説明

歯車振動計算方法、プログラムおよび記録媒体

【課題】歯車の振動を計算する技術において、歯車のかみ合い起振力と、歯車を有する回転体とその回転体を支持する支持体とを含む振動伝達系の振動とを高精度で予測する。
【解決手段】複数個の歯車とそれらを支持するケースとを備えた自動車用マニュアルトランスミッションにつき、互いにかみ合う2個の歯車の歯面間において,それら歯車の両基礎円の共通接線に沿って作用する接線荷重Fq*を、(a)それら歯車が互いにかみ合う歯間の相対変位に応答して、それら歯車が互いにかみ合うかみ合い歯面間に作用する応答変位荷重Fq*sと、(b)それら歯車の歯面同士がかみ合い中に互いに接触するかみ合い接触点の歯車半径方向変動に応答して、それら歯車のかみ合い歯面間に作用する動荷重Fq*dとの合成値として計算する。その計算された接線荷重に基づき、それら歯車を起振源とする振動に対するケースの応答を計算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯車の振動を計算する技術に関し、特に、歯車を有する回転体とその回転体を支持する支持体とを含む振動伝達系の振動を計算する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用トランスミッションを始めとし、各種機械において、異軸間におけるトルク伝達を行うために歯車が使用される。歯車は、トルク伝達を効率よく行うことが容易である要素である反面、振動および騒音の発生源になり易い要素でもある。特に近年、機械の静粛性が強く要望されるようになり、それに伴い、歯車を用いた機械においては、ギヤノイズの低減が強く要望されるようになった。
【0003】
例えば、自動車においては、動力源であるエンジン(内燃機関)が、振動および騒音の主たる発生源であるが、そのエンジンのノイズを低減する技術が進歩した結果、歯車を用いたトランスミッションのノイズが相対的に顕著に認識されるようになってきた。そのため、歯車を用いたトランスミッションを低騒音化する技術および設計手法が従来より強く要望されるようになった。
【0004】
そのような事情を背景とし、特許文献1には、歯車の歯面形状に着目してギヤノイズを解析する技術が開示されている。また、特許文献2には、歯車自体の運動のみならず、その歯車を回転可能に支持する軸受に作用する荷重にも着目してギヤノイズを解析する技術が開示されている。
【特許文献1】特開平5−157663号公報
【特許文献2】特開平9−53702号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、歯車を用いた機械の振動および騒音を低減する技術について研究を重ねた。その結果、例えば、歯車を有する回転体が軸受を介して支持体に支持されるように構成される機械においては、歯車のかみ合い起振力が軸受を介して支持体を加振することにより、ギヤノイズが発生することから、ギヤノイズが低減された機械を設計するためには、歯車のかみ合い起振力の低減のみならず、支持体の振動特性の改善も重要であることに気が付いた。
【0006】
したがって、この種の機械においてギヤノイズを低減するには、歯車のかみ合い起振力を高精度で予測するとともに、歯車を有する回転体とその回転体を支持する支持体とを含む振動伝達系の振動を高精度で予測することが必要である。
【0007】
以上説明した事情を背景とし、本発明は、歯車の振動を計算する技術において、歯車のかみ合い起振力を高精度で予測するとともに、歯車を有する回転体とその回転体を支持する支持体とを含む振動伝達系の振動を高精度で予測することを課題としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によって下記の各態様が得られる。各態様は、項に区分し、各項には番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、本発明が採用し得る技術的特徴の一部およびそれの組合せの理解を容易にするためであり、本発明が採用し得る技術的特徴およびそれの組合せが以下の態様に限定されると解釈すべきではない。すなわち、下記の態様には記載されていないが本明細書には記載されている技術的特徴を本発明の技術的特徴として適宜抽出して採用することは妨げられないと解釈すべきなのである。
【0009】
さらに、各項を他の項の番号を引用する形式で記載することが必ずしも、各項に記載の技術的特徴を他の項に記載の技術的特徴から分離させて独立させることを妨げることを意味するわけではなく、各項に記載の技術的特徴をその性質に応じて適宜独立させることが可能であると解釈すべきである。
【0010】
(1) 互いにかみ合って回転する少なくとも2個の回転体が支持体によって回転可能に支持されて成る歯車装置であって、それら少なくとも2個の回転体は、2本の回転軸と、それら2本の回転軸とそれぞれ同軸的に一緒に回転する2個の歯車であって歯面同士において互いにかみ合わされて成る歯車対を成すものとを有するように構成されたものの振動を計算する歯車振動計算方法であって、
前記2個の歯車の歯面間において,それら2個の歯車の両基礎円の共通接線に沿って作用する接線荷重の時間変動を、(a)それら2個の歯車が互いにかみ合う歯間の相対変位に応答して、それら2個の歯車が互いにかみ合うかみ合い歯面間に作用する応答変位荷重の時間変動と、(b)それら2個の歯車の歯面同士がかみ合い中に互いに接触するかみ合い接触点の基礎円半径誤差に応答して、それら2個の歯車のかみ合い歯面間に作用する動荷重の時間変動との合成値として計算する接線荷重計算工程と、
その計算された接線荷重時間変動に基づき、前記歯車対を起振源とする振動に対する、前記回転体と前記支持体との少なくとも一方の応答を計算する振動応答計算工程と
を含む歯車振動計算方法。
【0011】
この方法によれば、互いにかみ合って回転する少なくとも2個の回転体が支持体によって回転可能に支持されて成る歯車装置の振動を計算することが可能となる。
【0012】
この方法においては、その歯車装置の振動を計算するために、互いにかみ合う2個の歯車がかみ合い歯面を介して互いに作用し合う歯面力が、それら2個の歯車の両基礎円の共通接線に沿って作用する接線荷重として計算される。さらに、その接線荷重は、それら2個の歯車が互いにかみ合う歯間の相対変位に応答して、それら2個の歯車が互いにかみ合うかみ合い歯面間に作用する応答変位荷重と、それら2個の歯車の歯面同士がかみ合い中に互いに接触するかみ合い接触点の基礎円半径誤差に応答して、それら2個の歯車のかみ合い歯面間に作用する動荷重との双方を考慮して計算される。さらに、その計算された接線荷重に基づき、それら2個の歯車を起振源とする振動に対する、回転体と支持体との少なくとも一方の応答が計算される。
【0013】
したがって、この方法によれば、互いにかみ合う2個の歯車が互いに及ぼし合う歯面力を高精度で予測することが容易となり、その結果、それら2個の歯車を起振源とする振動に対する、回転体と支持体との少なくとも一方の応答を高精度で計算することも容易となる。
【0014】
(2) さらに、前記計算された接線荷重時間変動に基づき、前記各歯車の回転軸に沿って作用する軸荷重の時間変動を計算する軸荷重計算工程を含み、かつ、前記振動応答計算工程は、その計算された軸荷重時間変動と、前記計算された接線荷重時間変動とに基づき、前記応答を計算する(1)項に記載の歯車振動計算方法。
【0015】
