歯車対の評価装置、評価プログラム、及びこれを用いた歯車対の評価方法
【課題】 歯車対に作用する荷重や応力の分布を歯面全体に亘って詳細に演算することができる歯車対の評価装置を提供する。
【解決手段】 演算部6は、歯車対100の互いに噛み合う歯対に単位荷重を付与したときの各噛合進行位置Iにおける接触線C−C’上の分布荷重である単位分布荷重Pn(I,j)と噛合剛性値K0(I)を歯対の各インボリュート歯面形状に基づいて演算するとともに、歯車対100に所定荷重Psを付与したときの歯対の各噛合進行位置Iにおける分担荷重f(I)を歯対の相対歯面誤差S(I,j)と噛合剛性値K0(I)に基づいて演算し、歯車対100に所定荷重Psを付与したときの歯対の各噛合進行位置Iにおける接触線C−C’上の分布荷重である実分布荷重P(I,j)を単位分布荷重Pn(I,j)と分担荷重f(I)とに基づいて演算する。
【解決手段】 演算部6は、歯車対100の互いに噛み合う歯対に単位荷重を付与したときの各噛合進行位置Iにおける接触線C−C’上の分布荷重である単位分布荷重Pn(I,j)と噛合剛性値K0(I)を歯対の各インボリュート歯面形状に基づいて演算するとともに、歯車対100に所定荷重Psを付与したときの歯対の各噛合進行位置Iにおける分担荷重f(I)を歯対の相対歯面誤差S(I,j)と噛合剛性値K0(I)に基づいて演算し、歯車対100に所定荷重Psを付与したときの歯対の各噛合進行位置Iにおける接触線C−C’上の分布荷重である実分布荷重P(I,j)を単位分布荷重Pn(I,j)と分担荷重f(I)とに基づいて演算する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパーギヤやヘリカルギヤ等からなる歯車対の評価装置、評価プログラム、及びこれを用いた歯車対の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、歯車対の評価としては、例えば、所定の負荷状態(例えば、歯車対を使用する際に想定される最大負荷状態)で歯車対を噛合させた場合の耐久性評価等が行われる。この種の評価では、一般に、ISO規格やJIS規格に準拠した計算式(例えば、非特許文献1参照)等を用いたシミュレーションにより、所定負荷状態におけるピッチ円上の接線力が算出され、この接線力に基づいてピッチ点での応力(歯面接線応力)が算出される。そして、算出したピッチ点での応力に対し、例えば、オペレータの経験等に基づいて設定されたマージンが与えられ、このマージンを考慮した応力値が、歯車対の耐久性上、許容できる値であるか否かが判定される。
【0003】
ところで、この種の歯車対において、歯面接触応力が最大となる歯面上の地点は、必ずしもピッチ点であるとは限らず、むしろ、歯対の噛み合い始めや終わりの領域に存在することが多い。これは、一般に、歯対の噛み合い始めや終わりでは、噛み合い接触線の長さが短いため、分布荷重が大きく、しかも、歯面の曲率半径が小さいことに大きく起因する。
【非特許文献1】「JGMA STANDARD 日本歯車工業会規格 −ISO規格に準拠− 平歯車およびはすば歯車の歯面強さ計算式」 平成元年3月8日制定 財団法人日本歯車工業会
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、歯車対に作用する応力等の演算方法については、上述のようにピッチ点における応力等の演算方法しか知られておらず、歯車対に作用する荷重や応力等についての分布を歯面全体に亘って詳細に演算することが困難であった。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、歯車対に作用する荷重や応力の分布を歯面全体に亘って詳細に演算することができる歯車対の評価装置、評価プログラム、及びこれを用いた歯車対の評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の歯車対の評価装置は、歯車対の互いに噛み合う歯対の歯面間の相対的な誤差である相対歯面誤差の分布情報を演算する相対歯面誤差演算手段と、前記歯対に単位荷重を付与したときの当該歯対の各噛合進行位置における接触線上の分布荷重である単位分布荷重を前記歯対の各インボリュート歯面形状に基づいて演算する単位分布荷重演算手段と、前記歯対の前記各噛合進行位置における噛合剛性値を前記歯対の各インボリュート歯面形状に基づいて演算する噛合剛性値演算手段と、前記歯車対に所定荷重を付与したときの前記歯対の各噛合進行位置における分担荷重を前記相対歯面誤差と前記噛合剛性値とに基づいて演算する分担荷重演算手段と、前記歯車対に所定荷重を付与したときの前記歯対の各噛合進行位置における接触線上の分布荷重である実分布荷重を前記単位分布荷重と前記分担荷重とに基づいて演算する実分布荷重演算手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
本発明の歯車対の評価プログラムは、歯車対の互いに噛み合う歯対の歯面間の相対的な誤差である相対歯面誤差の分布情報を演算する相対歯面誤差演算ステップと、前記歯対に単位荷重を付与したときの当該歯対の各噛合進行位置における接触線上の分布荷重である単位分布荷重を前記歯対の各インボリュート歯面形状に基づいて演算する単位分布荷重演算ステップと、前記歯対の前記各噛合進行位置における噛合剛性値を前記歯対の各インボリュート歯面形状に基づいて演算する噛合剛性値演算ステップと、前記歯車対に所定荷重を付与したときの前記歯対の各噛合進行位置における分担荷重を前記相対歯面誤差と前記噛合剛性値とに基づいて演算する分担荷重演算ステップと、前記歯車対に所定荷重を付与したときの前記歯対の各噛合進行位置における接触線上の分布荷重である実分布荷重を前記単位分布荷重と前記分担荷重とに基づいて演算する実分布荷重演算ステップと、を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明の歯車対の評価方法は、歯車対の互いに噛み合う歯対の歯面間の相対的な誤差である相対歯面誤差の分布情報を演算する相対歯面誤差演算工程と、前記歯対に単位荷重を付与したときの当該歯対の各噛合進行位置における接触線上の分布荷重である単位分布荷重を前記歯対の各インボリュート歯面形状に基づいて演算する単位分布荷重演算工程と、前記歯対の前記各噛合進行位置における噛合剛性値を前記歯対の各インボリュート歯面形状に基づいて演算する噛合剛性値演算工程と、前記歯車対に所定荷重を付与したときの前記歯対の各噛合進行位置における分担荷重を前記相対歯面誤差と前記噛合剛性値とに基づいて演算する分担荷重演算工程と、前記歯車対に所定荷重を付与したときの前記歯対の各噛合進行位置における接触線上の分布荷重である実分布荷重を前記単位分布荷重と前記分担荷重とに基づいて演算する実分布荷重演算工程と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、歯車対に作用する荷重や応力の分布を歯面全体に亘って詳細に演算することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の形態を説明する。図面は本発明の一形態に係わり、図1は歯車対の評価装置の概略構成図、図2は歯車対の評価装置を実現するためのコンピュータの一例を示す概略図、図3は応力分布演算ルーチンを示すフローチャート、図4ははすば歯車対の作用平面を示す説明図、図5は歯面上に設定された修正量入力点を示す説明図、図6は歯先修正量及び歯元修正量の説明図、図7(a)はクラウニング修正量の説明図であり(b)は歯筋タオレ修正量の説明図、図8はバイアス修正量の説明図、図9(a)は等高線表示された相対歯面誤差分布の一例を示す説明図であり(b)は等高線表示された応力分布の一例を示す説明図、図10は各噛み合い瞬間における各歯対の噛み合い剛性値の推移を示す説明図、図11は接触線上での相対歯面誤差と等価歯形誤差を示す説明図、図12ははすば歯車対の解析モデルを示す説明図、図13は接触線に対する垂直方向の応力分布を示す説明図、図14は各噛み合い瞬間における各歯対の応力分布を示す説明図、図15は歯面応力最大値の推移を示す説明図である。なお、本発明は、歯車対のドライブ側の噛み合い、及びコースト側の噛み合いの何れにも適用が可能であるが、本実施形態においては、以下、ドライブ側の噛み合いを例に説明する。
【0011】
図1に示す歯車対の評価装置1は、例えば、互いに噛み合う駆動歯車101と被動歯車102がそれぞれはすば歯車(ヘリカルギヤ)で構成される歯車対100(はすば歯車対:図4,13参照)の評価を行う。具体的には、評価装置1は、例えば、駆動歯車101と被動歯車102とを所定荷重を付与ながら噛み合わせたときの各噛み合い瞬間に歯対の接触線上に実際に作用する分布荷重(実分布荷重)を演算するとともに、演算した実分布荷重に基づいて応力分布を演算し、これらに基づいて歯車対100の耐久性評価等を行う。
【0012】
ここで、本評価装置1で評価対象となるはすば歯車対100において、駆動歯車101及び被動歯車102の各歯面は、例えば、基本諸元に基づいて規定されるマクロ形状の各歯面(基準歯面としてのインボリュート歯面)に対し、各種歯面修正量(設定歯面修正量)に基づく三次元的な歯面修正がそれぞれ施されることにより形成されている。
