説明

殺生物剤の調製方法

殺真菌性及び殺菌性を持つ殺生物剤の調製方法を記載しており、ここでは、ベントナイトをナトリウムイオンにより活性化し、そして、殺菌作用の金属の無機塩の水溶液中、周波数20〜50kHz及び強度10〜100Wt/cmの超音波の作用下での反応によって、得られた中間生成物に殺菌作用の金属のイオン、Ag、Cu2+、Zn2+等を挿入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺真菌性及び殺菌性を持ち、衛生及び医薬での応用、皮膚疾患(栄養障害性潰瘍、熱傷、皮膚炎及び皮膚症)治療において局所的に用いるための配合物での応用、並びに他の技術分野に有用な、特に織物、ポリマー、建材及び医療用製品の処理に有用な調製物を目的とする殺生物剤の製造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
殺菌作用を有する金属−Ag、Au、Pt、Pd、Cu及びZnの使用は、殺真菌剤及び殺菌剤の製造分野において広く知られている(非特許文献1及び2参照)。
【0003】
また、物質は、100ナノメートル以下(ナノメートル領域)の寸法を有する粒子形態である場合、その化学的、物理的及び生物学的性質を変えることも知られている。
【0004】
銀を含有する超分散殺生物剤が知られている[非特許文献3参照]。
【0005】
ロシア国特許RU2259871の明細書には、金属ナノ粒子に基づいたナノ構造殺生物剤のコロイド溶液の形態として、殺生物剤が記載されている。前述のナノ構造殺生物剤は、水中及び/又は非水性溶媒中での金属塩及び水溶性ポリマーの溶解によって得られる。得られた溶液に、窒素又はアルゴンの気体流を吹き通し、照射を受ける。金属塩として、銀、銅、ニッケル、パラジウム及び白金を含む群から選択される少なくとも1つの金属の塩を用いる。銀塩の使用が好ましく、例えば、硝酸塩、過塩素酸塩、硫酸塩又は酢酸塩である。ポリビニルピロリドン、1−ビニルピロリドンと、アクリル酸若しくはビニル酢酸、スチレン又はビニルアルコールとの共重合体をポリマーとして用いる。メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール又はエチレングリコールを溶媒として用いる。また、安定な乳濁液を得るため、界面活性物質を反応器に加える。得られたナノ複合殺生物剤を抗菌手段、滅菌手段又は脱臭手段として用いる。
【0006】
しかしながら、殺生物剤を得るための上記方法は、不活性気体雰囲気中でイオン化放射源の適用により合成を行うため、複雑であり、費用がかかる。
【0007】
特許RU2088234(1997)には、ポリ−N−ビニルクロリドン−2を用いて安定化したゼロ価金属銀のナノクラスターを含有する水溶性殺菌組成物が記載されている。この殺菌組成物の調製は、不活性気体の雰囲気中、ポリ−N−ポリビニルクロリドン−2を含有するエタノール水溶液を用いた硝酸銀溶液の反応によって行われる;該反応は、最高で65〜75℃までの加熱の下、暗闇で行われる。
【0008】
しかしながら、これら生成物中における安定剤の存在は、最終調製物の適用の技術的機会を制限する。
【0009】
ロシア国特許RU2278669(2006)によれば、銀塩の水溶液が、アラビノガラクタンの水溶液に加えられる。
【0010】
水酸化アンモニウム又はナトリウムを溶液に加える。X線回折解析データによれば、銀は、ゼロ価の状態にある。得られる銀含有アラビノガラクタンは、医薬において、局所用途の消毒手段として、抗生物質に代わる医薬調製物として、更には殺菌被覆用の成分として使用できる。
【0011】
しかしながら、銀イオンをゼロ価の状態にする還元剤として、また、同時に反応分散媒体として、安定剤、即ちアラビノガラクタンの天然多糖を使用することは、調製費用を増加させる。
【0012】
それ故、殺菌調製物を得るための上記方法は、技術的困難性と、それらの液体分散体のかなり低い安定性を示す。
