説明

歯科用接着剤組成物

水系混合物を含む歯科用組成物であって、該水系混合物が、
(i)下記式(A):
【化1】


(式中、
aは1〜10の整数であり、
は水素原子又は下記式(Y)の部位
【化2】


(式中、
Xは独立して、酸素原子、硫黄原子又はNR基(式中、Rは水素原子、C1−6アルキル基又はアシル基であり得る)を示し、
Lは、1個〜20個の炭素原子を含有し、且つエーテル、チオエーテル又はアミノ基又はさらなる酸性基を任意に含む(a+b)価の有機残基を示し、ここで、該炭素原子は、第一級及び第二級脂肪族炭素原子、第二級脂環式炭素原子、及び芳香族炭素原子から選択される少なくともa+b個の炭素原子を含み、該a+b個の炭素原子は各々リン酸誘導体基又は2−(オキサアリル)誘導体基と結合しており、
bは1〜10の整数である)を示し、
は、同じであっても異なっていてもよく、独立して水素、アリル基、又はbが1であるR部位であるが、
但し、R及びRの少なくとも一方は水素でない)の重合性酸性リン酸エステルモノマーと、
(ii)1種以上の重合性N置換アルキルアクリル酸モノマー又はアクリル酸アミドモノマーと、
(iii)有機系水混和性溶媒及び/又は水と、
(iv)重合開始剤と、
(v)抑制剤及び/又は安定化剤と、
(vi)任意の有機酸又は無機酸と、
(vii)任意のフィラー及び/又はフッ化物放出化合物と、
を含有する水系混合物を含む歯科用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の重合性酸性リン酸エステルモノマーを含有する水系歯科用接着剤組成物に関する。さらに、本発明は、水系歯科用組成物中における特定の重合性酸性リン酸エステルモノマーの使用に関する。歯科用組成物は、一液型自己エッチング自己プライマー処理の歯科用接着剤であってもよい。一液型自己エッチング自己プライマー処理の歯科用接着剤は典型的に2以下のpHを有していてもよい。本発明による歯科用組成物は、長時間にわたる貯蔵後であっても象牙質及びエナメル質に対する優れた接着力をもたらす。
【背景技術】
【0002】
一液型自己エッチング自己プライマー処理の歯科用接着剤組成物等の水系歯科用組成物は従来から知られており、典型的には好適な水性溶媒中に、酸と、重合性モノマーと、開始剤系との混合物を含有する。自己エッチングとは、別の方法工程でエナメル質及び象牙質の如何なる事前のエッチングもせずに歯科用接着剤組成物が歯に塗布され得ることを意味する。自己エッチング特徴をもたらすには、組成物が酸性でなければならない。自己プライマー処理とは、プライマーの如何なる事前塗布も行うことなく歯科用接着剤組成物が歯に塗布され得ることを意味する。
【0003】
象牙質及びエナメル質の表面に十分なエッチング活性をもたらすように混合物の酸性を適合させねばならない。しかしながら、酸性が高いと、混合物の官能要素の化学結合活性により複合的な安定性の問題が生じる。詳細には、重合性モノマー中に存在するエステル結合が酸性触媒を受けて加溶媒分解されることがある。
【0004】
混合物の安定性の問題に起因して、従来から既知の市販の一液型自己エッチング自己プライマー処理の歯科用接着剤組成物の室温における貯蔵安定性は不十分である場合がある。典型的な市販の一液型自己エッチング自己プライマー処理の歯科用接着剤組成物は、加溶媒分解又は重合による変質を回避するために冷蔵庫内に貯蔵しなければならない。
【0005】
特許文献1は一液型自己プライマー処理歯科用接着剤を開示している。特許文献1は、重合性酸性リン酸エステルモノマーを含有する歯科用接着剤組成物に関するものでない。
【0006】
特許文献2は複合材料及び接着促進剤を開示している。特許文献2は、重合性N置換アルキルアクリル酸モノマー又はアクリル酸アミドモノマーを含有する歯科用接着剤組成物に関するものでない。
【0007】
特許文献3は、自己エッチング接着歯科用プライマー組成物及び重合性表面活性剤を開示している。特許文献3は、重合性N置換アルキルアクリル酸モノマー又はアクリル酸アミドモノマーを含有する歯科用接着剤組成物に関するものでない。
【0008】
特許文献4は、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル一リン酸エステル(PTEPAE)を含有する接着性組成物を開示している。しかしながら、この組成物は、水系混合物を示さず、重合性スルホン酸エステル又は重合性N置換アルキルアクリル酸モノマー若しくはアクリル酸アミドモノマー、又は有機系水溶性溶媒及び/若しくは水を含有していない。特許文献4の組成物は水系混合物でないため、一液型自己エッチング自己プライマー処理の歯科用接着剤組成物として使用することができない。さらに、HEMAが組成物中に常に存在するため、加水分解安定性は特許文献4に記載の組成物によって提供され得ない。
【0009】
特許文献5は、重合性酸性リン酸エステルモノマーを含有する、2以下のpHを有する一液型自己エッチング自己プライマー処理の歯科用接着剤組成物を開示している。しかしながら、特定の重合性酸性リン酸エステルモノマーはこれらの参照文献中に開示も示唆もされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第03/013444号パンフレット
【特許文献2】国際公開第98/57612号パンフレット
【特許文献3】国際公開第00/30591号パンフレット
【特許文献4】国際公開第00/10478号パンフレット
【特許文献5】欧州特許出願公開第1,548,021号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、高い貯蔵安定性、並びに象牙質及びエナメル質の両方に対する優れた接着力を有する、水系歯科用組成物、特に一液型自己エッチング自己プライマー処理の歯科用接着剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、水系混合物を含む、特に一液型自己エッチング自己プライマー処理の歯科用接着剤である水系歯科用組成物であって、該水系混合物が、
(i)下記式(A):
【0013】
【化1】

