説明

母乳パッド

【課題】授乳時に母乳パッドが型崩れすることなく、授乳後に再装着し易い使い捨ての母乳パッドを提供する。
【解決手段】母乳パッド本体10の中心線付近には、母乳パッド本体10の折り曲げの折り軸である第一折り曲げ部15が中心線に沿って周縁部付近まで延びるように設けられ、第一折り曲げ部15及びこの第一折り曲げ部15に直交する直線部分を除く部分には、母乳パッド本体10を衣服に止着するための止着手段16がバックシート11側に設けられた母乳パッドによれば、授乳時に型崩れすることがなく、授乳後の再装着が容易である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、授乳時に母乳パッドが型崩れすることなく、授乳後に再装着し易い使い捨ての母乳パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
母乳は、乳児が母親の乳首を吸うことにより生じる刺激で大量に出てくるものであるが、それ以外のときであっても漏出することがある。また、左右の乳房が連動しているので、一方の乳房で授乳していると他方の乳房からも母乳が漏出することがある。このようなことから、授乳期の母親は、漏出した母乳で衣服を濡らしてしまうことを防止するために、ブラジャー等の下着の内側に乳房を包み込むようにして母乳パッドを介装し、母乳を吸収させている。
【0003】
授乳期の母親は、授乳時にブラジャーの内側に母乳パッドを介装した状態でブラジャーを斜め下にずらし、乳房を出し入れするのが通常である。この際に、母乳パッドはブラジャーと乳房の下部外側の間に挟まれ、圧力がかかることで型崩れが生じ易い。型崩れした母乳パッドは、ずれ止めとして衣服側に設けられた粘着剤の作用により、型崩れしたまま接着され、元の状態に戻して再装着することが困難である。
【0004】
これに関し、特許文献1では、母乳パッド本体100の周縁部に伸縮素材を配置し、使用者の乳首当接位置を挟んで両側縁に凹溝110を設けた構造の母乳パッドが開示されている(図10参照)。この特許文献1に開示された母乳パッドによれば、熱処理を施さないため、軟らかい感触を保持したまま、乳房の形状に対応したドーム形状の母乳パッドを提供できるとされている。
【特許文献1】特開2000−178805号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この特許文献1に開示された母乳パッドでは、乳首に当接する部位を挟んで両側縁に凹溝110が設けられており、この凹溝110が設けられた部位は、本来、授乳時に折れ曲がり易い位置とは異なる。このため、凹溝110を折り軸として母乳パッド本体100が余分に折れ曲がって型崩れし易く、再装着が容易ではない。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、授乳時に母乳パッドが型崩れすることなく、授乳後に再装着し易い使い捨ての母乳パッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、授乳期の母親が授乳時にブラジャーを斜め下にずらして乳房を出し入れする際に、母乳パッドも斜めに折れ曲がる傾向にあることに着目して鋭意研究を重ねた。その結果、母乳パッド本体の中心線付近に、母乳パッド本体の折り曲げの折り軸である第一折り曲げ部が中心線に沿って周縁部付近まで延びるように設けられ、且つ、第一折り曲げ部及びこの第一折り曲げ部に直交する直線部分を除く部分に、母乳パッド本体を衣服に止着するための止着手段がバックシート側に設けられた母乳パッドによれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
【0008】
(1) 着用者の乳房を覆うことが可能な一対の母乳パッド本体を備えた母乳パッドであって、前記母乳パッド本体は、この母乳パッド本体の外形を形成する液不透過性のバックシートと、このバックシートの内側に配置され周縁部が前記バックシートの周縁部と接合された液透過性のトップシートと、前記バックシートと前記トップシートとの間に配置され母乳を吸収して保持する吸収体と、を有し、前記母乳パッド本体の中心線付近には、前記母乳パッド本体の折り曲げの折り軸である第一折り曲げ部が前記中心線に沿って周縁部付近まで延びるように設けられ、前記第一折り曲げ部及びこの第一折り曲げ部に直交する直線部分を除く部分には、前記母乳パッド本体を衣服に止着するための止着手段が前記バックシート側に設けられた母乳パッド。
