説明

段ボール製ダクトの支持架台及び固定方法

【課題】ダクト同士を相互にずれないように簡単に接続して、位置決めした状態で固定できるようにする。
【解決手段】支持架台1として、上板部2の両側に下方へ向かう側板部3を連設し、上板部2にダクト押当片5及びバンド挿通穴6を設けたものを複数個用意し、各支持架台1のダクト押当片5を起立させ、支持架台1を、ダクト押当片5が一直線上に揃うように配置し、ダクトDを支持架台1に載せて、ダクトDの側面をダクト押当片5に当接させ、ダクトD同士を接続すると共に、ダクトDにバンド21を巻いて、バンド21の両端部をバンド挿通穴6に挿通係止し、ダクトDを支持架台1に固定する。支持架台1に対しダクトDを摺り動かして位置調整することなく、ダクトDを接続固定できるので、施工性の向上を図りつつ、ダクトDの表面の傷付きによる不燃性の低下を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、空調用や換気用等として設置される段ボール製ダクトの支持架台及びこれを使用したダクトの固定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、店舗や工場、倉庫等の建築物に設置される空調用ダクトには、鋼製のものが使用されており、その吊り下げによる支持構造が下記特許文献1に記載されている。しかしながら、近年、下記特許文献2,3に記載されたように、軽量で取扱性に優れた段ボール製のものが使用される場合もある。
【0003】
下記特許文献3には、図8に示すように、段ボール製ダクトDとして、不燃性を確保するため、段ボール51にアルミ箔52をラミネートし、周縁をアルミテープ等の不燃性の粘着テープ53でシールした基材を角筒状に折り曲げたものが記載されている。
【0004】
このダクトDを接続して管路を形成する際には、図9に示すように、ダクトD同士を突き合わせ、その突合部の外周に不燃性の粘着テープ54を巻き付ける。さらに、図10に示すように、突合部の外周にソケット55を巻き付けて補強することもある。
【0005】
また、図11に示すように、支持架台56を建築物の天井から吊下ボルト57により吊り下げ、支持架台56にダクトDを載せる支持構造も開示されている。この支持構造は、通常の鋼製ダクトにおいても採用されているものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4−186050号公報
【特許文献2】特開2006−1095号公報
【特許文献3】特開2007−147185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記のように、段ボール製のダクト同士は、粘着テープで簡単に接続できるが、その突合部のずれを防止するため、ソケット等の部材で補強するには、相当な手間を要するという問題がある。
【0008】
また、支持架台にダクトを載せて位置決めする際、ダクト表面のアルミ箔が傷付いて不燃性が損なわれないように、ダクトを持ち上げて少しずつ慎重に移動させる必要があり、非常に時間がかかるという問題がある。
【0009】
そこで、この発明は、ダクト同士を相互にずれないように簡単に接続して、位置決めした状態で固定できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、この発明は、上板部の両側に下方へ向かう側板部を連設し、上板部に段ボール製ダクトを載せて支持する支持架台において、前記上板部に、基端をヒンジとして起立させた状態でダクトの側面を当接させるダクト押当片を設けると共に、ダクトに巻き付けたバンドの両端部を挿通係止するバンド挿通穴を設けたものを提供することとしたのである。
【0011】
また、この支持架台を複数個用意し、各支持架台のダクト押当片を起立させ、支持架台を、建築物から吊り下げ、又は地面に固定して、ダクト押当片が一直線上に揃うように配置し、ダクトを支持架台に載せて、ダクトの側面を支持架台のダクト押当片に当接させ、ダクト同士を接続すると共に、ダクトにバンドを巻いて、バンドの両端部を支持架台のバンド挿通穴に挿通係止し、ダクトを支持架台に固定することとしたのである。
【発明の効果】
【0012】
この発明に係る支持架台を使用すると、ダクト押当片にダクトを沿わせることにより、ダクト同士をずれないように粘着テープ等で簡単に接続して、位置決めすることができ、その状態でダクトをバンド掛けにより支持架台に固定することができるので、支持架台に対しダクトを摺り動かして位置調整する必要がなく、施工性の向上を図りつつ、ダクト表面の傷付きによる不燃性の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明に係る支持架台のダクト押当片が倒伏した状態を示す斜視図
【図2】同上のダクト押当片が起立した状態を示す斜視図
【図3】同上の上板部を凹面とした実施形態を示す縦断側面図
【図4】同上のバンドの平板状態を示す図
【図5】同上の支持架台による地面設置時のダクト接続状態を示す斜視図
【図6】同上のダクトの縦断側面図
【図7】同上の支持架台による吊下設置時のダクト接続状態を示す斜視図
【図8】段ボール製ダクトを示す斜視図
【図9】同上の粘着テープによる接続状態を示す斜視図
【図10】同上のソケットによる補強状態を示す斜視図
【図11】同上の吊下設置状態を示す縦断側面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0015】
図1に示すように、この発明に係る段ボール製ダクトの支持架台1は、一定幅の帯鋼を長さ方向に沿って折り曲げることにより、上板部2の両側から側板部3が下方へ向かい、各側板部3の下端から鍔部4が外側へ向かう形状とされている。
【0016】
上板部2の一端部には、コ字状の切込を入れてダクト押当片5が設けられ、ダクト押当片5の両側基端部は、折り曲げやすいように括れている。ダクト押当片5の外側と、上板部2の他端部には、幅方向に延びるスリット状のバンド挿通穴6が設けられている。鍔部4の両端部には、丸型の釘穴7が設けられている。
【0017】
この支持架台1は、ダクトの設置作業に先立って、図2に示すように、ダクト押当片5を、基端をヒンジとして起立させておく。
【0018】