【0013】
なお、歯車対100の基本諸元としては、例えば、各歯車101,102の歯数z、歯直角モジュールmn、歯丈係数Ks、圧力角αn、歯幅b、及び、ねじれ角β0等が設定される。また、設定歯面修正量としては、各歯面に対して、例えば、歯先修正量Tm、歯元修正量Rm、クラウニング修正量Cm、歯筋タオレ量Lm、及び、左右バイアス修正量Blm,Brm等(図6乃至図8参照)等が設定される。なお、以下の説明において、駆動歯車101の歯面に設定される歯面修正量等に対して必要に応じて添字’Dv’を付し、被動歯車102の歯面に設定される歯面修正量等に対して必要に応じて添字’Dn’を付す。
【0014】
評価装置1は、歯車対100等についての各種情報を入力する入力部5と、入力部5からの入力情報に基づいて歯車対100の評価(実分布荷重及び応力分布の演算等)を行う演算部6と、演算部6で実行される応力分布演算ルーチン等のプログラムを格納するとともに入力部5からの入力情報や演算部6での演算結果等を適宜記憶する記憶部7と、演算部6での演算結果等を出力する出力部8とを有して構成されている。
【0015】
なお、評価装置1は、例えば図2に示すコンピュータシステム10で実現される。このコンピュータシステム10は、例えば、コンピュータ本体11に、キーボード12と、表示手段としてのディスプレイ装置13と、プリンタ14とを有し、これらが接続ケーブル15を介して接続されて要部が構成されている。そして、このコンピュータシステム10において、例えば、コンピュータ本体11に配設された各種ドライブ装置やCPU,ROM、RAM等が演算部6として機能する。また、コンピュータ本体11に内臓されたハードディスク等が記憶部7として機能するとともに、ディスプレイ装置13やプリンタ14等が出力部8として機能する。
【0016】
ここで、評価装置1には、歯車対100の基本諸元及び設定歯面修正量の他、歯車対100を使用する際に想定される最大トルク(すなわち、歯車対100に作用することが想定される最大荷重)等の情報が入力部5を通じて入力される。そして、演算部6は、例えば、記憶部7に記憶された応力分布演算ルーチンのプログラムを実行し、上記各入力情報に基づく演算を行うことにより、相対歯面誤差演算手段、単位分布荷重演算手段、噛合剛性値演算手段、分担荷重演算手段、実分布荷重演算手段、及び、応力分布演算手段としての各機能を実現する。
【0017】
すなわち、演算部6は、例えば、歯車対100の互いに噛み合う歯対の歯面間の相対的な誤差である相対歯面誤差の分布情報を、基本諸元及び設計歯面修正量等に基づくシミュレーションによって演算する。なお、この相対歯面誤差は、例えば、本出願人による特開2005−193560号公報に開示されているように、実際の歯車対の各歯面に対して触針を走査させることによって各歯面の基準歯面に対する歯面誤差データを測定し、これら歯面誤差データに基づいて演算されるものであってもよい。
【0018】
また、演算部6は、例えば、歯車対100の互いに噛み合う歯対に対して単位荷重(1Nの荷重)を付与したと仮定して歯対の各インボリュート歯面形状に基づくシミュレーションを行うことにより、歯対に単位荷重を付与したときの各噛合進行位置Iにおける接触線(噛合接触線)C−C’上の分布荷重である単位分布荷重Pn(I,j)を演算するとともに、歯対の各噛合進行位置Iにおける噛合剛性値K(I)を演算する。ここで、jは、接触線C−C’上の座標を示す。なお、図4に示すように、はすば歯車対100の接触線C−C’は歯車軸に対してねじれているため、これらの噛合は、平歯車と異なり点接触から始まる。すなわち、はすば歯車対100の噛合は、S点から始まり、斜めの噛合接触線C−C’が長さを変えながら作用平面103上を平行に進行し、最後にE点で終わる。作用平面103とは、歯対の各歯面上の有効噛み合い領域を示すものであり、本実施形態において、作用平面103は、例えば、駆動歯車101の歯面(駆動歯面)を基準として定義されている。
【0019】
また、演算部6は、歯車対100に所定荷重(例えば,歯車対100を使用する際に想定される最大荷重)Psを付与したときの記歯対の各噛合進行位置Iにおける分担荷重f(I)を相対歯面誤差と噛合剛性値K(t)とに基づいて演算する。この分担荷重f(I)の演算において、演算部6は、先ず、歯車対100に所定荷重Psを付与した場合に、当該荷重Psが歯車対100の各噛合瞬間tにおいて同時に噛み合う各歯対それぞれに対して作用する荷重(分担荷重fq(q=1,2,…,Q)(t))を、相対歯面誤差と噛合剛性値K(t)とに基づいて演算する。ここで、歯車対100の噛合瞬間tとは、例えば、同時に噛み合う複数の歯対の各噛合進行位置を表すためのパラメータであり、各歯対の中から抽出した注目する歯対の噛合進行位置Iに対応付けて設定される。従って、噛合瞬間tにおいて、注目する歯対の噛合進行位置はIとなり、その前後の歯対の噛合進行位置はI±N(N=1ピッチ)となる。また、添字’q’は、噛合瞬間tに同時に噛み合う各歯対を識別するための番号であり、その最大値’Q’は、歯車対100の噛合状態(噛合瞬間t)に応じて異なる。例えば、噛合率3.5である場合、歯車対100は、その噛合の進行状態に応じて、3つの歯対の噛み合い(3歯噛み合い)と、4つの歯対の噛み合い(4歯噛み合い)とを繰り返すため、Qのとり得る値は、噛合瞬間tに応じて3又は4となる。そして、これらの関係から、演算部6は、各噛合瞬間の各歯対の分担荷重fq(t)に基づいて、歯対(1歯対)の各噛合進行位置Iでの分担荷重f(I)を求める。
【0020】
また、演算部6は、歯車対100に所定荷重Psを付与したときの歯対の各噛合進行位置Iにおける接触線C−C’上の分布荷重である実分布荷重P(I,j)を単位分布荷重Pn(I,j)と分担荷重f(I)とに基づいて演算する。
【0021】
さらに、演算部6は、歯車対100に所定荷重Psを付与した場合の応力分布H(I,j)を、実分布荷重P(I,j)に基づいて演算する。
【0022】
次に、演算部6で実行される歯車対100の応力分布の演算処理について、図3に示す応力分布演算ルーチンのフローチャートに従って詳細に説明する。
このルーチンがスタートすると、演算部6は、先ず、ステップS101において、オペレータ等により入力部5を通じて入力された歯車対100の基本諸元や設定歯面修正量等の各種情報を記憶部7から読み込む。
【0023】
続くステップS102において、演算部6は、歯車対100の基本諸元及び設定歯面修正量に基づくシミュレーションにより、歯対の歯面間の相対歯面誤差S(I,j)の分布情報を演算する。
この相対歯面誤差の演算では、先ず、歯車対100の各歯面(駆動歯車101及び被動歯車102の各歯面)の歯面誤差分布情報として、それぞれ3行×3列の歯面誤差分布情報が算出される。すなわち、図5に示すように、演算部6は、各基準歯面上における有効歯面の中心(D(1,1))と、有効歯面の四隅(D(0,0)、D(0,2)、D(2,0)、D(2,2))と、有効歯面を囲む各辺の中心(D(0,1)、D(1,0)、D(1,2)、D(2,1))に対し、それぞれ該当する各歯面修正量を付与することで、各基準歯面に対する3行×3列の歯面誤差分布情報を算出する。
【0024】
具体的には、駆動歯車101が右ネジレの場合、歯筋タオレ量は強ネジレ方向を正、バイアス修正量はバイアスインを正とすると、駆動歯車のドライブ側歯面における各点の歯面修正量は、
DDv(0,0)=TDv+CDv+LDv/2−BlDv/2
DDv(0,1)=TDv
DDv(0,2)=TDv+CDv−LDv/2+BrDv/2
DDv(1,0)=CDv+LDv/2
DDv(1,1)=0
DDv(1,2)=CDv−LDv/2
DDv(2,0)=RDv+CDv+LDv/2+BlDv/2
DDv(2,1)=RDv
DDv(2,2)=RDv+CDv−LDv/2
となる。一方、被動歯車102のドライブ側歯面における各点の歯面修正量は、
DDn(0,0)=TDn+CDn+LDn/2−BlDn/2
DDn(0,1)=TDn
DDn(0,2)=TDn+CDn−LDn/2+BrDn/2
DDn(1,0)=CDn+LDn/2
DDn(1,1)=0
DDn(1,2)=CDn−LDn/2
DDn(2,0)=RDn+CDn+LDn/2+BlDn/2
DDn(2,1)=RDn
DDn(2,2)=RDn+CDn−LDn/2
となる。なお、駆動歯車101が左ネジレの場合、上述の各点において、歯筋タオレ修正量、及び、バイアス修正量に係る加減算は逆となる。
【0025】
さらに、演算部6は、算出した各3行×3列の歯面誤差分布情報に対して、例えば、周知の多点スプライン補間法を用いた補間計算を行うことにより、各歯筋方向のサンプル間隔が例えば0.1mmとなる3行×lDv列、3行×lDn列の各歯面誤差分布情報を生成する。
【0026】
そして、演算部6は、駆動歯車101と被動歯車102の各ドライブ側歯面の有効噛合領域を算出し、駆動歯車101の歯面誤差分布情報(3行×lDv列の分布情報)及び被動歯車102の歯面誤差分布情報(3行×lDn列の分布情報)の中から、有効噛合領域内に存在する歯面誤差分布情報(3行×l’列の分布情報)をそれぞれ抽出する。
【0027】
