説明

殉爆度が向上された鈍感性破砕組成物、及び低エネルギー発火用発火機構を含む破岩装置

【課題】本発明は、テルミット(thermit)反応を基盤とするプラズマ破岩系列の鈍感性破砕組成物、発火機構及びこれを含有する破岩装置に関する。
【解決手段】本発明は、殉爆度が向上された鈍感性破砕組成物、数アンペア(A)の低い電流を用いて得た数十乃至数百ミリジュール(mJ)の低エネルギーで反応する低エネルギー発火用発火機構及びこれらを含めて前記発火機構が前記鈍感性破砕組成物を低エネルギーで着火させ、脆性物体(岩盤、コンクリートなど)を破砕する破岩装置に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テルミット(thermit)反応を基盤とするプラズマ破岩系列の鈍感性破砕組成物、発火機構及びこれを含有する破岩装置に関するものであって、更に詳しくは、殉爆度が向上された鈍感性破砕組成物、数アンペア(A)の低い電流を用いて得た数十乃至数百ミリジュール(mJ)の低エネルギーで反応する低エネルギー発火用発火機構及びこれらを含めて前記発火機構が前記鈍感性破砕組成物を低エネルギーで着火させ、脆性物体(岩盤、コンクリートなど)を破砕する破岩装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
既存のテルミット反応を基盤とする破砕装置としては、ゴールドシュミット 破岩装置(韓国特許10−0184541)、プラズマ破岩用電力衝撃セル(韓国特許10−0308081)、急膨張混合物の反応触発装置(韓国特許10−0442551)、プラズマブラスティング方法及び装置(韓国特許10−0323215)などに開示されたものがある。
【0003】
これらは次のような問題を有する。
その一、これらは主に高融点、高熱量のアルミニウム、又はマグネシウムを発熱剤として使用するため、着火し難いか、着火されたとしても未反応物が発生するなどの問題を有している。また、これらは鈍感性破砕組成物であって、数千ボルトから数万ボルトの高電圧大電力を用いて数十乃至数百キロジュール(KJ)以上の高エネルギーを供給して電気的アークを発生させ、破砕組成物を発火させるため、高電圧による安全上の危険度増加と、大容量コンデンサーの充・放電を通したサージ電圧による接点不良による装備故障及び不発、そして破岩装備類の超大型化設備による装備運用の取扱いにおける不便さ、破岩エネルギー供給において電気的限界により幾つかの孔数までしか破岩できない、非経済的で非効率的な破岩の問題を有している。
【0004】
その二、これらの鈍感性破砕組成物は、原料の比重差異による均等な混合組成物をなすことができず、反応の際に部分的な酸素不足が発生し、反応が中断されるか、不発が発生され、爆発の際に飛散するアルミニウムの微粒子が水分と接続する際に水素ガスが発生し、不発残留された熱源エネルギーによって可燃性水素ガスが爆発濃度に到達すると、2次燃焼される問題を有している。
【0005】
その三、テルミット(thermit)反応を主にした鈍感性破砕組成物は、アルミニウム又はマグネシウムが発熱剤として使用されるため、高い発熱量で威力は高いが、発火点及び融点が非常に高くて着火反応が非常に難しく、燃焼反応過程において高い酸素供給量を必要とするため、感応して殉爆される殉爆度が“0”であって、一つの薬包(cartridge、以下「A 薬包」という)と、これに隣接する薬包(cartridge、以下「B 薬包」という)を必ず近づけて全爆させないと、全爆が続かないか、酸素供給の不足時には未反応物が発生して不発残留される問題を有している。このようにアルミニウム又はマグネシウムを主にした粉状、粉粒状及び粒状の鈍感性破砕組成物はその感度が鈍感で、殉爆度は全部“0”であって、全爆性に劣る。
【0006】