【0013】
特許RU2330673(2008)は、金属イオンが挿入されたベントナイトに基づく殺生物剤の調製について言及しており、本発明に最も近い先行技術であると思われる。
【0014】
上述の特許によれば、所望の殺生物剤を得るための方法が、以下に示す工程からなる:第1段階では、塩化ナトリウム水溶液を用いた反応と、その後の、得られた中間生成物の洗浄及びろ過による塩素アニオンの除去によって、Na型ベントナイトをナトリウムイオンで活性化し;第2段階では、殺菌作用有する金属の無機塩の水溶液の反応と、その後の、脱イオン水を用いた生成物の洗浄によるナトリウム塩の除去によって、得られた中間体に、殺菌作用を有する金属イオンを挿入する。次いで、その生成物をろ過し、乾燥させ、最大で20〜150ナノメートルの粒子寸法にまで粉砕する。
【0015】
硝酸銀及び硫酸銅を、挿入用の殺菌金属の無機塩として用いる。
【0016】
指定された水溶液とベントナイトの反応は、各段階で、ベントナイト:溶液が1:(10〜40)重量部の割合にて行われる。挿入過程では、ベントナイトの半仕上げ生成物を特定の塩溶液中で12〜24時間保つ。塩素アニオン及びナトリウム塩の除去のため、脱イオン水を用いたベントナイトの洗浄を繰り返し行う。
【0017】
得られた殺生物剤は、建築用乾燥混合物を製造するための添加剤として;生存生物の組織の損傷地帯の抗菌処置のため、医学及び獣医学において;軟膏又はゲルの調製において;建材表面処理用の調製物において;繊維製品の処理のために適用される。
【0018】
殺生物剤を得るためにNa型ベントナイト(モンモリロナイト)を使用することは、この層状粘土鉱物のカチオン交換を可能にする特性に基づいている。
【0019】
この特性は、他の種類のカチオンと交換可能な交換カチオン量(mg当量で表示される)を決定する。選択された鉱物粘土は、カチオン交換の高い能力を持つ。
【0020】
活性化及び挿入の過程は、実質的に、大きさ及びベントナイトのモジュール粒子の比表面積並びにそれらの親水性によって決まる。
【0021】
上記特許によれば、大きさ、ベントナイト粒子の比表面積、及びそれらの親水性は、基本的に、水溶液の反応作用下でのベントナイトモジュール粒子の軟化及び成層によって決まり、それは、殺生物剤を得るための水、反応物及び時間の消費を増大させる。
【0022】
また、得られた生成物の殺生物性は、交換アルカリ金属からの清浄の程度によっても決定される。
【0023】
既知の方法によれば、上記清浄は、脱イオン水を用いた生成物の洗浄の繰り返しにあり、殺生物剤を得るための費用の増大と、同時に、得られた殺生物剤中における殺菌作用を有する金属イオン濃度の減少とを引き起こし、また、得られた生成物中での望ましくないアルカリ金属イオンの存在を排除しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】ロシア国特許RU2259871
【特許文献2】特許RU2088234(1997)
【特許文献3】ロシア国特許RU2278669(2006)
【特許文献4】特許RU2330673(2008)
【非特許文献】
【0025】
【非特許文献1】H.E. Morton, Pseudomonas in Disinfection, Sterilisation and Preservation, ed. S.S. Block, Lea and Febider 1977
【非特許文献2】N. Grier, Silver and Its Compounds in Disinfection, Sterilisation and Preservation, ed. S.S. Block, Lea and Febiger, 1977
【非特許文献3】E.M. Blagitko, etc. ≪Silver in medicine≫, Novosibirsk: Nauka-center, 2004, 256 p.
