説明

段差を有するフィルタエレメントの製造方法

【課題】既存の設備を利用してより安価に両面に段差を有するフィルタエレメントを製造する。
【解決手段】段差を有するフィルタエレメントの製造方法であって、当該製造方法は、濾過材に折り目を形成する折り工程と、前記折り目の一部を伸ばすことにより、前記濾過材に段差を形成する成形工程と、からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、段差を有するフィルタエレメントの製造方法に係り、特に、フィルタエレメントの両面に段差を有するフィルタエレメントの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、フィルタエレメントの濾過面積を確保することを目的として、フィルタエレメントが内蔵されるケーシングの外形に応じて段差を有したフィルタエレメントが知られている。
【0003】
【特許文献1】特開2003―106417号公報
【0004】
特許文献1に記載のフィルタエレメントは、フィルタエレメントの折り高さが部分的に変化され、且つフィルタエレメントの複数の折り目における一部の折り目の長さが変化している。このようにフィルタエレメントが段差を有する形状を備えることで、限られた空間内でフィルタエレメントの濾過面積を確保することができる。また、このようなフィルタエレメントは、シート状の濾材を異なった折幅でジグザグ状にプリーツ加工し、その後プレス等で打ち抜くことによって製造されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来のフィルタエレメントの製造方法によると、フィルタエレメントを内蔵するケーシングの形状に応じて折幅を変更する必要があり、既存の設備を利用することができず、ケーシングの形状に応じた設備が必要であり、コストの低減を図ることができないといった問題があった。
【0006】
また、既存の設備を利用して折幅を変更すると、図6に示すように片面にのみ段差を有するフィルタエレメント110しか製造することができず、フィルタエレメント110の段差を有さない側には、無駄空間αができてしまい、濾過面積を十分に確保することができないことから、圧損を低減することができず、さらに、フィルタの寿命を延ばすことができないといった問題があった。
【0007】
さらに、両面に段差を有するケーシング内で濾過面積を十分に確保しようとすると、図7に示すように、フィルタエレメント111a、111bを分割してケーシング120内に配置する必要があり、濾過材の折り工程及び、切断工程での工数が増大してしまい、部材の保管及び物流等の管理工数も増大し、製造コストの低減を図ることができないといった問題があった。さらに、フィルタエレメント111a、111bを分割してケーシング120内に配置しなければならないので、ケーシング120の成形も容易に行なうことができず、成形工数も増大してしまうという問題もあった。さらにまた、分割されたフィルタエレメント111a、111bの間の空間が樹脂成形されてしまうので、当該部分の濾過面積が減少してしまい、ケーシング120内のスペースを有効に活用できないといった問題があった。
【0008】
そこで、本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、既存の設備を利用してより安価に両面に段差を有するフィルタエレメントを製造することを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、本発明について説明する。
【0010】
本発明に係る段差を有するフィルタエレメントの製造方法は、濾過材に折り目を形成する折り工程と、前記折り目の一部を伸ばすことにより、前記濾過材に段差を形成する成形工程と、からなること特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る段差を有するフィルタエレメントの製造方法において、前記折り工程は、前記濾過材に略等間隔の折り目を形成することができる。
【0012】
また、本発明に係る段差を有するフィルタエレメントの製造方法において、前記折り工程は、前記濾過材に不等間隔の変則折り目を形成することができる。
【0013】
また、本発明に係る段差を有するフィルタエレメントの製造方法において、前記成形工程は、前記濾過材を段差のある型に嵌め込むことで、折り目の一部を伸ばすことができる。
【0014】
また、本発明に係る段差を有するフィルタエレメントの製造方法において、前記成形工程は、段差を形成した前記濾過材にケーシングを形成する樹脂成形工程を含むことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る段差を有するフィルタエレメントの製造方法は、折り目を形成した濾過材の折り目の一部を伸ばすことで、ケーシングの形状に応じた様々な形状に変形することができるので、既存の設備を利用してより安価に両面に段差を有するフィルタエレメントを製造することができる。
【0016】