次に、演算部6は、抽出した各歯面誤差分布情報に基づいて、駆動歯面と被動歯面との噛合時の相対的な歯面誤差である相対歯面誤差の分布情報を生成する。ここで、本実施形態において、演算部6は、例えば、駆動歯面を基準として、無負荷状態での相対歯面誤差分布情報を算出する。
【0028】
具体的に説明すると、3行×l’列の各歯面誤差分布情報において、駆動歯面側のm行n列目の歯面誤差データをDDv(m,n)、被動歯面側のm行n列目の歯面誤差データをDDn(m,n)とすると、歯面上の各点(m,n)での相対歯面誤差S(m,n)は、例えば(1)式に示す計算式を用いて算出される。
S(m,n)=DDv(m,n)+DDn(3−1−m,n)+Gosa(m,n)…(1)
ここで、Gosa(m,n)は、歯車対100の組付誤差及びデフレクションを歯面上に反映させた補正値である。
【0029】
例えば、抽出された各歯面誤差分布情報が3行×161列である場合、上述の(1)式に基づいて、
S(0,0)=DDv(0,0)+DDn(2,0)+Gosa(0,0),
S(0,1)=DDv(0,1)+DDn(2,1)+Gosa(0,1),・・・,
S(2,159)=DDv(2,159)+DDn(0、159)+Gosa(2,159),
S(2,160)=DDv(2,160)+DDn(0,160)+Gosa(2,160)
の各データからなる、3行×161列の相対歯面誤差S(m,n)のデータ群(相対歯面誤差分布情報)が算出される。
【0030】
さらに、演算部6は、相対歯面誤差分布情報に対し、多点スプライン補完法を用いて行補完及び列補完を行い、より詳細な相対歯面誤差分布情報(例えば、241行×241列の分布情報)を生成する。なお、演算部6は、この相対歯面誤差分布情報を、例えば、図9(a)に示すように、出力部8(例えば、ディスプレイ装置13)を通じて等高線表示することも可能である。
【0031】
続くステップS103において、演算部6は、歯対の各噛合進行位置Iにおける単位分布荷重Pn(I,j)を演算するとともに、歯対の各噛合進行位置Iにおける噛合剛性値K0(I)を演算する。
【0032】
これら単位分布荷重Pn(I,j)及び噛合剛性値K(I)は、例えば、各噛合進行位置Iにおいて、歯車対100の基本諸元に基づいて定められる各歯面のマクロ形状に基づいて以下の(2)〜(4)式に示す歯の曲げ撓みと歯面接触撓みの積分方程式を作成し、当該積分方程式を解くことにより得られる。
【0033】
具体的に説明すると、演算部6は、荷重Ps=1N(単位荷重)であると仮定して、(2)式〜(4)式をガウス処理を用いて解くことにより、噛合接触線C−C’上の単位分布荷重Pc(ξ)及び撓み量δIを算出する。そして、演算部6は、単位分布荷重Pc(ξ)を接触線C−C’上に設定された計算分割幅ΔBで除算して正規化することにより最終的な単位分布荷重Pn(I,j)を算出するとともに(Pn(I,j)=Pc(ξ)/ΔB)、撓み量δIの逆数である噛合剛性値K0(I)を算出する。
【0034】
δI=∫Kb(x,ξ)・Pc(ξ)dξ+Kc(x=ξ)・Pc(ξ)dξ…(2)
Ps=∫Pc(ξ)dξ…(3)
K(I)=Ps/δI…(4)
ここで、(2)式において、面接触撓みの影響関数であるKcには、鈴木ら(鈴木・梅沢、「片当りする歯車の歯面接触による近寄り」、日本機械学会論文集(C編)52巻481号(1986)、P2449 参照)によって提案されている自由端荷重分布の影響を考慮したローラ同士の理論式を使用することが可能である。
Kc[x=ξ,y=η=fuc(x)]
=25・(1−γ2)・∫(1−x4)1/4dx
/π・E・ΔB・(1−x4)1/4…(5)
(但し、積分範囲は0〜1)
また、歯の曲げ撓み影響関数であるKbは、狩野ら(狩野・斎木、「歯車用ラックの新しい曲げ撓み影響関数」、日本機械学会2002年度年次大会講演論文集(V)2314号、P27 参照)によって提案されている歯幅方向と歯丈方向の違った撓み特性を考慮した高精度な式を使用することが可能である。
Kb(x,y,ξ,η)
=U・G(η)・〔ν(r)/ν(η)〕
・[〔F(x)・F(ξ)〕/F(|x−ξ|)]1/2 …(6)
γ=η+[〔λ・(x−ξ)〕2+(y−η)2]1/2 …(7)
ここで、式(2)〜(7)中の変数等は以下の通りである。
(x,y):撓み観測点の座標値
(ξ,η):単位集中荷重点の座標値
Pc(ξ):噛合接触線上の荷重分布
E:ヤング率[2.068×1011N/m2]
γ:ポアソン比[0.3]
I:接触歯幅中央を0とするはすば歯車対の等価作用線(図4参照)上の座標値
U:原点集中荷重時の原点での撓みの絶対値
λ:撓み楕円状分布の同心円分布への座標変換係数
r:歯先を原点とする撓み同心円分布の半径
ν(r):等価同心円分布の撓み特性関数
G(η):歯丈方向の集中荷重点直下の撓み特性関数
F(ξ):歯幅方向の集中荷重点直下の撓み特性関数
なお、本実施形態においては、単位分布荷重Pn(I,j)及び噛合剛性値K0(I)を歯の曲げ撓みと歯面接触撓みの積分方程式を用いて演算する一例について説明したが、これら単位分布荷重Pn(I,j)及び噛合剛性値K0(I)は、個別に求められるものであってもよい。
【0035】
続くステップS104において、演算部6は、図12に示すはすば歯車対の解析モデルに基づいて以下の(8)〜(11)式に示すはすば歯車対の負荷噛合方程式(静的な負荷噛合方程式)を噛合瞬間t毎に作成し、この負荷噛合方程式を解くことにより、各噛合瞬間tにおいて同時に噛み合う各歯対の分担荷重fq(t)を演算する。
【数1】
【0036】
ここで、式(8)〜(11)中において、kq(t)は、噛合瞬間tにおいて同時に噛み合う各歯対の噛合剛性値であり、各噛合剛性値kq(t)は、上述のステップS103で求めた1歯対あたりの噛合剛性値K0(I)に基づいて求められる。具体的に説明すると、演算部6は、例えば、図10に示すように、1歯対あたりの噛合剛性値K0(I)の特性線を各歯対に対応付けて1ピッチずつずらして配置した検索マップを生成し、当該検索マップに基づいて、噛合瞬間tにおける各歯対噛合剛性値kq(t)を検索する。なお、図10に示す検索マップは、歯車対100の噛合率が3.5である場合の検索マップを示す。
【0037】
また、eq(t)は、各歯対の等価歯形誤差であり、各等価歯形誤差eq(t)は、歯対の相対歯面誤差S(m,n)と、歯車対の実質静撓みxs’とに基づいて演算される。具体的に説明すると、演算部6は、先ず、ステップS102で求めた相対歯面誤差S(m,n)を、歯対の噛合進行方向と接触線C−C’方向とを座標軸とする非直交座標系の相対歯面誤差S(I,j)に変換する。そして、例えば、図11(a)〜(c)に示すように、相対歯面誤差S(I,j)の分布情報から、噛合瞬間tにおける各歯対の接触線C−C’上の相対歯面誤差Sq=1(j)、…、Sq=Q(j)を抽出し、各接触線上の実際の接触範囲での各相対歯面誤差Sq(j)の平均値(すなわち、相対歯面誤差Sq(j)の曲線内において実質静撓みxs’以上となる領域の面積)を、等価歯形誤差eq(t)として算出する。また、tZは、はすば歯車対の1正面法線ピッチを通過する時間で噛み合い周期と呼ぶ。 この場合において、演算部6は、実質静撓みxs’の初期値として、例えば、誤差を考慮しない静撓み量xs0を、以下の式(12)、(13)に基づいて設定する。
【数2】
【0038】
そして、演算部6は、これら各歯対の噛合剛性値kq(t)及び等価歯形誤差eq(t)を代入した上述の(8)〜(11)式を解くことにより、各歯対に対する分担荷重fq(t)を算出すると共に、新たな実質静撓みxs’を算出する。
【0039】
そして、演算部6は、新たに算出した実質静撓みxs’が、前回の実質静撓みxs’(n-1)に対して、以下の(14)式の関係を満たすよう収束したか否かを調べる。
【0040】
|(xs’−xs’(n-1))/xs’ (n-1)|<10−6 …(14)
その結果、実質静撓みxs’(t)が収束していないと判定した場合、演算部6は、今回新たに算出したxs’を用いて等価歯形誤差eq(t)を再演算する。そして、再演算した等価歯形誤差eq(t)を代入した上述の(8)〜(11)式を解くことにより、各歯対に対する分担荷重fq(t)及び実質静撓みxs’を再び算出する。これらの処理は、例えば、3回を限度として、実質静撓みxs’が収束するまで繰り返し行われる。そして、演算部6は、実質静撓みxs’が収束したときの各歯対の分担荷重fq(t)を、最終的な分担荷重fq(t)として設定する。
【0041】
さらに、演算部6は、各噛合瞬間tにおいて演算した各歯対の分担荷重fq(t)から、各噛合進行位置Iにおける歯対の分担荷重f(I)を求める。なお、上述の(8)〜(11)式から同時に算出される各分担荷重fq(t)は、それぞれ1ピッチずれた噛合進行位置で噛み合う各歯対の分担荷重であるため、演算部6は、歯車対100に予め設定された1ピッチ分の噛合区間内において各噛合瞬間tの分担荷重fq(t)を演算するだけで、歯対の噛み合い開始から終了までの各噛合進行位置Iでの分担荷重f(I)を求めることができる。
【0042】
続くステップS105において、演算部6は、単位分布荷重Pn(I,j)と、分担荷重f(I)とを用い、歯車対100に所定荷重Psを付与したときの各噛合進行位置Iにおける接触線C−C’上の実分布荷重P(I)を、以下の(15)式に基づいて演算する。