【発明の概要】
【0026】
本発明の範囲は、金属イオンが挿入されたベントナイトに基づき、効果的な殺菌性及び殺真菌性を持つ殺生物剤の調製方法を利用できるようにすることであり、反応物及びプロセス時間に関して費用をより低くすることにかかわる。
【0027】
新規な方法の結果は、殺菌及び殺真菌用途を目的とする調製物及び組成物に適用する場合に、得られる殺生物剤の作用の効率を増加させる。
【0028】
本方法は、以下に示す工程を含む:
・第1に、水溶液中で塩化ナトリウムを用いてNa型ベントナイトを処理し、続いて、洗浄及びろ過により塩素アニオンを除去することによって、Na型ベントナイトをナトリウムイオンで活性化させる;
・第2工程では、殺菌作用を有する金属の無機塩の水溶液を用いた処理と、その後の、脱イオン水を用いた生成物の洗浄によるナトリウム塩の除去によって、先に得られた中間生成物に殺菌作用を有する金属のイオンを挿入する。
【0029】
次いで、得られた生成物をろ過し、乾燥させ、粒径寸法が20〜150ナノメートルに至るまで粉砕する。
【0030】
本発明によれば、ベントナイトの活性化及び挿入工程が、周波数20〜50kHz及び強度10〜100Wt/cmの超音波の適用によって行われる。
【0031】
ナトリウム塩からの挿入生成物の清浄は、2段階において行われることが好ましい:
・第1段階では、上記生成物をデカントし、そして、
・第2段階では、それを、分子量が264以下のクラウンエーテルの中から選択されるアルカリ金属イオン用錯化剤を30ppm〜100ppm含有する脱イオン水で洗い流す。
【0032】
本発明の特定の実施態様によれば、ナトリウムイオンによるNa型ベントナイトの活性化段階が、塩化ナトリウムの3〜7%水溶液を用いて行われ、挿入段階は、殺菌作用を有する金属の無機塩の8〜15%水溶液を用いて行われる。
【0033】
本発明によれば、ナトリウムイオンによるNa型ベントナイトの活性化工程において、塩化ナトリウムの3%水溶液を用いることが好ましく;該反応は、1:(10〜40)重量部のベントナイト:水溶液比で行われる。
【0034】
本発明によれば、挿入工程において、殺菌作用の金属の無機塩の9%水溶液を用いることが好ましく;該反応は、1:(10〜40)重量部のベントナイト:水溶液比で行われる。
【0035】
本発明によれば、殺菌作用の金属の無機塩として、硝酸銀、硫酸銅、硫酸亜鉛又は硝酸亜鉛を用いることが好ましい。
【0036】
本発明によれば、アルカリ金属イオンの錯化剤として、クラウン・エーテル18−クラウン−6を用いることが好ましい。
【0037】
本発明に従う方法は、使用反応物及びプロセス時間の観点から、費用が低い;殺菌作用を有する金属イオンが挿入されたベントナイトのナノ粒子に基づいた殺生物剤が得られる。これら殺生物剤は、(医療を含めた)各種織物、ポリマー、建築用製品の表面を温血生物の外皮の外部処理にて処理することによって、微生物及び真菌コロニーに対する効果的な殺菌及び殺真菌作用を提供する。
【0038】
上記方法の技術的特徴を以下のように集約することができる:
・天然鉱物ベントナイトのNa型での使用:吸着活性が高い負に帯電したアルミニウム−酸素及びシリカ−酸素化合物の「パッケージ」のレベル毎の配置が、ベントナイトの結晶格子構造によって特徴的である;
・超音波の使用:超音波は、特定の周波数及び強度によって、ベントナイトの水系に影響を与え、活性化及び挿入に直接関与する粒子の比表面積を形成する。モンモリロナイトの粒子は、分かれて積層し、即ち、それらの活性表面が、超音波エネルギーの適用によって水中でのナトリウムベントナイトの分散にて増加する;
・ナトリウム塩から挿入生成物を清浄するための2段階プロセス、即ち生成物のデカンテーション及びアルカリ金属イオンの錯化剤としてクラウンエーテルを含有する脱イオン水を用いた生成物の洗浄の実施。これは、その溶液からのアルカリ金属−ナトリウムの抽出をもたらす。洗浄中、クラウンエーテルの分子内空洞にナトリウムイオンを保つため、ナトリウムイオンへの銀イオンの逆挿入交換の確率を劇的に減少させる;それ故に、殺生物剤の質的特徴を向上させる結果となる。
【0039】
当該技術の状況から、本発明の一つに対応し、上述の結果を可能にする特徴を備えた方法は、知られていない。
【0040】
既知の技術の分析は、「新規性」及び「進歩性」の基準への本願の適合を証明する。
【0041】