上記において“殉爆”とは、A 薬包を反応させ、隣接したB 薬包に感応されて発火するか、爆燃乃至爆発することから感度を判断できる尺度であって、その値は“殉爆度”で示す。殉爆度は殉爆試験においてA 薬包がB 薬包の発火、爆燃又は爆発で殉爆される最大距離を薬包直径で割った値であって、殉爆度が大きいほど反応感度が良くて不発残留が減少し、殉爆度が低いほど鈍感で、不発残留が増加する。また、鈍感であるほど高い電気的発火エネルギーが要求され、大容量コンデンサー及び高電圧装置が要求される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、テルミット(thermit)反応を基盤とするプラズマ破岩系列の鈍感性破砕組成物であって、その構成成分が均一に混合されるようにし、また、殉爆度を向上させた破砕組成物を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は数十乃至数百キロジュール(KJ)の高電圧大電力のエネルギーを使用せず、1個当たり数十乃至数百ミリジュール(mJ)の低エネルギーの供給で反応が起こる低エネルギー発火用発火機構であって、特に危険物質の使用量を減らして使用・取扱い上の安定性を高めた発火機構を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は前記鈍感性破砕組成物及び発火機構を全部含む破岩装置であって、前記鈍感性破砕組成物が前記発火機構によって完全に反応されて残留薬が残らず、また、A 薬包からB 薬包への感応殉爆度を高め、危険物質の使用量を減らして使用・取扱い上の安定性を高めた破岩機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は鈍感性破砕組成物であって、前記組成物の総重量を基準として、
(a)金属酸化物である酸化剤35乃至45重量%、
(b)金属粉末である還元剤8乃至12重量%及び、
(c)過炭酸ナトリウム(2Na2CO3・3H2O2)、アジ化ナトリウム(NaN3)、五硼酸アンモニウム四水化物(NH4B5O8・4H2O)、硫酸マグネシウム七水化物(MgSO4・7H2O)、硫酸第一鉄七水化物(FeSO4・7H2O)、シュウ酸アンモニウム一水化物 [(NH4)2C2O4・H2O]、及びこれらの混合物でなる群から選ばれる解離圧剤42乃至55重量%を含有し、
追加で、
(d)黄、軽油、重油、灯油及びこれらの混合物でなる群から選ばれる助燃剤0.5乃至5重量%、又は
(e)メチルセルロース(MC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)及びこれらの混合物でなる群から選ばれる粘結剤0.1乃至1.8重量%、又は
(d)と(e)の両方を含有する鈍感性破砕組成物を提供する。
【0011】
また、本発明は発火機構であって、内部の上端から発火剤中心内の発熱線及び高温高熱発生剤を順次含み、前記発火剤は発火物質及び酸素供給剤を含有し、前記高温高熱発生剤は還元剤、酸化剤、及び助燃剤を含有する発火機構を提供する。このような本発明の発火機構は発火剤に酸素供給剤を含有し、高温高熱発生剤に助燃剤を含有することによって、発火剤と高温高熱発生剤との間に着火剤を含まず、発火剤で高温高熱発生剤を直接発火できる発火チェーン(Ignition Chain)構造である。
【0012】
また、本発明は破岩装置であって、
(a)カートリッジ、
(b)前記カートリッジ内部に充填される本発明の鈍感性破砕組成物、及び
(c)前記カートリッジの一側面に装着される本発明の発火機構
を含むものである破岩装置を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、次のような効果が得られる。
【0014】
その一、従来技術において穿孔内カートリッジ薬包の装填の際に、作業与件上、穿孔内で一定距離分離されて離隔されることが発生する場合、 殉爆ができず、不発残留が時々発生するが、本発明の鈍感性破砕組成物ではその構成成分が均一に混合されてその成分比率が一定に維持され、また殉爆度が増加して不発を防止することができ、従って、安全度向上を期待することができる。
【0015】
その二、本発明の発火機構及びこれを含む破岩装置は、数十乃至数百キロジュール(KJ)の高電圧大電力を使用せず、1個当たり数十乃至数百ミリジュール(mJ)の低エネルギーを用いて着火させるため、装備自体が簡単で携帯が便利であり、少ない容量でも斉発可能であって、1回斉発破岩孔数が数十乃至数百孔まで増加するため、作業効率が高く、予算節減効果がある。
【0016】