【0014】
(式中、
aは1〜10の整数であり、
は水素原子又は下記式(Y)の部位
【0015】
【化2】

【0016】
(式中、
Xは独立して、酸素原子、硫黄原子又はNR基(式中、Rは水素原子、C1−6アルキル基又はアシル基であり得る)を示し、
Lは、1個〜20個の炭素原子を含有し、且つエーテル、チオエーテル、アミノ基及び/若しくはケト基、並びに/又はさらなる酸性基を任意に含む(a+b)価の有機残基を示し、ここで、炭素原子は、第一級及び第二級脂肪族炭素原子、第二級脂環式炭素原子、及び芳香族炭素原子から選択される少なくともa+b個の炭素原子を含み、a+b個の炭素原子は各々リン酸誘導体基又は2−(オキサアリル)誘導体基と結合しており、
bは1〜10の整数である)を示し、
は、同じであっても異なっていてもよく、独立して水素、アリル基、又はbが1であるR部位であるが、
但し、R及びRの少なくとも一方は水素でない)の重合性酸性リン酸エステルモノマーと、
(ii)1種以上の重合性N置換アルキルアクリルモノマー又はアクリル酸アミドモノマーと、
(iii)有機系水混和性溶媒及び/又は水と、
(iv)重合開始剤と、
(v)抑制剤及び/又は安定化剤と、
(vi)任意の有機酸又は無機酸と、
(vii)任意のフィラー及び/又はフッ化物放出化合物と、
を含有することを特徴とする水系歯科用組成物を提供する。
【0017】
本発明は、水系歯科用組成物中、特に一液型自己エッチング自己プライマー処理の歯科用接着剤中における上記式(A)の重合性酸性リン酸エステルモノマーの使用をさらに提供する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明で有用な式(A)の化合物を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の水系歯科用組成物、特に一液型自己エッチング自己プライマー処理の歯科用接着剤は、下記式(A)の重合性酸性リン酸エステルモノマーを含有する。
【0020】
【化3】

【0021】
式A中、aは1〜10の整数である。したがって、式(A)の重合性酸性リン酸エステルモノマーは、最大10個のリン酸エステル基を有し得る。好ましくは、aは1〜5の範囲である。より好ましくはaは1又は2である。
【0022】
式A中、Rは水素原子又は下記式(Y)の部位を示す。
【0023】
【化4】

【0024】
式Y中、Xは、酸素原子、硫黄原子又はNR基(式中、Rは水素原子、C1−6アルキル基又はアシル基であり得る)を示す。アシル基は、1種以上のカルボン酸基又はカルボン酸エステル基によって置換されていてもよい、C1−18アルキルカルボニル基、C1−18アルケニルカルボニル基又はアリールカルボニル基から選択され得る。具体例は、アセチル基、又は(メタ)アクリロイル基である。Xが2つ以上存在する場合、Xは同じであっても異なっていてもよい。
【0025】
式Y中、Lは、1個〜20個の炭素原子を含有し、且つエーテル、チオエーテル、アミノ及び/若しくはケト基、並びに/又はさらなる酸性基を任意に含む(a+b)価の有機残基を示し、炭素原子は、第一級及び第二級脂肪族炭素原子、第二級脂環式炭素原子、及び芳香族炭素原子から選択される少なくともa+b個の炭素原子を含み、このa+b個の炭素原子は各々リン酸エステル又は2−(オキサアリル)誘導体基と結合する。酸性基は、リン酸エステル基、スルホン酸基から選択され得る。好ましい実施形態において、Lは1個〜5個の炭素原子を含有する飽和炭化水素残基である。さらなる実施形態において、Lで示される(a+b)価の有機残基は、フェニル環等の芳香族環を含有する。特定の実施形態において、Rは水素である。しかしながら、Rが水素である場合には、Rは水素であり得ない。
【0026】
式Y中、bは1〜10の整数である。したがって、式(A)の重合性酸性リン酸エステルモノマーは、最大10個のアリル酸エステル基を含有していてもよい。好ましくは、bは1〜5の範囲である。より好ましくは、bは1、2又は3である。
【0027】
式Y中、Rは、同じであっても異なっていてもよく、独立して、水素、アリル基、又はbが1であるR部位であってもよい。特定の実施形態において、Rは水素である。
【0028】
好ましい実施形態において、Rは、水素原子、又は下記式(Y’)
【0029】
【化5】

