説明

殺虫殺ダニ用乳剤

【課題】保管中に有効成分であるエトキサゾール等の殺虫殺ダニ剤が沈降し凝固することのないなど、安定性に優れ、しかも人体、家畜、家禽への安全性や環境保全性に優れる殺虫殺ダニ用乳剤を提供する。
【解決手段】
殺虫殺ダニ用乳剤を、殺虫殺ダニ活性成分、該活性成分を溶解する下記一般式(I)および/または(II)で表わされる1種類以上の溶媒または混合溶媒および乳化剤を含有するものとする。
一般式(I)
【化1】


(式中、Xは−CH−CH−またはCH=CH−を表し、RおよびRはC1−C4アルキル基を表す。)
一般式(II)
【化2】


(式中、Yはアルキレン基またはアルケニレン基、nは0〜8の整数を表し、RおよびRはC1−C10のアルキル基を表す。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺虫殺ダニ用乳剤に関し、さらに詳しくは保管中に有効成分であるエトキサゾール等の殺虫殺ダニ剤が沈降し凝固することのないなど、安定性に優れ、しかも人体、家畜、家禽への安全性や環境保全性に優れる殺虫殺ダニ用乳剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ダニは様々な生態系を持ち、自然界に広く生息しているが、人体、家畜、家禽や鳥類、植物等の外部寄生虫であり、吸血するダニ類に関しては、伝染病を媒介したり吸血により家畜の体力を奪ってしまうことから(例えばワクモ:red mite)、駆除する必要がある。
【0003】
ダニ類駆除に優れた卓効を示す(RS)−5−tert−ブチル−2−〔2−(2,6−ジフルオロフェニル)−4,5−ジヒドロ−1,3−オキサゾール−4−イル〕フェネトール(一般名称:「エトキサゾール」以後エトキサゾールと呼称する)は、水性フロアブル剤等(特許文献1参照)として実施化することが知られており、かくして、人畜に対する安全性を高め、環境負荷を低減することができる。しかしながら、保管中に有効成分であるエトキサゾールが沈降し凝固したハードケーキを作る等の問題が発生したり、また、製造に際しては高速ブレンダーやビーズミルの如く大がかりな製造設備を要するため、発展途上国等、高度な製造設備を有しない地域においては製造が困難であるなどといった問題があった。
【0004】
一方、医薬、農薬、香粧品、一般家庭雑貨品分野において、有効成分およびその溶剤、乳化剤から構成される乳剤(英名emulsifible concentarte略称EC)は、製造方法が簡単(配合成分を混合するだけ)であるので製造場所を選ばないし、また高濃度実施を発現できる等の利点を有するため、広く使用されてきた。しかしながら、活性成分の溶解剤として有機溶媒を大量に使用する乳剤は、人畜への安全性や環境保全性の面での規制が強化され、社会的要求も高まる中で、キシレン、ナフタレン等の芳香族系溶媒は全廃される方向にあるのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO93/22297
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、保管中に有効成分であるエトキサゾール等の殺虫殺ダニ剤が沈降し凝固することのないなど、安定性に優れ、しかも人体、家畜、家禽への安全性や環境保全性に優れる殺虫殺ダニ用乳剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討した結果、エトキサゾール等の殺虫殺ダニ剤、乳化剤、溶剤を含有する乳剤において、溶剤として特定のものを用いることが、所期の課題解決に資することを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下のとおりのものである。
(1) 殺虫殺ダニ活性成分、該活性成分を溶解する下記一般式(I)および/または(II)で表わされる1種類以上の溶媒または混合溶媒、および乳化剤を含有する殺虫殺ダニ用乳剤。
一般式(I)
【化1】

(式中、Xは−CH−CH−またはCH=CH−を表し、RおよびRはC1−C4アルキル基を表す。)
一般式(II)
【化2】

(式中、Yはアルキレン基またはアルケニレン基、nは0〜8の整数を表し、RおよびRはC1−C10のアルキル基を表す。)
【0009】
(2)活性成分が(RS)−5−tert−ブチル−2−〔2−(2,6−ジフルオロフェニル)−4,5−ジヒドロ−1,3−オキサゾール−4−イル〕フェネトールである前記(1)に記載の殺虫殺ダニ用乳剤。
【0010】
