説明

歯科用接着剤組成物および方法

重合性酸性単量体を含有する、二部および一部セルフエッチング歯科用接着剤。該方法は、歯エッチングを必要としないワンコート塗布を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般には歯科用接着剤に関する。特に本発明は、セルフエッチング接着剤に関する。具体的には、本発明は重合性酸性単量体を含有する接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
[発明の背景]
本明細書中で使用される略号の表
略号 正式名称
4−META 4−メタクリルオキシエチルトリメリト酸無水物
AHPMA 3−(アクリロイルオキシ)−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート
BHT ブチル化ヒドロキシトルエン
BMAP ビス(2−メタクリルオキシエチル)ホスフェート
CAF セチルアミンハイドロフルオライド
CQ カンファキノン
DHEPT ジヒドロキシルエチル−p−トルイジン
DMABA ジメチルアミノ安息香酸
DMABN ジメチルアミノベンゾニトリル
EDAB 4−エチルジメチルアミノベンゾエート
EGMP エチレングリコールメタクリレートホスフェート
HEMA 2−ヒドロキシエチルメタクリレート
L−TPO ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド
NaTs p−トルエンスルフィン酸のナトリウム塩
OEMA 4,4’−オキシジフェニルエーテル−1,1’,6,6’−テトラ
カルボン酸−1,1’−(2−メタクリルオキシ)ジメタクリレート
PENTA ジペンタエリスリトールペンタアクリレートリン酸エステル
PyroEMA テトラ−メタクリルオキシエチルピロホスフェート
SBS せん断付着強度
SCA 自己硬化活性剤
SEA セルフエッチング接着剤
2P−SEA 二部(two-part)セルフエッチング接着剤
1P−SEA 一部セルフエッチング接着剤
VLC 可視光硬化
SC 自己硬化(またはアントキュア(antocure))
SUM 合計
TEGDMA トリエチレングリコールジメタクリレート
TMPTMA トリメチロールプロパントリメタクリレート
UDMA 1,6−ビス[メタクリロイルオキシエトキシカルボニルアミノ]−
2,4,4−トリメチルへキサン
【0003】
本明細書中で用いる場合、「%」およびパーセント等は全て、重量単位である。
【0004】
歯科用修復材としての複合樹脂の使用に関しては、簡単な取扱いにより、歯構造および複合樹脂の間にしっかりした接着を保証することが必要である。代表的な接着修復手法は、リン酸により歯の基質上を酸エッチングし、その後、水ですすぎ、乾燥し、プライマーを塗布し、乾燥し、付着剤を塗布し、光硬化して、最後に複合樹脂を充填することを包含する。このような取扱いを成し遂げるためには多くの付着工程に時間を要し、且つ確実な接着性が得られない、ということは明らかである。
【0005】
用いられる構成要素の数を低減するために、プライミングおよび付着が、ワンボトル中で、Prime&Bond(商品名)商標の接着剤(デンツプライ社)により例示されるいわゆるワンボトル/2段階で組み合された。依然としてエッチングを最初に実行しなければならず、その後、少なくとも1回の単一ボトル結合剤を塗布し、次いで重合した後、充填材料を用いる。充填材料の接着硬化のための方法の別の簡易化は、プライミングとエッチングとを一構成部分に併合すること、いわゆるセルフエッチングプライマー、例えばClearFil SEボンド系におけるSEプライマー[2成分(SE プライマーおよびボンド液)、2段階、逐次塗布(SEプライマー、その後ボンド樹脂)セルフエッチング接着剤(Kuraray)]である。ClearFil SEボンドは、直接光硬化複合修復結合に関してのみに示される。間接修復結合に関しては、Kurarayは、多成分(プライマーAおよびB、ボンド液AおよびB)/多段階塗布セルフエッチング接着剤系であるClearFilライナー・ボンド2Vを用いることを推奨している。
【0006】
アドパー・プロンプト・エル・ポップ(3M ESPE)、いわゆる二成分/ワンパック/一段階セルフエッチングおよびセルフプライミング接着剤が、2つの予め1回分に分けられた区画から成る単一単位用量ブリスター包装で、または二液AおよびBの2つの別個のボトルで供給される。プロンプト・エル・ポップは、直接光硬化成分修復材結合に関してのみ示される。
【0007】
参考文献である米国特許第6,387,979号(K. Hino (Kuraray Co. Ltd., Japan))(2002年5月14日発行)は、高い初期付着強度および良好な付着を有する、酸基を有する重合性化合物、水溶性皮膜形成剤、水および硬化剤の混合物を含む結合組成物を用いて治療される歯について記載しているが、この場合、酸のカルシウム塩は水に不溶性であり、且つ皮膜形成剤は生理的食塩水と混和性の重合性化合物であり、いかなる前処理、例えば酸エッチングまたはプライミング処理をも要しない。単一パッケージ中の組成物の活性成分は、保存中に分解または重合し得ることが記載されている。これを防止するために、組成物の成分は、2部またはそれ以上の部分に分けられ得る。複数部が別々に包装され、異なるパッケージ中に保存される。それらを使用するには、個別パッケージから取り出された複数部が、次から次に、同一対象に塗布され得る;またはそれらは、使用直前に一混合物に配合され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
[発明を実行するための好ましい実施形態]
