説明

毒性および病原体が媒介する疾患を治療しかつ予防するための新規イムノアドヘシン

【課題】毒素および病原体に対して活性を有するイムノアドヘシンを、炭疽および風邪などの病原体を抑制するイムノアドヘシンに関する特定の例を挙げて記載する。
【解決手段】イムノアドヘシン-受容体リガンド原理を用いて、例えば、天然および合成代謝性毒を含む、いずれの病原体、毒物または毒素も事実上、抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関係特許出願
本出願は、「Novel Immunoadhesin For Treating and Preventing Toxicity and Pathogen-Mediated Disease」の名称で2002年10月25日に出願された国際特許出願第PCT/US02/34197号であって、「Novel Immunoadhesin For Treating and Preventing Viral and Bacterial Diseases」の名称で2001年10月26日に出願されたLarrickおよびWycoffの米国特許出願番号10/047,542号に対して優先権を主張する国際出願の日本における国内段階の出願である。これらの特許出願はそれぞれ、全ての図(figures)、図面(drawings)、および配列表を含んでそのまま、本明細書に参照により組み入れられる。
【0002】
連邦後援研究または開発に関する表明
連邦研究支援を、SBIR第I期認可(R43 AI43122)およびSBIR第II期認可(2R44 AI43122-02)の形で受けた。
【0003】
発明の分野
本発明は、イムノアドヘシン、イムノアドヘシンの植物からの生産、ならびにイムノアドヘシンの炭疽および風邪(common cols)などの毒性および病原体が媒介する病気の治療および予防における使用に関する。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
風邪は一般に比較的軽い疾患である。しかし、通常、風邪から中耳炎、副鼻腔炎および喘息悪化などの重要な合併症が起こる。ヒト・ライノウイルス(HRV)は全成人風邪の50%および小児風邪の25%までの病因である(BellaおよびRossmann, J Struct Biol. 128:69-74, 1999、ならびにSperberおよびHayden, Antimicrob Agents Chemother. 32:409-19, 1988)。社会的費用は毎年、数10億ドルに達する。これらの小さい、無エンベロープRNAウイルスはピコルナウイルスのサブグループに相当する(Rueckert, 「Virology(ウイルス学)」, pp. 507-548, Fieldsら編, Raven Press, Ltd. New York, 1990)。ライノウイルスのX線結晶学は、それぞれウイルスコートタンパク質VP1、VP2、およびVP3からなる60コピーから構築された正二十面体対称をもつ直径300Å(1Å=0.1nm)のカプシドの存在を確認している(Rossmann, Nature 317:145-153, 1985)。HRVの表面くぼみ、または「キャニオン(canyon)」が受容体結合部位として示唆された(Colonnoら, Proc Natl Acad Sci USA. 85:5449-5453, 1985;Rossmannら, Nature 317:145-153, 1985)。特性決定を行った102例のHRV血清型のうち、91例(主グループとして知られる)は、それらの受容体として細胞間接着分子-1(ICAM-1)として知られる細胞表面糖タンパク質を共有し(Greveら, Cell 56:839-847, 1989;Stauntonら, Cell 56:849-853, 1989);その結合部位はN末端ドメイン1内に位置する(Greveら, J Virol. 65:6015-6023, 1991;Stauntonら, Cell 61:243-254, 1990)。
【0005】
ICAM-1は5つの細胞外ドメイン、1つの疎水性膜貫通ドメイン、および1つの短い細胞質内ドメインをもつ膜タンパク質である。ICAM-1は免疫および炎症性応答に重要である多数の細胞に発現され、他の細胞においても誘導しうる(Casasnovasら, Proc Natl Acad Sci USA. 95:4134-9, 1998)。ICAM-1は、白血球インテグリンLFA-1およびMac-1に対するリガンドとして機能する(Springer, Cell. 76:301-14, 1994;Stauntonら, Cell 61:243-254, 1990)。細胞表面において、ICAM-1は膜貫通ドメインの結合により主に2量体となる(Millerら, J Exp Med. 182:1231-41, 1995;Reillyら, J Immunol. 155:529-32, 1995)。
【0006】
組換え体であるICAM-1の可溶型(sICAM-1)は5つの細胞外ドメインから構成され、in vitroでヒト細胞のライノウイルス感染を遮断するのに有効であることが示された(Greveら, J Virol. 65:6015-6023, 1991;Marlinら, Nature. 344:70-2, 1990)。ある範囲の研究室株および圃場単離体に対するsICAM-1活性の評価は、HRVの全主要株がsICAM-1に感受性を有することを示した。ICAMを受容体として使わない小数株は、sICAM-1の影響を受けなかった(Crumpら, Antiviral Chem Chemother. 4:323-327, 1993;Ohlinら, Antimicrob Agents Chemother. 38:1413-5, 1994)。
【0007】
可溶性ICAM-1がin vitroで示す抗ウイルス活性は、1以上の機構に媒介されるようである。これらの機構としては、細胞表面ICAM-1との結合部位の競合、ウイルス進入または脱殻の妨害、ならびにウイルスRNAの成熟前放出および空カプシドの形成による直接不活性化が挙げられる(Arrudaら, Antimicrob Agents Chemother. 36:1186-1191, 1992;Greveら, JVirol. 65:6015-6023, 1991;Marlinら, Nature 344:70-2, 1990;Martinら, J Virol. 67:3561-8, 1993)。
【0008】
HRVの宿主範囲は霊長類動物に限定される。最近の研究は、可溶性ICAM-1はチンパンジーにおけるライノウイルス感染を予防するのに有効であることを示した(Huguenelら, Am J Respir Crit Care Med. 155:1206-10, 1997)。チンパンジーは臨床症候群を示さないが、感染はセロコンバージョンおよびウイルス出芽(virus shedding)を測定することにより実証した。鼻腔内スプレーとしての可溶性ICAM-1の10mgの単一用量は、HRVと同時投与するかまたは同ウイルス投与の10分前に投与すると、HRV-16による感染を予防するのに有効であった。
【0009】
可溶性ICAM-1を用いたヒト臨床試験は、これが実験HRV風邪の重篤度を軽減することを示した(Turnerら, JAMA 281:1797-804, 1999)。この試験においては、196人の被験者全員に可溶性ICAM-1またはプラセボを様々な製剤で与えた。可溶性ICAM-1またはプラセボの投与を、複数の被験者にHRV39接種前7時間から開始し、他の被験者にウイルス接種後12時間から開始した。投薬は、鼻腔内溶液または粉剤のいずれかとして投与し、6つの毎日用量で7日間(1日当たり全4.4mg)与えた。この研究において、可溶性ICAM-1はウイルス単離またはセロコンバージョンで測定した感染を予防しなかった(プラセボ治療92%に対して可溶性ICAM-1治療85%の感染率)。しかし、可溶性ICAM-1は病気のあらゆる基準に影響を与えた。全症候群スコアは45%だけ低下し、臨床風邪に罹った被験者の割合は23%低下し、そして鼻粘液重量は56%低下した。粉剤もしくは溶液製剤使用の間に、または接種前と接種後グループの間に有意差はなかった。可溶性ICAM-1による治療は鼻粘膜を通しての吸収に有害な影響または確証を与えなかった。また、抗HRV型特異的抗体の発生の抑制もなかった。
【0010】
考察のように、ICAM-1は細胞表面において2量体である。Martinら(J Virol. 67:3561-8, (1993))は、多量体可溶性ICAMによるHRVとの多価結合が、アビディティと呼ばれる有効親和性をさらに高くし、それによりウイルスの脱殻を容易にしうることを、最初に提案した。彼らは多価のICAM-1/免疫グロブリン分子を構築し、これらがHRVを中和するのに一価の可溶性ICAM-1より有効であり、従って治療上の有用性を増加しうることを主張した。これらのICAM-1/免疫グロブリン分子は、ICAM-1アミノ末端ドメイン1および2をIgA1、IgMおよびIgG1の重鎖のヒンジおよび定常域に融合したもの(それぞれ、IC1-2D/IgA、IC1-2D/IgMおよびIC1-2D/IgG)である。さらに5つの細胞外ドメインをIgA1に融合した(IC1-5D/IgA)。これらのICAM-1/免疫グロブリン分子を、2つおよび5つのドメインを有するICAM-1の可溶型(それぞれ、sIC1-2DおよびsIC1-5D)と、HRV結合、感染性およびコンフォメーションのアッセイについて比較した。ICAM-1/IgA免疫グロブリン(IC1-5D/IgA)は200倍、ICAM-1/IgM免疫グロブリン(IC1-2D/IgM)およびICAM-1/IgG免疫グロブリン分子(IC1-2D/IgG)は25および10倍、可溶性ICAM-1より有効であった。これらの分子は、ライノウイルスの細胞との結合を抑制しかつウイルスカプシドのコンフォメーションを破壊するのに極めて有効であった。ICAM-1/IgA免疫グロブリン分子はナノモル濃度範囲で有効であった。IC1-2D/IgAとIC1-2D/IgGの比較は、使用するIg定常域のクラスが効能に大きな影響を与えることを示した。
【0011】
次の研究は、可溶性ICAM-1とIC1-5D/IgAの抑制活性を、主なHRV血清型9種および可溶性ICAM-1中度耐性について選択したHRV-39変異体1種に対して比較したものである(Crumpら, Antimicrob Agents Chemother. 38:1425-7, 1993)。IC1-5D/IgAは、標準の血清型に対して単量体可溶性ICAM-1より重量基準で50〜143倍かつモル基準で60〜170倍強力であった。HRV-39変異体は可溶性ICAM-1に対して野生型より38倍の耐性があり、IC1-5D/IgAに対してはやっと5倍の耐性があった。これは多価分子による抑制からのウイルス逃避は、単量体の可溶性受容体による抑制からのウイルス逃避より低い頻度で起こりうると予想する仮説(Martinら, J Virol. 67:3561-8, 1993)に一致する。ウイルス不活性化を測定するために設計したアッセイは、HRV-39およびHRV-13が可溶性ICAM-1によっては有意に直接不活性化されない(<0.5 log10感染性の低下)ことを示した。しかし、IC1-5D/IgAとのインキュベーションは、これらの同じウイルスの感染性をほぼ1.0 log10だけ低下した(Crumpら, Antimicrob Agents Chemother. 38:1425-7, 1994)。Martinら(J Virol. 67:3561-8, 1993)による結果は、多量体の結合価(valence)が高いほど分子の有効性が高いことを示唆する。IC1-2/IgMの2量体と十量体型をショ糖勾配沈降により分離した。十量体型は、HRVのHela細胞との結合ブロッキングにおいて2量体型より5倍有効であった。
【0012】
今まで記載されているICAM-1/免疫グロブリン分子にはいくつかの欠点があり、それは手間のかかる生産技術とこれらの生産方法に関連する高いコストである。さらに、先に記載したICAM-1/免疫グロブリン分子は、その分子がライノウイルスを不活性化しなければならない苛酷な環境において多量体としての安定性が限られることである。
【0013】
本出願者らの先の共有出願(commonly owned application)、国際特許出願第PCT/US01/13932号は、ウイルス感染症および疾患、例えば、風邪の治療または予防に関するキメライムノアドヘシン分子の構築、精製、および使用を、実施例および請求項とともに記載した。毒性および他の病原体が媒介する疾患および病気、例えば、炭疽などの病細菌感染症および病気を治療および予防するための類似の薬剤が必要とされている。2001年9月11日以後のバイオテロリズム恐怖はこの必要性を強調するものである。
【0014】
炭疽の原因菌である炭疽菌(Bacillus anthracis)が分泌する3部からなる(tripartite)毒素は、細菌が免疫系から逃れるのを助けかつ全身感染中に宿主を死に至らしめる。該毒素の2成分は、哺乳類動物細胞の細胞質ゾル内の基質を酵素作用により改変する:浮腫因子(OF)は食作用を阻害することを含む様々な機構を通して宿主防御を損なうアデニル酸シクラーゼであり;致死因子(LF)は、マイトジェン活性化プロテインキナーゼキナーゼを切断しかつマクロファージの溶菌を起こす亜鉛依存性プロテアーゼである。第3成分である防御抗原(PA)は細胞受容体と結合して酵素成分の細胞質ゾルへの送達を媒介する。PAは細胞表面受容体と結合した後、フューリン様プロテアーゼにより2断片に切断される。アミノ末端断片PA20は媒質中に解離し、これによりカルボキシ末端断片PA63は7量化してLFおよびOFと結合することが可能になる。得られる[PA63]7のOFおよび/またはLFとの複合体は受容体が媒介するエンドサイトーシスにより細胞中に取り込まれて、低pHエンドソームコンパートメントへ移動する。そこで酸性環境は[PA63]7のコンフォメーション変化を誘導し、[PA63]7が膜中に挿入して細孔を形成することを可能にする。この変換は、結合したOFおよびLFのエンドソーム膜を横切る細胞質ゾルへの転移を促進する。
【0015】
本発明のイムノアドヘシンは、いずれの病原因子または毒とも戦うように仕立てることができて、当技術分野で記載されているものを上回る顕著な利点を有する。植物に発現される本発明のイムノアドヘシンは2量体よりもむしろ4量体でありうる。多重結合部位を有するイムノアドヘシンは病原体/毒物に対してより高い有効親和性を有するので、それによりイムノアドヘシンの有効性を増加する。さらに、分泌成分および免疫グロブリンJ鎖の本発明のイムノアドヘシンとの結合は粘膜環境におけるイムノアドヘシンの安定性を増加する(Corthesy, Biochem Soc Trans. 25:471-475, 1997(非特許文献1))。分泌成分と結合した分泌性IgA(SIgA)は、乳および初乳を含む粘膜分泌物中に通常見出される抗体アイソタイプである。他の抗体アイソタイプと異なり、SIgAはごくわずかなタンパク分解しか受けずに腸を通過することができる。SIgAはまた室温にて粗植物調製物中で非常に安定である。分泌成分の機能が粘膜の苛酷な環境から抗体を保護するようである(Paul, 「Fundamental Immunology(基礎免疫学)」, Raven Press, NY, Third Edition, pp.303-304, 1993(非特許文献2))。さらに、本発明のイムノアドヘシンは動物細胞培養においてよりも植物において生産するほうが際立って安価であり、かつ植物は動物ウイルスを宿さないことがわかっているのでヒト使用に対して植物中の生産はより安全でありうる。
【0016】
以上考察した文献ならびに以下の文献は本発明を理解する上で有用であるが、本発明に先行する技術であると認めるものではない:
Baumlein H, Wobus U,Pustell J, Kafatos FC (1986) 「The legumin gene family:structureof a B type gene of Vicia faba and a possible legumin gene specific regulatory element(レグミン遺伝子ファミリー:ソラマメ(Vicia faba)B型遺伝子の構造および可能なレグミン遺伝子特異的調節エレメント)」, Nucl. Acids Res. 14:2707-2713;
Becker D, Kemper E, Schell J, Masterson R (1992) 「New plant binary vectors with selectable markers located proximal to the left T-DNA border(左T-DNA境界の近位に位置する選択マーカーをもつ新しい植物2成分ベクター)」, Plant Mol. Biol. 20:1195-1197;
Bradley KA, Mogridge J, Mourez M, Collier RJ, Young JAT (2001) 「Identification of the cellular receptor for anthrax toxin(炭疽毒素に対する細胞受容体の同定)」, Nature 414: 出版前;
Chintalacharuvu KR, Raines M, Morrison SL (1994) 「Divergence of human alpha-chain constant region gene sequences. A novel recombinant alpha 2 gene(ヒトα鎖定常域遺伝子配列の分岐:新規組換えα2遺伝子)」, Journal of Immunology 152:5299-5304;
Crumpら, (1994) 「Comparative Antirhinoviral Activities of Soluble Intercellular Adhesion Molecule-1(sICAM-1) and Chimeric ICAM-l Immunoglobulin A Molecule. Antimicrobial Agents and Chemotherapy(可溶性細胞間接着分子-1(sICAM-1)とキメラICAM-1免疫グロブリンA分子の比較抗ライノウイルス活性:抗菌薬および化学療法)」, 38:6, p. 1425-1427;
Depicker A, Stachel S, Dhaese P, Zambryski P, Goodman HM (1982) 「Nopaline synthase:transcript mapping and DNA sequence(ノパリン合成酵素:転写物マッピングおよびDNA配列)」, J. Mol. Appl. Genet. 1:561-573;
Gielen J, De Beuckeleer M, Seurinck J, Deboeck F, De Greve H, Lemmers M, Van Montagu M, Schell J (1984) 「The complete nucleotide sequence of the TL-DNA of the Agrobacterium tumefaciens plasmid pTiAch5(アグロバクテリア・ツメファシエンスのプラスミドpTiAch5のTL-DNAの完全ヌクレオチド配列)」, Embo J 3:835-46;
Greveら, (1991) EP 0468257, 「Multimeric form of human rhinovirus receptor protein(ヒト・ライノウイルス受容体タンパク質の多量体型)」;
Horsch RB, Fry JE, Hoffmann NL, Eichholtz D, Rogers SG, Fraley RT (1985) 「A simple and general method for transferring genes into plants(遺伝子を植物中に導入するための簡単かつ一般的方法)」, Science 227:1229-1231;
IngelbrechtI, Breyne P, Vancompernolle K, Jacobs A, Van Montagu M, Depicker A (1991) 「Transcriptional interference in transgenic plants(トランスジェニック植物中の転写妨害)」, Gene 109:239-242;
MacDonald MH, Mogen BD, Hunt AG (1991) 「Characterization of the polyadenylation signal from the T-DNA-encoded octopine synthase gene(オクトピン合成酵素遺伝子をコードしたT-DNAからポリアデニル化シグナルの特性決定)」, Nucleic Acids Res 19:5575-81;
Martinら (1993), 「Efficient Neutralization and Disruption of Rhinoviurs by Chimeric ICAM-1/Immunoglobulin Molecules(キメラICAM-1/免疫グロブリン分子によるライノウイルスの効率的な中和化および破壊)」, J. of Virology, 67:6, p. 3561-3568;
Mogen BD, MacDonald MH, Leggewie G, Hunt AG (1992) 「Several distinct types of sequence elements are required for efficient mRNA 3'end formation in a pea rbcS gene(エンドウマメrbcS遺伝子における効率的なmRNA 3'末端形成には複数の異なる型の配列エレメントが必要である)」, Mol Cell Biol 12:5406-14;
Ni M, Cui D, Einstein J, Narasimhulu S, Vergara CE, Gelvin SB (1995) 「Strength and tissue specificity of chimeric promoters derived from the octopine and mannopine synthase genes(オクトピンおよびマンノピン合成酵素遺伝子由来のキメラプロモーターの強度および組織特異性)」, Plant Journal 7:661-676;
Sawant SV, Singh PK, Gupta SK, Madnala R, Tuli R (1999) 「Conserved nucleotide sequences in highly expressed genes in plants(植物において高度に発現される遺伝子中の保存ヌクレオチド配列)」, Journal of Genetics 78:123-131;
St Croix B, Rago C, Velculescu V, Traverso G, Romans KE, Montgomery E, Lal A, RIgG1ns GJ, Lengauer C, Vogelstein B, Kinzler KW (2000) 「Genes expressed in human tumor endothelium(ヒト腫瘍内皮に発現される遺伝子)」, Science 289:1197-202;
