説明

殺生物剤のナノ構造組成物及びナノ構造の殺生物剤組成物を得る方法

本発明は、殺真菌性及び殺菌性の特性を持つ殺生物剤に関するものであり、該殺生物剤は、構造、医薬、及び他の様々な技術分野において使用できる。殺生物剤のナノ構造組成物は、Zn2+イオンとAg及び/又はCu2+のイオンとが挿入されたベントナイト粉末のナノ粒子から実現される。本発明に従う殺生物剤は、Naカチオンが予め豊富なベントナイト粉末から始めて、次いで、Znの無機塩(好ましくは塩化亜鉛又は硫酸亜鉛ZnSO)の10〜20%溶液を用いて処理され、また、Naカチオンが予め豊富なベントナイト粉末から、次いで、Ag(好ましくは硝酸銀)及びCu2+(好ましくは硫酸銅)からなる群において選択される少なくとも1種のイオンの無機塩の10〜20%溶液を用いて処理され、調製される。Zn2+、Ag及び/又はCu2+のイオンが挿入されたベントナイトの粉末は、酸のアニオン及びNa塩から清浄にされ、大部分が70nm以下の大きさのナノ粒子に分散される。本発明に従う殺生物剤組成物は、所定の成分を以下に示す重量比で含有する:Agのイオンが挿入されたナノ粒子:Zn2+のイオンが挿入されたナノ粒子が、1:(0.2〜0.8)である;又はAgのイオンが挿入されたナノ粒子:Zn2+のイオンが挿入されたナノ粒子:Cu2+のイオンが挿入されたナノ粒子が、1:(0.2〜0.8):(0.2〜0.5)である;又はZn2+のイオンが挿入されたナノ粒子:Cu2+のイオンが挿入されたナノ粒子が、1:(0.2〜0.5)である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺真菌性及び殺菌性の特性を持つ殺生物剤に関するものであり、該殺生物剤は、構造、医薬、及び他の様々な技術分野において使用でき、具体的には、ヒトの長期滞在を前提とする予防的な長期の消毒処置のための、医療目的を含む構造ユニットの表面の処置のための、及び、生きている生物の組織と生体適合性があり、好ましくは皮膚疾患、治癒していない創傷、栄養に関する潰瘍、熱傷、皮膚症、皮膚の膿疱性疾患、炎症性浸潤の処置での外用を目的とする配合物の合成のための、配合物に使用できる。
【背景技術】
【0002】
Ag、Au、Pt、Pd、Cu、Zn等の金属を含有する組成物の使用は(非特許文献1及び2参照)、殺真菌薬及び殺菌薬の実際の製造において広く知られている。また、大きさが1〜100ナノメートルの範囲にある物質の粒子は、それらの化学的、物理的、及び生物学的な特性が変わり、それらパラメータが重要な適用値を有することも知られている。それでも、最近では、最も効果的な抗菌手段に関連する金属成分、好ましくは銀の使用に基づく、殺生物性調製物の超分散コロイド系の使用が、かなり注目されている(非特許文献3参照)。
【0003】
ロシア特許第2259871号の技術的明細書には、殺真菌性及び殺菌性の特性を持つ調製物を、金属ナノ粒子に基づく、殺生物剤のナノ構造組成物のコロイド溶液として認められたことが記載されている。殺生物剤のナノ構造組成物は、水中及び/又は非水溶媒中における金属塩及び水溶性ポリマーの溶解によって得られる。次いで、その認められた溶液を含む反応容器に気体状の窒素又はアルゴンを吹き込み、放射線で照射する。この方法において、還元剤は、溶液中の電離放射線によって発生する溶媒和電子である。金属の塩としては、銀、銅、ニッケル、パラジウム又は白金から選択される少なくとも1種の金属の塩を適用することが可能である。銀の塩、例えば、硝酸塩、過塩素酸塩、硫酸塩、又は酢酸塩を適用するのが好ましい。ポリマーとしては、ポリビニルピロリドン、1−ビニルピロリドンのアクリル酸若しくはビニル酢酸と、スチレンと又はビニルアルコールとのコポリマーが使用される。非水溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール又はエチレングリコールを使用することができる。エマルションが得られた場合、表面活性物質を更に反応容器中に入れる。金属−ポリマーに基づいて得られた殺生物剤のナノ複合材料は、抗菌薬、滅菌剤、又は脱臭手段として使用される。
【0004】
しかしながら、殺生物剤を得る既知の方法は、付随的な反応を防ぐため、不活性ガスの雰囲気中、電離放射線源の使用によって合成が行われるので、かなり困難であり、費用がかかる。
【0005】
ロシア特許第2088234.1997号の技術的明細書には、サイズが2〜4ナノメートルのゼロ価の金属銀とポリ−N−ビニルクロリドン−2とのナノクラスターを構造内に含有する水溶性殺菌組成物が提案されている。宣言された方法において、ポリ−N−ビニルクロリドン−2は、コロイド状の銀の安定剤として作用するだけでなく、その末端アルデヒド基による回復に関与する試薬としても作用する。よって、イオン銀は、ポリ−N−ビニルクロリドン−2が配位した銀イオンに対するエタノールの作用によって、分子状態まで回復される。最後の化合物がない場合、銀の硝酸塩は、エタノールと反応しない。その化合物は、水中に容易に溶解し、コロイド溶液を形成し、医学及び獣医学の分野のための調製物の製造に使用できる。その調製物は、毒性及びアレルゲン性が低下していることを特徴とする。
【0006】
しかしながら、この調製物を得る方法は、多くの時間と労力を要し、製造技術が分散体乾燥装置に備えるため、大きな電源入力が必要である;また、原料塩基の制限もある。合成ポリマーは、製造費用を増加させる。
【0007】
