説明

殺菌装置及びその製造方法

【課題】使用者がタッチ式起動装置の接触領域に接触又は接近したとき、当該接触領域を消毒するタッチ式起動装置の殺菌装置を提供する。
【解決手段】本発明の殺菌装置10は導光体14と紫外線光源12とを備えている。導光体14は一つの表面144を有している。紫外線光源12は紫外線ビーム150が内部全反射により導光体14に入射するように紫外線ビーム150を出射させるべく設けられている。指147などの物体が表面144に接触又は接近したとき、紫外線ビーム150のエバネセント波が指147に照射される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は殺菌装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
公共的な設備(エレベータ、情報端末機、タッチパネル、現金自動預け払い機など)の起動装置(例えばスイッチ)にて手の指が実際に触れたとき、病原菌や細菌が指で触れる動作を介して人体に入り込んでしまいやすい。例えば、ある病人がエレベータの押しボタンに触れた後に、ウイルスや細菌が押しボタンの上に残留する。そしてこの病原体はこの後の使用者が同じ押しボタンを押すことにより拡散されてしまう。
【0003】
既存する複数種類の光触媒では、物体表面にある感染性微生物を消滅させることで、病原体の拡散を防止することができる。例えば、特許査定された特許文献には、光源を設けることで、ガラス窓上の光触媒層を作用又は励起させる光触媒式のガラス窓が開示されている。また別の特許査定された特許文献にも、光触媒励起装置が開示されている。しかしながら、このような装置ではいずれも反応時間が長く、しかも物体表面で消耗しやすいという欠点を持つ光触媒が配置されている。
【0004】
公開されている特許文献には、紫外線導光素子及び紫外線拡散素子を用いて紫外線を殺菌用に物体中に導入して、殺菌を行う別の構造が開示されている。しかしながら、強い紫外線は人体の皮膚及び目にとって有害である。したがって、危険性を低減するために、当該特許文献では強度の低い紫外線を用いて殺菌を行っている。殺菌の行程は、数時間又は数日継続しなければ、表面の微生物を死滅させることはできず、その殺菌効率はかなり低いと言える。当該特許文献の別の作動態様では、紫外線の強度を高めて、人が紫外線に被曝していないときに、殺菌効率を高めている。ただし、前記した操作条件では当該特許文献に開示されている技術の応用範囲が制限されてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、使用者が当該タッチ式起動装置の接触領域に接触又は接近したとき、当該接触領域を消毒するタッチ式起動装置の殺菌装置を提供する必要がある。本発明の他の目的は、殺菌装置の無菌表面を提供するものである。当該無菌表面は非接触で殺菌時間により実現されるものであって、導光体内部の紫外線ビームは、殺菌過程において殺菌装置の外部に漏れ出すことはない。導光体は実質的に透明の材料から構成されているので、タッチパネルに適用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の殺菌装置の実施例では、一つの表面を有する導光体と、紫外線ビームが内部全反射により前記導光体に入射するように前記紫外線ビームを出射させるべく設けられている紫外線光源と、を備えており、物体が前記表面に接触又は接近したとき、前記紫外線ビームのエバネセント波が前記物体に照射される。
【0007】
本発明の殺菌装置の他の実施例では、一つの表面を有する導光体と、紫外線ビームが内部全反射により前記導光体に入射するように前記紫外線ビームを出射させるべく設けられている紫外線光源と、を備えており、物体が前記表面に接触又は接近したとき、前記紫外線ビームは漏れ全反射現象により前記物体に照射される。
【0008】
本発明の実施例では殺菌装置の製造方法を提供する。本発明の殺菌装置の製造方法の実施例では、一つの表面を有する導光体と、紫外線ビームが前記導光体に入射するように前記紫外線ビームを出射させるべく設けられている紫外線光源と、を備えた殺菌装置であって、物体が前記表面に接触又は接近したとき、前記紫外線ビームのエバネセント波が前記物体に照射される、前記殺菌装置を提供する工程を含む。
【0009】
本発明の実施例において、殺菌式タッチパネルが、表示層と、前記表示層上に形成されている透明タッチスクリーンと、一つの表面を有する導光体と、前記透明タッチスクリーンと前記導光体との間に設けられているスペーサと、紫外線ビームが内部全反射により前記導光体に入射するように前記紫外線ビームを出射させるべく設けられている紫外線光源と、を備えており、物体が前記表面に接触又は接近したとき、前記紫外線ビームは漏れ全反射現象により前記物体に照射される。