【0030】
(式中、b及びLは式(Y)について定義した通りである)の部位を示す。
【0031】
式A中、R及びRの少なくとも一方は水素でない。したがって、式1の化合物は常に少なくとも1つの重合性部位、好ましくは少なくとも2つの重合性部位を含有する。
【0032】
本発明に従う特定の有用な化合物を図1に示す。
【0033】
及びRのうち一方が水素である式(A)の重合性酸性リン酸エステルモノマーは下記スキームに従い好適に調製され得る。
【0034】
【化6】

【0035】
この反応は、−30℃〜50℃の温度における、好適なアルコールROH又はROHとアミンとの溶液への、オキシ塩化リンを含有する溶液の滴下によって適切に実行され得る。好適な溶媒は、炭化水素、エーテル又はエステル等の無水溶媒から選択され得る。この溶媒はエーテルであることが好ましい。好適なアミンは、トリエチルアミン等の第三級アミンであってもよい。反応は、この場合に必要とされる30分〜約48時間で実行され得る。反応後、混合物を濾過して、反応中に形成されるあらゆる塩酸塩を分離する。続いて、混合物を氷水に注入する。この混合物を分離し、エーテル層を、炭酸ナトリウム等の好適な塩基で塩基性化する。これにより、pHを約10に調節し、続いて塩酸を使用して約4に下げる。その後、有機層を分離し、硫酸マグネシウム等の好適な乾燥剤によって乾燥させる。次に、式1の所望の化合物を、減圧下でのエバポレーションによって得ることができる。
【0036】
及びRが両方とも水素でない化合物が、アルコールROH及びROHの混合物を使用することによって、又はアルコールROH又はROHのその後の添加によって好適な量で得られ、式(A)の所望の化合物を提供し得る。
【0037】
本発明の水系歯科用組成物、特に一液型自己エッチング自己プライマー処理の歯科用接着剤は、式(A)の重合性酸性リン酸エステルモノマーを0.5重量%〜20重量%、より好ましくは1.0重量%〜10重量%の量で含有する。
【0038】
式(A)の重合性酸性リン酸エステルモノマーは、水系歯科用組成物において有益に使用され得る。好ましくは、歯科用組成物は、2以下のpHを有する水系一液型自己エッチング自己プライマー処理の歯科用接着剤である。
【0039】
本発明の一液型自己エッチング自己プライマー処理の歯科用接着剤は、好ましくは、下記式(B):
【0040】
【化7】

【0041】
の重合性酸性モノマーを含有し得る。
【0042】
式(B)中、
及びRは独立して、
水素原子、
1−18アルキル基、
任意に置換されたC3−8シクロアルキル基、
任意に置換されたC4−18アリール基又はヘテロアリール基、
任意に置換されたC5−18アルキルアリール基又はアルキルヘテロアリール基、又は
任意に置換されたC7−30アラルキル基を示し、
ここで、R及びRは、それらが結合する隣接する窒素原子及び炭素原子と一緒になって、さらに窒素原子又は酸素原子を含有し得る6員〜9員の複素環を形成してもよく、且つ任意に置換された基は、1個〜5個のC1−5アルキル基によって置換されてもよい。好ましくはR及びRは独立して、水素原子又はC1−6アルキル基を示す。
【0043】
式(B)中、Lは、2個〜45個の炭素原子と、任意に酸素原子、窒素原子及び硫黄原子等のヘテロ原子とを含有するa(c+d)価の有機残基を示し、炭素原子は、第一級及び第二級脂肪族炭素原子、第二級脂環式炭素原子、及び芳香族炭素原子から選択されるc+d個の炭素原子を含み、c+d個の炭素原子は各々、スルホン酸基又は任意に置換されたアクリルアミド誘導性基と結合する。好ましい実施形態において、Lは、2個〜10個の炭素原子と、任意に酸素原子、窒素原子及び硫黄原子等のヘテロ原子とを含有するa(c+d)価の飽和炭化水素残基を示す。
【0044】
式(B)中、c及びdは独立して1〜10の整数を示す。好ましい実施形態において、cは1又は2である。さらに好ましい実施形態では、dが1又は2である。
【0045】
式(B)の重合性酸性モノマーは下記式のうちの1つであってもよい:
【0046】
【化8】

【0047】
本発明の一液型自己エッチング自己プライマー処理の歯科用接着剤は、式(B)の重合性酸性モノマーを0.5重量%〜20重量%、より好ましくは1.0重量%〜10重量%の量で含有していてもよい。
【0048】
本発明の水系歯科用組成物、特に一液型自己エッチング自己プライマー処理の歯科用接着剤は、1種以上の重合性N置換アルキルアクリル酸モノマー又はアクリル酸アミドモノマーをさらに含有する。成分(iii)の1種以上の重合性N置換アルキルアクリル酸モノマー又はアクリル酸アミドモノマーは下記式のうちの1つの化合物であってもよい。
【0049】
【化9】

