説明

殺虫剤および/または除草剤組成物、ならびにその使用法

散布可能な配合物を形成するよう希釈することができる、散布可能な配合物または水性濃縮物のいずれかである殺虫剤または除草剤組成物であって、その中に、i)少なくとも1種の殺虫剤または除草剤の活性成分、ii)エチレン性不飽和単量体から形成された少なくとも1種の水溶性の陽イオン性重合体を含む、スプレー漂流抑制剤、およびiii)少なくとも1種の陽イオン性界面活性剤とを含有する水を含む組成物。この組成物を、農地または地域に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、散布可能であり、少なくとも1種類の殺虫剤および/または除草剤を含有し、改良された効力試験および/または雑草抑制を示すような組成物を包含する、殺虫剤および/または除草剤組成物に関するものである。浸透性除草剤の場合、植物によるはるかに大量の摂取が観察される。散布可能な組成物を調製するのに用いることができる水性濃縮物も包含される。本発明は、本発明の組成物を用いて農地地域を処理する方法も、提供する。
【0002】
農業においては、様々な農薬を散布によって栽培地域に適用することが周知である。栽培地域は、非常に広大であることができる農地であるか、または温室内のような比較的狭い栽培地域であり得る。スプレーとして適用される農薬は、肥料、除草剤および殺虫剤を包含する。
【0003】
除草剤および殺虫剤は、様々な形態で、たとえば純粋な液体、水溶液、水性分散、または固体の除草剤もしくは殺虫剤のスラリーとして、農家に供給することができる。製造者は、除草剤または殺虫剤を純粋な液体の形態でか、または高活性溶液もしくはスラリーとして農家に供給するのが通常の実施である。除草剤または殺虫剤を地域に適用する常法は、散布によるであろう。
【0004】
除草剤または殺虫剤を簡易に投与するために、様々なシステムが考案されている。水をスプレーマニホールドから地域または農地に散布し、濃縮された除草剤または殺虫剤の1回分をポンプに入れ、水と混合してから散布することができるよう設計された、スプレーポンプが周知である。
【0005】
除草剤および殺虫剤を散布する際は、処理しようとする範囲を越えて運ばれかねない微細な液滴の形成を防ぐため、漂流防止剤を適用するのが一般的である。漂流防止剤を使用しないでは、除草剤および殺虫剤の散布は、第一に、処理しようとする陸地および農地の不適切な処理が生じかねないため、第二に、外部からのスプレーは、意図された処理区域を越えて運ばれたならば、たとえば、その他の農作物、陸地および水路に有害になりかねないため、非能率になるであろう。
【0006】
漂流防止剤を、水が除草剤もしくは殺虫剤と混合される混合区域にか、またはその直後にあるのを常とする、スプレーポンプに供給される水と結合するか、あるいはスプレーポンプ内に直接適用するのが普通である。スプレー漂流化学物質の正確な分量を計測して、過小または過大な投与によって外部からのスプレーが形成されず、散布角度が狭すぎて、除草剤または肥料の不均等な散布を招かないことを確保するのが重要である。
【0007】
アクリルアミドその他のエチレン性不飽和単量体の重合体が漂流防止剤として用いられている。最適のスプレー漂流抑制を与える重合体は、非イオン性であるか(たとえばアクリルアミド単独重合体)、または陰イオン含量が比較的低く(たとえば5〜30重量%)、固有粘度も比較的高いか(たとえば6dl/g以上)のいずれかであるのが一般的に許容されている。そのような重合体は、低濃度で用いられない限り、粘稠な水溶液を形成する傾向がある。通常の実施は、重合体粉末または逆相エマルジョンの形態を水と混合して、直接スプレータンクに入れて、重合体の水溶液を形成することである。しかし、これには、エマルジョンの重合体は、この状況では活性化するのが難しく、重合体粉末は、溶解するのに時間がかかるという問題がある。ときには、重合体の非能率な溶解の結果として、より多くの重合体を用いることが必要となる。通常、溶解に伴う問題を最小化するには、固有粘度が6〜15dl/gの範囲内の重合体を用いるのが普通になるであろう。代表的には、殺虫剤または除草剤を含有する水は、0.05重量%という過剰な濃度の重合体を含むであろう。
