説明

歯質接着性組成物

【課題】 X線造影性を有するフィラーが組成物中の酸性分と反応してしまうことで、組成物の保存安定性が低下してしまうということがなく、従来のように2包装以上に分割保存された組成物を使用時に混合練和する必要も無い歯質接着性組成物を提供する。
【解決手段】 a)酸基を有する(メタ)アクリレート化合物、b)Sr及び/またはBa及び/またはCaを含むアルミノシリケートガラス粉末であって、Alの酸化物換算での含有量が15重量%以下であることによりa成分の酸基を有する(メタ)アクリレート化合物と実質的にイオン反応を起こさないフィラー、c)光重合触媒、を含有し、それらが1包装中に共存していることを特徴とする歯質接着性組成物とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は歯牙の修復治療に用いる歯質接着性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ラジカル重合性を有するメタクリレート化合物やアクリレート化合物等のモノマー,オリゴマー,プレポリマーと無機フィラーから成る歯科用コンポジットレジンは、歯牙の修復治療において広く使用されている。しかし、歯科用コンポジットレジン自体には歯質との接着性がないため酸成分が配合された歯科用ボンディング材と呼ばれている歯質接着材との併用が不可欠であった。歯科用ボンディング材は術者の使用方法によって接着性に大きな差が出やすく修復治療にばらつきを生じる原因となっていた。
【0003】
一方、従来の歯質接着材としては、ボンディング材の他にもグラスアイノマーセメントや接着性レジンセメントもある。これらは「粉と液」,「液(ペースト)と液(ペースト)」等の2包装以上の形態で術者に提供され、使用直前に各成分を所定の割合で混和して用いる。このとき、各成分の計量や混和不良から修復結果にばらつきが生じることがあった。
【0004】
従来の歯質接着材が複数の包装形態だった理由は、歯質接着材が歯科用材料として求められているX線造影性を付与する金属含有フィラーと、歯質接着材に接着力を与えるために不可欠である酸性成分との間のイオン反応を防ぐためであった。即ち、両成分を1包装中に共存させようとすると、歯質接着材の保存中に両者間のイオン反応によって内容物のゲル化が生じてしまったり、イオン反応によって歯質接着に必要な酸性成分が減少してしまい歯質接着力の低下を引き起こしてしまうためであった。そのため、従来の歯質接着材では、酸性成分と金属含有フィラーを別個の包装で保管する必要があり、使用時に混和するという操作が必要であったのである。
【0005】
従来から酸基を有するモノマー/金属化合物/硬化剤との組合せた混合物が開示されている(特許文献1参照。)。しかしこの混合物は複数に包装された物質を使用時に混合することを前提としており実使用においては練和によるばらつきを避けることができない。また特許文献1では水酸化カルシウムと硫酸バリウム(何れも酸性性分とイオン反応せずにX線造影性がある)をフィラーとして使用した1包装となる組成物も開示されているものの(実施例7)、この場合には硬化体が著しく不透明となってしまうので特にフィラーの用途には使用できない。また、ポリメタクリル化ポリマレイン酸とグラスアイオノマーセメント粉末(透明性はあるが酸性性分とイオン反応を示す)を1包装となる組成物中に共存させた実施例もあるが(実施例12)、この配合では組成物中での酸塩基反応によるゲル化が起こりやすく実使用上十分な保存安定性を得ることは不可能であった。
【0006】
酸基を有するエチレン性不飽和化合物と酸性分と反応するフィラーとの組み合わせた自己接着性歯科材料も開示されている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、酸成分と反応性フィラーとが1包装となる組成物中に共存するため、やはり保存中にイオン反応によるゲル化が起こりやすく実使用上十分な保存安定性を得ることは不可能であった。
【0007】
【特許文献1】特開昭62−149715
【特許文献2】特許公表2004−529946
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、X線造影性を有するフィラーを使用していながら、X線造影性を有するフィラーが歯質接着力を得るための酸性性分と反応してしまい保存安定性が低下してしまうということがなく、硬化後の組成物に透明性があり、従来のように2包装以上に分かれた組成物を使用時に混合練和する必要が無い歯質接着性組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、フィラー成分としてAlの含有量が酸化物換算で15重量%以下であり、かつSr及び/またはBa及び/またはCaを含むアルミノシリケートガラス粉末を、酸性成分である酸基を有する(メタ)アクリレート化合物と共に用いると、歯科用材料として十分なX線造影性を有しながフィラー成分と酸性成分とがイオン反応を起こすことが無いので十分な保存安定性があり、硬化体に透明性のある歯質接着性組成物とすることが可能であることを見出して本発明を完成させた。
【0010】
即ち本発明は、
a)酸基を有する(メタ)アクリレート化合物、