Yamamoto YY, Tsuji H, Obokata J (1995) 「5'-leader of a photosystem I gene in Nicotiana sylvestris,psaDb, contains a translational enhancer(ニコチアナ・シルベストリスの光系I遺伝子の5'-リーダー,psaDbは翻訳エンハンサーを含有する)」, J Biol Chem 270:12466-70。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Corthesy, Biochem Soc Trans. 25:471-475, 1997
【非特許文献2】Paul, 「Fundamental Immunology(基礎免疫学)」, Raven Press, NY, Third Edition, pp.303-304, 1993
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、免疫グロブリン重鎖の少なくとも一部分と連結した毒素受容体タンパク質を有するキメラ分子を含んでなるイムノアドヘシンであって、J鎖と分泌成分が上記キメラ分子と結合(associate)している上記イムノアドヘシンを意図する。本明細書に使われる毒素受容体は、受容体分子または受容体分子の一部であって、少なくともその一部分は、毒物、例えば毒、またはウイルス、細菌、真菌、寄生虫などの病原生物(またはかかる病原生物が産生する分子)その他が、発病過程の一部として付着する生物宿主生物の細胞の表面上または内部に見出されるタンパク質またはペプチドである。好ましい実施形態においては、毒素受容体は受容体分子の細胞外ドメインでありうる。毒素受容体はグリコシル化されていてもグリコシル化されていなくてもよい。受容体タンパク質またはその部分に対する改変および修飾も意図するが、かかる修飾が毒素、毒物、病原体、または病原成分と結合する受容体の能力を破壊しないことを条件とする。
【0019】
受容体タンパク質がウイルス受容体タンパク質である複数の実施形態においては、本発明のイムノアドヘシンは、免疫グロブリン重鎖と連結したライノウイルス受容体タンパク質ICAM-1の細胞外ドメイン1、2、3、4および5のいずれかの組合わせからできたライノウイルス受容体タンパク質を含むものである。また本発明は、免疫グロブリンがIgA、IgA1、IgA2、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgD、IgEまたは異なる免疫グロブリンアイソタイプ由来のドメインまたはセグメントから成るキメラ免疫グロブリン重鎖である本発明のイムノアドヘシンも意図する。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の他の好ましい実施形態においては、イムノアドヘシンは、J鎖および分泌成分と結合した多重キメラICAM-1分子を含んでなる。結合価(valency)が増加すると、ライノウイルスに対してより高い有効親和性を生じ、それによりイムノアドヘシンの有効性を増加する。
【0021】
本発明の好ましい実施形態においては、本発明のイムノアドヘシンを作るために用いるタンパク質は全てヒトタンパク質である。植物または植物細胞中の生産の他に、本発明は哺乳類動物細胞、毛状根培養物、組織培養の植物細胞、および植物、脊椎動物、または無脊椎動物由来の異種細胞に発現されるイムノアドヘシンを意図する。
【0022】
本発明の好ましい実施形態においては、単子葉類植物および双子葉類植物を含む植物中に、イムノアドヘシンを植物ゲノムの一部として発現させる。植物における発現は、培養細胞における発現と対照して、イムノアドヘシンを生産するコストの著しい低減を可能にする。
【0023】
本発明は植物特異的グリコシル化を有するイムノアドヘシンを意図する。アミノ酸配列内に、グリコシル化シグナルのアスパラギン-X-セリン/トレオニン(ここで、Xはいずれのアミノ酸残基であってもよい)を有するポリペプチドをコードする遺伝子が植物細胞に発現されると、その配列のアスパラギン残基と連結したオリゴ糖類を経由してグリコシル化される。グリコシル化シグナルとして機能するポリペプチド配列の一般的総説については、Marshall, Ann. Rev. Biochem., 41:673 (1972)、およびMarshall, Biochem. Soc. Symp., 40:17 (1974)を参照。これらのシグナルは、哺乳類動物および植物細胞の両方で認識される。それらの成熟が終わると、植物または植物細胞中に発現したタンパク質は、哺乳類動物細胞および昆虫細胞を含む他の型の細胞で発現されるタンパク質が有するのとは異なるグリコシル化パターンを有する。植物特異的グリコシル化の特性を決定しかつそれを他細胞型におけるグリコシル化と比較する詳細な研究が行われていて、例えば、Cabanes-Macheteauら, Glycobiology 9 (4):365-372 (1999)、およびAltmann, Glycoconjugate J. 14:643-646 (1997)記載の研究がある。これらのグループおよびその他の研究は、植物特異的グリコシル化はマンノースとβ(1,2)連結をしたキシロースを有するグリカンを作製するが、哺乳類動物および昆虫細胞におけるグリコシル化の結果としてキシロースはマンノースとβ(1,2)連結されないことを示している。植物特異的グリコシル化は近位のGlcNAcとα(1,3)連結したフコースを与えるが、哺乳類動物細胞におけるグリコシル化は近位のGlcNAcとα(1,6)連結したフコースを与える。さらに、植物特異的グリコシル化はタンパク質グリカンの末端にシアル酸を付加しないが、哺乳類動物細胞におけるグリコシル化はシアル酸を付加する。
【0024】
他の実施形態においては、本発明のイムノアドヘシンは、植物材料ならびにJ鎖および分泌成分と結合したイムノアドヘシンを含んでなる組成物の一部分である。存在する植物材料は植物細胞壁、植物小器官、植物細胞質、無傷の植物細胞、生きた植物細胞などでありうる。存在してもよい具体的な植物材料または植物巨大分子としては、二リン酸リブロースカルボキシラーゼ、集光性複合体(light harvesting complex)、色素、二次代謝物またはクロロフィルが挙げられる。本発明の組成物は水を除くマス(mass)基準で0.001%〜99.9%のイムノアドヘシン濃度を有しうる。他の実施形態においては、イムノアドヘシンは水を除くマス基準で0.01%〜99%の濃度で存在する。他の実施形態においては、本発明の組成物は水を除くマス基準で0.01%〜99%の濃度で存在する植物材料または植物巨大分子を有する。
【0025】
本発明はまた、被験者のヒト・ライノウイルス感染を治療または予防する方法であって、該ウイルスを本発明のイムノアドヘシンに接触させ、そこでイムノアドヘシンがヒト・ライノウイルスと結合して感染性を低下させることを含んでなる手法により、該ウイルスによる感染に感受性をもつ宿主細胞のヒト・ライノウイルスによる感染を軽減するかまたはヒト・ライノウイルスによる風邪の発病または伝播を軽減することを含む上記方法も意図する。イムノアドヘシンは、結合部位に対して細胞表面ICAM-1との競合、ウイルス進入もしくは脱殻の妨害、ならびに/またはウイルスRNAの未成熟な放出および空カプシドの形成による直接不活性化により、感染に媒介することができる(Arruda,ら, Antimicrob. Agents Chemother. 36:1186-1191, 1992;Greve,ら, J. Virol. 65:6015-6023, 1991;Martinら, Nature 344:70-2, 1990;Martin,ら, J. Virol. 67:3561-8, 1993)。他の実施形態においては、本発明のイムノアドヘシンの有効量を被験者の鼻腔内に投与し、そこでそのイムノアドヘシンがヒト・ライノウイルス感染性を低下させることを含んでなる方法により、被験者のヒト・ライノウイルス感染を治療する。
【0026】
本発明の他の態様は、1以上の細菌に対して活性を有するイムノアドヘシン、組成物およびその使用の方法を意図する。かかる態様においては、イムノアドヘシンは、目的の細菌、例えば炭疽菌(Bacillus anthracis)、またはその病原性成分、例えば保護抗原(PA)と結合する受容体タンパク質を含有する。炭疽病を治療または予防するための複数の好ましい実施形態においては、その受容体タンパク質は炭疽毒素受容体タンパク質またはその一部分である。その一部分は細胞外ドメインまたは該ドメインの一部分であってもよい。さらなるまたは代わりの実施形態は、上に考察したICAMイムノアドヘシンに対して既に記載した実施形態を追跡することができる。例えば、上に記載した免疫グロブリン重鎖、J鎖、および分泌成分の少なくとも一部分は、複数の好ましい実施形態においても存在する。
【0027】
他の異なる態様においては、本発明は、毒素または病原体(例えば、炭疽菌(Bacillus anthracis)の保護抗原(PA))の上記毒素または病原体に対して感受性のある宿主細胞との結合を低下させるかまたは防止する方法であって、上記毒素または病原体を、それと結合するイムノアドヘシンと接触させることにより毒素または病原体をおびき出しかつその病理学的影響をマスキングおよび/または回復することによる、上記方法を特徴とする。他の態様はこの概念に基づく死亡率および罹患率を低下させるかまたは防止する方法を特徴とする。
【0028】
毒に関しては、本発明はまた、イムノアドヘシンと連結した毒受容体またはその部分を含んでなる解毒薬も特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
炭疽および風邪を、本発明の様々な態様における2つの標的として挙げたが、イムノアドヘシンに関する本発明は、一般的に病原体がその病原または毒性を及ぼすために必要とするいずれかの病原体または毒物の成分と結合することができるいずれの公知の受容体タンパク質またはその部分を利用してもよい。毒物は、自然病原体に加えて、限定されるものでないが、細胞、組織、器官、または生物に有害な影響を与えうる毒液、発癌物質、変異誘発物質、または他の代謝阻害剤もしくは促進剤を含む。従って、本明細書に記載の原理は、いずれの型の毒性または病原体が媒介する疾患またはそれにより起こる症候群を予防、治療、回復または調節するためにも利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】ヒトICAM-1の最初の5つのドメインおよびヒトIgA2m(2)のFc域を含有するキメラICAM-1分子をコードするDNAを融合するのに用いたベクター、pSSPHuA2[配列番号9、48]を図解する。このベクターはシグナルペプチドの発現を駆動するSuperMasプロモーターおよびヒトIgA2m(2)重鎖の定常域を含有する。ICAM-1ドメイン1〜5をコードする配列は、シグナルペプチドとCα1ドメインの間に挿入するために好都合な制限酵素切断部位(5'SpeIおよび3'SpeI)を含有するようにPCRにより増幅した。ER保持シグナル(RSEKDEL)[配列番号5]をコードするDNAを、構築物の発現レベルを向上する目的で重鎖の3'末端に添付した。
【図2】キメラICAM分子を図解する。図2Aは、キメラICAM-1分子を産生するDNA発現カセットを示す。図2Bは、シグナルペプチド切断後の、融合タンパク質の成熟型のアミノ酸配列[配列番号8]を示す。クローニング操作により誘導したアミノ酸は、ICAM-1の5つの細胞外ドメインとIgA2m(2)重鎖のCα1-Cα3ドメインの間の接合部に下線を引いてマークした。太字のN'は15個の潜在的グリコシル化部位を示す。
【図3】独立して形質転換したタバコカルスにおけるイムノアドヘシンの発現を図解する。図3Aは非還元SDS-ポリアクリルアミドゲルのイムノブロットを示し、異なる形質転換タバコカルス(C)および抽出水(Aq)を含有するサンプルを泳動してヒトICAMの存在をプローブしたものである。分子量マーカーが示され、参照標準(R)はヒトICAM(〜75kD)とヒトSigA(>>250kD)の混合物(それぞれ〜75ng)であった。図3BはカルスRhi l07-11から部分精製したイムノアドヘシンの様々な画分を含有する非還元SDA-ポリアクリルアミドゲルのイムノブロットを示す。分析した精製画分は、ジュース(J)、G-100画分(G)、無菌濾過したG-100画分(SG)、ならびにヒトSigA(75ng)およびヒトICAM-1(75ng)の参照標準混合物(RS)であった。 ブロットを、ヒトICAM(〜ICAM)、ヒトIgA重鎖(〜α)、ヒト分泌成分(〜SC)およびヒトJ鎖(-J)に対する抗体を用いてプローブした。二次酵素結合抗体を必要により使用し、免疫陽性バンドをアルカリホスファターゼを用いて標識した。 独立して形質転換したタバコカルスにおけるICAM-1-SlgAの発現。図3A:様々なカルス(C)およびそれらからの水抽出物(Aq)の非還元性SDS-ポリアクリルアミドゲルの免疫ブロットであり、ヒトICAMの存在についてプローブした。MWマーカーを示しかつ参照標準(R)はヒトICAM(〜75kD)およびヒトSlgA(>>250kD)の混合物(それぞれ〜75ng)であった。植物体の溶解度から抽出は容易に実施しうることが保証されかつシグナルの類似性から発現に再現性があると考えられた。図3B:Rhi107-11由来の部分精製した植物体の様々な画分を含有する非還元性SDS-ポリアクリルアミドゲルの免疫ブロット。J=ジュース、G=G-100画分、SG=無菌濾過したG-100画分(CPEアッセイに使用)、およびRS=ヒトSigA(75ng)およびヒトICAM-1(75ng)の参照標準混合物。ブロットは、ヒトICAM(〜ICAM)、ヒトIgA重鎖(〜α)、ヒト分泌成分(〜SC)およびヒトJ鎖(-J)に対する抗体を用いてプローブした。必要により二次酵素結合抗体を使用し、免疫陽性バンドをアルカリホスファターゼを用いて標識した。免疫ブロットの特異性はさらに、非発現カルス抽出物中の免疫陽性バンドの検出不全により実証した(データは示してない)。グリコシル化してない2量体化したキメラICAM-1分子の予測MWは173,318であり;この型は、ICAM-1および重鎖に対して免疫陽性であるので、恐らく250kDマーカーの直ぐ下の移動バンドに存在すると思われる。このバンドはSC(全予測MWは〜248kD)に対しても免疫陽性であるが、J鎖に対しては免疫陽性でない。このことは、SIgAアセンブリーに対する標準経路が2セル型(哺乳類動物において)であり、SCのアセンブリー前にJ鎖の存在が必要であるとすれば、いささか意外である。単分子のJ鎖および単分子のSCを含有する4量体ICAM-1重鎖融合物は、グリコシル化前に〜440kDの予測MWを有する。十分に200kDを超える分子量をもち、4プローブ全てに免疫陽性である複数種は明白である。
【図4】酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)の結果を図解し、抗ICAM mAbとの結合に対する植物抽出物と可溶性ICAM-1の間の競合を示す。アッセイのために、96ウエルプレートを0.25μg可溶性ICAM-1/mlを用いてコートした。マウス(抗ヒトICAM)抗体の一定量に対して、付着ICAMと競合するために用いた、正方形は増加するsICAMの濃度を表し、円は増加するカルス抽出物の量(G-100からの無菌濾過画分)を示す。
【図5】イムノアドヘシンの、ヒト・ライノウイルスによるHeLa細胞の死滅を抑制する能力を示すアッセイ(細胞変性効果、またはCPEアッセイ)の結果を図解する。図5Aは、ICAM-Fc融合物(IC1-5D/IgA)のイムノアドヘシンを含有するかまたはドキソルビシンに対する抗体を含有する部分精製した抽出物の存在のもとでの、ヒト・ライノウイルスのHeLa細胞に対するCPEを比較するアッセイ結果を示す(正立および倒立三角形はイムノアドヘシンを含有するRhi107-11から誘導された2つの抽出物を表す)。図5Bは、可溶性ヒトICAM-1またはICAM-Fc融合物(IC1-5D/IgA)の存在のもとでのヒト・ライノウイルスのHeLa細胞に対するCPEを比較するアッセイ結果を示す。挿入図は、可溶性ICAM(1.35μg/ml)およびIC1-5D/IgA(0.12μg/ml;11.3倍少ない)に対するIC50の範囲のスケール拡大図を示す。
【図6】イムノアドヘシン完成品1グラムを作るために必要な生産量の見積を示す。この図では、1gのイムノアドヘシンのために必要な植物数を、20%収率で、予測される発現レベルおよび植物重量について図解した。様々なイムノアドヘシンの発現レベル(mg/kg新鮮重量)および全回収率(20%に設定)において、合理的な可能性の枠(点線の四角形)内の指定した生産目標(1g/収穫)に対して、それぞれの植物重量、従って全植物数を決定することができる。必要な植物数は、指定した成長および再成長期間の数字に反比例して減少する。予測されるバイオマス生産は時間および成長条件の関数であり、収穫する時間および収穫間の時間に影響を与える。これらの生長期間は定植および収穫日をずらすことにより現実の精製スケジュールに調節することができる。
【図7A】表2に掲げた免疫グロブリン遺伝子およびタンパク質のそれぞれのコードおよびアミノ酸配列[配列番号15〜47および配列番号52〜62]を示す。
【図7B】表2に掲げた免疫グロブリン遺伝子およびタンパク質のそれぞれのコードおよびアミノ酸配列[配列番号15〜47および配列番号52〜62]を示す。
【図7C】表2に掲げた免疫グロブリン遺伝子およびタンパク質のそれぞれのコードおよびアミノ酸配列[配列番号15〜47および配列番号52〜62]を示す。
【図7D】表2に掲げた免疫グロブリン遺伝子およびタンパク質のそれぞれのコードおよびアミノ酸配列[配列番号15〜47および配列番号52〜62]を示す。
【図7E】表2に掲げた免疫グロブリン遺伝子およびタンパク質のそれぞれのコードおよびアミノ酸配列[配列番号15〜47および配列番号52〜62]を示す。
【図7F】表2に掲げた免疫グロブリン遺伝子およびタンパク質のそれぞれのコードおよびアミノ酸配列[配列番号15〜47および配列番号52〜62]を示す。
【図7G】表2に掲げた免疫グロブリン遺伝子およびタンパク質のそれぞれのコードおよびアミノ酸配列[配列番号15〜47および配列番号52〜62]を示す。
【図7H】表2に掲げた免疫グロブリン遺伝子およびタンパク質のそれぞれのコードおよびアミノ酸配列[配列番号15〜47および配列番号52〜62]を示す。
【図7I】表2に掲げた免疫グロブリン遺伝子およびタンパク質のそれぞれのコードおよびアミノ酸配列[配列番号15〜47および配列番号52〜62]を示す。
【図7J】表2に掲げた免疫グロブリン遺伝子およびタンパク質のそれぞれのコードおよびアミノ酸配列[配列番号15〜47および配列番号52〜62]を示す。
【図7K】表2に掲げた免疫グロブリン遺伝子およびタンパク質のそれぞれのコードおよびアミノ酸配列[配列番号15〜47および配列番号52〜62]を示す。
【図7L】表2に掲げた免疫グロブリン遺伝子およびタンパク質のそれぞれのコードおよびアミノ酸配列[配列番号15〜47および配列番号52〜62]を示す。
【図7M】表2に掲げた免疫グロブリン遺伝子およびタンパク質のそれぞれのコードおよびアミノ酸配列[配列番号15〜47および配列番号52〜62]を示す。
【図7N】表2に掲げた免疫グロブリン遺伝子およびタンパク質のそれぞれのコードおよびアミノ酸配列[配列番号15〜47および配列番号52〜62]を示す。
【図7O】表2に掲げた免疫グロブリン遺伝子およびタンパク質のそれぞれのコードおよびアミノ酸配列[配列番号15〜47および配列番号52〜62]を示す。
【図7P】表2に掲げた免疫グロブリン遺伝子およびタンパク質のそれぞれのコードおよびアミノ酸配列[配列番号15〜47および配列番号52〜62]を示す。
【図7Q】表2に掲げた免疫グロブリン遺伝子およびタンパク質のそれぞれのコードおよびアミノ酸配列[配列番号15〜47および配列番号52〜62]を示す。
【図7R】表2に掲げた免疫グロブリン遺伝子およびタンパク質のそれぞれのコードおよびアミノ酸配列[配列番号15〜47および配列番号52〜62]を示す。
【図7S】表2に掲げた免疫グロブリン遺伝子およびタンパク質のそれぞれのコードおよびアミノ酸配列[配列番号15〜47および配列番号52〜62]を示す。
【図7T】表2に掲げた免疫グロブリン遺伝子およびタンパク質のそれぞれのコードおよびアミノ酸配列[配列番号15〜47および配列番号52〜62]を示す。
【図7U】表2に掲げた免疫グロブリン遺伝子およびタンパク質のそれぞれのコードおよびアミノ酸配列[配列番号15〜47および配列番号52〜62]を示す。
【図7V】表2に掲げた免疫グロブリン遺伝子およびタンパク質のそれぞれのコードおよびアミノ酸配列[配列番号15〜47および配列番号52〜62]を示す。
【図7W】表2に掲げた免疫グロブリン遺伝子およびタンパク質のそれぞれのコードおよびアミノ酸配列[配列番号15〜47および配列番号52〜62]を示す。
【図7X】表2に掲げた免疫グロブリン遺伝子およびタンパク質のそれぞれのコードおよびアミノ酸配列[配列番号15〜47および配列番号52〜62]を示す。
【図7Y】表2に掲げた免疫グロブリン遺伝子およびタンパク質のそれぞれのコードおよびアミノ酸配列[配列番号15〜47および配列番号52〜62]を示す。
【図7Z】表2に掲げた免疫グロブリン遺伝子およびタンパク質のそれぞれのコードおよびアミノ酸配列[配列番号15〜47および配列番号52〜62]を示す。
【図7AA】表2に掲げた免疫グロブリン遺伝子およびタンパク質のそれぞれのコードおよびアミノ酸配列[配列番号15〜47および配列番号52〜62]を示す。
【図7BB】表2に掲げた免疫グロブリン遺伝子およびタンパク質のそれぞれのコードおよびアミノ酸配列[配列番号15〜47および配列番号52〜62]を示す。
【図7CC】表2に掲げた免疫グロブリン遺伝子およびタンパク質のそれぞれのコードおよびアミノ酸配列[配列番号15〜47および配列番号52〜62]を示す。
【図7DD】表2に掲げた免疫グロブリン遺伝子およびタンパク質のそれぞれのコードおよびアミノ酸配列[配列番号15〜47および配列番号52〜62]を示す。
【図7EE】表2に掲げた免疫グロブリン遺伝子およびタンパク質のそれぞれのコードおよびアミノ酸配列[配列番号15〜47および配列番号52〜62]を示す。
【図7FF】表2に掲げた免疫グロブリン遺伝子およびタンパク質のそれぞれのコードおよびアミノ酸配列[配列番号15〜47および配列番号52〜62]を示す。
【図7GG】表2に掲げた免疫グロブリン遺伝子およびタンパク質のそれぞれのコードおよびアミノ酸配列[配列番号15〜47および配列番号52〜62]を示す。
【図7HH】表2に掲げた免疫グロブリン遺伝子およびタンパク質のそれぞれのコードおよびアミノ酸配列[配列番号15〜47および配列番号52〜62]を示す。
【図7II】表2に掲げた免疫グロブリン遺伝子およびタンパク質のそれぞれのコードおよびアミノ酸配列[配列番号15〜47および配列番号52〜62]を示す。
【図7JJ】表2に掲げた免疫グロブリン遺伝子およびタンパク質のそれぞれのコードおよびアミノ酸配列[配列番号15〜47および配列番号52〜62]を示す。
