説明

歯間ブラシ

【課題】歯間部分に挟まった食物残渣や歯垢を効率よく除去でき、捻りワイヤーの耐久性および引抜強度が十分に高い歯間ブラシを提供する。
【解決手段】ブラシ部5をハンドル部1に対して横向きに形成した歯間ブラシにおいて、ハンドル部1の台座4から外部へ露出する捻りワイヤー6の付け根部分がノズル8によって被覆され、ノズル8の厚さdが0.1〜0.5mmの範囲、長さLが1〜5mmの範囲であって、ノズル8の形成素材は、JIS K 7171による曲げ弾性率が300〜450MPaの範囲からなる軟質樹脂で形成されているので、軟質樹脂が捻りワイヤー6の曲がりに追随して柔軟に撓むことができ、捻りワイヤー6の付け根部分を保護して、捻りワイヤー6の耐久性および引抜強度が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通常の歯ブラシによるブラッシングで清掃が困難な歯間部分を清掃する際に使用する歯間ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
歯間ブラシは、通常の歯ブラシによるブラッシングでは取り除きにくい歯間部分に挟まった食物残渣や歯垢を、効率よく除去するための口腔内清掃用具である。歯ブラシと併用することで、歯周病の予防に非常に有効であることが知られている。
一般に、歯間ブラシは、捻りワイヤーの間にフィラメントを挟持されたブラシ部と、首部を介してブラシ部と連結されたハンドル部とからなり、ブラシ部を歯間に挿通し押し引きすることで、歯間に堆積した歯垢や歯石を、ブラシ部のフィラメントに絡み取り除去することができる。
しかしながら、歯間の狭い部分を押し引きするためにブラシ部に大きな負担が掛かり、捻りワイヤーがブラシ部の根元で破折してしまったり、樹脂に埋め込まれた捻りワイヤーが抜けてしまったりする問題が生じていた。そのため、捻りワイヤーの耐久性および引抜強度は、歯間ブラシにおいて最も重要な品質のひとつである。
【0003】
こうした品質の改善に対して、従来は、特許文献1,2に記載のように、ワイヤーそのものの強度を向上させるために、捻りワイヤーの形成素材について改良がなされてきた。しかしながら、そうして改良されたワイヤーの強度は高いものの、コストも高くなり、汎用価格帯の歯間ブラシに用いることが困難であった。
そのため、捻りワイヤーの耐久性および引抜強度の品質改善は、歯間ブラシの形状やハンドル部の形成素材などを改良する施策が検討されている。
【0004】
歯間ブラシの形状は、特許文献3〜5に記載のように、首部が直線状で、把持部の長手方向と略平行にブラシ部が配列されたI字型歯間ブラシと、特許文献6に記載のように、首部がL字型になっていて、ハンドル部の把持部の長手方向と略垂直にブラシ部が配列されたL字型歯間ブラシとがある。I字型歯間ブラシは、前歯の歯間部は清掃しやすいものの、形状が略直線であるため、奥歯の歯間へ挿入しにくい場合があり、L字型歯間ブラシは奥歯の歯間の空隙と略平行にブラシ部が位置しているため、I字型歯間ブラシと比べて奥歯の清掃がしやすいという特徴がある。
【0005】
I字型歯間ブラシの場合、歯間ブラシの形成素材として、ブラシ部を曲げやすいよう軟質樹脂でハンドル部を形成することが多い。これは、ハンドル部が硬質であると、捻りワイヤーと樹脂の境界で曲がりやすく、その部分に応力が集中してワイヤーが破折しやすくなるからであり、捻りワイヤーを埋め込むハンドル部に曲げ弾性率の低い軟質の樹脂を用いて、使用時に捻りワイヤーを包む樹脂全体が撓むことにより、応力を分散させてワイヤーの破折を防ぐ目的である。さらに、捻りワイヤーの耐久性および引抜強度を向上させるために、ハンドル部の形状や形成素材に様々な改良がなされている。
例えば、特許文献3に記載の技術では、I字型歯間ブラシにおいて首部が指の力で曲がるように弾性を持たせ、その力を除去すると元の状態に復元するよう形成されている。
また、特許文献4に記載の技術では、I字型歯間ブラシにおいて捻りワイヤーの破折を防ぐため、捻りワイヤーの基端部がコイルスプリングを介して首部に埋め込まれている。