b)Sr及び/またはBa及び/またはCaを含むアルミノシリケートガラス粉末であって、Alの酸化物換算での含有量が15重量%以下であることによりa成分の酸基を有する(メタ)アクリレート化合物と実質的にイオン反応を起こさないフィラー、c)光重合触媒を含有し、それらが1包装中に共存していることを特徴とする歯質接着性組成物である。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、X線造影性を有するフィラーを使用していながら、歯質接着力を得るための酸性性分と反応してしまい保存安定性が低下してしまうことがなく透明性があり、従来の組成物のように2包装以上となっている各組成物を混合練和する必要が無い歯質接着性組成物である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明での酸基を有する(メタ)アクリレート化合物は、重合反応によって硬化することで組成物の基材の一部となり、同時に歯質や歯科用修復物の材料であるジルコニア及びアルミナ等のセラミックス、または貴金属を含む合金への接着力を歯質接着性組成物に与える効果がある。本発明での(メタ)アクリレート化合物は、アクリレートまたはメタクリレート化合物の各種のモノマー,オリゴマー,プレポリマーを意味している。酸基を有する(メタ)アクリレート化合物は酸基としてリン酸基またはカルボキシル基を有する(メタ)アクリレートであることが好ましく、1分子中にリン酸基またはカルボキシル基を1個または複数個有する(メタ)アクリレート化合物が使用できる。リン酸基はカルボキシル基よりも強い酸性を示すことから、歯面のスメアー層の溶解や歯質脱灰の効果が高く、特にエナメル質に対して高い接着力を得ることができる。
【0013】
リン酸基を有する(メタ)アクリレート化合物としては、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート、ビス[2−(メタ)アクリロイルオキシエチル]ハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルハイドロジェンホスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルジハイドロジェンホスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルフェニルハイドロジェンホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート、1,3−ジ(メタ)アクリロイルプロパン−2−ジハイドロジェンホスフェート、1,3−ジ(メタ)アクリロイルプロパン−2−フェニルハイドロジェンホスフェート、ビス[5−{2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシカルボニル}ヘプチル]ハイドロジェンホスフェート等が挙げられる。中でも10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェートが接着性及び(メタ)アクリレート化合物自体の安定性の点から特に好ましい。これらのリン酸基を有する(メタ)アクリレート化合物は、単独あるいは2種以上を混合して用いても良い。
【0014】
カルボキシル基を有する(メタ)アクリレート化合物としては、4−(メタ)アクリロキシエチルトリメリット酸、4−(メタ)アクリロキシエチルトリメリット酸無水物、4−(メタ)アクリロキシデシルトリメリット酸、4−(メタ)アクリロキシデシルトリメリット酸無水物、11−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−ウンデカンジカルボン酸、1,4−ジ(メタ)アクリロイルオキシピロメリット酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸などが挙げられる。中でも4−(メタ)アクリロキシエチルトリメリット酸,4−(メタ)アクリロキシエチルトリメリット酸無水物が接着力の点から特に好ましい。
【0015】
アルミノシリケート粉末は粉成分の主成分として、透明性及びX線造影性を付与するために使用され、(メタ)アクリレート化合物と使用するとある程度の透明性も確保できる特徴がある。主要成分としてAl3+,Si4+,O2−を含み、更にSr及び/またはBa及び/またはCaを含むアルミノシリケートガラス粉末であることが必要であり、特にAlの酸化物換算での含有量がガラスの総重量に対して15重量%以下であることが必要である。この値が15重量%を超えるとアルミノシリケートガラス粉末の酸反応性が高くなってしまい、同一成分中で酸基を有する(メタ)アクリレート化合物との共存ができない。特に10重量%以下であることが好ましい。なお、本発明での「実質的にイオン反応を起こさないフィラー」とは、1つの組成物に酸性成分と共に配合された場合に、酸性成分とフィラーとの間のイオン反応によって歯質接着性組成物がゲル化することなく歯科用材料製品としての安定性に影響しない範囲での極僅かなイオン反応は起こり得るので、酸性分との間で全くイオン反応を生じないフィラーを意味しているのではない。
【0016】
本発明で用いるアルミノシリケートガラス粉末は、γ―メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン,ビニルトリクロロシラン,ビニルトリエトキシシラン,ビニルトリメトキシシラン,ビニルトリアセトキシシラン,ビニルトリ(メトキシエトキシ)シラン等のアルコキシシランによって表面を修飾されていてもよい。またアルミノシリケートガラス粉末はアルコキシシランによって表面を修飾される前にリン酸及び/またはα-β不飽和カルボン酸の重合体と反応させられていてもよい。なお、ガラス中のAlの含有量は、ガラスを蛍光X線分析で得られた元素比をもとに、酸化物として再計算した時の含有量として定義されたものであり、ガラス製造時にAlを酸化物として配合する分量を意味しているものではない。
