説明

歯科用石膏粉末及びその製造方法

【課題】 硬化後に長期間保管しても変色せず、無刺激で安価であり、光がなくても抗菌効果を発現する歯科用石膏を提供する。
【解決手段】 平均粒子径が5〜37μmのα半水石膏粉末に酸化亜鉛粉末を0.01〜0.4重量%含む歯科用石膏粉末とする。このとき、酸化亜鉛粉末が0.06〜0.2重量%であることが好ましい。また、その製造方法を平均粒子径10〜40μmのα半水石膏粉末に平均粒子径0.01〜1μmの酸化亜鉛粉末を0.01〜0.4重量%加え粉砕し、α半水石膏の平均粒子径を3〜5μm小さくすることを特徴とする歯科用石膏粉末の製造方法とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凝結・硬化後に抗菌性を有する歯科用石膏粉末及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
α半水石膏は、水と練和することにより短時間で凝結・硬化し、硬化体の寸法変化が小さいことから、工業用,医療用,陶磁器型材用及び美術工芸用等の用途に広く用いられている。歯科分野においては、印象材を用いて作製した患者口腔内の歯型印象型に水と混合したα半水石膏泥を注入し、硬化を待って離型して乾燥させることにより石膏模型を作製し、該石膏模型を切削等して加工した後、種々の通法工程を経て最終的に歯科用合金,レジン材料等を用いて歯科用補綴物を作製している。
【0003】
しかし石膏模型は菌類等により汚染され、長期間保存すると石膏模型表面にカビ,菌が繁殖することがある。菌やカビは、それ自体が衛生上好ましくないものであるだけでなく石膏模型を変色させたり石膏模型の精度を低下させる原因になる。また患者がウイルスなどに感染している場合には石膏模型を扱う歯科医師,歯科技工士等の歯科医療従事者への感染の原因となる虞がある。
【0004】
従来から抗菌性を有する石膏として銀を含む石膏がある(例えば、特許文献1,2参照。)。しかしながら銀は高価であり長期間の保存によって硬化体が変色し易いという問題があった。また、光触媒作用のある酸化チタン粉末を混合した石膏も提案されているが(例えば、特許文献3参照。)、光触媒は光がなければ抗菌性を発現できない欠点があった。また、抗菌作用のある薬剤が混入された石膏も提案されている(例えば、特許文献4参照。)。しかし、薬剤の臭いが歯科医療従事者に不快感を与えたり、歯科用合金の腐食や目に対する刺激痛,皮膚炎等の危険性がある。また、石膏模型を加熱殺菌する方法もあるが、加熱により石膏模型の精度や強度が低下するという問題がある。
【0005】
【特許文献1】特公平5−48204号
【特許文献2】特開2000−233962号公報
【特許文献3】特開2001−231793号公報
【特許文献4】特開平2−223505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、硬化後に長期間保管しても変色せず、無刺激で安価であり、光がなくても抗菌効果を発現する歯科用石膏を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、微量の酸化亜鉛を石膏粉末に配合し、特定の条件まで粉砕・混合を行と、安価でありながら変色や刺激がなく、光がない状態でも抗菌効果がある歯科用石膏粉末となることを見出して本発明を完成した。
【0008】
即ち本発明は、平均粒子径10〜40μmのα半水石膏粉末に平均粒子径0.01〜1μmの酸化亜鉛粉末を0.01〜0.4重量%加え粉砕し、α半水石膏の平均粒子径を3〜5μm小さくすることを特徴とする歯科用石膏粉末の製造方であり、酸化亜鉛粉末を0.06〜0.2重量%加えることが好ましい。また、本発明方法で作製された歯科用石膏粉末は、平均粒子径が5〜37μmのα半水石膏粉末に酸化亜鉛粉末を0.01〜0.4重量%含む歯科用石膏粉末であり、酸化亜鉛粉末が0.06〜0.2重量%であることが好ましい。
【0009】