その三、本発明の発火機構では発熱剤と高温高熱発生剤との間に着火剤を用いなくても発熱剤で高温高熱発生剤を直接発火することが可能な発火チェーン(Ignition Chain)構造によって、危険物質の使用量を減らすことができ、使用・取扱い上の安定を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の発火機構の断面を概略的に示す断面である。
【図2】本発明の破岩装置の断面を概略的に示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、本発明の鈍感性破砕組成物及び本発明の発火機構に関して各々説明した後、前記鈍感性破砕組成物と発火機構を全部含めてなる本発明の破岩装置に関して説明する。
【0019】
本発明の鈍感性破砕組成物はコンクリート、岩盤などの脆性物体を破砕する役割をし、動的な破砕作用である衝撃圧力と静的なガス圧の推進的作用を有することが好ましい。
【0020】
本発明の鈍感性破砕組成物は、以下で説明する破岩装置のカートリッジで発火機構周辺を取り囲んで位置するように内包され、前記発火機構内の最底部に充填されている高温高熱発生剤の衝撃圧と高温高熱によって着火され、その分解反応が行われる。
【0021】
このような本発明の鈍感性破砕組成物は酸化剤、還元剤、解離圧剤、及び助燃剤を含有することができる。また、本発明の鈍感性破砕組成物は酸化剤、還元剤、解離圧剤、及び粘結剤を含有することができる。また、本発明の鈍感性破砕組成物は酸化剤、還元剤、解離圧剤、助燃剤、及び粘結剤を含有することができる。
【0022】
本発明の鈍感性破砕組成物のうち、酸化剤としては金属酸化物が使用され、その具体的な例としては、酸化第二銅、二酸化マンガン、酸化第二鉄、四酸化三鉄又はこれらの混合物がある。好ましくは、酸化剤として酸化第二銅を用いることが良い。このような酸化剤は鈍感性破砕組成物の総重量を基準として35乃至45重量%範囲の量で使用することが好ましい。
【0023】
本発明の鈍感性破砕組成物のうち、還元剤としては金属粉末が使用され、その具体的な例としては、アルミウム粉末、マグネシウム粉末又はこれらの混合物がある。好ましくは、還元剤として、酸素の供給を受けて高い熱エネルギーとしての燃料役割をするアルミニウム粉末を使用することが良い。このような還元剤は鈍感性破砕組成物の総重量を基準として、8乃至12重量%範囲の量で使用することが好ましい。
【0024】
本発明の鈍感性破砕組成物のうち、解離圧剤は、酸化剤と還元剤の高温発熱と衝撃により熱分解されたガス圧を急速度で早く放出する静的な推進的作用の機能を有し、動的衝撃圧作用によって脆性物体の亀裂の隙間に熱分解されて解離された多量のガス圧が拡散され、岩石を移動させながら再度破砕する作用をする。このような解離圧剤の熱解離圧は、酸化剤と還元剤の熱源によって発生した温度が高いほど高い。従って、ガス発生量が大きいほど破岩効果が大きくなるため、単位重量当り、熱分解ガス発生量が大きいことが好ましい。
【0025】
このような解離圧剤としては、過炭酸ナトリウム(2Na2CO3・3H2O2)、アジ化ナトリウム(NaN3)、五硼酸アンモニウム四水化物(NH4B5O8・4H2O)、硫酸マグネシウム七水化物(MgSO4・7H2O)、硫酸第一鉄七水化物(FeSO4・7H2O)、シュウ酸アンモニウ一水火物[(NH4)2C2O4・H2O]、又はこれらの混合物などがある。好ましくは、解離圧剤として硫酸マグネシウム七水化物(エプソム塩)を使用することが良い。このような解離圧剤は前記鈍感性破砕組成物の総重量を基準として、42乃至55重量%の量で使用することが好ましい。
【0026】
本発明の鈍感性破砕組成物のうち、助燃剤は、鈍感性破砕組成物の発火点を低くして着火と燃焼を容易にし、 殉爆度を高める役割をするものであって、 黄、 軽油、重油、灯油又はこれらの混合物を使用することが好ましい。このような助燃剤は前記鈍感性破砕組成物の総重量を基準として、0.5乃至5重量%の量で使用することが好ましい。
【0027】
本発明の鈍感性破砕組成物のうち、粘結剤は、酸化剤、還元剤及び助燃剤の混合物を非活性物質である解離圧剤の粒子周囲に結合させ、これらの一定した成分比率を維持させることによって、均等な酸素供給と通して酸素平衡を維持するとともに燃焼を容易にし、連続的な分解反応を通して未反応物のない完全燃焼と 殉爆度向上を達成する役割をする。
【0028】