この方法によれば、各歯車がはすば歯車であるために、歯車のかみ合い回転中、歯のねじれ角が存在することによって各歯車にそれの軸方向に発生する軸荷重を計算することが可能となる。さらに、その計算された軸荷重を、前記計算された接線荷重と共に考慮することにより、回転体と支持体とのうちの少なくとも一方の振動応答を高精度で計算することが可能となる。
【0016】
(3) 前記接線荷重計算工程は、前記各歯車の応答変位荷重時間変動を、前記2個の歯車間における相対角変位の時間変動とそれら2個の歯車の結合剛性との積を前記各歯車の基礎円半径で割り算した値を用いて計算する応答変位荷重計算工程を含む(1)または(2)項に記載の歯車振動計算方法。
【0017】
(4) 前記接線荷重計算工程は、前記各歯車の応答変位荷重時間変動を、前記2個の歯車間における相対角変位の時間変動とそれら2個の歯車の結合剛性との積と、それら2個の歯車間における相対角速度の時間変動とそれら2個の歯車の結合減衰との積との和を前記各歯車の基礎円半径で割り算した値を用いて計算する応答変位荷重計算工程を含む(1)または(2)項に記載の歯車振動計算方法。
【0018】
(5) 前記接線荷重計算工程は、前記2個の歯車のかみ合いによって発生する動荷重時間変動を、前記各歯車の動荷重の振幅と、予め選択された周期関数とを用いて計算する動荷重時間変動計算工程を含む(1)ないし(4)項のいずれかに記載の歯車振動計算方法。
【0019】
(6) 前記動荷重時間変動計算工程は、前記2個の歯車のかみ合いの進行につれて、各歯車のかみ合い伝達誤差曲線に基づき、その各歯車の動荷重の振幅を計算する動荷重振幅計算工程を含む(5)項に記載の歯車振動計算方法。
【0020】
(7) 前記動荷重時間変動計算工程は、前記各歯車の回転速度と、その各歯車の歯面に加えられる負荷とに基づき、その各歯車の動荷重の振幅を計算する動荷重振幅計算工程を含む(5)項に記載の歯車振動計算方法。
【0021】
(8) 前記動荷重時間変動計算工程は、前記各歯車の回転速度と、その各歯車の歯数とに基づき、前記周期関数を定義する周期関数定義工程を含む(5)ないし(7)項のいずれかに記載の歯車振動計算方法。
【0022】
(9) 前記振動応答計算工程は、前記歯車装置を近似的に表現する有限要素モデルを用いて前記応答を計算し、
前記接線荷重計算工程は、その有限要素モデルとは無関係に前記接線荷重を計算し、
前記振動応答計算工程は、その計算された接線荷重に基づき、前記有限要素モデルのうち前記各歯車を表現する歯車モデルに入力される外部負荷を計算する負荷計算工程を含む(1)ないし(8)項のいずれかに記載の歯車振動計算方法。
【0023】
この方法によれば、接線荷重を計算する際に、その接線荷重と、振動応答計算のための有限要素モデルとの関係を考慮せずに済むため、その関係を考慮しなければならない場合より簡単に接線荷重を計算することが可能となる。
【0024】
(10) 前記振動応答計算工程は、前記歯車装置を近似的に表現する有限要素モデルを用いて前記応答を計算し、
前記接線荷重計算工程は、前記回転体および前記支持体間の相互作用を考慮して前記接線荷重を計算し、
前記振動応答計算工程は、その計算された接線荷重に基づき、前記有限要素モデルのうち前記各歯車を表現する歯車モデルに入力される外部負荷を計算する負荷計算工程を含む(1)ないし(8)項のいずれかに記載の歯車振動計算方法。
【0025】
この方法によれば、接線荷重を、回転体および支持体間の相互作用を考慮せずに計算する場合より高精度に計算することが可能となる。
【0026】
(11) 前記有限要素モデルは、複数個の有限要素と複数個の節点とを含むように定義され、
前記負荷計算工程は、それら複数個の節点のうち予め選択された少なくとも1個の選択節点に関して前記外部負荷を計算する(9)または(10)項に記載の歯車振動計算方法。
【0027】
(12) 前記歯車モデルは、それによって表現される現実歯車への前記外部負荷の入力にもかかわらず、その現実歯車の軸直角平面に直角な方向の反りがその現実歯車に発生しないことを表現する剛体モデルであり、
前記少なくとも1個の選択節点は、前記複数個の節点のうち前記剛体モデル上において等間隔に配置された複数個の代表節点を含み、
前記負荷計算工程は、前記外部負荷を、それら複数個の代表節点にそれぞれ関連付けて計算する(11)項に記載の歯車振動計算方法。
【0028】
この方法によれば、歯車モデルを剛体モデルとして構築することと、外部負荷を複数個の代表節点に配分することとの共同により、回転体と支持体との少なくとも一方の振動応答の計算を簡単化することが可能となる。
【0029】
この方法においては、外部負荷が複数個の代表節点にそれぞれ均等に配分されるか、または、一定の分布パターンに従って配分されるように、外部負荷を計算することが可能である。
【0030】
(13) 前記負荷計算工程は、前記外部負荷を、前記複数個の代表節点にそれぞれ均等に配分されるように計算する(12)項に記載の歯車振動計算方法。
【0031】
この方法によれば、外部負荷が複数個の代表節点にそれぞれ均等に配分されるように外部負荷を計算すれば足りるため、一定の分布パターンに従って配分されるように外部負荷を計算しなければならない場合より、外部負荷の計算を簡単化することが容易となる。
【0032】
(14) (1)ないし(13)項のいずれかに記載の歯車振動計算方法を実施するためにコンピュータによって実行されるプログラム。
【0033】
このプログラムがコンピュータにより実行されれば、前記(1)ないし(13)項のいずれかに係る方法におけると基本的に同じ原理に従い、同様な効果が実現され得る。
【0034】
本項に係るプログラムは、それの機能を果たすためにコンピュータにより実行される指令の組合せのみならず、各指令に従って処理されるファイルやデータをも含むように解釈することが可能である。
【0035】
また、このプログラムは、それ単独でコンピュータにより実行されることにより、所期の目的を達するものとしたり、他のプログラムと共にコンピュータにより実行されることにより、所期の目的を達するものとすることができる。後者の場合、本項に係るプログラムは、データを主体とするものとすることができる。
【0036】
(15) (14)項に記載のプログラムをコンピュータ読取り可能に記録した記録媒体。
【0037】
この記録媒体に記録されているプログラムがコンピュータにより実行されれば、前記(1)ないし(13)項のいずれかに係る方法と同じ作用効果が実現され得る。
【0038】
この記録媒体は種々な形式を採用可能であり、例えば、フレキシブル・ディスク等の磁気記録媒体、CD、CD−ROM等の光記録媒体、MO等の光磁気記録媒体、ROM等のアンリムーバブル・ストレージ等のいずれかを採用し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、本発明のさらに具体的な実施の形態の一つを図面に基づいて詳細に説明する。
【0040】
図1には、本発明の一実施形態に従うギヤノイズ予測方法を実施するのに好適なギヤノイズCAE(Computer Aided Engineering)システム10のハードウエア構成がブロック図で概念的に表されている。このギヤノイズCAEシステム10は、プロセッサ20とメモリ22とを有するコンピュータ24を主体として構成されている。本実施形態においては、そのギヤノイズ予測方法が、前記(1)項における「歯車振動計算方法」の一例である。
【0041】