【0010】
本発明の殺菌装置は、例えば手動起動装置を備えた公共的なアクセス(出入場)装置などの各種状況に応用することができる。本発明の実施例において、前記殺菌装置はタッチパネル、ドアノブ、自動ドアのスイッチ及びタッチコントロール式携帯電話機に実現することができる。作動中において、使用者が実際に殺菌装置の導光体に前面に触れたとき、前記紫外線ビームのエバネセント波が前記前面から漏れ出すとともに前記導光体の表面にて伝搬する。よって、前記使用者が触れた表面は、前記紫外線ビームにより消毒殺菌される。もし病原体が前記表面に付着していた場合でも、前記殺菌装置は、前記紫外線ビームのエバネセント波を前記表面に照射することで、前記表面の病原体を死滅させることができる。
【0011】
上記では本発明の技術的特徴及び利点をかなり広汎に概略的に説明したが、下記の本発明の詳細な説明により、より一層の理解が得られるはずである。本発明の特許請求の範囲を構成するその他の技術的特徴及び利点は下記に記述する。本発明の技術分野の当業者であれば、下記に開示する技術的思想及び特定の実施例を簡単に利用することで、その他の構成又は製造工程に変更又は設計し、本発明と同じ目的を達成できる。本発明の技術分野の当業者であれば、これら等価の構造は添付する特許請求の範囲にて限定する本発明の技術的思想及び範囲を逸脱することはできないということは理解するはずである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の実施例において、前記殺菌装置はタッチパネル、ドアノブ、自動ドアのスイッチ及びタッチコントロール式携帯電話機に実現することができる。作動中において、使用者が実際に殺菌装置の導光体に前面に触れたとき、前記紫外線ビームのエバネセント波が前記前面から漏れ出すとともに前記導光体の表面にて伝搬する。よって、前記使用者が触れた表面は、前記紫外線ビームにより消毒殺菌される。もし病原体が前記表面に付着していた場合でも、前記殺菌装置は、前記紫外線ビームのエバネセント波を前記表面に照射することで、前記表面の病原体を死滅させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例に係る殺菌装置の断面図
【図2】本発明の実施例に係る殺菌装置の断面図
【図3A】ビームを案内する断面図
【図3B】ビームを案内しない断面図
【図4】エバネセント波の概略図
【図5A】本発明の実施例における殺菌押しボタン装置の断面図
【図5B】本発明の実施例における殺菌押しボタン装置の断面図
【図6】本発明の実施例における殺菌方法のフローチャート
【図7】本発明の他の実施例における殺菌方法のフローチャート
【図8】本発明の実施例における殺菌式タッチパネルの断面図
【図9A】本発明の実施例における殺菌装置
【図9B】図9Aの殺菌装置の実施例の分解図
【図9C】図9Aの殺菌装置の他の実施例の分解図
【図10】本発明の他の実施例における殺菌装置
【図11】本発明の他の実施例における殺菌装置
【図12】本発明の他の実施例における殺菌装置
【図13】本発明の他の実施例における殺菌装置
【図14】本発明の他の実施例における殺菌装置
【図15】本発明の他の実施例における殺菌装置
【発明を実施するための形態】
【0014】
下記説明及び図面を参照することにより、本発明の技術的特徴及び利点は完全に理解できる。
【0015】
以下では、本発明の実施例を添付する図面を参照して説明するが、以下の図面にて記載される実施例は単に補助説明であり、審査での理解の便宜を図るためのものであって、ここで説明される具体的な実施例は単に本実施例を説明するものに過ぎず、本実施例に限定するためのものではない。
【0016】
図1は本発明の実施例に係る殺菌装置10の断面図である。前記殺菌装置10は、短波長の光源12と、導光体14としての誘電材料板材とを備えている。本発明の実施例において、前記短波長の光源12は紫外線光源であって、紫外線ビーム(ビームは最適化された狭帯域光線)又は殺菌に用いられる紫外線ビームを発生させるべく設けられている。一般的には、紫外線ビームは概ね、波長が320nmないし400nmのUV−Aビーム、波長が280nmないし320nmのUV−Bビーム、波長が190nmないし280nmのUV−Cビーム、波長が190nm未満の真空UV(VUV)ビームの四種類に分けることができる。上記した四種類の紫外線ビームはいずれも病原体を死滅させることができるが、このうちのUV−Cビームの殺菌効果が最も優れている。