また、ロシア特許第227866号の発明から、徹底的なランダム化の際に、含量が0.0011〜0.40g(0.007〜2ミリモル)の銀塩の水溶液を、アラビノガラクタンの水溶液に加えることも知られている。更に、それを室温にて30〜90分間保つ。その後、pH10〜11に至るまで、30%のアンモニウム又は水酸化ナトリウムを加える。得られた混合物を20〜90℃の温度にて5〜60分間保つ。その溶液をろ過し、ろ液のエタノール中でのデカンテーションによって、標的製品を単離する。沈殿物をろ過し、真空中で乾燥させる。得られた配合物中の銀の含量は、原子吸着分析法によって決定され、反応の条件によって、3.3〜19.9%の範囲内で変化する。銀は、レントゲン回折解析のデータによれば、ゼロ価の状態にある。銀誘導体は、10〜30ナノメートルのナノサイズ粒子として生じている。これら粒子は、水溶性であり、固体状態で単離できる。アラビノガラクタンの銀誘導体は、抗菌特性を保有し、広範な用途がある。例えば、様々な含量の銀の誘導体は、医学分野において、外用消毒手段として、抗生物質に代わる医療製品として、また殺菌性被膜の成分として使用できる。
【0008】
しかしながら、銀イオンのゼロ価状態への還元剤として、更には同時に分散的な反応環境としての、安定剤、即ちアラビノガラクタンの天然多糖の使用は、調製の費用が増加する。
【0009】
それ故に、殺生物剤のナノ構造組成物に基づく殺菌特性を持つ調製物を得るための上述の技術的解決策は、溶液中における銀の遊離イオンの洗い流し又は錯体形成のせいで、大きな労働力を要すると共に、それらの液体分散体の安定性がかなり低いことを特徴とする。
【0010】
ロシア特許第2330673号の下での技術的解決策は、本発明に最も近い。この特許では、抗真菌性及び抗菌性の特性を持つ殺生物剤のナノ構造組成物が記載されている。
【0011】
既知の技術的解決策によれば、Ag又は/及びCu2+のイオンが挿入されたベントナイト粉末のナノ粒子としての殺生物剤組成物であって、硝酸銀又は硫酸銅の無機塩の10〜20%溶液によりベントナイト半製品を改質する方法を用いて得られたものが開示されている。ベントナイト半製品は、Na形態のナトリウムベントナイトの無機塩の水溶液を用いたそれらの処理によって、Naカチオンが予め濃くされており、次いで、それらを濃くした後に酸のアニオンから、また挿入過程後にナトリウムの塩から、それらを清浄にする。
【0012】
既知の技術的解決策によれば、殺生物剤のナノ構造組成物は、極性溶媒の基礎を含有する。
【0013】
Ag又は/及びCu2+のイオンが挿入されたベントナイト粉末のナノ粒子として既知の殺生物剤のナノ構造組成物は、無機物で生態学的に安全な成分から得られる。それらは、生きている生物の組織と生物学的に適合している。また、そのナノ構造組成物は、ビルディング用乾燥混合物を製造するための添加剤として、生きている生物の組織の損傷領域の抗菌処置のための医学及び獣医学において、或いは細菌及び組織の毒素を吸収することが可能な各種軟膏基剤又はゲルの構造においても使用できる。
【0014】
既知の殺生物剤のナノ構造組成物は、例えば、様々な構造物の表面の抗菌性及び抗真菌性処置のため、繊維製品の処置のため、更には、医学及び獣医学における、生きている生物の組織の損傷領域の処置のための調製物として、また、細菌及び組織の毒素を吸収できる調製物の構造において使用できる。
【0015】
使用された技術的解決策から、Agイオン及びCu2+イオンが挿入されたベントナイト粉末ナノ粒子の混合物としての殺生物剤のナノ構造組成物の使用が、経済的に最も妥当であるということが分かる。それ故に、得られた殺生物剤は、殺真菌性及び殺菌性の特性が効果的に共同作用する組成物を形成する。
【0016】
また、適用された技術的解決策から、構造物の表面の処置時における殺生物剤の持続性作用についての殺真菌性及び殺菌性の活性は、該殺生物剤の構造における極性溶媒としての、液体環境の存在中において最も効果的であるということが分かる。その液体環境は、生態学的及び毒物学的に安全である。殺生物剤の組成物中における液体環境の存在は、処置した表面上でのその分布のプロセスを改良し、産業上の利用に望ましい最高の微生物学的効率を提供する。
【0017】
しかしながら、Agイオン及びCu2+イオンが挿入されたベントナイト粉末ナノ粒子の混合物に基づいた殺生物剤の組成物は、生きている生物の組織の、外用にて、具体的には治癒していない創傷、栄養に関する潰瘍、熱傷、皮膚症、糖尿病患者の皮膚の膿疱性疾患の処置にて、起こり得るアレルゲン性のため、普遍性を持たない。
【0018】
Cu2+イオンが挿入されたベントナイト粉末のナノ粒子の使用は、鉄、アルミニウム等の金属で作られた構造物の表面の処置を目的とする技術的手段及び調製物における電気化学的腐食の形成に導く場合がある。また、それは、ビルディング用木質材料を真菌による疾患から保護する製品における使用、例えば電話カラム、フェンシング、板張りの床、編み上げ製品、窓及びドア、合板、圧縮木材スラブ、ウエハースラブ、木の削りくずスラブ、建具製品、橋、又は住宅用の建物の構造若しくは他の構造に通常使用される木製製品における使用時に生物腐食に導く場合もある。
【0019】
特に、適用された技術的解決策において、ベントナイト粉末ナノ粒子の広範な分散体は、ナノ粒子の起こり得る凝集のため、液体の基礎中にそれらを配合する際に、技術的に効果的でない。それは、微生物及び糸状菌のコロニーの各種定常形態に関し、適用された殺生物剤組成物の殺菌性及び殺真菌性の特性の信頼性を低減する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】ロシア特許第2259871号
【特許文献2】ロシア特許第2088234.1997号
【特許文献3】ロシア特許第227866号
【特許文献4】ロシア特許第2330673号
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】H.E. Morton, Pseudomonas in Disinfection, Sterilisation and Preservation, ed. S.S. Block, Lea and Febider 1977