このコンピュータ24には、キーボード、マウス等、入力装置30が接続され、これにより、コンピュータ24へのデータおよび指令の入力が可能になっている。このコンピュータ24には、さらに、モニタ(例えば、ディスプレイ)、プリンタ、プロッタ等、出力装置40も接続され、これにより、このコンピュータ24上のメッセージおよび情報(例えば、コンピュータ24へのデータ入力を支援するデータ入力フォーム、コンピュータ24による計算結果)が可視化されてユーザに提示される。
【0042】
図1に示すように、このコンピュータ24には、さらに、外部記憶装置50も接続されている。外部記憶装置50は、例えば、CD−ROM等、記録媒体52が着脱可能に装着されて使用される。記録媒体52には、例えば、前記ギヤノイズ予測方法を実施するためにコンピュータ24によって実行されるべきギヤノイズ予測プログラムを始めとする各種プログラムや各種データ(例えば、FEMモデルを定義するためのデータを含む。)が記録される。それらプログラムやデータは必要に応じて記録媒体52からコンピュータ24に読み込まれて処理される。
【0043】
前記ギヤノイズ予測方法は、自動車のマニュアルトランスミッション(以下、「M/T」ともいう。)に実働状態で発生する振動を予測するために実行される。
【0044】
図2ないし図4には、M/T60が、前輪駆動(FF)式の自動車に搭載される形式である場合を例にとり、示されている。具体的には、図2には、M/T60の外観が斜視図で示され、図3には、M/T60内に収容されたギヤトレインが斜視図で示されている。図4には、M/T60のうちの複数個の機構的要素が簡略化されて平面図で表されている。
【0045】
図3に示すように、M/T60においては、複数個の歯車62,64,66,68,70,72,74,76,78,80,82,84と共に回転する複数本の回転軸90,92,94が、歯面同士において互いにかみ合わされた状態で、図2に示すケース96内に収容されている。
【0046】
図3に示すように、歯車62,64,66,68および70はそれぞれ、1stギヤ,2ndギヤ、3rdギヤ、4thギヤおよび5thギヤであり、歯車74,76,78,80および82はそれぞれ、それら歯車62,64,66,68および70とそれぞれかみ合わされるギヤである。歯車84は、ファイナルギヤであり、歯車72は、その歯車84とかみ合わされるギヤである。
【0047】
回転軸90,92,94は、例えば、M/T60が搭載されるべき自動車の動力源(例えば、エンジン、電動モータ)によって回転させられるインプットシャフト90と、そのインプットシャフト90の回転(トルク)が、図3に示す複数の歯車対のうち、図示しないシンクロメッシュによって選択されたものを介して伝達されて回転させられるアウトプットシャフト92と、自動車の車輪に連結される一対のドライブシャフト94,94(図4参照)とを少なくとも含むように構成される。
【0048】
図3および図4において符号98は差動ギヤを示している。この差動ギヤ98は、歯車84に連結された一対のドライブシャフト94,94の間に設置されてそれらの回転数差を制御する。
【0049】
図2に示すように、ケース96は、それの取付部102において、ボルト等、結合具を用いて、M/T60が搭載されるべき自動車の動力源のハウジング(例えば,内燃機関としてのエンジンのシリンダブロック)に剛体的に結合(固定)される。ケース96は、さらに、それのマウント点PMにおいて、ゴム等、弾性体を介して、車体に弾性的に連結される。そのマウント点PMは、M/T60の振動を測定する振動測定点に選定されている。
【0050】
図3に示すように、M/T60においては、歯車62,64,66,68および70と回転軸(インプットシャフト)90とによって回転体104が形成されている。さらに、歯車72,74,76,78,80および82と回転軸(アウトプットシャフト)92とによって回転体106が形成されている。さらに、歯車84と回転軸(ドライブシャフト)94とによって回転体108が形成されている。
【0051】
すなわち、本実施形態においては、M/T60が前記(1)項における「歯車装置」の一例であり、3個の回転体104,106,108がそれぞれ、同項における「回転体」の一例であり、ケース96が同項における「支持体」の一例なのである。
【0052】
図4には、M/T60の構成が、それのベンチテストが行われる状況が想定されて示されており、そのため、図4において「駆動側モータ」は、実機においては「動力源」に相当し、「吸収側モータ」は、実機においては「車輪」に相当する。また、図4には、M/T60の構成が、インプットシャフト90からアウトプットシャフト92への回転伝達(トルク伝達)が、歯車66(3rdギヤ)と歯車78とから成る歯車対を介して行われ、アウトプットシャフト92からドライブシャフト94への回転伝達(トルク伝達)が、歯車72と歯車84(ファイナルギヤ)とから成る歯車対を介して行われる状態に特に着目されて示されている。
【0053】
図4に示すように、各回転軸90,92,94は、適数個の軸受100を介してケース96に支持されており、ケース96は、各軸受100を保持している。M/T60においては、3個の回転体104,106,108とケース96より成る振動伝達系110が構成されている。
【0054】
図4には、M/T60の構成が、各歯車62等がはすば歯車である場合を例にとり、示されている。そのため、インプットシャフト90からアウトプットシャフト92へのトルク伝達に関与する歯車対66,78のかみ合い部と、アウトプットシャフト92からドライブシャフト94へのトルク伝達に関与する歯車対72,84のかみ合い部とにはそれぞれ、荷重F1,F2が、各歯車62等のねじれ角ψの存在により、軸直角方向に対して傾斜した方向に発生する。各荷重F1,F2には、入力トルクによる荷重の他に、歯のかみ合いによる動荷重が含まれる。この動荷重は、歯面の修整や歯の撓みおよび製造誤差によって発生する。
【0055】
さらに、図4には、回転体104の回転慣性モーメントが「M1」、回転体106の回転慣性モーメントが「M2」でそれぞれ表記されている。さらに、歯車対66,78の結合剛性が「K1」、歯車対72,84の結合剛性が「K2」でそれぞれ表記されている。各結合剛性K*は、例えば、互いにかみ合う2個の現実の弾性回転体が、互いにかみ合う2個の仮想の剛体回転体であって回転ばねによって互いに連結されたものに等価的に置換された場合に、その回転ばねの剛性に相当する。
【0056】
歯のかみ合いによる動荷重は、歯車のかみ合い起振力(以下、「ギヤ起振力」という。)として作用して、軸受100を介してケース96を加振し、その結果、M/T60にギヤノイズが発生する。したがって、ギヤノイズを低減させるためには、ギヤ起振力の低減と、ケース96の振動特性(特に、振動応答特性)の改善とが重要である。よって、M/T60の設計者および解析者にとっては、ギヤ起振力を高精度で予測することと、ケース96の振動応答を高精度で計算することとが要望される。
【0057】
ところで、本発明者らのうちの一人である本多捷は、歯車振動を精度よく解析できる手法を見つけるべく研究を行い、その結果、かみ合う歯車対が回転する際に各歯面に作用する荷重の変動である動荷重を考慮して歯車振動を解析することが有効であることに気が付いた。さらに、同発明者は、その動荷重は、各歯車の理想基礎円半径と、各歯車の回転慣性モーメントと、ギヤ比と、伝達トルクと、歯形形状誤差を注目歯車の回転角で微分して取得される基礎円半径誤差と、その基礎円半径誤差を注目歯車の回転角で微分して取得される基礎円半径誤差微分と、注目歯車の回転角速度とを用いて算出できるという新解析理論を提唱した。この新解析理論の内容は、特開平5−157663号公報に開示されている。