本発明の好ましい実施形態において、歯科用接着剤は、
(i)PENTA、OEMAおよびその混合物からなる群より選ばれた重合性酸成分約5〜約70重量%;
(ii)親水性メタクリレート約1〜約30重量%;
(iii)親水性二官能性(メタ)アクリレート約1〜約25重量%;
(iv)ウレタンメタクリレート約1〜約35重量%;
(v)疎水性二官能性(メタ)アクリレート約1〜約30重量%;
(vi)(ホスフィンオキシド、および/またはルセリンTPO、CQ/EDABおよびCQ/DMABNからなる群より選ばれたCQ/開始助剤)光開始剤約0.1〜約5重量%;
(vii)芳香族スルフィン酸塩からなる群より選ばれた硬化添加剤約0.1〜約5重量%;
(viii)セチルアミンハイドロフルオライド(CAF)からなる群より選ばれたフッ化物放出成分約0.1〜約5重量%;
(ix)ヒュームドシリカおよび官能化ナノ粒子からなる群より選ばれたフィラー粒子約0.1〜約10重量%;
(x)安定剤約0.05%〜約2%重量;
(xi)水約1〜約40重量%;および
(xii)アセトンおよびアルコールからなる群より選ばれた水混和性極性有機溶媒約5〜約60重量%を含む。
【0009】
別の好ましい実施形態において、歯科用接着剤は、
(i)PENTA、4−METAおよびそれらの混合物からなる群より選ばれた重合性酸成分約5〜約50重量%;
(ii)親水性メタクリレート約1〜約20重量%;
(iii)親水性二官能性(メタ)アクリレート約1〜約15重量%;
(iv)ウレタンジメタクリレート約1〜約30重量%;
(v)疎水性二官能性(メタ)アクリレート約1〜約30重量%;
(vi)(ホスフィンオキシド、および/またはルセリンTPO、CQ/DMABN組合せおよびL−TPO/CQ/EDAB組合せからなる群より選ばれたCQ/開始助剤)の光開始剤約0.1〜約5重量%;
(vii)芳香族スルフィン酸塩からなる群より選ばれた硬化性接着剤約0.1〜約5重量%;
(viii)セチルアミンハイドロフルオライド(CAF)からなる群より選ばれたフッ化物放出成分約0.1〜約5重量%;
(ix)ヒュームドシリカおよび官能化ナノ粒子からなる群より選ばれたフィラー粒子約0.1〜約10重量%;
(x)安定剤約0.05%〜約2重量%;
(xi)水約1〜約35重量%;および
(xii)アセトンおよびアルコールからなる群より選ばれた水混和性極性有機溶媒約5〜約60重量%を含む。
【0010】
本発明によれば、二成分および一成分セルフエッチング接着剤(2P−SEAおよび1P−SEA)の両方が提供される。新規のセルフエッチング接着材は、簡易ワンコート塗布で良好な接着性能を達成し、その特定の状況においてリン酸歯用ゲルを用いた歯エッチングを必要としない。
【0011】
2P−SEAは、直接光硬化複合修復材または間接的セメント化修復材を結合する前に予め混合した溶液AおよびBとともに、歯窩洞表面に塗布されるLC/SC二元性硬化セルフエッチング接着剤系である。好ましい2P−SEA組成物は、重合性酸性単量体とリン酸および/またはカルボン酸基、種々の親水性および疎水性メタ(アクリレート)単量体、構造樹脂単量体、架橋剤、硬化剤(L−TPO+CQ/EDAB(またはCQ/DMABN))および硬化促進添加剤(NaTs)、安定剤、水ならびにその他の溶媒(例えばアセトン、またはその他のアルコール類(メタノール、エタノール、t−ブタノール))との最適化混合物を含有する。従来技術のセルフエッチング接着剤と違って、本発明の2P−SEA溶液は、別個の酸エッチングまたはプライミング前処理歯結合過程を必要とせずに、可視光硬化(VLC)複合型修復材およびセメント化間接的修復材(予備加工金属/ポーセレン/複合インレー/アンレー/ベニヤ/歯冠/ブリッジ)の両方を、ヒトの歯基質(エナメル質および象牙質)に結合するのに用いることができる。2P−SEA塗布手法は、依然として同じであり、即ち、それが直接結合修復材であれ、間接結合修復材であれ、[パートA/B混合比=2/1(w/wまたはv/v)、1コート/20秒湿潤、風乾、LC10秒または20秒]である。2P−SEAは、従来技術の製品を上回る付着性能改良も示し、少なくとも20MPaより大きいエナメル質付着強度および少なくとも15〜20MPaより大きい象牙質付着強度を有する。付着性能は、過剰な熱応力負荷(1,800×または5,000×、55/5℃熱循環)または12週間まで/50℃の加熱熟成後でさえ持続したが、このことは、良好な付着および材料保存寿命安定性を示す。一般的な市販されているセルフエッチング接着剤製品と比較して、2P−SEAは、より良好なまたは同等の付着性能も示し、さらなる多用途性を有する。
【0012】
本発明の1P−SEAは、直接光硬化複合型修復材を結合するのに歯窩洞表面に塗布される前に、単一パッケージ(ボトルまたは単一単位用量)中に含入される一段階光硬化セルフエッチング接着剤である。好ましい1P−SEA組成物は、重合性酸性単量体とリン酸および/またはカルボン酸基、種々の親水性および疎水性メタ(アクリレート)単量体、構造樹脂単量体、架橋剤、硬化剤(L−TPOおよび/またはCQ/DMABN(またはCQ/EDAB))、安定剤、水およびその他の溶媒(アセトンまたはアルコール)との最適化混合物を含有する。従来技術のセルフエッチング接着剤と違って、一成分SEA材料は、高い初期付着強度および良好な付着、ならびに同様に長期付着性能を示し、少なくとも20MPaより大きいエナメル質付着強度および少なくとも15〜20MPaより大きい象牙質付着強度を有する。新規の1P−SEA材料は、簡易「ワンコート」塗布技法で良好な接着性能を達成し、別個の酸エッチングまたは歯プライミング過程を必要としない。