(3)式(I)で示される溶媒がアセチルリシノレイン酸メチルであり、式(II)で示される溶媒がアジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジノルマルアルキル、アジピン酸ジブトキシエチル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシルの中から選ばれる一種またはそれ以上の混合物である前記(1)または(2)に記載の殺虫殺ダニ用乳剤。
【0011】
(4)乳化剤が界面活性剤系のものである前記(1)〜(3)のいずれかに記載の殺虫殺ダニ用乳剤。
【発明の効果】
【0012】
本発明の殺虫殺ダニ用乳剤は、保管中に有効成分であるエトキサゾール等の殺虫殺ダニ剤が晶出し沈降・凝固することのないなど、安定性に優れ、しかも人体、家畜、家禽への安全性や環境保全性に優れるという格別の効果を奏し、使用する際には、水にて希釈しスプレー等で対象物に散布すればよいものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の殺虫殺ダニ用乳剤において用いられる活性成分としては、殺虫殺ダニ効果を有するものであれば特に制限されず、例えば、2−(4−エトキシフェニル)−2−メチル−1−(3−フェノキシベンジル)オキシプロパン〔エトフェンプロックス〕、(RS−α−シアノ−3−フェノキシベンジジル(RS)−2−(4−クロロフェニル)−3−メチルブチレート〔フェンバレレート〕、(S)−α−シアノ−3−フェノキシベンジル−(S)−2−(4−クロロフェニル)−3−メチルブチレート〔エスフェンバレレート〕、(RS)−α−シアノ−3−フェノキシベンジル2,2,3,3−テトラメチルシックロプロパンカルボキシレート〔フェンプロパトリン〕、(RS)−α−シアノ−3−フェノキシベンジル(1RS)−シス、トランス−3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート〔シペルメトリン〕、3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート〔ペルメトリン〕、(RS)−α−シアノ−3−フェノキシベンジル(1RS、3Z)−シス−3−(2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロプ−1−エニル)−2,2ジメチルシクロプロパンカルボキシレート〔シハロトリン〕、(S)−α−シアノ−3−フェノキシベンジル(1R)−シス−3−(2,2−ジブロモビニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート〔デルタメトリン〕、(RS)−α−シアノ−3−フェノキシベンジル(RS)−2,2−ジクロロ−1−(4−エトキシフェニル)シクロプロパンカルボキシレート〔シクロプロトリン〕、α−シアノ−3−フェノキシベンジル N−(2−クロロ−α、α、α−トリフルオロ−p−トリル)−D−バリネート〔フルバリネート〕、2−メチル−3−フェノキシベンジル (1RS、3Z)−シス−3−(2−クロロ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペニル)2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート〔ビフェントリン〕、2−(4−ブロモジフルオロメトキシフェニル)−2−メチル−1−(3−フェノキシベンジル)メチルプロパン〔ハルフェンプロックス〕、(S)−α−シアノ−3−フェノキシベンジル (1R)−シス−3−(1,2,2,2−テトラブロモエチル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート〔トラロメトリン〕、(4−エトキシフェニル)−{3−(4−フルオロ−3−フェノキシフェニル)プロピル}ジメチルシラン〔シラフルオフェン〕、3−フェノキシベンジル(1R)−シス、トランス−2,2−ジメチル−3−(2−メチル−1−プロペニル)シクロプロパンカルボキシレート〔d−フェノトリン〕、(RS)−α−シアノ−3−フェノキシベンジル(1R)−シス、トランス−2,2−ジメチル−3−(2−メチル−1−プロペニル)シクロプロパンカルボキシレート〔シフェノトリン〕、5−ベンジル−3−フリルメチル(1R)−シス、トランス−2,2−ジメチル−3−(2−メチル−1−プロペニル)シクロプロパンカルボキシレート〔d−レスメトリン〕、(S)−α−シアノ−3−フェノキシベンジル(1R、3Z)−シス−(2,2−ジメチル−3−{3−オキソ−3−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロピルオキシ)プロペニル}シクロプロパンカルボキシレート〔アクリナトリン〕、(RS)−α−シアノ−4−フルオロ−3−フェノキシベンジル 