【非特許文献2】N. Grier, Silver and its Compounds in Disinfection, Sterilisation and Preservation, ed. S.S. Block, Lea and Febider, 1977
【非特許文献3】Blagitko E.M., etc. <<Silver in medicine>>, Novosibirsk: “Science-Center”, 2004, 256 pages
【発明の概要】
【0022】
本発明の技術的結果は、殺生物剤のナノ構造組成物の創作である。それ故に、殺生物剤は、所定の重量比で、金属イオンが挿入されたベントナイト粉末のナノ粒子の混合物によって構成される。この混合物は、安価で且つ低毒性の組成物であって、持続性作用の殺菌性及び殺真菌性の活性が効果的に共同作用する組成物を形成する。
【0023】
本発明の技術的結果は、これら材料の物理的・機械的特性からの依存なしで、構造物の表面の処置を目的とする調製物を得るための、持続性があり非常に効果的な殺真菌性及び殺菌性の特性を持つ有益な殺生物剤のナノ構造組成物の創作である。
【0024】
本発明の技術的結果は、糸状菌コロニーの各種定常形態に関して持続性があり非常に効果的な殺真菌特性を持つ調製物を得るための、有益な殺生物剤のナノ構造組成物の創作である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
上記した技術的課題の解決のため、Agイオン又は/及びCu2+イオンが挿入された、ベントナイト粉末のナノ粒子から形成された殺生物剤のナノ構造組成物が提案された。これらナノ粒子は、硝酸銀又は硫酸銅の無機塩の10〜20%溶液によりベントナイト半製品を改質する方法を用いて得られる。ベントナイト半製品は、Na形態のナトリウムベントナイトの無機塩の水溶液を用いた処理によって、Naカチオンが予め濃くされており、次いで、濃くした後に酸のアニオンから、そして、挿入過程後にナトリウムの塩から、それを清浄にする。
【0026】
本発明の組成物は、Zn2+イオンが挿入されたベントナイト粉末のナノ粒子が上述の組成物中に追加的に入れられるという点で異なる。これらナノ粒子は、前述のベントナイト半製品をNaカチオンで濃くして改質する方法の後に、無機塩の、好ましくは塩化亜鉛(ZnCl)又は硫酸亜鉛(ZnSO)の10〜20%溶液を用いた処理を行い、次いで、ナトリウム塩及び分散体からそれらを清浄にすることによって得られる。
【0027】
新規の組成物は、以下に示す成分比(重量部)を有する:
Agのイオンが挿入されたナノ粒子:Zn2+のイオンが挿入されたナノ粒子が、1:(0.2〜0.8)である;
又は
Agのイオンが挿入されたナノ粒子:Zn2+のイオンが挿入されたナノ粒子:Cu2+のイオンが挿入されたナノ粒子が、1:(0.2〜0.8):(0.2〜0.5)である;
又は
Zn2+のイオンが挿入されたナノ粒子:Cu2+のイオンが挿入されたナノ粒子が、1:(0.2〜0.5)である。そして、上記新規の組成物は、70nm以下のベントナイト粉末のナノ粒子の分散体を有する。
【0028】
本発明によれば、殺生物剤の組成物は、極性溶媒である液体の基礎を含有してもよい。
【0029】
本発明によれば、銀、銅及び亜鉛の指定された無機塩の溶液は、Naイオンで濃くしたベントナイトの半製品を改質するため、以下に特定した重量比で使用される:
半製品:溶液が1:(10〜40)である。
【0030】
主張した技術的解決策の実現によって、前記金属イオンが挿入されたベントナイト粉末のナノ粒子が所定の重量比にある混合物の構造を備えた無機殺生物剤の創作が確保される。それは、抗アレルギー効果によって処置された組織の領域に対して、殺菌性及び殺真菌性の持続性作用が非常に効果的に共同作用する安価な組成物を形成する。
【0031】
主張した技術的解決策の実現によって、金属イオンが挿入されたベントナイト粉末のナノ粒子と極性溶媒とに基づく安価な共同作用組成物としての、殺生物剤のナノ構造組成物の創作が提供される。この組成物は、材料、微生物及び糸状菌コロニーの形態の物理的・機械的特性への依存なしで、各種構造物の表面に対する非常に効果的な殺菌性及び殺真菌性の持続性作用を提供する。
【0032】
得られた本発明の技術的結果は、次のように説明される:
・調製物を製造するための、Na形態のベントナイトとしての、天然鉱物の使用である。ここで、その構造は、レベルごとの典型的な配置の「パッケージ」を持つ結晶格子によって特徴付けられる。「パッケージ」は、負の電荷を持つアルミニウム−酸素及びケイ素酸素化合物として表され、ここで、層間空間の体積は、溶液に対する収着活性が高く、また、層間空間内で金属カチオン置換する溶液の存在下での、1つの金属のカチオンの他の金属のカチオンとのイオン置換反応に対して、収着活性が高い。
・Na形態のベントナイトをNaイオンで予め濃くすることである。それは、その交換容量におけるNaイオンの総量を増加させるため、ベントナイトの活性化をもたらす。それらは、ベントナイトの交換容量における吸着ナトリウムカチオンの他の金属カチオンに対する置換反応を伴うイオン挿入過程の技術的操作時に、更なるイオン交換が可能である。硝酸銀(AgNO)、硫酸銅(CuSO)、亜鉛の塩(ZnCl)の塩の溶液によるベントナイトの改質の際のイオン交換反応の結果として、主にベントナイトのアルミニウム−酸素及びケイ素酸素化合物の層間空間内におけるAgイオン、Cu2+イオン及びZn2+イオンの密度を上昇させる。
【0033】