【0043】
P(I,j)=Pn(I,j)×f(I) …(15)
なお、演算部6は、例えば、接触線C−C’毎に演算される全ての実分布荷重P(I,j)を、歯面全体に亘る実分布荷重の情報として、出力部8(例えば、ディスプレイ装置13)を通じて等高線表示することも可能である。
【0044】
続くステップS106において、演算部6は、実分布荷重P(I,j)を用い、以下の(16)、(17)式に示すヘルツの歯面接触応力計算式(接触線C−C’に対して垂直方向の応力分布(図13参照))に基づいて、歯車対100に所定荷重Psを付与したときの各噛合進行位置Iにおける応力分布H(I,j)を演算した後、ルーチンを抜ける。
【数3】
【0045】
ここで、(16)、(17)式において、Νはポアソン比である。また、ρDv(I,j)は駆動歯面上の点の曲率半径、ρDn(I,j)は被動歯面上の点の曲率半径であり、これらは、歯車対100の基本諸元に基づいて定められる。
【0046】
なお、例えば、図9(b)に示すように、演算部6は、接触線C−C’毎に演算される全ての応力分布H(I,j)を、歯面全体に亘る応力分布の情報として、出力部8(例えば、ディスプレイ装置13)を通じて等高線表示することも可能である。
【0047】
また、例えば、図14に示すように、演算部6は、得られた応力分布H(I,j)の情報を加工することにより、歯車対100の各噛合瞬間tにおいて同時に噛み合う各歯対の応力分布をそれぞれ表示することも可能である。
【0048】
また、演算部6は、例えば、図15(a)に示すように、1歯対における噛合進行位置Iと最大応力との関係を表示することも可能であり、さらに、図15(b)に示すように、歯車対100全体としての噛合瞬間tにおける最大応力との関係を表示することも可能である。
【0049】
このような実施形態によれば、歯車対100の互いに噛み合う歯対に単位荷重を付与したときの各噛合進行位置Iにおける接触線C−C’上の分布荷重である単位分布荷重Pn(I,j)と噛合剛性値K0(I)を歯対の各インボリュート歯面形状に基づいて演算するとともに、歯車対100に所定荷重Psを付与したときの歯対の各噛合進行位置Iにおける分担荷重f(I)を歯対の相対歯面誤差S(I,j)と噛合剛性値K0(I)に基づいて演算し、歯車対100に所定荷重Psを付与したときの歯対の各噛合進行位置Iにおける接触線C−C’上の分布荷重である実分布荷重P(I,j)を単位分布荷重Pn(I,j)と分担荷重f(I)とに基づいて演算することにより、実測することが困難な歯車対100の歯対に作用する荷重を、歯面全体に亘って詳細に演算することができる。
【0050】
その際、歯車対100の基本諸元に基づいて定められる各歯面のマクロ形状に基づいて歯の曲げ撓みと歯面接触撓みの積分方程式を設定し、歯対間に作用する荷重が単位荷重であると仮定して前記積分方程式を解くことにより、単位分布荷重Pn(I,j)及び噛合剛性値K0(I)を容易に求めることができる。
【0051】
この場合において、各歯面誤差(相対歯面誤差S(I,j))が考慮されていない歯面のマクロ形状に基づいて単位分布荷重Pn(I,j)を演算した場合であっても、相対歯面誤差S(I,j)は分担荷重f(I)の演算に反映されており、このような分担荷重f(I)を実分布荷重P(I,j)の演算に用いることにより、精度の高い実分布荷重P(I,j)を得ることができる。すなわち、単位分布荷重Pn(I,j)の演算を簡略化することにより、必要以上に複雑な演算を行うことなく、相対歯面誤差S(I,j)を好適に反映させた精度の高い実分布荷重P(I,j)を得ることができる。
【0052】
また、上述のように高精度に演算された実分布荷重P(I,j)に基づいて歯対の応力分布H(I,j)を演算することにより、精度の高い応力分布H(I,j)を得ることができる。
【0053】
そして、このように歯面全体に亘って詳細に求められた高精度な実分布荷重P(I,j)や応力分布H(I,j)を用いることにより、シミュレーションによって各種評価を精度よく行うことができる。例えば、上述の応力分布H(I,j)を用いることにより、ピッチングの発生の有無やピッチングの発生位置等について、実際に作成した歯車対100による耐久試験と同等の結果を得ることができる。
【0054】
さらに、実分布荷重P(I,j)や応力分布H(I,j)を、各種形態に加工して表示することにより(例えば、等高線表示等することにより)、ユーザにとって有意義な情報を可視化して提示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】歯車対の評価装置の概略構成図
【図2】歯車対の評価装置を実現するためのコンピュータの一例を示す概略図
【図3】応力分布演算ルーチンを示すフローチャート
【図4】はすば歯車対の作用平面を示す説明図
【図5】歯面上に設定された修正量入力点を示す説明図
【図6】歯先修正量及び歯元修正量の説明図
【図7】(a)はクラウニング修正量の説明図、(b)は歯筋タオレ修正量の説明図
【図8】バイアス修正量の説明図
【図9】(a)は等高線表示された相対歯面誤差分布の一例を示す説明図、(b)は等高線表示された応力分布の一例を示す説明図
【図10】各噛み合い瞬間における各歯対の噛み合い剛性値の推移を示す説明図
【図11】接触線上での相対歯面誤差と等価歯形誤差を示す説明図
【図12】はすば歯車対の解析モデルを示す説明図
【図13】接触線に対する垂直方向の応力分布を示す説明図
【図14】各噛み合い瞬間における各歯対の応力分布を示す説明図
【図15】歯面応力最大値の推移を示す説明図
【符号の説明】
【0056】
1 … 評価装置
5 … 入力部
6 … 演算部(相対歯面誤差演算手段、単位分布荷重演算手段、噛合剛性値演算手段、分担荷重演算手段、実分布荷重演算手段、応力分布演算手段)
7 … 記憶部
8 … 出力部(表示手段)
100 … 歯車対
101 … 駆動歯車
102 … 被動歯車
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパーギヤやヘリカルギヤ等からなる歯車対の評価装置、評価プログラム、及びこれを用いた歯車対の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、歯車対の評価としては、例えば、所定の負荷状態(例えば、歯車対を使用する際に想定される最大負荷状態)で歯車対を噛合させた場合の耐久性評価等が行われる。この種の評価では、一般に、ISO規格やJIS規格に準拠した計算式(例えば、非特許文献1参照)等を用いたシミュレーションにより、所定負荷状態におけるピッチ円上の接線力が算出され、この接線力に基づいてピッチ点での応力(歯面接線応力)が算出される。そして、算出したピッチ点での応力に対し、例えば、オペレータの経験等に基づいて設定されたマージンが与えられ、このマージンを考慮した応力値が、歯車対の耐久性上、許容できる値であるか否かが判定される。
【0003】
ところで、この種の歯車対において、歯面接触応力が最大となる歯面上の地点は、必ずしもピッチ点であるとは限らず、むしろ、歯対の噛み合い始めや終わりの領域に存在することが多い。これは、一般に、歯対の噛み合い始めや終わりでは、噛み合い接触線の長さが短いため、分布荷重が大きく、しかも、歯面の曲率半径が小さいことに大きく起因する。
【非特許文献1】「JGMA STANDARD 日本歯車工業会規格 −ISO規格に準拠− 平歯車およびはすば歯車の歯面強さ計算式」 平成元年3月8日制定 財団法人日本歯車工業会
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、歯車対に作用する応力等の演算方法については、上述のようにピッチ点における応力等の演算方法しか知られておらず、歯車対に作用する荷重や応力等についての分布を歯面全体に亘って詳細に演算することが困難であった。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、歯車対に作用する荷重や応力の分布を歯面全体に亘って詳細に演算することができる歯車対の評価装置、評価プログラム、及びこれを用いた歯車対の評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の歯車対の評価装置は、歯車対の互いに噛み合う歯対の歯面間の相対的な誤差である相対歯面誤差の分布情報を演算する相対歯面誤差演算手段と、前記歯対に単位荷重を付与したときの当該歯対の各噛合進行位置における接触線上の分布荷重である単位分布荷重を前記歯対の各インボリュート歯面形状に基づいて演算する単位分布荷重演算手段と、前記歯対の前記各噛合進行位置における噛合剛性値を前記歯対の各インボリュート歯面形状に基づいて演算する噛合剛性値演算手段と、前記歯車対に所定荷重を付与したときの前記歯対の各噛合進行位置における分担荷重を前記相対歯面誤差と前記噛合剛性値とに基づいて演算する分担荷重演算手段と、前記歯車対に所定荷重を付与したときの前記歯対の各噛合進行位置における接触線上の分布荷重である実分布荷重を前記単位分布荷重と前記分担荷重とに基づいて演算する実分布荷重演算手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