本方法は、創傷、熱傷、外皮の潰瘍領域の抗菌処置、並びに(医療を含めた)織物、ポリマー及び建築用製品の表面の予防的な抗菌及び殺真菌処理を目的とする調製物を製造することを産業的に実現できる。
【0042】
本発明の本質は、殺生物剤を得るための原料成分の選択に関する表示、その獲得の例を通し、そして、本発明及び既知特許に従う殺生物剤の殺菌活性を説明する図1に報告されるようなテストの結果によって説明される。
【0043】
予め利用できる医療及び実験機器商品生産物、更には既知の技術プロセスが、本発明の方法に従う殺生物剤の調製に適用される:
・Na型のベントナイト(モンモリロナイト);それは、本発明に従う方法に最も好ましい;
・硝酸銀(AgNO);硫酸銅(CuSO);塩化亜鉛(ZnCl)又は硫酸亜鉛、塩化ナトリウム(NaCl);
・アルカリ金属イオンの錯化剤:分子量が264で、大環状ポリエーテルに属するクラウン・エーテル18−クラウン−6。クラウン・エーテルは、白色結晶粉末であり、溶融温度が38.6〜39.4℃である。
・脱イオン水;
・超音波装置Bandelin Sonopuls HD2070。
【0044】
使用した成分の構造、それらの比を変え、技術上の操作手順を変更することによって本発明を実施することは、生成した殺生物剤の特性の悪化に導くか、又はそれらを得るための方法の費用を増加させる。
【0045】
ベントナイトの活性化及び挿入中、超音波影響の確立したパラメータ(周波数20〜50kHz、強度10〜100Wt/cm)を順守せずに本発明を実施することは、殺生物剤の特性の低減に導くか、又は技術的な操作上の費用を増加させる。
【0046】
上記活性化及び挿入は、超音波の周波数及び強度の低下により悪化することになり、一方、超音波の周波数及び強度の上昇は、使用する媒体の温度を上昇させ、負のキャビテーション効果に導き、更には操作及び電力費用を増加させる。
【0047】
本発明の実現は、以下に示すステージ及び具体例によって説明される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】図1は、超音波処理の適用あり・なし(それぞれ例1.1及び1.2に従う)でのAg型挿入ベントナイトのIRスペクトル(波数に対する光学濃度の変化)を示す。
【実施例】
【0049】
ステージ1−ベントナイトの半仕上げ生成物の製造
例1及び2に従って、ベントナイトの中間生成物をこの工程において得る。
【0050】
例1
10g量のNa型ベントナイト(モンモリロナイト)をNaCl3%水溶液で1:40重量部のベントナイト:溶液比にて飽和させる。<<ベントナイト−反応溶液>>系の超音波処理を、周波数20kHz及び強度15Wt/cmの超音波の適用下で15分間行う。
【0051】
上記系の分散と、同時にナトリウムイオンによる溶液中でのベントナイト粒子の活性化とが結果的に起こる。超音波処理中、反応系の温度は、5℃上昇する。次いで、塩素アニオンの除去のため、脱イオン水による中間生成物の洗浄を2回以上行う。その後、フィルタ−<<ホワイトテープ>>に通したろ過及び乾燥を行う。
【0052】
10gr量のNa型ベントナイト(モンモリロナイト)をNaCl5%水溶液で1:40重量部のベントナイト:溶液の比にて飽和させる。次いで、ナトリウムイオンによるベントナイトモジュール粒子の活性化のため、それを所定の溶液中で12時間保つ。塩素アニオン除去のため、脱イオン水を用いた中間生成物の繰り返し(2回以上)の洗浄、フィルタ−<<ホワイトテープ>>に通したろ過、その後の乾燥を行う。
【0053】
ステージ2−殺生物剤の獲得
以下に示す例に従って、殺菌作用を有する金属イオンが挿入されたナノ構造ベントナイトに基づく殺生物剤を先の工程の中間体から得る。
【0054】
例1.1
例1で得た中間体を硝酸銀の9%水溶液で(赤色照明にて)飽和させる。<<ベントナイト−反応溶液>>系の超音波処理を超音波周波数30kHz及び強度15Wt/cmにて20分間行う。<<ベントナイト−反応溶液>>系の分散が起こり、銀カチオン(Ag)によるナトリウムカチオン(Na)のイオン置換反応が起こる。そのプロセスを35℃以下の温度にて行い、超音波処理後に得られる懸濁液をデカントし、湿潤残留物を与え、クラウン・エーテル18−クラウン−6を加えた脱イオン水で洗浄する。脱イオン水中でのクラウン・エーテル18−クラウン−6の濃度は、水1リットル当たり40ppm(40mg)であった。ろ過及び好ましくは80℃以下の温度での乾燥を行う。得られた生成物を乾燥後に粉砕する。
