号公報
【特許文献3】特開2004−129752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1に記載の発明においては、複数のピストン・シリンダーを作動させることによって、バキューム装置における吸気口を所望の位置へ移動位置決めする構成であるから、前記吸気口を手動的に移動位置決めする場合、ピストン・シリンダーが抵抗として作用するものであり、円滑な位置決めを阻害することがある。また、構成が複雑である。
【0006】
前記特許文献2に記載の発明においては、支柱に対する第1アームの傾斜に対応して伸縮する第1のバランススプリングと、第1アームに対する第2アームの傾斜に対応して伸縮する第2のバランススプリングを備えた構成であるから、第1、第2のアームを適宜に傾斜して先端部に備えた吸引フードの位置決めを行おうとするとき、第1、第2アームの傾斜を軽く行うことができる。しかし、前記第1、第2のバランススプリングを関連動作させるために、第1アームに沿って移動自在な移動部材や円盤を備える必要があり、全体的構成が大型化し易いという問題がある。
【0007】
前記特許文献3に記載の発明は、バキューム装置における各パイプを回動自在に接続した関節機構に、ボールプランジャを備えたクリック機構を備えているので、各パイプを所望の角度に接続保持することができるものの、各パイプの重量に均衡するバランススプリング等を備えていないので、各パイプを回動するときに、各クランプの重量が抵抗として作用するので、パイプの先端部に備えた吸引フードの位置決めが厄介であるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前述のごとき従来の問題に鑑みてなされたもので、固定用ポールの先端部に適数のアームを直列にかつ互いに相対的に回動可能に接続して備え、先端部のアームの先端部に吸引フードを着脱可能に備えた歯科用口腔外バキューム装置であって、前記固定用ポールとアームとを回動可能に接続した関節機構又は各アームを回動可能に接続した関節機構に、基準側フランジを備えると共に、当該基準側フランジに対して相対的に回動可能な回動側フランジを備え、前記基準側フランジと回動側フランジとの間にリング部材を回動可能に備え、前記基準側フランジに備えたフックと前記リング部材に備えたフックとの間に第1の弾性部材を介在して備えると共に、前記リング部材に備えた前記フックと前記回動側フランジに備えたフックとの間に第2の弾性部材を介在して備えていることを特徴とするものである。
【0009】
また、前記歯科用口腔外バキューム装置において、前記第1の弾性部材における弾性係数よりも第2の弾性部材における弾性係数が大きい又は等しいことを特徴とするものである。
【0010】
また、前記歯科用口腔外バキューム装置において、前記基準側フランジと回動側フランジとの間であって前記リング部材の外周に、ブレーキパッドを備え、このブレーキパッドに対する挟持力を調節するために、前記基準側フランジ及び回動側フランジを締付け自在な締付固定手段を備えていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、歯科用口腔外バキューム装置において、例えば固定用ポールとアームとを回動自在に接続した関節機構に、前記アームの回動角度に対応して伸縮作動する複数の弾性部材を備えているので、アームを所望の回動角(傾斜角)の姿勢に保存することが容易なものである。また、前記各弾性部材はアームが回動する周方向に伸縮する構成であるから、全体的構成のコンパクト化を図ることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る歯科用口腔外バキューム装置の全体的構成を示す斜視説明図である。
【図2】先端面に照明装置を備えると共に吸音材及び吸引フードを着脱可能に備えた先端部のアーム等の斜視説明図である。
【図3】第1の関節機構の構成を示す断面説明図である。
【図4】図3に示した第1の関節機構の右側面説明図である。
【図5】図4のV−V線に沿った断面説明図である。
【図6】第1の関節機構の主要部を示した斜視説明図である。
【図7】第1、第2の弾性部材と各フックとの相互の関係を、概念的、概略的に示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を用いて本発明の実施形態に係る歯科用口腔外バキューム装置の構成について説明するに、本発明の実施形態に係る歯科用口腔外バキューム装置は、固定用ポールを床面に立設した構成、又は天井から垂設した構成のどちらにも適用し得るものである。しかし、本実施形態においては、前記固定用ポールを床面に立設した構成の場合について例示する。
【0014】