【0058】
本実施形態においては、この新解析理論により、ギヤ起振力が高精度で予測される。この新解析理論においては、動荷重は、2個の歯車の歯面同士がかみ合い中に互いに接触するかみ合い接触点の歯車半径方向変動に応答して、それら2個の歯車のかみ合い歯面間に作用する荷重を意味する。
【0059】
前記ギヤノイズ予測方法は、M/T60の軽量・低騒音化という要求に適合するように、M/T60の構造を設計することを支援するツールとして開発されたものである。より具体的には、このギヤノイズ予測方法は、ギヤ起振力を考慮して、振動伝達系110に発生するギヤノイズを、軸受100に作用する軸受荷重の時間変動およびマウント点PMの上下方向の振動加速度の時間変動として予測するために実行される。
【0060】
図5には、ギヤノイズCAEシステム10を用いて設計者および解析者によって実行される一連の作業が工程図で概念的に表されている。
【0061】
その一連の作業においては、まず、ステップAにおいて、歯車諸元値(例えば、圧力角、ねじれ角、ギヤ比、歯数、基礎円半径、回転数、回転慣性モーメント等)が設計変数として入力されたうえで、歯面計算が行われる。この歯面計算により、各歯車の理想歯面(機構学的に定義された歯面)の形状が計算される。すなわち、修整歯面誤差が存在しない歯面が計算によって取得されるのである。
【0062】
ところで、本発明者らのうちの一人である本多捷は、新歯形理論を提唱しており、その内容は、特開平9−53702号公報に開示されている。
【0063】
簡単に説明すれば、この新歯形理論によれば、各歯車に対して、歯車対の2軸とそれら2軸の共通垂線とをそれぞれ基準にして固定的に想定された静止座標系と、各歯車に対して想定された各歯車と共に回転する回転座標系との他に、その静止座標系をそれの一座標軸が歯車対の作用面に平行になるように回転変換した別の座標系であって、回転座標系との間に一定の相対位置関係が成立するものが設けられ、その別の座標系が媒介座標系として用いられる。
【0064】
この新歯形理論によれば、従来の歯形論におけるように、各歯車の歯形曲線をピッチ回転体を媒介させることなく、直接にもとの静止座標系において回転角の関数として記述することも、直接に回転座標系において回転角の関数として記述することも可能となる。さらに、この新歯形理論によれば、歯車の歯面形状が直接、各基本座標系上において記述されるため、円筒歯車からハイポイドギヤまでのすべての種類の歯車対の接触の問題を、静止空間に定義された統一概念(例えば、作用平面、歯直角平面、圧力角、ねじれ角等)を用い、共通の比較的簡単な式により、統一的に記述することが可能となる。さらに、この新歯形理論によれば、歯車の歯面形状を、歯面の誤差や撓みによって歯車対の角速度比が変化する場合でも、正確に記述することが可能となる。
【0065】
さらに、この新歯形理論によれば、歯車対自体の運動のみならず、その歯車対を回転可能に支持する軸受に作用する荷重をも考慮されることにより、歯車運動系全体について荷重変動が正確に記述される。さらに、この新歯形理論によれば、その軸受荷重の変動が実質的に0になるように歯車の接触点軌跡(互いにかみ合う歯面対の接触点がかみ合い進行につれて描く軌跡)と共通法線傾き角(互いにかみ合う歯面対に対する各接触点における法線)とを設定することにより、歯車対を低騒音化することが可能となる。
【0066】
次に、ステップBにおいて、各歯車の歯面修整誤差(クラウニング、エンドリリーフ等、歯形修整を受けた修整歯面の、機構学的に定義された理想歯面からの変化量)が設計変数として入力されたうえで、修整歯車のかみ合いを原因として歯車から発生するギヤ起振力が計算される。ギヤ起振力の周波数のうち対象とされるのは、高周波・微小振幅の成分であり、具体的には、かみ合い1次および2次成分(例えば、1ないし3kHz)である。ギヤ起振力の計算においては、前述の回転慣性モーメントM*と、剛性K*(曲げ、せん断、Hertz)とが考慮される。
【0067】
ところで、前述の新解析理論によれば、主として各歯車の基礎円半径誤差が判明すれば、その各歯車の動荷重であってギヤ起振力であるものを算出することができる。一方、前述の新歯形理論によれば、かみ合い伝達誤差、すなわち、互いにかみ合う2個の歯車の一方の回転角と他方の歯車の回転角との間における現実の対応関係の、理想的な対応関係からの偏差に相当するものが判明すれば、上述の基礎円半径誤差を測定することができる。
【0068】
さらに、その新歯形理論によれば、互いにかみ合う歯面が互いに接触する接触点がかみ合いの進行につれて描く軌跡、すなわち、接触点軌跡を正確に求めることが可能である。その接触点軌跡は、接触点すなわちかみ合い点が歯面上において進行するかみ合い進行方向に沿って延びている。一方、上述のかみ合い伝達誤差は、修整誤差を伴う現実かみ合い歯面のうち歯面上の接触点軌跡の形状すなわち丸みに依存する。また、歯面上の接触点軌跡は、かみ合い進行方向と、現実かみ合い歯面の、そのかみ合い進行方向における歯形丸みとの共同によって幾何学的に特定される。以下、その歯形丸みの程度(例えば、理想歯面と現実歯面との差)を記述するパラメータを歯形丸みパラメータと称するが、これは、後述のかみ合い伝達誤差曲線に対応する。
【0069】
したがって、それら新解析理論と新歯形理論とを組み合わせれば、ギヤ起振力が、図6に示すように、歯形丸みパラメータによって精度よく記述されることになる。以上説明した知見に基づき、図5におけるステップBにおいては、ギヤ起振力が計算される。
【0070】
上述の新歯形理論に従うギヤ起振力の計算が終了すると、図5に示すように、ステップCにおいて、歯車対を起振源とする振動に対する振動伝達系110の応答が計算される。振動伝達系110の応答は、概念的には、ギヤ起振力を振動伝達系110の周波数応答特性(振動特性)に応じて増幅または減衰させたものに相当する。
【0071】
この振動応答計算においては、ケース96の全体形状、およびそのケース96のうち各軸受100の周辺の形状を多数の有限要素によって近似的に表現するFEMモデルを用いて、弾性特性を考慮した機構運動解析が実行される。この振動応答計算においては、振動伝達系110の振動応答を回転軸90,92,94およびケース96の動的特性(例えば、回転軸90,92,94およびケース96の弾性振動特性)を考慮して計算することが可能である。
【0072】
さらに、この振動応答計算においては、3個の回転体104,106,108の剛性(例えば、歯車62等の円板の剛性、回転軸90等の剛性)、初期アライメント等が選定されている。したがって、この振動応答計算は、軽量・低騒音化という目的に適合するようにM/T60を設計するために各設計変数を最適化するツールとして有効に利用することが可能である。
【0073】
この振動応答計算が実行されると、ギヤノイズ、軸受100の荷重変動、マウント点PMにおける荷重変動(振動加速度の変動)等が計算される。図13には、アウトプットシャフト92を支持する軸受100に作用する軸受荷重の周波数特性についての計算結果と、M/T60のマウント点PMにおける上下方向の振動加速度の周波数特性についての計算結果とが、グラフで表されている。
【0074】