このような粘結剤としては、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、及びこれらの混合物でなる群から選ばれたものを使用することが好ましい。このような粘結剤は 前記鈍感性破砕組成物の総重量を基準として、0.1乃至1.8重量%の量で使用することが好ましく、使用の際に粘結剤をアセトン、水、エチルアルコール及びこれらの混合部でなる群から選ばれた溶媒に溶解させ、液体状態で使用する。
【0029】
本発明の鈍感性破砕組成物は、酸化剤、還元剤、解離圧剤及び助燃剤を混合機に投入して混合した後、排出された混合物を振動体を通して縮分して製造することができる。
【0030】
また、本発明の鈍感性破砕組成物は、酸化剤、還元剤、及び解離圧剤を混合機に入れ、粘結剤を溶媒に溶解させて粘結剤液を用意し、これを前記混合機に入れて混合した後、排出された混合物を振動体を通して縮分した後、乾燥させて製造する。
【0031】
また、本発明の鈍感性破砕組成物は、酸化剤、還元剤、解離圧剤及び助燃剤を混合機に入れ、粘結剤を溶媒に溶解させて粘結剤液を用意し、これを前記混合機に入れて混合した後、排出された混合物を振動体を通して縮分した後、乾燥させて製造する。
【0032】
以下では、本発明の発火機構に関して説明する。
【0033】
図1に示したように、本発明の発火機構10は上記した鈍感性破砕組成物を低エネルギーで着火反応させる役割をするものであって、発火機構内部の上端から発火剤13中心内の発熱線12及び高温高熱発生剤14を順次含めてなる。特に、本発明の発火機構10は発熱剤13と高温高熱発生剤14との間に着火剤が別途含まれない構造であって、このような着火剤無しで、発熱剤13で高温高熱発生剤14を直接発火することが可能な発火チェーン(Ignition Chain)構造を有する。
【0034】
このような本発明の発火機構10は高温高熱発生による着火にその目的があるため、発火機構はアルミニウム又は銅のような金属材質以外にプラスチックからなっても良い。
【0035】
本発明の発火機構10のうち、発熱線12は、銅導線11の末端にスポットウェルディング(spot welding)などの方法で溶接させて得たものであって、発熱剤13の中心に位置する。このような発熱線12は銅導線11を介した低エネルギー供給によって発熱され、発熱された熱エネルギーは発火剤13の発火点以上の発熱温度を瞬く間に発生させて発火剤13を発火させることになり、発火された発火剤13は一定距離離隔された高温高熱発生剤14を感応させ、約2500℃以上の高温高熱と衝撃圧を同時に発生させる。ここで発生された衝撃圧は発火機構を破裂させ、同時に発生された高温高熱と衝撃圧は鈍感性破砕組成物を反応させる役割をする。
【0036】
上記した発熱線12、発熱剤13及び高温高熱発生剤14はアルミニウム、銅、プラスチックなどの発火機構内に保護されており、これらを含む本発明の発火機構10は、下記で説明する本発明の破岩装置1において、破岩装置1の一側面を通して鈍感性破砕組成物20内の正中央に着脱可能な構造である(図2参照)。このような発火機構10によって発生する高温高熱と衝撃圧により鈍感性破砕組成物20は容易に着火されて熱分解反応が持続し、鈍感性破砕組成物の薬包と薬包を連続感応殉爆させる。
【0037】
本発明の発火機構中の発熱剤13を発火させる発熱線12は、供給電流、発熱線径、発熱線長さが同一な場合には比抵抗が大きいほど発熱量は大きくなるが、単位長さ当り抵抗値も同様に大きくなるため、一定した値の範囲内の比抵抗値を有することが好ましい。
【0038】
本発明の発火機構中の発熱剤13を発熱させるために好ましい発熱線12の比抵抗は、18.4 μ ohm・cm乃至134 μ ohm・cmが好ましい(実施例1参照)。比抵抗が18.4 μ ohm・cm乃至134 μ ohm・cmである発熱線12としては、ニッケル/クロム(90/10)の合金、白金/イリジウム(90/10)の合金、白金/ロジウム(90/10)の合金、ニッケル/クロム/アルミニウム/銅(75/20/2.5/2.5)の合金などがある。
【0039】
本発明で使用する発熱剤13に含有される発火物質としては、前記発熱線12の発熱によって容易に発火できる、即ち、発火点の低いレゾルシン塩が好ましく、このような発火物質としては、ニトロ基が一つであるモノ二トロレゾルシン鉛、ニトロ基が二つであるジニトロレゾルシン鉛又はこれらの混合物を使用することができる。
