説明

段ばらし装置

【課題】 複数の物品の集合体が段積みされた物品群から最上段の集合体を四側面から把持して移載する段ばらし装置であって、集合体を把持した際の物品の変形によるせり上がりを抑えて面構成の崩れを防止する。
【解決手段】 把持部材4aをその把持面の下部が上部より集合体Baへ寄る向きに傾け、物品群Bの上方位置に把持時の物品bの変形によるせり上がりを抑える抑え部材6を設ける。集合体Baを四側面から把持する際、物品bが変形によりせり上がろうとしても抑え部材6で抑えられるから、集合体Baの面構成が崩れることなく把持が安定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の物品の集合体が段積みされた物品群から最上段の集合体を四側面から把持して移載する段ばらし装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の段ばらし装置が特許文献1〜6に開示されている。これらの技術は、複数の物品の集合体が段積みされた物品群を載せて昇降する昇降台と、上昇した物品群から最上段の集合体を四側面から把持して移載する把持部材とを備え、把持部材は垂直の把持面を有し、集合体の側面に対して水平に進退する構造を特徴としている。ところで、これらの技術は把持した後に下段の集合体から離間させる際、把持した集合体の物品の変形度合い等によって摩擦抵抗が低下し、物品が落下して把持できなくなることがあった。
【0003】
これに対し、前記問題を解決した技術が特許文献7に開示されている。この技術は、把持部材をその把持面の下部が上部より集合体へ寄る向きにわずかに傾けたことを特徴とし、摩擦抵抗の低下で物品が下方へずれても把持部材の下部に引っ掛かり、必要以上の押力で変形させることなく落下を防止して把持できるというものである。しかしながら、この技術では把持部材の傾きで上部の押力が下部に対して低下するから、図9に示すように集合体Baを把持した際に中央部の物品bが変形により押力の弱い上方へ逃げようとせり上がり、集合体Baの面構成を崩してしまうことがあった。図中、10は把持部材、Bは物品群である。
【特許文献1】特開昭59−138529号公報
【特許文献2】特公平1−29668号公報
【特許文献3】特開平7−196109号公報
【特許文献4】特開2001−72244号公報
【特許文献5】特開2002−128275号公報
【特許文献6】特開2005−34969号公報
【特許文献7】特開2007−204174号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、従来のこれらの問題点を解消し、集合体を把持した際の物品の変形によるせり上がりを抑えて面構成の崩れを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる課題を解決した本発明の構成は、
1) 複数の物品を横方向に寄せ集めて平面矩形状の集合体とし、同集合体を段積みした物品群から最上段の集合体の四側面を水平に進退する複数の把持部材で把持して移載する段ばらし装置であって、把持部材をその把持面の下部が上部より集合体へ寄る向きに傾け、物品群の上方位置に把持時の物品の変形によるせり上がりを抑える抑え部材を設けたことを特徴とする、段ばらし装置
2) 抑え部材が、集合体の上面から所定間隔をおいた位置に配置されるものである、前記1)記載の段ばらし装置
3) 抑え部材を集合体の上面に自重で当接させた後に引き動作させて集合体の上面から所定間隔をおいた位置に保持する引き動作機構を設けた、前記2)記載の段ばらし装置
4) 引き動作機構が、抑え部材の自重による降下を低速にさせる持上げ用シリンダと、抑え部材の上部に取り付けて昇降するラックギヤと、ラックギヤと歯合して従動する昇降可能なピニオンギヤと、ピニオンギヤの下部と歯合できるロック用ラックギヤと、ロック用ラックギヤをピニオンギヤに歯合させてラックギヤを所定距離上昇させ且つロック用ラックギヤをピニオンギヤから離間させるロック用シリンダとで構成されたものである、前記3)記載の段ばらし装置
5) 抑え部材と集合体の上面との間の所定間隔が4〜6mmの範囲である、前記2)〜4)いずれか記載の段ばらし装置
6) 把持部材の傾斜角度が垂直に対して0.5〜2°の範囲である、前記1)〜5)いずれか記載の段ばらし装置