その後、図5におけるステップDにおいて、その振動応答計算の結果に基づき、M/Tの振動特性が設計者によって評価される。この際、ギヤノイズの大小(例えば、音響放射パワーの大小)、軸受100の荷重変動の大小、マウント点PMにおける荷重変動(振動加速度の変動)の大小等が評価項目とされる。
【0075】
続いて、ステップEにおいて、その評価結果に基づき、M/T60の適合設計が行われる。具体的には、各種設計変数を変更したうえでステップCを再度実行して振動応答計算を行うことが、すべての評価項目について満足いく評価結果が得られるまで繰り返される。
【0076】
以上で、ギヤノイズCAEシステム10を用いて設計者および解析者によって実行される一連の作業が終了する。
【0077】
以上説明したステップAないしCおよびEは、前記ギヤノイズ予測プログラムの実行によって実行される。そのギヤノイズ予測プログラムの詳細は、図7にフローチャートで概念的に表されている。
【0078】
このギヤノイズ予測プログラムが実行されると、まず、ステップS1(以下、単に「S1」で表す。他のステップについても同じとする。)において、対象である歯車対につき、前述の歯車諸元値を表すデータが入力装置30を介してコンピュータ24に入力される。
【0079】
次に、S2において、その入力された歯車諸元値を表すデータに基づき、前述の歯面計算が行われる。この歯面計算により、各歯車につき、前述のかみ合い進行方向が計算される。そのかみ合い進行方向は、前記特開平9−53702号公報に記載されているように、前述の新歯形理論に従い、取得される。
【0080】
具体的には、歯車Gear1のかみ合い進行方向を取得する場合には、例えば、今回の歯車対Gear1,Gear2が歯面接触の運動条件を満たして回転する際の各歯車Gear1,Gear2の各速度比γを求める。歯車Gear1の回転角θ1を、その角速度比γと歯車Gear2の回転角θ2とに基づいて記述し、前記媒介座標系において、かみ合い歯面同士の接触点軌跡と、その接触点におけるかみ合い歯面に対する共通法線の傾き角とをそれぞれ、回転角θ1を助変数とする第1関数によって記述する。前記静止座標系において、その第1関数と、静止座標系と媒介座標系との相対位置関係とに基づき、接触点軌跡と共通法線傾き角とをそれぞれ、回転角θ1を助変数とする第2関数によって記述する。これにより、静止座標系における歯車Gear1の接触点軌跡と共通法線傾き角とが取得される。その取得された接触点軌跡に関する情報から、歯車Gear1のかみ合い進行方向が取得される。
【0081】
続いて、S3において、今回の歯車対につき、後述のS4およびS5の実行に必要な各種定数を表すデータが適宜入力される。
【0082】
その後、S4において、今回の歯車対につき、前述の新歯形理論に従ってギヤ起振力が計算される。このS4においては、ギヤ起振力が、後述の有限要素モデルとは無関係に計算される。以下、その計算の理論を説明する。
【0083】
図8に例示するように、今回の歯車対Gear1およびGear2に対し、それらの2本の歯車軸線とそれらの共通垂線とによって定義される座標系が使用される。一方の歯車Gear1について設定された座標系は、u1c軸と、v1c軸と、Z1軸とによって規定される。他方の歯車Gear2について設定された座標系は、u2c軸と、v2c軸と、Z2軸とによって規定される。
【0084】
図8に示す例においては、いずれの歯車Gear1,Gear2もはすば歯車であり、歯車Gear1の歯はねじれ角ψb1、歯車Gear2の歯はねじれ角ψb2をそれぞれ有している。図8(b)においては、歯車Gear1のピッチ円半径は「Rp1」、基礎円半径は「Rb1」でそれぞれ表記され、一方、歯車Gear2のピッチ円半径は「Rp2」、基礎円半径は「Rb2」でそれぞれ表記されている。
【0085】
図8(b)に示すように、今回の歯車対Gear1およびGear2の間において軸トルクTsが伝達される際には、各歯車Gear1,Gear2が互いにかみ合う各歯に、歯面力Fqが、それら2個の歯車Gear1,Gear2の両基礎円の共通接線に沿って発生する。この歯面力Fqは、接線荷重という。各歯車Gear1,Gear2が互いにかみ合う各歯には、さらに、ねじれ角ψの存在により、各歯車Gear1,Gear2にそれぞれの回転軸線に沿った方向に作用する軸方向成分である軸荷重Fzも同時に発生する。接線荷重Fqには、軸トルクTsに相当する荷重Fqs(後述の応答変位荷重に相当する。)の他に、歯のかみ合いによって発生する動荷重Fqdも含まれる。
【0086】
図8(b)においては、歯車Gear2につき、接線荷重Fq、ねじれ角ψ、軸荷重Fz、および接線荷重Fqと軸荷重Fzとの合力Fがそれぞれ、「Fq2」、「ψb2」、「Fz2」および「FN2」で表記されている。
【0087】
このS4においては、前述の新歯形理論と従来の歯形理論とが組み合わされることにより、各歯車ごとに、接線荷重Fqと軸荷重Fzとが計算される。以下、図8および図9を参照することにより、歯車Gear2について接線荷重Fq2と軸荷重Fz2とが計算によって取得される理論を説明する。
【0088】
図9において式(1)で表すように、接線荷重Fq2の時間変動Fq2(t)は、応答変位荷重Fq2sの時間変動Fq2s(t)と、動荷重Fq2dの時間変動Fq2d(t)との和として計算される。その和は前記(1)項における「合成値」の一例である。ここに、応答変位荷重Fq2sは、接線荷重Fq2のうち、歯車Gear2に作用する駆動トルクの成分であり、従来の歯形理論に従って計算されるのに対し、動荷重Fq2dは、新歯形理論に従って計算される。
【0089】
具体的には、応答変位荷重Fq2sは、2個の歯車Gear1およびGear2が、ばね定数Kを有する回転ばねと、減衰係数Cを有する回転ダンパとによって互いに連結されたモデルが想定されて計算される。それら回転ばねと回転ダンパとにより、それら2個の歯車Gear1およびGear2間におけるトルク伝達が表現される。すなわち、応答変位荷重Fq2sは、従来の歯形理論に従って計算されるのである。
【0090】
具体的には、応答変位荷重Fq2sは、図9において式(2)で表すように、それら2個の歯車Gear1およびGear2間における相対角変位とばね定数Kとの積と、それら2個の歯車Gear1およびGear2間における相対角速度と減衰係数Cとの積との和を歯車Gear2の基礎円半径Rb2で割り算することによって計算される。
【0091】
式(2)においては、「θ1(t)」が歯車Gear1の回転変位の時間変動を表し、「θ2(t)」が歯車Gear2の回転変位の時間変動を表し、「ω1(t)」が歯車Gear1の回転速度の時間変動を表し、「ω2(t)」が歯車Gear2の回転速度の時間変動を表している。したがって、相対角速度は、
【0092】
θ1(t)−θ2(t)
【0093】
で表され、相対角速度は、
【0094】
ω1(t)−ω2(t)
【0095】
で表される。
【0096】
なお付言するに、応答変位荷重Fq2sは、歯車Gear2に作用する駆動トルクに起因する歯車Gear2の相対変位(弾性変位であり、その状態は、相対回転変位および相対回転速度によって記述される。)に応答して歯車Gear2に発生する荷重であるという意味であるが、動荷重Fq2dと対比すれば、接線荷重Fq2のうちの静荷重成分に分類される。
【0097】
歯車Gear2の動荷重Fq2dは、前述の新歯形理論に従って計算される。ここに、動荷重Fq2dの時間変動Fq2d(t)は、その動荷重時間変動Fq2d(t)の各かみ合い次数の成分を振幅とする周期関数によって表現される。したがって、動荷重時間変動Fq2d(t)は、図9において式(3)で表される。