【図7KK】表2に掲げた免疫グロブリン遺伝子およびタンパク質のそれぞれのコードおよびアミノ酸配列[配列番号15〜47および配列番号52〜62]を示す。
【図7LL】表2に掲げた免疫グロブリン遺伝子およびタンパク質のそれぞれのコードおよびアミノ酸配列[配列番号15〜47および配列番号52〜62]を示す。
【図8A−1】本発明のイムノアドヘシンの発現の研究に使用したプラスミドの配列を示し、プラスミドPSSpICAMHuA2に対するヌクレオチド[配列番号9]およびタンパク質[配列番号48]配列を示す。
【図8A−2】本発明のイムノアドヘシンの発現の研究に使用したプラスミドの配列を示し、プラスミドPSSpICAMHuA2に対するヌクレオチド[配列番号9]およびタンパク質[配列番号48]配列を示す。
【図8A−3】本発明のイムノアドヘシンの発現の研究に使用したプラスミドの配列を示し、プラスミドPSSpICAMHuA2に対するヌクレオチド[配列番号9]およびタンパク質[配列番号48]配列を示す。
【図8A−4】本発明のイムノアドヘシンの発現の研究に使用したプラスミドの配列を示し、プラスミドPSSpICAMHuA2に対するヌクレオチド[配列番号9]およびタンパク質[配列番号48]配列を示す。
【図8B】本発明のイムノアドヘシンの発現の研究に使用したプラスミドの配列を示し、マメレグミンのシグナルペプチドに対するヌクレオチドおよびタンパク質[配列番号10]配列を示す。
【図8C】本発明のイムノアドヘシンの発現の研究に使用したプラスミドの配列を示し、pSHuJのタンパク質コード領域のヌクレオチド[配列番号11]およびアミノ酸配列[配列番号50]を示す。
【図8D−1】本発明のイムノアドヘシンの発現の研究に使用したプラスミドの配列を示し、pSHuSCのタンパク質コード領域のヌクレオチド[配列番号12]およびアミノ酸配列[配列番号51]を示す。
【図8D−2】本発明のイムノアドヘシンの発現の研究に使用したプラスミドの配列を示し、pSHuSCのタンパク質コード領域のヌクレオチド[配列番号12]およびアミノ酸配列[配列番号51]を示す。
【図8E−1】本発明のイムノアドヘシンの発現の研究に使用したプラスミドの配列を示し、pBMSP-1のヌクレオチド配列[配列番号13]を示す。
【図8E−2】本発明のイムノアドヘシンの発現の研究に使用したプラスミドの配列を示し、pBMSP-1のヌクレオチド配列[配列番号13]を示す。
【図8E−3】本発明のイムノアドヘシンの発現の研究に使用したプラスミドの配列を示し、pBMSP-1のヌクレオチド配列[配列番号13]を示す。
【図8F−1】本発明のイムノアドヘシンの発現の研究に使用したプラスミドの配列を示し、pBMSP-1spJSCのヌクレオチド配列[配列番号13]を示す。
【図8F−2】本発明のイムノアドヘシンの発現の研究に使用したプラスミドの配列を示し、pBMSP-1spJSCのヌクレオチド配列[配列番号13]を示す。
【図8F−3】本発明のイムノアドヘシンの発現の研究に使用したプラスミドの配列を示し、pBMSP-1spJSCのヌクレオチド配列[配列番号13]を示す。
【図8F−4】本発明のイムノアドヘシンの発現の研究に使用したプラスミドの配列を示し、pBMSP-1spJSCのヌクレオチド配列[配列番号13]を示す。
【図8F−5】本発明のイムノアドヘシンの発現の研究に使用したプラスミドの配列を示し、pBMSP-1spJSCのヌクレオチド配列[配列番号13]を示す。
【図8F−6】本発明のイムノアドヘシンの発現の研究に使用したプラスミドの配列を示し、pBMSP-1spJSCのヌクレオチド配列[配列番号13]を示す。
【図9−1】ICAM-1、およびヒトIgA2ならびに他のヌクレオチド配列に対するヌクレオチドおよびタンパク質配列、配列番号1;配列番号2;配列番号3;配列番号4;配列番号5;配列番号6;配列番号7;配列番号8を示す。
【図9−2】ICAM-1、およびヒトIgA2ならびに他のヌクレオチド配列に対するヌクレオチドおよびタンパク質配列、配列番号1;配列番号2;配列番号3;配列番号4;配列番号5;配列番号6;配列番号7;配列番号8を示す。
【図9−3】ICAM-1、およびヒトIgA2ならびに他のヌクレオチド配列に対するヌクレオチドおよびタンパク質配列、配列番号1;配列番号2;配列番号3;配列番号4;配列番号5;配列番号6;配列番号7;配列番号8を示す。
【図9−4】ICAM-1、およびヒトIgA2ならびに他のヌクレオチド配列に対するヌクレオチドおよびタンパク質配列、配列番号1;配列番号2;配列番号3;配列番号4;配列番号5;配列番号6;配列番号7;配列番号8を示す。
【図9−5】ICAM-1、およびヒトIgA2ならびに他のヌクレオチド配列に対するヌクレオチドおよびタンパク質配列、配列番号1;配列番号2;配列番号3;配列番号4;配列番号5;配列番号6;配列番号7;配列番号8を示す。
【図9−6】ICAM-1、およびヒトIgA2ならびに他のヌクレオチド配列に対するヌクレオチドおよびタンパク質配列、配列番号1;配列番号2;配列番号3;配列番号4;配列番号5;配列番号6;配列番号7;配列番号8を示す。
【図9−7】ICAM-1、およびヒトIgA2ならびに他のヌクレオチド配列に対するヌクレオチドおよびタンパク質配列、配列番号1;配列番号2;配列番号3;配列番号4;配列番号5;配列番号6;配列番号7;配列番号8を示す。
【図9−8】ICAM-1、およびヒトIgA2ならびに他のヌクレオチド配列に対するヌクレオチドおよびタンパク質配列、配列番号1;配列番号2;配列番号3;配列番号4;配列番号5;配列番号6;配列番号7;配列番号8を示す。
【図10−1】ATR-IgA2融合物(イムノアドヘシン)の全ヌクレオチド(配列番号98)およびアミノ酸配列(配列番号99)を示す。
【図10−2】ATR-IgA2融合物(イムノアドヘシン)の全ヌクレオチド(配列番号98)およびアミノ酸配列(配列番号99)を示す。
【図10−3】ATR-IgA2融合物(イムノアドヘシン)の全ヌクレオチド(配列番号98)およびアミノ酸配列(配列番号99)を示す。
【図10−4】ATR-IgA2融合物(イムノアドヘシン)の全ヌクレオチド(配列番号98)およびアミノ酸配列(配列番号99)を示す。
【図11−1】プラスミドpGPTV-kan-ocs-ATR-IgA2のT-DNA境界間配列(配列番号100)を示す。
【図11−2】プラスミドpGPTV-kan-ocs-ATR-IgA2のT-DNA境界間配列(配列番号100)を示す。
【図11−3】プラスミドpGPTV-kan-ocs-ATR-IgA2のT-DNA境界間配列(配列番号100)を示す。
【図11−4】プラスミドpGPTV-kan-ocs-ATR-IgA2のT-DNA境界間配列(配列番号100)を示す。
【図11−5】プラスミドpGPTV-kan-ocs-ATR-IgA2のT-DNA境界間配列(配列番号100)を示す。
【図11−6】プラスミドpGPTV-kan-ocs-ATR-IgA2のT-DNA境界間配列(配列番号100)を示す。
【図11−7】プラスミドpGPTV-kan-ocs-ATR-IgA2のT-DNA境界間配列(配列番号100)を示す。
【図11−8】プラスミドpGPTV-kan-ocs-ATR-IgA2のT-DNA境界間配列(配列番号100)を示す。
【図12−1】プラスミドpGPTV-hpt-ocs-35SJ/SCのT-DNA境界間配列(配列番号101)を示す。
【図12−2】プラスミドpGPTV-hpt-ocs-35SJ/SCのT-DNA境界間配列(配列番号101)を示す。
【図12−3】プラスミドpGPTV-hpt-ocs-35SJ/SCのT-DNA境界間配列(配列番号101)を示す。
【図12−4】プラスミドpGPTV-hpt-ocs-35SJ/SCのT-DNA境界間配列(配列番号101)を示す。
【図12−5】プラスミドpGPTV-hpt-ocs-35SJ/SCのT-DNA境界間配列(配列番号101)を示す。
【図12−6】プラスミドpGPTV-hpt-ocs-35SJ/SCのT-DNA境界間配列(配列番号101)を示す。
【図12−7】プラスミドpGPTV-hpt-ocs-35SJ/SCのT-DNA境界間配列(配列番号101)を示す。
【図12−8】プラスミドpGPTV-hpt-ocs-35SJ/SCのT-DNA境界間配列(配列番号101)を示す。
【図12−9】プラスミドpGPTV-hpt-ocs-35SJ/SCのT-DNA境界間配列(配列番号101)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
発明の詳細な説明
A.定義
本明細書に使用される、以下の省略および用語は、必ずしも限定されるものでないが、以下の定義を含むものである。
【0032】
本発明の実施は、別に示さない限り、当技術分野で公知の免疫学、分子生物学、微生物学、細胞生物学および組換えDNAの通常の技術を採用しうる。例えば、Sambrookら, 「Molecular Cloning:A Laboratory Manual(分子クローニング:研究室マニュアル)」, 2nd edition (1989);「Current Protocols In Molecular Biology(分子生物学の現行プロトコル)」(F. M. Ausubelら, 編, (1987));「the series Methods In Enzymology(シリーズ:酵素学の方法)」(Academic Press, Inc. );M. J. MacPhersonら, 編, 「Pcr 2:A Practical Approach(Pcr 2:実用的アプローチ)」 (1995);HarlowおよびLane, 編, 「Antibodies:A Laboratory Manual(抗体:研究室マニュアル)」 (1988)、ならびにH. Jones, 「Methods In Molecular Biology(分子生物学の方法)」 vol. 49, 「"Plant Gene Transfer And Expression Protocols(植物遺伝子導入および発現プロトコル)"」 (1995)を参照。
【0033】
免疫グロブリン分子または抗体。一緒に共有結合した免疫グロブリン重鎖および免疫グロブリン軽鎖の免疫学的活性部分を含有しかつ抗原と特異的に結合することができるポリペプチドまたは多量体タンパク質。上記免疫グロブリンまたは抗体分子は、IgD、IgG、IgA、分泌性IgA(SIgA)、IgM、およびIgEなどの数タイプの分子を含む大きな分子ファミリーである。
【0034】
構築物またはベクター。標的植物組織または細胞中に導入するために人工的に組立てたDNAセグメント。典型的には、構築物は特定目的の1以上の遺伝子、マーカー遺伝子および適当な制御配列を含みうる。用語「プラスミド」は、自律性で自己複製する染色体外DNA分子を意味する。好ましい実施形態においては、本発明のプラスミド構築物は抗体の重鎖および軽鎖をコードする配列を含有する。適当な調節エレメントを含有するプラスミド構築物はまた、「発現カセット」とも呼ばれる。好ましい実施形態においては、プラスミド構築物はまた、スクリーニングまたは選択マーカー、例えば抗生物質耐性遺伝子も含有することができる。
【0035】
選択マーカー。選択培地においてトランスジェニック組織の増殖を可能にする産物をコードする遺伝子。選択マーカーの例としては、限定されるものでないが、抗生物質、例えばアンピシリン、カナマイシンなどに対する耐性をコードする遺伝子が挙げられる。他の選択マーカーも当業者に公知であろう。
【0036】
トランスジェニック植物。遺伝子操作した植物または遺伝子操作した植物の子孫。トランスジェニック植物は通常、少なくとも1種の無関係な生物、例えばウイルス、他の植物または動物由来の物質を含有する。
【0037】
キメラICAM-1分子:ICAM-1の細胞外ドメイン1、2、3、4および5のいずれかの組合わせと免疫グロブリン重鎖タンパク質の少なくとも一部分との融合物であり、免疫グロブリン重鎖遺伝子配列の上流にICAM-1配列を連結しかつコードされたタンパク質を該構築物から発現させることにより作製した上記融合物。抗細菌の実施形態においては、目的の1以上の細菌またはそのサブ成分、例えば細菌により産生されかつ細菌がその病原効果を発揮するために必要であるタンパク質と結合するのに有効である1以上の受容体タンパク質を、ICAM-1の代わりに、またはICAM-1に加えて使用する。多数のかかる受容体タンパク質は公知であり、本発明の適当な態様において、当業者は不要な実験をすることなく使用することができる。一例を、ヒト炭疽の原因となる細菌が引き起こす病原機構に関わるタンパク質と結合する一タンパク質を用いて、以下に記載する。同じ概念を利用して、例えば適当な宿主受容体タンパク質をイムノアドヘシン型で利用することにより、ライノウイルス以外の他のウイルスを標的にすることができる。
【0038】
キメラ免疫グロブリン重鎖:免疫グロブリンから誘導されたそのアミノ酸配列の少なくとも一部分を有する重鎖であって、該アミノ酸配列が異なるアイソタイプもしくはサブタイプまたはいずれか他のペプチド、ポリペプチドもしくはタンパク質の免疫グロブリン重鎖から誘導された上記重鎖。典型的には、キメラ免疫グロブリン重鎖は免疫グロブリン重鎖の少なくとも2つの異なるアイソタイプもしくはサブタイプから誘導されたそのアミノ酸残基配列を有する。
【0039】
双子葉類植物(dicots):胚が2つの子葉(seed halvesもしくはcotyledons)を有する顕花植物。双子葉類の例は、タバコ;トマト;アルファルファを含むマメ科植物;オーク;カエデ;バラ;ミント;カボチャ;ヒナギク;クルミ;サボテン;スミレおよびキンポウゲである。
【0040】
有効量:ウイルスまたは細菌感染(事例に応じて)、細胞傷害性もしくは複製を検出しうるだけ抑制するかまたは感染の重篤度もしくは期間を軽減するために十分有効な本発明のイムノアドヘシンの量。
【0041】
ヒト・ライノウイルス(HRV):ピコルナウイルスのサブグループであり、ヒトの風邪の主因である非エンベロープRNAウイルス。ライノウイルスは、「Rhinoviruses, Reoviruses, and Parvoviruses(ライノウイルス、レオウイルスおよびパルボウイルス)」, pp.1057-1059, Zinsser Microbiology, Joklikら, 編, Appleton and Lange (1992)に記載されている。
【0042】
イムノアドヘシン:キメラ受容体タンパク質分子を含有し、かつ任意に分泌成分、およびJ鎖を含有してもよい複合体。
【0043】
免疫グロブリン重鎖:免疫グロブリンの抗原結合ドメインの少なくとも一部分、および免疫グロブリン重鎖の可変域の少なくとも一部分または免疫グロブリン重鎖の定常域の少なくとも一部分を含有するポリペプチド。従って、免疫グロブリンから誘導された重鎖は、免疫グロブリン遺伝子スーパーファミリーのメンバーとアミノ酸配列相同性をもつ重要なな領域を有する。例えば、Fabフラグメントの重鎖は免疫グロブリンから誘導された重鎖である。
【0044】
免疫グロブリン軽鎖:免疫グロブリンの抗原結合ドメインの少なくとも一部分、および免疫グロブリン軽鎖の可変域の少なくとも一部分または定常域の少なくとも一部分を含有するポリペプチド。従って、軽鎖から誘導された免疫グロブリンは、免疫グロブリン遺伝子スーパーファミリーのメンバーとアミノ酸配列相同性をもつ重要な領域を有する。
【0045】
免疫グロブリン分子:共有結合で互いに結合された免疫グロブリン重鎖と免疫グロブリン軽鎖の免疫学的活性部分を含有し、抗原と特異的に結合することができるタンパク質。
【0046】
ICAM-1:細胞間接着分子-1。ヒトにおいては、ICAM-1はヒト・ライノウイルスに対する受容体として機能する。
【0047】
J鎖:免疫グロブリンの重合および重合した免疫グロブリンの上皮細胞を通しての輸送に関わるポリペプチド「The Immunoglobulin Helper: The J chain in Immunoglobulin Genes(免疫グロブリンヘルパー:免疫グロブリン遺伝子のJ鎖)」, p.345, Academic Press (1989)を参照。J鎖は5量体IgMおよび2量体IgAに見出され、典型的にはジスルフィド結合を経由して結合している。J鎖はマウスおよびヒトの両方で研究されている。
【0048】
単子葉類植物(monocots):胚が1つの子葉(cotyledonもしくはseed leaf)を有する顕花植物。単子葉類植物の例は次の通りである:ユリ;イネ科植物;トウモロコシ;オートムギ、コムギおよびオオムギを含む穀物;ラン;アイリス;タマネギおよびヤシ。
【0049】
グリコシル化:オリゴ糖類によるタンパク質の改変。グリコシル化シグナルとして機能するポリペプチド配列の一般的総括については、Marshall, Ann. Rev. Biochem., 41:673 (1972)およびMarshall, Biochem. Soc. Symp., 40:17 (1974)を参照。これらのシグナルは哺乳類動物および植物細胞の両方で認識されている。
【0050】
植物特異的グリコシル化:植物に発現したタンパク質に見られるグリコシル化パターンであって、哺乳類動物または昆虫細胞で作られたタンパク質に見られるものとは異なる。植物または植物細胞に発現したタンパク質は、哺乳類動物および昆虫細胞を含む他の細胞型に発現したタンパク質と異なるグリコシル化パターンを有する。植物特異的グリコシル化の特性を決定しかつそれを他の細胞型におけるグリコシル化と比較する詳細な研究が、Cabanes-Macheteauら, Glycobiology 9 (4):365-372 (1999)、Lerougeら, Plant Molecular Biology 38:31-48 (1998)、およびAltmann, Glycoconjugate J. 14:643-646 (1997)により行われている。植物特異的グリコシル化はマンノースとβ(1,2)連結したキシロースを有するグリカンを作製する。哺乳類動物または昆虫のグリコシル化はマンノースとβ(1,2)連結したキシロースを作製しない。植物はグリカンの末端と連結したシアル酸を有しないが、哺乳類動物細胞はそれを有する。さらに、植物特異的グリコシル化は近位のGlcNAcとα(1,3)連結したフコースを生じるが、哺乳類動物細胞のグリコシル化は近位のGlcNAcとα(1,6)連結したフコースを生じる。
【0051】
分泌成分(SC):免疫グロブリンを不活性化剤に対して保護し、それにより分泌性免疫グロブリンの生物学的有効性を増加する分泌性免疫グロブリンの一成分。分泌成分は、マウスまたはヒトを含むいずれの哺乳類またはげっ歯類動物由来のものであってもよい。
【0052】
sICAM:ICAMの疎水性膜貫通ドメインおよびカルボキシ末端細胞質ドメインの両方を欠く、ICAM-1の天然可溶性末端切断型。
【0053】
本文書に引用した文献、特許および特許出願は、本文書中にあたかもそのまま記載されたように、組込まれる。
【0054】
以下の考察の多くはICAM-1イムノアドヘシンの態様および実施形態に関するが、当業者には、ICAM-1以外の受容体タンパク質分子を組込むことにより、他の抗ウイルスまたは抗菌イムノアドヘシンを同様に生産しうることは明白である。実際、実施例10-12は、ICAM-1の代わりに炭疽毒素受容体(ATR)を使用する抗菌剤の実施形態に関するものである。
【0055】
B.キメラICAM分子を含有するイムノアドヘシン
本発明は、キメラ受容体タンパク質、例えばICAM-1受容体タンパク質を含有するイムノアドヘシン分子を生産する新規の方法を提供する。ICAM-1イムノアドヘシンは、例えば、免疫グロブリン重鎖分子の一部分と連結したライノウイルス受容体タンパク質から作られたキメラICAM-1分子を含有し、J鎖および分泌成分と関連している。本発明のかかる態様のキメラICAM-1分子は、異なる供給源:すなわち、ライノウイルス受容体タンパク質部分および免疫グロブリン鎖部分から誘導される。ライノウイルス受容体タンパク質は細胞間接着分子1(ICAM-1)から誘導される。ヒト・ライノウイルス受容体ICAM-1のヌクレオチド配列は、Stauntonら, Cell 52:925-933 (1988);Greveら, Cell 56:839-847 (1989);Greveら, J. Virology 65:6015-6023 (1991);Stauntonら, Cell, 61:243-254 (1990)により確認されかつ特性決定が行われていて、配列番号3およびGenBank受託番号M24283に記載されている。
【0056】
ICAM-1分子は膜タンパク質(配列番号1および2)であり、5つの細胞外ドメイン、1つの疎水性膜貫通ドメインおよび1つの短い細胞質ドメインを有する。これらの特性は、Casasnovasら, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 95:4134-4139 (1998)およびStauntonら, Cell 52:925-933 (1988)により記載されている。本発明の適当な態様において特に利用されるのは、ヒト・ライノウイルスの結合に関わりN末端ドメイン1および2に局在化しているICAM-1分子のドメインである(Greveら, J. Virol., 65:6015-6023 1991、およびStauntonら, Cell, 61:243-245 1990)。かかる態様はまた、ICAM-1分子の細胞外ドメイン1、2、3、4、および5のいずれの組合わせも含むライノウイルス受容体タンパク質部分を意図する。特に好ましい実施形態においては、ライノウイルス受容体タンパク質部分はICAM-1のドメイン1および2を含み、かつ他の好ましい実施形態においては、ICAM-1のドメイン1、2、3、4、および5が存在する。
【0057】
ICAM-1の5つの細胞外ドメインの境界は当技術分野ではよく知られており、Stauntonら, Cell 52:925-933 (1988)に記載されている。おおよそのドメイン境界を以下の表1に示す[配列番号2]。

【表1】

【0058】
本発明の複数の態様および実施形態において使われるICAM-1ドメイン1は、ほぼ残基1〜ほぼ残基88;ドメイン2はほぼ残基89〜ほぼ残基105;ドメイン3はほぼ残基106〜284;ドメイン4はほぼ残基285〜ほぼ385;そしてドメイン5はほぼ残基386〜453である。当業者はこれらのドメインの正確な境界が変化しうることを理解するであろう。
【0059】
キメラICAM-1分子は好ましくはIgMまたはIgA重鎖の少なくとも一部分を含有し、免疫グロブリン重鎖が免疫グロブリンJ鎖と結合してそれにより分泌成分と結合できることを可能にする。免疫グロブリン重鎖から誘導されたキメラICAM-1分子の部分は、IgA重鎖またはIgM重鎖からまたは重鎖のいずれかの他のアイソタイプから選択される個々のドメインから成ることを意図する。また、IgAまたはIgM以外の免疫グロブリン重鎖からまたは免疫グロブリン軽鎖から誘導された免疫グロブリンドメインを分子的に遺伝子操作して免疫グロブリンJ鎖と結合し、そしてこれを用いて本発明の免疫グロブリンおよびイムノアドヘシンを生産することも意図する。
【0060】