【0017】
本発明に係る歯質接着性組成物に用いる重合反応は、光重合触媒によるラジカル重合反応を利用する。光重合触媒は、増感材と還元材との組み合わせが一般に用いられる。増感材には、カンファーキノン、ベンジル、ジアセチル、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール、ベンジルジ(2−メトキシエチル)ケタール、4,4’−ジメチルベンジル−ジメチルケタール、アントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−クロロアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、1−ヒドロキシアントラキノン、1−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、1−ブロモアントラキノン、チオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−ニトロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2−クロロ−7−トリフルオロメチルチオキサントン、チオキサントン−10,10−ジオキシド、チオキサントン−10−オキサイド、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、イソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾフェノン、ビス(4−ジメチルアミノフェニル)ケトン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、アジド基を含む化合物等があり、単独または混合して使用できる。
【0018】
還元剤としては3級アミンが一般に使用される。3級アミンとしては、ジメチルアミノエチルメタクリレート,トリエタノールアミン,4−ジメチルアミノ安息香酸メチル,4−ジメチルアミノ安息香酸エチル,4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルが好ましい。また他の還元剤として、ベンゾイルパーオキサイド、有機金属化合物、スルフィン酸誘導体等が挙げられる。この様にして得られる光重合型歯科用修復材組成物は紫外線若しくは可視光線等の活性光線を照射することにより重合反応が達せられる。
【0019】
本発明に係る歯質接着性組成物は、酸基を有さない(メタ)アクリレートを配合しても良い。本発明で使用する酸基を有さない(メタ)アクリレート化合物として具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジ(メタ)アクリロキシプロパン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジル(メタ)アクリレートが挙げられ、これらのモノマーあるいはオリゴマーあるいはプレポリマーが好適に使用できる。また、ウレタン結合を持つ(メタ)アクリレートとして、ジ−2−(メタ)アクリロキシエチル−2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジカルバメート、1,3,5−トリス[1,3−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2−プロポキシカルボニルアミノヘキサン]−1,3,5−(1H,3H,5H)トリアジン−2,4,6−トリオン、2,2−ビス−4−(3−(メタ)アクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−フェニルプロパン等があり、その他2,2’−ジ(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンと2−オキシパノンとヘキサメチレンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとからなるウレタンオリゴマーの(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールとヘキサメチレンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとからなるウレタンオリゴマーの(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは単独または2種以上を混合して使用することができる。
【0020】