図1を参照するに、本発明の実施形態に係る歯科用口腔外バキューム装置1は、床面(図示省略)上に固定した固定台3を備えている。この固定台3は、ホース等の配管を介してブロワー等の吸引装置に接続してある。この固定台3の適宜位置にはメインスイッチ5が備えられていると共に、パイプ状の固定用ポール7が立設してある。そして、この固定用ポール7の上部には、当該固定用ポール7の長手方向(上下方向)の軸心回りに矢印A方向へ水平に回動自在(旋回自在)な回動支柱9が備えられている。
【0015】
上記回動支柱9には、第1の関節機構11を介して長尺の第1アーム13の基端部が水平な軸心回りに矢印B方向へ上下に揺動(回動)可能に接続してある。すなわち、前記第1アーム13は、前記固定用ポール7の上端部(先端部)に、第1の関節機構11を介して上下方向へ揺動可能に支持されているものである。そして、前記第1アーム13の先端部には、第2の関節機構15を介して長尺の第2アーム17の基端部が、前記第1アーム13の回動軸心と平行な水平な軸心回りに矢印C方向へ上下に揺動可能に接続してある。
【0016】
すなわち、第2アーム17は、第1アーム13の先端部に、第2の関節機構15を介して当該第1アーム13に対して上下方向に回動可能に取付けてあるものである。さらに、前記第2アーム17の先端部には、当該第2アーム17の回動軸心と平行な水平な軸心回りに矢印D方向へ回動可能な第3アーム19が第3の関節機構21を介して回動可能(揺動可能)に取付けてある。この第3アーム19は、前記第1、第2のアーム13,17に比較して極めて短く、すなわち短尺に構成してある。
【0017】
前記第3アーム19には、第4の関節機構23を介して短尺の第4アーム25が回動可能に取付けてある。上記第4アーム25の長手方向の軸心と前記第3アーム19の長手方向の軸心は一致してある。したがって、前記第4アーム25は第3アーム19の軸心回りに矢印E方向へ回動可能に取付けてあるものである。そして、前記第4の関節機構23の外部カバーには光学センサなどから構成された非接触センサ27が備えられている。
【0018】
前記非接触センサ27は、前記メインスイッチ5がONであることを条件として、当該歯科用口腔外バキューム装置1における吸引作用のON,OFFを行うものである。前記非接触センサ27は、手を近接することによってON状態となり、次に手を近接するとOFF状態となるものである。すなわち、前記非接触センサ27は、手を接近することを繰り返すことにより、ON,OFFを繰り返すものである。
【0019】
前記第4アーム25の先端部には、第5の関節機構29を介して、さらに短い第5アーム31が、前記第4アーム25の長手方向に対して直交する方向の軸心回りに矢印F方向へ回動可能に取付けてある。そして、前記第5アーム31の先端部には、第6の関節機構33を介して短い第6アーム35が第5アーム31の軸心回りに矢印G方向へ回動可能に取付けてある。なお、矢印F方向と矢印G方向は同一方向である。前記第6アーム35には、筒状の吸音材37が先端側から着脱可能に嵌挿してあると共に、吸引フード39が着脱可能に取付けてある。
【0020】
上述の説明より理解されるように、歯科用口腔外バキューム装置1は、固定用ポール7の先端部に複数のアーム13,17,19,25,31,36を直列に、かつ互いに相対的に回動可能に接続して備えている。そして、先端部の第6アーム35の先端部に吸引フード39を着脱可能に備えた構成である。
【0021】
前記第6アーム35についてさらに詳細に説明すると、図2に示すように、当該第6アーム35において前記吸音材37を着脱可能に嵌挿する嵌挿孔41の周囲であって第6アーム35の先端面には複数(4個)のLED等の発光素子からなる照明手段43が等間隔に備えられている。上記各照明手段43は、第6アーム35に取付けた前記吸引フード39の吸引口が指向した方向であって、第6アーム35における軸心の延長上のほぼ一点に集光するように、その指向方向は、第6アーム35の軸心に対して傾斜してある。さらに、前記第6アーム35には、突出して備えたグリップ35Gに前記照明手段43のON,OFFを行うスイッチ35Sが備えられている。
【0022】
前記吸音材37は、例えば発泡スチロールなどのように、吸湿性を有しない適宜の発泡剤から筒状に形成してあって、吸音効果や構成のコンパクト化を考慮して、外径/内径は1.1〜1.3の範囲に設定してあり、長さは、内径の1.8〜2.5倍の範囲に設定してある。すなわち、外径/内径が1.1以下になると肉厚が薄くなり、吸音効果が低下し、また、1.3以上にすると、外径が大きくなり、全体的構成を大きくする傾向にあり、望ましいものではない。また、長さが内径の1.8倍以下では、吸音効果が低下し、2.5倍以上になると流路抵抗が大きくなると共に全体的構成が長大になるので望ましいものではない。
