説明

殺生物性組成物に関連する改良

【課題】本発明は、殺生物性組成物に関連する改良に関する。
【解決手段】本発明は、少なくとも1種の非水溶性殺生物剤(好ましくは除草剤)および水溶性担体材料を含む、効力の向上した無溶媒殺生物性組成物を提供し、その場合、非水溶性殺生物剤は、1000nm未満のナノ分散のピーク直径を有するナノ分散形態で、担体材料中に分散される。本発明はまた、殺生物剤溶液および水溶性担体溶液の噴霧乾燥を含む方法を提供し、水に溶解するとナノ分散殺生物剤を生成する、担体内無溶媒殺生物剤分散物を得る。本発明はまた、水中で無溶媒組成の組成物の分散によって得られる、非水溶性殺生物剤および水溶性担体の水性分散物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺生物性組成物に関連する改良に関する。
【0002】
詳細には、非水溶性殺生物性物質を含有する殺生物性組成物およびそれらの前駆体に関する。
【背景技術】
【0003】
殺生物性薬剤は、農業、衛生および清掃、木および紙の保存、ならびに様々な他の(人間、動物および植物の)保健と、工業的用途において広く使用されている。本発明は、殺生物性組成物全般に適用できると考えられるが、特に、抗微生物薬剤、即ち抗細菌薬剤および抗真菌薬剤ならびに除草剤に関しても記載するが、本発明の他のより広範な態様を除外する意図はない。
【0004】
効果的な殺生物剤は、水溶性に乏しいものが多く、これらの物質をいかにより有効となし得るかに関して様々な提案がなされてきた。例えば、農業用製剤は、不溶性または難溶性殺生物剤の水溶性塩を含有するものが多い。アルキルアミン塩等のこれらの塩は、通常はそれらの酸等価物ほどの活性がない。この実例としては、2,4-ジクロロフェノキシ酢酸(2,4-D酸)が、2,4-Dの対応するジメチルアミン塩よりも除草剤としての活性が高いことが知られている。しかし、2,4-D酸は、水には溶解しない。酸形態の2,4-Dを処方するために使用する溶媒は、植物に対する毒性があり、除草剤の揮発性およびそれに続く非標的領域への飛散を助長することが知られている。
【0005】
発明者らの同時係属国際特許出願PCT/GB03/03226は、水溶性ポリマー材料の3次元オープンセル格子を含む固体多孔性ビーズの形成を記載している。これらは、一般的に「鋳型」材料であって、水および非水性分散相の両方を、水性相中に溶解されたポリマーを有する高分散相エマルジョン(HIPE)から除去することによって形成される。この巨視的ビーズは、HIPEエマルジョンを液体窒素等の低温の流体中に滴下し、次に形成された粒子を凍結乾燥した後、水性相および分散相の大半を除去することによって、形成される。この結果、ポリマーが「骨格」構造の形態で後に残る。このビーズは、迅速に水に溶解し、ビーズのポリマー骨格を溶解した時に、凍結および乾燥前のエマルジョンの分散相中に分散していた非水溶性成分を水にも分散することができるという注目すべき特性を有する。
【0006】
国際公開第2005/011636号は、ポリマー中に薬剤の「固体非晶質分散物」を形成するための非エマルジョン系噴霧乾燥法を開示している。この方法では、ポリマーおよび低溶解度薬物を溶媒に溶解し、噴霧乾燥を施して、この薬物が、結晶形態ではなくほとんどが非晶質形態で存在している分散物を形成する。
【0007】
発明者らの同時係属国際特許出願GB0501835(2005年1月28日出願、2006年8月3日公開)およびGB0613925(2006年7月13日出願)は、水中でナノ分散物を形成すると見込まれる材料を調製し得る方法、好ましくは噴霧乾燥法を記載している。どちらの場合も、噴霧乾燥等の方法によって、この液体を周囲温度を超えて(摂氏20度を超えて)乾燥し、その中に非水溶性材料を分散させる構造化剤の粒子を担体として生成する。これらの粒子を水に入れると溶解し、通常300nm未満の粒子となって非水溶性材料のナノ分散物を形成する。このサイズ尺度は、ウィルス粒子と同程度であり、非水溶性材料は、あたかも溶解しているように挙動する。
【0008】
GB0501835に記載の方法では、非水溶性材料をエマルジョンの溶媒相に溶解する。公開されたより早期のこの先願では、その方法を、例えば、Triclosan(商標)、クリンバゾール、オクタピロックス、ケトコニゾール、フタルイモパーオキシヘキサン酸(PAP)、および第4級アンモニウム化合物等の抗微生物剤に、または殺虫剤、農薬、および除草剤に適用することができることを記述している。公開された発明者らの先願GB0501835は、開示した方法によって調製した蛍光材料が、既知の凍結乾燥法によって調製したものより良好な性能を表すことも示した。
【0009】
GB0613925では、非水溶性材料を混合溶媒系に溶解し、水溶性構造化剤と同じ相の中に共存させる。発明者らのGB0613925出願は、Triclosan(商標)のナノ分散物が、重量比で非常に低濃度でさえも、Triclosan(商標)に普通期待される以上に効果的であるというさらなる利点を有することを明らかにしている。
【0010】
本出願では、「周囲温度」という用語は、摂氏20度を意味し、全ての百分率は、別段の指定がなければ重量百分率である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】同時係属国際特許出願PCT/GB03/03226
【特許文献2】国際公開第2005/011636号
【特許文献3】同時係属国際特許出願GB0501835
【特許文献4】同時係属国際特許出願GB0613925
【特許文献5】米国特許第6849577号
【特許文献6】米国特許第6355675号
【特許文献7】米国特許第6113936号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
発明者らは、向上した効力を示す水溶性形態の殺生物性物質を生成するために、エマルジョン系の方法および単相の方法の両方を使用することができると、今や判定した。
【0013】
従って、本発明の第一の態様は、少なくとも1種の非水溶性殺生物剤および水溶性担体材料を含む効力の向上した殺生物調製物であって、非水溶性殺生物剤が、ナノ分散形態のピーク直径が1000nm未満のナノ分散形態に担体材料中に分散されている殺生物調製物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、非水溶性殺生物剤の効力を向上させる方法であって、該殺生物剤の溶液および水溶性担体の溶液を噴霧乾燥する工程を含み、水に溶解した時にピーク粒子直径が1000nm未満のナノ分散殺生物剤を生成する、担体中の無溶媒殺生物剤分散物を得る方法をさらに提供する。
【0015】
本発明の分散生成物に適する好ましい粒度測定法には、動的光散乱計測器(Nano S、Malvern Instruments UK製造)を用いる。具体的には、Malvern Instruments Nano Sは、赤色(633nm) 4mWのヘリウム-ネオンレーザーを使用し、材料の懸濁液を入れた標準光学特性のUVキュベットを照射する。本出願中で言及する粒度は、標準プロトコルを使用したこの装置で得られた値である。
【0016】
非水溶性殺生物剤のピーク直径は、800nm未満であることが好ましい。非水溶性殺生物剤のピーク直径が500nm未満であることが、より好ましい。本発明の特に好ましい実施形態では、非水溶性殺生物剤のピーク直径は200nm未満、100nm未満であることが最も好ましい。
【0017】
発明者らは、より小さな粒度、特に40nm未満の粒度に対しては、非水溶性殺生物剤のMICにさらに顕著な向上が見られると判定した。この効果はよく理解されておらず(比較すると、グラム陰性細菌細胞壁の厚さが10nmである)、細胞壁と殺生物剤ナノ粒子との何らかの特有の相互作用が関与している可能性がある。この粒度範囲はミセルの尺度にも近く、別の説明としては、効果をもたらすには、ある種の殺生物剤のほんの2、3個の分子または一部の例では単一の分子だけでよく、それ故にごく少量の非水溶性殺生物剤の送達でもその効率を計り知れなく大きくすることである。
【0018】
本発明に関しては、殺生物剤に適用する場合の「非水溶性」とは、水中でのその溶解度が10g/L未満であることを意味する。
【0019】
好ましくは、非水溶性殺生物剤は、周囲温度(摂氏20度)の水で5g/L未満の溶解度を有し、1g/L未満が好ましく、120mg/L未満が特に好ましく、15mg/L未満がさらにより好ましく、5mg/L未満が最も好ましい。本明細書中で、非水溶性が意味することについての所定の解釈は、この溶解度レベルによって示される。
【0020】
本発明は、広範囲の殺生物剤に適用できる。本発明に用いる好ましい非水溶性殺生物剤は、抗菌剤(例えば、Triclosanを含めたクロロフェノール)、抗真菌剤(例えば、クロロタロニルならびにケトコナゾールおよびプロピコナゾール等のイミダゾールを含めた有機塩素)、殺虫剤(例えば、λ-シハロトリンを含めたピレスロイド)、および/または除草剤(例えば、イソプロツロンを含めたフェノール尿素)である。本発明は、ダニ駆除剤、殺藻剤、軟体動物駆除剤、および殺線虫薬にも適用できると想定される。