【0050】
上記式において、R及びRは独立して、水素原子又は置換C〜C18アルキル基、任意に置換されたC3−18シクロアルキル基、任意に置換されたC5−18アリール又はヘテロアリール基、任意に置換されたC5−18アルキルアリール又はアルキルヘテロアリール基、任意に置換されたC7−30アラルキル基を示す。好ましくは、R及びRは独立して、水素原子又はC〜Cアルキル基を示す。
【0051】
は、1個〜45個の炭素原子を有する二価の置換又は非置換の有機残基を示し、当該有機残基は、1個〜14個の酸素原子及び/又は窒素原子を含有していてもよく、C〜C18アルキレン基から選択され、1つ〜6つの−CH−基は、−N−(C=O)−CR=CH基(式中、Rは水素原子又はC〜C18アルキル基、二価の置換又は非置換のC〜C18シクロアルキル又はシクロアルキレン基、二価の置換又は非置換のC〜C18アリール又はヘテロアリール基、二価の置換又は非置換のC〜C18アルキルアリール又はアルキルヘテロアリール基、二価の置換又は非置換のC〜C30アラルキル基、及び1個〜14個の酸素原子を有する二価の置換又は非置換のC〜C45モノ、ジ又はポリエーテル基である)で置換されていてもよい。好ましくは、Rは、1個〜11個の炭素原子を有する二価の置換又は非置換の有機残基を示し、当該有機残基は1個〜3個の酸素原子及び/又は窒素原子を含有していてもよい。
【0052】
は、飽和二価又は多価の置換又は非置換のC〜C18炭化水素基、飽和二価又は多価の置換又は非置換の環状C〜C18炭化水素基、二価又は多価の置換又は非置換のC〜C18アリール又はヘテロアリール基、二価又は多価の置換又は非置換のC〜C18アルキルアリール又はアルキルヘテロアリール基、二価又は多価の置換又は非置換のC〜C30アラルキル基、又は1個〜14個の酸素原子を有する二価又は多価の置換又は非置換のC〜C45モノ、ジ又はポリエーテル残基を示す。好ましくは、Rは、少なくとも三価の飽和置換又は非置換のC〜C炭化水素基、少なくとも三価の飽和置換又は非置換の環状C〜C炭化水素基を示し、nは少なくとも3である。
【0053】
上記式中、nは整数である。
【0054】
好ましくは、重合性N置換アルキルアクリル酸モノマー又はアクリル酸アミドモノマーは、下記式:
【0055】
【化10】

【0056】
(式中、R、R及びRは独立して、水素原子又はC〜Cアルキル基を示す。好ましくは、1,3−ビスアクリルアミドプロパン(BAP)又は1,3−ビスアクリルアミドペンタン(BAPEN)を使用してもよい。重合性N置換アルキルアクリル酸モノマー又はアクリル酸アミドモノマーのさらなる具体例は以下の通りである:
【0057】
【化11】