1P−SEAの付着性能は、過剰な熱応力負荷(1,800×または5,000×、55/5℃熱循環)または4週間/50℃の加熱熟成後でさえ持続するが、このことは、良好な付着および材料保存寿命安定性を示す。一般的な市販されているセルフエッチング接着剤製品と比較して、1P−SEAは、より良好なまたは同等の付着性能も示し、より良好な貯蔵安定性およびより長い保存寿命を有する。1P−SEAは、従来技術の製品を上回る改良された付着性能を示し、高い初期および持続性長期付着性能(少なくとも20MPaより大きいエナメル質付着強度、および少なくとも15〜20MPaより大きい象牙質付着強度)および良好な付着を有する。組成物分解または重合を回避するために、組成物の活性成分が異なるパッケージ中に2部またはそれ以上の複数部に分けられなければならない従来技術のセルフエッチング接着剤製品とは違って、1P−SEAは、適切な酸性強度を有する酸性単量体、酸性水溶液中の有効且つ安定なVLC光開始剤、より高い架橋性および低加水分解傾向を有する二官能性親水性単量体、ならびに水混和性極性非プロトン性有機溶媒中に混入される最小量の水という最適成分を選択することにより、ワン・パッケージ貯蔵安定性問題を克服する。任意に、ミクロまたはナノサイズのフィラーおよびフッ化物放出剤も付加されて、製品性能を増強し、且つフッ化物放出特徴を提供することができる。別個の自己硬化活性剤成分とともに用いられる場合、1P−SEA塗布は、別個の酸エッチングまたはプライミング前処理過程を伴わずに、セメント化間接的修復材(予備加工金属/ポーセレン/複合インレー/アンレー/ベニヤ/歯冠/ブリッジ)をヒトの歯基質(エナメル質および象牙質)に結合することに拡張され得る。
【0013】
2P−SEAおよび1P−SEA材料はともに、以下のように、その特定の状況において、リン酸歯ゲルの使用を必要とせずに、簡易ワンコート塗布で良好な接着性能を達成し得る。
【0014】
二成分二元性硬化セルフエッチング接着剤(2P−SEA)に関しては、別個の酸エッチングまたはプライミング前処理歯結合過程を必要とせずに、可視光硬化(VLC)複合物/コンポマー直接修復材およびセメント化間接修復材(予備加工金属/ポーセレン/複合インレー/アンレー/ベニヤ/歯冠/ブリッジ)の両方をヒトの歯基質(エナメル質および象牙質)に結合することが示されている。それが直接結合修復材であれ、間接結合修復材であれ、2P−SEA塗布手法は、依然として同じであり、即ち、[パートA/B混合比=2/1(w/wまたはv/v)、1コート/20秒湿潤、風乾、LC10秒または20秒]である。さらに2P−SEAは、歯の修復材(複合物/ポーセレン/アマルガム)の接着性修復にも用いられ得る。2P−SEAは、窩洞ワニスまたは減感剤としても用いられ得る。
【0015】
一成分可視光硬化セルフエッチング接着剤(1P−SEA)に関しては、別個の酸エッチングまたはプライミング前処理歯結合過程を必要とせずに、VLC複合物/コンポマー直接修復材を、ヒトの歯基質(エナメル質および象牙質)に結合することが示されている。別個の自己硬化活性剤成分とともに用いられる場合、1P−SEAは、別個の酸エッチングまたはプライミング前処理過程を伴わずに、セメント化間接修復材(予備加工金属/ポーセレン/複合インレー/アンレー/ベニヤ/歯冠/ブリッジ)も、ヒトの歯基質(エナメル質および象牙質)に結合し得る。さらに1P−SEAは、歯窩洞ワニスまたは減感剤としても用いられ得る。
【0016】
開発された二成分および一成分セルフエッチング接着剤(2P−SEAおよび1P−SEA)の原型はともに、既存の市販されているセルフエッチング接着剤製品に対する改良を示す。新規のセルフエッチング接着剤材料は、簡易ワンコート塗布で、良好な接着性能を達成し、別個の酸エッチングまたはプライミング前処理歯結合過程を必要としない。
【0017】
特性改良は、酸性接着促進剤とリン酸および/またはカルボン酸官能基(例えばPENTAおよびOEMA)、種々の親水性および疎水性メタ(アクリレート)単量体、硬化剤(L−TPO+CQ/EDAB(またはCQ/DMABNまたはその他の光開始助剤)および硬化促進添加剤スルフィン酸塩類、NaTs)、水および揮発性極性溶媒(アセトンまたはアルコール)との最適化混合物から成る、P−SEAの独特の組成に起因する。従来技術の市販されている多成分セルフエッチング接着剤と違って、2P−SEA Dual Cureは、別個の酸エッチングまたはプライミング前処理歯結合過程を必要とせずに、直接VLC複合型修復材およびセメント化間接的修復材(予備加工金属/ポーセレン/複合インレー/アンレー/ベニヤ/歯冠/ブリッジ)の両方を、ヒトの歯基質(エナメル質および象牙質)に結合するのに用いられ得る。2P−SEAの塗布手法は依然として同じであり、即ち、それが直接結合修復材であれ、間接結合修復材であれ、[パートA/B混合比=2/1(w/wまたはv/v)、1コート/20秒湿潤、風乾、LC]である。2P−SEAは、従来技術の製品を上回る付着性能改良も示し、少なくとも20MPaより大きいエナメル質付着強度、および少なくとも18(15〜20)MPaより大きい象牙質付着強度を有する。付着性能は、過剰な熱応力負荷(1,800×または5,000×、55/5℃熱循環)または12週間まで/50℃の加熱熟成後でさえ持続したが、このことは、良好な付着および材料保存寿命安定性を示す。一般的な市販されているセルフエッチング接着剤製品と比較して、2P−SEAは、より良好なまたは同等の付着性能も示し、さらなる多用途性を有する(添付のComparison to Competitions参照)。
【0018】
第一の二成分LC/SC二元性硬化SEAは、以下の特質を有する:
同一の簡易塗布技法で、直接および間接の両方を結合;
簡易系(2つのボトルまたはパッケージされた単一単位用量、すすぎなし/組織の「乾燥および湿潤」なし、さらなる感度なし);