3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート〔シフルトリン〕、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メチルベンジル(1RS、3Z)−シス−3−(2−クロロ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート〔テフルトリン〕、2,3,5,6−テトラフルオロベンジル(1R)−トランス−3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート〔トランスフルトリン〕、3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミドメチル(1RS)−シス、トランス−2,2−ジメチル−3−(2−メチル−1−プロペニル)シクロプロパンカルボキシレート〔テトラメトリン〕、(RS)−2−メチル−4−オキソ−3−(2−プロペニル)−2−シクロペンテン−1−イル(1RS)−シス、トランス−2,2−ジメチル−3−(2−メチル−1−プロペニル)シクロプロパンカルボキシレート〔アレトリン〕、(S)−2−メチル−4−オキソ−3−(2−プロピニル)−2−シクロペンテン−1−イル(1R)−シス、トランス−2,2−ジメチル−3−(2−メチル−1−プロペニル)シクロプロパンカルボキシレート〔プラレトリン〕、(RS)−1−エチニル−2−メチル−2−ペンテニル(1R)−シス、トランス−2,2−2−ジメチル−3−(2−メチル−1−プロペニル)シクロプロパンカルボキシレート〔エムペントリン〕、2,5−ジオキソ−3−(2−プロピニル)イミダゾリジン−1−イルメチル(1R)−シス、トランス−2,2−ジメチル−3−(2−メチル−1−プロペニル)シクロプロパンカルボキシレート〔イミプロトリン〕、5−(2−プロピニル)フルフリル2,2,3,3−テトラメチルシクロプロパンカルボキシレート、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシメチルメチルベンジル(1R)−トランス−3−(1−プロペニル(E:Z=1:8))−2,2−メチルシクロプロパンカルボキシレート〔メトフルトリン〕等のピレスロイド系化合物、ジフルベンズロン、クロルフルアズロン、ルフェヌロン、ヘキサフルムロン、フルフェノクスロン、フルシクロクスロン、シロマジン、ジアフェンチウロン、ヘキシチアゾクス、ノヴァルロン、テフルベンズロン、トリフルムロン、4−クロロ−2−(2−クロロ−2−メチルプロピル)−5−(6−ヨード−3−ピリジルメトキシ)ピリダジン−3(2H)−オン、1−(2,6−ジフルオロベンゾイル)−3−[2−フルオロ−4−(トリフルオロメチル)フェニル]ウレア、1−(2,6−ジフルオロベンゾイル)−3−[2−フルオロ−4−(1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロポキシ)フェニル]ウレア、2−tert−ブチルイミノ−3−イソプロピル−5−フェニル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2H−1,3,5−チアジアゾン−4−オン、1−(2,6−ジフルオロベンゾイル)−3−[2−フルオロ−4−(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)フェニル]ウレア等のウレア系化合物;イミダクロプリド、ニテンピラム、アセタミプリド、クロチアニジン、ジアクロデン等のネオニコチノイド系化合物;カルタップ、ブプロフェジン、チオシクラム、ベンスルタップ、フェノキシカルブ、フェナザキン、フェンピロキシメート、ピリダベン、リプロキシフェン、ヒドラメチルノン、チオジカルブ、クロルフェナピル、フェンプロキシメート、ピメトロジン、ピリミジフェン、テブフェノジド、テブフェンピラド、トリアザメート、インドキサカーブ、スルフルラミド、ミルベメクチン、アベルメクチン、パラジクロロベンゼン、(RS)−5−tert−ブチル−2−〔2−(2,6−ジフルオロフェニル)−4,5−ジヒドロ−1,3−オキサゾール−4−イル〕フェネトール(エトキサゾール)のエトキサゾール系化合物などが挙げられ、中でも(RS)−5−tert−ブチル−2−〔2−(2,6−ジフルオロフェニル)−4,5−ジヒドロ−1,3−オキサゾール−4−イル〕フェネトール(一般名称:「エトキサゾール」)が好ましい。