にある。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、最上段の集合体を四側面から把持する際、物品が変形によりせり上がろうとしても抑え部材で抑えられるから、集合体の面構成が崩れることなく把持が安定する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明では、抑え部材を集合体の上面から所定間隔をおいた位置に配置し、集合体の面構成が崩れない範囲で物品がわずかにせり上がりできるようにすると、把持部材の押力が開放されて物品の著しい変形を防止できる。抑え部材と集合体の上面との間の所定間隔は4〜6mmの範囲が適当であるが、物品の寸法や強度、変形の度合い等に応じて適宜変更される。抑え部材は集合体の上面に自重で当接させた後に引き動作させて所定間隔をおいた位置に保持する引き動作機構を設けると、集合体の高さが把持の都度異なっても、常に集合体の上面から一定の間隔をおいた位置に保持できる。以下、本発明の実施例を図面に基づいて具体的に説明する。
【実施例1】
【0008】
図1〜8に示す実施例は、多段の段ボール箱群を一段づつばらして移載する段ばらし装置の例である。図1は実施例の段ばらし装置を側面図、図2は実施例の移載装置の平面図、図3は実施例の把持部材の拡大図、図4は実施例の抑え部材の説明図、図5は図4の一部を省略した左側面図、図6は実施例の引き動作機構の説明図、図7は実施例の抑え部材の動作を示す説明図、図8は実施例の集合体の把持状態を示す説明図である。
【0009】
図中、1は段ばらし装置、1aはフレーム、2は搬送コンベヤ、3は昇降台、3aはベース、4は移載装置、4aは把持部材、4bは進退機構、4cは車輪、5は荷降しコンベヤ、5aは昇降台、6は抑え部材、7は引き動作機構、7aはラックギヤ、7bは持上げ用シリンダ、7cはロッド、7dはピニオンギヤ、7eはラックホルダ、7fはロック用シリンダ、7gはロッド、7hはロック用ラックギヤ、7iはサポート、7jはガイドブラケット、7kはスライドガイド、7mはフック、7nはストッパ、7pは止め板、7qはフレーム、Bは物品群、Baは集合体、bは物品、Pはパレットである。
【0010】
本実施例の段ばらし装置1は、図1に示すようにパレットPに積み付けられた物品群Bを搬送する複数の搬送コンベヤ2と、物品群Bを載せた搬送コンベヤ2をベース3aと集合体Baの把持位置との間で昇降させる昇降台3と、上昇した物品群Bから最上段の集合体Baを四側面から把持して移載する移載装置4と、移載先に把持した集合体Baを降ろして送り出す荷降しコンベヤ5とで構成されている。荷降しコンベヤ5は昇降台5aで昇降できるようにしている。
【0011】
移載装置4は、図2に示すように4体の把持部材4aで集合体Baを前後左右から包囲するように作動させる進退機構4bを有し、四隅に備えた車輪4cでフレーム1a上を走行して移載位置へ移動できるようにしている。4体の把持部材4aの角度θは、図3に示すようにその下部が上部より集合体Baへ寄る向きにそれぞれ1°傾けている(やや誇張して図示している)。抑え部材6は移載装置4の中央部に4体設け、自重で降下できるようにしている。
【0012】
引き動作機構7は、図4〜6に示すように抑え部材6の上部にラックギヤ7aを取り付け、先端に切欠きが形成されたフック7mをラックギヤ7aの上部に取り付け、持上げ用シリンダ7bのロッド7cの下部をフック7mの切欠きに通し、そのロッド7cの下端に止め板7pを取り付けてフック7mの下面と掛止できるようにし、ラックギヤ7aと歯合して従動するピニオンギヤ7dを昇降自在に配置し、ラックホルダ7eをロック用シリンダ7fのロッド7gに取り付けてピニオンギヤ7dを軸支しながら昇降自在にし、ラックホルダ7eの下端にピニオンギヤ7dの下部と歯合できるロック用ラックギヤ7hを設けている。持上げ用シリンダ7bは抑え部材の自重による降下を低速にさせるためのものである。サポート7iはピニオンギヤ7dを下限位置で保持するためのものである。ガイドブラケット7jに備えたスライドガイド7kはラックギヤ7aがピニオンギヤ7dから離間しないように支持するためのものである。フック7mの下面に備えたストッパ7nは抑え部材6の降下時にフレーム7qと当接して抑え部材6の下限位置を規制するものである。
【0013】
本実施例では、図7(a)に示すように、ロック用シリンダ7fを伸張させてロック用ラックギヤ7hをピニオンギヤ7dから離間させ、抑え部材6を下限位置まで自重で降下させておく(ピニオンギヤ7dは従動する)。抑え部材6は持上げ用シリンダ7bでゆっくりと降下する。図7(b)に示すように、物品群Bを載せた搬送コンベヤ2を昇降台3で上昇させると最上段の集合体Baの上面が抑え部材6に当接し、ラックギヤ7aに備えたフック7mが持上げ用シリンダ7bのロッド7cに沿いながら抑え部材6が持ち上げられ(ピニオンギヤ7dは従動する)、最上段の集合体Baが把持位置まで上昇すると昇降台3を停止させる。
【0014】
図7(c)に示すように、ロック用シリンダ7fを縮退させてロック用ラックギヤ7hとピニオンギヤ7dとを歯合させる。この状態でラックギヤ7aはピニオンギヤ7dでロックされる。図7(d)に示すようにロック用シリンダ7fをさらに縮退させてラックギヤ7aをロック状態のピニオンギヤ7dとともに若干上昇させ、抑え部材6の下面と集合体Baの上面との間に5mmの間隔Hを形成する。これらの工程により、集合体Baの高さが把持の都度異なっても、抑え部材6を常に集合体Baの上面から一定の間隔をおいた位置に保持できる。