【0017】
前記光源12はランプチューブ、冷陰極管、発光ダイオード、重水素ランプ、ガス放電ランプ、金属蒸気放電ランプ、キセノンランプなどとすることができる。
【0018】
本発明の実施例において、前記導光体14の材料はガラス、ホウケイ酸ガラス、溶融シリカ、石英、サファイヤ、フッ化リチウム、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、合成樹脂、樹脂及び高分子(例えばTeflon(登録商標) FEP)からなる群、又は例えばシリコーン(ジメチルポリシロキサン)、アクリル樹脂(アクリル酸エステル)、ポリエチレン、ポリカーボネイト樹脂といった有機材料、又は例えばポリテトラフルオロエチレンといった紫外線透過性のあるフッ化樹脂などから選ばれる。本発明の他の実施例において、前記導光体14の材料は合成樹脂であるので、前記導光体14は可撓性を備えることになる。
【0019】
図1を参照する。前記導光体14は側面142及び146と、前面144と、後面148とを有している。前記前面144及び前記後面148は平坦領域となることで、前記紫外線ビームの拡散を防止する。前記光源12はチューブ状ランプで構成されるとともに、前記導光体14の側面142近傍に設けられてもよい。図1に示すように、前記光源12、前記前面144及び前記後面148の前記光源12に近接する一部領域がカバー16により被覆されており、前記側面146、前記前面144及び前記後面148の前記側面146に近接する一部領域がカバー18により被覆されることで、前記導光体14に入射していないビームが前記カバー16及び18に吸収されて、前記殺菌装置10に近づいた使用者が前記導光体14縁部から漏れ出したビームによって被曝することはない。また、前記光源12近傍に設けられているリフレクタ19により前記光源12の結合効率を高めて、ビーム案内の強度を増加させることができる。
【0020】
図1を参照する。前記光源12から放出された紫外線ビームの一部は前記側面142に入射するとともに前記導光体14にて結合して進入し、さらに内部全反射効果により前記導光体14中で伝搬する。したがって、案内されるビーム150は前記前面144又は前記後面148から漏れ出すことはない。また、ある物体(例えば手の指)が前記導光体14の前面144に接触又は接近すると(図1に示す)、案内されるビーム150の一部はこの界面を透過するとともに、この界面に近接する指の皮膚に照射される。図1に示すように、ビーム149は前記前面144を透過するとともに前記指147の接触領域に照射される。この現象はつまり漏れ全反射(Frustrated Total Internal Reflection、FTIR)現象又はエバネセント波(evanescent wave)現象である。一般的には、内部全反射が発生したとき、エバネセント波は境界に形成される。エバネセント波は境界箇所にて指数関数的に減衰し始めるので、エバネセント波は予期せず境界に接近した物体のみに作用し、その有効距離はわずかに数μmとなり、これは波長に依存することになる。エバネセント波は予期せず境界に接近した物体のみに作用するので、強い紫外線ビームを使用したとしても、前記殺菌装置10は日常生活での使用においてかなり安全である。
【0021】
また、本発明では前記殺菌装置10の製造方法を提供する。本発明の実施例において、前記製造方法は、前面144を有する導光体14と、紫外線ビームが内部全反射により前記導光体14に入射するように前記紫外線ビームを出射させるべく設けられている紫外線光源12と、を備えている前記殺菌装置10を提供する工程を含む。物体が前記表面に接触又は接近したとき、前記紫外線ビームのエバネセント波が前記物体に照射される。
【0022】
図2を参照する。前記殺菌装置10は表面を自動的に消毒することもできる。例えば、もし付着物15(例えば汗、油汚れ、埃、細菌、菌株、微生物、ウイルス、病原体)が前記導光体14の前面144に接触又は付着している場合には、ビーム149の一部がFTIR現象により表面(例えば前面144)を透過して前記付着物15に照射される。したがって、前記付着物15内の病原体は前記短波長のビームにより死滅させられる。また、何らかの病原体(例えば、前記表面に付着している細菌又はウイルス)は前記エバネセント波の照射を受けて消毒されるので、前記装置は無菌表面を提供することができる。図3Aはビームを案内する断面図である。図3Aに示すように、Y軸±d/2領域内は誘電性の導光板材であって、角度がcos−1(n/n)未満のビームが内部全反射により板材内部を伝搬する。例えば、前記導光板材の材料はα−石英とされており、波長254nmでの反射率n=1.6、Y軸±d/2以外の空気での反射率n=1であって、このように角度がcos−1(n/n)=51.31°未満であるビームは全反射により板材内部で伝搬される。また、図3Bに示すように、角度がcos−1(n/n)=51.31°以上のビームは前記誘電性の導光板材を透過する。