【0055】
銀イオンAgが挿入されたベントナイト粉末を得、生成物9.8gが集められる。
【0056】
例1.2
例1.1と同一の方法を行うが、硫酸銅(CuSO)9%水溶液を用いる。イオン交換反応中、銅カチオン(Cu2+)によるナトリウムカチオン(Na)の置換があり、生成物9.8gが集められる。
【0057】
例1.3
例1.1と同一の方法を行うが、塩化亜鉛(ZnCl)9%水溶液を用いる。イオン交換反応中、亜鉛カチオン(Zn2+)によるナトリウムカチオン(Na)の置換があり、生成物9.8gが集められる。
【0058】
例2.1
例2で得た中間生成物を硝酸銀の10%水溶液で(赤色照明にて)飽和させる。次いで、それを20時間保ち、その結果、銀カチオン(Ag)によるナトリウムカチオン(Na)のイオン置換反応と、同時に、ベントナイトモジュール粒子の軟化及び成層がある。そのプロセスを30℃以下の温度にて行う。得られた懸濁液をデカントし、ベントナイトの湿潤残留物を与え、脱イオン水で洗浄する。洗浄を5回以上繰り返し行う。ろ過及び好ましくは80℃以下の温度での乾燥を行う。得られた生成物を乾燥後に粉砕し;生成物9.7gが集められる。
【0059】
例2.1による殺生物剤の調製は、既知の特許RU2330673に従って行われる。
【0060】
例1.1〜1.2及び2.1で得られた殺生物剤における銀及び銅の含量を決定した。研究物質との反応に必要な試薬の体積又は重量の測定に基づいた定量分析方法−滴定分析−を用いた。
【0061】
所定の例における銀及び銅の量の決定のための滴定分析を、滴定当量点を決定する測定器を用いて行った。
【0062】
例えば、分析例における銀の重量%含量を決定する滴定分析において分解試薬として硫酸及び硝酸の混合物を用いた。チオシアン酸アンモニウム(又はカリウム)の溶液を滴定剤として用い、第二鉄ミョウバンを指示薬として用いた。
【0063】
分析を実施した結果として、(例1.1)の試験サンプルは、2.95%b.w.の銀を含有することが確立された;
試験サンプル(例2.1)は、2.35%b.w.の銀を含有する;
例1.2及び1.3のサンプル中における銅及び亜鉛の含量は、2.49%b.w.である。
【0064】
上記試験は、本発明に従う方法の効率を証明する。
【0065】
方法の効率を確認するため、IR分光法(赤外線分光法)によって、例1.1及び2.1で得た殺生物剤を試験した。Ag型ベントナイト(モンモリロナイト)のナノ分散粒子の挿入効率の状態及び程度を試験した。
【0066】
例1.1及び例2.1によるAg形態での殺生物剤の水溶液を比較試験に用いた。
【0067】
その結果、試験したAg形態の殺生物剤のIRスペクトルは、挿入ベントナイトの層間空間における銀イオン(Ag)の含量について本質的に異なることが確かめられた(図1)。
【0068】
本発明に従って得られた殺生物剤の殺菌性及び殺真菌性の効率を確認するため、 例1.1〜1.3及び2.1による殺生物剤の試験を行った。
【0069】
<<包帯滅菌制御>>基準RD64−051−87の使用により、適切な試験を行った。それは、ガーゼ、織物、包帯、ナプキン等の作業面、並びに医療装置の金属及びシリコン表面等における微生物を決定する標準的な方法に相当する。
【0070】
無菌装置及び材料を用いて無菌状態で試験を行った。以下に示す材料を試験に用いた:
・pH7.2〜7.4の無菌牛肉エキスブロス(BEB)を用いて処理したペトリカップ。冷却層BEBの厚みは、2〜3mmである;
・無菌ガーゼ・綿状タンポン(サンプル)。例1.1〜1.3、2.1で調製した試験サンプルの量は、処理材料について、微生物スタフィロコッカス・アウレウス、酵母細胞カンジダ・ユティリスを測定するために行われた試験の量に相当する。
【0071】
通常の条件下、ガーゼ・綿状タンポンを保管して、試験を4、8、10、14日間行った。BEBによって処理されたペトリカップにサンプルを置いた。保管前に、試験サンプルを、得られた調製物によって、1cm当たり調製物3gの量で処理した。
【0072】
例1.1〜1.3、2.1の生成物に関する試験の結果として、以下のことが確認された:
・例1.1及び1.2〜1.3に従う生成物によってそれぞれ14及び10日間処理された試験サンプルの表面には、微生物スタフィロコッカス・アウレウス及びカンジダ・ユティリスのコロニーがない;