当業者は、免疫グロブリンが近似的に100-110アミノ酸残基のドメインから成ることを理解するであろう。これらの様々なドメインは当技術分野ではよく知られていて、公知の境界を有する。単一ドメインの除去および他の抗体分子ドメインによるその置換えは、現代分子生物学を用いて容易に達成される。ドメインは球状構造であって、鎖内ジスルフィド結合により安定化されている。この構造は区切られた形状を与え、ドメインを他の同様な形状のドメインと置換えるかまたは相互交換しうる自己含有ユニットにしている。免疫グロブリンの重鎖定常域ドメインは、そのドメインを含有する特定分子に、抗体エフェクター機能として知られる様々な特性を与える。エフェクター機能の例としては、補体結合、胎盤通過、ブドウ球菌タンパク質との結合、連鎖球菌タンパク質Gとの結合、単核細胞、好中球または肥満細胞および好塩基球との結合が挙げられる。特定のドメインおよび特定の免疫グロブリンのこれらのエフェクター機能との結合はよく知られていて、例えば、「Immunology(免疫学)」, Roittら, Mosby St. Louis, Mo.(1993 3rd Ed.)に記載される。
【0061】
当業者は、免疫グロブリン重鎖定常域配列を同定することができるであろう。例えば、多数の免疫グロブリンDNAおよびタンパク質配列がGenBankを介して利用しうる。表2は免疫グロブリン重鎖遺伝子およびその遺伝子がコードするタンパク質のGenBank受託番号を示す。表2に掲げた配列を図7に示した。
【表2】



【0062】
本発明のICAM-1イムノアドヘシンは、キメラICAM-1分子に加えて、免疫グロブリン軽鎖、または免疫グロブリン由来の重鎖と結合した免疫グロブリンJ鎖を含有してもよい。好ましい実施形態においては、本発明のイムノアドヘシンは、2つまたは4つのキメラICAM-1分子、およびキメラICAM-1分子の少なくとも1つと結合した1つの免疫グロブリンJ鎖を含んでなる。J鎖は記載されかつ当技術分野では公知である。例えば、M. Koshland, 「The Immunoglobulin Helper:The J chain(免疫グロブリンヘルパー:J鎖)」, in Immunoglobulin Genes, Academic Press, London, pg.345, (1989)、およびMatsuuchiら, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 83:456-460 (1986)を参照。免疫グロブリンJ鎖の配列は、米国の様々なデータベースで入手しうる。
【0063】
イムノアドヘシンはキメラICAM-1分子と結合した分泌成分を有する。この結合は、水素結合、ジスルフィド結合、共有結合、イオン相互作用または様々な結合の組合わせにより生じうる。典型的には、キメラICAM-1分子同士は互いに分子間のジスルフィド結合により保持される。キメラICAM-1分子の相互作用は非共有結合であってもまたはジスルフィド結合であってもよい。
【0064】
本発明は、ヒト、ラット、ウサギ、ウシなどを含む複数の異なる種からの分泌成分の使用を意図する。これらの分子のヌクレオチド配列は当技術分野でよく知られている。例えば、米国特許第6,046,037号はその配列の多くを含有していて、この特許は参照により本明細書に組み入れられる。分泌成分、キメラICAM-1分子およびJ鎖を含有する本発明のイムノアドヘシンは、典型的には次の結合:水素結合、ジスルフィド結合、共有結合、イオン相互作用またはこれらの結合の組合わせの1つにより互いに結合されている。
【0065】
本発明はまた、1以上の受容体タンパク質分子、例えばICAM-1を含んでなるイムノアドヘシンも意図する。ICAM-1イムノアドヘシンは、例えば、単量体ユニットであって他のキメラICAM-1分子とジスルフィド結合していないキメラICAM-1分子を含有してもよい。好ましい実施形態においては、イムノアドヘシンは他のキメラICAM-1分子と結合して2量体および他の多価分子を形成するキメラICAM-1分子を含有する。典型的にはキメラICAM-1分子は、キメラ分子の免疫グロブリン部分が結合するので2量体として存在する。キメラ分子の免疫グロブリン部分により2つのキメラICAM-1分子が結合し、ライノウイルス受容体タンパク質部分から作られた2つの活性結合部分を有する2量体分子が形成される。好ましい実施形態においては、2量体化は、天然免疫グロブリン分子および未変性免疫グロブリンタンパク質の部分として免疫グロブリンドメインの間に通常存在するジスルフィド結合域を経由して起こる。当業者は、キメラICAM-1分子の2量体を形成する能力を維持して、未変性免疫グロブリン分子に通常存在するこれらのジスルフィド結合を改変し、移動し、かつ除去しうることを理解するであろう。
【0066】
他の好ましい実施形態においては、イムノアドヘシンはJ鎖とキメラICAM分子の免疫グロブリン部分との結合による、キメラICAM-1分子の多量体型を含有する。J鎖と2つのキメラICAM-1分子の2量体との結合により、イムノアドヘシンの4量体型が形成される。好ましい実施形態においては、キメラICAM-1分子の免疫グロブリン部分はIgA分子から誘導され、そしてJ鎖の付加により、4つのキメラICAM-1分子および4つの結合部位を含有する4量体複合体が形成される。他の好ましい実施形態においては、キメラ分子の免疫グロブリン重鎖部分をIgMから誘導し、10個または12個の分子を含有する多価複合体を形成することができる。キメラICAM-1分子がキメラ免疫グロブリン重鎖を利用する他の好ましい実施形態においては、キメラICAM-1分子は、J鎖結合に関わるIgAまたはIgMのいずれかからのドメインを通して2量体または他のより高次の多価複合体を形成させることができる。他のキメラ免疫グロブリン分子においては、2つの免疫グロブリン重鎖間および/または免疫グロブリン軽鎖と重鎖の間のジスルフィド結合に関わる免疫グロブリンの部分をキメラ免疫グロブリン分子中に配置して、2量体または他の高次の多価複合体を形成させることができる。
【0067】
様々な態様および実施形態は、重鎖を含んでなる免疫グロブリンドメインが重鎖または軽鎖のいずれかの免疫グロブリンの異なるアイソタイプから誘導されたことを特徴とするキメラICAM-1分子を意図する。当業者は、分子技術を用いて、これらのドメインを類似のドメインと置換して、2つの異なる免疫グロブリン分子間のハイブリッドである免疫グロブリンを生産できることを理解するであろう。これらのキメラ免疫グロブリンにより、異なる免疫グロブリンドメインにより与えられた様々な異なる望ましい特性をもつ分泌成分を含有するイムノアドヘシンを構築することが可能になる。
【0068】
また、免疫グロブリンの重鎖または軽鎖から誘導されたキメラ分子の部分が、異なる免疫グロブリン分子から誘導される全ドメインより少ないドメインを含有しうるキメラICAM-1分子も意図する。かかるキメラICAM-1分子を生産するには同じ分子技術を用いることができる。
【0069】
好ましい実施形態においては、キメラICAM-1分子は少なくともマウスまたはヒトIgA1、IgA2またはIgMのCH1、CH2、CH3ドメインを含有する。本発明の他の好ましい実施形態は、少なくともIgMのCμ1、Cμ2、Cμ3、またはCμ4ドメインを含む免疫グロブリンドメインを含有する。
【0070】
好ましいキメラICAM-1分子は、ヒト免疫グロブリンの2つの異なるアイソタイプ由来のドメインを含有する。好ましいキメラICAM-1分子は、少なくともヒトIgG、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgE、またはIgDのCH1、CH2、またはCH3を含む免疫グロブリンドメインを含有する免疫グロブリンを含む。キメラICAM-1分子の部分として用いる他の好ましい免疫グロブリンは少なくともIgMまたはIgEのCH1、CH2、CH3、またはCH4ドメイン由来のドメインを含有する免疫グロブリンを含む。本発明はまた、哺乳類動物免疫グロブリンの少なくとも2つの異なるアイソタイプから誘導された免疫グロブリンドメインを含有するキメラICAM-1分子も意図する。一般的に、好ましい実施形態において、次のアイソタイプ:IgGのいずれかのアイソタイプ、IgA、IgE、IgDまたはIgMのいずれかのアイソタイプなどの哺乳類動物免疫グロブリンのいずれかを使用することができる。ヒト、マウスまたは他の哺乳類動物などの種から誘導されたキメラICAM-1分子を意図する。好ましい実施形態においては、キメラICAM-1分子は、J鎖のIgAおよびIgMとの結合に関わるIgAまたはIgMの部分を含有する。従って、キメラICAM-1分子中にキメラ免疫グロブリンを用いることにより、J鎖は、J鎖または分泌成分と結合しないアイソタイプが主であるキメラ免疫グロブリンと結合することができる。
【0071】
本発明はまた、げっ歯類または霊長類動物免疫グロブリンの2つの異なるアイソタイプから誘導された免疫グロブリンドメインを含有するキメラ分子も意図する。げっ歯類または霊長類免疫グロブリンのアイソタイプは当技術分野ではよく知られている。本発明のキメラ分子は、次の免疫グロブリンドメインの少なくとも1つを含む免疫グロブリン由来の重鎖を含有することができる:マウスIgG、IgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3、IgA、IgE、またはIgDのCH1、CH2、またはCH3ドメイン;マウスIgEまたはIgMのCH1、CH2、CH3またはCH4ドメイン;ヒトIgG、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、またはIgDのCH1ドメイン;ヒトIgMまたはIgEのCH1、CH2、CH3、CH4ドメイン;哺乳類動物IgGのアイソタイプ、IgA、IgE、またはIgDのアイソタイプのCH1、CH2、またはCH3ドメイン;哺乳類動物IgEまたはIgMのCH1、CH2、CH3またはCH4ドメイン;げっ歯類動物IgG、IgA、IgE、またはIgDのアイソタイプのCH1、CH2、またはCH3ドメイン;げっ歯類動物IgEまたはIgMのCH1、CH2、CH3またはCH4ドメイン;動物IgGのアイソタイプ、IgA、IgE、またはIgDのアイソタイプのCH1、CH2、またはCH3ドメイン;および動物IgEまたはIgMのCH1、CH2、CH3、またはCH4ドメイン。本発明はまた、免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーである分子から誘導されたタンパク質ドメインのキメラ分子、例えば、キメラICAM-1中への置換または付加も意図する。免疫グロブリンスーパーファミリーに属する分子は、免疫グロブリンに対するアミノ酸残基配列および核酸配列相同性を有する。免疫グロブリンスーパーファミリーの部分である分子はアミノ酸または核酸配列相同性により同定することができる。例えば、「Immunoglobulin Genes(免疫グロブリン遺伝子)」, Academic Press (1989)のp.361を参照。
【0072】
本発明の好ましい実施形態においては、イムノアドヘシンは植物特異的グリコシル化を有するイムノアドヘシンを作製する方法により発現させる。当技術分野では、グリコシル化が植物細胞のタンパク質の主な改変であることはよく知られている(Lerougeら, Plant Molecular Biology 38:31-48, 1998)。タンパク質のグリコシル化はまた、哺乳類動物および昆虫細胞を含む他の細胞型でも起こる。グリコシル化プロセスは、小胞体において、新生ポリペプチド鎖特定残基への前駆体オリゴ糖の同時翻訳的導入により始まる。このオリゴ糖の、存在する残基の型および残基間の結合特性が異なる様々な型のグリカンへのプロセシングは、糖タンパク質が小胞体からその最終の行先へ移動する分泌経路で起こる。当業者は、それらの成熟が終わると、植物または植物細胞に発現されるタンパク質は、哺乳類動物細胞および昆虫細胞を含む他の細胞型に発現されるタンパク質が有するのとは異なるグリコシル化パターンを有することを理解するであろう。植物特異的グリコシル化の特性を決定しかつそれを他の細胞型のグリコシル化と比較する詳細な研究が実施されていて、例えば、Cabanes-Macheteauら, Glycobiology 9 (4):365-372 (1999)、およびAltmann, Glycoconjugate J. 14:643-646 (1997)に記載されている。これらおよび他のグループは、植物特異的グリコシル化が、マンノースとβ(1,2)連結したキシロースを有するグリカンを作るが、哺乳類動物および昆虫細胞においてはグリコシル化の結果としてキシロースはマンノースとβ(1,2)連結しないことを示している。植物特異的グリコシル化は近位のGlcNAcとα(1,3)連結したフコースをもたらすが、哺乳類動物細胞におけるグリコシル化は近位のGlcNAcとα(1,6)連結フコースをもたらす。さらに、植物特異的グリコシル化はタンパク質グリカンの末端にシアル酸の付加をもたらさないが、哺乳類動物細胞におけるグリコシル化はシアル酸が付加される。
【0073】
植物特異的方法でグリコシル化した本発明のイムノアドヘシンは、キメラ分子、例えばICAM-1分子の細胞外ドメイン、例えばドメイン1、2、3、4、および5のいずれの組み合わせを含むキメラICAM-1を含有してもよい。図2Bは、ICAM-1の5つのドメインの全てを含有する本発明のキメラICAM-1/IgA2分子(配列番号8)のアミノ酸配列を示す。太字のN'は、オリゴ糖部分が植物細胞、ならびに哺乳類動物および昆虫細胞におけるグリコシル化中に連結したアスパラギン残基を表す。当業者は、グリコシル化部位はトリペプチドAsn-X-Ser/Thr(ここで、Xはプロリンおよびアスパラギン酸を除くいずれのアミノ酸であってもよい)であることがわかるであろう(KornfeldおよびKornfeld, Annu Rev Biochem 54:631-664, 1985)。従って、当業者は、どのタンパク質のアミノ酸が植物特異的グリコシル化を有するかはどのICAM-1のドメインが存在するかに依存することがわかるであろう。ICAM-1の配列およびドメイン境界は公知である(Stauntonら, Cell 52:925-933, 1988を参照)ので、当業者には、いずれの5つのICAM-1ドメインのいずれの潜在的組み合わせについても植物特異的グリコシル化部位を決定する方法が明らかであろう。
【0074】
本発明の他の好ましいICAM-1態様および実施形態においては、植物特異的グリコシル化を有しかつICAM-1細胞外ドメイン1、2、3、4および5のいずれかの組合わせを有するキメラICAM-1分子を含有するイムノアドヘシンは、さらに上記キメラICAM-1分子と結合したJ鎖および分泌成分を含んでなる。キメラICAM-1分子でできたように、当業者はJ鎖および分泌成分配列における植物特異的グリコシル化の部位を同定することができるであろう。同じ原理は、キメラICAM-1以外のキメラ受容体タンパク質を含有する本発明のイムノアドヘシンにも適用される。
【0075】
本発明は、植物特異的グリコシル化を有するイムノアドヘシンであって、免疫グロブリン重鎖がIgA(配列番号15-18および52-53)、IgA1(配列番号15-16および52)、IgA2(配列番号17および53)、IgG1(配列番号19-20および54)、IgG2(配列番号21-22および55)、IgG3(配列番号23-24および56)、IgG4(配列番号25-26および57)、IgM(配列番号46-47および61-62)、IgD(配列番号27-33、35-36、38、40、および42)、IgE(配列番号44-45および59-60)、およびキメラ免疫グロブリン重鎖の群から選択されるキメラ分子、例えば、キメラICAM-1分子を含有する上記イムノアドヘシンを意図する。当業者であれば、これらの免疫グロブリン重鎖配列のどれが、またはキメラ免疫グロブリン重鎖に組合わされた免疫グロブリン重鎖配列のどの組合わせがイムノアドヘシンのキメラ分子中のグリコシル化部位の数および位置に影響を与えうるかがわかるであろう。キメラ分子に関してできたように、当業者は構築しうる様々なキメラ免疫グロブリン重鎖配列を含む免疫グロブリン重鎖配列における植物特異的グリコシル化の部位を同定することができるであろう。
【0076】
本発明においてはイムノアドヘシン機能性誘導体も提供される。「機能性誘導体」は、本発明による効用を可能にするタンパク質の機能、例えばタンパク質に対して特異的な抗体との反応性、酵素活性または結合活性の少なくとも一部分を保持する本発明のポリペプチドまたは核酸の「化学誘導体」、「断片」、または「変異体」を意味する。当技術分野では、遺伝子コードの縮重により多数の異なる核酸配列が同じアミノ酸配列をコードしうることはよく知られている。当技術分野では、アミノ酸の保存的変化を行って元来の機能性を保持するタンパク質またはポリペプチドに到達しうることもよく知られている。両事例において、全ての置換(permutations)がこの開示によりカバーされることを意図する。
【0077】
誘導体はまた、大量および/または比較的純粋なまたは単離された量のイムノアドヘシンを生産しうるアフィニティ精製標識を含むように日常的方法により遺伝子操作することもできる。イムノアドヘシンの1以上の成分中に組込むことができて、好ましくは標識の不在のもとで有するイムノアドヘシンの所望の結合活性を破壊しない、多くの異なるバージョンの標識が存在する。かかる標識は、本発明のイムノアドヘシンをコードする核酸配列と融合して、発現可能なコード核酸配列として遺伝子操作することができる。かかる標識はさらに、例えば市販の酵素を用いて除去しうるように遺伝子操作することができる。
【0078】
さらに、コドンを欠失させるかまたは縮重コドン以外のコドンを用いて1以上のコドンを置換して、構造的に改変されたポリペプチドであるが、未改変の核酸分子が産生するポリペプチドと実質的に同じ効用活性を有するポリペプチドを産生することができる。当技術分野で認識されているように、核酸分子間相違が遺伝子コードの縮重に無関係であっても、2つのポリペプチド、従ってそれらを産生する2つの核酸分子が機能的に等価でありうる。
【0079】
この種の遺伝子操作、および産生後の化学的誘導体化を実施して、例えば、安定性、溶解度、吸収、生物学的または治療的効果、および/または生物学的半減期を改良することができる。かかる効果を媒介することができる部分は、例えば、「Remington's Pharmaceutical Sciences(レミントンの製薬科学)」, 18th ed., Mack Publishing Co., Easton, PA (1990)に開示されている。本発明の範囲内にあると意図する機能的誘導体は、未変性ポリペプチドと比較して1以上のアミノ酸を欠くまたは追加もしくは置換したアミノ酸を含有するいずれかの「変異体」ポリペプチドである。変異体は、天然複合体成分から、タンパク質DNAコード配列を適当に改変して、C末端、N末端のおよび/または未変性配列内の1以上の部位において1以上のアミノ酸に対するコードを付加し、除去し、および/または改変することにより誘導することができる。かかる付加した、置換したおよび/または追加のアミノ酸を有する変異体は、1以上の上記未変性タンパク質を特徴付ける部分を保持することは当然である。
【0080】
欠失、挿入および/または置換したアミノ酸残基をもつタンパク質の機能的誘導体は、当業者が熟知する標準技術を利用して調製することができる。例えば、機能的誘導体の改変成分は位置指定突然変異技術を用いて産生することができ(Adelmanら, 1983, DNA 2:183が例示したように)、この方法では、DNAコード配列中のヌクレオチドを改変したコード配列を産生するように改変し、その後、上に記載した技術を用いてこの組換えDNAを原核生物もしくは真核生物において発現させる。あるいは、アミノ酸欠失、挿入および/または置換をもつタンパク質を、直接化学合成により当技術分野でよく知られた方法を利用して好都合に調製することができる。タンパク質の機能的誘導体は、典型的には未変性タンパク質と同じ定性的な生物学的活性を示す。
【0081】
さらに、本発明のイムノアドヘシンは、改変した受容体タンパク質/Igイムノアドヘシンそのものだけでなく、他の未変性受容体タンパク質ファミリーメンバー、アイソタイプ,および/または他の、例えば、ヒト、霊長類、げっ歯類、イヌ類、ネコ類、ウシ類、鳥類などの相同的アミノ酸配列も含む。さらに、イムノアドヘシンに利用されるIg型は異なってもよく、例えば、所与の種内または種外の異なるIgファミリーメンバーを想定することができる。例えば、ICAMおよびIgは多様であり、よく知られている配列を有するので、当業者はこれを利用して、治療を受ける所与の生物において、多かれ少なかれ異なる効用を有する異なるイムノアドヘシンを作製することができる。他のイムノアドヘシンを作製するのに利用しうるICAM-1相同性を有する分子の例を、全てを網羅するものでないが、説明する表として次表に掲げる。
【表3】



【0082】
同様に、ヒトおよび他種の両方の様々なIg分子の多数の重鎖定常域を、本明細書に記載したキメラのこれらの特定Ig域に置換挿入しうることは公知である。
【0083】
C.イムノアドヘシンを含有するベクター、細胞および植物
本発明はまた、本発明のイムノアドヘシンを含有する発現およびクローニングベクター、細胞および植物も意図する。イムノアドヘシンの様々な部分をコードする遺伝子を単離する技術は当業者によく知られていて、これを応用し、様々な所要の遺伝子を発現ベクターおよびクローニングベクター中に挿入し、これらのベクターを細胞およびトランスジェニック植物中に導入することができる。
【0084】
本発明はイムノアドヘシンをアセンブルする方法であって、一生物中にキメラ受容体タンパク質分子(例えばICAM-1分子)および免疫グロブリンJ鎖をコードするDNAセグメントを導入するステップ、ならびに同じ生物中に分泌成分をコードするDNAを導入するステップを含むものである上記方法を意図する。好ましい分泌成分は、少なくともヒトポリ免疫グロブリン受容体(pIgR)アミノ酸残基配列のアミノ酸残基1〜残基ほぼ606のセグメントまたは他の種由来の類似アミノ酸残基を含有する(Mostov, Ann Dev. Immu. 12:63-84 1994)。
【0085】
本発明は、本発明のイムノアドヘシンを含有する、植物細胞を含む真核生物細胞を意図する。本発明はまた、本発明のイムノアドヘシンの様々な成分をコードするヌクレオチド配列を含有する植物細胞も意図する。当業者は、分泌成分保護タンパク質ならびにキメラ受容体タンパク質分子およびJ鎖をコードするヌクレオチド配列が典型的にはプロモーターと機能しうる形で連結されかつ発現ベクターまたはカセットの部分として存在することを理解しうる。典型的には、もし使用する真核生物細胞が植物細胞であれば、使用するプロモーターは植物細胞中で機能しうるプロモーターであろう。キメラ受容体タンパク質遺伝子、分泌成分遺伝子およびJ鎖遺伝子を単離した後、これらを典型的には発現ベクター中で転写プロモーターと機能しうる形で連結する。本発明はまた、キメラ受容体タンパク質分子をコードするヌクレオチド配列を含有しかつ発現のための調節配列と機能しうる形で連結された発現ベクターも意図する。これらの発現ベクターは、特定の細胞において発現させるヌクレオチド配列を、ヌクレオチド配列の転写および発現をもたらすプロモーター配列の3'に置く。発現ベクターはまた、この転写の効率を改善する様々なエンハンサー配列も含有することができる。さらに、ターミネーター、ポリアデニル化(ポリA)部位およびその他の3'末端プロセシングシグナルなどの配列を含んで、特定の細胞内で転写されるヌクレオチド配列の量を増強することができる。