【0023】
図4はエバネセント波の概略図であって、前記誘電性の導光板材内部の横電界(Transverse Electric)モードでのフィールド分布図である。前記板材内の外部場はY軸±d/2箇所にて内部場に一致しなければならないので、板材外部のエネルギー量の下降は指数関数方式となる。板材外部のエネルギーフィールドがいわゆるエバネセント波といわれる。
【0024】
図1に示すように、使用者の指が実際に前記導光体14の前面144に接触すると、その中の紫外線ビームは前記導光体14内部で伝搬する。前記エバネセント波効果により、ビームは前記前面144に接触又は接近が予期されていない指に照射される。したがって、指の接触領及び前記前面144は前記紫外線ビームにより殺菌される。また、前記エバネセント波は前記表面外部の数μmまでしか作用しないので、エレベータの押しボタンに応用したとき、光源が点灯されても、紫外線光源が使用者の目に照射されることはない。殺菌装置と使用者との間が数μm以上離れさえすれば、前記殺菌装置は危害はなくなるので、前記殺菌装置の接触表面を覆うシールドは必要ない。
【0025】
本発明の殺菌装置は、例えば手動起動装置を有する公共的なアクセス(出入場)装置という具合に様々な場面に応用することができる。図5Aは本発明の実施例における殺菌押しボタン装置50の断面図である。前記殺菌押しボタン装置50は、紫外線光源52と、導光体53と、ハウジング54とスプリング55とを備えている。前記光源52は前記導光体53の側面534近傍に設けられている。よって、前記紫外線光源52から放出された短波長のビームの一部は前記導光体53中に入射するとともに、前記導光体53内部で伝搬される。作動中において、前記紫外線光源52が点灯すると、何らかの病原体(例えば、前記前面532に付着している細菌又はウイルス)は前記短波長のビームの照射を受けて消毒される。また、図5Bを参照すると、使用者が指で前記押しボタン装置50に触れると、前記ビームが前記指の接触領域に照射されるとともに消毒される。使用者が前記押しボタン装置50に触れると、前記スプリング55が収縮して、前記光源52及び前記導光体53が下方に移動して、一方のコンタクト56ともう一方のコンタクト57とが導通する。この実施例において、前記殺菌押しボタン装置50はエレベータに応用されるものの、本発明をこの実施例に限定するものではない。
【0026】
電力消費を削減しつつ前記殺菌押しボタン装置50の紫外線光源の寿命を延ばすべく、前記殺菌押しボタン装置50中に、押しボタンの接触を検知するセンサ(図示しない)を内蔵してもよい。これにより、前記殺菌押しボタン装置50は使用者が実際に触れたときのみ作動するようにできる。また、前記殺菌押しボタン装置50中に、前記殺菌押しボタン装置50の作動時間を設定するためのタイマを内蔵してもよい。これにより、前記殺菌押しボタン装置50は前記タイマ作動時間のみ動作するようにできる。
【0027】
図6は本発明の実施例における殺菌方法のフローチャートである。ステップ601にて、ルーチンを開始する。ステップ602にて、殺菌装置は使用者が実際に殺菌装置に接触又は接近したかを検査する。もし接触又は接近したと判断すると、ステップ603にて紫外線光源を点灯し、もし接触又は接近していないと判断した場合には、引き続き使用者の接触動作を検査する。ステップ603にて、所定間隔Tdに基づいて、合わせてタイマをリセット又は起動する。ステップ604にて、もし所定時間Tdが経過したときには、ステップ605にて紫外線光源を消灯して、ステップ602に戻る。本発明の実施例では、スイッチを用いて前記紫外線光源の状態を制御してもよい。
【0028】
