説明

母線の輸送装置

【課題】両側が集電子による導体支持構造のガス絶縁母線の内部導体を保持可能で、容器径縮小化においても作業性を確保した母線の輸送装置を提供する。
【解決手段】タンク2内の内部導体5両端に、中空で作業穴9を有するポスト固定導体4Aと、集電子4B、4Cとからなる端部接続導体4を結合する。ポスト固定導体4Aを絶縁支持体3によりタンク2に固定する。ガス絶縁母線の輸送装置は、逃げ金具6と、押え金具7と、固定用ボルト8とで構成する。逃げ金具6は、作業穴9より挿入でき、端部接続導体4と絶縁支持体3を締結するボルトの頭部が没入する穴部と、固定用ボルト8の貫通穴を有する。押え金具7は、作業穴9より挿入でき、軸方向の位置調整代を兼ねた固定用ボルト8による逃げ金具6と共締め可能な貫通長穴を有する。固定用ボルト8は、逃げ金具6と押え金具7を絶縁支持体3へ固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス絶縁母線の輸送に用いる輸送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガス絶縁母線(以下GIBという)輸送時の内部導体を保持するものとして、例えば特許文献1に示す輸送カバーがある。特許文献1に示すGIBは、タンクフランジ面にあるスペーサにより導体の一端が片持ち状態で取付けられている。導体の他端は、内部に円筒を有する輸送カバーを取付けることで保持される。これにより、内部導体の輸送振動を抑えることができ、導体の受ける機械的ストレスを軽減している。
【0003】
一方、両側が集電子による導体支持構造のGIBの輸送においては、図6及び図7に示すように内部導体と導体支持部に保護材を巻きつけ、半割りの金具2個を用いて内部導体を保持しているものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−317518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の発明は、導体片持ち構造で内部導体の軸方向への移動がない場合は適用することができる。しかし、両側が集電子による導体支持構造のGIBにおいては、輸送時の加速度により内部導体が軸方向へ移動し導体支持構造部と衝突することで衝撃荷重が発生するおそれがある。
【0006】
一方、図6、図7に示す半割りの金具を用いた場合には、内部導体と導体支持部とを固定することで内部導体を保持することが可能であるが、GIBの容器径縮小化により、作業性が悪く取付けが困難である。
【0007】
本発明の目的は、両側が集電子による導体支持構造のGIBの内部導体を保持することが可能な母線の輸送装置を提供することである。また、GIBの容器径縮小化においても作業性を確保した母線の輸送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による母線の輸送装置は、タンク内に内部導体を配置し、前記内部導体の両端に中空で作業穴を有するポスト固定導体と集電子とからなる端部接続導体を結合すると共に、前記ポスト固定導体を絶縁支持体により前記タンクに固定したガス絶縁母線の輸送において用いられる。
【0009】
本発明による母線の輸送装置は、逃げ金具と、押え金具と、固定用ボルトで構成される。この逃げ金具は、上記作業穴より挿入でき、上記端部接続導体と上記絶縁支持体を締結するボルトの頭部が没入する穴部と、上記固定用ボルトのための貫通穴を有する。上記押え金具は、上記作業穴より挿入でき、上記固定用ボルトによる上記逃げ金具と共締め可能な貫通穴を有し、上記押え金具の端部で上記内部導体の両端面を挟持する。上記固定用ボルトは、上記逃げ金具と上記押え金具を上記絶縁支持体へ固定する。
【0010】
好ましくは、上記押え金具の有する貫通穴は軸方向の位置調整代を兼ねた貫通長穴であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の輸送装置によれば、両側が集電子による導体支持構造のGIBの内部導体を保持することが可能となる。また本発明の輸送装置は、タンクフランジ部近傍のポスト固定導体を絶縁支持体に固定するための作業穴部で輸送装置の取付けおよび取外し作業が可能である為、GIBの容器径縮小化においても作業性を確保できる。特に、3相一括形GIBに本発明を適用した場合には、作業性を犠牲にせずにタンク径の縮小化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施例によるGIBの輸送装置の輸送時組立状況を示す概略図である。