【0015】
そして、図8に示すように4体の把持部材4aで集合体Baの四側面を把持する。このとき、把持部材4aの傾きにより中央部の物品bがせり上がろうとすることがあるが、上方の抑え部材6に当接してそれ以上のせり上がりが抑えられ、面構成が崩れることなく把持が安定する。しかも、抑え部材6と集合体Baの上面との間に間隔Hが形成されているから、把持部材4aの押力が開放されて物品bの著しい変形が防止される。
【0016】
その後、昇降台3を若干降下させて下段の集合体Baから離間した後に移載装置4を移載位置へ移動させ、昇降台5aで荷降しコンベヤ5を荷降し位置まで上昇させ、把持部材4aを解放して集合体Baが荷降しコンベヤ5に載ると、荷降しコンベヤ5が上昇前の位置へ降下して集合体Baを送り出す。移載装置4は元の位置に復帰し、ロック用シリンダ7fを伸張させてロック用ラックギヤ7hをピニオンギヤ7dから離間させ、抑え部材6を自重で下限位置まで降下させて次の集合体Baに持ち上げられるまで待機する。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明の段ばらし装置は、段ボール箱など変形し易い物品の段ばらしに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例の段ばらし装置を側面図である。
【図2】実施例の移載装置の平面図である。
【図3】実施例の把持部材の拡大図である。
【図4】実施例の抑え部材の説明図である。
【図5】図4の一部を省略した左側面図である。
【図6】実施例の引き動作機構の説明図である。
【図7】実施例の抑え部材の動作を示す説明図である。
【図8】実施例の集合体の把持状態を示す説明図である。
【図9】従来の集合体の把持状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0019】
1 段ばらし装置
1a フレーム
2 搬送コンベヤ
3 昇降台
3a ベース
4 移載装置
4a 把持部材
4b 進退機構
4c 車輪
5 荷降しコンベヤ
5a 昇降台
6 抑え部材
7 引き動作機構
7a ラックギヤ
7b 持上げ用シリンダ
7c ロッド
7d ピニオンギヤ
7e ラックホルダ
7f ロック用シリンダ
7g ロッド
7h ロック用ラックギヤ
7i サポート
7j ガイドブラケット
7k スライドガイド
7m フック
7n ストッパ
7p 止め板
7q フレーム
10 把持部材
B 物品群
Ba 集合体
b 物品
P パレット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の物品を横方向に寄せ集めて平面矩形状の集合体とし、同集合体を段積みした物品群から最上段の集合体の四側面を水平に進退する複数の把持部材で把持して移載する段ばらし装置であって、把持部材をその把持面の下部が上部より集合体へ寄る向きに傾け、物品群の上方位置に把持時の物品の変形によるせり上がりを抑える抑え部材を設けたことを特徴とする、段ばらし装置。
【請求項2】
抑え部材が、集合体の上面から所定間隔をおいた位置に配置されるものである、請求項1記載の段ばらし装置。
【請求項3】
抑え部材を集合体の上面に自重で当接させた後に引き動作させて集合体の上面から所定間隔をおいた位置に保持する引き動作機構を設けた、請求項2記載の段ばらし装置。
【請求項4】
引き動作機構が、抑え部材の自重による降下を低速にさせる持上げ用シリンダと、抑え部材の上部に取り付けて昇降するラックギヤと、ラックギヤと歯合して従動する昇降可能なピニオンギヤと、ピニオンギヤの下部と歯合できるロック用ラックギヤと、ロック用ラックギヤをピニオンギヤに歯合させてラックギヤを所定距離上昇させ且つロック用ラックギヤをピニオンギヤから離間させるロック用シリンダとで構成されたものである、請求項3記載の段ばらし装置。
【請求項5】
抑え部材と集合体の上面との間の所定間隔が4〜6mmの範囲である、請求項2〜4いずれか記載の段ばらし装置。
【請求項6】
把持部材の傾斜角度が垂直に対して0.5〜2°の範囲である、請求項1〜5いずれか記載の段ばらし装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−215026(P2009−215026A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−62387(P2008−62387)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(000196705)西部電機株式会社 (80)
【Fターム(参考)】