【0014】
本発明の殺虫殺ダニ用乳剤における殺虫殺ダニ活性成分の含有量は、効力およびコストの観点からして、本発明の殺虫殺ダニ用乳剤全体に対し、通常0.5〜50重量%、好ましくは1〜15重量%、中でも2〜10重量%の範囲で選ばれる。
【0015】
本発明の殺虫殺ダニ用乳剤において用いられる溶媒は、殺虫殺ダニ活性成分を溶解し、且つ人体、家畜、家禽への安全性や環境保全性に優れるものであって、下記一般式(I)および/または(II)で表わされ、1種単独で用いてもよいし、また、2種以上併用して混合溶媒としてもよい。
一般式(I)
【化3】

(式中、Xは−CH−CH−またはCH=CH−を表し、RおよびRはC1−C4アルキル基を表す。)
一般式(II)
【化4】

(式中、Yはアルキレン基またはアルケニレン基、nは0〜8の整数を表し、RおよびRはC1−C10のアルキル基を表す。)
【0016】
上記式(1)で示される溶媒としては、具体的には各種ヒマシ油誘導脂肪酸アルキルエステルが好ましく、中でもアセチルリシノレイン酸メチルエステルが好ましい。このようなものとしては、「リックサイザーC−101」(伊藤製油社製)が市販されている。
また式(II)で示される溶媒として、好ましくはシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸の炭素数1(メチル)〜10(デシル)のエステル等が、より好ましくはフマル酸ジブチル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジ−2−エチルヘキシル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジブトキシエチル、アゼライン酸ジノルマルヘキシル、アゼライン酸ジノルマルヘキシル、アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル等が、更に好ましくはアジピン酸ジイソブチル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル等が挙げられる。このようなものとしては、「ビニサイザー40」(花王社製)、「リックサイザーS4」(伊藤製油社製)が市販されている。
このような溶媒の配合割合は殺虫殺ダニ用乳剤全量に基づき、通常50〜99質量%、好ましくは70〜90質量%の範囲で選ばれる。
【0017】
また、本発明の殺虫殺ダニ用乳剤において用いられる乳化剤は、殺虫殺ダニ活性成分およびその溶媒を、施用時に水に簡単に希釈しうるものであれば特に限定されないが、なかでも界面活性剤が好ましい。
このような界面活性剤としては、非イオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。
【0018】
非イオン系界面活性剤の例としては、植物油型非イオン性界面活性剤、アルコール型非イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマー型非イオン性界面活性剤、アルキルフェノール型非イオン性界面活性剤、糖エステル型非イオン性界面活性剤、脂肪酸エステル型非イオン性界面活性剤、ビスフェノール型ノニオン性界面活性剤、多芳香環型ノニオン性界面活性剤、シリコン型ノニオン性界面活性剤、フッ素型ノニオン性界面活性剤などを挙げることができる。植物油型非イオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等が挙げられる。アルコール型非イオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル等が挙げられる。ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマー型非イオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマー、アルキルポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマーエーテル、アルカリフェニルポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマーエーテル等が挙げられる。アルキルフェノール型ノニオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル・ホルマリン縮合物等が挙げられる。