【0009】
(1)の母乳パッドは、母乳パッド本体の折り曲げの折り軸となる第一折り曲げ部が設けられたものである。この第一折り曲げ部は、母乳パッド本体の中心線付近に、この中心線に沿って周縁部付近まで延びるように設けられる。また、第一折り曲げ部及びこの第一折り曲げ部に直交する直線部分を除く部分には、母乳パッド本体を衣服に止着するための止着手段がバックシート側に設けられている。通常、母乳パッドは装着のし易さや授乳時の乳房の出し入れのし易さの観点から、止着手段が乳房の上方に配置されるように装着されるのが慣例となっている。このため、乳房の上方に止着手段が配置されるように(1)の母乳パッドを装着した場合には、第一折り曲げ部が着用者に対して斜めに配置されることになる。さらには、着用者は、日頃から目にしているブラジャーの形状を記憶しており、第一折り曲げ部が乳房の上部外側から下部内側にかけて斜めに配置されるように母乳パッドを装着するのが自然である。従って、(1)の母乳パッドは、第一折り曲げ部が着用者の乳房の上部外側から下部内側にかけて斜めに配置されるように装着される。このように、第一折り曲げ部が着用者の乳房の上部外側から下部内側にかけて斜めに配置されるように(1)の母乳パッドが装着された場合には、授乳時にブラジャーを斜め下にずらす際に、第一折り曲げ部を折り軸として乳房の形状に沿う形で母乳パッド本体が折れ曲がる。即ち、第一折り曲げ部に沿って母乳パッド本体が折り畳まれるので、母乳パッド本体が型崩れし難い。このため、ブラジャーとともに母乳パッド本体を元の状態に戻して再装着し易いうえ、吸収体がよれて漏れが生じることもない。
【0010】
また、(1)の母乳パッドは、バックシート側に止着手段が設けられているため、授乳終了後ブラジャーを再装着する際に、母乳パッド本体は止着手段を介してブラジャーに追随する。このため、母乳パッド本体が型崩れし難く、ブラジャーと一緒に元の状態に戻して容易に再装着することができる。
【0011】
(2) 前記母乳パッド本体の外部から視認可能な部位に、前記第一折り曲げ部が前記乳房の上部外側から下部内側にかけて斜めに配置されるように前記母乳パッド本体を装着することを内容とする表示が付された表示部を備えた(1)記載の母乳パッド。
【0012】
(2)の母乳パッドは、第一折り曲げ部が着用者の乳房の上部外側から下部内側にかけて斜めに配置されるように母乳パッド本体を装着することを内容とする表示が付された表示部を備えたものである。即ち、(1)の母乳パッドでは、その装着方法については慣例に依るところであるが、(2)の母乳パッドでは、その正しい装着方法が直接、母乳パッド本体に表示されている。このため、(2)の母乳パッドは、この表示に従って容易に正しく装着することができ、(1)と同様の効果をより確実に発揮できる。
【0013】
(3) 前記第一折り曲げ部が間欠的に設けられた(1)又は(2)記載の母乳パッド。
【0014】
(3)の母乳パッドは、母乳パッド本体の折り曲げの折り軸となる第一折り曲げ部が間欠的に設けられたものである。このため、(1)や(2)の母乳パッドと同様の効果を奏するうえ、第一折り曲げ部が間欠的に設けられているため、吸収体が分断されることがない。従って、吸収体全体で母乳を吸収できるため、母乳パッド本体の吸収機能が損なわれることがなく、吸収力に優れる。
【0015】
(4) 前記第一折り曲げ部が着用者の乳首と当接する部分を除く部分に設けられた(3)記載の母乳パッド。
【0016】
(4)の母乳パッドは、乳首が当接する部分を除いて、第一折り曲げ部が間欠的に設けられたものである。第一折り曲げ部は母乳パッド本体の折り曲げの折り軸となる部分であるところ、最も敏感な乳首が当接する部分にこの第一折り曲げ部を設けた場合には、着用者に違和感を与えるおそれがある。この点、(4)の母乳パッドによれば、乳首が当接する部分に第一折り曲げ部が設けられていないため、乳首が第一折り曲げ部に接触することがなく、着用者に違和感を与えることもない。
【0017】
(5) 前記第一折り曲げ部における前記吸収体の剛性値が、その周辺部における前記吸収体の剛性値と異なる(1)から(4)いずれか記載の母乳パッド。