【0021】
Trichlosan(5-クロロ-2-(2,4-ジクロロフェノキシ)-フェノール)は、石鹸、デオドラント、練り歯磨き、口腔洗浄薬、および清掃用品に使用されるクロロフェノール抗菌剤であり、台所用品、玩具、寝具類、靴下、およびゴミ袋等のますます増加しつつある消費財に注入されている。水への溶解度が約17mg/Lと乏しく、本発明で用いるのに適当な抗菌性殺生物剤である。
【0022】
ケトコナゾール(アセチル-ジクロロフェニル-イミダゾール)は、真菌感染を治療するために様々な形式で使用される広域スペクトルイミダゾール抗真菌剤である。頭部粃糠疹等の局所感染に対しては、クリーム、ローション、および薬用シャンプーが利用可能であるが、全身性真菌感染を治療するためには経口錠剤を使用する。Janssen-Cilag Ltdは、商標名「Nizoral(登録商標)」の下に様々なケトコナゾール系製剤を製造している。その溶解度は0.1mg/L未満である。
【0023】
プロピコナゾール(1-(2-(2,4-ジクロロフェニル)-4-プロピル-1-1,3-ジオキソラン-2-イルメチル)-1H-1,2,4-トリアゾール)は、別の広域スペクトル抗真菌剤である。プロピコナゾールは、Cibaによって製造される「Tilt(登録商標)」等の抗真菌農薬製剤に主として使用される。その溶解度は約100mg/L未満である。
【0024】
アゾキシストロビン(メチル(E)-2-{2-[6-(2-シアノフェノキシ)ピリミジン-4-イルオキシ]フェニル}-3-メトキシアクリレート)は、浸透性の広域スペクトルストロビルリン殺真菌薬で、Ascomcetes(例えば、ウドンコ病)、Basidiomycetes(例えば、サビ病)、Deutoromycetes(例えば、イネイモチ病)、およびOomycetes(例えば、ベト病)を含めた植物の病原性真菌の4大グループに対して活性を有する。他のストロビルリンは、アゾキシストロビン、クレスオキシムメチル、ピコキシストロビン、フルオキサストロビン、オリザストロビン、ジモキシストロビン、ピラクロストロビン、およびトリフロキシストロビンである。アゾキシストロビンは水への溶解度が約6mg/Lと非常に乏しい。
【0025】
クロロタロニル(2,4,5,6-テトラクロロイソフタロニトリル)は、野菜、樹木、小果樹、芝、観賞植物、および他の農作物を脅かす真菌を抑制するために使用される広域スペクトル有機塩素殺真菌薬である。水へのその溶解度が並外れて低く、約0.6mg/Lである。
【0026】
ケトコナゾール、プリピコナゾール、アゾキシストロビン、およびクロロタロニルは、それぞれ本発明で用いるのに適当な抗真菌殺生物剤である。
【0027】
イソプロツロン(3-(4-イソプロピルフェニル)-1,1-ジメチル尿素)は、水への溶解度が低い(約65mg/L)一般的な除草剤であり、様々な一年草の中で成長する広葉雑草の抑制のために広く使用される。本発明で用いるのに適当な除草剤である。
【0028】
λ-シハロトリンは、本発明で用いるのに適当な殺虫剤であり、0.005mg/Lの水溶解度を有している。
【0029】
上述のように、最終的ナノ分散物の粒度を減少させると、これ以外では非水溶性である材料の有効性を向上させる際に、重要な利点があると考えられる。このことは、生体利用率の大幅な向上を模索する場合、または材料が局部的に高濃度になるのを避けるべき類似の応用では特に有利であると考えられている。その上、小さな粒度のナノ分散物は、より大きな粒度のものより安定性が高いと考えられている。
【0030】
好ましい担体材料は、水溶性無機材料、界面活性剤、ポリマー、糖、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0031】
本発明のさらなる態様は、非水溶性殺生物剤および水溶性担体材料の水性分散液を提供し、そこでは殺生物剤が、ナノ分散形態になっており、そのピーク直径が、1000nm未満、好ましくは800nm未満、より好ましくは500nm未満、さらにより好ましくは200nm未満、特に100nm未満である。上述のように、殺生物剤の粒度が40nm未満であれば特に有利である。本発明のさらなる態様は、非水溶性殺生物剤および水溶性担体を含む殺生物剤組成物を調製する方法を提供し、次の工程:
a)以下のもの:
i)殺生物剤用の少なくとも1種の非水混和性溶媒における、同じ殺生物剤の溶液、および
ii)担体の水性溶液
を含むエマルジョンを形成する工程と、
b)担体中の実質的に無溶媒の殺生物剤ナノ分散物を得るために、エマルジョンを乾燥し、水および非水混和性溶媒を除去する工程
とを含む。
【0032】
便宜上、この種の方法を、本明細書では「エマルジョン」法と称する。
【0033】
本発明のさらなる態様は、非水溶性殺生物剤および水溶性担体を含む殺生物剤組成物を調製する方法を提供し、次の工程:
a)以下のもの:
i)少なくとも1種の非水溶媒、
ii)任意選択で水、
iii)(i)および(ii)の混合液に可溶な水溶性担体材料、および
iv)(i)および(ii)の混合液に可溶である非水溶性殺生物剤
を含む混合物をもたらす工程と、
b)担体中の実質的に無溶媒の殺生物剤ナノ分散物を得るために、前記混合物を乾燥して非水溶媒および残存する全ての水分を除去する工程、
とを含む。
【0034】
便宜上、この種の方法を、本明細書では「単相」法と称する。
【0035】
本発明に関して、実質的に無溶媒とは、生成物の遊離溶媒の含有量が15重量%未満であって、10重量%未満であるのが好ましく、5重量%未満であるのがより好ましい。
【0036】
本発明に関して、担体材料および殺生物剤の両方が、乾燥工程に先立ってそれぞれの溶媒中で本質的に完全に溶解していることが不可欠である。スラリーの乾燥を教示することは本明細書の範囲外である。それ故に誤解を避けるために、エマルジョンまたは混合物の実際の固体含有量は、存在する可溶性材料が、90重量%を超え、好ましくは95%を超え、より好ましくは98%を超えて乾燥工程前の溶液中にあるような場合である。
【0037】
上述の方法に関して、好ましい殺生物剤および好ましい担体材料は、上記の通りであり、下記にさらに詳述する通りである。同様に、材料の好ましい物理的特性は、上記の通りである。
【0038】
殺生物剤および担体材料の両方が、少なくとも1種の非水溶媒(および任意選択による水)を含む1相中に溶解している「単相」法が好ましい。この方法は、ナノ分散殺生物剤により小さな粒度をもたらすと考えられている。一斉乾燥は、基本的に全ての溶媒を除去するのが好ましく、周囲温度を超えた噴霧乾燥によって実現されるのがより好ましい。
【0039】
本発明のさらなる態様は、本発明に従って組成物を調製する工程を含む、感染もしくは寄生(infestation)の予防または治療に用いる殺生物剤組成物の調製の方法を提供する。この方法は、非水溶性殺生物剤の粒度を減少させて100nm未満、より好ましくは40nm未満とする方法が好ましい。このような組成物は、医学的治療法で用いるのに適当である。
【0040】
本発明のまたさらなる態様は、本発明による組成物と基材を接触させる工程を含む、医学的治療以外の基材の処理法を提供する。このような方法には、例えば、木材または自然由来の他の材料を保存するための方法が含まれ得る。
【0041】
本発明の様々な好ましい特徴および実施形態を、以下に、さらに詳細に記載する。
【0042】
殺生物剤:
上述のように、本発明は、広範囲の非水溶性殺生物剤に適用可能である。好ましい殺生物剤は、非動物性殺生物剤で、特に殺真菌剤、殺菌剤、除草剤である。これらの殺生物剤は、120mg/L未満の水溶解度を有することが好ましく、15mg/Lであればより好ましい。
【0043】
本発明に関して、殺生物剤という用語は、静菌剤も含む。例えば、プロピコナゾールは、その作用形態が細胞死を引き起こすのではなく、細胞有糸分裂の抑制を伴うので、「殺真菌性」ではなく「静真菌性」である。
【0044】
幾つかの既知の水溶性除草剤は、米国特許第6849577号に記載され、ジウロン(diuron)、リニュロン(linuron)、スルホメツロン(sulfometuron)、クロルスルフロン(chlorsulphuron)、メトスルフロン(metsulfuron)、クロリムロン(chlorimuron)、アトラジン(atrazine)、シマジン(simazine)、キザロホップ(quizalofop)、ブトロキシジム(butroxydim)、ニコスルフロン(nicosulfuron)、プリムスルフロン(primsulfuron)、ベンスルフロン(bensulfuron)、アメトリン(ametryn)、ペンディメタリン(pendimethalin)、イソプロツロン(isoproturon)、クロルトルロン(chlortoluron)、ジフルフェニカン(diflufenican)、メソトリオン(mesotrione)、アクロニフェン(aclonifen)、フルロクロリドン(flurochloridone)、オキシフルオルフェン(oxyfluorfen)、イソキサフルトール(isoxaflutole)、イマザモックス(imazamox)、およびチフェンスルフロン(thifensulfuron)が含まれる。