上記したように、使用者の指が接触していないときでも、殺菌装置は接触領域を消毒することができる。ところで、被曝量が多すぎるときには、紫外線は皮膚に危害を与える恐れがある。したがって、使用者の指が紫外線ビームの照射を受けないようにするため、紫外線光源は使用者の指が接触したときには消灯されるべきである。図7は本発明の他の実施例における殺菌方法のフローチャートである。ステップ701にて、ルーチンを開始する。ステップ702にて紫外線光源を点灯する。ステップ703にて、殺菌装置は使用者が実際に殺菌装置に接触又は接近しているかを検査する。もし接触又は接近したと判断すると、ステップ704にて、ステップ705にて紫外線光源を消灯すべくタイマをオフにする。ステップ706にて、タイマがオンになっているかを検査する。ステップ707にて、もしタイマがオフであると判断されたときには、所定時間Tdに基づいてタイマをリセットし、ステップ708にてタイマをオンにする。ステップ709にて、タイマがオンになっており、かつ所定時間Tdが経過したときには、ステップ705にて紫外線光源を消灯するが、それを行わない場合にはステップ702に戻る。本発明の実施例では、スイッチを用いて前記紫外線光源の状態を制御してもよい。
【0029】
本発明の実施例において、殺菌装置はタッチパネルに実現してもよい。図8は本発明の実施例における殺菌式タッチパネル60の断面図である。前記殺菌タッチパネル60は紫外線光源61と、導光体62と、スペーサ63と、透明タッチスクリーン64と、表示層65とを備えている。図8を参照する。前記透明タッチスクリーン64は前記表示層65上に形成されており、前記スペーサ63は前記透明タッチスクリーン64と前記導光体62との間に介装されている。また、フレキシブル回路板66は前記透明タッチスクリーン64及びICチップ67の間に電気的に接続されている。本発明の実施例において、前記透明タッチスクリーン64は静電容量方式のタッチスクリーンであって、複数の縦方向透明電極と、交差する複数の横方向電極とから構成される格子状のパターンを備えている。前記表示層65はイン・プレーン・スイッチング型(In Plane switching、IPS)液晶表示パネル、ツイスト・ネマティック型(Twisted Nematic、TN)液晶表示パネル、垂直配向型(Vertical Alignment、VA)液晶表示パネル、又は有機発光ダイオード(Organic Light-Emitting Diode、OLED)表示パネルとすることができる。
【0030】
本発明の他の実施例において、前記スペーサ63は、屈折率が前記導光体62の屈折率以下である透明層としてもよい。例えば、前記導光体62は溶融シリカ(波長250nmでの屈折率n=1.51)から構成されてもよく、前記スペーサ63(前記導光体62上に塗布される)はフッ化カルシウム(波長250nmでの屈折率n=1.47)から構成されてもよい。
【0031】
図8を参照する。前記導光体62は例えばガラス又は石英といった透明材料から構成されてもよく、側面622と前面624とを有する。前記光源61は前記導光体62の側面622近傍に設けられている。作動中において、使用者の指が実際に前記導光体62の前面624に触れると、紫外線ビームの一部がFTIR効果により前記前面624から漏れ出すことにより、紫外線ビームは前記導体の表面に沿って伝搬される。したがって、前記使用者の指及びその接触領域の両者はいずれも消毒殺菌されることになる。また、何らかの病原体(例えば、前記前面624に付着している細菌又はウイルス)はFTIR効果により前記前面624から漏れ出す紫外線ビームの照射を受けて消毒殺菌されるので、前記前面624は無菌表面となる。
【0032】
本発明の他の実施例によれば、殺菌装置はドアノブに実現してもよい。図9Aは本発明の実施例における殺菌装置70である。前記殺菌装置70は紫外線光源74と、ハンドル71と、ステー73と、エンドキャップ72とを備えている。図9Aに示すように、前記紫外線光源74は前記ハンドル71と前記エンドキャップ72との間に介装されている。前記ハンドル71は円柱状であって紫外線が透過可能な材料(例えば石英又は溶融シリカ)で構成されてもよい。前記ハンドル71は導光体とされる。図9Aを参照すると、前記ステー73は前記エンドキャップ72に装着されることで、使用者は前記ステー73によりドアを開閉できる。
【0033】
図9Bは図9Aの殺菌装置70の分解図である。図9Bを参照する。前記ハンドル71は中実の円柱状をなすとともに、コリメートレンズ75が前記ハンドル71と前記紫外線光源74との間に介装されている。前記紫外線光源74から放出されたビームは前記コリメートレンズ75を通過して前記ハンドル71の前面711に入射し、その後前記紫外線ビームは前記ハンドル71内で伝搬される。作動中において、使用者の指が実際に前記ハンドル71の外側712に触れると、エバネセントビームが前記ハンドル71の外側712から漏れ出すとともに、皮膚のうち接触領域に照射される。また、何らかの病原体(例えば、前記外側712に付着している細菌又はウイルス)はエバネセントビームの照射を受けて消毒殺菌されるので、前記ハンドル71の外側712は無菌表面となる。