【0018】
(5)の母乳パッドは、第一折り曲げ部における剛性値が、その周辺部における吸収体の剛性値と異なるものである。このため、剛性値の高低差が生じる境界で母乳パッド本体が折れ曲がり、母乳パッド本体の型崩れを抑制することができる。本明細書でいう剛性とは、物体に外力を加えて変形させようとするときに、物体がその変形に抵抗する程度を意味する。具体的には、第一折り曲げ部の剛性値が周辺部の剛性値より低くてもよく、逆に、第一折り曲げ部の剛性値が周辺部の剛性値より高くてもよい。いずれの場合においても、授乳時にブラジャーを斜め下にずらす際に、その境界で母乳パッド本体が折れ曲がるため、型崩れし難く、再装着し易い。なお、本発明における剛性値は、ガーレー剛軟度試験機により測定される。ここで、ガーレー剛軟度試験とは、紙パルプ技術協会が発行しているJ.TAPPI(JAPAN TAPPI)の「紙パルプ試験方法」NO.40−83に記載の「加重曲げ法による紙及び板紙のこわさ試験方法(ガーレー法)」を意味する。具体的には、剛性値は、第一折り曲げ部周辺が50mN〜300mN、第一折り曲げ部が15mN〜45mNであるのが好ましく、より好ましくは、第一折り曲げ部周辺が150mN〜250mN、第一折り曲げ部が25mN〜35mNである。
【0019】
(6) 前記第一折り曲げ部における前記吸収体の厚みが、その周辺部における前記吸収体の厚みと異なる(1)から(5)いずれか記載の母乳パッド。
【0020】
(6)の母乳パッドは、第一折り曲げ部における吸収体の厚みが、その周辺部における吸収体の厚みと異なるものである。具体的には、第一折り曲げ部における吸収体の厚みが、その周辺部における吸収体の厚みよりも薄くてもよく、逆に、第一折り曲げ部における吸収体の厚みが、その周辺部における吸収体の厚みより厚くてもよい。いずれの場合においても、厚みの差が生じる境界で母乳パッド本体が折れ曲がるため、母乳パッドの型崩れを抑制でき、容易に再装着することができる。
【0021】
(7) 前記第一折り曲げ部における前記吸収体の坪量が、その周辺部における前記吸収体の坪量と異なる(1)から(6)いずれか記載の母乳パッド。
【0022】
(7)の母乳パッドは、第一折り曲げ部における吸収体の坪量(目付)が、その周辺部における吸収体の坪量と異なるものである。具体的には、第一折り曲げ部における吸収体の坪量が、その周辺部における吸収体の坪量より低くてもよく、逆に、第一折り曲げ部における吸収体の坪量が、その周辺部における吸収体の坪量よりも高くてもよい。いずれの場合においても、坪量の差が生じる境界で母乳パッド本体が折れ曲がるため、母乳パッドの型崩れを抑制でき、容易に再装着することができる。具体的には、第一折り曲げ部周辺における吸収体の坪量が100g/m以上500g/m以下、第一折り曲げ部における吸収体の坪量が0より大きく100g/m以下であることが好ましい。
【0023】
(8) 前記第一折り曲げ部が加圧成形により形成された(1)から(7)いずれか記載の母乳パッド。
【0024】
(8)の母乳パッドは、第一折り曲げ部が加圧成形により形成されたものである。加圧成形の具体例としては、エンボス加工等が挙げられる。加圧成形により形成された第一折り曲げ部とその周辺部とでは剛性値に差が生じ、これらの境界で母乳パッド本体が折れ曲がり易いため、母乳パッドの型崩れを抑制でき、容易に再装着することができる。
【0025】
(9) 前記第一折り曲げ部が前記吸収体を有さずに形成された(1)から(5)いずれか記載の母乳パッド。
【0026】
(9)の母乳パッドは、第一折り曲げ部が吸収体を有さずに形成されたものである。吸収体を有さずに形成された第一折り曲げ部では、トップシートとバックシートとが直接接合されていることが好ましい。これにより、第一折り曲げ部とその周辺部とで剛性値に差が生じ、その境界で母乳パッド本体が折れ曲がり易いため、母乳パッドの型崩れを抑制でき、容易に再装着することができる。
【0027】
(10) 前記バックシートが曲げ反発手段を備えた(1)から(9)いずれか記載の母乳パッド。
【0028】
(10)の母乳パッドは、バックシートに曲げ反発手段を備えたものである。このため、曲げ反発手段の反発力によって型崩れし難いうえ、曲げ反発手段の反発力により生ずる復元力によって母乳パッドが元の状態に戻り易く、授乳後に母乳パッドを容易に再装着することができる。曲げ反発手段の具体例としては、バックシートに弾性部材を備えたもの等が挙げられる。