糖エステル型ノニオン性界面活性剤としては、例えばソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪族エステル、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。脂肪酸エステル型ノニオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン樹脂酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸ジエステル等が挙げられる。ビスフェノール型ノニオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシビスフェニルエーテル等が挙げられる。多芳香環型ノニオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシアルキレンベンジルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンスチリルフェニルエーテル等が挙げられる。シリコン型ノニオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンエーテル型シリコン系界面活性剤、ポリオキシエチレンエステル型シリコン系界面活性剤等が挙げられる。
【0019】
また、アニオン性界面活性剤としては、例えばサルフェート型アニオン性界面活性剤アニオン性界面活性剤、スルフォネート型アニオン性界面活性剤、フォスフェート型アニオン性界面活性剤、カルボン酸型アニオン性界面活性剤などを挙げることができる。サルフェート型アニオン性界面活性剤としては、例えばアルキルサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート、ポリオキシスチリルフェニルエーテルサルフェート、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマーサルフェート等が挙げられる。スルフォネート型アニオン性界面活性剤としては、例えばパラフィンスルフォネート、ジアルキルスルフォサクシネート、アルキルベンゼンスルフォネート、モノアルキルナフタレンスルフォネート、ジアルキルナフタレンスルフォネート、ナフタレンスルフォネート・ホルマリン縮合物、アルキルジフェニルエーテルジスルフォネート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルスルフォネート等が挙げられる。フォスフェート型アニオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテルフォスフェート、ポリオキシエチレンモノアルキルフェニルエーテルフォスフェート、ポリオキシエチレンジアルキルフェニルエーテルフォスフェート、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテルフォスフェート、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマーフォスフェート、アルキルフォスフェート等が挙げられる。カルボン酸型アニオン性界面活性剤としては、例えば脂肪酸ナトリウム、脂肪酸カリウム、脂肪酸アンモニウム、N−メチル−サルコシネート、樹脂酸ナトリウム、樹脂酸カリウム等が挙げられる。
【0020】
カチオン性界面活性剤としては、例えばアンモニウム型カチオン性界面活性剤、ベンザルコニウム型カチオン性界面活性剤等が挙げることができる。アンモニウム型カチオン性界面活性剤としては、例えばアルキルトリメチルアンモニウムクロライド、メチルポリオキシエチレンアルキルアンモニウムクロライド、アルキルN−メチルピリジニウムブロマイド、モノまたはジアルキルメチル化アンモニウムクロライド、アルキルペンタメチルプロピレンジアミンクロライド等が挙げられる。ベンザルコニウム型カチオン性界面活性剤としては、例えばアルキルジメチルベンザルコニウムクロライド、ベンゼトニウムクロライド、オクチルフェノキシエトキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
【0021】
両性界面活性剤としては、例えばベタイン型両性界面活性剤を挙げることができる。ベタイン型両性界面活性剤としては、例えばジアルキルジアミノエチルベタイン、アルキルジメチルベンジルベタイン等が挙げられる。
【0022】
これらの界面活性剤の配合割合は殺虫殺ダニ用乳剤全量に基づき、通常1〜50質量%、好ましくは5〜30質量%の範囲で選ばれる。
【0023】