【0058】
)の化合物であってもよい。
【0059】
好ましくは、重合性N置換アルキルアクリル酸モノマー又はアクリル酸アミドモノマーは、最大400、より好ましくは最大300の分子量を有する。
【0060】
本発明の水系歯科用組成物、特に一液型自己エッチング自己プライマー処理の歯科用接着剤は、1種以上の重合性N置換アルキルアクリル酸モノマー又はアクリル酸アミドモノマーを、全接着剤組成物に基づき10重量%〜70重量%、より好ましくは15重量%〜40重量%の量で含有していてもよい。
【0061】
本発明の水系歯科用組成物、特に一液型自己エッチング自己プライマー処理の歯科用接着剤は、重合性モノマーを、全組成物に基づき5重量%〜90重量%の量で、好ましくは20重量%〜70重量%の量で含有していてもよい。
【0062】
本発明の水系歯科用組成物、特に一液型自己エッチング自己プライマー処理の歯科用接着剤は水系混合物である。水の代わりに、接着剤は有機系水混和性溶媒をさらに含有していてもよい。有機系水混和性溶媒は、エタノール、プロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン等のアルコール及びケトンから成る群から選択され得る。
【0063】
本発明の水系歯科用組成物、特に一液型自己エッチング自己プライマー処理の歯科用接着剤は重合開始剤をさらに含有する。重合開始剤は、熱開始剤、酸化還元開始剤又は光開始剤であってもよい。光開始剤は、カンファーキノン/アミン及び/又は酸化アシルホスフィンであってもよい。開始剤はカンファーキノンを含むことが好ましい。
【0064】
本発明の水系歯科用組成物、特に一液型自己エッチング自己プライマー処理の歯科用接着剤は、有機酸又は無機酸を任意に含有し得る。好適な有機酸は、モノカルボン酸又はポリカルボン酸から成る群から選択され得るカルボン酸である。詳細には、モノカルボン酸又はポリカルボン酸は、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、及びそれらの混合物から成る群から選択される。有機酸は、歯科用接着剤組成物に基づき3重量%〜20重量%、より好ましくは5重量%〜15重量%の量で存在し得る。無機酸を、本発明の接着剤に組み込んでもよく、これにより接着剤のpHを容易に調節することができる。好適な無機酸の例は、硫酸、リン酸及び塩酸等である。
【0065】
本発明の水系歯科用組成物、特に一液型自己エッチング自己プライマー処理の歯科用接着剤は、抑制剤及び/又は安定化剤を任意に含有し得る。抑制剤及び/又は安定化剤は、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、ジ−t−ブチルクレゾール、t−ブチルヒドロキノンから選択され得る。好ましくは、抑制剤及び/又は安定化剤は本発明の接着剤中に、0.01mol%〜0.5mol%の量で、より好ましくは0.05mol%〜0.3mol%の量で含まれる。
【0066】
本発明の水系歯科用組成物、特に一液型自己エッチング自己プライマー処理の歯科用接着剤は、フィラー及び/又はフッ化物放出化合物を任意に含有し得る。フィラーは、100nm〜10μmの平均粒径を有する有機又は無機粒状フィラーであってもよい。特定の実施形態において、歯科用接着剤組成物は、1nm〜100nm、好ましくは1nm〜10nmの平均粒径を有するナノフィラーをさらに含み得る。フィラーは、硬化組成物から溶出させることができるフッ化物イオンを含有していてもよい。さらに、フッ化物放出化合物も存在し得る。フッ化物放出化合物の例は、カルシウム及びストロンチウム等のフッ化物のような無機塩である。
【0067】
本発明の水系歯科用組成物、特に一液型自己エッチング自己プライマー処理の歯科用接着剤は、5以下のpHを有し得る。好ましくはpHは0.1〜2、より好ましくは0.5〜1.5の範囲である。pHが2を超えると、pHが約4になるまで重合性酸性リン酸エステルモノマーの加水分解安定性が下がり続け、これにより接着剤の保存期限が短くなる。さらに、組成物のpHが2より上がると、組成物は、さらなるエッチング組成物を添加しない限り歯科用接着剤として首尾良く使用することができない。組成物が少なくとも10日間60℃で貯蔵時に安定であることが好ましい。
【0068】
水系歯科用組成物は好ましくは一液型自己エッチング自己プライマー処理の歯科用接着剤である。
【0069】
好ましくは、本発明による歯科用接着剤は、少なくとも10MPa、好ましくは少なくとも15MPaの、エナメル質及び象牙質に対する接着力をもたらす。好ましい実施形態において、本発明の歯科用組成物は、加水分解安定性の一液型自己エッチング自己プライマー処理の歯科用接着剤組成物である。特に、歯科用組成物は、少なくとも10日間60℃の貯蔵温度で加水分解安定性であり、そのためこのような貯蔵の後、当該歯科用組成物から調製される接着剤の、エナメル質及び/又は象牙質に対する接着強度は少なくとも10MPaである。
【0070】
一液型組成物とは、貯蔵され得る本発明の組成物が1つの容器にのみ収容されており、如何なる混合もなく、また塗布前に如何なる特定の装置も用いることなく、組成物の塗布を可能にすることを意味する。
【0071】
ここで、以下の実施例及び比較例によって本発明をさらに例示する。
【実施例】
【0072】
調製例1
ペンタエリスリトールトリアリルエーテルモノホスフェートPETAP
乾燥ジエチルエーテル60mlに溶解させた、9.909gのペンタエリスリトールトリアリルエーテル(70%)及び3.809gのトリエチルアミンの溶液に、乾燥ジエチルエーテル60mlに溶解させた5.30g酸塩化リンの溶液を、攪拌しながら55分かけて添加し、反応混合物の温度を−5℃〜0℃に保った。添加を終了した後、懸濁液をさらに23時間室温で攪拌した。
【0073】
トリエチルアミン塩化水素析出物を濾過除去し、0℃〜5℃の温度を維持しつつ、得られた溶液を攪拌しながら100mlの水に1時間かけて添加した。有機層を水性層から分離した後、続いて100mlの炭酸ナトリウム水溶液(25%)及び100mlの1n塩酸水溶液で洗浄した。有機画分を分離した。この酸性水溶液を2×50mlのジエチルエーテルで洗浄した。この有機画分を合わせ、0.5時間かけて硫酸マグネシウムで乾燥させた。濾過した後、12mgのBHTの添加によって溶液を安定化させた。溶媒を、回転エバポレーターで蒸発させ、真空下、4時間0.1mbar未満で乾燥させた。これにより、9.642gのわずかに黄色みがかった低粘性油が得られた。
【0074】
(C1425P)、336.32
20=1.4690
η23℃=250.6±82.1mPa
IR(フィルム、cm−1)24864(CH)、1477/1423/1308(CH)、1087(CHOCH)、994(P=O)
H−NMR(250MHz、DMSO、ppm)3.40〜3.34(m)、4.17〜3.80(m)、5.25〜5.10(m)、5.89〜5.77(m)。
【0075】
調製例2
7−ジハイドロジェンホスホリル−4,7−ジオキサヘプト−1−エン(AOEP) ジエチルエーテル250mlに溶解させた75.543g(0.490mol)のリン酸トリクロリドの攪拌溶液に、ジエチルエーテル150mlに溶解させた、50.002g(0.490mol)の2−アリルオキシエタノール及び49.590g(0.490mol)のトリエチルアミンの溶液を、0℃〜5℃に温度を維持しながら90分にわたって滴下した。その後、濾過前に反応混合物を23℃で16時間攪拌した。次に、温度を0℃に維持しながらこの溶液を水に滴下した。添加を終了した後、溶液をさらに0℃で0.5時間攪拌した。この層を分離し、水性画分を150mlのジエチルエーテルで一回洗浄した。水相の生成物をアセトン50ml中に溶解し、NaSOで16時間乾燥させた。濾過後、0.053g(0.05mol%)BHTを添加した。その後、溶媒を除去してわずかに黄色みがかった固体を得た。
【0076】
(C11P)、182.11g/mol
収量:62.0g(Thの69.5%)
20=1.4570
η23℃=745.2±31.2mPa
IR(フィルム、cm−1)2868(CH)、2326(POH)、1646(C=C)、1457(CH)、975(P=O)
H−NMR(250MHz、CDCl、ppm)3.63(s,2H,CHOP)、3.99〜4.08(d,4H,CHO)、5.12〜5.81(m,3H,CH=CH)、10.53(s,2H,OP(OH))。
13C−NMR(63MHz、CDCl、ppm)133.5(2)、1118.6(1)、72.1(3)、68.8(4)、66.1(5)
【0077】
【化12】