【0034】
図9Cは図9Aの殺菌装置70の分解図である。図9Cを参照する。前記ハンドル71は中空の円柱状をなすとともに、二枚のコリメートレンズ75’が前記ハンドル71と紫外線光源74’との間に介装されている。前記紫外線光源74’から放出されたビームは前記コリメートレンズ75’を通過して前記ハンドル71の前面711に入射する。したがって、物体が前記ハンドル71の外側712に接触又は接近したとき、エバネセントビームが前記ハンドル71の外側712から漏れ出すとともに接触領域に照射される。
【0035】
上記した実施例における紫外線光源は前記導光体の側面近傍に設けられている。しかしながら、本発明はこれら実施例に限定するものではない。図10は本発明の他の実施例における殺菌装置であって、紫外線光源の配設方式が異なっている。図10を参照すると、プリズム102が導光体104の後面1042の周囲面1044に形成されるとともに、前記光源106の位置が図1の光源の位置といくらか異なっている。光源106の位置は前記導光体104に対向しており、前記光源106から放出されたビームが前記導光体104の周囲面1044から前記プリズム102を通過して前記導光体104の後面1042に入射した後、前記導光体104内部で繰り返して反射する。
【0036】
図11は本発明の他の実施例における殺菌装置であって、紫外線光源の配設方式が異なっている。図11を参照すると、テーパ状周囲面1047が導光体104’の前面1046’近傍に形成されている。光ファイバ108が前記テーパ状周囲面1047に指向するとともに光源からのビームを結合するように用いられている。前記ビームは前記テーパ状周囲面1047から前記導光体104’に入射した後、前記導光体104’内部で繰り返して反射する。
【0037】
図12は本発明の他の実施例における殺菌装置であって、紫外線光源の配設方式が異なっている。図12を参照すると、テーパ状周囲面1047’’が導光体104’’の後面1042’’近傍に形成されている。ホログラフィ素子(図示しない)が前記テーパ状周囲面1047’’に形成されることで、前記導光体104’’の光案内効率を高めている。光ファイバ108’’が前記テーパ状周囲面1047’’に指向するとともに光源からのビームを結合するように用いられている。前記ビームは前記テーパ状周囲面1047’’から導光体104’’に入射した後、前記導光体104’’内部で繰り返して反射する。
【0038】
上記した実施例における紫外線光源は前記導光体の側面近傍に設けられている。しかしながら、本発明はこれら実施例に限定するものではない。図13は本発明の他の実施例における殺菌装置であって、紫外線光源の配設方式が異なっている。図13を参照すると、コリメートレンズ114及びプリズム116が導光体118の前面1182に設けられている。前記光源112から放出されたビームは前記コリメートレンズ114を通過して前記プリズム116に入射する。前記プリズム116に入射したビームは前記導光体118の前面1182に進入した後、前記導光体118内部で繰り返して反射する。
【0039】
図14は本発明の他の実施例における殺菌装置であって、紫外線光源の配設方式が異なっている。図14を参照すると、グレーティング115が導光体118’の外側前面1182’’に形成されている。前記光源112’から放出されたビームは前記導光体118’に入射し、入射ビームは前記グレーティング115で回折した後、前記導光体118’内部で繰り返して反射する。前記グレーティング115はホログラフィ素子に置換することができるものであり、前記グレーティングは一定の周期的構造を持つ光学素子であって、前記ホログラフィ素子は異なる周期的構造の光学素子である。
【0040】
また、図15に示すように、前記グレーティング115は導光体118’’の内部前面1182’’の内側に形成してもよい。したがって、前記コリメートレンズ114’’からのビームは前記グレーティング115’’で回折した後、前記導光体118’’内部で繰り返して反射する。
【0041】
本発明の技術内容及び技術的長所は上記に開示したとおりであるが、本発明の技術分野の当業者であれば、添付する特許請求の範囲で限定する本発明の技術的思想及び範囲を離れることなく、本発明の教示及び開示で様々な置換及び付加を行うことができることは理解するはずである。例えば、上記開示の数々の製造工程は異なる方法で実施するか、又はその他の工程に置換するか、又は上記二種類の方式を組み合わせることもできる。