【図2】図1の要部拡大断面図である。
【図3】図2の紙面下側から見た本発明の要部拡大断面図である。
【図4】図2に示す逃げ金具6の部品概略図である。図4(a)は逃げ金具6の平面図、図4(b)及び図4(c)は逃げ金具6の側面図である。
【図5】図2に示す押え金具7の部品概略図である。図5(a)は押え金具7の平面図、図5(b)は押え金具7の側面図である。
【図6】従来技術の輸送装置の輸送時組立状況を示す部分拡大断面図である。
【図7】図6のB−B線から見る部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0013】
以下、本発明のガス絶縁母線の輸送装置を図面に基づいて説明する。尚、以下の実施例においては、GIBを3相一括配置としたものを適用しているがGIBが相分離配置の構成であっても本実施例が適用できることは言うまでもない。
【0014】
図1および図2に示すガス絶縁開閉装置のGIB1は、輸送寸法内に区分した円筒状のタンク2内に3相分の内部導体5を配置している。タンク2は、直線状の配管部2Aと両端のフランジ部2Bからなっており、内部導体5は両端に端部接続導体4を結合している。
【0015】
端部接続導体4は、図2に示す如く、ポスト固定導体4Aと、内部導体5と接続する内側集電子4Bと、別の内部導体と接続する外側集電子4Cを有して構成され、タンク2に固定する柱状の絶縁支持体3がポスト固定導体4Aと接続されることによって内部導体5が支持されている。すなわち、内部導体5は、タンク2内の両端の内側集電子4Bに接続するように構成されている。
【0016】
上記のように構成されたGIB1は、輸送可能な寸法に設定されている。尚、両端のフランジ部2Bおよび外側集電子4Cは、それぞれ隣接するタンクのフランジ部および内部導体5に接続される。
【0017】
タンク2、端部接続導体4、内部導体5はそれぞれ金属製であるが絶縁支持体3はエポキシ樹脂等の絶縁物であるので、内部導体5とタンク2間の絶縁が確保される。
【0018】
また、端部接続導体4を構成するポスト固定導体4Aと各集電子4B、4Cは中空導体である。ポスト固定導体4Aは絶縁支持体3との接続作業に用いる作業穴9を有する。この作業穴9は以下で詳述する輸送装置をポスト固定導体4Aに取付けるのに十分な大きさのものである。
【0019】
本実施例の輸送装置は、逃げ金具6と押え金具7と輸送装置取付け用ボルト8から構成され、図1に示すように内部導体5をその両端から挟持し内部導体5の移動を抑制する。
【0020】
逃げ金具6は、押え金具7を輸送装置取付け用ボルト8によって固定する際の固定用の座として使用するものである。ポスト固定導体4Aは絶縁支持体3に4本のボルトで固定されており、押え金具7は、そのうちの1本のボルトで絶縁支持体3に固定されるのであるが、3本のボルト(ポスト固定導体取付け用ボルト4D)の頭がポスト固定導体4Aから突出した状態であると、押え金具7をポスト固定導体4Aに固定するのが難しくなる。よって、ポスト固定導体取付け用ボルト4Dの頭部が入る穴部をもった逃げ金具6を、押え金具7とポスト固定導体4Aの間に介挿する。
【0021】
本実施例においては、図4に示すように穴部6Bを3つ設けている。この穴部6Bは、穴の代わりにポスト固定導体取付け用ボルト4Dの頭部が収まる凹部もしくは切欠きとしても良い。更に、作業性の向上を図る為、逃げ金具6は、つかみ部6Cを有することが好ましい。なお、逃げ金具6は、作業用穴9からポスト固定導体内部4Aへ入る大きさであればその形状は特に限定されない。
【0022】
押え金具7の形状は、例えば図5に示すように湾曲しているものが好ましい。また、押え金具7は、輸送装置取付け用ボルト8が貫通する貫通長穴7Aを備えるのが好ましい。この貫通長穴7Aは、軸方向の取付け位置が調整できるような形状とする。更に、押え金具7は、作業性の向上を図る為、つかみ部7Cを有することが好ましい。押え金具7の断面形状は円柱、角柱であっても、板状としてもよく、作業穴9から入る大きさであればよい。