【0023】
前記吸引フード39は、前記照明手段43からの光を透過する透明に構成してあって、前記第6アーム35の嵌挿孔41へ嵌合する筒状の嵌合部45を備えていると共に、当該嵌合部45よりも外形の大きなフード部47を備えている。この吸引フード39は、前記第6アーム35の嵌挿孔41に対して嵌合部45を嵌合固定することにより、前記吸音材37が抜け出ることを防止するものである。また、前述のように、第6アーム35に吸引フード39を取付けたときには、前記フード部47は前記照明手段43を覆うものである。換言すれば、照明手段43は、透明な吸引フード39におけるフード部47の背後に位置することになり、照明手段43は空中の粉塵等による汚染から保護されるものである。
【0024】
既に理解されるように、照明手段43は、先端部の第6アーム35の先端面に備えられているから、透明な吸引フード39を透過して口腔内を照明することになる。この際、口腔内全体の照明は吸引フード39を透過した光によって照明されるものである。すなわち、吸引フード39を透過した光と透過することなく照明手段43から直接照射された光とが存在するものではないので、口腔内に明暗部を生じるようなことがなく、口腔内を均等な明るさに照明できるものである。
【0025】
なお、前記照明手段43のON,OFFを行うためのスイッチ35Sは、第6アーム35に突出して備えたグリップ35Gに備えられているので、照明手段43のON,OFFを容易に行うことができると共に、前記グリップ35Gを把持しての吸引フード39の位置決めも容易に行い得るものである。
【0026】
また、前記構成においては、第6アーム35における嵌挿孔41内に筒状の吸音材37を備えているので、吸引フード39から外気を吸引するときに生じる傾向にある騒音を効果的に抑制することができるものである。この際、吸音材37が筒状であることにより、吸引フード39からの吸引効果が低下するようなことはないものである。
【0027】
また、前記構成においては、先端の第6アーム35に近接して備えられた第4の関節機構23の位置に、メインスイッチ5がON状態であることを条件として歯科用口腔外バキューム装置1の吸引作用のON,OFFを行う非接触センサ27を備えているので、手で触れることなく歯科用口腔外バキューム装置1のON,OFFを行うことができることとなり、利便性が向上するものである。
【0028】
ところで、前記第1の関節機構11から第6の関節機構33の各関節機構の構成としては、各アームを互いに相対的に回動可能に接続すればよいのである。しかし、第1の関節機構11には、第1アーム13〜第6アーム35の重量が全て作用するものであり、かつ固定用ポール7に対する第1アーム13の傾斜角度が異なると、第1アーム13を下方向へ回動しようとするモーメントが異なることとなる。したがって、複数のアームを直列にかつ互いに相対的に回動可能に接続した構成においては、第1の関節機構11の使用条件が厳しいことになる。そこで、次に第1の関節機構11の詳細について説明する。
【0029】
なお、第2、第3の関節機構15,21は第1の関節機構11と同一の構成、又は第1の関節機構11の構成に準じた構成であることが望ましく、第4、5、6の関節機構23,29,33は、第1の関節機構11の構成と同一又は準じた構成、或いは周知の一般的な構成であってもよいものであるから、第2〜第6の関節機構の詳細についての説明は省略する。
【0030】
前記第1の関節機構11は次のように構成してある。すなわち、前記固定用ポール7の上部に備えた前記回動支柱9は、図3に示すように、垂直管部9Aと水平管部9Bとを直交して備えたエルボに構成してあり、前記水平管部9Bの先端付近の外周面には基準側フランジ49が備えられている。そして、前記第1アーム13の基端部に一体的に備えた接続管51も、垂直管部51Aと水平管部51Bと直交して備えたエルボに構成してあり、この接続管51における水平管部51Bの外周面には、前記基準側フランジ49と対向して相対的に回動可能な回動側フランジ53が備えられている。
【0031】
前記回動支柱9の前記水平管部9Bと前記接続管51の水平管部51Bとの間には、前記水平管部9Bに回動可能に嵌合した中間パイプ55が介在してあり、この中間パイプ55の外周面に備えた中間フランジ57は、前記接続管51の前記回動側フランジ53と一体的に面接触してある。そして、前記回動支柱9における水平管部9Bの端面と前記中間パイプ55の中間フランジ57との間には、前記中間パイプ55の外周面に回動自在に嵌合した中間リング59が介在してある。
【0032】