また、特許文献5に記載の技術では、I字型歯間ブラシにおいて操作性の向上のために、把持部の断面が楕円形で首部に向かってテーパー状に細くなるようにハンドル部を形成し、先端には捻りワイヤー補強部を設けている。
【0006】
一方、L字型歯間ブラシの場合、ハンドル部には比較的硬質の樹脂が用いられることが一般的であった。これは、L字型歯間ブラシは構造上、I字型歯間ブラシよりも捻りワイヤーの埋設部分が短く、捻りワイヤーの引っ掛り部分が小さくて引抜強度が出にくいためである。また、ハンドル部および首部鉛直方向に対して垂直方向に力が加わるため、曲げ弾性率の低すぎる軟質樹脂を用いた場合、曲がりやすく口腔内操作性が悪くなってしまうことも理由の一つである。
【特許文献1】特許第2538533号公報
【特許文献2】特許第3458627号公報
【特許文献3】実公平6−33853号公報
【特許文献4】特開平9−56471号公報
【特許文献5】特開2001−204549号公報
【特許文献6】特開2003−319830号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述したように、L字型歯間ブラシは、構造上および操作性の面でI字型歯間ブラシとは違いがあるため、捻りワイヤーの耐久性および引抜強度の向上を図る目的に対し、I字型歯間ブラシに用いる技術をそのまま適用することは困難であった。
【0008】
特許文献6に記載の技術では、L字型歯間ブラシにおいて、ハンドル部に硬質樹脂を用いて、捻りワイヤーの埋設部から外部へ露出する捻りワイヤーの付け根部分を、ハンドル部と同じ硬質樹脂からなる保護体で覆い、保護体を薄くすることで捻りワイヤーと保護体を撓みやすくして応力の分散を図っている。しかし、保護体を薄くするだけでは捻りワイヤーの耐久性は十分でない場合が多く、特殊組成の高価格の折れにくい捻りワイヤーが用いられることもあり、コストアップに繋がっていた。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、通常の歯ブラシによるブラッシングでは取り除きにくい歯間部分に挟まった食物残渣や歯垢を効率よく除去でき、捻りワイヤーの耐久性および引抜強度が十分に高く、口腔内操作性の良い歯間ブラシを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の歯間ブラシによれば、2つ折にした捻りワイヤーの間に複数のフィラメントを挟持されたブラシ部と、首部を介して前記ブラシ部と把持部を連結するハンドル部とを備え、前記首部の先端に横向きの台座を設け、該台座に前記捻りワイヤーの基端部を埋設することによってブラシ部とハンドル部を一体化た歯間ブラシにおいて、前記ハンドル部の台座から外部へ露出する捻りワイヤーの付け根部分がノズルによって被覆され、該ノズルの厚さが0.1〜0.5mmの範囲、長さが1〜5mmの範囲であって、該ノズルの形成素材は、JIS K 7171による曲げ弾性率が300〜450MPaの範囲からなる樹脂で形成されていることを特徴とする歯間ブラシを提供する。
【0011】
本発明の歯間ブラシは、前記ハンドル部において、首部の最小断面積が10〜40mmの範囲であることを特徴とすることができる。
【0012】
本発明の歯間ブラシは、前記捻りワイヤーの基端部において、前記ブラシ部とは一直線にならない屈曲部を少なくとも1箇所設け、この屈曲部を前記ハンドル部の台座に埋設することを特徴とすることができる。
【0013】
本発明の歯間ブラシは、前記屈曲部の形状が、略V字型に加工されていることを特徴とすることができる。
【0014】
本発明の歯間ブラシは、前記屈曲部の向きが、前記ハンドル部の把持部に向かって凸状になるように、前記屈曲部を前記台座に埋設することを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の歯間ブラシによれば、ブラシ部をハンドル部に対して横向きに形成した歯間ブラシにおいて、ハンドル部の台座から外部へ露出する捻りワイヤーの付け根部分がノズルによって被覆され、該ノズルの厚さが0.1〜0.5mmの範囲、長さが1〜5mmの範囲であって、該ノズルの形成素材は、JIS K 7171による曲げ弾性率が300〜450MPaの範囲からなる軟質樹脂で形成されているので、軟質樹脂が捻りワイヤーの曲がりに追随して柔軟に撓むことができ、捻りワイヤーの付け根部分を保護して、捻りワイヤーの耐久性および引抜強度が向上する。