【0098】
以下、この式(3)における各種記号を説明する。
【0099】
Fq2d1:歯車Gear2の動荷重時間変動Fq2d(t)のかみ合い1次成分
【0100】
Fq2d2:歯車Gear2の動荷重時間変動Fq2d(t)のかみ合い2次成分
【0101】
Fq2dn:歯車Gear2の動荷重時間変動Fq2d(t)のかみ合いn次成分
【0102】
N2:歯車Gear2の歯数
【0103】
ω2_:歯車Gear2の平均回転速度
【0104】
φ21:歯車Gear2の動荷重時間変動Fq2d(t)のかみ合い1次成分の位相
【0105】
φ22:歯車Gear2の動荷重時間変動Fq2d(t)のかみ合い2次成分の位相
【0106】
φ2n:歯車Gear2の動荷重時間変動Fq2d(t)のかみ合いn次成分の位相
【0107】
ところで、動荷重時間変動Fq2d(t)のうち特に優勢である成分(例えば、かみ合い1次および2次成分)の周波数は、約1ないし3[kHz]であるのに対し、M/T60が装着されるエンジンのトルク変動の周波数は、例えば、直列4気筒エンジンである場合には例えば6,000[rpm]で200[Hz]であるというように、動荷重時間変動Fq2d(t)とエンジンのトルク変動とは、周波数帯域が互いに異なっている。一方、エンジンのトルク変動は、歯車Gear2の駆動トルクの変動を意味する。
【0108】
したがって、応答変位荷重Fq2sと動荷重Fq2dとから接線荷重Fq2を計算する際に、それら応答変位荷重Fq2sおよび動荷重Fq2d間の連成振動を考慮せずに済む。よって、本実施形態においては、応答変位荷重Fq2sと動荷重Fq2dとの和によって接線荷重Fq2が計算される。
【0109】
このS4においては、さらに、歯車Gear2の軸荷重Fz2の時間変動Fz2(t)も計算される。軸荷重時間変動Fz2(t)は、図9において式(4)で表すように、接線荷重時間変動Fq2(t)とねじれ角ψb2とを用いて計算される。
【0110】
以上、このS4において接線荷重Fqと軸荷重Fzとが計算によって取得される理論を説明したが、以下、図7を参照することにより、このS4の実行内容を経時的に説明する。
【0111】
このS41においては、まず、S41において、各歯車につき、前述の歯形丸みパラメータが定義される。
【0112】
その歯形丸みパラメータは、2個の歯車Gear1およびGear2のかみ合いの進行につれてそれら歯車Gear1およびGear2間のかみ合い接触点が各歯車のかみ合い歯面上を進行するかみ合い進行方向(かみ合い接触点の進行方向であり、例えば、図6に示すように、軸直角方向に対する傾斜角度ηで定義される。)と、各歯車のかみ合い伝達誤差曲線(例えば、一方の歯車の回転変位と、その回転変位につれて他方の歯車に発生する回転変位との関係を表す曲線)とを反映する。
【0113】
そのかみ合い伝達誤差曲線は、前記特開平5−157663号公報において図5を参照して記載されているように、理想基礎円と同径の基礎円板と、その基礎円板の円筒面に接触するストレートエッジを有する直定規と、その直定規と一体的に平行移動するピボット式またはリニア式の測定子であってそれの接触点が被測定歯車の現実歯面に接触させられるものとを含む測定装置を用いて測定することが可能である。
【0114】
この測定装置を用いて現実歯面の形状を測定する際には、測定子の接触点が、前記取得されたかみ合い進行方向(接触点軌跡)に沿って現実歯面上において移動させられるように、被測定歯車と測定子とがその被測定歯車の回転軸線方向に相対変位させられる。
【0115】
次に、S42において、各歯車につき、動荷重Fq*d(*:1,2)の振幅Fq*di(i=1〜n)が計算される。振幅Fq*diは、前記定義された歯形丸みパラメータを用いて計算することが可能である。その歯形丸みパラメータは、前述のかみ合い伝達誤差曲線を反映し、ひいては、前述の基礎円半径誤差を反映するからである。
【0116】
動荷重Fq*dの各かみ合い次数iの振幅Fq*diは、各歯車の回転速度と、その各歯面の歯面に加えられる負荷とに基づいて計算される。その負荷は、例えば、各歯車に相手歯車から伝達されるトルクによって発生する。具体的には、振幅Fq*diは、例えば、前記特開平5−157663号公報に開示されている前述の新解析理論に従って計算することが可能である。
【0117】
振幅Fq*diの計算が終了すると、S43において、各歯車の動荷重Fq*dの時間変動Fq*d(t)が図9における式(3)を用いて計算される。続いて、S44において、各歯車の軸荷重Fz*の時間変動Fz*(t)が図9における式(4)を用いて計算される。以上で、S4の実行が終了する。
【0118】
その後、S5において、弾性特性を考慮した機構運動解析により、今回の歯車対を起振源とする振動に対するM/T60のケース96の応答が計算される。この計算は、例えば、物体の剛体変位と弾性振動とを解析する方法であって特開2000−305922号公報に開示されたものを用いて行われる。
【0119】
このS5においては、まず、S51において、FEMの全体モデル、すなわち、M/T60を複数個の有限要素によって近似的に表現するものが定義される。その定義された全体モデルにより、図2および図3に示す3次元形状が近似的に表現される。
【0120】
次に、S52において、各歯車の応答変位荷重Fq*sの時間変動Fq*s(t)が図9における式(2)を用いて計算される。続いて、S53において、各歯車の接線荷重Fq*の時間変動Fq*(t)が図9における式(1)を用いて計算される。
【0121】
その後、S54において、各歯車を近似的に表現する歯車モデル(回転体モデルでも可)に入力される外部負荷が計算される。その外部負荷は、歯のかみ合いによって各歯車に作用する並進力とモーメントとである。それら並進力とモーメントとは、各歯車について前記計算された接線荷重Fq*および軸荷重Fz*と、各歯車の歯の圧力角およびねじれ角を含む歯車諸元値とに基づいて計算される。
【0122】
その歯車モデルの一例が、図10(a)には平面図で、図10(b)には側面図でそれぞれ示されている。図10においては、互いにかみ合う2個の歯車のうち、インプットシャフト90と同軸に取り付けられた歯車は「Body1」、アウトプットシャフト92と同軸に取り付けられた歯車は「Body2」でそれぞれ表記され、さらに、ケース96が「Body3」で表記されている。Body3に全体座標系xyzが固定されている。
【0123】
本実施形態においては、図10(b)に示すように、Body1については、それに割り当てられた複数個の節点のうちの4個の代表節点#1−1ないし#1−4が、Body1の円周上において等角度間隔で並ぶように設定される。一方、Body2についても、それに割り当てられた複数個の節点のうちの4個の代表節点#2−1ないし#2−4が、Body2の円周上において等角度間隔で並ぶように設定されている。それらBody1およびBody2は、同じ番号を共有する代表節点同士において互いにかみ合わされる。
【0124】
本実施形態においては、振動応答の計算を簡単にするために、それらBody1およびBody2がいずれも剛体円板モデルであると仮定されている。さらに、同じく振動応答の計算を簡単にするために、図10(b)に示すように、例えば、Body2からBody1に作用する接線荷重F21は、Body1における4個の代表節点#1−1ないし#1−4にそれぞれ均等に配分されて作用すると仮定されている。
【0125】