易使用性(ワンコート/一段階塗布技法);
高い付着性能および耐久性(安定性);
多用途性(直接および間接修復材結合塗布のための、2つのボトル接着剤系);および
2年以上の保存寿命(冷蔵不要)。
【0019】
1P−SEAは、直接光硬化複合型修復材を結合するのに歯窩洞表面に塗布される前に、単一パッケージ(ボトルまたは単一単位用量)中に含入される光硬化セルフエッチング接着剤である。組成物分解または重合を回避するために、組成物の活性成分が異なるパッケージ中に2部またはそれ以上の複数部に分けられなければならない従来技術のセルフエッチング接着剤製品とは違って、1P−SEAは、良好なセルフエッチング接着性能に必要な最適成分を選択することにより、他のセルフエッチング接着剤に一般的に認められる加水分解安定性問題を示さずに、ワン・パッケージ貯蔵安定性問題を克服する。1P−SEAにより提供される改良された接着特性および特徴/利点は、好ましくは適切な酸性強度を有する酸性単量体(PENTA、4−METAおよびその他の酸性単量体)、酸性水溶液中の有効且つ安定なVLC光開始剤、より高い架橋性および低加水分解傾向を有する二官能性親水性単量体、ならびに水混和性極性非プロトン性有機溶媒中に混入される最小量の水から成る、1P−SEA組成物の最適組合せにより可能にされる。任意に、ミクロまたはナノサイズのフィラーおよびフッ化物放出剤も1P−SEA組成物に付加されて、製品性能を増強し、且つフッ化物放出特徴を提供することができる。別個の自己硬化活性剤成分とともに用いられる場合、1P−SEA塗布は、別個の酸エッチングまたはプライミング前処理過程を伴わずに、セメント化間接修復材(予備加工金属/ポーセレン/複合インレー/アンレー/ベニヤ/歯冠/ブリッジ)を、ヒトの歯基質(エナメル質および象牙質)に結合することに拡張され得る。1P−SEAは、従来技術の製品を上回る、改良された付着性能を示し、高い初期および持続性長期付着性能(少なくとも20MPaより大きいエナメル質付着強度、および少なくとも15〜20MPaより大きい象牙質付着強度)および良好な付着を有する。新規の1P−SEA材料は、別個の酸エッチングまたは歯プライミング過程を伴わずに、簡易「ワンコート」一段階塗布技法で良好な接着性能を達成する。1P−SEAの付着性能は、過剰な熱応力負荷(5,000×、55/5℃熱循環)または4週間/50℃の加熱熟成後でさえ持続するが、このことは、良好な付着および材料保存寿命安定性を示す。一般的な市販されているセルフエッチング接着剤製品と比較して、1P−SEAは、より良好なまたは等価の付着性能を示し、より良好な貯蔵安定性および長期保存寿命を有する(添付のComparison to Competitions参照)。
【0020】
真の一成分SEAは、以下の特質を有する:
簡単(1つのボトルまたはパッケージされた単一単位用量、混合なし/すすぎなし/組織の「乾燥および湿潤」なし、さらなる感度なし);
迅速且つ容易(ワンコート/一段階(40秒以内));
高い付着性能および耐久性(安定性);
2年の保存寿命;
フッ化物放出;および
多用途性(自己硬化活性剤成分を用いた間接塗布に拡大可能)。
【0021】
包括的実験
本発明による組成物は、その適切な機能と共に列挙した以下の成分を各種含む:
PENTA: 酸性単量体、接着促進剤;
OEMA: 酸性単量体、接着促進剤;
(4−META: 酸性単量体、接着促進剤);
AHPMA: 二官能性親水性単量体、湿潤剤;
HEMA: 一官能性親水性単量体、湿潤剤;
TEGMA: 反応性希釈剤;
UDMA: 構造樹脂;
TMPTMA: 架橋剤;
光開始剤および安定剤;
硬化添加剤: スルフィン酸塩NaTs;
アセトン(またはアルコール): 溶媒、樹脂キャリア;および
水: プロトン酸用電離媒体、カルシウム塩用可溶化媒体、効果的なエナメルエッチングの必需品。
【0022】
以下の特徴を有するのが望ましい:
混入される最小量の水;
水混和性極性非プロトン性有機溶媒、例えば、加水分解および加溶媒分解を最小限にするための溶媒としてのアセトン;
VLC光開始剤としてのL−TPO:酸性水溶液中で有効且つ安定。L−TPO+CQ/DMABNまたはCQ/EDABは、典型的な歯科用ハロゲンQTHまたはLED硬化ユニットの両方により効果的に硬化され得る;
1P−SEAに関しては、より高い架橋性、低加水分解傾向、および加水分解に好ましい媒質への低寄与性を有する二官能性疎水性単量体;および
1P−SEAに関しては、象牙質およびエナメル質の両方をエッチングするのに十分に強いが、しかし十分な加水分解安定性を有する、適切な酸性強度の酸性単量体が同定された。
【0023】
添付にリストされた、好ましい2P−SEA組成物および処方物(LCH57−78−2/LCH56−140)とともに、良好な付着性能を有するLC/SC二元性硬化二部SEAのいくつかのシリーズが同定された。2P−SEA Dual Cureは、別個の酸エッチングまたはプライミング前処理歯結合過程を必要とせずに、直接VLC複合型修復材およびセメント化間接修復材の両方を、ヒトの歯基質(エナメル質および象牙質)に結合するのに用いられ得る。
【0024】
2P−SEAも、従来技術の製品を上回る、改良された付着性能を示し、少なくとも20MPaより大きいエナメル質付着強度、および少なくとも18(15〜20)MPaより大きい象牙質付着強度を有した。付着性能は、過剰な熱応力負荷(1,800×または5,000×、55/5℃熱循環)または12週間まで/50℃の加熱熟成後でさえ持続したが、このことは、良好な付着および材料保存寿命安定性を示す。
【0025】
2つの非常に有望な一部SEA発明が識別された。1P−SEA発明の一実施形態は、酸性単量体としてPENTAを含有し、別の実施形態は酸性単量体としてPENTA/4−METAを有する。