本発明の殺虫殺ダニ用乳剤は、必要に応じ、本発明の目的を損なわない範囲内で、さらにその他の溶剤や、各種添加物、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、増粘剤、浸透剤、展着剤、結合剤、顔料、香料等を少量配合させてもよく、その配合割合は殺虫殺ダニ用乳剤全量に基づき、5質量%未満程度とするのがよい。
【0024】
その他の溶剤としては、例えばトリメチルベンゼン、ドデシルベンゼン等のアルキルベンゼン類、フェニルキシリルエタン等のジフェニルメタン類、ミリスチン酸イソプロピル、アジピン酸イソブチルなどのエステル系溶剤、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶剤、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、トリエチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテル、トリプロピレングリコールモノアルキルエーテルなどのグリコール系溶剤、軽質流動パラフィン、流動パラフィン等のパラフィン系溶媒等を挙げることもできるが、通常は前記必須溶剤が主に使用され、アルキルベンゼン類、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、グリコール系溶剤等が使用される場合は前記必須溶剤と併用されるのが一般的であり、その場合の含有量は前記必須溶剤に対し通常、2〜100重量%程度である。
【0025】
本発明の殺虫殺ダニ用乳剤の駆除対象害虫、ダニとしては次のものがあげられる。これらの中には昆虫、ダニ類以外の節足動物もあるが、これらも駆除することが可能である。鱗翅目害虫、イガ、コイガ双翅目害虫イエカ類:アカイエカ、コガタアカイエカ等、ヤブカ類:ネッタイシマカ、ヒトスジシマカ等、ハマダラカ類:シナハマダラカ等イエバエ類:イエバエ、オオイエバエ等クロバエ類、ニクバエ類、ハナバエ類:ヒメイエバエ、タネバエ、タマネギバエ等ユスリカ類、ミバエ類、ショウジョウバエ類、チョウバエ類、アブ類、ブユ類、サシバエ類等膜翅目害虫アシナガバチ類、スズメバチ類、アリガタバチ類、アリ類:イエヒメアリ、オオハリアリ等ゴキブリ目害虫ゴキブリ類:チャバネゴキブリ、クロゴキブリ、ワモンゴキブリ、トビイロゴキブリ、コバネゴキブリ等半翅目害虫カメムシ類:クサギカメムシ、スコットカメムシ等シロアリ目害虫シロアリ類:ヤマトシロアリ、イエシロアリ等直膜翅目害虫カマドウマ類:マダラカマドウマ、カマドウマダニ目マダニ類:オウシマダニ等室内塵性ダニ類:コナダニ類、チリダニ類、ツメダニ類、イエダニ類等昆虫、ダニ類以外の節足動物としてはクモ類:アシダカグモ、オオヒメグモ、イエオニグモ等ムカデ類:トビズムカデ、アオズムカデ等ヤスデ類:ヤケヤスデ、アカヤスデ等ゲジ類:オオゲジ、ゲジ等その他、ワラジムシ、オカダンゴムシ等
【0026】
また、本発明の殺虫殺ダニ用乳剤は、有用植物、具体的には野菜類、果樹、花卉類、庭木類等に寄生する種々の有害昆虫・ダニ類、例えば、モモアカアブラムシ、ワタアブラムシ、ニセダイコンアブラムシ、リンゴワタアブラムシ、ナシミドリオオアブラムシ、モモコフキアブラムシ等のアブラムシ類;チャノキイロアザミウマ、ミナミキイロアザミウマ、ミカンキイロアザミウマ、カキクダアザミウマ等のスリップス類;コナガ、アオムシ、ヨトウ、ハスモンヨトウ、シロイチモジヨトウ、タマナギンウワバ、チャハマキ、チノコカクモンハマキ、キンモンホソガ、モモハモグリガ、ミカンハモグリガ、ナシヒメシンクイ、モモシンクイ、ニカメイガ、アワノメイガ等の鱗翅目類;ナミハダニ、カンザワハダニ、ミカンハダニ、リンゴハダニ等のハダニ類にも有効である。
【0027】
かかる害虫、ダニの駆除においては、本乳剤を水で希釈し、例えば、害虫、ダニに直接、あるいは害虫、ダニのいる密閉空間や通り道、寄生植物やその周辺に、更には窓や壁、網戸等、あるいは害虫の巣などの生息地等に散布、噴霧あるいは噴射することにより施用することができる。この際の施用量は有効成分により異なるが、有効成分量として、通常0.01〜100mg/m程度あるいは0.01〜50mg/m程度である
【実施例】
【0028】
以下、実施例等を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの例によりなんら限定されるものではない。
【0029】
実施例1