【0029】
(11) 前記曲げ反発手段が前記第一折り曲げ部を跨いで備えられた(10)記載の母乳パッド。
【0030】
(11)の母乳パッドは、曲げ反発手段が第一折り曲げ部を跨いで備えられたものである。即ち、母乳パッド本体の折り曲げの折り軸となる第一折り曲げ部を跨ぐ方向に曲げ反発力が作用するため、折れ曲がった母乳パッド本体を元に戻す復元力に優れる。従って、型崩れし難く、容易に再装着できる。
【0031】
(12) 前記母乳パッド本体の中心線付近には、前記母乳パッド本体の折り曲げの折り軸である第二折り曲げ部が前記中心線に沿って周縁部付近まで延びるように設けられ、前記第二折り曲げ部は、前記第一折り曲げ部と略直交している(1)から(11)いずれか記載の母乳パッド。
【0032】
(12)の母乳パッドは、第一折り曲げ部に加えて、この第一折り曲げ部と略直交する第二折り曲げ部を備えたものである。このため、母乳パッド本体が第一折り曲げ部を折り軸として折れ曲がり易いうえ、第二折り曲げ部を折り軸としても折れ曲がり易いため、より型崩れし難く、容易に再装着できる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、授乳時に母乳パッドが型崩れすることなく、授乳後に再装着し易い使い捨ての母乳パッドを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、第一実施形態以外の各実施形態の説明において、第一実施形態と共通する構成及び作用効果の説明については省略する。
【0035】
<第一実施形態>
[母乳パッドの全体構成]
第一実施形態に係る母乳パッドは、一対の母乳パッド本体から構成される。なお、実施形態の説明では、簡略化のため右乳房用の母乳パッド本体10についてのみ説明する。母乳パッド本体10を外側(衣服側)から見たときの平面図を図1に示す。図1におけるX−X’視断面図を図2に、母乳パッド本体10の斜視図を図3に示す。また、母乳パッド本体10の装着状態を図4に示す。これらの図に示す通り、母乳パッド本体10は、着用者の乳房を覆うことが可能なドーム状の形状をなしている。なお、形状としてはドーム状の形状の他、略円錐形状の母乳パッド本体等も好適に用いられ、乳房にフィットさせることができるものであれば特に限定されない。
【0036】
[母乳パッド本体]
母乳パッド本体10は、母乳パッド本体10の外形を形成する液不透過性のバックシート11と、このバックシート11の内側に配置され周縁部がバックシート11の周縁部と接合された液透過性のトップシート13と、バックシート11とトップシート13との間に配置され母乳を吸収して保持する吸収体12と、を備える。母乳パッド本体10の中心線付近には、母乳パッド本体10の折り曲げの折り軸となる第一折り曲げ部15が、その中心線に沿って周縁部付近まで延びるように設けられている。また、第一折り曲げ部15及びこの第一折り曲げ部15に直交する直線部分を除く部分には、母乳パッド本体10を衣服に止着するための止着手段16がバックシート11側に設けられている。
【0037】
[トップシート]
トップシート13は、ドーム状の母乳パッド本体10の内側に配置されて着用者の乳房に直接接するものであり、軟らかい感触の素材から形成される。また、母乳を吸収、透過して外側に配置された吸収体12に母乳を導くものであるため、液透過性の素材から形成される。具体的には、親水性の繊維不織布により形成される。あるいは、多数の開孔を有する疎水性の繊維不織布やフィルムにより形成することもできる。
【0038】
[バックシート]
バックシート11は、ドーム状の母乳パッド本体10の外側に配置されて母乳パッド本体10の外形を形成するものである。また、吸収体12に吸収、保持された母乳が滲み出して衣服を濡らすことがないように、液不透過性の素材から形成される。具体的には、シリカやアルミナ等の無機物の微粒子を含有し、透湿性を有する液不透過性の延伸プラスチックフィルムや、液不透過性フィルムと繊維不織布とのラミネート、透湿性を有する液不透過性フィルムと繊維不織布とのラミネート等により形成される。また、スパンボンド不織布とメルトブローン不織布とをラミネートした複合不織布を用いることもできる。