【0040】
前記レゾルシン塩は全部発火点が300℃以下であって、発熱線の発熱量によって発火剤が発火されるとともに高温高熱発生剤を感応させて着火させる与爆(donor)の機能を有する。
【0041】
また、上記した発火物質の発火燃焼の際に充分な酸素供給を通じて燃焼反応が円滑に行われるようにし、また、与爆機能を更に大きくするように、酸素供給剤を発火物質と混合して使用する。
【0042】
前記発火物質と混合使用する酸素供給剤は多量の酸素を発生させて燃焼を促進させるとともに、発火の際に発生する炎を大きくして高温高熱発生剤の感応(Acceptor)能力を高める役割をする。このように発火物質と混合使用される酸素供給剤としては、過マンガン酸カリウム、二酸化マンガン、又はこれらの混合物を使用することができる。このような酸素供給剤を発火物質重量を基準として5乃至70重量%の量で使用することが好ましい。
【0043】
このような発火物質及び酸素供給剤を含有する発火剤は、発火によって発生した火炎サイズ及び火炎持続時間が高温高熱発生剤の着火に影響を及ぼすため、これを10mg乃至35mgの量で使用することが好ましい。
【0044】
本発明で使用する高温高熱発生剤14は発火剤13によって感応爆発(acceptor)されるとともに鈍感性破砕組成物20を着火させる役割をするが、発火剤13と一定距離離隔されて発火剤13の真下に位置する。
【0045】
このような高温高熱発生剤14は酸化剤と還元剤の総重量を基準として酸化剤75乃至85重量%及び還元剤15乃至25重量%を含有することが好ましい。本発明による高温高熱発生剤は着火が容易であるように助燃剤を更に含有する。助燃剤の使用量は上記した酸化剤及び還元剤の総重量を基準として0.5乃至15重量%の量で使用することが好ましい。
【0046】
このような酸化剤、還元剤及び助燃剤を含有する高温高熱発生剤14は0.7乃至2gの量で使用することが好ましい。
【0047】
前記酸化剤としては金属酸化物が使用され、その具体的な例としては、酸化第二銅、二酸化マンガン、酸化第二鉄、四酸化三鉄又はこれらの混合物などがある。好ましくは、酸化剤として酸化第二銅を用いることが良い。
【0048】
前記還元剤としては金属粉末が使用され、その具体的な例としては、アルミ二ウム粉末、マグネシウム粉末、又はこれらの混合物などがある。好ましくは、還元剤としてアルミ二ウム粉末を用いることが良い。
【0049】
前記助燃剤としては、窒素量12%未満の綿藥(nitrocellulose)、黄(S)又はこれらの混合物でなる群から選ばれたものを使用することができる。
【0050】
本発明による高温高熱発生剤14は酸化剤、還元剤、助燃剤などを一定量を計量混合して用意し、その混合物をアルミニウム管及び銅管などの金属管又はプラスチック管などの本発明の発火機構10内の底部に充填する。
【0051】
このような高温高熱発生剤を本発明の発火機構に充填することにおいて、本発明の鈍感性破砕組成物の着火能力を高め、威力を増大させるために、30kg/cm2乃至150kg/cm2の圧力で加圧充填して密度を高めることにより単位体積当り重量を大きくし、反応速度と発生圧力を高めて鈍感性破砕組成物の与爆能力を高めることができる。
【0052】
以下では前記鈍感性破砕組成物及び発火機構を含む本発明の破岩装置に関して説明する。
【0053】
図2において、本発明の破岩装置1は、
カートリッジ2、
前記カートリッジ2内部に充填される本発明の鈍感性破砕組成物20、及び
前記カートリッジ2の一側面に装着される本発明の発火機構10
を含んでなる。
上記したように、本発明の発火機構10は本発明の破岩装置1の一側面を通して鈍感性破砕組成物20内の正中央に着脱可能な構造である。
【0054】
実施例1
直径0.5mm、長さ2.5mの銅導線の末端に下記の表1の発熱線を各々スポットウェルディング(spot welding)して発熱線を用意し、モノ二トロレゾルシン鉛と過マンガン酸カリウムを7:3の重量比率となるように混合した発火剤を30mg使用し、供給電流を同一にして発熱線の種類により発火剤が完爆したか否かを確認し、その電気的特性を測定した。この結果を下記の表1に示した。
【0055】
【表1】