【0008】
カナダ国特許第1023264号(Vartiak)は、重合体を逆相エマルジョンの形態で用いて、散布可能な水性配合物を殺虫剤または除草剤および界面活性剤を含有する水性系へと希釈して、散布可能な配合物を調製することを記載している。
【0009】
米国特許第6534563号(Bergeron)は、殺虫剤、または植物生長を抑制する薬剤を含む配合物を開示している。この植物防護配合物は、水溶液の存在下で用い、処理しようとする植物に慣用的に散布することができる。
【0010】
いくつかの適用のためには、2種類またはそれ以上の農薬を組み合わせるのが普通である。たとえば除草剤、特に浸透性除草剤の適用では、処理を、たとえば硫酸アンモニウム(AMS)のような肥料と組み合わせるのが普通である。肥料は、望ましくない植物の生長を刺激して、根系からはるかに多量の水を除草剤とともに摂取させる。これによって、植物全体への除草剤のより効率的な摂取および分配が確実になされる。この場合、肥料は、除草剤の効力を増大させるという点で佐剤と見なし得る。したがって、除草剤と組み合わせて用いられる肥料は、除草佐剤と呼ばれる。
【0011】
グリホサートのような除草剤とともに用いられる、重合体による漂流防止剤または沈着防止剤は、除草剤配合物とは別個の成分としてスプレータンクに加えられる傾向がある。殺虫剤または除草剤配合物へのそのような重合体の直接の添加は、数多くの理由から比較的好ましくない傾向がある。一般に、高濃度の重合体による材料は、水性濃縮物中では界面活性剤および殺虫剤または除草剤の双方と融和しないことがあり得る。更に、重合体は、高濃度の殺虫剤/除草剤および界面活性剤を含有する濃縮物に充分に可溶でないこともあり得る。加えて、慣用の重合体の低い活性のために、通常は重合体を高濃度で加えることが必要であり、水性濃縮物中では、これは、概して、初めに殺虫剤および/または除草剤の活性成分のレベルまたは界面活性剤のレベルを低下させることなしには不可能であろう。慣用の重合体による漂流防止剤または沈着防止剤のもう一つの短所は、それらは配合物を粘稠にする傾向があり、これは許容され得ないことである。
【0012】
国際公開第00/26160号は、慣用の配合物のその他いくつかの短所を克服している。この文書は、除草剤または殺虫剤、および水溶性無機化合物の佐剤を10重量%以上の量で含有する農薬液体濃縮物を記載している。この濃縮物は、水溶性の陰イオン性重合体である漂流防止剤を、該濃縮物の重量を基準にして1.9重量%以下の量で含む。該濃縮物は、スプレータンク内で通常は30倍以上、たとえば50倍以上に希釈されて、散布可能な組成物を形成するであろう。浸透性除草剤のグリホサートが、農薬の一例として記載されている。この組成物は、スプレー漂流の減少に有意な改善を与える。
【0013】
「グリホサートの生物有効性に対するポリアクリルアミド配合物の効果」と題するMickey R. Briganceによる論文[Proceedings of the 7th International Symposium on Adjuvants for Agrochemicals, 8 to 12 November 2004 (ISBN No. 1-92 0-01716-X)]は、グリホサートの散布可能な除草剤組成物の評価、および単純かつ多機能のタンクミックス配合物中のポリアクリルアミドによる強化を記載している。この研究では、より多く界面活性剤を装荷したグリホサート配合物が、ポリアクリルアミドの含有からの効力の、より少ない増加を示すこと、および非常に少ない界面活性剤を伴うか、または全く伴わないグリホサート配合物が、効力の最大の増加を示すことが見出された。この研究は、微細な液滴の削減、および除草剤配合物への液滴反跳の低減による漂流抑制を考慮している。
【0014】
米国特許第5525575号(Chamberlain)は、重合体を含有することができる水性濃縮物を記載している。しかしながら、重合体は、分子量が低くなければならず、好ましくは、これは、組成物中の存在が、組成物に対する散布パターンに実質的に影響しないようなものである。
【0015】