【0045】
他の適当な除草剤には、トリフルラリン(trifluralin)、フルオロキシピル(fluoroxypyr)、フェンメディファム(phenmedipham)、フェノクサプロップ-P-エチル(fenoxaprop-P-ethyl)、アセトクロール(acetochlor)、アラクロール(alachlor)、トリアレート(tri-allate)、およびプロパニル(propanil)が含まれる。
【0046】
本発明は、最も広い意味では、非水溶性除草剤の性質に決定的に依拠しているわけではない。本発明は、上述のように、現在は塩の形態で使用されている前記除草剤の不溶性形態での適用に適している。これらには、トリメチルスルホニウム、イソプロピルアミン、ナトリウム、またはアンモニウム塩等の水溶性塩の形態で普通は使用されるグリホサート(N-phosphonomethylglycine)、水溶性ナトリウム塩の形態で普通は使用されるホメサフェン(fomesafen)、水溶性アンモニウム塩の形態で普通は使用されるグルホシネート(glufosinate)、パラコートジクロリド(paraquat dichloride)、および水溶性ナトリウム塩の形態で普通は使用されるベンタゾン(bentazone)が含まれる。
【0047】
幾つかの既知の非水溶性抗真菌剤は、例えば、米国特許第6355675号および第6113936号に開示されていて、ベノミル(benomyl)、カルベンダジム(carbendazim)、チアベンダゾール(thiabendazole)、およびチオファネートメチル(thiophanate-methyl)等のベンズイミダゾール(benzimidazole)化合物;ジエトフェンカーブ(diethofencarb)等のフェニルカルバメート(phenylcarbamate)化合物;プロシミドン(procymidone)、イプロジオン(iprodione)、およびビンクロゾリン(vinclozolin)等のジカルボキシイミド(dicarboxyimide)化合物;ジニコナゾール(diniconazole)、エポキシコナゾール(epoxyconazole)、テブコナゾール(tebucoinazole)、ジフェノコナゾール(difenoconazole)、シプロコナゾール(cyproconazole)、フルシラゾール(flusilazole)、フルトリアホール(flutriafol)、およびトリアジメフォン(triadimefon)等のアゾール(azole)化合物;メタラキシル(metalaxyl)等のアシルアラニン(acylalanine)化合物;フラメトピル(furametpyr)、メプロニル(mepronil)、フルトラニル(flutolanil)、およびトリフルアニド(tolyfluanid)等のカルボキシアミド化合物;トルクロホスメチル(tolclofos-methyl)、ホセチルアルミニウム(fosetyl aluminum)、およびピラゾホス(pyrazophos)等の有機リン酸化合物;ピリメタニル(pyrimethanil)、メパニピリム(mepanipyrim)、およびシプロジニル(cyprodinil)等のアニリノピリミジン(anilinopyrimidine)化合物;フルジオキソニル(fludioxonil)、およびフェンピクロニル(fenpiclonil)等のシアノピロール(cyanopyrrole)化合物;ブラストサイジン-S(blasticidin-S)、カスガマイシン(kasugamycin)、ポリオキシン(polyoxin)、およびバリダマイシン(validamycin)等の抗生物質;アゾキシストロビン(azoxystrobin)、クレソキシムメチル(kresoxim-methyl)、およびメトミノストロビン(metominostrobin)等のメトキシアクリレート(methoxyacrylate)化合物;クロロタロニル(chlorothalonil);マンゼブ(manzeb);キャプタン(captan);ホルペット(folpet);トリシクラゾール(tricyclazole);ピロキロン(pyroquilon);プロベナゾール(probenazole);フサライド(phthalide);シモキサニル(cymoxanil);ジメトモルフ(dimethomorph);S-メチルベンゾ[1,2,3]チアジアゾール-7-カルボチオアート(S-methylbenzo[1,2,3]thiadiazole-7-carbothioate);ファモキサドン(famoxadone);オキソリン酸(oxolinic acid);フルアジナム(fluaziname);フェリムゾン(ferimzone);クロベンチアゾン(chlobenthiazone);イソバレジオン(isovaledione);テトラクロロイソフタロニトリル(tetrachloroisophthalonitrile);チオフタルイミドオキシビスフェノキシアルシン(thiophthalimideoxybisphenoxyarsine);3-ヨード-2-プロピルブチルカルバミン酸エステル(3-iodo-2-propylbutylcarbamate);パラヒドロキシ安息香酸エステル(parahydroxy benzoic ester)が含まれる。フェンプロピモルフ(fenpropimorph)(モルホリン(morphorin)系)およびチラム(thiram)(ジチオカルバミン酸エステルdithiocarbamate)等の、他の物質も適当であると考えられている。
【0048】
好ましい殺真菌剤には、ポリエン(polyene)、イミダゾール、およびトリアゾール(triazole)型のものが含まれる。
【0049】
特に好ましいポリエンには、アムホテリシン(Amphotericin)、ナイスタチン(Nystatin)、およびそれらの混合物が含まれる。
【0050】
好ましいイミダゾールには、ビホナゾール(Bifonazole)、ブトコナゾール(Butoconazole)、クロトリマゾール(Clotrimazole)、エコナゾール(Econazole)、フェンティコナゾール(Fenticonazole)、イソコナゾール(Isoconazole)、ケトコナゾール(Ketoconazole)、メトロニダゾール(Metronidazole)、オキシコナゾール(Oxiconazole)、セルタコナゾール(Sertaconazole)、スルコナゾール(Sulconazole)、チオコナゾール(Tioconazole)、ミコナゾール(Miconazole)、およびそれらの混合物が含まれる。
【0051】
好ましいトリアゾール類には、以下のものが含まれる:フルコナゾール(Fluconazole)、イトラコナゾール(Itrakonazole)、ポサコナゾール(Posaconazole)、プロピコナゾール(propiconazole)、ラブコナゾール(Ravuconazole)、テブコナゾール、テルコナゾール(Terconazole)、ボリコナゾール(Voriconazole)、およびそれらの混合物。
【0052】
本発明で用いる他の適当な抗真菌性殺生物剤には、以下のものが含まれる:アモロルフィン(Amorolfine)、アニデュラファンギン(Anidulafungin)、ブテナフィン(Butenafine)、ナフチフィン(Naftifine)、カスポフンギン(Caspofungin)、シクロピロックス(Ciclopirox)、フルシトシン(Flucytosine)、グリセオフルビン(Griseofulvin)、ハロプロギン(Haloprogin)、ミカフンギン(Micafungin)、パラベン(Parabens)、サリチル酸(Salicylic acid)、テルビナフィン(Terbinafine)、チアベナゾール(Thiabenazole)、トルナフレート(Tolnaflate)、ウンデシレン酸(Undecylenic acid)、およびそれらの混合物。
【0053】
非水溶性殺虫剤には、シペルメトリン(cypermethrin)、λ-シハロトリン(lambda-cyhalothrin)、エスフェンバレレート(esfenvalerate)、マラチオン(malathion)、およびクロルピリホス(chlorpyrifos)が含まれる。
【0054】
水分散性形態:
本発明は、これ以外では本質的に非水溶性である材料の急速分散性形態を得る方法を提供する。この形態は、水溶性担体材料および非水溶性殺生物剤の両方を溶解している、少なくとも部分的に非水性の中間体のエマルジョンまたは溶液を形成することによって調製する。溶媒が除去されると、不溶性殺生物剤は水溶性担体材料中に分散したまま残される。適当な担体材料を、さらに詳細に以下に記載する。