【0026】
VLC光開始剤としてのL−TPO:酸性水溶液中で有効且つ安定。L−TPO+CQ/DMABNまたはCQ/EDAB光開始剤組合せは、酸性環境中で安定であり、且つ典型的な歯科用ハロゲンQTHまたはLED硬化ユニットの両方により効果的に硬化され得る。
【0027】
それらは、象牙質およびエナメル質の両方に対して、優れた基線付着強度を示した。50℃/3週間の貯蔵時に、それらは依然として、象牙質およびエナメル質の両方に対して許容可能な付着強度を有した(象牙質SBSは15MPaより大きく、エナメル質SBSは20MPaより大きい)。
【0028】
新規のSEA発明が塗布されたBS試料は、55−5℃で1,800サイクルまたは5,000×熱循環された。象牙質およびエナメル質付着強度の両方において有意な変化は観察されなかった。
【0029】
SEA(2P−SEAまたは1P−SEA)を用いた、ヒトの歯基質(象牙質またはエナメル質)に対する複合修復材またはセメント化間接修復材(インレー/アンレー/歯冠/ブリッジ)のせん断付着強度を測定するための試料調製および検定
抜歯ヒト臼歯を水中に浸漬し、使用前に4℃冷蔵庫中に保存した。湿潤320グリット研磨紙、次に600グリットを用いて、象牙質またはエナメル質を研磨した。歯科用接着剤を象牙質またはエナメル質表面に塗布し、マイクロブラシで20秒間ごしごし擦った。表面を空気流で10秒間ブロー乾燥し、550mw/cmでSpectrum800を用いて10秒間光硬化した。ゼラチンカプセル(#5)をTPH複合材料で半充填し、VL硬化炉中で硬化した。カプセルをTPHで充填し、被覆象牙質上に置いた。歯科用探針を用いて斑点を静かに除去し、550mw/cmでSpectrum800を用いて、シリンダーの外周の周りを逐次3×20秒で複合材料を光硬化した。
【0030】
間接的セメント化付着強度に関しては、カプセルまたはプラスチックマトリックスを混合複合樹脂セメント(例えばカリブラ樹脂セメント(デンツプライ社))で充填し、被覆象牙質またはエナメル質表面に置いた。歯科用探針を用いて斑点を静かに除去し、550mw/cmでSpectrum800を用いて、シリンダーの外周の周りを逐次3×20秒で複合材料ポストを光硬化し、または樹脂セメントのために自己硬化を残す。
【0031】
試料をトレー樹脂中に包埋し、ポストを結合表面に対して確実に垂直にさせた。5mm/分のクロスヘッド速度でインストロンを用いて圧縮せん断方式で、せん断付着強度を得た。同様の手法に従ってエナメル質せん断付着強度を試験したが、但し、より小さい直径を有するプラスチックストローをゼラチンカプセルの変わりに用いた。
【実施例1】
【0032】
[2P−SEA実施例1]
2P−SEAは、液体Aおよび液体Bから成る。液体Aは、20.0重量部のジペンタエリスリトールペンタアクリレートリン酸エステル(PENTA)、15.0重量部のOEMA樹脂、5重量部のヒドロキシルエチルメタクリレート(HEMA)、10.0重量部のトリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)、5.0重量部の1,6−ビス(メタクリロイルオキシエトキシカルボニルアミノ)−2,4,4−トリメチルヘキサン(UDMA)、2.0重量部のトリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTMA)、2.0重量部のジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(L−TPO)、0.30重量部のカンファキノン(CQ)および1.0部のEDAB(または1.0部の4−ジメチルアミノベンゾニトリル(DMABN)、0.40重量部のブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、44.3重量部の溶媒アセトン(またはエーテルまたは2−メチル−2−プロパノール、またはメタノール))で構成される。液体Bは、2.0重量部の芳香族スルフィン酸ナトリウム(NaTs)、19.9重量部のエタノールおよび78.1重量部の脱イオン水で構成される。24時間複合物の象牙質およびエナメル質付着強度は、別個のエッチング過程を伴わずに、それぞれ17.9(1.6)MPaおよび30.0(5.6)MPaと測定された。24時間複合物樹脂セメント(カリブラ)の象牙質およびエナメル質付着強度は、別個のエッチング過程を伴わずに、それぞれ19.6(5.8)MPaおよび23.3(6.6)MPaと測定された。熱循環(1,800サイクル、55/5℃間)複合物の象牙質およびエナメル質付着強度は、別個のエッチング過程を伴わずに、それぞれ16.5(2.8)MPaおよび35.6(3.3)MPaと測定された。
【0033】
[2P−SEA実施例2:LCH68−119−2およびLCH68−120−2]
2P−SEAは、液体Aおよび液体Bから成る。液体Aは、35.0重量部のジペンタエリスリトールペンタアクリレートリン酸エステル(PENTA)、10.0重量部のOEMA樹脂、10.0重量部のトリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)、10.0重量部の1,6−ビス(メタクリロイルオキシエトキシカルボニルアミノ)−2,4,4−トリメチルヘキサン(UDMA)、2.0重量部のトリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTMA)、2.0重量部のジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(L−TPO)、0.30重量部のカンファキノン(CQ)および1.0部のEDAB、0.40重量部のブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、29.3重量部の2−メチル−2−プロパノールで構成される。液体Bは、2.0重量部の芳香族スルフィン酸ナトリウム(NaTs)、49.9重量部のエタノールおよび48.1重量部の脱イオン水で構成される。24時間複合物の象牙質およびエナメル質付着強度は、別個のエッチング過程を伴わずに、それぞれ19.5(1.3)MPaおよび25.3(4.7)MPaと測定された。24時間複合物樹脂セメント(カリブラ)の象牙質およびエナメル質付着強度は、別個のエッチング過程を伴わずに、それぞれ15.5(1.7)MPaおよび27.2(2.0)MPaと測定された。