本願の優先日には未刊行であった英国特許出願公開第0503152.1号(内部弁理士整理番号:AG/322371/P1)は、
i)少なくとも1種類の葉面供給植物栄養素、
ii)40〜1,000ppmの少なくとも1種類の水溶性重合体、および
iii)40〜1,000ppmの少なくとも1種類の界面活性剤
をその中に含有する水を含む、散布可能な葉面供給組成物を記載している。この開示は、許容され得るか、または改良されたスプレー漂流および液滴反跳を与え、同時に、液滴の流出の有意な減少を与える組成物を明らかにしている。
【0016】
米国特許第5525575号は、活性成分の性能を向上させるために、重合体を殺虫剤または除草剤組成物に組み込むことを記載している。重合体は、植物の細胞壁越しの活性成分の輸送を改良し得ることが述べられている。記載された重合体は、すべて、3dl/gをはるかに下回る固有粘度を示す。この分子量の重合体は、スプレー漂流を低減しないことになるだろう。ジメチルアミノエチルアクリラート(塩化メチル第四級塩)とのアクリルアミドの共重合体が挙げられるが、これらの材料のアクリルアミド含量は、80%より多くなければならないと述べられる。これらの配合物は、不適切な液滴反跳抑制および漂流抑制を与える傾向があることを、本発明者らは見出した。
【0017】
米国特許第6288010号は、濃縮された塩、主として硫酸アンモニウム中の陰イオン性重合体の使用を記載している。列挙された重合体は、グリホサート配合物には容易に組み込まれないだろう。
【0018】
米国特許願第2004/0058821号は、タンクミックス内の添加剤または殺虫剤配合物のいずれかとしての陰イオン性および非イオン性重合体の使用に言及している。重合体の融和性は、重合体と塩、通常は硫酸アンモニウムとの同時配合によって改良される。
【0019】
米国特許願第2001/0034304号は、殺虫剤内への重合体による沈着剤の添加に言及している。具体的に列挙されるのは、陽イオン性のグアールガム、および/またはアクリルアミドの陰イオン性重合体として例示されるポリアクリルアミドである。実施例は、高レベルの重合体を含む組成物、および安定的な配合物を達成するために硫酸アンモニウムのような塩を用いることを記載している。例示された配合物は、グリホサート配合物が追加的な界面活性剤を含有する僅かに過ぎない可能性に満ちているようである。米国特許願第2004/0211234号は、類似の組成物を記載している。
【0020】
米国特許第6210696号は、油の分散を安定化するためのアクリル酸アルキルのような可溶性単量体中の、ジメチルアミノエチルアクリラートと水との低分子量共重合体に関するものである。記載された重合体は、低い水溶性および低い分子量のために、漂流防止剤として不適切であるだろう。
【0021】
有意に改良されたスプレー漂流抑制を与える殺虫剤または除草剤配合物を与える必要性が、依然として存在する。活性成分の改良された沈着および浸透を可能にしつつ、同時にスプレー漂流抑制を改良する組成物を提供することも望ましいだろう。
【0022】
更に、先行技術による配合物は、概して、液滴反跳の抑制を与えると同時に沈着を適切に制御する濃度で配合することができない。通常、液滴反跳と沈着の抑制との何らかの平衡を与えるために、高レベルの界面活性剤を配合物に含ませることが必要とされる。
【0023】
現在の情報によれば、本発明者らは、散布可能な配合物を形成するよう希釈することができる、水性濃縮物である殺虫剤または除草剤組成物であって、その中に
i)少なくとも1種類の殺虫剤または除草剤の活性成分、
ii)エチレン性不飽和単量体から形成された少なくとも1種類の水溶性の陽イオン性重合体を含む、スプレー漂流抑制剤、および
iii)少なくとも1種類の陽イオン性界面活性剤
を含有する水を含む組成物を提供する。
【0024】
本発明の更に一つの態様では、本発明者らは、農地または地域を殺虫剤もしくは除草剤で処理する方法であって、水を含み、その中に
i)少なくとも1種類の殺虫剤または除草剤の活性成分、
ii)エチレン性不飽和単量体から形成された少なくとも1種類の水溶性の陽イオン性重合体を含む、スプレー漂流抑制剤、および