本発明の歯車対の評価プログラムは、歯車対の互いに噛み合う歯対の歯面間の相対的な誤差である相対歯面誤差の分布情報を演算する相対歯面誤差演算ステップと、前記歯対に単位荷重を付与したときの当該歯対の各噛合進行位置における接触線上の分布荷重である単位分布荷重を前記歯対の各インボリュート歯面形状に基づいて演算する単位分布荷重演算ステップと、前記歯対の前記各噛合進行位置における噛合剛性値を前記歯対の各インボリュート歯面形状に基づいて演算する噛合剛性値演算ステップと、前記歯車対に所定荷重を付与したときの前記歯対の各噛合進行位置における分担荷重を前記相対歯面誤差と前記噛合剛性値とに基づいて演算する分担荷重演算ステップと、前記歯車対に所定荷重を付与したときの前記歯対の各噛合進行位置における接触線上の分布荷重である実分布荷重を前記単位分布荷重と前記分担荷重とに基づいて演算する実分布荷重演算ステップと、を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明の歯車対の評価方法は、歯車対の互いに噛み合う歯対の歯面間の相対的な誤差である相対歯面誤差の分布情報を演算する相対歯面誤差演算工程と、前記歯対に単位荷重を付与したときの当該歯対の各噛合進行位置における接触線上の分布荷重である単位分布荷重を前記歯対の各インボリュート歯面形状に基づいて演算する単位分布荷重演算工程と、前記歯対の前記各噛合進行位置における噛合剛性値を前記歯対の各インボリュート歯面形状に基づいて演算する噛合剛性値演算工程と、前記歯車対に所定荷重を付与したときの前記歯対の各噛合進行位置における分担荷重を前記相対歯面誤差と前記噛合剛性値とに基づいて演算する分担荷重演算工程と、前記歯車対に所定荷重を付与したときの前記歯対の各噛合進行位置における接触線上の分布荷重である実分布荷重を前記単位分布荷重と前記分担荷重とに基づいて演算する実分布荷重演算工程と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、歯車対に作用する荷重や応力の分布を歯面全体に亘って詳細に演算することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の形態を説明する。図面は本発明の一形態に係わり、図1は歯車対の評価装置の概略構成図、図2は歯車対の評価装置を実現するためのコンピュータの一例を示す概略図、図3は応力分布演算ルーチンを示すフローチャート、図4ははすば歯車対の作用平面を示す説明図、図5は歯面上に設定された修正量入力点を示す説明図、図6は歯先修正量及び歯元修正量の説明図、図7(a)はクラウニング修正量の説明図であり(b)は歯筋タオレ修正量の説明図、図8はバイアス修正量の説明図、図9(a)は等高線表示された相対歯面誤差分布の一例を示す説明図であり(b)は等高線表示された応力分布の一例を示す説明図、図10は各噛み合い瞬間における各歯対の噛み合い剛性値の推移を示す説明図、図11は接触線上での相対歯面誤差と等価歯形誤差を示す説明図、図12ははすば歯車対の解析モデルを示す説明図、図13は接触線に対する垂直方向の応力分布を示す説明図、図14は各噛み合い瞬間における各歯対の応力分布を示す説明図、図15は歯面応力最大値の推移を示す説明図である。なお、本発明は、歯車対のドライブ側の噛み合い、及びコースト側の噛み合いの何れにも適用が可能であるが、本実施形態においては、以下、ドライブ側の噛み合いを例に説明する。
【0011】
図1に示す歯車対の評価装置1は、例えば、互いに噛み合う駆動歯車101と被動歯車102がそれぞれはすば歯車(ヘリカルギヤ)で構成される歯車対100(はすば歯車対:図4,13参照)の評価を行う。具体的には、評価装置1は、例えば、駆動歯車101と被動歯車102とを所定荷重を付与ながら噛み合わせたときの各噛み合い瞬間に歯対の接触線上に実際に作用する分布荷重(実分布荷重)を演算するとともに、演算した実分布荷重に基づいて応力分布を演算し、これらに基づいて歯車対100の耐久性評価等を行う。
【0012】
ここで、本評価装置1で評価対象となるはすば歯車対100において、駆動歯車101及び被動歯車102の各歯面は、例えば、基本諸元に基づいて規定されるマクロ形状の各歯面(基準歯面としてのインボリュート歯面)に対し、各種歯面修正量(設定歯面修正量)に基づく三次元的な歯面修正がそれぞれ施されることにより形成されている。
【0013】
なお、歯車対100の基本諸元としては、例えば、各歯車101,102の歯数z、歯直角モジュールmn、歯丈係数Ks、圧力角αn、歯幅b、及び、ねじれ角β0等が設定される。また、設定歯面修正量としては、各歯面に対して、例えば、歯先修正量Tm、歯元修正量Rm、クラウニング修正量Cm、歯筋タオレ量Lm、及び、左右バイアス修正量Blm,Brm等(図6乃至図8参照)等が設定される。なお、以下の説明において、駆動歯車101の歯面に設定される歯面修正量等に対して必要に応じて添字’Dv’を付し、被動歯車102の歯面に設定される歯面修正量等に対して必要に応じて添字’Dn’を付す。
【0014】
評価装置1は、歯車対100等についての各種情報を入力する入力部5と、入力部5からの入力情報に基づいて歯車対100の評価(実分布荷重及び応力分布の演算等)を行う演算部6と、演算部6で実行される応力分布演算ルーチン等のプログラムを格納するとともに入力部5からの入力情報や演算部6での演算結果等を適宜記憶する記憶部7と、演算部6での演算結果等を出力する出力部8とを有して構成されている。
【0015】
なお、評価装置1は、例えば図2に示すコンピュータシステム10で実現される。このコンピュータシステム10は、例えば、コンピュータ本体11に、キーボード12と、表示手段としてのディスプレイ装置13と、プリンタ14とを有し、これらが接続ケーブル15を介して接続されて要部が構成されている。そして、このコンピュータシステム10において、例えば、コンピュータ本体11に配設された各種ドライブ装置やCPU,ROM、RAM等が演算部6として機能する。また、コンピュータ本体11に内臓されたハードディスク等が記憶部7として機能するとともに、ディスプレイ装置13やプリンタ14等が出力部8として機能する。
【0016】
ここで、評価装置1には、歯車対100の基本諸元及び設定歯面修正量の他、歯車対100を使用する際に想定される最大トルク(すなわち、歯車対100に作用することが想定される最大荷重)等の情報が入力部5を通じて入力される。そして、演算部6は、例えば、記憶部7に記憶された応力分布演算ルーチンのプログラムを実行し、上記各入力情報に基づく演算を行うことにより、相対歯面誤差演算手段、単位分布荷重演算手段、噛合剛性値演算手段、分担荷重演算手段、実分布荷重演算手段、及び、応力分布演算手段としての各機能を実現する。
【0017】
すなわち、演算部6は、例えば、歯車対100の互いに噛み合う歯対の歯面間の相対的な誤差である相対歯面誤差の分布情報を、基本諸元及び設計歯面修正量等に基づくシミュレーションによって演算する。なお、この相対歯面誤差は、例えば、本出願人による特開2005−193560号公報に開示されているように、実際の歯車対の各歯面に対して触針を走査させることによって各歯面の基準歯面に対する歯面誤差データを測定し、これら歯面誤差データに基づいて演算されるものであってもよい。
【0018】
また、演算部6は、例えば、歯車対100の互いに噛み合う歯対に対して単位荷重(1Nの荷重)を付与したと仮定して歯対の各インボリュート歯面形状に基づくシミュレーションを行うことにより、歯対に単位荷重を付与したときの各噛合進行位置Iにおける接触線(噛合接触線)C−C’上の分布荷重である単位分布荷重Pn(I,j)を演算するとともに、歯対の各噛合進行位置Iにおける噛合剛性値K(I)を演算する。ここで、jは、接触線C−C’上の座標を示す。なお、図4に示すように、はすば歯車対100の接触線C−C’は歯車軸に対してねじれているため、これらの噛合は、平歯車と異なり点接触から始まる。すなわち、はすば歯車対100の噛合は、S点から始まり、斜めの噛合接触線C−C’が長さを変えながら作用平面103上を平行に進行し、最後にE点で終わる。作用平面103とは、歯対の各歯面上の有効噛み合い領域を示すものであり、本実施形態において、作用平面103は、例えば、駆動歯車101の歯面(駆動歯面)を基準として定義されている。
【0019】