【0034】
長期(18ヶ月)室温で熟成された2P−SEA材料の直接および間接接着
1.5年(18ヶ月)間室内周囲温度で熟成した上記2P−SEA二元性硬化性接着剤材料(ロット番号33801&ロット番号33201)に関する接着SBS試験は、27.0MPaの直接複合物エナメル質SBS(100%粘着失敗)および18.0MPaの象牙質SBS(100%粘着失敗)を示したが、一方、直接および間接塗布の両方に関して同一技法を用いて、24.5MPaの間接セメント化エナメル質SBS(100%粘着失敗)および14.4MPaの象牙質SBS(60%粘着失敗)も同じ2P−SEA材料に関して得られた。それらの結果は、2P−SEA材料が非常に良好な安定性および接着結果を有し、室温での少なくとも1.5年(18ヶ月)の保存寿命を今までのところ有する、ということを実証した。
【0035】
[2P−SEA実施例3]
2P−SEAは、液体Aおよび液体Bから成る。液体Aは、20.0重量部のジペンタエリスリトールペンタアクリレートリン酸エステル(PENTA)、15.0重量部のOEMA樹脂、10.0重量部のトリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)、5.0重量部の1,6−ビス(メタクリロイルオキシエトキシカルボニルアミノ)−2,4,4−トリメチルヘキサン(UDMA)、2.0重量部のトリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTMA)、2.0重量部のジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(L−TPO)、0.30重量部のカンファキノン(CQ)および1.0部のEDAB、0.40重量部のブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、0.2%セチルアミンハイドロフルオライド(CAF)および1%シラン処理ヒュームドシリカ(Aerosil380)、42.0重量部の2−メチル−2−プロパノール(またはエタノールまたはアセトン)で構成される。液体Bは、2.0重量部の芳香族スルフィン酸ナトリウム(NaTs)、19.9重量部のエタノールおよび78.1重量部の脱イオン水で構成される。24時間複合物の象牙質およびエナメル質付着強度は、別個のエッチング過程を伴わずに、それぞれ21.8(2.2)MPaおよび25.0(3.1)MPaと測定された。24時間複合物樹脂セメント(カリブラ)の象牙質およびエナメル質付着強度は、別個のエッチング過程を伴わずに、それぞれ13.1(2.5)MPaおよび22.6(3.9)MPaと測定された。
【0036】
[2P−SEA実施例4:水性SCA LCH68−120−2]
以下の手法に従って、2P−SEA液体Bとして水性自己硬化活性剤(SCA)を調製した。液体Bは、2.0重量部の芳香族スルフィン酸ナトリウム(NaTs)、49.9重量部のエタノールおよび48.1重量部の脱イオン水で構成される。上記の2P−SEA液体Bは、上記のような任意の2P−SEA液体Aとともに用いられ得るし、または他の一成分歯科用接着剤とともに、意図された直接複合物または間接セメント化結合塗布で用いられ得る。
【0037】
[1P−SEA実施例1]
3.3重量部の4−メタクリルオキシエチルトリメリト酸無水物(4−META)、13.3重量部のジペンタエリスリトールペンタアクリレートリン酸エステル(PENTA)、6.7重量部の3−(アクリロイルオキシ)−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート(AHPMA)、3.3重量部のトリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)、10.9重量部の1,6−ビス(メタクリロイルオキシエトキシカルボニルアミノ)−2,4,4−トリメチルヘキサン(UDMA)、1.7重量部のトリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTMA)、1.7重量部のジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、0.13重量部のブチル化ヒドロキシトルエン、42.3重量部のアセトンおよび16.7重量部の脱イオン水を含む混合物を調製した。象牙質およびエナメル質付着強度は、それぞれ22.4MPaおよび33.8MPaと測定された。熱循環(1,800サイクル、55/5℃の間)複合物の象牙質およびエナメル質付着強度は、別個のエッチング過程を伴わずに、それぞれ25.5MPaおよび25.9MPaと測定された。さらに過剰に5,000×熱循された環複合物の象牙質およびエナメル質付着強度は、別個のエッチング過程を伴わずに、それぞれ25.0MPaおよび28.3MPaと測定された。持続性熱循環エナメル質および象牙質付着強度は、臨床設定において良好な付着および潜在的良好長期付着性能を示した。