【0086】
選択した生物中の成分の発現は、独立して複製するプラスミドから、または染色体の永久成分から、または一過的にその成分をコードする転写物を生じうるいずれのDNA片から誘導してもよい。形質転換に好適な生物は、原核生物または真核生物のいずれであってもよい。複合体の成分の導入は、直接DNA形質転換により、生物中への微粒子銃送達(biolistic delivery)により、または他の生物の媒介により、例えば組換えアグロバクテリアの植物細胞に対する作用により行うことができる。トランスジェニック生物中のタンパク質の発現は、通常、適当なプロモーターエレメントとポリアデニル化シグナルの同時導入を必要とする。本発明の一実施形態においては、プロモーターエレメントは潜在的に全ての植物細胞において成分の構成的発現をもたらす。ほとんどまたは全ての細胞において起こる構成的発現は、アセンブリーが起こるために必要な条件として、前駆体が同じ細胞膜内系を占めうることを保証するであろう。
【0087】
宿主細胞と共存しうる発現ベクター、好ましくは、植物細胞と共存しうる発現ベクターを本発明の遺伝子を発現するために利用する。植物において遺伝子を発現するために有用な典型的な発現ベクターは当技術分野でよく知られていて、Rogersら, Meth. in Enzymol., 153:253-277 (1987)に記載のアグロバクテリア・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)の腫瘍誘導(Ti)プラスミドから誘導されるベクターを含む。しかし、複数の他の発現ベクター系が植物において機能することが知られている。例えば、Vermaら, PCT公開特許第W087/00551号;ならびにCockingおよびDavey, Science, 236:1259- 1262 (1987)を参照。
【0088】
上記の発現ベクターは、プロモーターを含む発現制御エレメントを含有する。発現させる遺伝子を発現ベクターと機能しうる形で連結して、プロモーター配列にRNAポリメラーゼ結合および所望のポリペプチドコード遺伝子の合成を指令させる。遺伝子を発現するために有用なのは、誘導しうる、ウイルス由来の、合成由来の、構成的な、そして調節されたプロモーターである。どの発現ベクターを用いるかおよび究極的に本発明のイムノアドヘシン部分をコードするヌクレオチド配列をどのプロモーターに機能しうる形で連結するかの選択は、当技術分野でよく知られるように、所望の機能的特性、例えばタンパク質発現の位置およびタイミングならびに形質転換すべき宿主細胞に直接依存し、これらは組換えDNA分子を構築する技術における固有の制限である。しかし、本発明を実施するのに有用な発現ベクターは、少なくとも複製を、そして好ましくは機能しうる形で連結されたDNAセグメントに含まれるポリペプチドをコードする遺伝子の発現も指令することができる。
【0089】
好ましい実施形態においては、遺伝子を発現するために用いる発現ベクターは、植物細胞において有効な選択マーカー、好ましくは薬物耐性選択マーカーを含む。好ましい薬物選択マーカーは、その発現がカナマイシン耐性を生じる遺伝子、すなわちノパリン合成酵素プロモーター、Tn5ネオマイシンホスホトランスフェラーゼII、およびノパリン合成酵素3'非翻訳領域を含有するキメラ遺伝子であり、Rogersら, 「Methods For Plant Molecular Biology(植物分子生物学の方法)」, A. WeissbachおよびH. Weissbach編, Academic Press Inc., San Diego, Calif. (1988)に記載されている。有用な植物発現ベクターはPharmacia(Piscataway, N.J.)から市販されている。植物の外来タンパク質を発現する発現ベクターおよびプロモーターは、本明細書に参照により組み入れられる米国特許第5,188,642号;第5,349,124号;第5,352,605号、および第5,034,322号に記載されている。
【0090】
相補的粘着性末端を経由してDNAをベクターと機能しうる形で連結するための様々な方法が開発されている。例えば、相補的ホモポリマートラック(homopolymer track)を、ベクターDNA中に挿入するDNAセグメントに加えることができる。次いでベクターとDNAセグメントを、相補的ホモポリマー尾部の間で水素結合により接合し、組換えDNA分子を形成させる。あるいは、1以上の制限酵素切断部位を含有する合成リンカーを用いてDNAセグメントを発現ベクターに接合することができる。平滑末端DNAセグメントを大過剰の合成リンカー分子とともに、平滑末端DNA分子のライゲーションを触媒することができる酵素、例えばバクテリオファージT4 DNAリガーゼの存在のもとでインキュベートすることにより、合成リンカーを平滑末端DNAセグメントに結合する。こうして得る反応の産物は、その末端に合成リンカー配列を運ぶDNAセグメントである。次いでこれらのDNAセグメントを適当な制限酵素を用いて切断し、そしてそれらの合成リンカーの末端と適合しうる末端を生じる酵素を用いて切断しておいた発現ベクターとライゲートする。様々な制限酵素切断部位を含有する合成リンカーがNew England BioLabs, Beverly, Massを含む複数の供給元から市販されている。
【0091】
分泌成分、J鎖、およびキメラ受容体タンパク質分子、例えば本発明のICAM-1をコードするヌクレオチド配列を直接導入するか、またはそれぞれの成分を植物細胞中に導入し、植物を再生し、様々な成分をクロスハイブリダイズし、そして全所要成分を含有する最終植物細胞を産生することにより同じ植物細胞中に導入する。
【0092】
いずれの方法を利用して本発明のイムノアドヘシンの成分をコードする核酸配列を真核生物細胞中に導入してもよい。例えば、植物中に遺伝子を導入する方法としては、アグロバクテリアが媒介する植物形質転換、プロトプラスト形質転換、花粉中への遺伝子導入、生殖器中への注入および未成熟胚中への注入が挙げられる。これらの方法はそれぞれ異なる利点と欠点を有する。従って、真核生物細胞または植物種中に遺伝子を導入する特定の1つの方法が他の真核生物細胞または植物種にとって必ずしも最も有効であるとは限らない。
【0093】
アグロバクテリア・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)が媒介する導入は植物細胞中に遺伝子を導入するために広く応用しうる系であり、その理由は、プロトプラストから無処置の植物を再生させる必要なしに、DNAを全植物組織中に導入しうるからである。DNAを植物細胞中に導入するためのアグロバクテリアが媒介する発現ベクターの利用は当技術分野でよく知られている。例えば、Fraleyら, Biotechnology, 3:629 (1985)、およびRogersら, Methods in Enzymology, 153:253-277 (1987)に記載の方法を参照。さらに、Ti-DNAの組込みは、再配列が少ししか生じない比較的正確なプロセスである。Spielmannら, Mol. Gen. Genet., 205:34 (1986)、およびJorgensenら, Mol. Gen. Genet., 207:471 (1987)に記載のように、導入すべきDNAの領域を境界配列により規定し、介入DNAを通常、植物ゲノム中に挿入する。最近のアグロバクテリア形質転換ベクターは、Kleeら, 「Plant DNA Infectious Agents(植物DNA媒介物)」, T. HohnおよびJ. Schell編, Springer-Verlag, New York, pp.179-203 (1985)に記載のように、大腸菌(Escherichia coli)ならびにアグロバクテリア中で複製することができて、好都合な遺伝子操作を可能にする。さらなる最近のアグロバクテリアが媒介する遺伝子導入用ベクターの技術的進歩は、ベクター中の遺伝子および制限酵素切断部位の配置を改良して様々なポリペプチドをコードする遺伝子を発現しうるベクターの構築を容易にしている。Rogersら, 「Methods in Enzymology(酵素学の方法)」, 153:253 (1987)が記載したベクターは、挿入ポリペプチドコード遺伝子の直接発現のためのプロモーターおよびポリアデニル化部位にフランキングした好都合な多重リンカー領域を有し、本発明の目的に好適である。
【0094】
アグロバクテリアが媒介する形質転換が効率的であるこれらの植物種において、この方法は容易でありかつ遺伝子導入の性質が規定されているので、優れている。葉ディスク(leaf disk)およびその他の組織のアグロバクテリアが媒介する形質転換は、アグロバクテリア・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)が感染する植物種に限定されるようである。従って、アグロバクテリアが媒介する形質転換は双子葉類植物が最も効率的である。
【0095】
Bytebierら, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 84:5345 (1987)に記載のように、アスパラガスのトランスジェニック植物はアグロバクテリアベクターを用いて作られているが、アグロバクテリア用の天然宿主である単子葉類植物は少ししかないようである。従って、コメ、トウモロコシ、およびコムギなどの市販の重要な穀粒は代わりの方法を用いて形質転換しなければならない。植物プロトプラストの形質転換は、リン酸カルシウム沈降、ポリエチレングリコール処理、エレクトロポレーション、およびこれらの処理の組合わせに基づく方法を利用して達成することができる。例えば、Potrykusら, Mol. Gen. Genet., 199:183 (1985);Lorzら, Mol. Gen. Genet., 199:178 (1985);Frommら, Nature, 319:791 (1986);Uchimiyaら, Mol. Gen. Genet., 204:204 (1986);Callisら, Genes and Development, 1:1183 (1987);およびMarcotteら, Nature, 335:454 (1988)を参照。
【0096】
これらの方法の様々な植物種への応用は、その特定植物をプロトプラストから再生する能力に依存する。穀類のプロトプラストからの再生を説明する方法は、Fujimuraら, Plant Tissue Culture Letters, 2:74 (1985);Toriyamaら, Theor Appl. Genet., 73:16 (1986);Yamadaら, Plant Cell Rep., 4:85 (1986);Abdullahら, Biotechnology, 4:1087 (1986)に記載されている。
【0097】
プロトプラストからうまく再生できない植物種を形質転換するには、DNAを無傷の細胞または組織中に導入する他の方法を利用することができる。例えば、未成熟胚または外植体からの穀類の再生は、Vasil, Biotechnology, 6:397 (1988)に記載のように実施することができる。さらに、「粒子銃(particle gun)」または高速度ミクロプロジェクチル(microprojectile)技術を利用することができる。Kleinら, Nature, 327:70 (1987);Kleinら, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 85:8502 (1988);およびMcCabeら, Biotechnology, 6:923 (1988)に記載のように、かかる技術を用いて、DNAを毎秒百ないし数百メートルの速度に加速した小さい(0.525μm)金属粒子の表面に載せて、細胞壁を通過して細胞質中に運ぶ。金属粒子は細胞の数層を通過して貫入し、そして組織外植体内の細胞の形質転換を可能にする。金属粒子を用いてトウモロコシ細胞を成功裏に形質転換し、稔性で、安定して形質転換されたタバコおよびダイズ植物が生産されている。組織外植体の形質転換は、プロトプラスト段階を通る継代の必要性を無くしてトランスジェニック植物の生産を速める。
【0098】
DNAはまた、Zhouら, Methods in Enzymology, 101:433 (1983);D. Hess, Intern Rev. Cytol., 107:367 (1987);Luoら, Plant Mol. Biol. Reporter, 6:165 (1988)に記載のように、花粉への直接DNA導入により植物中に導入することもできる。ポリペプチドをコードする遺伝子の発現は、Penaら, Nature, 325:274 (1987)に記載のように、DNAの植物生殖器官中への注入により行うことができる。DNAはまた、Neuhausら, Theor. Appl. Genet., 75:30 (1987);およびBenbrookら, 「Proceedings Bio Expo 1986(バイオ・エクスポ1986の予稿集)」, Butterworth, Stoneham, Mass., pp. 27-54 (1986)に記載のように、直接、未成熟胚の細胞中に注入して乾燥胚を再水和することもできる。
【0099】
単一植物プロトプラストまたは様々な外植体からの植物再生は、当技術分野でよく知られている。例えば、「Methods for Plant Molecular Biology(植物分子生物学の方法)」, A. Weissbach and H. Weissbach編, Academic Press, Inc., San Diego, Calif. (1988)を参照。この再生および成長プロセスは、形質転換細胞およびシュートの選択、形質転換体シュートの発根および土壌における小植物成長のステップを含む。
【0100】
アグロバクテリア・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)により導入した外来遺伝子を含有する植物の葉外植体からの再生は、Horschら, Science, 227:1229-1231 (1985)に記載のように達成することができる。この方法では、Fraleyら, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 80:4803 (1983)に記載のように、形質転換体を選択剤の存在のもとでかつ形質転換する植物種のシュートの再生を誘導する培地中で成長させる。この方法は、典型的には2〜4週以内にシュートを産生するので、次いでこれらの形質転換体シュートを、選択剤および細菌増殖を防止する抗生物質を含有する適当な発根誘導培地へ移す。小植物を形成する選択剤の存在のもとで発根した形質転換体シュートを次いで土壌に移植して根を産生させる。これらの方法は、使用する特定の植物種に依存して変化し、そのような変法は当技術分野でよく知られている。
【0101】
本発明のイムノアドヘシンは、双子葉類または単子葉類、ナス科、アルファルファ、マメ科植物、またはタバコ植物から誘導された植物細胞を含むいずれの植物細胞において生産してもよい。
【0102】
本発明のトランスジェニック植物は、当業者に知られるいずれかの方法を用いて形質転換することができるいずれの交配しうる植物種から生産してもよい。有用な植物種は、タバコ、トマト、マメ科植物、アルファルファ、オーク、カエデを含む双子葉類植物;イネ科草本、トウモロコシ、穀粒、オートムギ、コムギ、オオムギを含む単子葉類植物;および裸子植物、針葉樹、トクサ(horsetail)、クラブコケ(clubmosses)、ゼニゴケ、ホーンウォルト(hornwort)、コケ、藻類、配偶体(gametophyte)、胞子体またはシダ植物を含む下等植物である。
【0103】
本発明はまた、哺乳類動物細胞を含む真核生物細胞中にイムノアドヘシンを発現することも意図する。当業者は、哺乳類動物細胞においてイムノアドヘシンを発現するのに利用しうる様々な系を理解しうるし、これらの系を容易に改変して、これらの細胞においてイムノアドヘシンおよびキメラタンパク質受容体、例えばICAM-1分子を発現させることができる。好ましいICAM実施形態においては、本発明のキメラICAM-1、J鎖および分泌成分分子を先にAruffoら, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 84:8573-8577 (1987)が記載しているベクターpCDM8中に配置する。PCDM8構築物の使用は決してユニークでなく、cog細胞発現系を使用せずかつキメラICAM-1およびイムノアドヘシンの他の分子とともに使用しうる多数の他の真核生物発現系が利用可能である。
【0104】
D.イムノアドヘシンを含有する組成物
本発明はまた、本発明のイムノアドヘシンと一緒に、植物巨大分子または材料を含有する組成物も意図する。典型的には、これらの植物巨大分子または植物材料は本発明に有用ないずれかの植物から誘導される。植物巨大分子は本発明のイムノアドヘシンと一緒に、例えば、植物細胞中に、植物細胞の抽出物中に、または植物中に存在する。組成物中で本発明のイムノアドヘシンと関連した典型的な植物巨大分子は、リブロース二リン酸カルボキシラーゼ、集光性複合体色素(LHCP)、二次代謝物またはクロロフィルである。本発明の組成物は、水を除くマス(mass)基準で0.01%〜99%の濃度の植物材料または植物巨大分子を有する。他の組成物は、水を除くマス基準で1%〜99%の濃度で存在する本発明のイムノアドヘシンを有する組成物を含む。他の組成物は水を除くマス基準で50%〜90%の濃度のイムノアドヘシンを含む。
【0105】
本発明の組成物は、水を除くマス基準で0.1%〜5%の濃度の植物巨大分子を含有してもよい。典型的には、組成物中に存在するマスは植物巨大分子と本発明のイムノアドヘシンとからなりうる。本発明のイムノアドヘシンがより高いまたはより低い濃度で存在する場合、組成物中に存在する植物巨大分子の濃度は逆に変化しうる。他の実施形態においては、植物巨大分子の組成は水を除くマス基準で0.12%〜1%の濃度で存在する。
【0106】
本発明は、次の全てまたは部分を含んでなる物質の組成物を意図する:キメラタンパク質受容体分子(例えば、ICAM-1分子)、J鎖または分泌成分。これらの成分は複合体を形成し、先に記載したように結合している。典型的には、該組成物はまた、植物から誘導された分子も含有する。この組成物はまた、機能的イムノアドヘシンおよび植物から誘導された分子を生じる抽出プロセスの後に得ることもできる。
【0107】
抽出法は、複合体を含有する植物に力を適用して植物のアポプラスト区画(apoplastic compartment)を破壊して上記複合体を遊離するステップを含んでなる。その力はアポプラスト液(apoplastic liquid)を遊離するための一次的方法である剪断に関わる。
【0108】
全植物または植物抽出物はイムノアドヘシンと植物の様々な他の巨大分子の混合物を含有する。混合物中に含有される巨大分子はリブロース二リン酸カルボキシラーゼ(RuBisCo)またはRuBisCoの断片である。他の巨大分子はLHCPである。他の分子はクロロフィルである。
【0109】
イムノアドヘシンを含有する組成物を調製する他の有用な方法は、植物材料に対する様々な溶媒による抽出と真空の適用がある。本発明の組成物は水を除くマス基準でほぼ0.1%〜5%の濃度の植物巨大分子を含有しうる。
【0110】
本発明はまた、患者または動物の治療に使用しうる治療用組成物も意図する。治療用組成物の投与は、植物または他のトランスジェニック生物からの抽出前または後であってもよい。一旦抽出したら、イムノアドヘシンを、さらにサイズ排除、イオン交換またはアフィニティクロマトグラフィなどの通常の技術により精製することができる。植物分子を複合体とともに同時投与してもよい。
【0111】
本発明はまた、植物由来の分子と動物由来の分子との相対的比率を変えうることも意図する。RuBiscoまたはクロロフィルなどの特定の植物タンパク質の量は、水を除くマス基準で抽出物の0.01%以上または99.9%程度であってもよい。
【0112】
本発明はまた、特定の治療用成分のさらなる精製を行わず、イムノアドヘシンを含有する治療用植物抽出物を直接使用することも意図する。投与は、局所適用、経口摂取、鼻スプレー、または抗体を粘膜の標的病原体に送達するために適当ないずれの他の方法によってもよい。
【0113】
E.医薬組成物、製剤、および投与経路
本明細書に記載のイムノアドヘシンは、好ましくは適当な医薬組成物の剤形で患者に投与することができる。かかる組成物は、上記の成分に追加の成分、または上記の成分の代わりの成分を含んでもよい。組成物は、好ましくは、投与したときに治療および予防のいずれかまたは両方の特性を示す。かかる組成物の調製は、当技術分野の日常的手法によって行うことができ、様々な剤形、例えば、溶液、懸濁液または乳化液、および摂取前に液中に包含されるのに適した固体の剤形が考えられる。ポリペプチドおよびタンパク質の製剤と投与の技術は、「Remington's Pharmaceutical Sciences(レミントンの製薬科学)」, Mack Publishing Co., Easton, PAの最新版に見出すことができる。これらの方法を用いると、当業者は、本発明のイムノアドヘシンを利用して無駄な実験なしに成功することができる。
【0114】
1. 投与経路
本発明を投与するための適当な経路としては、例えば、経口、経鼻、吸入、眼内、咽頭、気管支、経粘膜、または腸投与が挙げられる。あるいは、該化合物を局所的方法で、例えば該化合物の注射またはその他の適用を経由して、好ましい作用部位へ投与してもよい。
【0115】
2. 製剤
本発明の医薬組成物は公知の方法で、例えば、通常の混合、溶解、造粒、糖衣製剤、水簸、乳化、カプセル化、封入または凍結乾燥プロセスの方法により、製造することができる。賦形剤および/または他の助剤を含む1以上の生理学的に許容される担体を利用して、活性化合物の医薬調製物への加工を容易にすることができる。適当な製剤は、選択する特定の投与経路に依存する。
【0116】
注射用には、本発明の薬剤を水溶液中で、好ましくはハンク液(Hanks's solution)、リンゲル液(Ringer's solution)、または生理食塩水などの生理学的に適合しうるバッファー中で製剤することができる。経粘膜投与用には、浸透すべきバリヤーに対して適当な浸透剤を製剤に使用する。かかる浸透剤は当技術分野で公知である。
【0117】
経口投与用には、化合物を、当技術分野ではよく知られる製薬上許容される担体を用いて容易に製剤することができる。かかる担体は、本発明の化合物を錠剤、ピル剤、糖衣錠、カプセル、液剤、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などとして、治療する患者による経口摂取用に製剤することを可能にする。適当な担体としては、例えばラクトース、ショ糖、マンニトールおよび/またはソルビトールを含む糖類;例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル-セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース調製物、および/またはポリビニルピロリドン(PVP)などのフィラーのような賦形剤が挙げられる。もし所望であれば、架橋ポリビニルピロリジン、寒天、またはアルギン酸またはアルギン酸ナトリウムなどのその塩のような崩壊剤を加えることができる。