【0042】
また、本願の権利範囲は上記開示した特定の実施例の製造工程、設備、製造、物質の成分、装置、方法又は手順に限定されるものではない。本発明の技術分野の当業者であれば、本発明で教示及び開示する製造工程、設備、製造、物質の成分、装置、方法又は手順に基づき、現時点で存在するもの、又は後日開発されるものに関わらず、それが本願の実施例に開示するものと実質的に同一の方式で実質的に同一の効果が実現され、そして実質的に同一の結果が達成されるものも、本発明に使用できるものである。したがって、別紙の特許請求の範囲はこの類の製造工程、設備、製造、物質の成分、装置、方法又は手順を含むよう用いられる。
【符号の説明】
【0043】
10、70 殺菌装置
12、52、61、106、112、112’、112’’ 光源
14、53、62、104、104’、104’’、118、118’、118’’ 導光体
15 付着物
16、18 カバー
19 リフレクタ
50 押しボタン装置
54 ハウジング
55 スプリング
56、57 コンタクト
60 タッチパネル
63 スペーサ
64 透明タッチスクリーン
65 表示層
66 フレキシブル回路板
67 ICチップ
622、142、146、534 側面
624、532、711、144、1046、1046’、1046’’、1182、1182’、1182’’ 前面
71 ハンドル
72 エンドキャップ
73 ステー
74、74’ 紫外線光源
75、75’、114、114’、114’’ コリメートレンズ
102、116 プリズム
108、108’、108’’ 光ファイバ
115、115’’ グレーティング
147 指
148、1042、1042’、1042’’ 後面
149、150 ビーム
601〜605 ステップ
701〜709 ステップ
712 外側
1044 周囲面
1047、1047’’ テーパ状周囲面1047’’

【特許請求の範囲】
【請求項1】
殺菌装置であって、
一つの表面を有する導光体と、
紫外線ビームが内部全反射により前記導光体に入射するように前記紫外線ビームを出射させるべく設けられている紫外線光源と、
を備えており、
物体が前記表面に接触又は接近したとき、前記紫外線ビームのエバネセント波が前記物体に照射されることを特徴とする殺菌装置。
【請求項2】
殺菌装置であって、
一つの表面を有する導光体と、
紫外線ビームが内部全反射により前記導光体に入射するように前記紫外線ビームを出射させるべく設けられている紫外線光源と、
を備えており、
物体が前記表面に接触又は接近したとき、前記紫外線ビームは漏れ全反射現象により前記物体に照射されることを特徴とする殺菌装置。
【請求項3】
前記物体が微生物を含むことを特徴とする請求項1または2記載の殺菌装置。
【請求項4】
前記物体が哺乳動物の表皮を含むことを特徴とする請求項1または2記載の殺菌装置。
【請求項5】
前記導光体が、前記表面に設けられている平坦領域を有することを特徴とする請求項1または2記載の殺菌装置。
【請求項6】
前記導光体が中実の円柱状又は中空の円柱状を有することを特徴とする請求項1または2記載の殺菌装置。
【請求項7】
前記導光体と前記紫外線光源との間に介装されているコリメートレンズを更に備えたことを特徴とする請求項1または2記載の殺菌装置。
【請求項8】
前記物体が前記表面に接触又は接近したことを検知するように設けられているセンサを更に備えたことを特徴とする請求項1または2記載の殺菌装置。
【請求項9】
前記紫外線光源の状態を制御するように設けられているスイッチと、
所定間隔に基づいて前記スイッチを制御するように設けられているタイマと、
を更に備えたことを特徴とする請求項1または2記載の殺菌装置。
【請求項10】
前記導光体と前記紫外線光源との間に介装されているプリズム、グレーティング又はホログラフィ光学素子を更に備えたことを特徴とする請求項1または2記載の殺菌装置。
【請求項11】
前記導光体の材料がガラス、ホウケイ酸ガラス、溶融シリカ、石英、サファイヤ、フッ化リチウム、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、合成樹脂、樹脂及び高分子からなる群から選ばれることを特徴とする請求項1または2記載の殺菌装置。
【請求項12】
前記導光体が可撓性を備えることを特徴とする請求項1または2記載の殺菌装置。
【請求項13】
殺菌装置の製造方法において、
一つの表面を有する導光体と、
紫外線ビームが前記導光体に入射するように前記紫外線ビームを出射させるべく設けられている紫外線光源と、