さらに、本実施形態においては、振動応答の計算を簡単にするために、図11に例示するように、各歯車と共に回転する回転軸が、各歯車と同様に、剛体モデルであると仮定されている。図11に示す例においては、上側の回転軸が入力軸であり、その入力軸には外部から駆動トルクが入力され、その駆動トルクが歯車対によって下側の回転軸に伝達される。その下側の回転軸は出力軸であり、その出力軸は、動力計を模擬するモータ要素(図4における吸収側モータに相当する。)を回転させる。
【0126】
さらに、図11に示す例においては、いずれの回転軸も、各歯車を隔てた両端部においてケース96との間においてそれぞれ弾性支持されている。ただし、入力軸については、それの歯車から一側に距離aだけ離れた位置と、他側に距離bだけ離れた位置とにおいてそれぞれ弾性支持点が配置されているのに対し、出力軸については、それの歯車から一側に距離cだけ離れた位置と、他側に距離dだけ離れた位置とにおいてそれぞれ弾性支持点が配置されている。
【0127】
以上説明したようにして外部負荷が計算されると、図7におけるS55において、前記定義された有限要素モデルのもと、その計算された外部負荷を考慮することにより、弾性特性を考慮した機構運動解析によって振動応答が計算される。その後、S56において、その計算結果が出力装置40を介してユーザに可視化されて出力される。
【0128】
ユーザは、その計算結果を参照することにより、M/T60の現在の設計が妥当であるか否かを判断する。その後、S6において、再計算が必要であるか否かが判定される。ユーザは、現在の設計が妥当ではないと判断した場合には、再計算が必要である旨の指令をコンピュータ24に入力する。この場合には、このS6の判定がYESとなり、このギヤノイズ予測プログラムの実行が、ユーザの要求に応じたステップから再開される。これに対し、ユーザは、現在の設計が妥当であると判断した場合には、再計算が必要ではない旨の指令をコンピュータ24に入力する。この場合には、このS6の判定がNOとなり、以上で、このギヤノイズ予測プログラムの実行が終了する。
【0129】
本発明者らは、このギヤノイズ予測プログラムによる計算の妥当性を確認するため、図11に示すモデルを用いてこのギヤノイズ予測プログラムを実行した。確認作業を簡単にするため、歯数は5に選定し、また、動荷重は、かみ合い1次成分のみを反映するように定義し、さらに、その動荷重の振幅は、33.3[kgf]に設定した。歯車についてのその他の諸元値は、以下のとおりである。
【0130】
圧力角:20[°]
【0131】
ねじれ角:31.3[°]
【0132】
ギヤ比:1:1
【0133】
基礎円半径:30[mm]
【0134】
回転数:3,000[rpm]
【0135】
a:158.5[mm]
【0136】
b:46[mm]
【0137】
c:179[mm]
【0138】
d:50[mm]
【0139】
図12には、その計算結果が、図11における出力軸に作用するトルクの時間変動としてグラフで表されている。図11における入力軸に入力される駆動トルクは一定であると仮定されたが、出力軸には、歯車の動荷重によるトルク変動が加わった結果、出力軸から出力されるトルクは、時間と共に変動している。その変動の振幅は、動荷重の振幅と基礎円半径との積に一致しており、このことは、今回の計算結果が妥当であることを示している。
【0140】
図13には、このギヤノイズ予測プログラムの実行によって取得された計算結果の別の例がグラフで表されている。この例においては、計算結果が、M/T60においてアウトプットシャフト92を支持する軸受100に作用する軸受荷重の周波数特性と、M/T60においてマウント点PMに上下方向に発生する振動加速度の周波数特性とを含んでいる。
【0141】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、図7におけるS41ないしS45が互いに共同して前記(1)項における「接線荷重計算工程」の一例を構成し、S51ないしS53が互いに共同して同項における「振動応答計算工程」の一例を構成しているのである。
【0142】
さらに、本実施形態においては、図7におけるS46が前記(2)項における「軸荷重計算工程」の一例を構成し、S51ないしS53が互いに共同して同項における「振動応答計算工程」の一例を構成しているのである。
【0143】
さらに、本実施形態においては、図7におけるS43が前記(3)項および(4)項のそれぞれにおける「応答変位荷重計算工程」の一例を構成し、S44が前記(5)項における「動荷重時間変動計算工程」の一例を構成し、S42が前記(6)項および(7)項のそれぞれにおける「動荷重振幅計算工程」の一例を構成し、S44のうち、動荷重の振幅に掛け算される周期関数を定義する部分が前記(8)項における「周期関数定義工程」の一例を構成しているのである。
【0144】
さらに、本実施形態においては、図7におけるS51ないしS53が前記(9)項における「振動応答計算工程」の一例を構成し、S52が同項における「負荷計算工程」の一例を構成し、S41ないしS45が互いに共同して同項における「接線荷重計算工程」の一例を構成しているのである。
【0145】
さらに、本実施形態においては、図7におけるS52が前記(11)項、(12)項および(13)項のそれぞれにおける「負荷計算工程」の一例を構成し、前述のギヤノイズ予測プログラムが前記(14)項に係る「プログラム」の一例を構成し、記録媒体52が前記(15)項に係る「記録媒体」の一例を構成しているのである。
【0146】
なお付言するに、本実施形態においては、振動応答の計算を簡単にするために、歯車が、それの歯形は表現しない剛体円板モデルで表現されるとともに、その剛体円板モデルの円周上において等角度間隔で並んだ複数個の代表節点にそれぞれ、外部負荷としての並進力とモーメントとのそれぞれが均等に配分されるようになっている。
【0147】
これに対し、振動応答の計算精度を向上させることが必要である場合には、例えば、歯車を、それの歯形は表現しない弾性円板モデルで表現するとともに、その弾性円板モデルに割り当てられた複数個の元節点のうち、相手歯車との現実かみ合い点と一致するかないしは最も近い1個の元節点を選択し、その選択された元節点を擬似かみ合い点として扱い、その擬似かみ合い点に外部負荷が集中的に作用するように、外部負荷を計算することが可能である。
【0148】
また、振動応答の計算精度をさらに向上させることが必要である場合には、例えば、歯車を、それの歯形まで一層精密に表現する弾性精密モデルで表現するとともに、その弾性忠実モデルのうち、相手歯車との現実かみ合い点と一致する点に外部負荷が集中的に作用するように、外部負荷を計算することが可能である。
【0149】
以上、本発明の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明したが、これは例示であり、前記[発明の開示]の欄に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0150】
【図1】本発明の一実施形態に従うギヤノイズ予測方法を実施するのに好適なギヤノイズCAEシステムのハードウエア構成を概念的に表すブロック図である
【図2】図1に示すギヤノイズCAEシステムによって設計を支援されるマニュアルトランスミッションの外観を示す斜視図である。
【図3】図2に示すマニュアルトランスミッションのケース内に収容されたギヤトレーンを示す斜視図である。