【0118】
糖衣コアには適当なコーティングを施す。この目的で、任意にアラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポルゲル、ポリエチレングリコールおよび/または二酸化チタン、ラッカー溶液および適当な有機溶媒または溶媒混合物を含有してもよい濃縮糖溶液を用いることができる。染料または色素を、様々な組合わせの活性化合物用量を同定するためにまたは特徴づけるために錠剤または糖衣コーティングに加えてもよい。
【0119】
経口で使用しうる医薬調製物としては、ゼラチンで作ったプッシュフィット(push-fit)カプセル、ならびにゼラチンとグリセロールまたはソルビトールなどの可塑剤で作ったシールしたソフトカプセルが挙げられる。プッシュフィットカプセルは、ラクトースなどのフィラー、デンプンなどのバインダー、および/またはタルクもしくはステアリン酸カルシウムなどの潤滑剤、ならびに任意に安定化剤と混合した活性成分を含有することができる。ソフトカプセルでは、活性化合物を、脂肪油、液状パラフィン、または液状ポリエチレングリコールなどの適当な液中に溶解または懸濁させてもよい。さらに、安定化剤を加えてもよい。経口投与用の全ての製剤は、投与量がかかる投与用に適当でなければならない。
【0120】
バッカル投与用の組成物は、通常の方法で製剤した錠またはロゼンジ錠の剤形をとることができる。
【0121】
吸入による投与用には、本発明により使用する化合物を、加圧パックまたは噴霧器から適当な噴霧剤、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の適当なガスを使用して、エーロゾルスプレーを提示する剤形で送達するのが好都合である。加圧エーロゾルの場合、投与量単位は計量した量だけ送達するバルブを付けることにより決定することができる。吸入器または吹送器に使用する、例えばゼラチンのカプセルとカートリッジは、化合物とラクトースまたはデンプンなどの適当な粉末基剤との粉末混合物を含有するように製剤することができる。
【0122】
あるいは、活性成分が粉末剤形であって、使用前に適当なビヒクル、例えばパイロジェンを含まない水を用いて構成することができる。
【0123】
さらに、化合物を徐放性製剤として作製することができる。かかる長期間作用する製剤は移植(例えば、皮下または筋内に)によりまたは筋内注射により投与することができる。従って、例えば、化合物を適当なポリマーまたは疎水性材料(例えば、許容しうるオイル中の乳化液として)もしくはイオン交換樹脂を用いて、または難溶性誘導体、例えば難溶性塩として製剤してもよい。
【0124】
さらに、化合物を、治療薬を含有する固体疎水性ポリマーの半浸透性基剤などの徐放系を用いて送達することができる。様々な徐放性材料が確立されていて当業者によく知られている。徐放性カプセルは、その化学的性質に依存して化合物を数週間から100日以上放出する。治療薬の化学的性質と生物学的安定性によってはタンパク質安定化のためのさらなる方法を利用することができる。
【0125】
医薬組成物はまた、適当な固体またはゲル相の担体または賦形剤を含んでもよい。かかる単体もしくは賦形剤の例としては、限定されるものでないが、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、およびポリエチレングリコールなどのポリマーが挙げられる。
【0126】
製薬上適合しうる塩は、限定されるものでないが、塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、クエン酸を含む多数の酸を用いて作ることができる。塩は水または他のプロトン溶媒中において対応する遊離塩基の形態より可溶性になる傾向がある。溶液においては、pHの操作も所望の特性を最適化するために日常的に利用される。
【0127】
3.有効投与量および投与体制の決定
本発明に使用するのに適当な医薬組成物は、意図する目的、例えば、治療および/または予防上の用途を達成するために有効な量の活性成分を含有する組成物を含む。製薬上有効な量は、治療する被験者の疾患の症候群を防止し、軽減しもしくは寛解するかまたは延命するために有効な化合物の量を意味する。製薬上有効な量の決定は十分、当業者の能力の範囲内にあり、典型的にはほぼ0.5μg/kg/日〜ほぼ500g/kg/日を、そして個々の投与量は典型的にはほぼ1ナノグラム〜数グラムのイムノアドヘシンを含むことを想定するであろう。
【0128】
本発明の方法に使用されるいずれの化合物についても、治療上有効な用量は最初に細胞培養アッセイから計算することができる。例えば、様々な投与量を異なる動物または細胞培養に投与しそして効果を比較してもよい。この方法で所望の濃度範囲を確認し、それに従ってかかる量を調製し投与することができる。最適化は当業者が日常的に行うことである。
【0129】
当業者は、細胞または実験動物における標準の製薬的方法による製薬上の効能を考えるとともに毒性も考え、例えばLD50(集団の50%に対する致死用量)およびED50(集団の50%において治療有効用量)を確認することも考える。毒性と治療効果の用量比は治療指数であり、LD50とED50の比として表すことができる。高い治療指数を示す化合物が好ましい。これらの細胞培養アッセイおよび動物研究から得られるデータを製剤に使用してヒトに用いる投与量範囲を処方することができる。かかる化合物の投与量は好ましくは、ED50を含みかつ毒性が少ないかまたは無毒の濃度範囲内にある。投与量はこの濃度範囲内で、使用する投与剤形および利用する投与経路に依って変化する。正確な処方、投与経路および投与量は個々の医師が患者の状態を判断して選択する(例えば、Finglら, 1975, 「The Pharmacological Basis of Therapeutics(治療薬の薬理学的基礎)」, Ch.1 p.1を参照)
投与量および頻度は、医薬上の、例えば治療および/または予防効果を維持するかあるいは与えるために十分なイムノアドヘシンの粘膜レベルを提供するように調節する。最小有効濃度(MEC)はそれぞれのイムノアドヘシンおよびイムノアドヘシン製剤に対して変化しうるが、in vitroおよび/またはin vivoデータから計算することができる。MECを達成するために必要な投与量は個々の特性および投与経路に依存しうる。しかし、本明細書に記載のアッセイを利用して粘膜濃度を決定することができ、次いでさらに量および正確な処方を最適化することができる。
【0130】
投与間隔もMEC値を用いて決定することができる。化合物を、MECを超える粘膜レベルが時間の10-90%、時間の30-90%、または最も好ましくは時間の50-90%について維持される治療体制を用いて投与することができる。
【0131】
組成物は、所望であれば、活性成分を含有する1以上の単位用量剤形を含有しうるパックまたは調剤機(dispenser device)で提供することができる。パックは例えば、ブリスターパックなどの金属またはプラスチックフォイルから成ってもよい。パックまたは調剤機は投与のための指示書を付随してもよい。パックまたは調剤機はまた、医薬品の製造、使用、または販売を規制する行政当局が定めた様式で容器に取付けられた注意書きを付随し、その注意書きがヒトまたは獣医学用投与に対するイムノアドヘシンの剤形に対する当局の認可を表してもよい。かかる注意書きは、規制医薬、または認可製品挿入物に対する米国食品医薬庁(U. S. Food and Drug Administration)の認可標識であってもよい。適合しうる製薬上の担体で製剤した本発明の化合物を含んでなる組成物はまた、調製し、適当な容器中に容れ、そして適応症の治療、例えば宿主生物/患者タンパク質受容体分子が媒介する疾患の治療または予防について標識してもよい。
【0132】
F.ICAMが媒介する病気の治療および予防法
例えば、ライノウイルス感染および/または風邪とともに起こる症候群に対抗するために、本発明の治療および/または予防用イムノアドヘシンキメラを必要とする患者に、所望のイムノアドヘシンの医薬上有効な量を、好ましくは医薬組成物の部分として上記のように決定し、生産し、そして投与することができる。これらの製剤および送達様式は広く変化しうる。以下に記載したのは、ヒトおよび他の動物の両方において、有効量および毒性を推論するために利用することができ、次いで治療および予防のパラメーターおよび体制を決定するのに好都合に利用しうる予備的方法である。これらの方法は単に説明であり、本発明を限定することを意図するものでない。さらに、これらの方法は当業者にとって日常的なものである。
【0133】
1.ヒトのライノウイルス感染性を軽減するイムノアドヘシンの能力:用量エスカレーション耐性研究(Dose Escalation Tolerance Study)
本発明のイムノアドヘシンは、例えば、感染に対するイムノアドヘシンの投与、例えば鼻内投与の効果を決定する無作為管理下試験(randomized contolled trial)を用いて試験することができる。他の投与経路を利用してもよい。効果をモニターするために利用しうる様々なアッセイが存在し、例えば病気症候群、例えばライノウイルス感染により発症する風邪症候群を評価するアッセイであるIL-8応答アッセイが挙げられる。これらの研究は、患者が摂取したイムノアドヘシンがライノウイルス感染を予防または治療しうる程度を評価してもよい。例えば、健康なまたは非健康な被験者に、例えば、ライノウイルス接種および/または病気進行の前後にイムノアドヘシンを投与して、ある時間経過にわたって評価してもよい。使用する臨床プロトコルは、組換え可溶性ICAM-1分子のライノウイルス感染に対する効果を評価するために先に使用したプロトコル、またはその改変プロトコルに基づいてもよい(Turnerら, JAMA 281:1797-804, 1999)。
【0134】
いずれの種、年齢、健康、または病気の雄性および雌性被験者を評価するしてもよい。被験者が研究の進行中に示しうる血清中和化抗体力価は、感染およびイムノアドヘシン投与に応答して変動しうる。
【0135】
本発明のイムノアドヘシンは、緩衝化塩類溶液として様々なイムノアドヘシンの量を用いて製剤し、かつ患者に様々な間隔で投与することができる。単一増加用量および多重増加用量研究を利用してイムノアドヘシンの安全性を評価することができる。それぞれの事例において、1人以上の被験者をそれぞれの投与量レベルにおいて評価することができ、何人かはイムノアドヘシンを受給し、かつ1人以上は任意にプラセボを受給するものとする。いずれの研究においても多重投与量レベルを評価することができる。投与量は変化しうるが、典型的には、ナノグラム〜グラム範囲である。
【0136】
投与量を数秒、数分、数時間、数週間、および数ヶ月にわたって投与して、毒性および/または医薬効果を評価することができる。
【0137】
安全および毒性は、例えば、刺激または炎症について鼻粘膜の目視試験により検定することができる。血液安全性評価も、日常的方法により、および循環イムノアドヘシンおよびライノウイルス量を含む様々な血液成分を測定するELISAなどの鋭敏なアッセイを用いて実施することができる。鼻洗浄試験を日常的手法により同様に実施することができる。
【0138】
日常の統計解析および計算を使って、単一患者および/または患者-受給者の集団に対する時間経過にわたり予測される効能および毒性を決定することができる。
【0139】
当技術分野でよく知られるチャレンジ研究を用いて、ウイルス、細胞、および動物などの市販される出発物質を用いるウイルスチャレンジ後に、治療が臨床風邪から保護するかおよび/または風邪症候群を軽減するかを実証することができる。例えば、Gwaltneyら, Prog. Med. Virol. 39:256-263, 1992を参照。
【0140】
以下の実施例は、開示した発明の様々な態様および実施形態を説明する。これらの実施例は、請求項に記載の範囲をいかなる方法により限定するものではない。
【実施例】
【0141】
実施例
1.ICAM-1イムノアドヘシン発現カセットの構築
ICAM-1細胞外ドメインDl〜D5の全体をコードするカセットを、PCRクローニングにより調製した。具体的には、ICAM-1の全ての5つの細胞外Ig様ドメインを含有する断片を、次
のオリゴヌクレオチドプライマー:
5'-TCTGTTCCCAGGAACTAGTTTGGCACAGACATCTGTGTCCCCCTCAAAAGTC-3'(配列番号6)
5'-CATACCGGGGACTAGTCACATTCACGGTCACCTCGCGG-3'(配列番号7)
を用いて、プラスミドpCDIC1-5D/IgA(Martinら, J. Virol. 67:3561-8, 1993)から増幅した。
【0142】
これらの2つのプライマーは、PCR断片の5'および3'末端にSpeI部位を導入するように設計した(下線を引いたヌクレオチド)。PCRは、Pfuポリメラーゼ(Stratagene)を用いて実施し、誤差の蓄積を少なくした。PCR断片をベクターPCRScript(Stratagene)中にクローニングし、ヒトIgA2カセット(カルボキシ末端にSEKDEL[配列番号4]を伴うものと伴わないもの)と融合する前に配列を決定した。
【0143】
植物におけるヒトJ鎖および分泌成分、ならびにヒトIgA2重鎖の発現用構築物を開発した。重鎖発現カセットを作製してpSSpHuA2(図1を参照)と名付けた。これは、マメ・レグミンシグナルペプチドをコードする配列(Baumleinら, Nucleic Acids Res. 14 (6), 2707-2720, 1986)(マメ・レグミンの配列は、GenBank受託番号X03677に提供され、マメ・レグミンシグナルペプチドの配列は配列番号10(図8も参照)である)、中間にSpeIとSacI部位を有するIgA2m(2)定常域、ならびにシグナルペプチドおよびヒトIgA2m(2)重鎖の定常域の発現を駆動するSuperMasプロモーターを含有する。
【0144】
増幅したヒトICAM-1の最初の5つのドメインをコードするDNAとヒトIgA2m(2)のFc域を植物カセット中で融合し、図2Aに示したキメラICAM-1分子発現構築物を作製した。これはICAM-1の5つの細胞外ドメインをコードする断片を、ベクターpSSPHuA2中にクローニングしてpSSPICAMHuA2を作製することにより行った。好都合な制限酵素切断部位(5'SpeIおよび3'SpeI)により、増幅断片をシグナルペプチドとCα1ドメインの間に挿入することが可能であった。得られる構築物において、キメラICAM-1分子の発現は構成的プロモーター「superMAS」(Niら, 1995)およびnos 3'ターミネーター領域の制御下にある。
【0145】
得られるキメラICAM-1分子構築物は可変域を含有しない。mRNAが翻訳されると、シグナルペプチド切断によりICAM-1-重鎖融合物が植物細胞の小胞体(ER)中に蓄積すると予想される。構築物の発現レベルを増大させる目的で、ER保持シグナル(RSEKDEL、配列番号5)をコードするDNAを重鎖の3'末端に加えた。アミノ酸配列SEKDEL(配列番号4)は、植物細胞における小胞体中のタンパク質の保持に対するコンセンサスシグナル配列である。この配列は植物中の抗体の蓄積レベルを増大することが示されている(Schoutenら, Plant Molecular Biology 30:781-793, 1996)。キメラICAM-1分子構築物のアミノ酸配列を図2Bに示した。構築物のDNA配列および翻訳フレームを確かめた後に、これを粒子ボンバードメントに使用した。
【0146】
最近、J鎖とIgAとのアセンブリーはゴルジ装置において起こることが示されていて(Yooら, J. Biol. Chem. 274:33771-33777, 1999)、従って、SEKDEL(配列番号4)無しの重鎖の構築も同様に行われている。ICAM-1断片を、SEKDEL(配列番号4)無しのIgA2m(2)定常域を含有する発現カセット中に、クローニングした。
【0147】
2.アセンブルしたICAM-1イムノアドヘシンの植物における発現
A.イムノアドヘシン発現ベクター
プラスミドpSSPICAMHuA2[配列番号9および図8A]は長さが6313bpである。ヌクレオチド49-1165はSuperプロモーター(Niら, Plant Journal 7:661-676, 1995)を表す。ヌクレオチド1166-3662はリンカー配列をもつヒトICAM-1/ヒトIgA2m(2)定常域ハイブリッドをコードする配列を含んでなる。翻訳開始を増強するコンセンサスKozak配列(Kozak, Cell 44 (2):283-92, 1986)(nt 1186-1192)ならびにソラマメ(V. faba)レグミン由来のシグナルペプチド(nt 1189-1257;Baumleinら, Nucleic Acids Reg. 14(6):2707-2720 (1986))が含まれる。ヒトIgA2m(2)定常域(nt 3663-3633)の配列は、先に開示されている(Chintalacharuvuら, J. Imm. 152:5299-5304, 1994)。小胞体保持シグナルSEKDEL[配列番号4]をコードする配列が重鎖の末端(nt 3634-3654)に加えられている。ヌクレオチド3663-3933はノパリン合成酵素3'末端(転写終結およびポリアデニル化シグナル;Depickerら, 1982)由来であり、プラスミドの残部はベクターpSP72(Promega)由来である。
【0148】
プラスミドpSHuJ(図8C)は長さが4283bpである。ヌクレオチド14-1136はSuperプロモーターを表し(Niら, Plant Journal 7:661-676, 1995)、そしてヌクレオチド1137-1648は図8[配列番号11]に示され、自然シグナルペプチドを含むヒトJ鎖(MaxおよびKorsmeyer, J Imm. 152:5299-5304, 1985)ならびにリンカー配列をコードする配列を含んでなる。コンセンサスKozak配列(Kozak, Cell 44 (2):283- 92, 1986)(nt 1162-1168)が含まれ、翻訳開始を増強する。ヌクレオチド1649-1902はノパリン合成酵素3'末端(転写終結およびポリアデニル化シグナル;Depickerら, J Mol Appl Genet 1 (6):561-73, 1982)由来である。プラスミドの残部はベクターpSP72(Promega)由来である。
【0149】
プラスミドpSHuSC(図8D)は長さが5650bpである。ヌクレオチド13-1136はSuperプロモーター(Niら, Plant Journal 7:661-676, 1995)由来であり、そしてヌクレオチド1137-2981は自然シグナルペプチドを含むヒト分泌成分(Krajciら, Biochem. and Biophys. Res. Comm 158:783, 1994)ならびにリンカー配列をコードする配列を含んでなる[配列番号12]。コンセンサスKozak配列(Kozak, Cell 44 (2):283-92, 1986)(nt 1162-1168)が含まれ、翻訳開始を増強する。ヌクレオチド2982-3236はノパリン合成酵素3'末端由来であり、転写終結およびポリアデニル化シグナルを提供し、Depickerら, J Mol Appl Genet 1 (6):561-73, 1982に記載されている。プラスミドの残部はベクターpSP72(Promega)由来である。
【0150】
プラスミドpBMSP-1[配列番号13および図8E]は、pGPTV-KANから誘導された。Beckerら, Plant Molecular Biology 20, 1195-1197, (1992)は、左T-DNA境界の近位に位置する選択マーカーおよび左右の境界の外側にそれらの配列をもつ新しい植物二成分ベクターを記載している。pBMSP-1のヌクレオチド18-187は右T-DNAを表し、ヌクレオチド1811-775はsuperMASプロモーターを表す。ヌクレオチド2393-2663はNOSプロモーター(Depickerら, J Mol Appl Genet 1 (6):561-73, 1982)を表し、ヌクレオチド2698-3492はNPTII遺伝子(カナマイシン耐性を与える)をコードし、そしてヌクレオチド3511-3733はA・ツメラシエンス(A. tumefaciens)遺伝子7由来のポリアデニル化シグナル (Gielenら, Embo J 3:835-46, 1984)である。ヌクレオチド1768-976はNPTII遺伝子をコードし、かつヌクレオチド4317-4464は左T-DNA境界を表す。
【0151】
プラスミドpBMSP-1spJSC[配列番号14および図8F]はpBMSPの誘導体であり、スーパープロモーターの制御下にあるJおよびSCの両方を含有する。このプラスミドにおいては、ヌクレオチド1-149は左T-DNA境界を表す。ヌクレオチド955-733はA・ツメファシエンス(A. tumefaciens)遺伝子からのポリアデニル化シグナルであり、ヌクレオチド1768-976はNPTII遺伝子(カナマイシン耐性を与える)をコードし、そしてヌクレオチド2073-1803はNOSプロモーターを表す。ヌクレオチド2635-3768はスーパーMASプロモーターを表し、ヌクレオチド3774-5595はヒト分泌成分をコードし、そしてヌクレオチド5603-5857はNOSポリアデニル化シグナルを表す。ヌクレオチド5880-6991はスーパーMASプロモーターを表し、ヌクレオチド7007-7490はヒト接合鎖(Joining Chain)をコードし、そしてヌクレオチド7504-7757はNOSポリアデニル化シグナルを表す。ヌクレオチド7886-8057は右T-DNA境界を表す。
【0152】
ハイグロマイシン耐性を与える酵素をコードするプラスミドpGPTV-HPTは、Max-Planck-Institut fur Zuchtungsforschung(ドイツ)から市販されている。これはBecker, Plant Molecular Biology 20, 1195-1197 (1992)に記載されている。
【0153】
B.植物形質転換および植物におけるICAM-1イムノアドヘシン発現
上記の発現カセットを用いて植物中でアセンブルしたイムノアドヘシンを作った。プラスミドpSSPICAMHuA2、pSHuJ、pSHuSCおよびpBMSP-1をタバコ葉組織(N. tabacum cultivar Xanthi)中に同時ボンバードメントして、形質転換したミクロカルスを栄養寒天上でカナマイシンの存在のもとで選択した。独立形質転換事象を示す個々のミクロカルスを、親組織から解剖し、カナマイシンを含む栄養寒天上で増殖した。
【0154】