【0016】
また、前記ハンドル部において、首部の最小断面積が10〜40mmの範囲とすることで、該首部の強度を確保しながら良好な口腔内操作性を確保することができる。
【0017】
また、前記捻りワイヤーの基端部において、前記ブラシ部とは一直線にならないような屈曲部を少なくとも1箇所設け、この屈曲部は、略V字型、略U字型、四角形など、いずれの形状でもよく、この屈曲部を前記ハンドル部の台座に埋設したことで、歯間清掃の際に前記捻りワイヤーが引っ張られても、前記屈曲部が抵抗となり、軟質樹脂で低下しがちな前記捻りワイヤーの引抜強度が向上する。
【0018】
また、前記屈曲部の形状を略V字型に加工することで、前記捻りワイヤーの形状加工が容易であり、且つ、十分な捻りワイヤーの引抜強度が得られる。
【0019】
また、前記屈曲部の向きが、前記ハンドル部の把持部に向かって凸状になるように、前記屈曲部を前記台座に埋設したことで、前記ブラシ部と前記ハンドル部の射出樹脂による一体成形の際に、樹脂の射出圧力により前記捻りワイヤーが流されて、前記捻りワイヤーの基端部が前記首部の先端寄りに傾いても、前記首部の先端から前記屈曲部が突出し難いため、ワイヤー突出を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係る歯間ブラシの実施の形態について、図面を参照して説明する。
図1に、本発明に係る歯間ブラシの第1の実施の形態を示す。(a)は歯間ブラシの全体形状を示す側面図、(b)は捻りワイヤーの埋設部分の拡大図、(c)は(b)の埋設部分の拡大断面図である。
本発明に係る歯間ブラシにおいて、ハンドル部1は、図1(a)に示す如く若干曲がって一体化された把持部2と首部3が連接され、首部3の先端において把持部2に対して横向きに台座4が設けられ、台座4にブラシ部5が取り付けられている。
このように首部3と台座4を形成することで、ハンドル部1は略L字型となり、比較的清掃がしにくい奥歯付近の歯間部へブラシ部5を挿入しやすくなる。
【0021】
ブラシ部5は、二つ折りにした捻りワイヤー6の間にフィラメント7を挟持するとともに、フィラメント7の全体形状を円錐状に毛切りしたものであって、このフィラメント7を挟持した捻りワイヤー6の基端部6aを台座4に埋め込んだもので、この捻りワイヤー6の基端部6aの埋め込みに際して、台座4から外部へ露出する捻りワイヤー6の付け根部分を被覆するようにノズル8を設けている。
また、捻りワイヤー6の基端部6aの基端部側には、捻りワイヤー6をV字状に折り曲げた屈曲部9が形成されている。
【0022】
ノズル8は、厚さdおよび長さLからなる円筒状の軟質樹脂で形成され、捻りワイヤー6の付け根部分を被覆し、歯間清掃時に捻りワイヤー6の付け根部分に作用する折り曲げ力を、このノズル8で吸収して緩和することができる。このため、従来に比べて捻りワイヤー6が付け根部分で折れ曲がりにくくなり、捻りワイヤー6の破断をなくすことができる。
【0023】
ノズル8の厚さdは、0.1〜0.5mmの範囲であり、好ましくは0.2〜0.4mmの範囲である。厚さdが、0.1mm未満であると、ノズル8は十分な強度が得られず、成形時に捻りワイヤー6が露出しやすくなる。一方、0.5mmを超えると、捻りワイヤー6とノズル8が一緒に撓みにくく、応力の集中が発生する。
【0024】
ノズル8の長さLは、1〜5mmの範囲であり、好ましくは2〜4mmの範囲である。長さLが、1mm未満であると、捻りワイヤー6とノズル8が一緒に撓みにくく応力の集中が発生し、捻りワイヤー6の耐久性向上率が低くなる。一方、5mmを超えると、ノズル8が長すぎて歯間清掃の際に妨げになり、口腔内操作が低下する。