・例2.1に従う調製物によって8日間処理された試験サンプルの表面には、微生物スタフィロコッカス・アウレウスのコロニーがない。
【0073】
それ故に、研究の実施は、総じて、本発明の下での殺生物剤の殺菌性及び殺真菌性の効率が、微生物の各種コロニーに対して高いことを確認し、
・外皮の損傷、熱傷及び潰瘍領域の抗菌処理のための、
・建材の表面の処理のための
本発明の適用の効率を証明する。
【0074】
得られた殺生物剤は、反対の兆候がなく、高い吸着特性、イオン交換特性及び抗炎症特性を持つ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
殺生物剤を得るための方法であって、
・塩化ナトリウム水溶液を用いた反応と、その後の洗浄及びろ過による塩素アニオンの除去とによって、Na型ベントナイトをナトリウムイオンで活性化する工程と;
・殺菌作用の金属の無機塩の水溶液中での処理により、得られた中間生成物に該金属のイオンを挿入し、その後、脱イオン水を用いた生成物の洗浄によるナトリウム塩の除去、ろ過、乾燥及び粒径20〜150nmまでの粉砕が続く工程と
を含み、
ベントナイトの活性化及び挿入の工程において、周波数20〜50kHz及び強度10〜100Wt/cmの超音波を適用することを特徴とする方法。
【請求項2】
ナトリウム塩からの挿入生成物の清浄が2段階で行われ、第1段階では、該生成物をデカントし、第2段階では、それを、分子量が264以下のクラウンエーテルの中から選択されるアルカリ金属イオン用錯化剤を30〜100ppm含有する脱イオン水を用いて洗浄することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ナトリウムイオンによるNa型ベントナイトの活性化段階では、塩化ナトリウムの3〜7%水溶液を用い、挿入段階では、殺菌作用を有する金属の無機塩の8〜15%水溶液を用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ナトリウムイオンによるNa型ベントナイトの活性化に、塩化ナトリウムの3%水溶液を用い、上述の鉱物粘土の処理を1:(10〜40)重量部のベントナイト:水溶液比で行うことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
金属イオンによるベントナイト中間生成物の挿入に、殺菌作用の金属の無機塩の9%水溶液を用い、上述の鉱物粘土の処理を1:(10〜40)重量部のベントナイト:水溶液比で行うことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
殺菌作用を有する金属の無機塩として、硝酸銀、硫酸銅、硫酸亜鉛又は硝酸亜鉛を用いることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
アルカリ金属イオンの錯化剤として、クラウン・エーテル18−クラウン−6を用いることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の方法によって得られる殺真菌性及び殺菌性を持つ殺生物剤。
【請求項9】
消毒及び無菌化されるべき任意の表面を処理するための請求項8に記載の殺生物剤の使用。

【図1】
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【公表番号】特表2013−513587(P2013−513587A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542578(P2012−542578)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【国際出願番号】PCT/EP2010/069498
【国際公開番号】WO2011/070175
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(511275005)クローズド ストック カンパニー“インスティテュート オブ アプライド ナノテクノロジー” (4)
【出願人】(512075268)
【出願人】(511275027)シブ ラボラトリーズ リミテッド (6)
【Fターム(参考)】