iii)少なくとも1種類の陽イオン性界面活性剤
を含有する水性濃縮物を与える段階と、
該水性濃縮物をスプレータンク内で希釈して、散布可能配合物を形成する段階と、そうして、
該散布可能配合物を該農地または地域に散布する段階とを含む方法も提供する。
【0025】
水溶性の陽イオン性重合体を該殺虫剤または除草剤配合物に含ませることは、スプレー配合物の損失を有意に低減することを、本発明者らは見出した。加えて、該組成物は、特に界面活性剤を配合物に含ませたときに、液滴反跳を低減し、殺虫剤または除草剤の沈着を最大化する。これは、殺虫剤または除草剤の改良された効力へと導く。低レベルの該陽イオン性重合体でさえ、場合により低レベルの界面活性剤とともに、液滴反跳の優れた抑制を与えることを、本発明者らは見出した。
【0026】
一般的には、本発明の除草剤または殺虫剤組成物は、水性濃縮物として提供される。そうして、この水性濃縮物は、希釈して散布可能配合物を形成し、次いでこれを、処理しようとする農地または地域に散布することができる。一般的には、該水性濃縮物は、20〜100倍に希釈して、望みの濃度の殺虫剤および/または除草剤を、かつ望みの濃度の陽イオン性重合体も与える。
【0027】
あるいは、除草剤または殺虫剤は、初めに、場合により界面活性剤を含有する水性濃縮物として与え、これを希釈して、散布可能配合物を形成し、これに陽イオン性重合体を組み合わせてから散布してもよい。陽イオン性重合体は、水性原液、逆性エマルジョン、または油中の部分的に脱水された重合体分散(液体分散生成物)のいずれかとして、スプレータンクに直接加えてもよい。
【0028】
組成物には、少なくとも1種類の界面活性剤を含ませる。界面活性剤の的確な選択は、用いられる特定の殺虫剤または除草剤、植物の種類、重合体の選択、および場所に依存することになる。効果的な結果は、界面活性剤を、獣脂アミンエトキシレート、アルキルフェノールエトキシレート、アルコールエトキシレートおよびアルキルポリグルコシドからなる群より選んだときに得られる。少なくとも1種類の界面活性剤は、陽イオン性、または陽イオン性にさせることができる少なくとも1種類の遊離塩基性アミンであるべきである。特に好適な界面活性剤は、獣脂アミンエトキシレートである。通常、獣脂アミンエトキシレートは、15〜20モルのエトキシレート単位であるが、5モルのエトキシレートも用い得る。獣脂アミンは、いくつかの状況では非イオン性と見なし得るが、本発明の水性濃縮物、およびそれから形成された希釈された水性散布可能配合物中では陽イオン性であることになる。
【0029】
界面活性剤は、殺虫剤または除草剤の効力を改良するために該配合物に加えてよい。代表的には、界面活性剤は、葉の表面からの活性成分の浸透を改良し、このことは浸透性除草剤にとって重要である。この界面活性剤は、沈着も助ける。
【0030】
界面活性剤は、該組成物に含まれる場合は概して、水性濃縮物中に、組成物全体の15重量%以下の量で存在するであろう。しかし、好ましくは、界面活性剤は、4〜8または9%の濃度で存在することになる。希釈すると、該散布可能配合物は、1,100ppm以下、好ましくは300〜750ppmの量の界面活性剤を含有し得る。
【0031】
スプレー漂流抑制剤として効果的に機能するには、本発明に用いられる少なくとも1種類の陽イオン性重合体は、一般に、散布可能配合物のスプレー分配に効果を発揮するのに充分な分子量のものになる。それは、スプレー漂流抑制剤特性を与えるのに充分な高分子量の重合体であり、分散剤として作用するような低分子量の材料ではない。代表的には、該重合体は、分子量がたとえば、5〜6百万以上、2〜3千万またはそれ以上もあることになる。好ましくは、該陽イオン性重合体は、4dl/g以上の固有粘度を示すことになる。より好ましくは、該重合体は、6dl/g以上の固有粘度を有する。本明細書では、固有粘度は、懸垂準位粘度計(suspended level viscometer)によって、pH7に緩衝させた1M塩化ナトリウム中、20℃で測定される。
【0032】