【0055】
中間体のエマルジョンまたは溶液の乾燥のために最も好ましい方法は、噴霧乾燥法等の直接に粉末を生成するものである。噴霧乾燥法は、非水性揮発性成分および残存する全ての水分の両方を除去する際に特に効果的であり、担体および「有効添加(payload)」材料を粉末形態で残す。乾燥工程は、さらに詳細に以下に記載する。
【0056】
乾燥工程後に得られる材料の構造は、よく理解されていない。非水溶性材料の個々の巨視的物体がこの乾燥生成物中には存在しないので、生じた乾燥粉末は、カプセル化されていないと考えられている。乾燥工程の後ではエマルジョンの「油」相を含む揮発性溶媒は、ほとんどまたは全く残っていないので、乾燥材料も「乾燥エマルジョン」ではない。水をこの乾燥生成物に加えても、「乾燥エマルジョン」という語のようなエマルジョンは再形成されない。また、本発明では、利点を失うことなく存在する成分の比率を変えることができるから、この組成物は、いわゆる固溶体ではないと考えられてもいる。X線およびDSCを用いた研究からも、本発明の組成物は、固溶体ではなく、ナノ尺度の相分離した混合物を含んでいる。
【0057】
乾燥工程後のこの組成物が、殺生物剤対担体として重量比で1:500〜1:1の殺生物剤および担体を含むのが好ましいであろうが、1:100〜1:1が好ましい。約10〜30重量%の非水溶性殺生物剤および90〜70%の担体という典型的な含量が、噴霧乾燥法で得ることができる。上述のようにMICが向上するので、40%未満、より好ましくは30重量%未満、最も好ましくは25重量%未満の殺生物剤の含量が望ましい。
【0058】
「エマルジョン」調製法:
本発明による好ましい一方法では、非水溶性殺生物剤用の溶媒は水と混和しない。従って、水との混合に際してはエマルジョンを形成することができる。
【0059】
非水性相が約10%〜約95%v/vのエマルジョンを含むのが好ましく、約20%〜約68%v/vがより好ましい。
【0060】
このエマルジョンを、例えば、磁気撹拌子、ホモジナイザー、または回転機械式撹拌器を使用して、当業者には周知の条件下で調製するのが一般的である。エマルジョンは、乾燥前に広範囲の相分離を起こさない限り、特に高度に安定している必要はない。
【0061】
高剪断混合装置を使用する均質化は、水性相を連続相とするエマルジョンを作るための特に好ましい方法である。この粗大エマルジョンを回避してエマルジョン分散相の液滴サイズを減少させると、乾燥生成物中の殺生物剤の分散が向上する。本発明による好ましい方法では、水性相連続相エマルジョンを、分散相液滴の平均サイズが(Malvernピーク強度を使用して)500nmと5000nmとの間になるように調製する。「Ultra-Turrux」T25型実験用ホモジナイザー(または同等物)は、10,000rpm超で1分間を超えて作動させると適当なエマルジョンをもたらすことを見出した。
【0062】
エマルジョンの液滴サイズと殺生物剤の粒度との間には方向性関係があるが、これらのサイズは、本発明の材料を水性溶液中に分散した後で検出できる。発明者らは、前駆エマルジョン用の均質化の速さを増加させると、再溶解後の最終的粒度を減少させ得ると判定した。
【0063】
均質化の速度を13,500rpmから21,500rpmに増加すると、再溶解した粒度をほぼ半分に減少させ得ると考えられる。均質化の時間も、再溶解した粒度を制御することに関して役割を果たしていると考えられている。均質化の時間が増加する場合もやはり粒度が減少し、同時に粒度の分布もより広範囲になる。このような強力な混合は、本発明の方法の不可欠な工程ではないが、有利である。
【0064】
超音波処理も、エマルジョン系のために液滴サイズを減少させる、特に好ましい方法である。発明者らは、Hert Systems超音波発生装置(Sonicator)XL型をレベル10で2分間作動させるのが適当であることを見出した。
【0065】
「単相」調製法:
本発明による別法では、担体と殺生物剤の両方が、非水溶媒中または水と非水溶媒との混合物中のどちらかに可溶である。本明細書中のここおよび他所で、非水溶媒は非水溶媒(複数)の混合物であってよい。この場合、乾燥工程の供給原料は、水溶性担体と非水溶性殺生物剤の両方が溶解した単相材料を含む。担体と殺生物剤の両方が同じ相に溶解している限り、この供給原料がエマルジョンであることも可能である。
【0066】
「単相法」は、エマルジョン法より小さな粒度のより良好なナノ分散物をもたらすと、通常は考えられている。上述のように、粒度が小さいほど殺生物効果の強化をもたらす。
【0067】
溶媒および/または担体に対する殺生物剤の相対濃度を減少させた成分比率は、より小さな粒度をもたらすと考えられている。
【0068】
乾燥:
エマルジョンまたは溶液を乾燥させる最も好ましい方法である噴霧乾燥法は、当業者には周知である。本発明の場合、乾燥する材料中に揮発性非水溶媒が存在するため、ある程度の注意を払わねばならない。可燃性溶媒が使用されている時は、爆発の危険性を低減するために、例えば窒素のような不活性ガスを、いわゆる密閉噴霧乾燥系において乾燥媒体として用いることができる。溶媒は、回収し、再使用することができる。
【0069】
本発明の実施には、「Buchi」B-290型実験用噴霧乾燥装置が適当であることを、発明者らは見出した。
【0070】
乾燥温度は、摂氏100°以上、好ましくは摂氏120°を超え、最も好ましくは摂氏140°を超えることが好ましい。乾燥温度を上昇させると再溶解したナノ分散材料においてより小さな粒子をもたらすことが見出された。
【0071】
凍結乾燥法も使用することができる。摂氏-120°を超え、好ましくは-80°を超える融点の非水溶媒を使用することが好ましい。クロロホルムは、その物理的特性の故に特に好ましい溶媒である。融点は比較的高い(約-63.5°)。凍結乾燥法は、エマルジョン法と単相法の両方で用いることができる。
【0072】
担体材料:
担体材料は、水溶性で、構造化水性相ならびに単分散分子種の真のイオン溶液の形成を含む。担体材料は、無機材料、界面活性剤、ポリマーを含むのが好ましく、またはこれらの2種以上の混合物でもよい。
【0073】
糖等の他の非ポリマー性、有機性、水溶性材料も担体として使用することができると想定される。しかし、本明細書に具体的に記述された担体材料が好ましい。
【0074】
適当な担体材料(「水溶性担体材料」と称される)には、好ましい水溶性ポリマー、好ましい水溶性界面活性剤、および好ましい水溶性無機材料が含まれる。噴霧乾燥生成物で良好な粉末特性が得られるように、特に好ましい材料は、周囲温度において、軟質固体または半固体と対照的な固体である。
【0075】
担体材料の具体的な選択は、組成物の提案された最終用途に依存することになろうが、担体は、殺生物剤に有害な反応を起こすことなく、提案された用途に適合するように選択されるべきである。担体は、それ自体で活性を有することもできるが、そのような活性を有する水溶性材料を含有することもできる。例えば、本発明の農業への応用では、担体は、農薬活性を有する材料を含むことができる。
【0076】
好ましいポリマー担体材料:
適当な水溶性ポリマー担体材料の例には以下のものが挙げられる。
(a)天然ポリマー(例えば、グアーガム、アルギン酸エステル、ローカストビーンガム等の天然素材のガム、またはデキストラン等の多糖。
(b)例えば、キサンタンガム、キシログルカン、酢酸セルロース、メチルセルロース、メチルエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルブチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、およびそれらの塩(例えば、SCMCナトリウム塩)、またはカルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース、およびその塩(例えば、ナトリウム塩)等のセルロース誘導体。
(c)以下のホモポリマー、または以下から選択される2種以上のモノマーから調製されるコポリマー:ビニルアルコール、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸エステル、アミノアルキルアクリル酸エステル、アミノアルキルメタクリル酸エステル、ヒドロキシエチルアクリル酸エステル、ヒドロキシエチルメチルアクリル酸エステル、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、ビニルアミン、ビニルピリジン、エチレングリコールおよび他のアルキレングリコール、エチレンオキサイドおよび他のアルキレンオキサイド、エチレンイミン、スチレンスルホン酸エステル、エチレングリコールアクリル酸エステルおよびエチレングリコールメタクリル酸エステル。
(d)例えば、β-シクロデキストリン等のシクロデキストリン。
(e)これらの混合物。
【0077】