カルス組織をトランスジーン発現についてスクリーニングした。カルス#7132は、免疫ブロットおよびPCRにより、キメラICAM-1イムノアドヘシンおよびJ鎖を発現することがわかった(データは示してない)。このカルスはSCをコードするDNAを持たなかった。カルスは培養中でよく成長した。十分な質量が蓄積すると#7132を再びボンバードメントしたが、今回は、上記の2つのプラスミド、J鎖およびSCの両方の発現カセットを含有するPBMSP-1 SpJSCならびにハイグロマイシン耐性を与えるhpt I遺伝子の発現カセットを含有するpGPTV-HPTを用いてボンバードメントした。栄養寒天上の選択および成長期間の後に、免疫ブロットにより、複数のアセンブリー状態でキメラICAM-1分子、J鎖およびSCを発現する複数の独立した形質転換体を同定した。
【0155】
図3は独立して形質転換したタバコカルスにおけるキメラICAM-1分子の発現を図解する。図3Aは、様々なタバコカルス(C)および抽出水(Aq)を含有するサンプルを泳動しかつヒトICAMの存在についてプローブした非還元性SDS-ポリアクリルアミドゲルの免疫ブロットを示す。イムノアドヘシンの溶解度から抽出は容易に実施しうることが保証されかつシグナルの類似性から発現に再現性があると考えられた。図3Bは、カルスRhi107-11由来の部分精製したイムノアドヘシンの様々な画分を含有する非還元性SDS-ポリアクリルアミドゲルの免疫ブロットを示す。ブロットを、ヒトICAM(〜ICAM)、ヒトIgA重鎖(〜α)、ヒト分泌成分(〜SC)およびヒトJ鎖(〜J)に対する抗体を用いてプローブした。必要により二次酵素結合抗体を使用し、免疫陽性バンドをアルカリホスファターゼを用いて標識した。さらに、免疫ブロットの特異性を非発現カルス抽出物中の免疫陽性バンドの検出不全により実証した(データは示してない)。グリコシル化していない2量体キメラICAM-1分子の予測MWは173,318であり;この型は、ICAM-1および重鎖に対して免疫陽性であるので、恐らく250kDマーカーの直ぐ下の移動バンドに存在すると思われる。このバンドはSC(全予測MWは〜248kD)に対しても免疫陽性であるが、J鎖に対しては免疫陽性でない。これは、SIgAアセンブリーに対する標準経路が2セル型(哺乳類動物において)であって、SCのアセンブリー前にJ鎖の存在が必要であるとすれば、いささか意外である。単分子のJ鎖および単分子のSCを含有する4量体イムノアドヘシンは、グリコシル化前に〜440kDの予測MWを有する。十分に200kDを超える分子量をもち、4プローブ全てに免疫陽性である複数種は明白である。
【0156】
DNAコートした微粒子(microprojectiles)によるボンバードメントを用いて、植物および動物両方の安定な形質転換体を作った(Sanfordら, Meth. Enz. 217:483-509, 1993による総説を参照)。本発明のイムノアドヘシンをコードするベクターによる粒子媒介形質転換は、Bio-Rad製のPDS-1000/He粒子加速デバイスを用いて実施した。PDS-1000/He粒子加速デバイスシステムは、ヘリウム圧力を利用してDNAコートした微粒子を標的細胞に向けて加速する。技術の物理的特性により、この技術は非常に融通性がありかつ使用が容易である。本発明者らは分泌性IgAの全4成分を用いて同時にタバコを形質転換するのに成功した。
【0157】
基本的な微粒子銃操作は次の通り実施した。微粒子のストック懸濁液は、絶対エタノール1ml中に微粒子60mgを混合することにより調製した。この懸濁液をボルテックス攪拌し、25-50μlを取出して無菌ミクロ遠心管に加えた。30秒間ミクロ遠心分離した後にエタノールを除去し、ペレットを1ml無菌水に再懸濁して5分間ミクロ遠心分離した。次いで水を取除き、ペレットを通常、常にではないが、等モル量のプラスミド混合物を含有するDNA溶液25-50μl中に再懸濁した。加えたプラスミドの量は、1調製物当たり、0.5ng〜1μgの間で変化した。次いで、逐次的に、無菌水220μl、2.5M CaCl2 250μl、および0.1Mスペルミジン50μlを加えた。この混合物を少なくとも10分間ボルテックス攪拌し、次いで5分間遠心分離した。上清を除去し、絶対エタノール600μl中に沈降したDNA/微粒子を混合し、1分間遠心分離した。エタノールを除去してペレットをエタノール36μl中に再懸濁した。懸濁液10μlを、カプトン(Kapton)(DuPont)で作ったマクロ担体シートのセンター上に可能な限り均一に適用し、エタノールを蒸発させた。マクロ担体シートおよび破裂板をユニット内に配置した。表面殺菌したタバコ葉を含有するペトリ皿をストッピングスクリーン下部に置いた。チャンバーを28-29mmHgまで真空に引いて標的を1回ボンバードメントした。プロトコルはタバコに対して最適化していたが、他の植物に対しても、He圧、コーティング粒子の量、マクロ担体とストッピングスクリーンの間の距離、およびストッピングスクリーンから組織までの飛行距離などのパラメーターを変えて最適化した。
【0158】
キメラICAM-1分子用の発現カセットも、アグロバクテリア媒介形質転換に使用する2成分ベクターにアセンブルした。ヒトJ鎖およびヒト分泌成分の両方、ならびにカナマイシン耐性の発現用に設計したアグロバクテリア2成分ベクターを、A・ツメファシエンス(A. tumefaciens)株、LBA4404中に導入した。他の2成分ベクター中のキメラICAM/IgA分子もLBA4404を形質転換するために使用した。両方の株の一夜培養物を用いて、標準プロトコルにより、タバコの葉片を同時に「共栽培(co-cultivation)」した(Horschら, Science 227:1229-1231, 1985)。
【0159】
ボンバードしたおよびアグロバクテリア形質転換したタバコ葉ディスクの両方を再生するための標準プロトコルを使用した(Horschら, Science 227:1229-1231, 1985)。ボンバードした組織から再生した形質転換植物は、しばしば、成熟時に遺伝子サイレンシング(gene-silencing)を起こすので、トランスジェニックタバコ植物は、高収率の成熟植物発現を与えるアグロバクテリア媒介形質転換を経由して調製した。
【0160】
3.アセンブルしたICAM-1イムノアドヘシンの精製
実施例3により発現したイムノアドヘシンを精製した。抽出方法の開発を容易にするため、カルスを大量に増殖した。イムノアドヘシンのさらなる精製のための次のクロマトグラフィ技術研究用に、部分精製スケジュールにより、様々なバッファー条件で利用しうる安定な濃縮物を得た(図3を参照)。カルスは、クエン酸ナトリウム(0.6M、pH7.4)および尿素(最終濃度2M)を含有するバッファー浴に入れて2個のステンレス鋼ギア間で組織を粉砕するジューサー中で抽出した。ジュース(〜1ml/g新鮮重量)をチーズクロスを通して濾過した後に、0.67容の飽和硫酸アンモニウム水溶液を用いて沈降させた。遠心分離後に、緑色ペレットを採集して、ダウンス(Dounce)ホモジナイザーを用いて小容積の50mMクエン酸ナトリウム(pH 6.6)水溶液中で完全に抽出した。さらなる遠心分離の後に、透明褐色の上清を採集して、脱塩のためのバッファー交換中にセファデックス(Sephadex)G-100カラムを通過させることにより、部分精製した。脱塩/バッファー交換ステップにより、所望のバッファー中での部分精製濃縮物(〜0.2ml/g新鮮重量カルス)の調製が可能であった;G-100カラムは0.25Xリン酸バッファー生理食塩水を用いて溶出した。この溶出液は2-8℃で少なくとも10日間安定であると思われた。
【0161】
4.ICAM-1イムノアドヘシンはヒト・ライノウイルス感染性を抑制する
ヒト・ライノウイルスによる細胞の感染性は実施例3により調製したイムノアドヘシンにより抑制されることを実証した。実施例3により調製したカルス抽出物は、可溶性ICAM-1に対する抗ICAMモノクローナル抗体の結合と成功裏に競合した。図4は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)から得たデータを示す。このアッセイ用の96ウエルプレートは可溶性ICAM-1 0.25μg/mlを用いてコーティングした。正方形は、増加する濃度のsICAMを表し、円は、マウス(抗ヒトICAM)抗体の一定量に接着したICAMと競合するために用いた増加する量のカルス抽出物(G-100からの無菌濾過した画分)を表す。ウエルを洗浄後、接着したマウス抗体を、西洋わさびペルオキシダーゼ(horseradish peroxidase)と結合した抗マウス抗体を用いて検出した。接着酵素活性は、490nmにて、ortho-フェニレンジアミンを基質として用いて測定した。データ(正方形、sICAM;円、抽出物)は、OD490=y=y0+a/[1+e^-(x-x0)/b]、(式中、a=ymax、y0=ymin、b=曲線の急速に変化する部分の勾配、およびx0=50%応答レベルの勾配)のS字型曲線によってよく記述される。可溶性ICAM-1と比較して、本実施例で試験したイムノアドヘシン抽出物は〜250μg ICAM/mlの当量を含有し;この結果は、予想されるICAM-1重鎖融合の2量体および4量体アセンブリーのアビディティ効果により過大に見積もられている。このように、このELISA結果はイムノアドヘシンは抗ICAM mAbとの結合について可溶性ICAM-1と競合することを実証した。
【0162】
競合ELISAは、50%応答を与えるために必要な様々な画分の正規化量と比較することにより、活性回収の定量的評価が可能になる。精製時に、イムノアドヘシン調製物の力価は、希釈度の逆数、または50%応答を与えるためにイムノアドヘシン1ミリグラムを希釈しなければならないミリリットル数として表現することができる。このELISAはイムノアドヘシンを精製するプロセスの開発を容易にする。
【0163】
細胞変性効果アッセイ(CPE)は、部分精製したイムノアドヘシンの、ヒト・ライノウイルスによるヒト細胞の感染性を抑制する特異的能力を実証した(図5)。ライノウイルス血清型HRV-39を、ヒトICAM-1、ICAM/IgA融合物(Dr.Tim Springerの提供物)とともに、または本発明者らのICAM-1/SIgAイムノアドヘシンもしくは他の異なる抗体を発現するカルスからの抽出物とともにプレインキュベートした後、それぞれの混合物をHeLa S3細胞ともに33℃にてプレーティングした。3日後、生存細胞を固定し、クリスタルバイオレット(Crystal Violet)のメタノール溶液を用いて染色した;570nmの光学密度は細胞生存度に比例する尺度を与えた。
【0164】
イムノアドヘシンを含有するRhilO7-11から誘導された2つの抽出物は、明らかにHeLa S3 細胞に感染しかつHeLa S3 細胞を殺滅するウイルスの能力を抑制した(図5A、正立および倒立三角形)。抽出物は部分精製されているだけであるので、本発明者らはまた、化学治療薬のドキソルビシンに対するヒトIgA2m(2)を含有する同様に調製した抽出物もアッセイした。無関係な結合特異性をもつ類似の免疫グロブリンを含有するこの抽出物は、ライノウイルスの感染性を抑制することができなかった。従ってICAM-1重鎖融合物の発現が抑制に対して特異性を与えることを実証する。CPEアッセイは、予想通り、可溶性ICAM-1とIC1-5/IgA(Martinら, 1993)のウイルス感染性を抑制する能力の差異を実証した(図5B)。図5Bの挿入図は、可溶性ICAMに対する(1.35μg/ml)およびIC1-5/IgAに対する(0.12μg/ml;11.3倍少ない)IC50の範囲のスケール拡大図を示す。
【0165】
5.臨床および毒性学研究用のイムノアドヘシンの生産と精製
提案した臨床および毒性学的必要性に対する十分なイムノアドヘシンの生産は、トランスジェニックタバコ植物を作ることにより実施する。イムノアドヘシンを発現するトランスジェニック植物(ER保持シグナルなしに)をアグロバクテリア媒介形質転換により作出する。パルス-チェース(pulse-chase)実験(ChintalacharuvuおよびMorrison, Immunotechnology 4:165-174, 1999)が示唆するように、新生SIgAは、特にSCがdIgAと共有結合で連結されるトランスゴルジ(trans-Golgi)を含む全ゴルジ装置を通してプロセシングを受けるので、ER保持シグナルの不在はアセンブリーを増強することが期待される。アグロバクテリア媒介形質転換は一定レベルのトランスジーン発現をもつ植物を作出する確率がはるかに高いので、これらの植物の子孫は臨床グレードのイムノアドヘシンの生産に利用しうる確率が高い。
【0166】
発現レベルを最大化しかつ真の育種系統を創出するために、ホモ接合性植物を創出することが所望される。最高生産植物(世代T0)を温室内で自己受精した後、種子を回収してもよい。T1植物の4分の1がホモ接合性であると期待される。これらを温室で成長させて、複数植物からの種子サンプルを分離してカナマイシンを含有する培地にまく。ホモ接合性陽性植物からの全ての子孫(T2)は緑色であると予想される。ヘテロ接合性植物の子孫のいくつかは白色または黄色がかっていると予想される。ホモ接合性は、野生型への戻し交配および子孫の免疫ブロット抽出物により確認する。
【0167】
特に多重収穫物を単一定植から得る、すなわち一収穫のための土壌レベルの植物カットを次の収穫に向けて再成長させることができるので、収穫と加工を生産キャンペーン中、連続的にかみ合わせることができる。イムノアドヘシン生産の規模の意味を説明するに当たり、完成イムノアドヘシンの所要量を決定し、発現レベル(存在するイムノアドヘシンmg/kgタバコ新鮮重量)を割当て、植物の成長速度および平均植物の予想重量、ならびに精製スケジュールの全収率(20%と設定)を知ることが必要である。全必要量を完成イムノアドヘシン3gに設定すると、それぞれ完成イムノアドヘシン1gの予想収率をもつ4収穫を得ることが必要である。
【0168】
これらの標的およびパラメーターが与えられれば、植物の必要数、従って植物成長に必要な空間が決定される。図6は完成イムノアドヘシン1グラムを作るための生産必要量の計算を示す。このダイアグラムでは、イムノアドヘシン1gに必要な植物数を、20%収率で、予想発現レベルおよび植物重量に対して図解する。様々なイムノアドヘシン発現レベル(mg/kg新鮮重量)および全収率(20%に設定)において、規定した生産目標(1g/収穫)に対するそれぞれの植物重量、従って全植物数を、合理的な可能枠(点線の四角形)内で決定することができる。所要の植物数は、規定した成長および再成長期間の数字とともに逆に低下する。予想されるバイオマス生産量は時間および生育条件の関数であり、収穫する時間および収穫間の時間に影響を与える。定植および収穫日程をずらすことにより、これらの成長期間を精製スケジュールの現実に調節することができる。例えば、完成イムノアドヘシン1gを、合理的な発現レベルをもち、イムノアドヘシン100mg/kg新鮮重量を含む植物から得るには、200g/植物の重量(播種後〜80日)に収穫する場合、250植物を必要とする。この規模ではこれらの植物はほぼ10m2の成長空間を必要とし、150日間にわたって2回収穫する。
【0169】
50+kgのバイオマスを一度に加工するには、食品加工業の対応操作全てにわたる複数の中規模操作を必要とする。これらは、バルク材料取扱い、粉砕、ジュース化および濾過を含む。ヴィンセント(Vincent)プレスおよびダルコ(Durco)濾過システムを利用して効率的にこれらの量を加工する。ジュース化ステップは実証済みで簡単なクエン酸および尿素のバッファーを使用する。これらの成分は抽出物を緩衝化し、フェノール類の酸化およびタンパク質との結合を防止するのを助け(Gegenheimer, Methods in Enzymology 182:174-193, 1990;Loomis, Methods in Enzymology, 31:528-544, 1974;Van Sumereら, 「The Chemistry and Biochemistry of Plant Proteins(植物タンパク質の化学と生化学)」, 1975)、かつ次の酸沈降ステップにおけるイムノアドヘシンの溶解度を保証する。
【0170】
酸不溶性脂質およびタンパク質(全体の〜90%)の濾過後に、タンジェンシャルフロー限外濾過を実施してイムノアドヘシンを濃縮しかつ小タンパク質、特にフェノール類を除去する。ダイアフィルトレーションは小分子の除去を促進しかつ短期間保存および続くクロマトグラフィのために、調製物のバッファーを交換する。SP-セファロース(pH5.0以下で結合)またはQ-セファロース(pH 5.5以上で結合)のいずれかは、とりわけイムノアドヘシンを濾過するために利用しうるイオン交換剤である。これらは容易に入手することができ、規模調節が容易で、ロバストであり、かつ高容量を有する。特に、これらは、エクスパンドベッドのフォーマットに利用しうるので従来の濾過ステップの厳密性を軽減する。陽イオン交換クロマトグラフィは陰イオン交換クロマトグラフィより選択性を高くしうるので、最初に使用する。イムノアドヘシンは、強力な抗ウイルス活性に2価および4価のICAM-1ドメインの存在が必須であるので、存在する可能性のある複数種のタンパク質から、タンパク質の少なくとも95%がICAM-1/IgA、ICAM-1/dIgAまたはICAM-1/SIgAの形態である点まで精製する。精製したイムノアドヘシンを次いで内毒素、ニコチンなどのアルカロイドの許容レベルについておよび生物負荷(bio-burden)について試験する。さらに効能レベル(ELISAおよびCPEアッセイにより規定した)、タンパク質濃度、pHおよび外見を監視する。次いで、イムノアドヘシンの臨床ロットの安定性を確認して、患者が完全に有効なイムノアドヘシンを受けることを保証する。部分精製した抽出物であっても、冷凍すると10日間は安定であることがわかっている。−20℃、2〜8℃、および37℃にて3〜6ヶ月にわたり保存したときの臨床で製剤したイムノアドヘシン(リン酸緩衝化生理食塩水)の力価と効能も試験する。
【0171】
6.イムノアドヘシンは植物特異的グリコシル化を有する
生産したイムノアドヘシンを分析して存在するグルコシル化パターンを決定する。Cabanes-Macheteauら, Glycobiology 9 (4):365-372 (1999)は、植物特異的に発現した抗体構築物上に、植物に典型的な、複数のグリコシル部分の存在を実証した。彼らの方法を用いて、実施例1、2および3により生産したイムノアドヘシンは植物特異的グリコシル化パターンを有することを実証した。本発明者らは、この多様性もイムノアドヘシンの可変性の源でありうると予想する。粗抽出物はin vitroで抗ウイルス活性を有することが示されている(データは示してない)ので、かかるグリコシル化は効能に影響しないと思われる。N連結グリコシル化(図2はキメラICAM-1の分子だけで15個の潜在部位があることを示す)は恐らく免疫ブロットに見られるバンドの多様性に寄与する。イムノアドヘシン調製物をブロットする前にNグリコシダーゼを用いて消化すると、バンドパターンの相違が崩れてより少数の区切られたバンドになることを示した。この方法で、還元および非還元ポリアクリルアミドゲルを用いて最初に糖形態(glycoform)の特徴を決定する。さらに、消化および偽消化した画分をCPEアッセイおよび競合ELISAで試験し、in vitroでの効能および力価に対するN連結グリコシル化の効果を実証する。
【0172】
7.ICAM-1イムノアドヘシンはヒト・ライノウイルスを不活性化する
実施例1、2および3により調製したイムノアドヘシンを、ウイルスと結合し、ウイルス進入を遮断し、かつ空ウイルスカプシドの形成を誘導することによりHRVを不活性化する能力についてアッセイする。イムノアドヘシンのHRVとの結合を測定するために、イムノアドヘシンを[3H]ロイシンで標識したHRV-39とともに30分間インキュベートし、次いでHeLa細胞に加えて1時間置いた。洗浄後、細胞と結合ウイルスをTriton X-100を用いて剥離し、[3H]をシンチレーションカウンターで測定した。
【0173】
イムノアドヘシンとのインキュベーションによるHRV-39の不活性化を、sICAM-1によるHRV不活性化と比較した。HRV-39は単量体sICAM-1とのインキュベーションにより有意に直接不活性化されない(感染性の低下は<0.5 log1O)が、IC1-5D/IgAとのインキュベーションは感染性がほぼ1.0 log1Oの低下を示した(Arrudaら, Antimicrob. Agents Chemother. 36:1186-1191, 1992;Crumpら, Antimicrob. Agents Chemother. 38:1425-7, 1994)。イムノアドヘシンのHRV-39を不活性化する能力を試験するために、HRV-39の106 50%組織培養感染用量(TCID50)を、そのウイルスに対するそれぞれの分子のCD50の10倍に等しいsICAM-1もしくはイムノアドヘシン濃度を含有する培地中で、または単純培地中で、1時間、33℃にてロッカープラットフォーム上でインキュベートする。次いでそれぞれのウイルス-イムノアドヘシンまたはウイルス-培地混合物を、10倍希釈で連続希釈し、その力価を96ウエルプレート内のHeLa 細胞上で測定した。
【0174】
宿主細胞とのHRV結合に対するイムノアドヘシンの影響を、イムノアドヘシンの存在または不在のもとで、HeLa細胞にHRV-39を0.3のMOIで接種することにより試験する。吸収を4℃で1時間進行し、細胞を洗浄し、そして培地を+または−イムノアドヘシンと置き換える。細胞を10時間、33℃にてインキュベートし(1ラウンドの複製を行わせる)、そしてウイルスを、細胞を凍結/解凍することにより収穫する。ウイルスをHeLa細胞上で滴定する。
【0175】
ICAM-IgA(IC1-5D/IgA)はSicam-1より、HRVのコンフォメーション変化を誘導し、空の非感染性ウイルス粒子を形成させるのに有効である(Martinら, J. Virol. 67:3561-8, 1993)。実施例1、2および3により生産したイムノアドヘシンの、HRVにおけるコンフォメーション変化を誘導してウイルスRNAの放出を生じる能力を試験するために、精製したイムノアドヘシンを[3H]ロイシン-標識したHRV-39とともに30分間インキュベートし次いでウイルスを5〜30%ショ糖勾配上にオーバーレイする。90分間、40,000rpmで遠心分離した後、画分を採集し、[3H]を測定し、画分を感染性についてアセスメントする。(無傷のHRVはショ糖勾配上の149Sに堆積するとともに、RNAを欠く空カプシドは75Sに堆積する(Martinら, J. Virol. 67:3561-8, 1993))。その増加した結合価によって、本発明者らは、ICAM/SIgAイムノアドヘシンはICAM-IgAより空の非感染性粒子を誘導するのに効率的であると予想する。
【0176】
主要(major)および少数(minor;ICAM-1を受容体として用いない)血清型HRVの両パネル上の精製イムノアドヘシンの抑制効果は、CPEアッセイを利用して試験しうる。ICAM-1のHRV感染を抑制する能力はウイルス単離体間で変化する。HeLa細胞を用いた主要受容体血清型HRVアッセイのパネルで試験すると、sICAM-1のEC50は0.6μg/ml〜>32μg/mlで変化することが示されている(Crumpら, Antimicrob. Agents Chemother. 38:1425-7, 1994)。本発明者らのパネルは9つの主要血清型(HRV-3、-13、-14、-16、-23、-39、-68、-73、および-80)および少数受容体血清型HRV-1Aを含む。