本発明方法で使用する酸化亜鉛粉末は、α半水石膏粉末全体に対して0.01〜0.4重量%で配合される。0.01重量%未満では抗菌効果が発揮されず、0.4重量%を超えると硬化後の石膏の強度が低下する。より好ましくは0.06〜0.2重量%である。また、酸化亜鉛粉末の平均粒子径は0.01〜1μmであり、0.01μm未満であると粒子の凝集性が強く石膏粉末内に均一に分散させることができなくなってしまい、1μmを超えると酸化亜鉛粉末の比表面積が少なく抗菌性が低下してしまう。
【0010】
酸化亜鉛粉末を加える前のα半水石膏の平均粒子径10〜40μmである。酸化亜鉛粉末を所要量加えた後、粉砕しながらα半水石膏に酸化亜鉛粉末を混合する。混合方法はV型ミキサー、乳鉢、ボールミル等があり、一度の処理量が大きいことと粉砕エネルギーが高く酸化亜鉛の分散性に優れるボールミルが最も好ましい。混合時間等の条件は特に限定されないが、最終的にはα半水石膏の平均粒子径が混合前よりも3〜5μm小さくなるまで粉砕する。粉砕しながら混合することにより、石膏表面に細かい酸化亜鉛粒子が取り囲むように付着することで均一に分散し、より高い抗菌性を発現する。粉砕前の平均粒子径との差が3μm未満では酸化亜鉛粉末の分散が不足し抗菌作用を十分に発揮できず、平均粒子径の差が5μmを超えるまで粉砕しても抗菌の効果は上がらない。
【0011】
本発明に係る歯科用石膏粉末は、前記製造方法によって製造された歯科用石膏粉末であり、平均粒子径が5〜37μmのα半水石膏粉末に酸化亜鉛粉末を0.01〜0.4重量%含む歯科用石膏粉末である。α半水石膏中の酸化亜鉛粉末の量が0.01重量%未満では抗菌効果が発揮されず、0.4重量%を超えると硬化後の石膏の強度が低下する。より好ましくは0.06〜0.2重量%である。
【実施例】
【0012】
5Lのアルミナ製ポットに20mmアルミナボールを容積の50%入れ、α半水石膏粉末を投入し、酸化亜鉛粉末を加えて35rpmで粉砕混合を行った。
【0013】
製造した歯科用石膏粉末100gに対して、水24gを加えて60秒間混合しペースト状にしたものを50mm×50mm×2mmの金型に流し込み硬化させた。JISZ2801に準じて硬化後の歯科用石膏型に3.2×10個の大腸菌を播種し、フィルムで密着させ35℃で24時間保管してから菌数を測定した。
【0014】
以下の基準で抗菌効果を評価した。
菌数=10CFU未満 ○
菌数=10CFU未満 △
菌数=1×10CFU以上 ×
【0015】
JIST6605に準じて以下の方法で破壊強度を測定した。高さ40mm内径20mmの円筒状の石膏型を作製し、練和開始から60分後にオートグラフ(島津社製)を使用して破壊強度を測定した。
【0016】
以下の基準で圧縮強度を評価した。
45MPa以上 ○
40MPa以上 △
40MPa未満 ×
【0017】
【表1】


単位は重量%
※二酸化チタンの平均粒子径(μm)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径10〜40μmのα半水石膏粉末に平均粒子径0.01〜1μmの酸化亜鉛粉末を0.01〜0.4重量%加え粉砕し、α半水石膏の平均粒子径を3〜5μm小さくすることを特徴とする歯科用石膏粉末の製造方法。
【請求項2】
酸化亜鉛粉末を0.06〜0.2重量%加える請求項1に記載の歯科用石膏粉末の製造方法。
【請求項3】
酸化亜鉛粉末を0.01〜0.4重量%含む平均粒子径が5〜37μmの歯科用石膏粉末。
【請求項4】
酸化亜鉛粉末を0.06〜0.2重量%含む請求項2に記載の歯科用石膏粉末。

【公開番号】特開2011−194166(P2011−194166A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−67108(P2010−67108)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000181217)株式会社ジーシー (279)
【Fターム(参考)】