【0078】
調製例3
3,3−ビス(アリルオキシメチル)−5−ジハイドロジエンホスホリル−5−オキサペンタン(TMPDAP) ジエチルエーテル250mlに溶解させた35.775g(0.233mol)のリン酸トリクロリドの攪拌溶液に、ジエチルエーテル150mlに溶解させた、50.000g(0.233mol)の2,2−ビス(アリルオキシメチル)−1−ブタノール及び23.609g(0.233mol)のトリエチルアミンの溶液を、0℃〜5℃に温度を維持しながら90分にわたって滴下した。その後、濾過前に反応混合物を23℃で16時間攪拌した。次に、温度を0℃に維持しながらこの溶液を水に滴下した。添加を終了した後、溶液をさらに0℃で0.5時間攪拌した。この層を分離し、水性画分を150mlのジエチルエーテルで一回洗浄した。有機層をNaSOで16時間乾燥させた。濾過後、0.051g(0.05mol%)BHTを添加した。その後、溶媒を除去してわずかに黄色みがかった固体を得た。
【0079】
(C1223P)、294.28g/mol
収量:63.8g(Thの92.9%)
20=1.4638
η23℃=858.8±47.6mPa
IR(フィルム、cm−1)2864(CH)、2358(POH)、1646(C=C)、1465(CH)、1024(CHO)、924(P=O)
H−NMR(250MHz、CDCl、ppm)0.82(s,3H,CH)、1.40(s,2H,CH)、3.28〜3.30(d,2H,CHOPO)、3.91〜3.92(d,4H,CCHO,OCHCH=)、5.07〜5.23(m,2H,CH=)、5.81〜5.82(d,1H,CH=)、10.21〜10.33(OP(OH)
13C−NMR(63MHz、CDCl、ppm)134.2(2)、116.3(1)、71.8(3)、69.1(4)、65.5(8)、42.5(5)、21.7(6)、6.9(7)
【0080】
【化13】

【0081】
調製例3
2−(アリルオキシエチル)−2−エチル−2−ビス−[3−ジハイドロジェンホスホリル−3−オキサペンタン](TMPADP) ジエチルエーテル250mlに溶解させた88.000g(0.574mol)のリン酸トリクロリドの攪拌溶液に、ジエチルエーテル150mlに溶解させた、50.000g(0.574mol)の2−(アリルオキシメチル)−2エチルー1,3−プロパンジオールブタノール及び58.075g(0.574mol)のトリエチルアミンの溶液を、0℃〜5℃に温度を維持しながら90分にわたって滴下した。その後、濾過前に反応混合物を23℃で16時間攪拌した。次に、温度を0℃に維持しながらこの溶液を水に滴下した。添加を終了した後、溶液をさらに0℃で0.5時間攪拌した。この層を分離し、水性画分を150mlのジエチルエーテルで一回洗浄した。
【0082】
水相の生成物をアセトン50ml中に溶解し、NaSOで1時間乾燥させた。濾過後、0.095g(0.05mol%)BHTを添加した。その後、溶媒を除去してわずかに黄色みがかった固体を得た。
【0083】
(C20)、334.20g/mol
収量:30.4g(Thの63.4%)
20=1.4040
η23℃=241.4±63.9mPa
IR(フィルム、cm−1)2829(CH)、2336(POH)、1632(C=C)、1457(CH)、981(P=O)
13C−NMR(63MHz、DO、ppm)133.6(2)、117.2(1)、74.3(3)、71.9(4)、66.5(8)、38.9(5)、22.2(6)、7.2(7)
【0084】
【化14】