【0025】
ノズル8の形成素材としては、JIS K 7171による曲げ弾性率が300〜450MPaの範囲からなる樹脂であればよい。
曲げ弾性率が300MPa未満であると、捻りワイヤー6の引抜強度が低下し、捻りワイヤー6が抜けてしまう可能性がある。一方、450MPaを超えると、捻りワイヤー6とノズル8が一緒に撓みにくく応力の集中が発生し、捻りワイヤー6の耐久性向上率が低くなる。
具体的には、例えば、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、エチレン−αオレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、ポリアミド(例えば6ナイロン、6−6ナイロン、6−10ナイロン、6−12ナイロンなど)、ポリエステル(例えばポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなど)、ポリエチレンもしくはポリプロピレンに官能基を導入して金属やプラスチックとの接着性を改善した変性ポリオレフィン、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマーなどを用いることができる。
曲げ弾性率の調整しやすさから、低密度ポリエチレン(LDPE)と高密度ポリエチレン(HDPE)を混合すると、曲げ弾性率を調整しやすくなる。
【0026】
ノズル8の断面形状は、円形、楕円形、四角形や六角形などの多角形、星形など、種々の断面形状を採用することができ、実質的に筒状であればよい。また、略筒状をしたノズル8の側面形状も、全体が同径の柱状だけでなく、先端側に向かって細く狭まっていく錐状など、他の側面形状としてもよい。
【0027】
以上のように、本発明の歯間ブラシでは、ブラシ部5とハンドル部1が略L字型になるように形成した歯間ブラシにおいて、ハンドル部1の台座4から外部へ露出する捻りワイヤー6の付け根部分がノズル8によって被覆され、ノズル8の厚さdが0.1〜0.5mm、長さLが1〜5mmであって、ノズル8の形成素材は、JIS K 7171による曲げ弾性率が300〜450MPaの範囲からなる軟質樹脂で形成することによって、軟質樹脂が捻りワイヤー6の曲がりに追随して柔軟に撓むことができ、捻りワイヤー6の付け根部分を保護して、捻りワイヤー6の耐久性および引抜強度が向上する。
【0028】
首部3の形状は、ブラシ部5と把持部2とを略L字型に連結できていればよいが、把持部2から先端方向に向かって、ブラシ部1と反対向きに緩やかな傾斜を持ちながら、テーパー状に細くなっていることが好ましい。
このとき、首部3の最小断面積は10〜40mmの範囲であることが好ましく、より好ましくは11〜15mmである。首部3の最小断面積が10mm未満であると、首部3の強度が十分得られず、強く引っ張るとハンドル部1の形状が歪み、ブラシ部5に加えた力が逃げてしまい、十分な歯間清掃が行えない。一方、40mmを超えると、歯間清掃の際に首部3が唇や口腔内の他の部位に強くあたり、口腔内操作性が低下する。
【0029】
首部3の断面形状は、円形、楕円形、四角形や六角形などの多角形、星形など、種々の断面形状を採用することができる。
以上のように、本発明の歯間ブラシでは、ハンドル部1において、首部3の最小断面積を10〜40mmの範囲とすることで、首部3の強度を確保しながら良好な口腔内操作性を確保することができる。
【0030】
台座4の形状は、捻りワイヤー6の基端部を埋設できる形状であればよいが、ノズル8側に向かって細く狭まっていく錐状好ましく、首部3とノズル8とを滑らかに連結できるように、最大幅が首部3の先端部の幅と同じであるか、それよりも小さく、且つ、最小幅はノズル8の付け根部分の幅よりも大きいことが好ましい。
台座4の断面形状は、円形、楕円形、四角形や六角形などの多角形、星形など、種々の形状を採用することができる。
【0031】