重合体の固有粘度は、重合体の活性内容を基剤とする重合体の水溶液(0.5〜1重量%)を調製することによって決定し得る。この0.5〜1%の重合体溶液2gを、容量フラスコ内で、(脱イオン水1リットルあたりリン酸二水素ナトリウム1.56gおよびリン酸水素二ナトリウム32.26gを用いて)pH7.0に緩衝させた、2Mの塩化ナトリウム溶液50mlで100mlに希釈し、全体を、脱イオン水で100mlの標識まで希釈する。重合体の固有粘度は、1号懸垂準位粘度計を用い、1Mの緩衝塩溶液中、25℃で測定する。
【0033】
好ましくは、固有粘度(IV)は、8dl/g以上、より好ましくは9dl/g以上である。それは、たとえば30dl/g以下であり得るが、一般的には、組成物の低い粘度、およびスプレー漂流抑制剤性能の最適の組合せは、約20または18dl/gを越えないIVを有する重合体によって示されることが見出されている。好ましくは、IVは、16以下、より好ましくは15dl/g以下である。特に好適なIVの範囲は、9〜13dl/g、特に10〜12dl/gである。
【0034】
本発明では、該水溶性重合体は、実質的に溶解させるのが好ましい。すなわち、重合体を、実質的に可視の固体材料は全く残留しないように、溶液に溶かし込む。重合体は、水溶性単量体または水溶性単量体混合物の重合によって製造し得る。水溶性とは、水溶性単量体または水溶性単量体混合物が、水100mlに5g以上という、水中溶解度を有することを意味するものとする。該重合体は、好都合には、適切ないかなる重合法によっても製造し得る。
【0035】
望ましくは、該重合体は、逆相エマルジョン重合によって、場合により減圧および低温下での、かつしばしば共沸脱水と呼ばれる脱水後に、油中の重合体粒子の分散を形成するよう製造し得る。あるいは、該重合体は、逆相懸濁重合によってビーズの形態でか、または水溶液重合後の粉砕、乾燥、次いで摩砕によって粉末として与えてもよい。該重合体は、懸濁重合によってビーズとしてか、またはたとえば、欧州特許出願公開第150933号、第102760号または第126528号(EP-A-150933、EP-A-102760またはEP-A-126528)に定義された方法に従って、油中水エマルジョン重合によって油中水エマルジョンもしくは分散として製造してもよい。
【0036】
該重合体は、分枝鎖状であり得るが、一般的には、実質的に直鎖状であり、架橋結合していない。
【0037】
該重合体は、代表的には、水溶性の単量体または単量体混合物、通常は水溶性のエチレン性不飽和単量体から形成する。陽イオン含量、すなわち、重合体を形成するのに用いた単量体混合物中の陽イオン性単量体の比率は、可変的であり、100重量%以下であり得るが、より望ましくは高陽イオン性重合体が好適である。代表的には、該陽イオン性重合体は、50重量%以上の陽イオン性単量体、より好ましくは60〜90重量%のそれを含むであろう。
【0038】
高陽イオン性重合体は、その陽イオン電荷密度の形で定義され得る。一般的には、該重合体は、3ミリ当量/g以上の陽イオン電荷密度を示すのが好ましい。
【0039】
望ましくは、該陽イオン性重合体は、少なくとも1種類の陽イオン性のエチレン性不飽和単量体、および場合により1種類またはそれ以上の非イオン性のエチレン性不飽和単量体から製造し得る。適切な陽イオン性単量体は、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリラート(酸付加塩および第四級アンモニウム塩を包含)、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド(酸付加塩および第四級アンモニウム塩を包含)、ハロゲン化ジアリルジアルキルアンモニウムを包含する。特に適切な陽イオン性単量体は、たとえば、ジメチルアミノエチルアクリラートの塩化メチル第四級塩、ジメチルアミノエチルメタクリラートの塩化メチル第四級塩、アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリドおよびジアリルジメチルアンモニウムクロリドである。非イオン性単量体は、アクリルアミド、メタクリルアミド、2−ヒドロキシエチルアクリラートおよびN−ビニルピロリドンを包含する。一つの特に好適な重合体は、アクリルアミドとジメチルアミノエチルアクリラートの塩化メチル第四級アンモニウム塩との共重合体である。