【0039】
[吸収体]
吸収体12は、粒子状又は繊維状の高吸収性ポリマーとフラッフパルプとの混合物、あるいは、粒子状又は繊維状の高吸収性ポリマー、フラッフパルプ、及び、熱可塑性合成樹脂繊維の混合物により形成される。より詳しくは、これらの混合物が所定の厚みに圧縮成形されたものから形成される。吸収体12は、全体的に所定の厚みに圧縮成形されているため、上述のトップシート13やバックシート11に比して剛性値が高い。吸収体12は、型崩れやポリマーの脱落を防止するため、全体がティッシュに包被されているのが好ましい。
【0040】
吸収体12は、ティッシュを介してトップシート13やバックシート11の内面に、ホットメルト接着剤等で接合される。なお、ティッシュの代わりに、繊維密度の高いメルトブローン法による繊維不織布と、この繊維不織布の少なくとも片面に、高い強度と良好な柔軟性とを有するスパンボンド法による繊維不織布をラミネートした複合不織布であるスパンボンドとメルトブローンを多層に積層してシート化したSM不織布やSMS不織布を用いることもできる。この複合不織布の場合には、繊維自体が疎水性であるため、吸収体12への透液性を向上するために、親水化処理を施すことが好ましい。なお、高吸収性ポリマーとしては、デンプン系、セルロース系、合成ポリマー系が用いられる。
【0041】
接着剤は、バックシート11、トップシート13、及び、吸収体12にスパイラル状や波状、ジグザグ状、ドット状、縞状のうちのいずれかの塗布パターンで塗布される。接着剤をこれらの塗布パターンで塗布すると、バックシート11とトップシート13とが断続的に固着され、吸収体12がこれらバックシート11及びトップシート13に断続的に接合される。接着剤としては、ホットメルト型接着剤等が用いられ、オレフィン系、スチレンゴム系接着剤のいずれかを用いることができる。
【0042】
繊維不織布には、スパンレース、ニードルパンチ、メルトブローン、サーマルボンド、スパンポンド、ケミカルボンドの各製法により製造された不織布を用いることができる。親水性の繊維不織布は、親水化処理が施された合成繊維、半合成繊維、再生繊維のうちのいずれか、または、それら繊維を混合した複合繊維から得られる。疎水性の繊維不織布は、合成繊維から得られる。疎水性の繊維不織布には、撥水処理が施された半合成繊維や再生繊維が含まれる。合成繊維としては特に限定されず、ポリエステル系、ポリアクリロニトリル系、ポリ塩化ビニル系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、ポリスチレン系を用いることができる。合成繊維には、芯鞘型複合繊維、並列型複合繊維、異型中空繊維、微多孔繊維、接合型複合繊維などを用いることもできる。
【0043】
[第一折り曲げ部]
第一折り曲げ部15は、母乳パッド本体10の中心線付近に、この中心線に沿って周縁部付近まで延びるように連続して設けられている。第一折り曲げ部15における吸収体12は、その周辺部における吸収体12に比して、厚みに差を設けたり、坪量に差を設ける等して、剛性値に差が設けられている。また、吸収体12が介在するバックシート11及びトップシート13に対して、エンボス加工等の加圧成形を施して第一折り曲げ部15を形成することにより、周辺部との剛性値に差を設けることもできる。
【0044】
あるいは、母乳パッド本体の中心線付近に、この中心線に沿って周縁部付近まで延びる部分に吸収体を設けず、トップシートとバックシートとをホットメルト接着剤で直接接合して第一折り曲げ部を形成することにより、周辺部と剛性値の差を設けることもできる。例えば、吸収体を左右に二分した吸収体片を、バックシート及びトップシートを左右に二分したバックシート片及びトップシート片との間にそれぞれ挟持させて得られた左右の母乳パッド本体片を、ホットメルト接着剤で接合することにより、母乳パッド本体を形成すると同時に第一折り曲げ部を形成することもできる。
【0045】
また、バックシートが、第一折り曲げ部を跨いで配置された曲げ反発手段を備えた形態が好ましい変形例として挙げられる。この曲げ反発手段としては、例えば、第一折り曲げ部を跨いで配置された弾性部材等が挙げられる。弾性部材としては、反発力を有するシート状のパネル材が用いられる。例えば、フォームを材料とするシートの他、スパンボンド、スルーエア、SMS不織布等も、坪量が30g/m以上であれば弾性力が高くなり、反発効果が期待できる。