また、本発明に係る段差を有するフィルタエレメントの製造方法は、略等間隔に折り目を形成した濾過材を用いることができるので、一つの濾過材から折り目の伸ばす位置に応じて様々な形状のフィルタエレメントを製造することができる。また、等間隔に折り目を形成する既存のプリーツ工程によって製造することができるので、既存の設備を利用してより安価に段差を有するフィルタエレメントを製造することができる。
【0017】
また、本発明に係る段差を有するフィルタエレメントの製造方法は、不等間隔の変則折り目を形成することができるので、既存のプリーツ工程に使用されている設備を利用して様々な形状の段差を有するフィルタエレメントを製造することができる。
【0018】
また、本発明に係る段差を有するフィルタエレメントの製造方法は、濾過材を段差のある型に嵌め込むことで、折り目の一部を伸ばすことにより段差を形成しているので、所望の形状の段差を容易に且つ精度良く形成することができる。
【0019】
また、本発明に係る段差を有するフィルタエレメントの製造方法は、成形工程が、段差を形成した前記濾過材にケーシングを形成する樹脂成形工程を含むので、段差を形成した濾過材をケーシングにインサート成形することができ、容易に段差を有するフィルタエレメントを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
[第1の実施形態]
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0021】
図1は、第1の実施形態に係る段差を有するフィルタエレメントの断面図であり、図2は、第1の実施形態に係る濾過材の折り工程後の状態を示す斜視図であり、図3は、第1の実施形態に係る成形工程の作業を示す動作図であり、図4は、第1の実施形態に係る他の成形工程の作業を示す動作図であり、図5は、第2の実施形態に係る濾過材の折り工程後の状態を示す斜視図であり、図6は、従来の段差を有するフィルタエレメントを示す断面図であり、図7は、従来の段差を有するフィルタエレメントを示す断面図である。
【0022】
図1を参照して、本実施形態に係るフィルタエレメントについて説明する。本実施形態に係るフィルタエレメントは、図1に示すように、上下方向の両面に段差を有するフィルタエレメント10がフィルタエレメント10と同様の段差を有する樹脂製のケーシング20内にインサート成形された車両用オイルストレーナ1に用いられる。
【0023】
車両用オイルストレーナ1は、フィルタエレメント10の下方に、オイル流入口21が形成されており、フィルタエレメント10の上方にオイル流出口22が形成されている。また、車両用オイルストレーナは、車両のオイルパンに取付けられており、オイルパンに貯えられたオイルがオイル流入口21から流入し、オイル流出口22から流出する際に、フィルタエレメント10で流入したオイルを濾過することができるようになっている。
【0024】
ここで、車両用オイルストレーナ1は、車両に用いられるため、非常に狭いスペースに配置する必要があり、その結果、図1に示すように、段差を有するケーシング20が用いられる場合もある。
【0025】
この段差を有するケーシング20内には、ケーシング20と同様の段差を有するフィルタエレメント10が組み込まれている。このように形成された車両用オイルストレーナ1は、ケーシング20内の空間を有効に利用することができるので、フィルタエレメント10の濾過面積を増大させ、圧損を低下させることができ、車両用オイルストレーナ1の濾過性能の向上、及びライフサイクルの向上を図ることができる。
【0026】
次に、図2及び図3を参照して本実施形態に係るフィルタエレメント10の製造方法について説明する。
【0027】
図2に示すように、本実施形態に係るフィルタエレメント10は、折り工程において、プリーツ加工により、濾過材を山折りと谷折りとが交互に繰り返し折ることで、ジグザグ形状に形成される。折り工程後の濾過材10aには、等間隔に折り目が形成されており、各折り目の頂点は、均等の高さを有しており、折り工程後の濾過材10aの両面に段差がないフラット形状となっている。ここで、濾過材10aの材質には、フェルト、不織布、濾紙等が用いられる。
【0028】
次に、図3に示すように、成形工程において、均等に折られた折り目の任意の一部を伸ばすことで、濾過材10aの両面に段差が形成される。このように、一度折り目が形成された濾過材10aの折り目の一部を伸ばすだけで、両面に段差が形成されたフィルタエレメント10を製造することができる。
【0029】
また、図4に示すように、本実施形態に係るフィルタエレメントの製造方法において、成形工程では、型30を用いて折り目の一部を伸ばし、伸ばした後の形状を整えてもよい。このように型30を用いてフィルタエレメントを伸ばした後の形状を整えれば、より精度良く両面に段差が形成されたフィルタエレメント10を製造することができる。
【0030】
このように、成形工程において両面に段差が形成されたフィルタエレメント10を、インサート成形することで、ケーシング20を形成し、両面に段差を有するフィルタエレメント10が組み込まれた車両用オイルストレーナを製造することができる。
【0031】