ポリマー材料がコポリマーである場合には、統計コポリマー(従来、ランダムコポリマーとしても知られている)、ブロックコポリマー、グラフトコポリマー、または多分岐コポリマーでもよい。上掲以外のコモノマーも、もしその存在が、生じるポリマー材料の水溶性または水分散性を損なわないならば、上掲のものに追加して含めてもよい。
【0078】
適当で好ましいホモポリマーの例には、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド(ポリ-N-イソプロピルアクリルアミド等の)、ポリメタクリルアミド;ポリアクリルアミン、ポリメチルアクリルアミン(ポリジメチルアミノエチルメタクリル酸エステルおよびポリ-N-モルホリノエチルメタクリル酸エステル等の)、ポリビニルピロリドン、ポリスチレンスルホン酸エステル、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルピリジン、ポリ-2-エチルオキサゾリンポリエチレンイミン、およびそのエトキシ化誘導体が含まれる。
【0079】
ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリ(2-エチル-2-オキサザリン)、ポリビニルアルコール(PVA)、ヒドロキシプロピルセルロース、ならびにヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)およびアルギネートが、好ましいポリマー担体材料である。
【0080】
好ましい界面活性剤担体材料:
担体材料が界面活性剤である場合、この界面活性剤は、非イオン性、陰イオン性、陽イオン性、両性または双性イオン性でもよい。
【0081】
適当な非イオン界面活性剤の例には、エトキシ化トリグリセリド、脂肪アルコールエトキシレート、アルキルフェノールエトキシレート、脂肪酸エトキシレート、脂肪アミドエトキシレート、脂肪アミンエトキシレート、アルカン酸ソルビタン、エチル化アルカン酸ソルビタン、アルキルエトキシレート、Pluronics(商標)、アルキルポリグルコシド、ステアロールエトキシレート(stearol ethoxylates)、アルキルポリグリコシドが含まれる。
【0082】
適当な陰イオン界面活性剤の例には、アルキルエーテル硫酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルエーテルリン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、サルコシン酸塩、アルキルスルホン酸塩、石鹸、アルキル硫酸塩、アルキルカルボン酸塩、アルキルリン酸塩、パラフィンスルホン酸塩、第2級n-アルカンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、イセチオン酸スルホン酸塩が含まれる。
【0083】
適当な陽イオン界面活性剤の例には、脂肪アミン塩、脂肪ジアミン塩、第4級アンモニウム化合物、ホスホニウム界面活性剤、スルホニウム界面活性剤、スルホキソニウム界面活性剤が含まれる。
【0084】
適当な双性イオン界面活性剤には、アミノ酸のN-アルキル誘導体(例えば、グリシン、ベタイン、アミノプロピオン酸)、イミダゾリン界面活性剤、アミンオキシド、アミドベタインが含まれる。
【0085】
界面活性剤の混合物を使用することができる。このような混合物中では、担体材料が全体として固体である限り、個々の成分は液体であってもよい。
【0086】
アルコキシル化非イオン性物質(特に例えば、Pluronic(商標)材料等のPEG/PPGおよび/またはPEG/アルコール非イオン界面活性剤)、フェノールエトキシレート(特に、TRITON(商標)材料)、アルキルスルホン酸塩(特に、SDS)、エーテル硫酸塩(SLESを含めて)、エステル界面活性剤(好ましくは、Span(商標)およびTween(商標)型のソルビタンエステル)、および陽イオン性物質(特に、臭化セチルトリメチルアンモニウム-CTAB)は、界面活性剤担体材料として特に好ましい。
【0087】
界面活性剤担体材料が、水中での再分散粒度が100nm未満、特に40nm未満であると、本発明の実施形態に特に適当である。
【0088】
好ましい無機担体材料:
担体材料は、界面活性剤でもなくポリマーでもない水溶性無機材料であってもよい。上に記載のポリマー担体材料および/または界面活性剤担体材料との混合では特に、単純な有機塩が適当であることが見出された。適当な塩には、炭酸塩、重炭酸塩、ハロゲン化物、硫酸塩、硝酸塩、および酢酸塩、特にナトリウム、カリウム、およびマグネシウムの可溶性塩が含まれる。好ましい材料には、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、および硫酸ナトリウムが含まれる。これらの材料は、安価で生理的に許容可能であるという利点を有している。これらはまた、比較的不活性であると共に、家庭用品および医薬品に見出される多くの材料と適合する。
【0089】
混合担体材料には利点がある。好ましい混合物には、無機塩および界面活性剤、ならびにポリマーおよび界面活性剤の組合せが含まれる。
【0090】
特に好ましい混合物には、界面活性剤およびポリマーの組合せが含まれ、少なくとも以下の1種を含む:
a)ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリ(2-エチル-2-オキサザリン)、ポリビニルアルコール(PVA)、ヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、およびアルギン酸エステル、ならびに以下の少なくとも1種;
b) アルコキシル化非イオン性物質(特にPEG/PPG Pluronic(商標)材料)、フェノールエトキシレート(特に、TRITON(商標)材料)、アルキルスルホン酸塩(特に、SDS)、エーテル硫酸塩(SLESを含む)、エステル界面活性剤(好ましくは、Span(商標)およびTween(商標)型のソルビタンエステル)、および陽イオン性物質(特に、臭化セチルトリメチルアンモニウム-CTAB)。
【0091】
担体材料は、界面活性剤でもポリマーでもなく、無機担体材料でもない水溶性低分子有機材料であってもよい。上に記載のポリマー材料および/または界面活性剤担体材料との混合では、特に単純な有機糖が適当であることが見出された。適当な低分子有機材料には、マニトール、ポリデキストロース、キシリトール、およびイヌリン等が含まれる。
【0092】
本発明の好ましい形態では、界面活性剤担体は、少なくとも全担体の50%が界面活性剤であるような含量になる。界面活性剤が他の担体をしのいで大部分を占める混合物は、より良い殺生物剤としての効果を示す。
【0093】
非水溶媒:
本発明の組成物は、揮発性の非水溶媒を含む。上述のように、これは溶媒の混合物でもよい。この溶媒は、乾燥前の予混合物中に存在し得る他の溶媒(水を含めて)と混和してもよく、またはそうした溶媒と共にエマルジョンを形成してもよい。
【0094】
本発明の一代替形態では、殺生物剤および担体の存在下で水と単相を形成することができる非水溶媒を用いる。これらの実施形態のための好ましい溶媒は、極性、プロトン性、または非プロトン性溶媒である。一般に、好ましい溶媒は、1を超える双極子モーメント、および4.5を超える比誘電率を有する。
【0095】
特に好ましい溶媒は、ハロホルム(好ましくは、ジクロロメタン、クロロホルム)、低級(C1〜C10)アルコール(好ましくは、メタノール、エタノール、イソプロパノール、イソブタノール)、有機酸(好ましくは、蟻酸、酢酸)、アミド(好ましくは、ホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド)、ニトリル(好ましくは、アセトニトリル)、エステル(好ましくは、酢酸エチル)、アルデヒドおよびケトン(好ましくは、メチルエチルケトン、アセトン)、ならびにヘテロ原子結合を含み、適度に大きい双極子を有する他の水混和性種(好ましくは、テトラヒドロフラン、ジアルキルスルホキシド)からなる群から選択される。前述の物質の混合物も用いることができる。
【0096】
本発明の別の代替形態では、非水溶媒が水と混和性ではなく、エマルジョンを形成する。
【0097】
このエマルジョンの非水性相を、揮発性有機溶媒の次の群からの1個または複数個から選択するのが好ましい;
ヘプタン、n-ヘキサン、イソオクタン、ドデカン、デカン等のアルカン;
トルエン、キシレン、シクロヘキサン等の環状炭化水素;
ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロメタン(クロロホルム)、フルオロトリクロロメタン、およびテトラクロロエタン等のハロゲン化アルカン;
酢酸エチル等のエステル;
2-ブタノン等のケトン;
ジエチルエーテル等のエーテル;
4〜6個のシリコンユニットを含有し、直鎖状または環状メチコンのどちらか等の揮発性環状シリコーン。