本発明に係る歯質接着性組成物は、a)成分である酸基を有する(メタ)アクリレート化合物と反応しないアルミノシリケートガラス粉末以外のフィラー成分を配合しても良い。フィラー成分は歯質接着性組成物の流動性を調整する効果がある。フィラーとしては無水ケイ酸,バリウムガラス,アルミナガラス,カリウムガラス,アルミノシリケートガラス等のガラス類、合成ゼオライト,リン酸カルシウム,長石,ヒュームドシリカ,ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム、含水ケイ酸、含水ケイ酸カルシウム、含水ケイ酸アルミニウム、石英等の粉末がある。これらのフィラーは(メタ)アクリレート化合物と結合させるために、アルミノシリケートガラス粉末と同様にシランカップリング剤で表面処理されていても良い。また、前記のフィラーを予め(メタ)アクリレート化合物のモノマーやオリゴマーと混合して硬化させた後、粉砕して作製した有機無機複合フィラーも使用することができる。これらのフィラーは単独または2種以上を混合して使用することができる。なお、バリウムガラス等の不透明ガラスは組成物の硬化後の透明性に悪影響を与えない範囲で配合できる。
【0021】
なお、本発明に係る重合性組成物には必要に応じて通常歯科用組成物に用いられている重合禁止材,抗菌剤,顔料等を適宜配合できるのは勿論である。また、更に、酸基を有する(メタ)アクリレートの歯質に対する反応性を高めるために液成分に水を配合することもできる。
【実施例】
【0022】
表3に示した配合(重量%)によって歯質接着性組成物を作製し、接着性試験,保存安定性及びX線造影性の試験を実施した。
【0023】
表3中の略語はそれぞれ以下の通りである。
TEGDMA:トリエチレングリコールジメタクリレート
UDMA:ジ−2−メタアクリロキシエチル−2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジカルバメート
【0024】
アエロジル:ヒュームドシリカ(商品名 R812,日本アエロジル社製)
【0025】
アルミノシリケートガラス粉末の作製時の配合を表1に示す。本発明に用いるアルミノシリケートガラス粉末をI〜IIIに、Alの配合割合の高いアルミノシリケートガラス粉末をIVとした。
【0026】
<表1> 重量%

【0027】
アルミノシリケートガラス粉末は、原料を十分混合し1200℃の高温電気炉中で5時間保持しガラスを溶融させた。溶融後冷却し、ボールミルを用いて10時間粉砕し、200メッシュ(ASTM)ふるいを通過させた後の粉末をアルミノシリケートガラス粉末とした。
【0028】
Alの酸化物換算での含有量は、ガラスを蛍光X線分析で得られた元素比をもとに、酸化物として再計算した時の含有量として定義される。測定方法は、本実施例ではガラス粉末をプレス機により直径31mm,厚さ5mmのペレットを作製し、管電圧50kV、測定範囲直径20mmで測定した。結果を表2に示す。
【0029】
<表2> 重量%

【0030】
『接着試験』
各実施例及び比較例において、曲げ試験はISO/11405:2003 5.2.4に準じて行った。すなわち、牛抜去歯を唇面から#600耐水研磨紙にて研磨し、被着面を直径3mmにプラスチックテープ(厚さ0.1mm)で面積規制した。被着面に組成物を塗布し、プラスチックフィルムを介してスライドガラスで圧接した。LED光照射器(製品名 G−Light; GC社製)にて20秒間光硬化させた。スライドガラスとプラスチックフィルムを取り除き、硬化した組成物の面に直径10mmのステンレスロッドを歯科用グラスアイオノマーセメント(製品名 フジリュート;GC社製)で合着した。湿度100%、37℃で1時間放置後、37℃の蒸留水中に23時間浸漬した。その後水中から取り出し、クロスヘッドスピード1mm/min.で引張り試験を行った。歯科用接着用の材料として十分な接着性を有していることが確認できた。
【0031】
『保存安定性の確認試験』
各実施例及び比較例において、組成物を射出口径約0.5mmの注射器状の容器に充填し、45℃中に保管し、容器からの押出性を確認した。容器から軽く押し出せる場合は○、イオン反応によってゲル化してしまい全く押し出せなくなった場合を×とした。
【0032】
表3から明らかなように、Alが15%以下のアルミノシリケートガラス粉末を使用した場合は、保存安定性の確認試験から明らかなように保存安定性に優れていることがわかる。
【0033】
『X線造影性』
ISO4049−2000に準じて試験を行い、対アルミ板の厚さ(mm)に相当するX線造影性として評価を行った。歯科用材料として十分なX線造影性を有していることが確認できた。
【0034】
<表3>


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)酸基を有する(メタ)アクリレート化合物、
b)Sr及び/またはBa及び/またはCaを含むアルミノシリケートガラス粉末であって、Alの酸化物換算での含有量が15重量%以下であることによりa成分の酸基を有する(メタ)アクリレート化合物と実質的にイオン反応を起こさないフィラー、
c)光重合触媒、
を含有し、それらが1包装中に共存していることを特徴とする歯質接着性組成物。
【請求項2】
b)成分中のAlの酸化物換算での含有量が10重量%以下である請求項1に記載の歯質接着性組成物
【請求項3】
更に、酸基を有さない(メタ)アクリレート化合物を含む請求項1または2に記載の歯質接着性組成物。
【請求項4】
更に、a)成分と反応しないフィラーを含有する請求項1ないし3の何れか一項に記載の歯質接着性組成物。

【公開番号】特開2011−42609(P2011−42609A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−190937(P2009−190937)
【出願日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(000181217)株式会社ジーシー (279)
【Fターム(参考)】