【図4】図1に示すマニュアルトランスミッションを簡略化して示す平面図である。
【図5】図1に示すギヤノイズCAEシステムを用いて図2に示すマニュアルトランスミッションを設計するために設計者によって行われる一連の作業を説明するための工程図である。
【図6】図5におけるステップAおよびBにおいて利用される歯形丸みパラメータという概念を説明するための斜視図である。
【図7】図1におけるコンピュータによって実行されるギヤノイズ予測プログラムの内容を概念的に表すフローチャートである。
【図8】図7のギヤノイズ予測プログラムにおいて使用される座標系と歯面間に作用する力とを主に説明するための斜視図および側面図である。
【図9】図7におけるS4において利用される理論を説明するための式を示す図である。
【図10】図7におけるS5において利用される歯車モデルを示す平面図および側面図である。
【図11】図7におけるS5において利用される歯車モデルを示す正面図および側面図である。
【図12】図7のギヤノイズ予測プログラムの実行によって取得された計算結果の一例を示すグラフである。
【図13】図7のギヤノイズ予測プログラムの実行によって取得された計算結果の別の例を示すグラフである。
【符号の説明】
【0151】
10 ギヤノイズCAEシステム
24 コンピュータ
52 記録媒体
60 マニュアルトランスミッション
96 ケース
62,64,66,68,70,72,74,76,78,80,82,84 歯車
90,92,94 回転軸
100 軸受
104,106,108 回転体
110 振動伝達系

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いにかみ合って回転する少なくとも2個の回転体が支持体によって回転可能に支持されて成る歯車装置であって、それら少なくとも2個の回転体は、2本の回転軸と、それら2本の回転軸とそれぞれ同軸的に一緒に回転する2個の歯車であって歯面同士において互いにかみ合わされて成る歯車対を成すものとを有するように構成されたものの振動を計算する歯車振動計算方法であって、
前記2個の歯車の歯面間において,それら2個の歯車の両基礎円の共通接線に沿って作用する接線荷重の時間変動を、(a)それら2個の歯車が互いにかみ合う歯間の相対変位に応答して、それら2個の歯車が互いにかみ合うかみ合い歯面間に作用する応答変位荷重の時間変動と、(b)それら2個の歯車の歯面同士がかみ合い中に互いに接触するかみ合い接触点の基礎円半径誤差に応答して、それら2個の歯車のかみ合い歯面間に作用する動荷重の時間変動との合成値として計算する接線荷重計算工程と、
その計算された接線荷重時間変動に基づき、前記歯車対を起振源とする振動に対する、前記回転体と前記支持体との少なくとも一方の応答を計算する振動応答計算工程と
を含む歯車振動計算方法。
【請求項2】
さらに、前記計算された接線荷重時間変動に基づき、前記各歯車の回転軸に沿って作用する軸荷重の時間変動を計算する軸荷重計算工程を含み、かつ、前記振動応答計算工程は、その計算された軸荷重時間変動と、前記計算された接線荷重時間変動とに基づき、前記応答を計算する請求項1に記載の歯車振動計算方法。
【請求項3】
前記接線荷重計算工程は、前記各歯車の応答変位荷重時間変動を、前記2個の歯車間における相対角変位の時間変動とそれら2個の歯車の結合剛性との積を前記各歯車の基礎円半径で割り算した値を用いて計算する応答変位荷重計算工程を含む請求項1または2に記載の歯車振動計算方法。
【請求項4】
前記接線荷重計算工程は、前記各歯車の応答変位荷重時間変動を、前記2個の歯車間における相対角変位の時間変動とそれら2個の歯車の結合剛性との積と、それら2個の歯車間における相対角速度の時間変動とそれら2個の歯車の結合減衰との積との和を前記各歯車の基礎円半径で割り算した値を用いて計算する応答変位荷重計算工程を含む請求項1または2に記載の歯車振動計算方法。
【請求項5】
前記接線荷重計算工程は、前記2個の歯車のかみ合いによって発生する動荷重時間変動を、前記各歯車の動荷重の振幅と、予め選択された周期関数とを用いて計算する動荷重時間変動計算工程を含む請求項1ないし4のいずれかに記載の歯車振動計算方法。
【請求項6】
前記動荷重時間変動計算工程は、前記2個の歯車のかみ合いの進行につれて、各歯車のかみ合い伝達誤差曲線に基づき、その各歯車の動荷重の振幅を計算する動荷重振幅計算工程を含む請求項5に記載の歯車振動計算方法。
【請求項7】
前記動荷重時間変動計算工程は、前記各歯車の回転速度と、その各歯車の歯面に加えられる負荷とに基づき、その各歯車の動荷重の振幅を計算する動荷重振幅計算工程を含む請求項5に記載の歯車振動計算方法。
【請求項8】
前記動荷重時間変動計算工程は、前記各歯車の回転速度と、その各歯車の歯数とに基づき、前記周期関数を定義する周期関数定義工程を含む請求項5ないし7のいずれかに記載の歯車振動計算方法。
【請求項9】
前記振動応答計算工程は、前記歯車装置を近似的に表現する有限要素モデルを用いて前記応答を計算し、
前記接線荷重計算工程は、その有限要素モデルとは無関係に前記接線荷重を計算し、
前記振動応答計算工程は、その計算された接線荷重に基づき、前記有限要素モデルのうち前記各歯車を表現する歯車モデルに入力される外部負荷を計算する負荷計算工程を含む請求項1ないし8のいずれかに記載の歯車振動計算方法。
【請求項10】
前記振動応答計算工程は、前記歯車装置を近似的に表現する有限要素モデルを用いて前記応答を計算し、
前記接線荷重計算工程は、前記回転体および前記支持体間の相互作用を考慮して前記接線荷重を計算し、
前記振動応答計算工程は、その計算された接線荷重に基づき、前記有限要素モデルのうち前記各歯車を表現する歯車モデルに入力される外部負荷を計算する負荷計算工程を含む請求項1ないし8のいずれかに記載の歯車振動計算方法。
【請求項11】
前記有限要素モデルは、複数個の有限要素と複数個の節点とを含むように定義され、
前記負荷計算工程は、それら複数個の節点のうち予め選択された少なくとも1個の選択節点に関して前記外部負荷を計算する請求項9または10に記載の歯車振動計算方法。
【請求項12】
前記歯車モデルは、それによって表現される現実歯車への前記外部負荷の入力にもかかわらず、その現実歯車の軸直角平面に直角な方向の反りがその現実歯車に発生しないことを表現する剛体モデルであり、
前記少なくとも1個の選択節点は、前記複数個の節点のうち前記剛体モデル上において等間隔に配置された複数個の代表節点を含み、
前記負荷計算工程は、前記外部負荷を、それら複数個の代表節点にそれぞれ関連付けて計算する請求項11に記載の歯車振動計算方法。
【請求項13】
前記負荷計算工程は、前記外部負荷を、前記複数個の代表節点にそれぞれ均等に配分されるように計算する請求項12に記載の歯車振動計算方法。
【請求項14】
請求項1ないし13のいずれかに記載の歯車振動計算方法を実施するためにコンピュータによって実行されるプログラム。
【請求項15】
請求項14に記載のプログラムをコンピュータ読取り可能に記録した記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−64548(P2006−64548A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−247702(P2004−247702)
【出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】