適当な例には、DC245およびDC345が含まれ、両者ともDow Corning Inc より入手可能である。
【0098】
好ましい溶媒には、ジクロロメタン、クロロホルム、エタノール、アセトン、およびジメチルスルホキシドが含まれる。
【0099】
好ましい非水溶媒は、混和性であろうとなかろうと、実用条件下で特殊な装置を使用することなく、乾燥、特に噴霧乾燥を促進するように、摂氏150°未満の沸点を有し、より好ましくは摂氏100°未満の沸点を有する。それらは、不燃性であるか、または本発明の方法で使用する温度を超える引火点を有することが好ましい。
【0100】
形成されるどのエマルジョンでも約10%〜約95%v/vの非水溶媒が含まれるのが好ましく、より好ましくは約20%〜約80%である。単相法では、溶媒の含量は、20〜100%v/vが好ましい。
【0101】
特に好ましい溶媒は、アルコール、特にエタノール、およびハロゲン化溶媒であり、塩素含有溶媒がより好ましく、(ジまたはトリクロロメタン)から選択される溶媒が最も好ましい。
【0102】
任意選択の共界面活性剤:
水性溶媒の外に、乾燥工程の前に、任意選択の共界面活性剤を組成物中に用いることができる。比較的少量の揮発性共界面活性剤を添加すると、生成する材料の粒径が減少することを発明者らは見出した。このことは、粒子体積に有意の影響を及ぼし得る。例えば、297nmから252nmへの減少は、約40%の粒度減少に相当する。従って、少量の共界面活性剤を添加することは、最終的な製品処方を変更することなく、本発明による材料の粒度を減少するための簡単で安価な方法を提供する。好ましい共界面活性剤は、<220℃の沸点を有する短鎖アルコールまたはアミンである。
【0103】
好ましい共界面活性剤は、直鎖アルコールである。好ましい共界面活性剤は、第1級アルコールおよびアミンである。特に好ましい共界面活性剤は、3〜6個の炭素のアルコールからなる群から選択される。適当なアルコール共界面活性剤には、n-プロパノール、n-ブタノール、n-ペンタノール、n-ヘキサノール、ヘキシルアミン、およびそれらの混合物が含まれる。
【0104】
共界面活性剤は、溶媒より少量(体積)で存在するのが好ましく、溶媒と共界面活性剤との体積比は、100:40〜100:2の範囲に収まるのが好ましく、100:30〜100:5がより好ましい。
【0105】
好ましい乾燥用供給原料:
本発明で使用する乾燥用供給原料は、エマルジョンまたは溶液のどちらかで、固形物を含有しないことが好ましく、未溶解の殺生物剤を全く含有しないことが特に好ましい。
【0106】
組成物中の殺生物剤の含量は、乾燥組成物中の添加量が40重量%未満、より好ましくは30重量%未満になるようなものであることが、特に好ましい。このような組成物は、上述のように小さな粒度および高い有効性という利点を有している。
【0107】
噴霧乾燥用の典型的な供給原料は、以下を含む:
a)界面活性剤、
b)少なくとも1種の低級アルコール、
c)供給原料中に0.1%を超えて溶解する、少なくとも1種の非水溶性殺生物剤、
d)ポリマー、および
e)任意選択の水。
【0108】
好ましい噴霧乾燥用供給原料は、以下を含む:
a)ジクロロメタン、クロロホルム、エタノール、アセトン、およびそれらの混合物から選択される、少なくとも1種の非水溶媒、
b)アルコキシル化非イオン界面活性剤(特にPEG/PPG Pluronic(商標)材料)、フェノールエトキシレート(特に、TRITON(商標)材料)、アルキルスルホン酸塩(特に、SDS)、エーテル硫酸塩(SLESを含めて)、エステル界面活性剤(好ましくは、Span(商標)およびTween(商標)型のソルビタンエステル)、および陽イオン界面活性剤(特に、臭化セチルトリメチルアンモニウム-CTAB)と、それらの混合物から選択される界面活性剤、
c)0.1%を超える、少なくとも1種の非水溶性殺生物性薬剤、
d)ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、アルギン酸エステルと、それらの混合物から選択されるポリマー、ならびに
e)任意選択の水。
【0109】
水分散形態:
本発明による固体組成物(噴霧乾燥法によって得られたものが好ましい)は、寄生の治療に用いるのに適当である。固体形態で「そのまま」で使用することができるが、使用に先立って水に溶解することが好ましい。
【0110】
水溶性担体材料を水と混合する場合、担体は溶解し、非水溶性殺生物剤は、多くの点で可溶性材料のように挙動するのに十分に微細な形態になって、水によって分散される。乾燥生成物中の非水溶性材料の粒度は、水に溶解した際、本明細書に記載されているMalvern法によって測定した場合、非水溶性材料が1ミクロン未満の粒度を有する程度であることが好ましい。測定した粒度は、800nm未満であることが好ましく、500nm未満がより好ましい。本発明の典型的な実施形態では、粒度は250〜50nmの範囲にあり、最も好ましくは200〜75nmの範囲にある。比較のために、広い方の範囲は、ウィルス粒子(一般的に450〜20nmに及ぶ)の大きさと類似する。200nm未満の直径が最も好ましい。水中に固体形態を分散した際、殺生物性薬剤の粒度は有意に減少しないと考えられる。
【発明の効果】
【0111】
本発明の方法によって、4nmという非常に小さな粒度を得ることができる。4〜40nmの範囲のサイズでは、本発明の組成物は、効力におけるさらなる向上を示す。
【0112】
本発明を適用することによって、相当量の「非水溶性」材料を、多くの点で真の溶液と同等な状態にすることができる。乾燥生成物を水中で溶解する場合、0.1%超、好ましくは0.5%超、より好ましくは1%超の「非水溶性」材料を含む、視覚的に清澄で透明な「溶液」を実現することも可能である。半透明および不透明な「溶液」については、より高い含量のナノ分散材料を許容することができる。
【0113】
好都合なことには、これらの「溶液」を、水を使用して作り上げることができ、他の溶媒を含有する必要はない。このことは、殺生物剤の標的を溶媒に曝露することなく、「不溶性」殺生物剤を、水を使った噴霧、洗浄、または注入によって送達できることを意味する。
【0114】
溶液形態は、「そのまま」またはさらなる希釈もしくは他の成分との混合後の使用に適した形態であると想定される。
【0115】
従って、本発明は、以下の工程:
a)非水溶性殺生物剤を、1ミクロン未満の平均粒度を有する粒子状で担体材料中に分散させている、水溶性担体材料中の非水溶性殺生物剤のナノ分散物を水に溶解する工程と、
b)任意選択で、他の成分を分散物に加える工程と、
c)殺生物剤の水性ナノ分散物で基材を処理する工程と
を含む非水溶性殺生物剤を送達する方法にも関する。
【0116】
この基材は、殺生物剤で直接に処理されるべき対象(例えば真菌類の根絶を目的とする植物、または防腐処理を必要とする木材対象物等)であってもよいし、また対象と関連しているものでもよい(敷わらまたは土壌等)。好ましい基材は、植物(または種子、球根、果実、根、葉を含むその一部)、土壌、動物、動物用の敷わら、飼料、または植物もしくは動物から製造された物品から選択される。好ましい処理方法には、噴霧、浸漬、および洗浄が含まれる。
【発明を実施するための形態】
【0117】
本発明をさらに理解し、実践できるように、非限定的実施例に関してさらに以下に記載する。
【0118】
(実施例)
次の実施例において使用される本発明の分散生成物に適する粒度測定法は、動的光散乱装置(Nano S, Malvern Instruments UK製造)を用いる。具体的には、Malvern Instruments Nano Sは、赤色(633nm) 4mWヘリウム-ネオンレーザーを使用し、材料の懸濁液を入れた標準光学特性のUVキュベットを照射する。
【0119】
(実施例1)
PVPおよびPEG-PPG-PEGで安定化した単相クロロホルム溶液からのクロロタロニル(非水溶性殺真菌剤)のナノ分散物
溶液を、次のように調製した。
組成
クロロタロニル 0.2g(10重量%)
PEG-PPG-PEG 0.4g(20重量%)
PVP(90kDa) 1.4g(70重量%)
クロロホルム 40ml
【0120】
これらの濃度では、測定室温(21.5℃)で固体成分はクロロホルム中に容易に溶解した。
【0121】
溶液を、陰圧モードで作動させるBuchi B-290(商標)卓上噴霧乾燥器を使用して噴霧乾燥した。研究室から吸引した空気を乾燥媒体として使用し、稼動条件は次のようであった。
ポンプ速度 10%(3.6ml/min)
吸入口温度 105℃
吸引 100%
N2流量(噴霧) 最大(約55L/hr)
【0122】
乾燥白色粉末が得られた。この材料を、10mg/mlの濃度(1.0重量%、0.1重量%クロロタロニル)で脱塩水中に再分散した。これが不透明な白色分散液を生成した。この濃度では、材料が分散するのが比較的遅かった(およそ5分)。
【0123】
生じた溶液は、以下の特性を有していた:
粘度 1.95cp