対応する金属イオン、特にはNaイオンで濃くすること(塩溶液による技術的処置)によるベントナイト粘土の活性化プロセスは、セルロース塊の脱水において、液体/膜体間の分化中における紙の堆積物の脱水において、下水の清浄において、インクを含有する廃棄物を用いた水の清浄において、(紙の製造中での)ピッチの固定において、更には鉄鉱の造粒のための又は他の鉱物の処理のためのベントナイトを得る際において、使用される;
・ナノ構造組成物中における比表面積の高いベントナイト粉末のナノ粒子の殺生物剤分散環境の使用である。それは、細菌環境に対する大きな接触面積を提供し、病原性ミクロフローラに対する抗菌性及び殺真菌性の影響の効率を上昇させる;
・Zn2+イオンが挿入されたナノ粒子の存在であり、殺生物剤中の腐食の抑制剤である;
・殺生物剤組成物中におけるZn2+イオンが挿入されたベントナイト粉末のナノ粒子の存在である。ナノ粒子は、恒温生物の組織に対して好ましい抗菌性の影響を促進する。Zn含有調製物の使用により医学及び獣医学における生きている生物の生きる力を向上させることは広く知られたプラクティスである;
・金属イオンが挿入されたベントナイト粉末の混合物と、殺生物剤のナノ構造組成物中において適用された液体環境の両方に基づく、両立できる共同作用の成分の使用である。それらは、各種作業面に対して生態学的に安全である;
・組成物中におけるベントナイト粉末ナノ粒子の、高分散で、相乗的に両立できる混合物の使用による、殺生物剤を得る費用の低減である;
【0034】
専門家の技術の分析では、本発明に従う技術的解決策に対応し、且つ各種構造物及び恒温生物の組織の作業面に対する殺菌性(抗菌性)及び殺真菌性の能力の持続性作用という上述の結果を実現できる一組の属性を備えた技術的解決策は示されなかった。
【0035】
示された最新技術の分析は、宣言した技術的解決策が「新規性」及び「進歩性」の基準に対して従うことを証言する。
【0036】
本発明に従う技術的解決策は、例えば、創傷、熱傷、皮膚外皮の潰瘍領域の抗菌処置、口腔の粘膜表面の処置、予防、並びに各種材料で作られた構造物の表面の持続性抗菌及び殺真菌処理を目的とする調製物を得るため、工業的に実現できる。
【0037】
本発明の本質は、次のように説明される:
・表1及び2は、本発明に従う殺生物剤のナノ構造組成物の殺菌性及び殺真菌性の効率に関する結果を見せる;
・殺真菌性及び殺菌性の特性を持つ殺生物剤のナノ構造組成物の製造のための原料源の選択に関する提言である;
【0038】
殺真菌性及び殺菌性の特性を持つ殺生物剤のナノ構造組成物を得るため、完成した医療及び実験装置、商品生産物、更には既知の技術的プロセスが使用されており、具体的には以下のものである:
・Na形態のベントナイト(モンモリロナイト)、例えば、アルカリベントナイトを備えたSariguh堆積物(アルメニア)であり、ここで、モンモリロナイト(Na形態のベントナイト)の含量は77〜85質量%である。これは、殺生物剤を得る技術的方法の実現に対して最適である;
・硝酸銀(AgNO);硫酸銅(CuSO);塩化亜鉛(ZnCl)又は硫酸亜鉛,塩化ナトリウム(NaCl)である;
・脱イオン水;アルコール、好ましくはイソプロピルアルコールである。特定した溶媒、従って、水及びアルコールは、極性溶媒の分類に関係する;
・殺真菌性及び殺菌性の特性を持つ殺生物剤のナノ構造組成物である(ロシア特許第2330673号,優先日2006年11月22日,特許所有者−ジョイント・ストック社<<応用ナノテクノロジー研究所>>参照)。それによれば、鉱物の原料(Na形態のベントナイト)は、塩化ナトリウムの3〜10%水溶液を用いて処理し、次いで、酸のアニオンの除去のため、得られた半製品の洗浄及びろ過を行うことによって、Naイオンによって活性化される(濃くなる)。次いで、得られた半製品は、硝酸銀(AgNO)又は硫酸銅(CuSO)等の金属の無機塩の10〜20%溶液によって改質される。改質ベントナイトは、特定の塩溶液中で熟成させるために保たれ、次いで、改質ベントナイトは、洗浄及びろ過によってナトリウム塩から清浄にされ、乾燥後、得られた調製物は、粉末にされる。従って、指定された溶液による無機鉱物の処理は、ベントナイト:溶液の重量部が1:(10〜40)の比で行われる。
【0039】
上述の成分の使用、既知の技術プロセスに基づき、そして、成分の重量比が特定されたている、適用された本発明の実現の際に、細菌学的不純物のコロニー及び生物に対する抗菌性の持続性作用を持つ殺生物剤のナノ構造組成物を得ることが、もたらされる。
【0040】
これら産業上の利用は、典型的である:
・それらの材料の物理的・機械的特性への依存なしで、構造物の表面を処置するためのもの;
・長期間治癒しないこと及び既知の手段による処置に反応しないことを含む各種感染創の処置のためのもの。
【0041】
本発明に従って得られる殺生物剤のナノ構造組成物は、毒性がなく、アレルギーを引き起こさず、禁忌がなく、高い抗浮腫性、収着、イオン交換及び抗炎症性の特性を持つ。
【0042】
使用した成分の構造の変更及び特定の重量比の変更による本発明の実現は、提供された殺生物剤組成物の特性の悪化又はそれらを得るためのプロセスの費用の増加を招くことになる。
【実施例】
【0043】
実験パート
本発明の実現は、以下に示す工程とその実施の具体例によって説明される:
第一工程−Naカチオンで予め濃くしたベントナイト半製品の製造である。それによれば、半製品は、ロシア特許第2330673号の技術的方法を用いて得られる:
5gの量のNa形態のベントナイト(モンモリロナイト)を、好ましくはNaClの5%水溶液でコーティングし、所定の溶液中で保つ。このようにして、ベントナイトを更にナトリウムイオンで濃くすることが行われる。次いで、塩素アニオンの除去のため、得られた配合物を洗浄し、次いで、フィルター<<ホワイトテープ>>を通してろ過し、乾燥させる。
第二工程−ナトリウム塩を含有させず、金属イオンが挿入されたベントナイト粉末のナノ粒子を得ることである。