ハンドル部1の形成素材としては、熱可塑性樹脂であればよく、把持部2、首部3、および台座4を、ノズル8と別々な樹脂で各々構成することもできるが、同一の樹脂を用いれば、ノズル8とハンドル部1とを一体形成できるので、安価な製造方法で捻りワイヤー6の耐折強度を向上させることができる。
具体的には、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、エチレン−αオレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、ポリアミド(例えば6ナイロン、6−6ナイロン、6−10ナイロン、6−12ナイロンなど)、ポリエステル(例えばポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなど)、ポリエチレンもしくはポリプロピレンに官能基を導入して金属やプラスチックとの接着性を改善した変性ポリオレフィン、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマーなどが用いられる。
好ましくは、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−αオレフィン共重合体、変性ポリオレフィン、オレフィン系熱可塑性エラストマーなどのポリオレフィン樹脂であり、ポリエチレンおよびポリプロピレンが成形性、コストなどの点でより好ましい。なお、滑り止めを目的に、ハンドル部1にさらに熱可塑性エラストマー部を設けることもできる。
【0032】
このように、L字型歯間ブラシにおいて、ハンドル部1に曲げ弾性率が300〜450MPaの範囲からなる軟質樹脂を用いた場合、捻りワイヤー6の引抜強度を向上させるため、捻りワイヤー6の基端部には、ブラシ部5とは一直線にならないような屈曲部9を少なくとも1箇所設け、この屈曲部9を台座4に埋設することが好ましい。
【0033】
屈曲部9の形状は、図2(a)に示すように、略V字型であってもよく、図2(b)に示すように、半円のような曲線からなる形状であってもよいし、図2(c)に示すように、四角形のような直線からなる形状であってもよいし、これらの曲線や直線を組み合わせた形状であってもよいし、捻れのあるような立体形状であってもよい。
また、図2(d)に示すように、屈曲部9は複数箇所にあってもよく、屈曲部9が複数箇所ある場合、それらは隣接していてもよく、離れていてもよい。
【0034】
以上のように、本発明の歯間ブラシでは、捻りワイヤー6の基端部6aにおいて、ブラシ部1とは一直線にならないような屈曲部9を少なくとも1箇所設け、この屈曲部9をハンドル部1の台座4に埋設することで、歯間清掃の際に捻りワイヤー6が引っ張られても、屈曲部9が抵抗となり、軟質樹脂で低下しがちな捻りワイヤー6の引抜強度が向上する。
【0035】
また、捻りワイヤー6の形状加工のしやすさの面で、屈曲部9の形状は略V字型が好ましく、屈曲部9の形状を略V字型に加工することで、捻りワイヤー6の形状加工が容易に、且つ、十分な捻りワイヤー6の引抜強度が得られる。
【0036】
ブラシ部5とハンドル部1とを一体形成する方法は、図3に示すような、金型10を用いる。金型10の中央には、ブラシ部5のフィラメント7の形状に合わせた凹部11と、ブラシ部5の先端を突き当てるブラシ固定部12と、ノズル8および台座4の形状に合わせた溝部13とがあり、溝部13には捻りワイヤー6の基端部6aを配置する。捻りワイヤー6の基端部6aに屈曲部9を設ける場合は、予め屈曲部9を形成してから金型10にブラシ部5を配置する。
金型10にブラシ部5を配置したら図示略の上部金型を被せ、凹部11の両側にある金型固定部14によって金型10と上部金型とを一体化して、図4に示すように、歯間ブラシ成形装置15の樹脂注入部16と合わせて設置する。樹脂注入部16に、歯間ブラシのハンドル1を形成する樹脂を挿入すると、そのまま金型10の溝部13まで樹脂が注入されていき、溝部13の先端17で樹脂の流れが止まる。樹脂が冷却されて固まったら、金型10および上部の金型を外すと、本発明の歯間ブラシが得られる。
【0037】