【0085】
実施例1
PETAPを用いて、エタノールと水とから成る混合溶媒中にモノマーを溶解することによって下記式を調製した。
【0086】
【表1】

【0087】
エナメル質及び象牙質に対する接着力の測定には以下の手法:
200グリット及び500グリットの研磨紙で歯を研磨、
歯を37℃で水中に保存、
樹脂製剤による処理:20秒、
空気流による蒸発:5秒、
光硬化:10秒、
Spectrum TPH(Dentsply)体の歯の上における20秒間の硬化を3回、
処理した歯を37℃で水中に24時間保存、及び測定前に1800サイクルの5℃〜55℃のヒートサイクル試験を用いた。
【0088】
このような条件下で以下の接着力が求められた。
エナメル質:19.4±3.9MPa
象牙質:16.7±5.3MPa
【0089】
結果として、本発明の組成物が事前のエッチングをせずにエナメル質及び象牙質に対する強力な接着力をもたらすことが分かる。
【0090】
応用例2
溶媒として水、t−ブタノール及びアクリル酸を使用した応用例1と類似の製剤中に調製例2のAOEPを用いて、上記の手法に従い以下の接着力値が測定された。
エナメル質:15.1±2.2MPa
象牙質:18.2±2.4MPa
【0091】
応用例3
溶媒として水、t−ブタノール及びアクリル酸を使用した応用例1と類似の製剤中に調製例3のTMPDAPを用いて、上記の手法に従い以下の接着力値が測定された。
エナメル質:15.0±2.5MPa
象牙質:20.0±3.3MPa
【0092】
比較例1
N−ブチル−N−(エチルホスホン酸)アクリルアミドを用いて、このモノマーをエタノールと水とから成る混合溶媒に溶解させることによって比較用製剤を調製した:
【0093】
【表2】

【0094】
実施例1に記載の条件と同じ条件下で、この製剤を接着力の測定のために用いた。このような条件下では以下のような接着力が求められた。
エナメル質:9.4±3.0MPa
象牙質:19.4±1.8MPa

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水系混合物を含む歯科用組成物であって、該水系混合物が、
(i)下記式(A):
【化1】

(式中、
aは1〜10の整数であり、
は水素原子又は下記式(Y)の部位
【化2】

(式中、
Xは独立して、酸素原子、硫黄原子又はNR基(式中、Rは水素原子、C1−6アルキル基又はアシル基であり得る)を示し、
Lは、1個〜20個の炭素原子を含有し、且つエーテル、チオエーテル又はアミノ基又はさらなる酸性基を任意に含む(a+b)価の有機残基を示し、ここで、該炭素原子は、第一級及び第二級脂肪族炭素原子、第二級脂環式炭素原子、及び芳香族炭素原子から選択される少なくともa+b個の炭素原子を含み、該a+b個の炭素原子は各々リン酸誘導体基又は2−(オキサアリル)誘導体基と結合しており、
bは1〜10の整数である)を示し、
は、同じであっても異なっていてもよく、独立して水素、アリル基、又はbが1であるR部位であるが、
但し、R及びRの少なくとも一方は水素でない)の重合性酸性リン酸エステルモノマーと、
(ii)1種以上の重合性N置換アルキルアクリル酸モノマー又はアクリル酸アミドモノマーと、
(iii)有機系水混和性溶媒及び/又は水と、
(iv)重合開始剤と、
(v)抑制剤及び/又は安定化剤と、
(vi)任意の有機酸又は無機酸と、
(vii)任意のフィラー及び/又はフッ化物放出化合物と、
を含有することを特徴とする水系混合物を含む歯科用組成物。
【請求項2】
さらに、
(viii)下記式(B):
【化3】