第一工程で作ったベントナイト半製品からのナトリウム塩がないベントナイト粉末のナノ粒子は、以下の例に従って得られる:
【0044】
例1
半製品を酸アニオンから清浄にし、すっかり乾燥させ、硝酸銀の10〜20%水溶液によって改質した(赤色照明)。硝酸銀の15%水溶液を適用するのが好適であった。改質プロセスは、特定の溶液中で保ちつつ、その水中での溶解度に対応する温度にて行われた。得られた改質半製品からナトリウム塩を除去するため、繰り返し洗い流し;ろ過し、好ましくは200℃を超え且つ800℃以下の温度にて、乾燥させた。5gの半製品の処理のための水溶液の消費量は、ベントナイト:水溶液で1:20であった。乾燥後、該製品を分散粉末にした。ナトリウム塩がなく、Agイオンが挿入されたベントナイト粉末を得た。該製品の有効な収量は4.8gであった。
【0045】
例2
例1の場合と同じ材料及び技術的方法を使用したが、ナトリウムイオンが豊富なベントナイトの改質は、硫酸銅の15%水溶液の使用により行われた。ナトリウム塩がなく、Cu2+イオンが挿入されたベントナイト粉末を得た。該製品の有効な収量は4.8gであった。
【0046】
例1及び2の殺生物のナノ構造組成物は、ロシア特許第2330673号による時間のかかる既知の方法に従って得られた。
【0047】
本発明の殺生物のナノ構造組成物の中に入れられるように、Zn2+が挿入された殺生物のナノ構造組成物を以下に示す例3に従って得た。
【0048】
例3
例1の場合と同じ材料及び技術的方法を使用したが、ナトリウムイオンが豊富なベントナイト半製品の改質は、本発明に従って行われた。このため、塩化亜鉛(ZnCl)の10〜20%、好ましくは15%の水溶液を用いた(最も利用しやすい化学調製物)。結果として、ナトリウム塩を除去するための繰り返しの洗浄、ろ過、乾燥、その後の分散粉末への破壊の後、ナトリウム塩がなく、Zn2+イオンが挿入されたベントナイト粉末を得た。該製品の有効な収量は4.8gであった。
【0049】
5gの半製品の処理のための水溶液の塩の消費量は、ベントナイト:水溶液で1:20であった。
【0050】
本発明の粉末を特定したナノ粒子分散体まで分散させる方法は、以下の通り、全ての例において行われる:
【0051】
金属イオンによる挿入(改質)、ナトリウム塩からのそれらの清浄及び乾燥後に得られた製品は、多量の水中でスラリー化され(激しく混合され)、そして、数時間で沈降できる。デカントした製品を追加分の水中でスラリー化し、その堆積物を再びスラリー化し、沈降させ、デカントする。このプロセスは、繰り返し行われる。デカントした液体からのろ過によって、ナノ分散製品を単離する。次いで、それを乾燥させ、遊星ミル中で粉砕する。ナノ粉末が得られるように、多量の脱イオン水を用いる。そのプロセスは、かなり長くかかる。
【0052】
ナノ粒子への加工時間を短縮するため、指定された例1〜3の製品を、脱イオン水中に、製品(例1〜3):溶媒が1:10の重量部比で、配合した。次いで、超音波分散器の使用により、それらの大きさが70nm以下になるまで、ベントナイト粉末のナノ粒子の分散体の形成を行った。
【0053】
超音波分散器は、様々な産業(化学、医薬品、食品等)で広く使用されている。超音波源として、流体力学的ラジエータ又は電気機械的に活性な材料に基づいたラジエータを使用し、例えば、磁気歪み変換器である。超音波分散器の使用により、ベントナイト粉末を特定値の分散体に構築する過程をかなり迅速化させることになる。
【0054】
ある場合においては、上記プロセスが、Bandelin Sonoplus HD2070分散器を用い、容量40ワットで、10〜20分間行われた。得られたコロイド系を下層の上に堆積させ、水の蒸発後に、顕微鏡によって走査された。
【0055】
得られたベントナイト粉末分散体の寸法の制御は、電子顕微鏡の使用によって行われる。実施した技術的方法の結果として、70ナノメートル未満のナノ粒子の分散体が得られ、この場合、以下の分布であった:構造物全体から30%の分散体が5〜20ナノメートルであり、残りが70nm未満であった。
【0056】
指定された金属イオンが挿入され、ナノ粒子の大きさが70nm未満であるベントナイト粉末の分散体を、本発明の殺生物剤のナノ構造組成物の調製に用いた:
【0057】
例4
得られたベントナイト粉末のナノ粒子であって、Ag及びZn2+のイオンが挿入されたもの(例1及び3)を、例1の製品:例3の製品が1:0.5の重量部比で、混合した。
得られたベントナイト粉末のナノ粒子混合物を、極性溶媒中、好ましくは脱イオン水中に、例4のベントナイト粉末の混合物:極性溶媒が1:20の比で、配合した。
殺生物剤の組成物の5%溶液が得られる。
【0058】
例5
得られたベントナイト粉末のナノ粒子であって、Ag、Zn2+及びCu2+のイオンが挿入されたもの(例1、2及び3)を、例1の製品:例3の製品:例2の製品が1:0.5:0.3の重量部比で、混合した。
得られたベントナイトのナノ粒子混合物を、極性溶媒中、好ましくは脱イオン水中に、例5のベントナイト粉末の混合物:極性溶媒が1:20の比で、配合した。
殺生物剤の組成物の5%溶液が得られる。
【0059】
例6
例5で用いたベントナイト粉末のナノ粒子混合物を、40%のヒドロアルコール溶液である極性溶媒中に、例5の製品:溶媒が1:20の比で、配合した。
殺生物剤の組成物の5%溶液が得られる。
【0060】
例7
例2及び3に従い、Zn2+及びCu2+のイオンが挿入されたベントナイト粉末のナノ粒子を、例3の製品:例2の製品が1:0.5の重量部比で、混合した。
ベントナイト粉末のナノ粒子混合物を、脱イオン水中に、例7のベントナイト粉末の混合物:極性溶媒が1:20の比で、配合した。
殺生物剤の組成物の5%溶液が得られる。
【0061】
殺生物剤の対照組成物は、例8〜10の比較テストを行うために追加的に調製された:
【0062】
例8
例1の製品:極性溶媒(脱イオン水)が1:20である。
【0063】
例9
例2の製品:極性溶媒(脱イオン水)が1:20である。
【0064】
例1〜9の全てにおいて、使用されたベントナイト粉末のナノ粒子は、寸法が70nm以下であった。
【0065】
例10
例1の製品:極性溶媒(脱イオン水)が1:20であり、
分散体は100nm以下であった(ナノ粒子の30%の分散体が30nm以下であり、70%の分散体が100nmであった)。
【0066】
例1〜10に従って得られた調製物の殺生物特性を試験サンプルの殺菌性及び殺真菌性の活性について推定した。
【0067】
試験サンプルのナノ構造組成物についての殺菌性(抗菌性)の活性の推定を、統合ディスク拡散法の使用によって行った(the Directions on medical microbiology. General and sanitary microbiology. Under edition of A.S.Labinskaya, E.G.Volina. Moscow, BINOM, 2008, pages 342-352.)。
【0068】
特定された方法は、高密度栄養培地中における試験した抗菌性調製物の拡散に基づいている。
【0069】
上記方法は、直径5mmの標準ディスクの試験サンプルによる統一された処理にある。
【0070】
テスト微生物の1種が予め接種された高密度栄養培地(biomerieux,フランス製のtripkazo−大豆寒天(TSA))の表面上にディスクを置いた。
【0071】
テスト微生物の培養物を備えたペトリカップと、サンプルの水溶液で処置したディスクとを、恒温装置中に、37℃の温度にて24〜48時間置いた。
【0072】
特定期間の終了後、研究の結果は、ディスクの周囲にあるテスト微生物の成長遅延領域の直径(mm)を測定することによって決定された。各研究は、3回繰り返された。
【0073】
スタフィロコッカス・アウレウス菌、シュードモナス・エルギノーサ菌、及びバシラス・セレアス菌の胞子の24時間培養物をテスト微生物として用いた。
【0074】
胞子発生細菌のテスト培養物の懸濁液の調製のため、1日の培養物を使用し、37℃の温度にて高密度栄養培地(tripkazo−大豆寒天)上で成長させた。次いで、バシラス種の細菌での胞子発生の刺激のため、生理溶液中における培養物の懸濁液を調製した。無菌ペトリカップ中に注がれたジャガイモ寒天の表面上に、カップに対して0.2〜0.5mlの量で、それを分散させた。インキュベーション期間は、恒温装置中、37℃にて48時間であった。インキュベーション後、微生物が蒔かれたペトリカップは、恒温装置から引き出され、自然の光源の存在下、室温(20〜22℃)にて5日間保たれた。
【0075】
様々なインキュベーション条件下、ジャガイモ寒天上で7日間成長させた細菌のテスト培養物について、更なる制御を行った。この研究は、バシラス種の胞子発生細菌を明らかにすることを対象とした。このため、細菌のテスト培養物の調製物を用意し、それは、シャファー−フルトンの方法によって上に塗られ、顕微鏡下で試験された。細菌胞子の約90〜95%が顕微鏡下での調製物の検査にて見える場合、胞子を発生するテスト培養物の調製物は、懸濁液の調製に使用され得る。さもなければ、細菌のテスト培養物は、更なるインキュベーションが必要である。
【0076】
10単位の濁度の参照ガラス標準を用い、細菌の各テスト培養物の懸濁液を無菌生理溶液中で調製した。それは、10億/mlの微生物細胞量に相当する。次いで、テスト微生物の懸濁液の濃度が1ml中10細胞に等しいものが、無菌生理溶液中での一連の連続培養によって得られた。特定濃度の各種細菌の懸濁液を栄養培地の表面上に堆積させた。得られた細菌領域上に、例4〜10に従う研究調製物を含浸させたディスクを押し付けた。
【0077】
スタフィロコッカス・アウレウス菌は、ヒトのグラム陰性ミクロフローラの最も抵抗力のある代表者の1種として選ばれる。加えて、それらは、院内感染の基本的な活性化因子の1種であり、また、皮膚の膿疱性感染、フルンケル、膿瘍及び他の合併症の活性化因子の1種である。
【0078】
シュードモナス・エルギノーサ菌(菌株ATCC第10145号)は、物理的及び化学的因子に対して高い安定性を持つグラム陰性フローラの最も抵抗力のある代表者の1種として選ばれる。通例、それらは、多くの医薬品と消毒薬に対して抵抗を示す。加えて、所定の種類の細菌は、熱傷、菌血症、致死的転帰を含む敗血症、及び感染性病因の他の合併症の感染性合併症の活性化因子として知られている。
【0079】
バシラス・セレアス菌(菌株第8035号NCTC)は、胞子発生微生物の代表者として選ばれ、ここでの胞子は、消毒薬の作用を含む環境の有害因子によって影響されるのに最も確実なものである。それらの中でも、感染性疾患の活性化因子と構造材料の生物腐食の活性化因子の両方が利用できる。通例、バシラス菌の胞子は、加圧滅菌器の作業、乾熱容器及び消毒薬の試験に使用される。
【0080】
実施した研究の結果を表1中に提示する。
【0081】
試験サンプル(例4〜10)の殺真菌性(抗真菌性)活性の推定を、上述の統合ディスク拡散法によって行った。
【0082】
上記方法は、直径5mmの標準ディスクの試験サンプルによる統一された処理にある。
【0083】
テスト微生物の1種が予め接種された高密度栄養培地(Himedia,インド製Czapek Dox寒天)の表面上にディスクを置いた。
【0084】
テスト微生物の培養物を備えたペトリカップと、上述のサンプルで処置したディスクとを、恒温装置中に、28℃の温度にて5〜7,24時間置いた。
【0085】
特定期間の終了後、研究の結果は、ディスクの周囲にあるテスト微生物の成長遅延領域の直径(mm)を測定することによって決定された。