【0038】
[1P−SEA実施例2]
25.0重量部のジペンタエリスリトールペンタアクリレートリン酸エステル(PENTA)、7.9重量部の3−(アクリロイルオキシ)−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート(AHPMA)、5.5重量部の2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、10.9重量部の1,6−ビス(メタクリロイルオキシエトキシカルボニルアミノ)−2,4,4−トリメチルヘキサン(UDMA)、1.7重量部のトリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTMA)、1.7重量部のジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、0.13重量部のブチル化ヒドロキシトルエン、42.3重量部のアセトンおよび16.7重量部の脱イオン水を含む混合物を調製した。象牙質およびエナメル質付着強度は、それぞれ21.4MPaおよび26.3MPaと測定された。熱循環(1,800サイクル、55/5℃の間)複合物の象牙質およびエナメル質付着強度は、別個のエッチング過程を伴わずに、それぞれ21.1MPaおよび28.3MPaと測定された。
【0039】
[1P−SEA実施例3]
2つの代表的処方物の50℃加速貯蔵安定性試験
【0040】
【表1】

【0041】
[1P−SEA実施例4]
PENTA/BMAPを有する処方物に関する50℃加速貯蔵安定性試験
処方物HL1−72−4は、3.3重量%のBMAP、20重量%のAHPMA、3.8重量%のHEMA、3.8重量%のTEGDMA、10.8重量%のUDMA、1.7重量%のTMPTMA、4.2重量%のPENTA、1.7重量%のL−TPO、0.27重量%のCQ、0.33重量%のBHT、33.3重量%のアセトンおよび16.7重量%の水で構成された。
【0042】
処方物HL1−72−5は、6.7重量%のBMAP、16.7重量%のAHPMA、3.8重量%のHEMA、3.8重量%のTEGDMA、10.8重量%のUDMA、1.7重量%のTMPTMA、4.2重量%のPENTA、1.7重量%のL−TPO、0.27重量%のCQ、0.33重量%のBHT、33.3重量%のアセトンおよび16.7重量%の水で構成された。
【0043】
2つのPENTA/BMAPベースの処方物に関する加速貯蔵安定性試験を実行した。黒色プラスチックボトル中の試料HL1−72−4およびHL1−72−5を、50℃炉中に3週間入れた。1、2および3週間後に、外観およびpHを調べた。溶液は、透明、無色および均質のままである。pHは、変化しているように見えなかった。両試料は、550mw/cmで20秒間のSpectrum800の照射下で良好な硬化を有した。1週間後、HL1−72−4の象牙質付着強度は、9.7(2.9)MPaに低減された;2週間後は5.6(3.5)MPaであった。3週間後、HL1−72−4およびHL1−72−5の象牙質せん断付着強度は、それぞれ5.7(1.3)MPaおよび2.3(2.4)MPaであった;HL1−72−4のエナメル質せん断付着強度は2.2(1.0)であったが、一方、貯蔵中にHL1−72−5エナメル質SBS試験に関するポストは低下した。エナメル質をCaulk34%歯用コンディショナーゲルでエッチングした場合でさえ、50℃で3週間貯蔵されたHL1−72−4の付着強度は4.8(0.7)MPaに過ぎなかった。これは、処方物中の樹脂のどうにもならないほどひどい加水分解が起こり、硬化樹脂の機械的強度低減が付着強度低下をもたらす、ということを示唆する。
【0044】
【表2】

【0045】
[1P−SEA実施例5]
【0046】
【表3】

【0047】
[1P−SEA実施例6]
【0048】
【表4】

【0049】
【表5】

【0050】
[1P−SEA実施例7]
充填およびフッ化物放出一部SEAのために、0.3%セチルアミンハイドロフルオライド(CAF)および2%AerosilR974をHL1−203およびHL2−40に添加した。基線および50℃熟成化試料の象牙質およびエナメル質SBSを表6に要約する。基本処方物と同様に、3週間50℃熟成化HL2−87−1およびHL2−87−2はともに、象牙質およびエナメル質に関して依然として良好な付着強度を有した。4週間50℃熟成化HL2−87−1およびHL2−87−2は、それらの対応する基本処方物より有意に高い、それぞれ18.7MPaの象牙質SBSおよび16.7MPaのエナメル質SBSを有した、ということは注目に値する。しかしながら、それらのエナメル質付着強度は、それらの基本処方物とそれほど異ならなかった。
【0051】
【表6】

【0052】
[1P−SEA実施例8]
充填およびフッ化物放出一部SEAのために、0.3%CAFおよび2%のデンツプライ社所有ナノフィラーをHL1−203およびHL2−40に添加した。付着強度および50℃貯蔵安定性を表7に要約する。HL1−203は、ナノフィラーと非常に相溶性であるというわけではない。どうしたものか、HL1−203の充填バージョンであるHL2−107−1は、良好なエナメル質付着強度を示さなかった。HL2−40の充填バージョンであるHL2−107−2は、3週間まで50℃で貯蔵された試料に関して良好な象牙質およびエナメル質付着強度を有し、象牙質に関しては16.6MPa、エナメル質に関しては24.7MPaであった。さらに興味深いことに、50℃で4週間貯蔵した後、その象牙質およびエナメル質SBSは、その非充填等価物より有意に高い、それぞれ16.8MPaおよび18.3MPaである。
【0053】