(式中、
及びRは独立して、
水素原子、
1−18アルキル基、
任意に置換されたC3−8シクロアルキル基、
任意に置換されたC4−18アリール基又はヘテロアリール基、
任意に置換されたC5−18アルキルアリール基又はアルキルヘテロアリール基、又は
任意に置換されたC7−30アラルキル基を示し、
ここで、R及びRは、それらが結合する隣接する窒素原子及び炭素原子と一緒になって、さらに窒素原子又は酸素原子を含有し得る6員〜9員複素環を形成してもよく、且つ任意に置換された基は、1個〜5個のC1−5アルキル基によって置換されてもよく、
は、2個〜45個の炭素原子と、任意に酸素原子、窒素原子及び硫黄原子等のヘテロ原子とを含有するa(c+d)価の有機残基を示し、該炭素原子は、第一級及び第二級脂肪族炭素原子、第二級脂環式炭素原子、及び芳香族炭素原子から選択されるc+d個の炭素原子を含み、該c+d個の炭素原子は各々、スルホネート基又は任意に置換されたアクリルアミド誘導体基と結合し、且つ
c及びdは独立して1〜10の整数を示す)の重合性酸性モノマーを含有する請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
60℃で少なくとも10日間貯蔵時に安定である請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
5以下のpHを有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
一液型自己エッチング自己プライマー処理の歯科用接着剤である請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
が水素である請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
aが1又は2である請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
bが1、2又は3である請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
Lが、1個〜5個の炭素原子を含有する飽和炭化水素残基である請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
Lが芳香族環を含有する請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
が水素である請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
式(B)の前記重合性酸性モノマーが、cが1又は2であることを特徴とする請求項2〜11のいずれか一項に記載の接着剤。
【請求項13】
式(B)の前記重合性酸性モノマーが、dが1又は2であることを特徴とする請求項2〜12のいずれか一項に記載の接着剤。
【請求項14】
式(B)の前記重合性酸性モノマーが、R及びRが独立して水素原子又はC1−6アルキル基を示すことを特徴とする請求項2〜13のいずれか一項に記載の接着剤。
【請求項15】
式(B)の前記重合性酸性モノマーが、Lが、2個〜10個の炭素原子、及び任意に酸素原子、窒素原子及び硫黄原子等のヘテロ原子を含有するa(c+d)価の飽和炭化水素残基を示すことを特徴とする請求項2〜14のいずれか一項に記載の接着剤。
【請求項16】
式(B)の前記重合性酸性モノマーが、下記式:
【化4】

のうちの1つを特徴とする請求項2〜15のいずれか一項に記載の歯科用接着剤。
【請求項17】
成分(iii)の前記1つ又は複数の重合性N置換アルキルアクリル酸モノマー又はアクリル酸アミドモノマーが、下記式:
【化5】

(式中、
及びRは独立して、
水素原子、又は
置換C〜C18アルキル基、
任意に置換されたC3−18シクロアルキル基、
任意に置換されたC5−18アリール又はヘテロアリール基、
任意に置換されたC5−18アルキルアリール又はアルキルヘテロアリール基、
任意に置換されたC7−30アラルキル基を示し、
は、1個〜45個の炭素原子を有する二価の置換又は非置換の有機残基を示し、該有機残基は、1個〜14個の酸素原子及び/又は窒素原子を含有していてもよく、且つ、C〜C18アルキレン基から選択され、1つ〜6つの−CH−基は、−N−(C=O)−CR=CH基(式中、Rは水素原子又はC〜C18アルキル基、二価の置換又は非置換のC〜C18シクロアルキル又はシクロアルキレン基、二価の置換又は非置換のC〜C18アリール又はヘテロアリール基、二価の置換又は非置換のC〜C18アルキルアリール又はアルキルヘテロアリール基、二価の置換又は非置換のC〜C30アラルキル基、及び1個〜14個の酸素原子を有する二価の置換又は非置換のC〜C45モノ、ジ又はポリエーテル基である)で置換されていてもよく、
は、飽和二価又は多価の置換又は非置換のC〜C18炭化水素基、飽和二価又は多価の置換又は非置換の環状C〜C18炭化水素基、二価又は多価の置換又は非置換のC〜C18アリール又はヘテロアリール基、二価又は多価の置換又は非置換のC〜C18アルキルアリール又はアルキルヘテロアリール基、二価又は多価の置換又は非置換のC〜C30アラルキル基、又は1個〜14個の酸素原子を有する二価又は多価の置換又は非置換のC〜C45モノ、ジ又はポリエーテル残基を示し、
nは整数である)のうちの1つを特徴とする請求項1〜16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
式(A)の前記重合性酸性リン酸エステルモノマーを0.5重量%〜20重量%の量で含有する請求項1〜17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
式(B)の前記重合性酸性モノマーを0.5重量%〜20重量%の量で含有する請求項1〜18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
成分(iii)の前記1つ又は複数の重合性N置換アルキルアクリル酸モノマー又はアクリル酸アミドモノマーを10重量%〜70重量%の量で含有する請求項1〜19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
前記重合開始剤がカンファーキノン等の光開始剤である請求項1〜20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
少なくとも15MPaの、エナメル質及び象牙質に対する接着力をもたらす請求項5〜21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
ナノフィラーを含有する請求項1〜22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
水系歯科用組成物中における請求項1に記載の式(A)の重合性酸性リン酸エステルモノマーの使用。
【請求項25】
前記水系歯科用組成物が請求項1〜23のいずれか一項に記載される請求項24に記載の使用。

【図1】
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【公表番号】特表2010−505895(P2010−505895A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−531760(P2009−531760)
【出願日】平成19年10月9日(2007.10.9)
【国際出願番号】PCT/EP2007/008764
【国際公開番号】WO2008/043518
【国際公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(502289695)デンツプライ デトレイ ゲー.エム.ベー.ハー. (28)
【Fターム(参考)】