粒度 437nm(直径)
標準偏差 ±25.5nm
PdI 0.385
【0124】
(実施例2)
PVPおよびPEG-PPG-PEGで安定化した単相クロロホルム溶液からのクロロタロニル(非水溶性殺真菌剤)のナノ分散物
組成
クロロタロニル 0.2g(10重量%)
PEG-PPG-PEG 0.4g(20重量%)
PVP(55kDa) 1.4g(70重量%)
クロロホルム 40ml
【0125】
これらの濃度では、室温(21.5℃)で固体成分はクロロホルム中に容易に溶解した。
【0126】
乾燥
溶液を、陰圧モードで作動させるBuchi B-290卓上噴霧乾燥器を使用して噴霧乾燥した。研究室から吸引した空気を乾燥媒体として使用した。
ポンプ速度 15%(5.4ml/min)
吸入口温度 90℃
吸引 100%
N2流量(噴霧) 最大(およそ55L/hr)
【0127】
生成物
乾燥白色粉末が得られた。この材料を、1mg/mlの濃度(0.1重量%、0.01重量%クロロタロニル)で脱塩水中に再分散した。これが不透明な白色分散液を生成した。この濃度では、材料が分散するのが(実施例1より)かなり速かった (30秒未満)。
粘度 1.0cp
粒度 452nm(直径)
標準偏差 ±5.72nm
PdI 0.181
【0128】
(実施例3)
PVPおよびPEG-PPG-PEGで安定化した単相クロロホルム溶液からのクロロタロニル(非水溶性殺真菌剤)のナノ分散物
組成
クロロタロニル 0.05g(10重量%)
PEG-PPG-PEG 0.1g(20重量%)
PVP(55kDa) 0.35g(70重量%)
クロロホルム 30ml
【0129】
これらの濃度では、室温(21.5℃)で固体成分はクロロホルム中に容易に溶解した。
【0130】
乾燥
溶液を、陰圧モードで作動させるBuchi B-290卓上噴霧乾燥器を使用して噴霧乾燥した。研究室から吸引した空気を乾燥媒体として使用した。
ポンプ速度 15%(5.4ml/min)
吸入口温度 90℃
吸引 100%
N2流量(噴霧) 最大(およそ55L/hr)
【0131】
生成物
乾燥白色粉末が得られた。この材料を、1mg/mlの濃度(0.1重量%、0.01重量%クロロタロニル)で脱塩水中に再分散した。これが不透明な白色分散液を生成した。この濃度では、材料は、実施例2と同様の速さで分散した(30秒未満)。
粘度 0.93cp
粒度 402nm(直径)
標準偏差 ±15.1nm
PdI 0.228
【0132】
(実施例4〜5)
PVA/PEG(単相法)で安定化した単相クロロホルム溶液からのケトコナゾール(非水溶性殺真菌剤)のナノ分散物
2g(10%)のケトコナゾールおよび18g(90%)のポリ(ビニルアルコール)(10kDa、Aldrich)を500mlのエタノールおよび360mlの水に溶解した。生じた溶液を、150℃の吸入口温度およびおよそ3.6ml/分のポンプ速度で噴霧乾燥した。回収した乾燥白色粉末を水中に再分散すると、24.2nm(Z平均)の平均粒度の清澄な懸濁液を生じた。
【0133】
100mg(10%)のケトコナゾール、500mg(50%)のポリ(エチレングリコール)(10kDa、Fluka)、および400mg(40%)のラウリルエーテル硫酸ナトリウム(SLES)を、60mlのエタノールおよび60mlの水に溶解した。生じた溶液を、180℃の吸入口温度およびおよそ3.6ml/分のポンプ速度で噴霧乾燥した。回収した乾燥白色粉末を水中に再分散すると、16.1nm(Z平均)の平均粒度の清澄な懸濁液を生じた。
【0134】
(実施例6)
SLES/PEG(単相法)で安定化した単相クロロホルム溶液からのプロピコナゾール(非水溶性殺真菌剤)のナノ分散物
通常は、20mgと800mgとの間(1%と40%との間)のプロピコナゾール、600mgと1100mgとの間(32%と55%との間)のポリ(エチレングリコール)(10kDa、Fluka)、および600mgと880mgとの間(28%と44%との間)のラウリルエーテル硫酸ナトリウム(SLES)を、30mlと80mlとの間のエタノールおよび30mlの水に溶解した。生じた溶液を、180℃の吸入口温度およびおよそ3.6ml/分のポンプ速度で噴霧乾燥した。乾燥白色粉末状の生成物を回収した。
【0135】
(実施例7〜9)
実施例4〜6で生成したケトコナゾールおよびプロピコナゾールの殺生物活性
実施例4〜6によって生成したこれらの材料は、その殺生物剤の効力を、次の標準化された最小発育阻止濃度(MIC)試験に従って調べた。試験は、96ウェルプレートに入れられた、YEME(酵母エキス麦芽エキス培地)中のカンジダアルビカンス(Candida albicans)(CA)株の既知数の細胞、濃度の異なる活性物質、およびブランクからなっている。プレートを37℃で一晩培養し、それから550nmの波長のUVプレートリーダーを用いて調べた。細胞の増殖を阻止する濃度の殺生物剤では、非常に低い吸光度(視覚的には清澄)のウェルであったが、一方で細胞の増殖が起こったウェルは、非常に高い吸光度(視覚的には不透明)を有していた。MICは、一晩保温培養した時に、細胞増殖の完全阻害が生じる、殺生物剤の最小濃度と定義した。
【0136】
同等の試験を実施し、水混和性の溶媒に溶解した活性殺生物剤のMICを定量した。これらの場合では、「ブランク」基準材料は、単純に活性化合物を含有しない溶媒の試料であった。
【0137】
全ての試験を4度繰り返した。結果を下の表に示す。
【0138】
(実施例7)
ケトコナゾール:
【0139】
【表1】

【0140】
これらの結果から、本発明の材料(表に明示)は、YEME中でCAの増殖を阻害するという点で、DMSO中の活性物質の同等溶液より効果的であったことが分かる。関わった濃度では、記録したMICは、活性物質に起因しており、溶媒によるものではないと判定された。より小さな粒度を有する調製物は、より大きな粒子の同等分散物に比べて活性が高いことも示された。どちらの場合も、これらの濃度では、マトリックス材料が殺生物活性を全く示さないことが判明した。
【0141】
(実施例8)
プロピコナゾール:
全ての試験を、CA培養物に対してYEME培地中で実施した。
【0142】
【表2】

【0143】
水/プロピレングリコール共溶媒混合物中に溶解したプロピコナゾールのMICは、比較のために挙げると、91.6mg/Lである。いつの場合でも、本発明による製剤の殺生物活性は、水混和性溶媒中に溶解した同等の活性物質溶液よりはるかに大きいことが示された。
【0144】
同等の濃度では、活性物質の添加量が非常に少ない場合を除いて、マトリックス材料のブランクに対しては細胞増殖の阻害は見られなかった。これらの場合、幾らかの阻害は、マトリックス材料に帰せられたが、活性製剤よりも数桁低かった。
【0145】
最大の効力は、材料14/22/16で認められ、可溶性活性物質の同等製剤より20倍超有効であった。
【0146】
(実施例9)
マトリックス中のSLES/PEG比率の効果(一定の活性物質添加量で)
【0147】
【表3】

【0148】
本発明による材料の殺生物活性が、そのマトリックスの組成によって影響されるということも実証した。この場合、界面活性剤の割合を10重量%から80重量%に増加させると、製剤の活性(およびそれ故に活性物質の効力)は、3倍に増加した。
【0149】
(実施例10〜12)
SDSだけで安定化した共溶媒の単相混合液からのトリクロサン(非水溶性抗菌剤)のナノ分散物
組成
トリクロサン 2.0g(20重量%)
SDS 8.0g(80重量%)
水混和性溶媒 125ml(50/50v/v混合液)
【0150】
3種の異なる水混和性有機溶媒を用いた(エタノール、アセトン、およびイソプロピルアルコール)。これらの濃度では、固体成分は、室温(21.5℃)で共溶媒混合液に容易に溶解する。
【0151】
乾燥
溶液を、陰圧モードで作動させるBuchi B-290卓上噴霧乾燥器を使用して噴霧乾燥した。研究室から吸引した空気を乾燥媒体として使用した。
ポンプ速度 7%(2.5ml/min)
吸入口温度 120℃
吸引 100%
N2流量(噴霧) 最大(およそ55L/hr)
【0152】
生成物
各々別々の共溶媒系について、乾燥白色粉末が得られた。これらの材料を、1mg/mlの濃度(0.1重量%)で脱塩水中に再分散したところ、12時間を超えても安定なままになっている、水晶のように澄み切った分散液をすみやかに生成した。分散液全てが、同様のサイズおよび分布の粒子を生成しているように見えた。
【0153】
これらの試験に関する詳細およびそれらの結果を、以下に示す:
【0154】
【表4】

【0155】
(実施例13)
イソプロツロンのナノ分散物(ISP-非水溶性除草剤、エマルジョン法)
製剤は、以下からなっていた:
相1:
10%ISP(28) 10mlクロロホルム中に500mg
相2:
60%PVA(10kDa) 3000mg
30%SDS 75mlの水中に1500mg
【0156】