この中間リング59の外周面には周方向に適宜範囲に亘って切り欠いた切欠部61(図6参照)が形成してある。また、前記中間リング59には、前記中間パイプ55のフランジ57及び前記接続管51の回動側フランジ53に周方向に形成した円弧状のスリット63を貫通して、前記回動側フランジ53に備えたフック65と周方向に対向するフック67を備えている。そして、前記両フック65,67間には、コイルスプリングなどのごとき弾性部材69が弾装してある。
【0033】
前記固定支柱9における基準側フランジ49と前記接続管51における回動側フランジ53との間にはブレーキ装置が備えられている。すなわち、前記固定支柱9における前記水平管部9Bの端部外周面にはリング状のブレーキシュー71が一体的に嵌合して備えられている。そして、このブレーキシュー71と前記中間パイプ55の中間フランジ57に備えたリング状のブレーキパッドベース73との間には、リング状のブレーキパッド75が備えられている。前記ブレーキパッド75は、前記中間リング59の外周を囲繞するように備えられている。
【0034】
したがって、前記回動支柱9の基準側フランジ49と前記接続管51の回動側フランジ53によって前記ブレーキパッド75を挟圧することにより、前記回動支柱9に対して前記第1アーム13を相対的に回動しようとするときの摩擦力を調節し得るものである。よって、前記回動支柱9に対して第1アーム13を相対的に回動して適宜に傾斜した状態に保持しようとするときに、適正な摩擦力に調節できるものである。
【0035】
前記基準側フランジ49と回動側フランジ53によるブレーキパッド75の挟持力(挟圧力)を調節するために、前記第1の関節機構11には、前記基準側フランジ49及び回動側フランジ53を締付自在な締付固定手段77が備えられている。この締付固定手段77は、半円弧状の一対の締付部材79A,79Bの一端部を枢軸81(図5参照)を介して回動自在に枢支連結した構成である。
【0036】
前記締付部材79A,79Bの内周面は、前記基準側フランジ49及び回動側フランジ53の外周縁を締付け可能なように、外径側の間隔が次第に小さくなるV字形状の断面に形成してある。そして、前記締付部材79A,79Bを締付けるために、一方の締付部材79Aの他端部には締付ボルト等のごとき締付具83を貫通自在な貫通穴を備えた突出部85Aが形成してある。他方の締付部材79Bの他端部には、前記突出部85Aと対向する突出部85Bが備えられており、この突出部85Bには、前記締付具83を螺合する螺子孔が形成してある。
【0037】
したがって、前記締付具83の締付力を調節することにより、前記基準側フランジ49と回動側フランジ53による前記ブレーキパッド75の挟持力を調節することができる。よって、前述したように、前記回動支柱9に対して前記第1アーム13を回動しようとするときの摩擦力を調節することができるものである。換言すれば、回動支柱9に対して第1アーム13を適宜角度に傾斜して保持するときの保持力を調節し得るものである。
【0038】
既に理解されるように、前記ブレーキパッド75の挟持を強力に行って摩擦力を大きくすることによっては、回動支柱9に対して第1アーム13を所望の傾斜角度に傾斜した状態に保持することができる。しかし、摩擦力が大きいと、回動支柱9に対して第1アーム13を回動する操作が重くなる。そこで、前記第1アーム13の回動操作を円滑に行うことができ、かつ第1アーム13を所望の傾斜角度に傾斜した状態に保持することのできる均衡手段が備えられている。
【0039】
すなわち、前記回動支柱9の前記基準側フランジ49には、前記中間リング59の前記フック67に対して周方向に対向したフック87が備えられている。このフック87は、前記ブレーキシュー71を貫通すると共に前記中間リング59の前記切欠部61を周方向へ相対的に回動可能に貫通し、かつ前記中間パイプ55の中間フランジ57及び前記接続管51の回動側フランジ53に形成した前記円弧状のスリット63を周方向へ相対的に回動可能に貫通して備えられている。そして、このフック87と前記中間リング59の前記フック67との間には、コイルスプリングなどのごとき弾性部材89が弾装してある。
【0040】
なお、前記回動支柱9に対して前記第1アーム13がほぼ垂直に直立した状態にあるときには、図7に模式的に示すように、中間リング59のフック67は、円弧状のスリット63の一端側付近に備えた回動側フランジ53のフック65と反対側のスリット63内の他端側に位置しているものである。そして、基準側フランジ49に備えた前記フック87は前記スリット63内の中間位置に位置するものである。そして、前記弾性部材89を第1弾性部材とし、前記弾性部材69を第2弾性部材とすると、第1の弾性部材89における弾性係数よりも第2の弾性部材69の弾性係数を大きく設定してある。
【0041】