また、演算部6は、歯車対100に所定荷重(例えば,歯車対100を使用する際に想定される最大荷重)Psを付与したときの記歯対の各噛合進行位置Iにおける分担荷重f(I)を相対歯面誤差と噛合剛性値K(t)とに基づいて演算する。この分担荷重f(I)の演算において、演算部6は、先ず、歯車対100に所定荷重Psを付与した場合に、当該荷重Psが歯車対100の各噛合瞬間tにおいて同時に噛み合う各歯対それぞれに対して作用する荷重(分担荷重fq(q=1,2,…,Q)(t))を、相対歯面誤差と噛合剛性値K(t)とに基づいて演算する。ここで、歯車対100の噛合瞬間tとは、例えば、同時に噛み合う複数の歯対の各噛合進行位置を表すためのパラメータであり、各歯対の中から抽出した注目する歯対の噛合進行位置Iに対応付けて設定される。従って、噛合瞬間tにおいて、注目する歯対の噛合進行位置はIとなり、その前後の歯対の噛合進行位置はI±N(N=1ピッチ)となる。また、添字’q’は、噛合瞬間tに同時に噛み合う各歯対を識別するための番号であり、その最大値’Q’は、歯車対100の噛合状態(噛合瞬間t)に応じて異なる。例えば、噛合率3.5である場合、歯車対100は、その噛合の進行状態に応じて、3つの歯対の噛み合い(3歯噛み合い)と、4つの歯対の噛み合い(4歯噛み合い)とを繰り返すため、Qのとり得る値は、噛合瞬間tに応じて3又は4となる。そして、これらの関係から、演算部6は、各噛合瞬間の各歯対の分担荷重fq(t)に基づいて、歯対(1歯対)の各噛合進行位置Iでの分担荷重f(I)を求める。
【0020】
また、演算部6は、歯車対100に所定荷重Psを付与したときの歯対の各噛合進行位置Iにおける接触線C−C’上の分布荷重である実分布荷重P(I,j)を単位分布荷重Pn(I,j)と分担荷重f(I)とに基づいて演算する。
【0021】
さらに、演算部6は、歯車対100に所定荷重Psを付与した場合の応力分布H(I,j)を、実分布荷重P(I,j)に基づいて演算する。
【0022】
次に、演算部6で実行される歯車対100の応力分布の演算処理について、図3に示す応力分布演算ルーチンのフローチャートに従って詳細に説明する。
このルーチンがスタートすると、演算部6は、先ず、ステップS101において、オペレータ等により入力部5を通じて入力された歯車対100の基本諸元や設定歯面修正量等の各種情報を記憶部7から読み込む。
【0023】
続くステップS102において、演算部6は、歯車対100の基本諸元及び設定歯面修正量に基づくシミュレーションにより、歯対の歯面間の相対歯面誤差S(I,j)の分布情報を演算する。
この相対歯面誤差の演算では、先ず、歯車対100の各歯面(駆動歯車101及び被動歯車102の各歯面)の歯面誤差分布情報として、それぞれ3行×3列の歯面誤差分布情報が算出される。すなわち、図5に示すように、演算部6は、各基準歯面上における有効歯面の中心(D(1,1))と、有効歯面の四隅(D(0,0)、D(0,2)、D(2,0)、D(2,2))と、有効歯面を囲む各辺の中心(D(0,1)、D(1,0)、D(1,2)、D(2,1))に対し、それぞれ該当する各歯面修正量を付与することで、各基準歯面に対する3行×3列の歯面誤差分布情報を算出する。
【0024】
具体的には、駆動歯車101が右ネジレの場合、歯筋タオレ量は強ネジレ方向を正、バイアス修正量はバイアスインを正とすると、駆動歯車のドライブ側歯面における各点の歯面修正量は、
DDv(0,0)=TDv+CDv+LDv/2−BlDv/2
DDv(0,1)=TDv
DDv(0,2)=TDv+CDv−LDv/2+BrDv/2
DDv(1,0)=CDv+LDv/2
DDv(1,1)=0
DDv(1,2)=CDv−LDv/2
DDv(2,0)=RDv+CDv+LDv/2+BlDv/2
DDv(2,1)=RDv
DDv(2,2)=RDv+CDv−LDv/2
となる。一方、被動歯車102のドライブ側歯面における各点の歯面修正量は、
DDn(0,0)=TDn+CDn+LDn/2−BlDn/2
DDn(0,1)=TDn
DDn(0,2)=TDn+CDn−LDn/2+BrDn/2
DDn(1,0)=CDn+LDn/2
DDn(1,1)=0
DDn(1,2)=CDn−LDn/2
DDn(2,0)=RDn+CDn+LDn/2+BlDn/2
DDn(2,1)=RDn
DDn(2,2)=RDn+CDn−LDn/2
となる。なお、駆動歯車101が左ネジレの場合、上述の各点において、歯筋タオレ修正量、及び、バイアス修正量に係る加減算は逆となる。
【0025】
さらに、演算部6は、算出した各3行×3列の歯面誤差分布情報に対して、例えば、周知の多点スプライン補間法を用いた補間計算を行うことにより、各歯筋方向のサンプル間隔が例えば0.1mmとなる3行×lDv列、3行×lDn列の各歯面誤差分布情報を生成する。
【0026】
そして、演算部6は、駆動歯車101と被動歯車102の各ドライブ側歯面の有効噛合領域を算出し、駆動歯車101の歯面誤差分布情報(3行×lDv列の分布情報)及び被動歯車102の歯面誤差分布情報(3行×lDn列の分布情報)の中から、有効噛合領域内に存在する歯面誤差分布情報(3行×l’列の分布情報)をそれぞれ抽出する。
【0027】
次に、演算部6は、抽出した各歯面誤差分布情報に基づいて、駆動歯面と被動歯面との噛合時の相対的な歯面誤差である相対歯面誤差の分布情報を生成する。ここで、本実施形態において、演算部6は、例えば、駆動歯面を基準として、無負荷状態での相対歯面誤差分布情報を算出する。
【0028】
具体的に説明すると、3行×l’列の各歯面誤差分布情報において、駆動歯面側のm行n列目の歯面誤差データをDDv(m,n)、被動歯面側のm行n列目の歯面誤差データをDDn(m,n)とすると、歯面上の各点(m,n)での相対歯面誤差S(m,n)は、例えば(1)式に示す計算式を用いて算出される。
S(m,n)=DDv(m,n)+DDn(3−1−m,n)+Gosa(m,n)…(1)
ここで、Gosa(m,n)は、歯車対100の組付誤差及びデフレクションを歯面上に反映させた補正値である。
【0029】
例えば、抽出された各歯面誤差分布情報が3行×161列である場合、上述の(1)式に基づいて、
S(0,0)=DDv(0,0)+DDn(2,0)+Gosa(0,0),
S(0,1)=DDv(0,1)+DDn(2,1)+Gosa(0,1),・・・,
S(2,159)=DDv(2,159)+DDn(0、159)+Gosa(2,159),
S(2,160)=DDv(2,160)+DDn(0,160)+Gosa(2,160)
の各データからなる、3行×161列の相対歯面誤差S(m,n)のデータ群(相対歯面誤差分布情報)が算出される。
【0030】
さらに、演算部6は、相対歯面誤差分布情報に対し、多点スプライン補完法を用いて行補完及び列補完を行い、より詳細な相対歯面誤差分布情報(例えば、241行×241列の分布情報)を生成する。なお、演算部6は、この相対歯面誤差分布情報を、例えば、図9(a)に示すように、出力部8(例えば、ディスプレイ装置13)を通じて等高線表示することも可能である。
【0031】
続くステップS103において、演算部6は、歯対の各噛合進行位置Iにおける単位分布荷重Pn(I,j)を演算するとともに、歯対の各噛合進行位置Iにおける噛合剛性値K0(I)を演算する。
【0032】
これら単位分布荷重Pn(I,j)及び噛合剛性値K(I)は、例えば、各噛合進行位置Iにおいて、歯車対100の基本諸元に基づいて定められる各歯面のマクロ形状に基づいて以下の(2)〜(4)式に示す歯の曲げ撓みと歯面接触撓みの積分方程式を作成し、当該積分方程式を解くことにより得られる。
【0033】
具体的に説明すると、演算部6は、荷重Ps=1N(単位荷重)であると仮定して、(2)式〜(4)式をガウス処理を用いて解くことにより、噛合接触線C−C’上の単位分布荷重Pc(ξ)及び撓み量δIを算出する。そして、演算部6は、単位分布荷重Pc(ξ)を接触線C−C’上に設定された計算分割幅ΔBで除算して正規化することにより最終的な単位分布荷重Pn(I,j)を算出するとともに(Pn(I,j)=Pc(ξ)/ΔB)、撓み量δIの逆数である噛合剛性値K0(I)を算出する。
【0034】
δI=∫Kb(x,ξ)・Pc(ξ)dξ+Kc(x=ξ)・Pc(ξ)dξ…(2)
Ps=∫Pc(ξ)dξ…(3)
K(I)=Ps/δI…(4)
ここで、(2)式において、面接触撓みの影響関数であるKcには、鈴木ら(鈴木・梅沢、「片当りする歯車の歯面接触による近寄り」、日本機械学会論文集(C編)52巻481号(1986)、P2449 参照)によって提案されている自由端荷重分布の影響を考慮したローラ同士の理論式を使用することが可能である。
Kc[x=ξ,y=η=fuc(x)]
=25・(1−γ2)・∫(1−x4)1/4dx
/π・E・ΔB・(1−x4)1/4…(5)
(但し、積分範囲は0〜1)
また、歯の曲げ撓み影響関数であるKbは、狩野ら(狩野・斎木、「歯車用ラックの新しい曲げ撓み影響関数」、日本機械学会2002年度年次大会講演論文集(V)2314号、P27 参照)によって提案されている歯幅方向と歯丈方向の違った撓み特性を考慮した高精度な式を使用することが可能である。
Kb(x,y,ξ,η)
=U・G(η)・〔ν(r)/ν(η)〕
・[〔F(x)・F(ξ)〕/F(|x−ξ|)]1/2 …(6)
γ=η+[〔λ・(x−ξ)〕2+(y−η)2]1/2 …(7)
ここで、式(2)〜(7)中の変数等は以下の通りである。
(x,y):撓み観測点の座標値
(ξ,η):単位集中荷重点の座標値
Pc(ξ):噛合接触線上の荷重分布
E:ヤング率[2.068×1011N/m2]
γ:ポアソン比[0.3]
I:接触歯幅中央を0とするはすば歯車対の等価作用線(図4参照)上の座標値
U:原点集中荷重時の原点での撓みの絶対値
λ:撓み楕円状分布の同心円分布への座標変換係数
r:歯先を原点とする撓み同心円分布の半径
ν(r):等価同心円分布の撓み特性関数