【表7】

【0054】
[1P−SEA実施例9]
20.0重量部のジペンタエリスリトールペンタアクリレートリン酸エステル(PENTA)、6.9重量部の3−(アクリロイルオキシ)−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート(AHPMA)、5.0重量部の2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、8.0重量部の1,6−ビス(メタクリロイルオキシエトキシカルボニルアミノ)−2,4,4−トリメチルヘキサン(UDMA)、2.0重量部のトリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTMA)、1.7重量部のジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、0.30重量部のカンファキノン(CQ)、および1.0部の4−ジメチルアミノベンゾニトリル(DMABN)または1.0部のEDAB、0.2重量部のブチル化ヒドロキシトルエン、0.2部のセチルアミンハイドロフルオライド(CAF)、41.0重量部のアセトンおよび13.7重量部の脱イオン水を含む混合物を調製した。複合物の象牙質およびエナメル質付着強度は、それぞれ22.5MPaおよび25.3MPaと測定された。1P−SEAを自己硬化活性剤成分とともに用いた場合、24時間複合樹脂セメント(カリブラ)の象牙質およびエナメル質付着強度は、別個のエッチング過程を伴わずに、それぞれ16.0MPaおよび22.0MPaと測定された。
【0055】
[1P−SEA実施例10]
前の特許実施例に記載されているように、1P−SEA処方物は、L−TPOおよびCQの開始剤組合せを、異なる開始助剤(種々のアミン類、例えばDMABN、EDABまたはDHEPT)とともに用いて、1P−SEAを歯科用ハロゲンQTHまたはLED硬化光の両方と適合性することができる。表8は、芳香族アミンのみが異なる3つの異なる実験用1P−SEAの付着強度を比較する。DHEPTおよびEDABは、CQに対する2つの最も一般的に用いられる開始助剤である。DHEPTまたはEDABを含有する処方物は、許容可能な均整の取れた特性をもたらさなかった。DMABNを混入する処方物のみが、付着強度、貯蔵安定性および種々の硬化光(歯科用QTHおよびLED硬化光)との適合性について、優れた均衡を示した。DMABNが任意の市販の歯科用接着剤中に用いられるのは、初めてである。
【0056】
【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科用接着剤であって、
(i)PENTA、OEMAおよびその混合物からなる群より選ばれた重合性酸成分約5〜約70重量%;
(ii)親水性メタクリレート約1〜約30重量%;
(iii)親水性二官能性(メタ)アクリレート約1〜約25重量%;
(iv)ウレタンメタクリレート約1〜約35重量%;
(v)疎水性二官能性(メタ)アクリレート約1〜約30重量%;
(vi)(ホスフィンオキシド、および/またはルセリンTPO、CQ/EDABおよびCQ/DMABNからなる群より選ばれたCQ/開始助剤)光開始剤約0.1〜約5重量%;
(vii)芳香族スルフィン酸塩からなる群より選ばれた硬化添加剤約0.1〜約5重量%;
(viii)セチルアミンハイドロフルオライド(CAF)からなる群より選ばれたフッ化物放出成分約0.1〜約5重量%;
(ix)ヒュームドシリカおよび官能化ナノ粒子からなる群より選ばれたフィラー粒子約0.1〜約10重量%;
(x)安定剤約0.05%〜約2%重量;
(xi)水約1〜約40重量%;および
(xii)アセトンおよびアルコールからなる群より選ばれた水混和性極性有機溶媒約5〜約60重量%を含むことを特徴とする歯科用接着剤。
【請求項2】
歯科用接着剤であって:
(i)PENTA、4−METAおよびそれらの混合物からなる群より選ばれた重合性酸成分約5〜約50重量%;
(ii)親水性メタクリレート約1〜約20重量%;
(iii)親水性二官能性(メタ)アクリレート約1〜約15重量%;
(iv)ウレタンジメタクリレート約1〜約30重量%;
(v)疎水性二官能性(メタ)アクリレート約1〜約30重量%;
(vi)(ホスフィンオキシド、および/またはルセリンTPO、CQ/DMABN組合せおよびL−TPO/CQ/EDAB組合せからなる群より選ばれたCQ/開始助剤)の光開始剤約0.1〜約5重量%;
(vii)芳香族スルフィン酸塩からなる群より選ばれた硬化性接着剤約0.1〜約5重量%;
(viii)セチルアミンハイドロフルオライド(CAF)からなる群より選ばれたフッ化物放出成分約0.1〜約5重量%;
(ix)ヒュームドシリカおよび官能化ナノ粒子からなる群より選ばれたフィラー粒子約0.1〜約10重量%;
(x)安定剤約0.05%〜約2重量%;
(xi)水約1〜約35重量%;および
(xii)アセトンおよびアルコールからなる群より選ばれた水混和性極性有機溶媒約5〜約60重量%を含むことを特徴とする歯科用接着剤。

【公表番号】特表2007−501276(P2007−501276A)
【公表日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533026(P2006−533026)
【出願日】平成16年5月13日(2004.5.13)
【国際出願番号】PCT/US2004/014982
【国際公開番号】WO2004/100900
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(590004464)デンツプライ インターナショナル インコーポレーテッド (85)
【Fターム(参考)】