したがって、垂直状態にある第1アーム13を倒すように、図7において矢印B方向(図1の矢印方向と同方向)に回動すると、基準側フランジ49のフック87は定位置に位置するものの、回動側フランジ53のフック65は、前記フック87に接近するように回動する。この際、フック65は、第2の弾性部材69を介して中間リング59のフック67を引っ張ることになる。また、中間リング59のフック67は、第1の弾性部材89を引っ張ることになる。
【0042】
ここで、第1の弾性部材89の弾性係数は、第2の弾性部材69の弾性係数より小さいので、先ず第1の弾性部材89に伸びが生じることになる。そして、前記第1アーム13の回動が次第に大きくなると、前記中間リング59の切欠部61の端部がフック87に当接して回動を停止する。したがって、次には、弾性係数の大きな第2の弾性部材69に伸びを生じることになる。
【0043】
既に理解されるように、第1アーム13の垂直状態からの傾斜角が小さく、第1アーム13を自重等によって下方向へ回動しようとするモーメントが小さな範囲においては弾性係数の小さな第1弾性部材89が重量にバランスするように作用し、第1アーム13の垂直状態からの傾斜角が大きくなり、第1アーム13を自重等によって下方向へ回動しようとするモーメントが大きくなる範囲においては、弾性係数の大きな第2の弾性部材69が重量にバランスするように作用するものである。したがって、第1アーム13を所望の角度に傾斜した状態に保持しようとするとき、第1アーム13を自重等によって下方向へ回動しようとする力と第1、第2の弾性部材89,69が収縮しようとする力及び前記ブレーキパッド75等のブレーキ装置の摩擦力の和の力とを均衡することが容易なものである。
【0044】
以上のごとき説明より理解されるように、第1、第2の弾性部材89,69は、第1アーム13を回動しようとする方向、すなわち前記接続管51における水平管部51Bの周方向に配置してあるので、関節機構のコンパクト化を図ることができるものである。そして、第1アーム13が下方向へ回動しようとする力に対しては、ブレーキ装置における摩擦力と第1、第2の弾性部材の収縮力の和によって均衡することができるので、第1アーム13を回動操作するとき、円滑に操作することができるものである。
【符号の説明】
【0045】
1 歯科用口腔外バキューム装置
7 固定用ポール
9 回動支柱
11 第1の関節機構
13 第1アーム
15 第2の関節機構
17 第2アーム
19 第3アーム
21 第3の関節機構
23 第4の関節機構
25 第4アーム
27 非接触センサ
29 第5の関節機構
31 第5アーム
33 第6の関節機構
35 第6アーム
35S スイッチ
37 吸音材
39 吸引フード
43 照明手段
49 基準側フランジ
51 接続管
53 回動側フランジ
59 中間リング
61 切欠部
63 円弧状のスリット
65,67,87 フック
69 弾性部材(第2の弾性部材)
71 ブレーキシュー
75 ブレーキパッド
89 弾性部材(第1の弾性部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定用ポールの先端部に適数のアームを直列にかつ互いに相対的に回動可能に接続して備え、先端部のアームの先端部に吸引フードを着脱可能に備えた歯科用口腔外バキューム装置であって、前記固定用ポールとアームとを回動可能に接続した関節機構又は各アームを回動可能に接続した関節機構に、基準側フランジを備えると共に、当該基準側フランジに対して相対的に回動可能な回動側フランジを備え、前記基準側フランジと回動側フランジとの間にリング部材を回動可能に備え、前記基準側フランジに備えたフックと前記リング部材に備えたフックとの間に第1の弾性部材を介在して備えると共に、前記リング部材に備えた前記フックと前記回動側フランジに備えたフックとの間に第2の弾性部材を介在して備えていることを特徴とする歯科用口腔外バキューム装置。
【請求項2】
請求項1に記載の歯科用口腔外バキューム装置において、前記第1の弾性部材における弾性係数よりも第2の弾性部材における弾性係数が大きい又は等しいことを特徴とする歯科用口腔外バキューム装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の歯科用口腔外バキューム装置において、前記基準側フランジと回動側フランジとの間であって前記リング部材の外周に、ブレーキパッドを備え、このブレーキパッドに対する挟持力を調節するために、前記基準側フランジ及び回動側フランジを締付け自在な締付固定手段を備えていることを特徴とする歯科用口腔外バキューム装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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