前記表1から分かるように、発火力積(mW・sec/Ω)は試料4が一番小さく、試料2、試料1及び試料5の順で段々とその数値が大きくなった。発火力積が小さいほど低いエネルギーでも発火が可能である。試料3は発熱線の比抵抗が一定値以下である場合は、発火される以前に熱膨張により発熱線が切られて不発が生じたと見られ、試料6は更に高い電流乃至は早い熱伝導が要求されると見られる。従って、発熱線の比抵抗は18.4 μ ohm・cm乃至134 μ ohm・cmであることが好ましい。
【0056】
実施例2
発火剤が鈍感な高温高熱発生剤を充分に着火させて感応分解されるようにする最小発火薬量を求めるために、直径0.5mm、長さ2.5mである銅導線の末端に発熱線をスポットウェルディングして発熱線を用意し、ジ二トロレゾルシン鉛と二酸化マンガンを6:4の重量比率となるように混合した発火剤を表2のように薬量別に変化させ、供給電流は2.0Aにして完爆したか否かを確認した。この結果を表2に示した。
【0057】
【表2】

注1)発熱線種類:白金(90):イリジウム(10)
注2)高温高熱発生剤は0.8gで同一薬量
(アルミニウム:酸化第二銅:黄=17:78:5)
注3)高温高熱発生剤の加圧は100kg/cm2で発火機構内に充填。
【0058】
自然状態で充填した場合には10mg以上の発火剤量で完爆がなされたが、加圧して充填した場合には5mg以上の発火剤量で完爆がなされた。従って、自然状態で充填することより加圧して充填する方が発火剤量を若干減少させることが分かる。従って、発火剤により反応された高温高熱発生剤が鈍感性破砕組成物を反応させるためには、高温高熱発生剤を発火機構に加圧して充填することが密度を増加させ、結果的に反応速度などを増加させるため、好ましい。発火剤の量は10mg以上であれば、充分に高温高熱発生剤を感応させ、完爆させることが可能な与爆能力が見られると確認された。また、発火剤と高温高熱発生剤との間に着火剤を使用しなくても発火剤で高温高熱発生剤を直接発火できることが確認された。安全率3倍以上を考慮し、発火剤の量は30mg程度が好ましい。
【0059】
実施例3
アルミニウム粉末(11.2重量%)、酸化第二銅(23.5重量%)、酸化第二鉄
(15.0重量%)、アジ化ナトリウム(50.3重量%)の混合物を用意する。このような混合物の総重量を基準としてエチルアルコール11.5重量%にヒドロキシプロピルメチルセルロース0.2重量%を入れて充分に溶解させた後、よくかき混ぜて粘結剤液を用意する。
【0060】
前記混合物を混合機に投入し、充分に混合した後、別途容易した前記粘結剤液を混合機に投入して混合する。混合機から排出された混合物を振動体を通して縮分した後、野外乾燥して臭いを除去し、60℃の温度を維持する乾燥室で24時間乾燥する。このような方法で得た乾燥物を直径34mm、長さ400mmのプラスチックカートリッジ筒内に詰めて入れた後、発火機構に低エネルギー供給を実施し、発火機構の完全な反応によって鈍感な破砕組成物が完爆したか否かを確認した。その結果を表3に記載した。
【0061】
【表3】

注1)発火剤量30mg
注2)高温高熱発生剤0.8g
注3)完爆数/試料数
電流の大きさが0.6A以上であると、発火剤が発火されるが、鈍感性破砕組成物を完爆させることはできないことが分かり、電流の大きさが2.0A以上になるとようやく鈍感性破砕組成物が完爆されることが確認できるが、斉発の際には製造上、発火剤の感度、斉発数量、電流縲絏、接触抵抗、発熱線抵抗の偏差などを考慮して充分な発火電流が供給されるように、安全率5倍を取って1個当り供給される発火電流は10A以上にすることが好ましい。また、供給電流が大きくなるほど発火力積(Ignition Impulse, mW・sec/Ω), 臨界発火エネルギー(mj)は値が減少し、単位時間当り供給エネルギーは大きくなる傾向を示す。
【0062】
実施例4
マグナリウム(11重量%、Mg:Al=3:7)、酸化第二銅(41.0重量%)、過炭酸ナトリウム(47.0重量%)、黄(1.0重量%)の混合物を用意する。
このような混合物を下記の表4のように発火機構に10Aの低エネルギーを供給し、発火剤の発火を通して高温高熱発生剤が発火するのかを判断し、自然状態充填と加圧充填に区分して高温高熱発生剤の薬量により鈍感性破砕組成物への与爆能力(donor)を確認した。
【0063】