なお、図3に示すように、上板部2を上面が凹面となるように湾曲させておくと、後述のようにダクトDを載せたとき、ダクト押当片5を形成する穴の周縁がダクトDに接しないので、周縁のバリによるダクトDの表面の傷付きを確実に防止できる。
【0019】
また、図4に示すように、ダクトを支持架台1に固定するバンド21は、一定幅の帯鋼を材料とし、ダクトの上方稜部に対応する位置に、折り曲げを誘導する折曲誘導切目22を入れ、両端部に支持架台1のバンド挿通穴6に差し込まれる差込部23を設け、差込部23の両側に、折り曲げを容易にする切込を入れたものとされている。
【0020】
上記のような支持架台1及びバンド21を使用して、図5及び図6に示すように、ダクトDを床スラブ等の地面に設置する際には、複数個の同形状の支持架台1を、一端を基準として、ダクト押当片5が一直線上に揃うように配置し、釘穴7を介して釘11を釘打ち機等で地面に打ち込むことにより、各支持架台1を地面に固定する。
【0021】
次に、接続する一方のダクトDを支持架台1に載せて、ダクトDの側面をダクト押当片5に当接させ、ダクトDにバンド21を巻いて、バンド21の両端の差込部23を、バンド挿通穴6に挿通して、上板部2の裏側で折り曲げることにより支持架台1に係止し、このダクトDを支持架台1に固定する。
【0022】
次に、他方のダクトDを隣り合う支持架台1に載せて、ダクトDの側面をダクト押当片5に当接させた状態で、ダクトD同士を突き合わせ、その突合部の外周にアルミテープ等の不燃性粘着テープ12を巻き付けることにより、これらのダクトD同士を接続する。
【0023】
このとき、ダクトDを片手で押さえたまま、もう一方の手で粘着テープ12をダクトDの外周に貼り回すことができるので、作業中に支持架台1の上でダクトDが動くことがなく、容易に作業を行なうことができる。
【0024】
その後、他方のダクトDにバンド21を巻いて、上記と同様に、バンド21の両端部を支持架台1に係止することにより、このダクトDを支持架台1に固定し、以下、上記工程を繰り返すことにより、ダクトDが接続固定されたダクト管路を形成する。
【0025】
なお、支持架台1上での作業を減らすため、ダクトD同士を予め接続しておき、その状態でダクトDを支持架台1に載せてもよい。
【0026】
また、上記実施形態では、隣り合う支持架台1の中間部でダクトD同士を接続する場合を図示したが、支持架台1の上面において、ダクトD同士を突合させ、粘着テープ12を貼り回して接続するようにしてもよい。
【0027】
一方、図7に示すように、ダクトDを建築物の天井等から吊り下げて設置する際には、支持架台1として、地面設置用の鍔部4を省略し、上板部2の両端部に吊穴8を設けた形状のものを複数個用意する。
【0028】
そして、これらの支持架台1を、吊穴8に挿通係止した吊下ボルト13により吊り下げた状態で、一端を基準として、ダクト押当片5が一直線上に揃うように配置する。
【0029】
以下、上記地面設置の場合と同様、ダクトDを支持架台1に載せて、ダクトDの側面をダクト押当片5に当接させ、ダクトD同士を粘着テープ12で接続すると共に、ダクトDにバンド21を巻いて、バンド21の両端部をバンド挿通穴6に挿通係止し、ダクトDを支持架台1に固定する。
【0030】
上記のように、この発明に係る支持架台1を使用すると、地面設置又は吊下設置のいずれの設置形態においても、ダクト押当片5にダクトDを沿わせることにより、ダクトD同士をずれないように粘着テープ12等で簡単に接続して、位置決めすることができる。
【0031】
そして、その状態で、バンド21を掛けてダクトDを支持架台1に固定することができるので、支持架台1に対しダクトDを摺り動かして位置調整する必要がなく、施工性の向上を図りつつ、ダクトDの表面をラミネートしたアルミ箔の傷付きを防止して、不燃性の低下を防止することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 支持架台
2 上板部
3 側板部
4 鍔部
5 ダクト押当片
6 バンド挿通穴
7 釘穴
8 吊穴
11 釘
12 粘着テープ
13 吊下ボルト
21 バンド
22 折曲切目
23 差込部
D ダクト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上板部(2)の両側に下方へ向かう側板部(3)を連設し、上板部(2)に段ボール製ダクト(D)を載せて支持する支持架台(1)において、前記上板部(2)に、基端をヒンジとして起立させた状態でダクト(D)の側面を当接させるダクト押当片(5)を設けると共に、ダクト(D)に巻き付けたバンド(21)の両端部を挿通係止するバンド挿通穴(6)を設けたことを特徴とする段ボール製ダクトの支持架台。
【請求項2】
請求項1に記載の支持架台(1)を複数個用意し、各支持架台(1)のダクト押当片(5)を起立させ、支持架台(1)を、ダクト押当片(5)が一直線上に揃うように配置し、ダクト(D)を支持架台(1)に載せて、ダクト(D)の側面を支持架台(1)のダクト押当片(5)に当接させ、ダクト(D)同士を接続すると共に、ダクト(D)にバンド(21)を巻いて、バンド(21)の両端部を支持架台(1)のバンド挿通穴(6)に挿通係止し、ダクト(D)を支持架台(1)に固定することを特徴とする段ボール製ダクトの固定方法。
【請求項3】
前記支持架台(1)を、建築物から吊り下げることを特徴とする請求項2に記載の段ボール製ダクトの固定方法。
【請求項4】
前記支持架台(1)を、地面に固定することを特徴とする請求項2に記載の段ボール製ダクトの固定方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2011−38669(P2011−38669A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−184815(P2009−184815)
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【出願人】(000115980)レンゴー株式会社 (502)
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)
【Fターム(参考)】