G(η):歯丈方向の集中荷重点直下の撓み特性関数
F(ξ):歯幅方向の集中荷重点直下の撓み特性関数
なお、本実施形態においては、単位分布荷重Pn(I,j)及び噛合剛性値K0(I)を歯の曲げ撓みと歯面接触撓みの積分方程式を用いて演算する一例について説明したが、これら単位分布荷重Pn(I,j)及び噛合剛性値K0(I)は、個別に求められるものであってもよい。
【0035】
続くステップS104において、演算部6は、図12に示すはすば歯車対の解析モデルに基づいて以下の(8)〜(11)式に示すはすば歯車対の負荷噛合方程式(静的な負荷噛合方程式)を噛合瞬間t毎に作成し、この負荷噛合方程式を解くことにより、各噛合瞬間tにおいて同時に噛み合う各歯対の分担荷重fq(t)を演算する。
【数1】
【0036】
ここで、式(8)〜(11)中において、kq(t)は、噛合瞬間tにおいて同時に噛み合う各歯対の噛合剛性値であり、各噛合剛性値kq(t)は、上述のステップS103で求めた1歯対あたりの噛合剛性値K0(I)に基づいて求められる。具体的に説明すると、演算部6は、例えば、図10に示すように、1歯対あたりの噛合剛性値K0(I)の特性線を各歯対に対応付けて1ピッチずつずらして配置した検索マップを生成し、当該検索マップに基づいて、噛合瞬間tにおける各歯対噛合剛性値kq(t)を検索する。なお、図10に示す検索マップは、歯車対100の噛合率が3.5である場合の検索マップを示す。
【0037】
また、eq(t)は、各歯対の等価歯形誤差であり、各等価歯形誤差eq(t)は、歯対の相対歯面誤差S(m,n)と、歯車対の実質静撓みxs’とに基づいて演算される。具体的に説明すると、演算部6は、先ず、ステップS102で求めた相対歯面誤差S(m,n)を、歯対の噛合進行方向と接触線C−C’方向とを座標軸とする非直交座標系の相対歯面誤差S(I,j)に変換する。そして、例えば、図11(a)〜(c)に示すように、相対歯面誤差S(I,j)の分布情報から、噛合瞬間tにおける各歯対の接触線C−C’上の相対歯面誤差Sq=1(j)、…、Sq=Q(j)を抽出し、各接触線上の実際の接触範囲での各相対歯面誤差Sq(j)の平均値(すなわち、相対歯面誤差Sq(j)の曲線内において実質静撓みxs’以上となる領域の面積)を、等価歯形誤差eq(t)として算出する。また、tZは、はすば歯車対の1正面法線ピッチを通過する時間で噛み合い周期と呼ぶ。 この場合において、演算部6は、実質静撓みxs’の初期値として、例えば、誤差を考慮しない静撓み量xs0を、以下の式(12)、(13)に基づいて設定する。
【数2】
【0038】
そして、演算部6は、これら各歯対の噛合剛性値kq(t)及び等価歯形誤差eq(t)を代入した上述の(8)〜(11)式を解くことにより、各歯対に対する分担荷重fq(t)を算出すると共に、新たな実質静撓みxs’を算出する。
【0039】
そして、演算部6は、新たに算出した実質静撓みxs’が、前回の実質静撓みxs’(n-1)に対して、以下の(14)式の関係を満たすよう収束したか否かを調べる。
【0040】
|(xs’−xs’(n-1))/xs’ (n-1)|<10−6 …(14)
その結果、実質静撓みxs’(t)が収束していないと判定した場合、演算部6は、今回新たに算出したxs’を用いて等価歯形誤差eq(t)を再演算する。そして、再演算した等価歯形誤差eq(t)を代入した上述の(8)〜(11)式を解くことにより、各歯対に対する分担荷重fq(t)及び実質静撓みxs’を再び算出する。これらの処理は、例えば、3回を限度として、実質静撓みxs’が収束するまで繰り返し行われる。そして、演算部6は、実質静撓みxs’が収束したときの各歯対の分担荷重fq(t)を、最終的な分担荷重fq(t)として設定する。
【0041】
さらに、演算部6は、各噛合瞬間tにおいて演算した各歯対の分担荷重fq(t)から、各噛合進行位置Iにおける歯対の分担荷重f(I)を求める。なお、上述の(8)〜(11)式から同時に算出される各分担荷重fq(t)は、それぞれ1ピッチずれた噛合進行位置で噛み合う各歯対の分担荷重であるため、演算部6は、歯車対100に予め設定された1ピッチ分の噛合区間内において各噛合瞬間tの分担荷重fq(t)を演算するだけで、歯対の噛み合い開始から終了までの各噛合進行位置Iでの分担荷重f(I)を求めることができる。
【0042】
続くステップS105において、演算部6は、単位分布荷重Pn(I,j)と、分担荷重f(I)とを用い、歯車対100に所定荷重Psを付与したときの各噛合進行位置Iにおける接触線C−C’上の実分布荷重P(I)を、以下の(15)式に基づいて演算する。
【0043】
P(I,j)=Pn(I,j)×f(I) …(15)
なお、演算部6は、例えば、接触線C−C’毎に演算される全ての実分布荷重P(I,j)を、歯面全体に亘る実分布荷重の情報として、出力部8(例えば、ディスプレイ装置13)を通じて等高線表示することも可能である。
【0044】
続くステップS106において、演算部6は、実分布荷重P(I,j)を用い、以下の(16)、(17)式に示すヘルツの歯面接触応力計算式(接触線C−C’に対して垂直方向の応力分布(図13参照))に基づいて、歯車対100に所定荷重Psを付与したときの各噛合進行位置Iにおける応力分布H(I,j)を演算した後、ルーチンを抜ける。
【数3】
【0045】
ここで、(16)、(17)式において、Νはポアソン比である。また、ρDv(I,j)は駆動歯面上の点の曲率半径、ρDn(I,j)は被動歯面上の点の曲率半径であり、これらは、歯車対100の基本諸元に基づいて定められる。
【0046】
なお、例えば、図9(b)に示すように、演算部6は、接触線C−C’毎に演算される全ての応力分布H(I,j)を、歯面全体に亘る応力分布の情報として、出力部8(例えば、ディスプレイ装置13)を通じて等高線表示することも可能である。
【0047】
また、例えば、図14に示すように、演算部6は、得られた応力分布H(I,j)の情報を加工することにより、歯車対100の各噛合瞬間tにおいて同時に噛み合う各歯対の応力分布をそれぞれ表示することも可能である。
【0048】
また、演算部6は、例えば、図15(a)に示すように、1歯対における噛合進行位置Iと最大応力との関係を表示することも可能であり、さらに、図15(b)に示すように、歯車対100全体としての噛合瞬間tにおける最大応力との関係を表示することも可能である。
【0049】
このような実施形態によれば、歯車対100の互いに噛み合う歯対に単位荷重を付与したときの各噛合進行位置Iにおける接触線C−C’上の分布荷重である単位分布荷重Pn(I,j)と噛合剛性値K0(I)を歯対の各インボリュート歯面形状に基づいて演算するとともに、歯車対100に所定荷重Psを付与したときの歯対の各噛合進行位置Iにおける分担荷重f(I)を歯対の相対歯面誤差S(I,j)と噛合剛性値K0(I)に基づいて演算し、歯車対100に所定荷重Psを付与したときの歯対の各噛合進行位置Iにおける接触線C−C’上の分布荷重である実分布荷重P(I,j)を単位分布荷重Pn(I,j)と分担荷重f(I)とに基づいて演算することにより、実測することが困難な歯車対100の歯対に作用する荷重を、歯面全体に亘って詳細に演算することができる。
【0050】
その際、歯車対100の基本諸元に基づいて定められる各歯面のマクロ形状に基づいて歯の曲げ撓みと歯面接触撓みの積分方程式を設定し、歯対間に作用する荷重が単位荷重であると仮定して前記積分方程式を解くことにより、単位分布荷重Pn(I,j)及び噛合剛性値K0(I)を容易に求めることができる。
【0051】
この場合において、各歯面誤差(相対歯面誤差S(I,j))が考慮されていない歯面のマクロ形状に基づいて単位分布荷重Pn(I,j)を演算した場合であっても、相対歯面誤差S(I,j)は分担荷重f(I)の演算に反映されており、このような分担荷重f(I)を実分布荷重P(I,j)の演算に用いることにより、精度の高い実分布荷重P(I,j)を得ることができる。すなわち、単位分布荷重Pn(I,j)の演算を簡略化することにより、必要以上に複雑な演算を行うことなく、相対歯面誤差S(I,j)を好適に反映させた精度の高い実分布荷重P(I,j)を得ることができる。
【0052】
また、上述のように高精度に演算された実分布荷重P(I,j)に基づいて歯対の応力分布H(I,j)を演算することにより、精度の高い応力分布H(I,j)を得ることができる。
【0053】
そして、このように歯面全体に亘って詳細に求められた高精度な実分布荷重P(I,j)や応力分布H(I,j)を用いることにより、シミュレーションによって各種評価を精度よく行うことができる。例えば、上述の応力分布H(I,j)を用いることにより、ピッチングの発生の有無やピッチングの発生位置等について、実際に作成した歯車対100による耐久試験と同等の結果を得ることができる。
【0054】
さらに、実分布荷重P(I,j)や応力分布H(I,j)を、各種形態に加工して表示することにより(例えば、等高線表示等することにより)、ユーザにとって有意義な情報を可視化して提示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】歯車対の評価装置の概略構成図