このとき、捻りワイヤー6の挿入方向に対して、略垂直に樹脂圧Fがかかるので、成形時に捻りワイヤー6の基端部6aが流されることを防ぐため、図5(a)に示すように、捻りワイヤー6の基端部6aは台座4の中に納まるように形成することが好ましく、屈曲部9を設ける場合は屈曲部9も含めて台座4の中に納まるように形成することが好ましい。
捻りワイヤー6の基端部6aが、台座4の中に納まらずに首部3の樹脂経路に突出していると、特に捻りワイヤー6が細く強度が弱い場合、捻りワイヤー6が倒れて斜めに形成されやすくなる。
そのため、屈曲部9の向きは、図1(c)および図4に示されているに、ハンドル部1の把持部2に向かって凸状になるように、屈曲部9を台座4に埋設することが好ましい。
図5に示されているように、仮に屈曲部9の向きがハンドル部1の先端方向に凸状であると、図5(b)に示すように、樹脂圧Fによって流されて、捻りワイヤー6が斜めに形成された場合、屈曲部9の先端がハンドル部1の先端から突出してしまうおそれがある。
【0038】
以上のように、本発明の歯間ブラシによれば、屈曲部9の向きが、ハンドル部1の把持部2に向かって凸状になるように、屈曲部9を台座4に埋設することで、ブラシ部5とハンドル部1の一体化形成の際に、樹脂の射出圧力により捻りワイヤー6が流されて、捻りワイヤー6の基端部6aが首部3の先端寄りに傾いても、首部3の先端から屈曲部9の先端が突出しないため、ワイヤー突出を防ぐことができる。
【0039】
捻りワイヤー6は、通常、直径0.25〜0.35mm程度のステンレス製ワイヤーからなり、このワイヤーを二つ折りにしてその間にフィラメント7の束を挟み込み、ワイヤーを螺旋状に捻ることによってフィラメント7の束を捻りワイヤー6の間に挟持させ植毛部を設ける。この後にフィラメント7全体をカッターで一定の長さに毛切りすることで、ブラシ部5を製造することができる。また、必要に応じてグラインダによりフィラメント7の先端部分を毛先丸めしてもよい。
【0040】
捻りワイヤー6の形成素材は、具体的には、例えばFe−18Cr−8Niの組成からなる18−8ステンレス鋼や、特開平11−346831号公報に記載されているステンレス鋼、特開平7−227315号公報に記載されているCo合金などが用いられる。
また、ワイヤーの断面形状は、通常円形のものが使用されるが、楕円形、四角形、長方形、六角形のものを用いてもよい。さらに、必要に応じて、ポリアミドやポリウレタン、フッ素樹脂などによってワイヤーを被覆してもよい。
【0041】
フィラメント7は、直径0.0635〜0.1016mm程度のポリアミド(例えば6−10ナイロン、6−12ナイロン)、ポリエステル(例えばポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート)製のモノフィラメントが用いられ、これらのフィラメント7が概略250〜400本程度捻りワイヤー6間に挟持されている。また、通常、フィラメント7全体が円筒形や円錐状になるように毛切り加工される。
フィラメント7の断面形状は、通常円形のものが使用されているが、楕円形、四角形、六角形、星形などのものでもよい。
【0042】
なお、本発明のような歯間ブラシは、通常、フィラメント径、フィラメントの本数、フィラメント束全体の毛切り形状や大きさによって特徴づけられており、SS、S、M、Lの記号で示されるサイズに分類され、使用者の歯間部の大きさによって使い分けられるものである。
【実施例】
【0043】
以下に実施例と比較例を示して本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
「実施例1〜3、比較例1〜3」
実施例1〜3および比較例1〜3として、図1に示されるような歯間ブラシを、ノズル8の厚みdは0.3mm、長さLは2.5mmで、首部3の最小断面積は12mmで、捻りワイヤー6に直径0.25mmのステンレスワイヤーを用い、フィラメント7は2.5milのナイロンを用い、毛切り形状は先端が2.3mm、後端が2.6mmの円錐状で、植毛部の長さは10mmで、ノズル8およびハンドル部1は曲げ弾性率が240〜850MPaの範囲のポリエチレン樹脂を用いて作製した。