【0046】
[止着手段]
母乳パッド本体10を構成するバックシート11には、第一折り曲げ部15及びこの第一折り曲げ部15に直交する直線部分を除く部分に、母乳パッド本体10と衣服とを止着するための止着手段16が設けられている。止着手段16が第一折り曲げ部15上に設けられた場合には、第一折り曲げ部15を折り軸として母乳パッド本体10が折れ曲がるのを阻害するおそれがある。また、母乳パッドは通常、止着手段が上方に配置されるように装着するのが慣例であるため、止着手段16が第一折り曲げ部15上に設けられた場合には、第一折り曲げ部15が乳房上に斜めに配置されず、効果が発揮されない。止着手段16が第一折り曲げ部15に直交する直線部分上に設けられた場合も同様である。なお、止着手段16の中心が、第一折り曲げ部15上や第一折り曲げ部15に直交する直線部分上に設けられていなければよく、止着手段16の端部がこれらに重なって設けられていてもよい。止着手段16の具体例としては、スチレンゴム系接着剤を塗布したり、複数のフックを有する雄型メカニカルファスナを取り付ける手段が挙げられる。なお、止着手段16は複数設けられていてもよく、特に、第一折り曲げ部15に対して対称となる位置に設けられている場合には、左右同じ母乳パッドを用いることができる。
【0047】
[作用効果]
以下、本実施形態に係る母乳パッドの作用効果について説明する。通常、母乳パッドは装着のし易さや授乳時の乳房の出し入れのし易さの観点から、止着手段が乳房の上方に配置されるように装着されるのが慣例となっている。この点、本実施形態に係る母乳パッド本体10の中心線付近には、母乳パッド本体10の折り曲げの折り軸である第一折り曲げ部15が中心線に沿って周縁部付近まで延びるように設けられているうえ、第一折り曲げ部15及びこの第一折り曲げ部15に直交する直線部分を除く部分には、母乳パッド本体10を衣服に止着するための止着手段16がバックシート側に設けられている。このため、慣例により止着手段16が乳房の上方に配置された場合には、第一折り曲げ部15が着用者の乳房上に斜めに配置されることになる。さらには、着用者は、日頃から目にしているブラジャーの形状を記憶しており、第一折り曲げ部15が乳房の上部外側から下部内側にかけて斜めに配置されるように母乳パッドを装着するのが自然である。このように、第一折り曲げ部15が着用者の乳房の上部外側から下部内側にかけて斜めに配置されるように装着された場合には、授乳時にブラジャーを斜め下にずらす際に、第一折り曲げ部15を折り軸として乳房の形状に沿う形で母乳パッド本体10が折れ曲がる。即ち、第一折り曲げ部15に沿って母乳パッド本体10が折り畳まれるので、母乳パッド本体10が型崩れし難い。このため、ブラジャーとともに母乳パッド本体10を元の状態に戻して再装着し易いうえ、吸収体12がよれて漏れが生じることもない。また、この母乳パッド本体10は止着手段16を介してブラジャーに追随するため、母乳パッド本体10が型崩れし難く、ブラジャーと一緒に元の状態に戻して容易に再装着することができる。
【0048】
<第二実施形態>
第二実施形態に係る母乳パッド本体20を外側(衣服側)から見たときの平面図を図5に示す。図5に示すように、母乳パッド本体20は、第一実施形態に係る母乳パッド10の第一折り曲げ部15が連続的でなく、間欠的に設けられたものである。具体的には、本実施形態における第一折り曲げ部25は、所定の間隔をおいて複数設けられたものである。間隔については、母乳パッド本体20の折れ曲がり易さと吸収機能とのバランスを考慮して適宜設定される。この第二実施形態に係る母乳パッド本体20によれば、第一折り曲げ部25によって吸収体22が分断されることがないため、母乳を吸収体22全体で吸収することができるため、吸収力に優れる。
【0049】
<第三実施形態>