【0086】
少なくとも3つのサンプルに関する各パラメータの推定を行うことを考慮して、各種サンプルをたくさん採取した。
【0087】
アスペルギルス・シドウイ(小片9−6)、アスペルギルス・ニガー(小片4−3−11)、クラドスポリウム・クラドスポリオイデス小片(2−3)、ペニシリウム・エクスパンサム(小片4−3−3)、ウロクラジウム・ボトリティス(小片15−10)の真菌の培養物をテスト微生物として用いた。これら菌株は、国際宇宙ステーションの居住地から単離され、消毒薬の作用を含む環境の有害因子の影響に対する安定性があった。通例、アスペルギルス・ニガーの真菌を消毒薬試験用に用いる。
【0088】
テスト培養物の標準化のため、チャペックの培地を備えたペトリカップ中で菌株を成長させた。それらの種の同一性は、それらの培養的及び形態学的特性の分析に基づき確認された。次いで、大きな試験管(直径20〜22mm)に注ぎ出した傾斜寒天(チャペック培地)上にそれらを置いた。培養物を、恒温装置中、28℃の温度で10〜14日間成長させた。このようにして得られた菌株を+4℃の温度にて冷蔵庫中で保ち、必要に応じて、それらを外に置き、懸濁液の調製に用いた。真菌株の懸濁液の調製のため、真菌のテスト培養物を用いた。それらを、チャペック培地中、28℃にて、蒔いた瞬間から始めて14日から28日までの年齢に成長させた。
【0089】
濃度が10億/mlの菌株の懸濁液を、各種真菌のテスト培養物について別々に調製した。このため、純培養物を含む試験管から真菌株を、無菌生理溶液15±5mlを含有するフラスコ(試験管)中に移した。試験管からフラスコ(試験管)への菌株の移送は、細菌学的ループによって菌株を保持する方法によって行われた。
【0090】
試験管から菌株の摂取時に、栄養培地は、ループによって触れられなかった。懸濁液中における菌株の量の決定は、Gorjaevaの計算チャンバーの使用による算出方法によって行われた。
【0091】
特定濃度でのすべての種類の真菌の懸濁液を、栄養培地(培養物の菌叢)上に置いた。得られた真菌の菌叢上に、研究サンプル(例4〜10)を含浸させたディスクを置いた。
【0092】
実施した研究の結果を表2中に提示する。
【0093】
表1及び2の分析から、以下に示す結果になる。
【0094】
殺生物剤のナノ構造組成物の水及びヒドロアルコール溶液(例4〜10)は、グラム陽性、グラム陰性、及び胞子発生フローラの代表者に対して抗菌活性を持つ(表1)。
【0095】
表1から、銀イオン(Ag)が挿入されたベントナイトナノ粒子を含有するサンプル(例8)を試験したところ、S.アウレウス菌の場合のディスク周囲にある成長阻害領域は20mmであり、P.エルギノーサ菌の場合が18mmであり、B.セレアスの胞子発生細菌の場合が11mmであったという結果になる。これらデータは、銀調製物の殺菌活性の効率の証拠となる。それは、広域スペクトルの抗菌活性を持つ所定種類の金属として知られている。同時に、所定の製品を製造するための費用はかなり高く、それ故に不適当であることが知られている。
【0096】
また、試験の結果として、本発明に従う金属イオンを含むベントナイトナノ粒子の混合物を含有した本発明に従う試験サンプル(例4〜7)は、持続性作用の殺菌特性について、例8の製品とわずかに異なることが決定される。そして、それとの比較で、サンプル4〜7を得るための費用は低い。
【0097】
また、試験の結果として、バシラス(バシラス・セレアス菌株第8035号NCTC)の著しい成長が、Cu2+イオンが挿入されたベントナイト粉末のナノ粒子に基づく殺生物剤組成物(例9)の使用により起きたことが決定される。これは、生物腐食プロセスの存在の証拠となる。
【0098】
また、本発明に従う調製物の殺菌特性の効率(例10)は、70nmを超える分散体のベントナイト粉末のナノ粒子がかなりの部分である製品の存在においてかなり低減することが決定される。
【0099】
最良の殺真菌特性は、例4〜8の調製物によって示された。
【0100】
これら調製物における静真菌性及び殺真菌性の特性を決定した。それらは、各種真菌に対するそれらの活性について異なる程度の影響を示した(表2)。特定の試験調製物に対する最も感受性が高いものは、浅黒い真菌であることが示され、最も抵抗力のある真菌は、アスペルギルスであった。
【0101】
殺真菌性(抗真菌性)活性の推定に関する研究から、本発明に従う金属イオンを含むベントナイトナノ粒子の混合物を含有する本発明に従う試験サンプル(例4〜7)は、持続性作用の静真菌性及び殺真菌性の特性に関し、例8(対照例)による製品とわずかに異なるという結果になる。そして、それとの比較で、サンプル4〜7を得るための費用は低い。
【0102】
また、調製物(例10)の殺真菌特性の効率は、70nmを超えるベントナイト粉末のナノ粒子分散体でかなり低減することが決定される。
【0103】
よって、実施した研究全体により、出願した発明の下で、各種微生物コロニーに対して、殺生物剤のナノ構造組成物の持続性作用の殺菌性及び殺真菌性の特性の効率が高いことが確認され、以下の目的のため、本発明の使用の有用性の証拠となる:
・外皮の創傷、熱傷、潰瘍領域の抗菌処置用途、処置領域の中毒なしでの、口腔の粘膜表面の処置用途;
・それらの製造に用いる材料の特性からの依存なしでの、構造物表面の処置用途。
【0104】
【表1】

【0105】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
殺真菌性及び殺菌性の活性を備え、Zn2+イオンとAg及びCu2+の間で選択された少なくとも1種のイオンとが挿入されたベントナイト粉末のナノ粒子からなるナノ構造の殺生物剤組成物。
【請求項2】
金属イオンが挿入されたベントナイト粉末のナノ粒子は、以下に示す重量比でAg、Zn2+、Cu2+のイオンを含有しており:
Agのイオンが挿入されたナノ粒子:Zn2+のイオンが挿入されたナノ粒子:Cu2+のイオンが挿入されたナノ粒子が、1:(0.2〜0.8):(0.2〜0.5)であることを特徴とする請求項1に記載のナノ構造の殺生物剤組成物。
【請求項3】
金属イオンが挿入されたベントナイト粉末のナノ粒子は、以下に示す重量比でAg及びZn2+のイオンのみを含有しており:
Agのイオンが挿入されたナノ粒子:Zn2+のイオンが挿入されたナノ粒子が、1:(0.2〜0.8)であることを特徴とする請求項1に記載のナノ構造の殺生物剤組成物。
【請求項4】
金属イオンが挿入されたベントナイト粉末のナノ粒子は、以下に示す重量比でZn2+及びCu2+のイオンのみを含有しており:
Zn2+のイオンが挿入されたナノ粒子:Cu2+のイオンが挿入されたナノ粒子が、1:(0.2〜0.5)であることを特徴とする請求項1に記載のナノ構造の殺生物剤組成物。
【請求項5】
ベントナイト粉末の分散ナノ粒子は、大部分が70nm以下の大きさであることを特徴とする請求項1に記載のナノ構造の殺生物剤組成物。
【請求項6】
液体形態としての、請求項1に記載のナノ構造の殺生物剤組成物であって、Zn2+イオンとAg及びCu2+の間で選択された少なくとも1種のイオンとが挿入されたベントナイト粉末のナノ粒子が、極性溶媒と共に、ベントナイトナノ粒子:極性溶媒が1:20の比で配合されたものからなることを特徴とするナノ構造の殺生物剤組成物。
【請求項7】
前記極性溶媒が水であることを特徴とする、液体形態としての、請求項6に記載のナノ構造の殺生物剤組成物。
【請求項8】
前記極性溶媒が40%のヒドロ−アルコール溶液であることを特徴とする、液体形態としての、請求項6に記載のナノ構造の殺生物剤組成物。
【請求項9】
殺真菌性及び殺菌性の活性を備え、Zn2+イオンとAg及びCu2+の間で選択された少なくとも1種のイオンとが挿入されたベントナイト粉末のナノ粒子からなるナノ構造の殺生物剤組成物を調製する方法であって、
以下に示す段階:
a)塩化ナトリウムの3〜10%水溶液を用いて処理することによって、Na形態のベントナイトをNaイオンで濃くし、次いで、酸のアニオンを除去するまで洗浄し、乾燥させる段階;
b)段階(a)で得られた製品を、Ag塩、好ましくは硝酸銀の10〜20%水溶液によって、その水中での溶解度に対応する温度にて処理し、次いで、ナトリウム塩を除去するまで洗浄し、ろ過及び乾燥を行う段階;
c)段階(a)で得られた製品を、Zn塩、好ましくは塩化亜鉛の10〜20%水溶液によって、該塩の水溶性に対応する温度にて処理し、次いで、ナトリウム塩を除去するまで洗浄し、ろ過及び乾燥を行う段階;及び
d)段階(a)で得られた製品を、銅塩、好ましくは硫酸銅の10〜20%水溶液によって、該塩の水溶性に対応する温度にて処理し、次いで、ナトリウム塩を除去するまで洗浄し、ろ過及び乾燥を行う段階
の全部又は一部を含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
段階(a)〜(d)の全部を含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項11】
段階(a)、(b)及び(c)を含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項12】
段階(a)、(c)及び(d)を含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項13】
段階(b)、(c)及び(d)が終わった時に得られるベントナイト粉末の画分を、大部分が70nmを上回っていない大きさのベントナイトのナノ粒子が得られるように、分散させ、次いで、それらを配合することを特徴とする請求項8、9及び10のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
段階(b)、(c)及び(d)が終わった時に得られるベントナイト粉末の画分を最初に配合し、次いで、大部分が70nmを上回っていない大きさのベントナイトのナノ粒子が得られるように、分散させることを特徴とする請求項8、9及び10のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
ベントナイト粉末を、大部分が70nmを上回っていない大きさのナノ粒子にまで分散させることが、繰り返される大量の水中での激しい混合と次に続くデカンテーション、乾燥及び適切なミル内での粉砕によって行われることを特徴とする請求項11又は12に記載の方法。
【請求項16】
ベントナイト粉末を、大部分が70nmを上回っていない大きさのナノ粒子にまで分散させることが、1:10の割合で該粉末を脱イオン水と混ぜることと、次いで、超音波分散器を適用することによって行われることを特徴とする請求項11又は12に記載の方法。

【公表番号】特表2012−526777(P2012−526777A)
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−510313(P2012−510313)
【出願日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際出願番号】PCT/EP2010/056636
【国際公開番号】WO2010/130823
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(511275005)クローズド ストック カンパニー“インスティテュート オブ アプライド ナノテクノロジー” (4)
【出願人】(511275016)
【出願人】(511275027)シブ ラボラトリーズ リミテッド (6)
【Fターム(参考)】