【表4】

高温高熱発生剤を加圧して発火機構内に充填したものが、発火機構内に自然状態そのまま充填したものより密度が高く、 鈍感性破砕組成物への与爆能力が更に高いことが確認できた。高温高熱発生剤の量は0.7g以上であれば、充分に鈍感性破砕組成物を完爆することが可能な与爆能力が見られると確認された。
【0064】
実施例5
下記の表5の各試料を各々の組成によって混合して用意する。
本発明1の試料を用意するために、アルミニウム粉末(11.2重量%)、酸化第二銅(23.5重量%)、酸化第二鉄(15重量%)、及びアジ化ナトリウム(50.3重量%)を混合する。このような混合物の総重量を基準としてエチルアルコール11.5重量%にヒドロキシプロピルメチルセルロース0.2重量%を入れて充分に溶解させた後、よくかき混ぜて粘結剤液を用意する。前記混合物を混合機に投入し、充分に混合した後、別途容易した前記粘結剤液を混合機に投入して混合する。混合機から排出された混合物を振動体を通して縮分した後、野外乾燥して臭いを除去し、60℃の温度を維持する乾燥室で24時間乾燥し、本発明1の試料を用意する。
【0065】
また、本発明3の試料を用意するために、アルミニウム粉末(10.5重量%)、酸化第二銅(41.0重量%)、硫酸マグネシウム七水化物(47.3重量%)及び黄(1.2重量%)を混合する。このような混合物の総重量を基準として60℃の暖かい水3重量%にメチルセルロース0.3重量%を入れて充分に溶解させた後、エチルアルコール10重量%を入れてよくかき混ぜて粘結剤液を用意する。前記混合物を混合機に投入し、充分に混合した後、別途容易した前記粘結剤液を混合機に投入して混合する。混合機から排出された混合物を振動体を通して縮分した後、野外乾燥して臭いを除去し、60℃の温度を維持する乾燥室で24時間乾燥し、本発明3の試料を用意する。
【0066】
このような方法で得た各々の試料(鈍感性破砕組成物)を直径34mm、長さ400mmのプラスチックカートリッジ筒内に詰めて入れた後、発火機構の完全な反応で鈍感性破砕組成物が完全に反応するのか確認するために、カートリッジ(薬包)を5mm間隔で離隔させながら開放状態と密閉状態における殉爆距離と完爆したか否かを確認した。発火機構の10Aの電流供給による鈍感性破砕組成物の殉爆度は下記の表5のようである。
【0067】
【表5】


注1)カートリッジ薬径:34mm
注2)開放殉爆度は砂上に一直線状に溝を掘ってカートリッジを置いた後、測定
注3)密閉殉爆度は一方を閉じた鋼管内にカートリッジを入れて測定
酸化剤、還元剤及び解離圧剤のみ含む鈍感性破砕組成物の殉爆度と比べて、粘結剤を更に添加した鈍感性破砕組成物の殉爆度が密閉殉爆度を基準として3倍高いことが確認でき、酸化剤、還元剤及び解離圧剤のみ含む鈍感性破砕組成物の殉爆度と比べて、発火点が低い黄を更に添加した鈍感性破砕組成物の殉爆度が密閉殉爆度を基準として6倍以上ほど高いことが確認できた。また、助燃剤以外に 粘結剤を加えた鈍感性破砕組成物の殉爆度は、酸化剤、還元剤及び解離圧剤のみ含む鈍感性破砕組成物の殉爆度と比べて、密閉殉爆度を基準として9倍以上高いことが確認できた。
【0068】
一方、密閉状態の殉爆度が開放状態の殉爆度より約3倍高いことが確認できた。従って、殉爆度が高くなることにより、作業与件上、薬包が離脱された場合でも、穿孔内における不発残留が大きく減少される。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明によると、殉爆度が向上された、テルミット(thermit)反応を基盤とするプラズマ破岩系列の鈍感性破砕組成物、数アンペア(A)の低い電流を用いて得た数十乃至数百ミリジュール(mJ)の低エネルギーで反応する低エネルギー発火用発火機構及びこれらを含めて前記発火機構が前記鈍感性破砕組成物を低エネルギーで着火させ、脆性物体(岩盤、コンクリートなど)を破砕する破岩装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0070】
1:破岩装置
2:カートリッジ
10:発火機構
11:銅導線
12:発熱線
13:発火剤
14:高温高熱発熱剤
20:鈍感性破砕組成物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鈍感性破砕組成物であって、前記組成物の総重量を基準として、