【0023】
また、押え金具7の片端には、内部導体端面部5Aを傷つけない為のラバーもしくはプラスチック製の保護材7Bを配置することが好ましい。押え金具7は、その端部7D(押え金具7が保護材7Bを有する場合には保護材7B)により、内部導体5を両端から内部導体端面部5Aに当接し、挟持できる長さを有する。
【0024】
次にGIB1の輸送時において、本発明の輸送装置を作業穴9から端部接続導体4内部に取付ける手順について説明する。前提として、ポスト固定導体4Aは4本のポスト固定導体取付け用ボルト4Dにより絶縁支持体3に取付けられているものとする。
【0025】
まず、4本のポスト固定導体取付け用ボルト4Dのうち内部導体5側に位置した1本を取外す。次に、図4に示す逃げ金具6の穴部6Bを残った3本のポスト固定導体取付け用ボルト4Dの頭部に合わせ配置する。
【0026】
次に、予め先端に保護材7Bを取付けた押え金具7を端部接続導体4の作業穴9から保護材7Bが内部導体端面部5Aに当接するように挿入する。この状態で、押え金具7と内部導体5が同軸上に配されるように位置を調整し、逃げ金具6と押え金具7を輸送装置取付け用ボルト8により、取外した輸送装置取付けボルト用ねじ穴6Aに固定する。
【0027】
次に、内部導体5の反対側に位置する端部接続導体4にも前述と同様にして押え金具7を取付ける。このようにして、内部導体5の両端部が押え金具7で拘束されることで、内部導体5は軸方向に動かなくなる。
【0028】
以上の手順により、輸送装置を端部接続導体4へ取付けたGIB1は、フランジ2Bを閉鎖して現地へ輸送される。
【0029】
この際、GIB1の輸送中の加速度によって内部導体5が移動しない為、衝撃荷重の発生もなく、機械的ストレスを軽減でき、製品を壊すことなく安全に現地へ輸送できる。
【0030】
また、従来技術である半割りの金具は、内側集電子側の端部接続導体と内部導体を固定するものであるため、容器径の小さなGIBでは取付け作業が困難であるのに対し、本発明の輸送装置は、タンクフランジ部2B近傍のポスト固定導体4Aを絶縁支持体3に固定するための作業穴9を用いて輸送装置の取付けおよび取外し作業が可能である為、容器径の小さなGIBにおいても作業性を確保できる。
【符号の説明】
【0031】
1 ガス絶縁母線(GIB)
2 タンク
3 絶縁支持体
4 端部接続導体
4A ポスト固定導体
4B 内側集電子
4C 外側集電子
4D ポスト固定導体取付け用ボルト
5 内部導体
5A 内部導体端面部
6 逃げ金具
6A 輸送装置取付けボルト用ねじ穴
6B 穴部
6C つかみ部
7 押え金具
7A 貫通長穴
7B 保護材
7C つかみ部
7D 端部
8 輸送装置取付け用ボルト
9 作業穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンク内に内部導体を配置し、前記内部導体の両端に中空で作業穴を有するポスト固定導体と集電子とからなる端部接続導体を結合すると共に、前記ポスト固定導体を絶縁支持体により前記タンクに固定したガス絶縁母線の輸送装置において、逃げ金具と、押え金具と、固定用ボルトの構成からなり、前記逃げ金具は、前記作業穴より挿入でき、前記端部接続導体と前記絶縁支持体を締結するボルトの頭部が没入する穴部と、前記固定用ボルトのための貫通穴を有し、前記押え金具は、前記作業穴より挿入でき、前記固定用ボルトによる前記逃げ金具と共締め可能な貫通穴を有し、前記押え金具の端部で前記内部導体の両端面を挟持し、前記固定用ボルトは、前記逃げ金具と前記押え金具を前記絶縁支持体へ固定することを特徴とするガス絶縁母線の輸送装置。
【請求項2】
請求項1において、前記押え金具の有する貫通穴は軸方向の位置調整代を兼ねた貫通長穴であることを特徴とするガス絶縁母線の輸送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−27083(P2013−27083A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157516(P2011−157516)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】