第三実施形態に係る母乳パッド本体30を外側(衣服側)から見たときの平面図を図6に示す。図6に示すように、母乳パッド本体30は、第一実施形態に係る母乳パッド10の第一折り曲げ部15が連続的でなく、間欠的であって且つ着用者の乳首と当接する部分以外に設けられたものである。具体的には、本実施形態における第一折り曲げ部35は、ドーム状の母乳パッド本体30の中心線付近に、この中心線に沿って周縁部付近まで延びる部分のうち、乳首と当接する部分、即ち、中心付近を除く両側(図では上側と下側)にそれぞれ連続して設けられたものである。上側と下側それぞれが連続的でなく、間欠的に設けられていてもよい。この第三実施形態に係る母乳パッド本体30によれば、乳首と当接する部分に第一折り曲げ部15が設けられていないため、装着時に着用者に違和感を与えることがない。
【0050】
<第四実施形態>
第四実施形態に係る母乳パッド本体40を外側(衣服側)から見たときの平面図を図7に示す。図7に示すように、母乳パッド本体40は、第三実施形態に係る母乳パッド本体30に設けられた第一折り曲げ部35のうち、一方の側のみ(図では上側のみ)に設けられたものである。本実施形態における第一折り曲げ部45は、連続的でなく、間欠的に設けられていてもよい。この第四実施形態に係る母乳パッド本体40によれば、第一折り曲げ部35が必要最低限の部位に設けられたものであるため、着用感及び吸収力に優れる。
【0051】
<第五実施形態>
第五実施形態に係る母乳パッド本体50を外側(衣服側)から見たときの平面図を図8に示す。図8に示すように、母乳パッド本体50の中心線付近には、母乳パッド本体50の折り曲げの折り軸となる第二折り曲げ部57が、中心線に沿って周縁部付近まで延びるように設けられている。また、第二折り曲げ部57は、第一折り曲げ部55と略直交している。この第二折り曲げ部57は、上述したような第一折り曲げ部55と同様の手段により形成される。この第五実施形態に係る母乳パッド本体50によれば、母乳パッド本体50が第一折り曲げ部55を折り軸として折れ曲がり易いうえ、第二折り曲げ部57を折り軸としても折れ曲がり易いため、より型崩れし難く、容易に再装着できる。
【0052】
<第六実施形態>
第六実施形態に係る母乳パッド本体60を外側(衣服側)から見たときの平面図を図9に示す。図9に示すように、母乳パッド本体60は、バックシート61に母乳パッド本体60の装着方法を表示した表示部68を備えている。
【0053】
[表示部]
本実施形態では、表示部68はバックシート61の外側表面(着用時に着用者の肌側を内側、衣服側を外側とする)に直接備えられているが、母乳パッド本体60の外部から視認可能な部位であれば特に限定されない。バックシート61の外側表面に直接備える他、トップシート63の内側表面に直接備えてもよい。あるいは、吸収体62の内側表面や外側表面に備えられ、トップシート63やバックシート61を透かして視認可能なものであってもよい。また、タグのようにトップシート63やバックシート61の側縁に備えられたものであってもよい。さらには、この表示部68は、止着手段66に表示を付したものであってもよい。
【0054】
表示部68に付された表示は、第一折り曲げ部65が着用者の乳房の上部外側から下部内側にかけて斜めに配置されるように、母乳パッド本体60を装着することを内容とする母乳パッドの装着方法に関する表示であれば特に限定されない。例えば、本実施形態に係る母乳パッド本体60を、第一折り曲げ部65が着用者の乳房の上部外側から下部内側にかけて斜めに配置されるように正しく装着した状態を図や文字で表したものが挙げられる。あるいは、母乳パッド本体60の上下方向を表示し、正しい装着状態に誘導する表示等が挙げられる。
【0055】
[作用効果]
本実施形態に係る母乳パッド本体60は、第一折り曲げ部65が乳房の上部外側から下部内側にかけて斜めに配置されるように、正しい装着状態に誘導するための表示部68が設けられているため、着用者はその表示に従って母乳パッド本体60を容易に正しく装着できる。そして、授乳時において、ブラジャーとともに母乳パッド本体60を斜め下にずらす際に、母乳パッド本体60は、第一折り曲げ部65を折り軸として容易に折れ曲がる。このため、母乳パッド本体60がブラジャー内で不規則に折れ曲がることもなく、型崩れを生じ難い。また、授乳終了後、ブラジャーとともに母乳パッド本体60を再装着する際には、母乳パッド本体60が元の状態に戻り易いため、容易に再装着できる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】第一実施形態に係る母乳パッド本体を外側(衣服側)から見たときの平面図である。