(a)金属酸化物である酸化剤35乃至45重量%、
(b)金属粉末である還元剤8乃至12重量%、
(c)過炭酸ナトリウム(2Na2CO3・3H22)、アジ化ナトリウム(NaN3)、五硼酸アンモニウム四水化物(NH458・4H2O)、硫酸マグネシウム七水化物(MgSO4・7H2O)、硫酸第一鉄七水化物(FeSO4・7H2O)、シュウ酸アンモニウム一水化物 [(NH4224・H2O]、及びこれらの混合物でなる群から選ばれる解離圧剤42乃至55重量%、
(d)黄(S) である助燃剤0.5乃至5重量%、及び
(e)メチルセルロース(MC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)及びこれらの混合物でなる群から選ばれる粘結剤0.1乃至1.8重量%を含有するものである鈍感性破砕組成物。
【請求項2】
前記酸化剤は、酸化第二銅、二酸化マンガン、酸化第二鉄、四酸化三鉄又はこれらの混合物でなる群から選ばれるものである請求項1に記載の鈍感性破砕組成物。
【請求項3】
前記還元剤は、アルミウム粉末、マグネシウム粉末及びこれらの混合物でなる群から選ばれるものである請求項1に記載の鈍感性破砕組成物。
【請求項4】
発火機構であって、
内部の上端から発火剤中心内の発熱線及び高温高熱発生剤を順次含み、前記発火剤は発火物質及び酸素供給剤を含有し、前記高温高熱発生剤は還元剤、酸化剤、及び助燃剤を含有するものである発火機構。
【請求項5】
前記発熱線の比抵抗は、18.4 μ ohm・cm乃至134 μ ohm・cmである請求項4に記載の発火機構。
【請求項6】
前記発火物質は、モノ二トロレゾルシン鉛、ジニトロレゾルシン鉛、及びこれらの混合物でなる群から選ばれるものである請求項4に記載の発火機構。
【請求項7】
前記酸素供給剤は、過マンガン酸カリウム、二酸化マンガン、及びこれらの混合物でなる群から選ばれるものであって、前記発火物質の重量を基準として5乃至70重量%の量で前記発火剤に含有されるものである請求項4に記載の発火機構。
【請求項8】
前記高温高熱発生剤は、前記還元剤と酸化剤の総重量を基準として金属粉末である還元剤15乃至25重量%、金属酸化物である酸化剤75乃至85重量%、及び窒素量12%未満の綿藥(nitrocellulose)、黄(S)及びこれらの混合物でなる群から選ばれる助燃剤0.5乃至15重量%を含有するものである発火機構。
【請求項9】
前記還元剤は、アルミウム粉末、マグネシウム粉末及びこれらの混合物でなる群から選ばれるものであり、前記酸化剤は、酸化第二銅、二酸化マンガン、酸化第二鉄、四酸化三鉄及びこれらの混合物でなる群から選ばれるものである請求項4に記載の発火機構。
【請求項10】
破岩装置であって、
(a)カートリッジ、
(b)前記カートリッジ内部に充填される第1項乃至第3項の何れか1項による鈍感性破砕組成物、及び
(c)前記カートリッジの一側面に装着される第4項乃至第9項の何れか1項による発火機構
を含むものである破岩装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−202492(P2010−202492A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−238427(P2009−238427)
【出願日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【特許番号】特許第4489142号(P4489142)
【特許公報発行日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(509286732)ウォンハコーポレーション株式会社 (3)
【氏名又は名称原語表記】WONHWA CONSTRUCTION CO., LTD.
【出願人】(509286721)ウォンハティーアンドアールビー株式会社 (1)
【氏名又は名称原語表記】WONHA TUNNELLING & ROCK BLASTING CO., LTD.
【出願人】(509286695)ウォンハ総合建設株式会社 (3)
【氏名又は名称原語表記】WONHA ENGINEERING & CONSTRUCTION CO., LTD.