このようにして得られた歯間ブラシに対して、「捻りワイヤー耐久性」および「捻りワイヤー引抜強度」について試験を実施して、以下に示すように評価した。
その結果を表1に示す。
【0044】
【表1】

【0045】
「捻りワイヤー耐久性」
<実験方法>
歯間ブラシの台座4を治具で固定し、捻りワイヤー6の先端部に100gの錘を吊り下げ、30rpmで左右90°ずつ、合計180°回転させた時、捻りワイヤー6が破断するまでの回数を測定した。
【0046】
<評価基準>
「耐久性向上率」は、捻りワイヤー6が「ノズル8で被覆した時に破断するまでの回数」を「被覆しない時に破断するまでの回数」で除した値とした。即ち、以下の式(1)により、求められる。
「耐久性向上率」=「ノズル8で被覆した時に破断するまでの回数」÷「被覆しない時に破断するまでの回数」・・・(1)
式(1)で求められた「耐久性向上率」の値から、以下のように3段階評価によって判定した。
○・・・2倍以上。
△・・・1.5倍以上2倍未満。
×・・・1.5倍未満。
【0047】
「捻りワイヤー引抜強度」
<実験方法>
歯間ブラシの台座4を治具で固定し、ブラシ部5を引抜くように力を加え、捻りワイヤー6が台座4から引抜けた時の力をオートグラフにより20mm/minで測定した。
【0048】
<評価基準>
このようにして測定された引抜力の値から、以下のように3段階評価によって判定した。
○・・・25N以上。
△・・・15N以上25N未満。
×・・・15N未満。
【0049】
表1の結果から、ノズル8の形成素材は、曲げ弾性率が300〜450MPaの範囲からなる樹脂であればよい。
【0050】
「ノズル8の厚さdおよび長さL」
曲げ弾性率が380MPaの実施例2の歯間ブラシにおいて、さらにノズル8の厚さdを0.05〜1.0mmの範囲に変化させると同時に、長さLを0.5〜7.0mmの範囲に変化させた歯間ブラシを作製し、「捻りワイヤー耐久性」について試験を実施して、前述と同じ方法で評価した。
その結果を表2に示す。
【0051】
【表2】

【0052】
表2の結果から、捻りワイヤー耐久性の面において、ノズル8の厚さdは0.5mm以下であれば良く、0.2〜0.4mmの範囲が好ましい。ノズル8の長さLは、1.0mm以上であればよく、2.0mm以上が好ましい。
【0053】
「成形性」
ノズル8の厚さdの影響による捻りワイヤー6の露出を調べるため、実施例2の歯間ブラシと同じ仕様で、ノズル8の厚さdを0.02〜1.0mmの範囲で変化させた歯間ブラシを作製し、「成形性」について試験を実施して、以下に示すように評価した。
その結果を表4に示す。
【0054】
【表3】

【0055】
<評価基準>
ノズル8の側面における捻りワイヤー6の露出の有無を検査し、以下のように3段階によって判定した。
○・・・とても良い。(捻りワイヤー6の露出が全く無い。)
△・・・やや良い。(捻りワイヤー6の露出が若干ある。)
×・・・良くない。(捻りワイヤー6の露出がある。)
【0056】
表3の結果から、成形性の面において、ノズル8の厚さは0.1mm以上であればよく、好ましくは0.2mm以上である。
【0057】
「口腔内操作性」
まず、ノズル8の長さLの影響による使用感を調べるために、実施例2の歯間ブラシと同じ仕様で、ノズル8の長さLを0.2〜7.0mmの範囲で変化させた歯間ブラシを作製し、「口腔内操作性」について試験を実施して、以下に示すように評価した。
その結果を表4に示す。
【0058】
【表4】

【0059】
<評価基準>
専門パネラー30名が使用し、以下のように3段階評価によって判定した。
○・・・とても良い。
△・・・やや良い。
×・・・良くない。
【0060】
表4の結果から、口腔内操作性の面において、ノズル8の長さLは5.0mm以下であればよく、4.0mm以下が好ましい。
以上の結果から総合的に、ノズル8の厚さdは0.1〜0.5mmの範囲であればよく、0.2〜0.4mmの範囲が好ましい。長さLは、1.0〜5.0mmの範囲であればよく、2.0〜4.0mmの範囲が好ましい。