【0040】
本発明の組成物が水性濃縮物であるとき、少なくとも1種類の陽イオン性重合体は、組成物全体の0.1〜2重量%の量で存在し得る。しかし、好ましくは、特に効果的な結果は、水性濃縮物に含まれる単数または複数の陽イオン性重合体の量が0.5〜0.9重量%であるときに見出される。該配合物を希釈して散布可能配合物を形成するときは、代表的には、存在する重合体の量は、25〜150重量ppmの範囲内になる。
【0041】
適切ないかなる殺虫剤または除草剤も、本発明に用い得る。好適な除草剤組成物は、グリホサートまたはグルホシネートのような、少なくとも1種類の浸透性除草剤の活性成分を包含する。除草剤のその他の例は、2,4−Dアミン塩のようなフェノキシを基本とする除草剤を包含する。好ましくは、該浸透性除草剤はグリホサートである。一般に、グリホサートは、イソプロピルアミン、カリウム、アンモニウムまたはその他の塩として存在することになる。
【0042】
代表的には、少なくとも1種類の殺虫剤または除草剤は、水性濃縮物中に200〜700g/Lの量で存在することになる。散布可能配合物へと希釈された中には、殺虫剤または除草剤は、代表的には、4〜35g/Lの量で存在することになる。
【0043】
特に好適な水性濃縮物は、活性除草剤成分としてのグリホサートを、塩化メチルで第四級化されたジメチルアミノエチルアクリラートのような、陽イオン性単量体とのアクリルアミドの水溶性の陽イオン性重合体とともに含む。グリホサートは、通常、イソプロピルアミン塩として水溶液中に含まれる。好適な配合物は、界面活性剤を含み、好ましくは、それは獣脂アミンエトキシレート(通常、15〜20モルのエトキシレート)である。
【0044】
以下の実施例は、本発明を例示する。
【0045】
実施例1
陽イオン性重合体を、Adjuvants Unlimited Inc.が供給するTAE20モルエトキシレートの界面活性剤(AU391)と組み合わせて試験した。
【0046】
重合体Aは、塩化メチルで第四級化された、80%のジメチルアミノエチルアクリラート(DMAEA)、および20%のアクリルアミド(7dl/gのIV)を含有する単量体混合物から懸濁重合によって製造したビーズ共重合体である。
【0047】
様々な構成要素の効果を決定するために、4種類の試験配合物を下記の一般的処方に従って製造した:
グリホサートIPA:工業銘柄(62%の活性成分) =66.0g
重合体A =0または0.75g
界面活性剤(TAE20モルエトキシレート) =0または7g
水 =100gまでの量
【0048】
上記試験配合物を、散布のために1体積%の割合まで希釈した。これによって、実地に用いる割合に等しい濃度の活性成分を得た。
【0049】
削減された液滴反跳を、下記の方法を用いて立証した。
【0050】
500μmの間隙を有する扁平な先端のガラスノズルに接続された、圧電円板に接続されたHewlett Packard 214Bなるパルス発生装置を用いて、直径約1,000μmの液滴を生成した。ガラスノズルの先端を、葉の表面から20cm上方に取り付け、45°の角度に設定した。
【0051】
液滴は、それぞれ、20cm落下させてから、マメの葉(用いた品種はリンカーン種のマメの葉である)に衝突させた。衝突の際に各液滴が反跳する距離を記録し、その数を用いて、平均的な大きさの葉(長さ2.5cm)から偏向したと思われる液滴の百分率を決定した。各試験溶液について50個の液滴を、それぞれ5枚の葉を用いて(1枚あたり10滴)試験した。
【0052】
溶液を標準的条件下で散布したときに失われた組成物の質量を測定することによって、配合物の改良された質量沈着/低減されたスプレー漂流を立証した。
【0053】