【図2】歯車対の評価装置を実現するためのコンピュータの一例を示す概略図
【図3】応力分布演算ルーチンを示すフローチャート
【図4】はすば歯車対の作用平面を示す説明図
【図5】歯面上に設定された修正量入力点を示す説明図
【図6】歯先修正量及び歯元修正量の説明図
【図7】(a)はクラウニング修正量の説明図、(b)は歯筋タオレ修正量の説明図
【図8】バイアス修正量の説明図
【図9】(a)は等高線表示された相対歯面誤差分布の一例を示す説明図、(b)は等高線表示された応力分布の一例を示す説明図
【図10】各噛み合い瞬間における各歯対の噛み合い剛性値の推移を示す説明図
【図11】接触線上での相対歯面誤差と等価歯形誤差を示す説明図
【図12】はすば歯車対の解析モデルを示す説明図
【図13】接触線に対する垂直方向の応力分布を示す説明図
【図14】各噛み合い瞬間における各歯対の応力分布を示す説明図
【図15】歯面応力最大値の推移を示す説明図
【符号の説明】
【0056】
1 … 評価装置
5 … 入力部
6 … 演算部(相対歯面誤差演算手段、単位分布荷重演算手段、噛合剛性値演算手段、分担荷重演算手段、実分布荷重演算手段、応力分布演算手段)
7 … 記憶部
8 … 出力部(表示手段)
100 … 歯車対
101 … 駆動歯車
102 … 被動歯車
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯車対の互いに噛み合う歯対の歯面間の相対的な誤差である相対歯面誤差の分布情報を演算する相対歯面誤差演算手段と、
前記歯対に単位荷重を付与したときの当該歯対の各噛合進行位置における接触線上の分布荷重である単位分布荷重を前記歯対の各インボリュート歯面形状に基づいて演算する単位分布荷重演算手段と、
前記歯対の前記各噛合進行位置における噛合剛性値を前記歯対の各インボリュート歯面形状に基づいて演算する噛合剛性値演算手段と、
前記歯車対に所定荷重を付与したときの前記歯対の各噛合進行位置における分担荷重を前記相対歯面誤差と前記噛合剛性値とに基づいて演算する分担荷重演算手段と、
前記歯車対に所定荷重を付与したときの前記歯対の各噛合進行位置における接触線上の分布荷重である実分布荷重を前記単位分布荷重と前記分担荷重とに基づいて演算する実分布荷重演算手段と、を備えたことを特徴とする歯車対の評価装置。
【請求項2】
前記単位分布荷重及び前記噛合剛性値は、前記歯車対の基本諸元に基づいて定められる各歯面のマクロ形状に基づいて歯の曲げ撓みと歯面接触撓みの積分方程式を設定し、当該積分方程式を解くことにより求められることを特徴とする請求項1記載の歯車対の評価装置。
【請求項3】
前記歯車対に前記所定荷重を付与したときの前記歯対の各噛合進行位置における応力分布を前記実分布荷重に基づいて演算する応力分布演算手段とを備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の歯車対の評価装置。
【請求項4】
前記実分布荷重及び前記応力分布を等高線表示する表示手段を備えたことを特徴とする請求項3記載の歯車対の評価装置。
【請求項5】
歯車対の互いに噛み合う歯対の歯面間の相対的な誤差である相対歯面誤差の分布情報を演算する相対歯面誤差演算ステップと、
前記歯対に単位荷重を付与したときの当該歯対の各噛合進行位置における接触線上の分布荷重である単位分布荷重を前記歯対の各インボリュート歯面形状に基づいて演算する単位分布荷重演算ステップと、
前記歯対の前記各噛合進行位置における噛合剛性値を前記歯対の各インボリュート歯面形状に基づいて演算する噛合剛性値演算ステップと、
前記歯車対に所定荷重を付与したときの前記歯対の各噛合進行位置における分担荷重を前記相対歯面誤差と前記噛合剛性値とに基づいて演算する分担荷重演算ステップと、
前記歯車対に所定荷重を付与したときの前記歯対の各噛合進行位置における接触線上の分布荷重である実分布荷重を前記単位分布荷重と前記分担荷重とに基づいて演算する実分布荷重演算ステップと、を備えたことを特徴とする歯車対の評価装置。
【請求項6】
歯車対の互いに噛み合う歯対の歯面間の相対的な誤差である相対歯面誤差の分布情報を演算する相対歯面誤差演算工程と、
前記歯対に単位荷重を付与したときの当該歯対の各噛合進行位置における接触線上の分布荷重である単位分布荷重を前記歯対の各インボリュート歯面形状に基づいて演算する単位分布荷重演算工程と、
前記歯対の前記各噛合進行位置における噛合剛性値を前記歯対の各インボリュート歯面形状に基づいて演算する噛合剛性値演算工程と、
前記歯車対に所定荷重を付与したときの前記歯対の各噛合進行位置における分担荷重を前記相対歯面誤差と前記噛合剛性値とに基づいて演算する分担荷重演算工程と、
前記歯車対に所定荷重を付与したときの前記歯対の各噛合進行位置における接触線上の分布荷重である実分布荷重を前記単位分布荷重と前記分担荷重とに基づいて演算する実分布荷重演算工程と、を備えたことを特徴とする歯車対の評価装置。
【請求項1】
歯車対の互いに噛み合う歯対の歯面間の相対的な誤差である相対歯面誤差の分布情報を演算する相対歯面誤差演算手段と、
前記歯対に単位荷重を付与したときの当該歯対の各噛合進行位置における接触線上の分布荷重である単位分布荷重を前記歯対の各インボリュート歯面形状に基づいて演算する単位分布荷重演算手段と、
前記歯対の前記各噛合進行位置における噛合剛性値を前記歯対の各インボリュート歯面形状に基づいて演算する噛合剛性値演算手段と、
前記歯車対に所定荷重を付与したときの前記歯対の各噛合進行位置における分担荷重を前記相対歯面誤差と前記噛合剛性値とに基づいて演算する分担荷重演算手段と、
前記歯車対に所定荷重を付与したときの前記歯対の各噛合進行位置における接触線上の分布荷重である実分布荷重を前記単位分布荷重と前記分担荷重とに基づいて演算する実分布荷重演算手段と、を備えたことを特徴とする歯車対の評価装置。
【請求項2】
前記単位分布荷重及び前記噛合剛性値は、前記歯車対の基本諸元に基づいて定められる各歯面のマクロ形状に基づいて歯の曲げ撓みと歯面接触撓みの積分方程式を設定し、当該積分方程式を解くことにより求められることを特徴とする請求項1記載の歯車対の評価装置。
【請求項3】
前記歯車対に前記所定荷重を付与したときの前記歯対の各噛合進行位置における応力分布を前記実分布荷重に基づいて演算する応力分布演算手段とを備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の歯車対の評価装置。
【請求項4】
前記実分布荷重及び前記応力分布を等高線表示する表示手段を備えたことを特徴とする請求項3記載の歯車対の評価装置。
【請求項5】
歯車対の互いに噛み合う歯対の歯面間の相対的な誤差である相対歯面誤差の分布情報を演算する相対歯面誤差演算ステップと、
前記歯対に単位荷重を付与したときの当該歯対の各噛合進行位置における接触線上の分布荷重である単位分布荷重を前記歯対の各インボリュート歯面形状に基づいて演算する単位分布荷重演算ステップと、
前記歯対の前記各噛合進行位置における噛合剛性値を前記歯対の各インボリュート歯面形状に基づいて演算する噛合剛性値演算ステップと、
前記歯車対に所定荷重を付与したときの前記歯対の各噛合進行位置における分担荷重を前記相対歯面誤差と前記噛合剛性値とに基づいて演算する分担荷重演算ステップと、
前記歯車対に所定荷重を付与したときの前記歯対の各噛合進行位置における接触線上の分布荷重である実分布荷重を前記単位分布荷重と前記分担荷重とに基づいて演算する実分布荷重演算ステップと、を備えたことを特徴とする歯車対の評価装置。
【請求項6】
歯車対の互いに噛み合う歯対の歯面間の相対的な誤差である相対歯面誤差の分布情報を演算する相対歯面誤差演算工程と、
前記歯対に単位荷重を付与したときの当該歯対の各噛合進行位置における接触線上の分布荷重である単位分布荷重を前記歯対の各インボリュート歯面形状に基づいて演算する単位分布荷重演算工程と、
前記歯対の前記各噛合進行位置における噛合剛性値を前記歯対の各インボリュート歯面形状に基づいて演算する噛合剛性値演算工程と、
前記歯車対に所定荷重を付与したときの前記歯対の各噛合進行位置における分担荷重を前記相対歯面誤差と前記噛合剛性値とに基づいて演算する分担荷重演算工程と、
前記歯車対に所定荷重を付与したときの前記歯対の各噛合進行位置における接触線上の分布荷重である実分布荷重を前記単位分布荷重と前記分担荷重とに基づいて演算する実分布荷重演算工程と、を備えたことを特徴とする歯車対の評価装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図9】
【図2】
【図3】
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【図15】
【図9】
【公開番号】特開2008−175694(P2008−175694A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−9481(P2007−9481)
【出願日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】
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