【0061】
次に、首部3の最小断面積の影響による使用感を調べるために、実施例2の歯間ブラシと同じ仕様で、首部3の最小断面積を5〜50mmの範囲で変化させて歯間ブラシを作製し、「口腔内操作性」について試験を実施して、前述と同じように評価した。
その結果を表5に示す。
【0062】
【表5】

【0063】
表5の結果から、首部3の最小断面積は10〜40mmの範囲であればよく、11〜15mmの範囲が好ましい。
【0064】
「総合評価」
以上の結果から、ノズル8の形成素材は、曲げ弾性率が300〜450MPaの範囲からなる樹脂であればよい。ノズル8の厚さdは0.1〜0.5mmの範囲であればよく、0.2〜0.4mmの範囲が好ましい。長さLは、1.0〜5.0mmの範囲であればよく、2.0〜4.0mmの範囲が好ましい。首部3の最小断面積は10〜40mmの範囲であればよく、11〜15mmの範囲が好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】図1は、本発明に係る歯間ブラシの第1の実施の形態を示すもので、(a)は歯間ブラシの全体形状を示す側面図、(b)は捻りワイヤーの埋設部分の拡大図、(c)は(b)部分の断面図である。
【図2】図2は、屈曲部を説明するための側面図であり、(a)は第1の実施の形態に用いた形状であり、(b)〜(d)は変形例である。
【図3】図3は、ブラシ部を金型に配置した斜視図である。
【図4】図4は、ブラシ部を配置した金型を装置に設置した断面図である。
【図5】図5は、屈曲部の位置と向きの理由を説明するための例であり、(a)は屈曲部が先端側を向いているが台座の中に納まっている断面図で、(b)は屈曲部が先端側を向いて台座の中に納まっていない断面図である。
【符号の説明】
【0066】
1・・・ハンドル部、2・・・把持部、3・・・首部、4・・・台座、5・・・ブラシ部、6・・・捻りワイヤー、6a・・・基端部、7・・・フィラメント、8・・・ノズル、9・・・屈曲部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つ折にした捻りワイヤーの間に複数のフィラメントを挟持されたブラシ部と、首部を介して前記ブラシ部と把持部を連結するハンドル部とを備え、
前記首部の先端に横向きの台座を設け、該台座に前記捻りワイヤーの基端部を埋設することによってブラシ部とハンドル部を一体化した歯間ブラシにおいて、
前記台座から外部へ露出する捻りワイヤーの付け根部分がノズルによって被覆され、
該ノズルの厚さが0.1〜0.5mmの範囲、長さが1〜5mmの範囲であって、
該ノズルの形成素材は、JIS K 7171による曲げ弾性率が300〜450MPaの範囲からなる樹脂で形成されていることを特徴とする歯間ブラシ。
【請求項2】
前記ハンドル部において、首部の最小断面積が10〜40mmの範囲であることを特徴とする請求項1記載の歯間ブラシ。
【請求項3】
前記捻りワイヤーの基端部において、前記ブラシ部とは一直線にならない屈曲部を少なくとも1箇所設け、
前記屈曲部は、略V字型、略U字型、四角形など、いずれの形状でもよく、
前記屈曲部を前記台座に埋設したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の歯間ブラシ。
【請求項4】
前記屈曲部の形状が、略V字型に加工されていることを特徴とする請求項3に記載の歯間ブラシ。
【請求項5】
前記屈曲部の向きが、前記ハンドル部の把持部に向かって凸状になるように、前記屈曲部を前記台座に埋設したことを特徴とする請求項3または4に記載の歯間ブラシ。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−154901(P2008−154901A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−349082(P2006−349082)
【出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】