【図2】図1におけるX−X’視断面図である。
【図3】第一実施形態に係る母乳パッド本体の斜視図である。
【図4】第一実施形態に係る母乳パッド本体の装着状態を示す図である。
【図5】第二実施形態に係る母乳パッド本体を外側(衣服側)から見たときの平面図である。
【図6】第三実施形態に係る母乳パッド本体を外側(衣服側)から見たときの平面図である。
【図7】第四実施形態に係る母乳パッド本体を外側(衣服側)から見たときの平面図である。
【図8】第五実施形態に係る母乳パッド本体を外側(衣服側)から見たときの平面図である。
【図9】第六実施形態に係る母乳パッド本体を外側(衣服側)から見たときの平面図である。
【図10】従来の母乳パッド本体を外側(衣服側)から見たときの平面図である。
【符号の説明】
【0057】
10、20、30、40、50、60 母乳パッド本体
11 バックシート
12 吸収体
13 トップシート
15、25、35、45、55、65 第一折り曲げ部
16、26、36、46、56、66 止着手段
57 第二折り曲げ部
68 表示部
100 従来の母乳パッド本体
110 凹溝
120 粘着部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の乳房を覆うことが可能な一対の母乳パッド本体を備えた母乳パッドであって、
前記母乳パッド本体は、この母乳パッド本体の外形を形成する液不透過性のバックシートと、このバックシートの内側に配置され周縁部が前記バックシートの周縁部と接合された液透過性のトップシートと、前記バックシートと前記トップシートとの間に配置され母乳を吸収して保持する吸収体と、を有し、
前記母乳パッド本体の中心線付近には、前記母乳パッド本体の折り曲げの折り軸である第一折り曲げ部が前記中心線に沿って周縁部付近まで延びるように設けられ、
前記第一折り曲げ部及びこの第一折り曲げ部に直交する直線部分を除く部分には、前記母乳パッド本体を衣服に止着するための止着手段が前記バックシート側に設けられた母乳パッド。
【請求項2】
前記母乳パッド本体の外部から視認可能な部位に、前記第一折り曲げ部が前記乳房の上部外側から下部内側にかけて斜めに配置されるように前記母乳パッド本体を装着することを内容とする表示が付された表示部を備えた請求項1記載の母乳パッド。
【請求項3】
前記第一折り曲げ部が間欠的に設けられた請求項1又は2記載の母乳パッド。
【請求項4】
前記第一折り曲げ部が着用者の乳首と当接する部分を除く部分に設けられた請求項3記載の母乳パッド。
【請求項5】
前記第一折り曲げ部における前記吸収体の剛性値が、その周辺部における前記吸収体の剛性値と異なる請求項1から4いずれか記載の母乳パッド。
【請求項6】
前記第一折り曲げ部における前記吸収体の厚みが、その周辺部における前記吸収体の厚みと異なる請求項1から5いずれか記載の母乳パッド。
【請求項7】
前記第一折り曲げ部における前記吸収体の坪量が、その周辺部における前記吸収体の坪量と異なる請求項1から6いずれか記載の母乳パッド。
【請求項8】
前記第一折り曲げ部が加圧成形により形成された請求項1から7いずれか記載の母乳パッド。
【請求項9】
前記第一折り曲げ部が前記吸収体を有さずに形成された請求項1から5いずれか記載の母乳パッド。
【請求項10】
前記バックシートが曲げ反発手段を備えた請求項1から9いずれか記載の母乳パッド。
【請求項11】
前記曲げ反発手段が前記第一折り曲げ部を跨いで備えられた請求項10記載の母乳パッド。
【請求項12】
前記母乳パッド本体の中心線付近には、前記母乳パッド本体の折り曲げの折り軸である第二折り曲げ部が前記中心線に沿って周縁部付近まで延びるように設けられ、
前記第二折り曲げ部は、前記第一折り曲げ部と略直交している請求項1から11いずれか記載の母乳パッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−126763(P2007−126763A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−318429(P2005−318429)
【出願日】平成17年11月1日(2005.11.1)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】