を備えた殺菌装置であって、
物体が前記表面に接触又は接近したとき、前記紫外線ビームのエバネセント波が前記物体に照射される、前記殺菌装置を提供する工程を含むことを特徴とする殺菌装置の製造方法。
【請求項14】
前記物体が微生物を含むことを特徴とする請求項13記載の殺菌装置の製造方法。
【請求項15】
前記物体が哺乳動物の表皮を含むことを特徴とする請求項13記載の殺菌装置の製造方法。
【請求項16】
前記導光体が、前記表面に設けられている平坦領域を有することを特徴とする請求項13記載の殺菌装置の製造方法。
【請求項17】
前記導光体が中実の円柱状又は中空の円柱状を有することを特徴とする請求項13記載の殺菌装置の製造方法。
【請求項18】
前記殺菌装置が、前記導光体と前記紫外線光源との間に介装されているコリメートレンズを更に備えたことを特徴とする請求項13記載の殺菌装置の製造方法。
【請求項19】
前記殺菌装置が、前記物体が前記表面に接触又は接近したことを検知するように設けられているセンサを更に備えたことを特徴とする請求項13記載の殺菌装置の製造方法。
【請求項20】
前記殺菌装置が、
前記紫外線光源の状態を制御するように設けられているスイッチと、
所定間隔に基づいて前記スイッチを制御するように設けられているタイマと、
を更に備えたことを特徴とする請求項13記載の殺菌装置の製造方法。
【請求項21】
前記殺菌装置が、前記導光体と前記紫外線光源との間に介装されているプリズム、グレーティング又はホログラフィ光学素子を更に備えたことを特徴とする請求項13記載の殺菌装置の製造方法。
【請求項22】
前記導光体の材料がガラス、ホウケイ酸ガラス、溶融シリカ、石英、サファイヤ、フッ化リチウム、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、合成樹脂、樹脂及び高分子からなる群から選ばれることを特徴とする請求項13記載の殺菌装置の製造方法。
【請求項23】
前記導光体が可撓性を備えることを特徴とする請求項13記載の殺菌装置の製造方法。
【請求項24】
殺菌式タッチパネルであって、
表示層と、
前記表示層上に形成されている透明タッチスクリーンと、
一つの表面を有する導光体と、
前記透明タッチスクリーンと前記導光体との間に設けられているスペーサと、
紫外線ビームが内部全反射により前記導光体に入射するように前記紫外線ビームを出射させるべく設けられている紫外線光源と、
を備えており、
物体が前記表面に接触又は接近したとき、前記紫外線ビームは漏れ全反射現象により前記物体に照射されることを特徴とする殺菌式タッチパネル。
【請求項25】
前記物体が微生物を含むことを特徴とする請求項24記載の殺菌式タッチパネル。
【請求項26】
前記物体が哺乳動物の表皮を含むことを特徴とする請求項24記載の殺菌式タッチパネル。
【請求項27】
前記導光体が、前記表面に設けられている平坦領域を有することを特徴とする請求項24記載の殺菌式タッチパネル。
【請求項28】
前記導光体と前記紫外線光源との間に介装されているコリメートレンズを更に備えたことを特徴とする請求項24記載の殺菌式タッチパネル。
【請求項29】
前記導光体と前記紫外線光源との間に介装されているプリズム、グレーティング又はホログラフィ光学素子を更に備えたことを特徴とする請求項24記載の殺菌式タッチパネル。
【請求項30】
前記導光体の材料がガラス、ホウケイ酸ガラス、溶融シリカ、石英、サファイヤ、フッ化リチウム、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、合成樹脂、樹脂及び高分子からなる群から選ばれることを特徴とする請求項24記載の殺菌式タッチパネル。
【請求項31】
前記スペーサが、屈折率が前記導光体の屈折率以下である透明層であることを特徴とする請求項24記載の殺菌式タッチパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−245305(P2011−245305A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−116543(P2011−116543)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(507084073)インダストリアル テクノロジー リサーチ インスティテュート (22)
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
【Fターム(参考)】