このように、本実施形態に係るフィルタエレメント10の製造方法によれば、既存のプリーツ加工に用いる設備を利用することができるので、新たな設備投資が不要となり、製造コストの低減を図ることができる。また、本実施形態に係る濾過材10aの折り目を伸ばす位置を変更することで、容易に段差の形状を変更することができるので、様々な形状の段差を有するフィルタエレメント10を容易に製造することができる。またさらに、型30を用いてフィルタエレメント10の形状を整えているので、より精度よくフィルタエレメント10を製造することができる。さらに、異なる形状を有するケーシング20内に組み込まれるフィルタエレメント10を成形工程で伸ばす折り目の位置を変更するだけで製造することができるので、多数の製品バリエーションを製造する場合においても、同一の濾過材10aを使用することができ、部品の製造コスト、管理コスト、物流コストの低減を図ることができる。
【0032】
[第2の実施形態]
以上、説明したように、第1の実施形態では、折り工程で均等間隔のプリーツ加工を施す例について説明した。次に説明する第2の実施形態では、折り工程で異なる折り間隔を有するフィルタエレメントを製造する製造方法について説明する。なお、上述した第1の実施形態の場合と同一又は類似する部材については、同一符号を付して説明を省略する。
【0033】
図5に示すように、第2の実施形態に係るフィルタエレメントに用いられる濾過材11aは、既存の設備を用いて変則折りを行った場合のプリーツ加工の例である。このように、既存の設備を用いて変則折りを行うと、片面のみ(図5における上面)にしか段差を形成することができず、図5における下面には、段差を形成することができないものであった。
【0034】
しかし、このような片面のみに段差形状を有する濾過材11aの折り目の一部を第1の実施形態と同様に伸ばすことで、両面に段差を形成することができる。さらに、折り工程において、折り目の高さの変更ができるので、第1の実施形態に係るフィルタエレメント10と比較して、より多彩な形状の段差を形成することができる。
【0035】
このように、既存の設備を利用した変則折りを用いることで、より多彩な段差形状を有するフィルタエレメント10を容易に製造することができる。
【0036】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記各実施形態に記載の範囲には限定されない。変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれうることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】第1の実施形態に係る段差を有するフィルタエレメントの断面図。
【図2】第1の実施形態に係る濾過材の折り工程後の状態を示す斜視図。
【図3】第1の実施形態に係る成形工程の作業を示す動作図。
【図4】第1の実施形態に係る他の成形工程の作業を示す動作図。
【図5】第2の実施形態に係る濾過材の折り工程後の状態を示す斜視図。
【図6】従来の段差を有するフィルタエレメントを示す断面図。
【図7】従来の段差を有するフィルタエレメントを示す断面図。
【符号の説明】
【0038】
1 車両用オイルストレーナ、 10 段差を有するフィルタエレメント、 10a、11a 濾過材、 20 ケーシング、 21 オイル流入口、 22 オイル流出口、 30 型、 α 無駄空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
濾過材に折り目を形成する折り工程と、
前記折り目の一部を伸ばすことにより、前記濾過材に段差を形成する成形工程と、
からなること
を特徴とする段差を有するフィルタエレメントの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の段差を有するフィルタエレメントの製造方法において、
前記折り工程は、前記濾過材に略等間隔の折り目を形成すること
を特徴とする段差を有するフィルタエレメントの製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の段差を有するフィルタエレメントの製造方法において、
前記折り工程は、前記濾過材に不等間隔の変則折り目を形成すること
を特徴とする段差を有するフィルタエレメントの製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3に記載の段差を有するフィルタエレメントの製造方法において、
前記成形工程は、前記濾過材を段差のある型に嵌め込むことで、折り目の一部を伸ばすこと
を特徴とする段差を有するフィルタエレメントの製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至4に記載の段差を有するフィルタエレメントの製造方法において、
前記成形工程は、段差を形成した前記濾過材にケーシングを形成する樹脂成形工程を含むこと
を特徴とする段差を有するフィルタエレメントの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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