試験溶液を、風洞(寸法:長さ3m、高さ2m、幅2.5m)内に散布した。110°の扁平なファンノズルを有するスプレーヘッドを、床上60cmに取り付けた。ノズルの後方10cmの距離に置いたファンを用いて、約9.6km/時(6mph:風洞の中央で測定)の風を生成した。2.5x3mの捕集装置を、スプレーヘッド下の中央に、長さ2.8mの捕集装置がノズルの風下になるように定置した。試験しようとする溶液を、スプレーヘッドに付設した黄銅製のスプレー缶に入れた。次いで、缶、管部およびスプレーヘッドを秤量した。圧搾空気源を用いて、試験溶液をノズルから3バールの圧力で、予め秤量した捕集装置の上に吐出させた。試験溶液は、135秒間散布した。次いで、缶およびスプレーヘッドを再秤量して、吐出された溶液の重量を決定した。捕集装置を注意深く折り畳み、再秤量した。次いで、捕集された溶液の質量を算出し、漂流によるスプレーの損失を決定するのに用いた。結果を表1に示す。
【0054】
【表1】

【0055】
結果は、下記のことを示している。
・重合体および界面活性剤は、液滴反跳を同程度に低減する。
・界面活性剤および重合体の組合せは、液滴反跳を事実上除去する。
・界面活性剤のみを含めることは、漂流、および損失した活性成分の質量を増大させる。
・重合体を含めることは、スプレー漂流の量を低減し、沈着した活性成分の質量を増加させる。
【0056】
実施例2
単独でか、またはTAE20と組み合わせたグリホサート配合物内の同時配合物として、更に2種類の重合体を試験した。
【0057】
重合体Bは、塩化メチルで第四級化された、80%のジメチルアミノエチルアクリラート(DMAEA)、および20%のアクリルアミド(7dl/gのIV)を含有する単量体混合物の溶液重合によって製造した、粉末等級の共重合体である。
【0058】
重合体Cは、塩化メチルで第四級化された、90%のジメチルアミノエチルアクリラート(DMAEA)、および10%のアクリルアミド(8.5dl/gのIV)を含有する粉末等級の共重合体である。
【0059】
実施例1に記載した試験方法を用いた。重合体は、0.75%の割合で含ませ、界面活性剤は、7%の割合で含ませた。配合物は、すべて、1体積%の希釈率で試験した。結果を表2に示す。
【0060】
【表2】

【0061】
結果は、下記のことを示している。
・界面活性剤および重合体の組合せは、液滴反跳を事実上除去する。
・重合体を含めることは、スプレー漂流の量を低減し、沈着した活性成分の質量を増加させる。
【0062】
実施例3
重合体Aと組み合わせて、更に2種類の界面活性剤を試験した。
【0063】
獣脂アミンエトキシレート(TAE)5モルエトキシレートは、Adjuvants Unlimited Inc.によって供給された(AU391)。
【0064】
アルキルポリグリコシド(APG)なる界面活性剤は、Cognis Inc.によって供給された(Agrimul 2069)。
【0065】
実施例1に記載した試験方法を用いた。重合体は、0.75%の割合で含ませ、TAEの界面活性剤は、7%の割合で含ませ、APGの界面活性剤は、4%の割合で固体上に含ませた(50%濃縮物として供給された限りで8%)。結果を表3に示す。
【0066】
【表3】

【0067】
結果は、下記のことを示している。
・界面活性剤および重合体の組合せは、液滴反跳を軽減する。
・重合体を含めることは、スプレー漂流の量を減少させ、沈着した活性成分の質量を増加させる。
【0068】
実施例4
TAEの界面活性剤と組み合わせて、2種類の重合体を野外実験で試験した。
【0069】
配合物1および2は、それぞれ、7.0重量%のTAE(TAEについての標準的な商業的含有率のほぼ半分)および15重量%のTAE(TAEの完全な標準的商業的比率)を含有し、比較の目的で試験した。
【0070】
配合物2は、最終配合物中に7.0重量%のTAEとともに重合体D、すなわち陰イオン含量0%、固有粘度16dl/gの固体等級のポリアクリルアミド単独重合体を0.13重量%の比率で含有した。配合物中の重合体のレベルは、濃縮された除草剤配合物中の様々な成分の融和性によって限定された。比較の目的で結果を示す。
【0071】
配合物4は、最終配合物中に7.0重量%のTAEとともに重合体Bを0.7重量%の比率で含有した。
【0072】