200ml容ガラス容器に入れたリックサイザーS−4(伊藤製油社製)82.35gにエトキサゾール2.6gを加え、室温にて5分間攪拌し完全に溶解した。溶解時に80℃まで加熱することで、更に容易にエトキサゾールを溶解した。ノニオン系界面活性剤であるソルポール4315L(東邦化学社製)を5g、ソルポール4315H(東邦化学社製)を10g加え、更に、トコフェロール0.05gを室温にて添加・攪拌混合して殺虫殺ダニ用乳剤(1)を得た。
こうして得られた殺虫殺ダニ用乳剤は、透明均一溶液状外観を呈する。
【0030】
実施例2
上記リックサイザーS−4をC−101(伊藤製油社製)に変えた以外は、上記実施例1と同様にして殺虫殺ダニ用乳剤(2)を得た。
【0031】
実施例3
上記リックサイザーS−4をDOS(伊藤製油社製)に変えた以外は、上記実施例1と同様にして殺虫殺ダニ用乳剤(3)を得た。
【0032】
実施例4〜6
上記エトキサゾール含有量2.6gを殺虫殺ダニ用5.0gに変えた以外は実施例1〜3と同様にして殺虫殺ダニ用乳剤(4)〜(6)を得た。
【0033】
実施例7
リックサイザーS−4、ソルポール4315Lおよびソルポール4315H配合量をそれぞれ42g、7.5gおよび7.5gに変え、更に溶剤としてリックサイザーS−4に加え「薬局方ハイコールM−52」(商品名、カネダ社製、軽質流動パラフィン)40.35gを用いた以外は実施例1と同様にして殺虫殺ダニ用乳剤(7)を得た。
【0034】
比較例1〜3
実施例1における溶媒を、同重量のカネダ社製薬局方ハイコールM−52、出光興産社製IPソルベント2028MU、エクソンモービル社製ソルベッソ150に変えた以外は、実施例1と同様にして対照殺虫殺ダニ用乳剤(イ)〜(ハ)を得た。
【0035】
試験例
上記各実施例及び比較例の殺虫殺ダニ用乳剤(1)〜(7)及び(イ)〜(ハ)をサイクル試験用サンプルとして用い、40℃で4時間維持した後、2時間かけて−15℃にまで冷却し、−15℃で4時間維持し、更に2時間かけて40℃まで昇温するサイクル実験機にて1週間保管後、各溶液の状況を一旦室温に戻し、目視判定した。その結果を表1に示す。
【0036】
【表1】

【0037】
これより、各対照殺虫殺ダニ用乳剤では有効成分である殺虫殺ダニ剤が沈降し凝固するなどの問題があるのに対し、各実施例の殺虫殺ダニ用乳剤は、そのような問題が起こらず、保管安定性に優れていることが分る。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の殺虫殺ダニ用乳剤は、保管中に有効成分であるエトキサゾール等の殺虫殺ダニ剤が晶出・沈降し凝固することのないなど、安定性に優れ、しかも人体、家畜、家禽への安全性や環境保全性に優れるという格別の効果を奏し、使用する際には、水にて希釈しスプレー等で対象物に散布すればよいので、産業上大いに有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
殺虫殺ダニ活性成分、該活性成分を溶解する下記一般式(I)および/または(II)で表わされる1種類以上の溶媒または混合溶媒および乳化剤を含有する殺虫殺ダニ用乳剤。
一般式(I)
【化1】

(式中、Xは−CH−CH−またはCH=CH−を表し、RおよびRはC1−C4アルキル基を表す。)
一般式(II)
【化2】

(式中、Yはアルキレン基またはアルケニレン基、nは0〜8の整数を表し、RおよびRはC1−C10のアルキル基を表す。)
【請求項2】
活性成分が(RS)−5−tert−ブチル−2−〔2−(2,6−ジフルオロフェニル)−4,5−ジヒドロ−1,3−オキサゾール−4−イル〕フェネトールである請求項1に記載の殺虫殺ダニ用乳剤。
【請求項3】
一般式(I)で表わされる溶媒がアセチルリシノレイン酸メチルであり、一般式(II)で表わされる溶媒がアジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジノルマルアルキル、アジピン酸ジブトキシエチル、セバシン酸ジブチルおよびセバシン酸ジ−2−エチルヘキシルの中から選ばれた少なくとも一種のものである請求項1または2に記載の殺虫殺ダニ用乳剤。
【請求項4】
乳化剤が界面活性剤系のものである請求項1〜3のいずれかに記載の殺虫殺ダニ用乳剤。

【公開番号】特開2010−280646(P2010−280646A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−150327(P2009−150327)
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(591057511)ヤシマ産業株式会社 (12)
【出願人】(000118556)伊藤製油株式会社 (15)
【Fターム(参考)】