この2相は、乳化されながら、ウォータージャケット付きビーカーを使用して継続的に冷却された。50%の出力で5分間、次に100%の出力でさらに2分間超音波処理することによって、乳化を達成した(1kwプローブ型超音波発生装置を使用)。
【0157】
生じたエマルジョンを150℃の吸入口温度および5.6ml/minのポンプ速度で噴霧乾燥した。吸引および噴霧ガスを最大に設定した。
【0158】
生じた乾燥白色粉末が再分散すると、1mg/mlの濃度で、やや濁った懸濁液を生じた。粒度は、297+/-8.66nmと測定された。
【0159】
(実施例14)
共界面活性剤を用いるイソプロツロン(ISP-非水溶性除草剤)のナノ分散物(エマルジョン法)
実施例13と同様の製剤であるが、追加の揮発性共界面活性剤(n-ブタノール)を少量含有させた。
相1:
10%ISP(28) 10mlのクロロホルムおよび2mlのn-ブタノール中に500mg
相2:
60%PVA(10kDa) 3000mg
30%SDS 75mlの水中に1500mg
【0160】
この2相は、乳化されながら、ウォータージャケット付きビーカーを使用して継続的に冷却された。50%の出力で5分間、次に100%の出力でさらに2分間超音波処理することによって、乳化を達成した(1kwプローブ型超音波発生装置を使用)。生じたエマルジョンを150℃の吸入口温度および5.6ml/minのポンプ速度で噴霧乾燥した。吸引および噴霧ガスを最大に設定した。
【0161】
生じた乾燥白色粉末が再分散すると、1mg/mlの濃度で、実施例13より著しく清澄ではあったが、やや濁った懸濁液を生じた。粒度は、252+/-14.0nmと測定された。
【0162】
(実施例15〜16)
アゾキシストロビン(非水溶性殺真菌薬)のナノ分散物、単相法
【0163】
(実施例15)
1.10gのアゾキシストロビン(Azoxystrobin(商標))、2.00gのBrij(登録商標)58(Aldrich)、および6.90gのポリビニルピロリドン(Mw45,000、Aldrich) を、全て200mlのDCM中に溶解した。次に、この溶液を70℃で噴霧乾燥した。
【0164】
次に、この乾燥粉末を蒸留水中に分散して1重量% AzBの分散物を生じさせ、ナノ粒度をMalvern Nano-Sで測定した。(SG-15)
【0165】
(実施例16)
5.00gのアゾキシストロビン、10.00gのポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(プロピレングリコール)-ブロック-ポリ(エチレングリコール)(Mw8,400、Aldrich)、および35.00gのポリビニルピロリドン(Mw45,000、Aldrich)を、全て1.0リットルのDCM中に溶解した。次に、溶液を70℃で噴霧乾燥した。
【0166】
次に、この乾燥粉末を蒸留水中に分散して1重量% AzBの分散物を生じさせ、ナノ粒度をMalvern Nano-Sで測定した。(SG-16)
【0167】
これらの試験に関する詳細およびそれらの結果を、以下に示す。
【0168】
【表5】

【0169】
(実施例17A-L)
λ-シハロトリン(非水溶性殺虫剤)のナノ分散物、凍結乾燥、単相法
殺虫剤λ-シハロトリン、PEG、ならびにPEG系界面活性剤Pluronic(商標)F68およびPluronic(商標)F127の単相溶液をクロロホルム中で調製した。これを、「Christ alpha 2-4LSC」凍結乾燥機を使用して、単一バッチ形式で、5ml毎試料基準(即ち、各試料で250mgの固体)で凍結乾燥した。
【0170】
試料および凍結乾燥棚の両方を、液体窒素中で-140℃(凍結乾燥機の温度プローブの操作限度)未満の最終温度まで予冷した。真空(約0.080mbar)に到達するとすぐに、試料は、それ自身の昇華によって産み出される自己冷却効果によって凍結されたままになる。結果および組成物を以下に示す:
【0171】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の非水溶性ストロビルリン殺真菌薬および水溶性担体材料を含む、効力の向上した無溶媒殺真菌性組成物であって、非水溶性ストロビルリン殺真菌薬が、1000nm未満のナノ分散形態のピーク直径を有するナノ分散形態で、前記担体材料中に分散している無溶媒殺真菌性組成物。
【請求項2】
ストロビルリン殺真菌薬が、アゾキシストロビンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
非水溶性ストロビルリン殺真菌薬のピーク直径が、800nm未満、好ましくは500nm未満、より好ましくは200nm未満、最も好ましくは100nm未満である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
非水溶性ストロビルリン殺真菌薬が、周囲温度での水への溶解度が5g/L未満、好ましくは1g/L未満、より好ましくは100mg/L未満、および最も好ましくは15mg/L未満である、請求項1から3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の組成物の水への分散によって得られる、非水溶性ストロビルリン殺真菌薬および水溶性担体材料の水性分散物。
【請求項6】
ストロビルリン殺真菌薬の溶液および水溶性担体の溶液を噴霧乾燥して、水への溶解時にナノ分散ストロビルリン殺真菌薬を生成する、担体中のストロビルリン殺真菌薬の無溶媒分散物を得ることを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物を調製するための方法。
【請求項7】
a)以下のもの:
i)ストロビルリン殺真菌薬用の少なくとも1種の非水混和性溶媒における、ストロビルリン殺真菌薬の溶液、および
ii)担体材料の少なくとも部分的には水性の溶液
を含むエマルジョンをもたらす工程と、
b)担体中のストロビルリン殺真菌薬のナノ分散物を得るために、エマルジョンを乾燥し、水および非水混和性溶媒を除去する工程
とを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物を調製するための方法。
【請求項8】
a)以下のもの:
i)少なくとも1種の非水性溶媒、
ii)任意選択で、水、
iii)(i)および(ii)の混合液に可溶な水溶性担体材料、および
iv)(i)および(ii)の混合液に可溶である非水溶性ストロビルリン殺真菌薬
を含む混合物をもたらす工程と、
b)担体中のストロビルリン殺真菌薬のナノ分散物を得るために、前記混合物を乾燥し、非水溶媒および残存する全ての水分を除去する工程と
を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物を調製するための方法。
【請求項9】
請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物を調製する工程を含む、感染または寄生の予防または治療に用いる殺真菌性組成物を調製するための方法。
【請求項10】
請求項6から9のいずれか一項に記載の方法によって得られる組成物。
【請求項11】
請求項1から4または10のいずれか一項に記載の組成物と基材とを接触させる工程を含む、医療以外の、基材を処理するための方法。
【請求項12】
a)請求項1から4または10のいずれか一項に記載の、水溶性担体材料中の非水溶性ストロビルリン殺真菌薬のナノ分散物を水に溶解する工程と、
b)任意選択で、前記分散物に他の成分を加える工程と、
c)ストロビルリン殺真菌薬の前記水性ナノ分散物で基材を処理する工程と
を含む、非水溶性ストロビルリン殺真菌薬を送達するための方法。
【請求項13】
工程(c)が、基材を噴霧、浸漬、または洗浄することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
基材が、植物、土壌、動物、動物用敷わら、飼料、または植物もしくは動物から製造された物品から選択される、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
寄生を治療するための、請求項1から4または10のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項16】
乾燥工程が噴霧乾燥を含む、請求項7から9のいずれか一項に記載の方法。

【公開番号】特開2010−202665(P2010−202665A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−131047(P2010−131047)
【出願日】平成22年6月8日(2010.6.8)
【分割の表示】特願2009−518833(P2009−518833)の分割
【原出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(590003065)ユニリーバー・ナームローゼ・ベンノートシヤープ (494)
【Fターム(参考)】