上記配合物は、480g/Lのグリホサート(イソプロピルアミン塩として存在)を含有した。無作為に小区画として設定した4種類の複製を、各480g/Lの試験グリホサート配合物約0.12cm3/m2(1パイント/エーカー)で処理した。2種類の雑草:フェルトブッシュ(velvet leaf)およびアサガオの抑制の百分率について、小区画を肉眼で査定した。アサガオについての査定は、処理の20日後に実施した。フェルトブッシュを抑制するために、最初の処置の43日後にグリホサートの2回目の処理を小区画に施した。フェルトブッシュについての肉眼での査定は、第2の処理の14日後に実施した。実験の結果を下記に要約する:
【0073】
【表4】

【0074】
結果は、下記のことを示している。
・低TAE含量の配合物の効力は、重合体の不在下では高TAE含量の配合物より低い。
・重合体Dは、除草剤の性能を低率のTAEのみよりも向上させたが、この配合物は、高率のTAE程には効果的でなかった。
・低率のTAEと組み合わせた重合体Cは、完全な率のTAEに類似する抑制を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
散布可能な配合物を形成するよう希釈することができる、水性濃縮物である殺虫剤または除草剤組成物であって、その中に
i)少なくとも1種類の殺虫剤または除草剤の活性成分、
ii)エチレン性不飽和単量体から形成された少なくとも1種類の水溶性の陽イオン性重合体を含む、スプレー漂流抑制剤、および
iii)少なくとも1種類の陽イオン性界面活性剤と
を含有する水を含む組成物。
【請求項2】
少なくとも1種類の界面活性剤が組成物全体の15重量%以下の量で存在する、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
少なくとも1種類の陽イオン性重合体が4dl/g以上の固有粘度を示す、請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
陽イオン性重合体が、3ミリ当量/g以上の陽イオン電荷密度を示し、かつ/あるいは50重量%以上の陽イオン性単量体の繰返し単位から形成される、請求項1〜3のいずれか1項記載の組成物。
【請求項5】
陽イオン性重合体が、少なくとも1種類のエチレン性不飽和陽イオン性単量体、および場合により非イオン性単量体から形成される、請求項1〜4のいずれか1項記載の組成物。
【請求項6】
少なくとも1種類の陽イオン性重合体が組成物全体の0.1〜2重量%の量で存在する水性濃縮物である、請求項1〜5のいずれか1項記載の組成物。
【請求項7】
少なくとも1種類の陽イオン性重合体が組成物全体の25〜150重量ppmの量で存在する散布可能な配合物である、請求項1〜6のいずれか1項記載の組成物。
【請求項8】
少なくとも1種類の浸透性除草剤の活性成分、好ましくはグリホサートを含む、請求項1〜7のいずれか1項記載の組成物。
【請求項9】
少なくとも1種類の殺虫剤または除草剤が50〜700g/Lの量で存在する、請求項1〜8のいずれか1項記載の組成物。
【請求項10】
農地または地域を殺虫剤もしくは除草剤で処理する方法であって、水を含み、その中に
i)少なくとも1種類の殺虫剤または除草剤の活性成分、
ii)エチレン性不飽和単量体から形成された少なくとも1種類の水溶性の陽イオン性重合体を含む、スプレー漂流抑制剤、および
iii)少なくとも1種類の陽イオン性界面活性剤
を含有する水性濃縮物を与える段階と、
該水性濃縮物をスプレータンク内で希釈して、散布可能配合物を形成する段階と、そうして、
該散布可能配合物を該農地または地域に分配する段階とを含む方法。

【公表番号】特表2009−507885(P2009−507885A)
【公表日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−530475(P2008−530475)
【出願日】平成18年9月5日(2006.9.5)
【国際出願番号】PCT/EP2006/066013
【国際公開番号】WO2007/031438
【国際公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(396023948)チバ ホールディング インコーポレーテッド (530)
【氏名又は名称原語表記】Ciba Holding Inc.
【Fターム(参考)】