【0177】
8.ヒトにおける感染性を低下させるICAM-1イムノアドヘシンの能力を実証する臨床研究:用量エスカレーション耐性研究
本発明のイムノアドヘシンを2つの無作為化管理下試験において試験して、実験的ライノウイルス風邪の感染、IL-8応答、および病気に対するイムノアドヘシン鼻腔内投与の効果を確認する。これらの2つの研究は、ライノウイルス接種の前後に被験者に投与したイムノアドヘシンを評価する。この試験で用いた臨床プロトコルは、先にライノウイルス感染に対する組換え可溶性ICAM-1分子の効能を評価する際に用いたプロトコルに基づく(Turnerら, JAMA 281:1797-804, 1999)。
【0178】
A.被験者
被験者はバージニア大学(the University of Virginia, Charlottesville)の大学共同体から補充する。被験者は健康で、非喫煙者で、18〜60歳であることを必要とする。最近2週間にアレルギー疾患または非アレルギー鼻炎、異常な鼻構造もしくは粘膜、または気道感染の病歴がある被験者は排除する。妊娠もしくは授乳中女性または医療的に許容されない避妊をした女性も排除する。実験ウイルスチャレンジ研究(フェーズI/II、以下参照)において、被験者は研究ウイルスに感受性であることが必要であり、これはウイルスに対する血清中和化抗体力価が、試験開始90日内に測定して1:4以下であることにより証明される。
【0179】
B.研究投薬
本発明のイムノアドヘシンは、2.6mg/mlを含有するリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)スプレー溶液として製剤する。プラセボはPBSからなり、外見は活性調製物と同一である。溶液は計量鼻スプレーポンプを備えた医薬用ボトルを用いて投与する。ポンプは各スプレーとともにイムノアドヘシン183μgを含有する溶液70μlを送達する。投薬は鼻孔当たり2スプレーで、毎日6回(3時間間隔)、全日用量4.4mgを投与する。これは、トレマカムラ(tremacamra)研究感染(Turnerら, JAMA 281:1797-804, 1999)において可溶性ICAM-1に対して用いられたのと、mgタンパク質/日で、同じ用量である。イムノアドヘシンの1モルはsICAM-1の1モルのほぼ2倍の質量である。しかし、sICAM-1とICAM/IgA融合物との間にはin vitro活性の差があるので、該イムノアドヘシンはsICAM-1よりモル基準で数倍さらに有効である。従って、この量は必要量の保守的な計算値である。用量エスカレーション研究がこの用量で問題ありとする場合を除いて、この量を使用する。
【0180】
C.研究設計
単一増加用量(single ascending dose)と多重増加用量(multiple ascending dose)研究を用いて、イムノアドヘシンの安全性を評価する。それぞの事例において、3人の被験者をそれぞれの用量レベルで評価し、2人はイムノアドヘシン、1人はプラセボを受けた。単一増加用量研究においては、4投与レベルを評価する。最低個別用量は、チャレンジ研究で使用する予定用量の半分であり、かつ最高個別用量は、チャレンジ研究で使用する予定用量の2倍である。投与レベルは次の通り:それぞれの鼻孔に1スプレー(全366μg)、2スプレー(全732μg)、3スプレー(全1098μg)、4スプレー(全1464μg)。
【0181】
多重増加用量研究においては、同じ投与レベルを使用する。被験者は3時間毎に(1日当たり6回)5日間、用量を受ける。両方の研究において、被験者を、先のレベルで急性毒性がないことが明らかになるまでそれぞれの次のレベルの開始をずらして、それぞれの投与レベルにおいて評価する。全ての被験者は最初の用量の21日後に単一用量に戻り、次いで6週間フォローアップする(イムノアドヘシンに対する血清抗体を確認するため)。
【0182】
分離したグループの12人の被験者にそれぞれの鼻孔に2スプレー(全732μg)を与え、鼻洗浄を1、2、4、8および16時間(各時点に2人の被験者)に実施した。洗浄液はPanorama ResearchでELISAによりイムノアドヘシンをアッセイし、そのin vivo半減期を計算する。用量エスカレーションおよび半減期測定研究で使用するイムノアドヘシンの全量(全28人の被験者について)はほぼ270mgであろう。
【0183】
D.安全性評価
日常の副作用事象記録に加えて、イムノアドヘシンの安全性を3つの方法で評価する。第1に、最初の用量前および最後の用量後に、研究者は鼻粘膜の目視試験、特に刺激または炎症徴候の外見を実施する。いずれの目視変化も記載する。第2に、治療前および研究日1、4、および8(および多重上昇研究では21日)の最終投与後に採集したサンプルの標準血液安全性評価を実施する。第3に、血清サンプルを保存し、凍結し、そしてこれを用いてイムノアドヘシンが血液中に鼻粘膜を通過しうるかどうかを確認する。これは2つの方法で達成する。第1に、血清サンプル中のイムノアドヘシンの存在をELISAにより測定する。このアッセイでは、マイクロタイタープレートに吸着された抗ヒトIgA抗体血清中のいずれかがイムノアドヘシンを捕捉するので、それを抗ICAM抗体により検出する。このアッセイの感度は、既知濃度のイムノアドヘシンを用いてスパイクした正常なヒト血清サンプルを用いて決定する。あるいは、抗ICAM抗体をプレートに吸着させて血清中のイムノアドヘシンを捕捉すると、抗IgAにより検出しうる。第2に、イムノアドヘシンに対する免疫応答の存在を、マイクロタイタープレートに吸着させたイムノアドヘシンを用いるELISA法によりアッセイする。血清中のいずれかの抗イムノアドヘシン抗体が結合し、抗ヒトIgGまたは抗ヒトIgMにより検出される。処理前後の血清サンプルを比較し、力価のいずれかの変化はイムノアドヘシンの取込みの確証と考えられる。もし抗イムノアドヘシン抗体のいずれかの陽性確証があれば、さらなるアッセイを実施して抗ICAM-1と抗IgA活性の間の識別をする。
【0184】
患者を、イムノアドヘシンとのアレルギー反応の発生についてスクリーニングする。(従来の研究においては、鼻に局所適用した可溶性ICAM、または口腔に局所投与した植物体による副作用の事例はなかった)。鼻アレルギーの症候群を示す個人を、鼻洗浄液中の抗イムノアドヘシン特異的IgE抗体について、高感度ツーステップ(two-step)ELISA(R & D Systems)を用いて試験する。
【0185】
E.統計解析
これらの研究用のサンプルサイズは、ライノウイルスチャレンジモデルを用いる先の研究に基づく。保護研究用に計画したサンプルサイズは、α=.05および1-β=.80の片側レベルで、プラセボグループ中の75%から活性治療グループの25%まで臨床風邪の発症の軽減を検出するのに十分でなければならない。さらに、サンプルサイズは5.8ユニットのSDを仮定して5ユニットの全症候スコアにおける変化を検出するのに十分でなければならない。
【0186】
9.イムノアドヘシンがヒトにおける感染性を低下する能力を実証する臨床研究:チャレンジ研究
チャレンジ研究を用いて、本発明のイムノアドヘシンにより治療が臨床風邪に対して保護しまたはウイルスチャレンジ後の風邪症候群を低下することを実証する。
【0187】
A.チャレンジウイルス
本研究に用いたチャレンジウイルスはライノウイルス39(HRV-39)である。ライノウイルス39型は、細胞への接着にICAM-1を必要とする主要(major)ライノウイルスグループである。チャレンジウイルスプールを、共通ガイドライン(Gwaltneyら, Prog. Med. Virol. 39:256-263, 1992)により安全性試験した。全ての被験者をほぼ200メジアン組織培養感染用量(TCID50)を用いて接種する。ウイルスを1鼻孔当たり250μl接種2回の液滴として、ほぼ15分間隔で仰臥位の被験者に投与する。
【表4】

【0188】
B.研究設計
2つの無作為ライノウイルスチャレンジ研究を実施した(表4参照)。本発明のイムノアドヘシンの同じ製剤を、接種前(pre-inoculation)および接種後研究(post-inoculation)で評価する。両方の研究において、医薬を毎日6用量として5日間投与する。被験者は、それぞれの研究の登録時点でイムノアドヘシンまたは対応するプラセボのいずれを受けるかを無作為に割当てる。研究はブラインドで行われ、全ての臨床試験員、被験者、およびPanorama Researchの雇用者に対して、全データが回収されるまでブラインドに保たれる。
【0189】
接種前研究において、投薬はウイルスチャレンジ前4時間(2用量)に開始する。ウイルスチャレンジはイムノアドヘシン(またはプラセボ)の第2用量後1時間に投与し、第1日の残りの4投薬はスケジュール通り与える。本研究において、18人の被験者が活性成分治療を受け、18人の被験者がプラセボを受ける。
【0190】
接種後研究において、投薬はウイルスチャレンジ後24時間に開始する。この時点を選んだ理由は、これが他のウイルスチャレンジの保護研究において使われているから, および風邪症候群が明らかに存在するからである(Harris & Gwaltney, Clin. Infect. Dis. 23:1287-90, 1996)。本研究におけるウイルスチャレンジは、研究日0の朝、研究日1の朝の研究投薬の第1用量のほぼ24時間前に投与する。本研究においては、36人の被験者が活性治療を受け、18人の被験者がプラセボを受ける。
【0191】
被験者を個々のホテルの部屋に、研究日0(ウイルスチャレンジの日)から研究日6まで隔離する。これらのそれぞれの日に、症候スコアおよびウイルス単離のための鼻洗浄を、朝、投薬の第1用量の前に実施し、第2症候スコアを毎夕、実施する。研究日6に、被験者を隔離から開放するが、14日まで毎夕、症候スコアの記録を続ける。被験者は研究日21日に研究場所に戻り、抗イムノアドヘシン抗体を検出するための最終血清サンプルを採集されるであろう。2つのウイルスチャレンジ研究に用いるイムノアドヘシンの全量(全54被験者の)はほぼ1200mgである。
【0192】
C.ウイルス単離
ウイルス出芽は、細胞培養におけるウイルス単離により検出する。0.9%生理食塩水5mlをそれぞれの鼻孔中に滴下して、鼻洗浄液標本を回収する。次いでこの洗浄液をプラスチックカップ中に排出し、ウイルス培養の処理をするまで冷却保存する。イムノアドヘシンを、アガロース支持体(Affi-Gel 10, Bio-Rad Laboratories, Hercules, CA)上に吸着した抗ICAM-1抗体を用いる処理により、該標本から除去する。処理した標本の一部分をそれぞれ-80℃にて保存し、そして他の部分をHeLa-1細胞、ICAM-1の生産を強化したHeLa細胞系の2つのチューブ中に接種する(Arrudaら, J. Clin. Microb. 34:1277-1279, 1996)。ライノウイルスを、典型的な細胞変性効果の発生により同定する。チャレンジ後研究日のいずれかで陽性ウイルス培養の被験者は感染したと考えられる。-80℃で保存した標本のウイルス力価を、HeLa-1細胞のマイクロタイタープレート中に連続10倍希釈物を培養することにより決定する。
【0193】
チャレンジウイルスに対する抗体を、標準方法(Gwaltneyら, 「Diagnostic Procedures for Viral Rickettsial and Chlamydial Infections(ウイルス性リケッチャおよびクラミジア感染症の診断方法)」, p.579-614, American Public Health Association)を用いて行う血清中和化力価により検出する。抗体試験に対する血清標本をスクリーニング中に、ウイルスチャレンジ直前(急性)、およびまた21日後(回復)に採集する。回復血清サンプルを急性血清サンプルと比較して、チャレンジウイルスに対する抗体力価が4倍以上、上昇した被験者は感染したと考えられる。
【0194】
D.病気重篤度の評価
病気重篤度は、先に記載(Turnerら, JAMA 281:1797-804, 1999)のように評価する。症候スコアをウイルスチャレンジ前(基線)および毎日2回、ほぼ12時間間隔で次の6日間、記録する。研究日7〜14には、各被験者は自分の症候スコアを毎日、夕方に記録する。それぞれの評価に当たり、被験者は前の症候評価以後の期間における次の8症候の最大重篤度を判断するよう求められる:くしゃみ、鼻漏、鼻つまり、咽頭炎、咳、頭痛、倦怠感、および寒気。各症候を、なし、軽度、中度、または重度の症候重篤度の報告に対応する0〜3の重篤度スコアに割当てる。もし症候群が基線にあれば、基線症候スコアを報告された症候スコアから差引きうる。2つの日評価値の高い方を各症候に対する日症候スコア(daily symptom score)とする。8つの個々の症候群に対する日症候スコアを合計して全日症候スコア(total daily symptom score)を得る。ウイルスチャレンジ後の最初の5日に対する全日症候スコア(研究日1-5)を合計し、研究日5の夕方に、全被験者に「自分が風邪を引いていると感じますか?」と質問する。少なくとも6の全症候スコア(total symptom score)および少なくとも3日の鼻漏または風邪を引いたという自覚のいずれかを有する被験者を、臨床上風邪を引いていると定義する。
【0195】
排出した鼻分泌物の重量を日1-7日に全被験者に予め重量測定した鼻ティッシュのパケットを提供することにより測定する。ティッシュを使用した後に、それらを気密性プラスチックバッグ内に保存する。毎朝、使用ずみティッシュを、元のパケットからの未使用ティッシュとともに回収して秤量する。
【0196】
E.IL-8アッセイ
最近の研究は、宿主炎症応答、特にインターロイキン8(IL-8)はライノウイルス感染による風邪症候の病原性にある役割を果たしうることを示唆している。鼻洗浄液中のIL-8の濃度を、市販のELISA(R & D Systems, Minneapolis, Minn)を用いて先に記載(Turnerら, JAMA 281:1797-804, 1999)の通り測定する。
【0197】
F.安全性評価
実施例8に記載の用量エスカレーション研究アッセイと同じ評価を、チャレンジ研究において行う。
【0198】
G.統計解析
統計解析を、実施例8に記載の用量エスカレーション研究について記述したのと同様に実施する。
【0199】
以上の実施例および考察は、主にICAM-1イムノアドヘシンを対象としたが、当業者はこれらを容易に工夫して、他のタイプまたはサブタイプのウイルスおよび細菌病原体に活性をもつ他のタイプのイムノアドヘシンの使用を達成および実施することができる。次の実施例は、炭疽毒素受容体(ATR)を受容体タンパク質として利用する抗菌イムノアドヘシンの実施形態を説明するものである。
【0200】
10.ATRイムノアドヘシン発現カセットの構築
ヒト炭疽毒素受容体(ATR)の細胞外ドメインの一部分をコードするカセットを、PCRクローニングにより調製する。具体的には、アミノ酸44-216(いわゆるvon Willebrand因子A型ドメイン)をコードする523bpの断片は、プラスミドATR(Bradleyら, 2001)からまたはプラスミドTEM8(St Croixら, 2000)から、次のオリゴヌクレオチドプライマー:

を用いて増幅する。
【0201】
第2プライマー(配列番号92)は、ATR細胞外ドメインのコード領域の3'末端にSac I部位を導入するように設計する(実線下線)。PCRは、Pfuポリメラーゼ(Stratagene)を用いて実施し、誤差の蓄積を少なくする。124bpの第2断片は5'非翻訳領域および植物シグナルペプチドを含み、プラスミドδATG-TOPO#4(植物最適化5'非翻訳領域およびInvitrogenクローニングベクターpCR4-TOPO中のシグナルペプチドのPCRクローンである)から, 次のオリゴヌクレオチドプライマー:

を用いて増幅する。
【0202】
第1のプライマー(配列番号93)はPCR断片の5'末端にKpn I部位を導入するように設計する(実線下線)。2つのPCR断片は20ntの相補性配列を有する(点線下線)。2つのPCR断片を一緒に混合して、626bpの断片を配列番号93と配列番号92を用いて増幅する。得られるPCR断片をベクターPCRScript(Stratagene)中にクローニングして、配列決定した後にベクターpMSP-coICAM中のKpn IおよびSac I部位の間でクローニングして、プラスミドpMSP-ATR-IgA2を得る。これにより、ATRの細胞外ドメインとヒトIgA2の定常域の遺伝子融合物を得る。このヒトIgA2定常域は、タバコ細胞における発現に最適なコドンを使用するように合成されている。ATR-IgA2融合物(イムノアドヘシン)の全ヌクレオチドおよびアミノ酸配列を図10に示す。得られる構築物において、キメラATR-IgA2分子の発現は構成プロモーター「superMAS」(Niら, 1995)およびそのags3'末端領域の制御下にある。
【0203】
全発現カセット(プロモーター+ATR-IgA2+ターミネーター)をpMSP-ATR-IgA2から制限酵素AscIを用いて除去し、2成分アグロバクテリアTi プラスミドベクターpGPTV-kan-ocs中にクローニングして、プラスミドpGPTV-kan-ocs-ATR-IgA2を得る。ベクターpGPTV-kan-ocsは、次の方法で改変したpGPTV-kan(Beckerら, 1992)から誘導する。全uid A遺伝子を含むpGPTV-kanのEco RIとHind III部位の間の配列を除去し、npt II遺伝子方向に向いたocs 3'ターミネーター領域(MacDonaldら, 1991)と置き換え、Asc IおよびSac Iの制限酵素切断部位を加えた。T-DNAの右境界に隣接したこのターミネーターの目的は、右境界の外側の植物DNAに起源する転写によるトランスジーンによる転写妨害を排除するためである(Ingelbrechtら, 1991)。
【0204】
プラスミドpGPTV-kan-ocs-ATR-IgA2のT-DNA境界間の配列を図11に示す。左および右境界外側の配列は記載されている(Beckerら, 1992)。ヌクレオチド18-187は右T-DNA境界を表す。ヌクレオチド311-630はocs 3'ターミネーター領域を表す。ヌクレオチド927-1976はsuperMASプロモーターを表す。ヌクレオチド1990-2017はタバコsylvestris種(Nicotiana sylvestris)psaDb遺伝子由来の5'非翻訳領域を表す(Yamamotoら, 1995)。開始ATG(ヌクレオチド2012-2026)周囲の文脈は、高度に発現される植物遺伝子に見られるものと整合するように設計した(Sawantら, 1999)。ヌクレオチド2018-2086はソラマメ(Vicia faba)レグミンのシグナルペプチドの改変バージョンをコードする配列を含んでなる(Baumleinら, 1986)。ヌクレオチド2087-2605はATRのvon Willebrand factorA型ドメインをコードする配列(Bradleyら, 2001)を含んでなる。ヌクレオチド2606-3631はヒトIgA2m(2)定常域をコードする配列(Chintalacharuvuら, 1994)を含んでなる。ヌクレオチド3794-4108はアグロピン合成酵素(agropine synthase(ags))ターミネーター由来である。ヌクレオチド4530-4800はNOSプロモーター(Depickerら, 1982)を表す。ヌクレオチド4835-5626はnpt II遺伝子(カナマイシン耐性を与える)をコードする。ヌクレオチド5648-5870はA・ツメファシエンス(A. tumefactions)遺伝子7由来のポリアデニル化シグナル(Gielenら, 1984)である。ヌクレオチド6454-6602は左T-DNA境界を表す。
【0205】
ヒトJ鎖および分泌成分を植物中で発現するための構築物も開発している。この構築物、pGPTV-hpt-ocs-35SJ/SCは、上記のpGPTV-kan-ocsに対して記載したのと同じ方法でpGPTV-hptから誘導したベクターpGPTV-hpt-ocsに基づく。プラスミドpGPTV-hpt-ocs-35SJ/SCのT-DNA境界間の配列を図12に示す。左および右境界外側の配列は記載されている(Beckerら, 1992)。ヌクレオチド1-149は左T-DNA境界を表す。ヌクレオチド733-955(補体)はA・ツメファシエンス(A. tumefactions)遺伝子7(Gielenら, 1984)由来のポリアデニル化シグナルを表す。ヌクレオチド980-2002(補体)はhpt遺伝子(ハイグロマイシン耐性を与える)を表す。ヌクレオチド2049-2318(補体)はNOSプロモーター(Depickerら, 1982)を表す。ヌクレオチド2898-3230は、その自然のシグナルペプチドを含むヒト分泌成分遺伝子(ヌクレオチド3236-5056)の発現を駆動するカリフラワーモザイクウイルス(CaMV)35Sプロモーターを表し、そしてヌクレオチド5060-5445はエンドウマメrbcS-E9遺伝子(Mogenら, 1992)由来のポリアデニル化シグナルを表す。ヌクレオチド5457-5788はその自然シグナルペプチドを含むヒト接合(J)鎖遺伝子(ヌクレオチド5797-6273)の発現を駆動するCaMV 35Sの第2コピーを表し、そしてヌクレオチド6281-6494は遺伝子7ターミネーターを表す。ヌクレオチド6501-6819(補体)はocs 3'ターミネーター領域を表す。ヌクレオチド6944-7113は右T-DNA境界を表す。
【0206】
11.植物形質転換および植物におけるATRイムノアドヘシン発現
上記の発現カセットを利用して、アセンブルしたイムノアドヘシンを、アグロバクテリア媒介形質転換を経由して植物中で生産する。プラスミドspGPTV-hpt-ocs-35SJ/SCとpGPTV-kan-ocs-ATR-IgA2を、別々にA・ツメファシエンス(A. tumefactions)株LBA4404中に導入する。標準プロトコル(Horschら, 1985)によって、両株の一夜培養物を使用しタバコ葉片を用いて同時「共培養」を実施する。形質転換した植物組織をカナマイシン(100μg/mL)およびハイグロマイシン(25μg/mL)の両方を含有する再生培地上で選択する。
【0207】
抗生物質の存在のもとで再生する小植物を、トランスジーン発現についてスクリーニングする。これは、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)中で葉組織の抽出物を調製し、清澄化した抽出物をニトロセルロースペーパー上にスポットすることにより実施する。これらの「ドット」ブロットを、ヒトIgA、J鎖または分泌成分に特異的な、アルカリ-ホスファターゼと結合した抗血清を用いてプローブする。この第1スクリーニングで陽性であった植物を、ウェスタンブロットおよびPCRを含むさらなるスクリーニングにかける。ATR-IgA2イムノアドヘシンは59kDaのサブユニットMWを有すると予想される。重鎖定常域の自然二量化により、〜118kDaの2量体を形成することも予想される。これらの2量体は、植物細胞においてJ鎖の存在のもとでさらに二量化して〜252kDaの分子を生成する。分泌成分の付加により、〜320kDaの分子種が観察される。
【0208】
キメラ重鎖、J鎖および分泌成分構築物中のシグナルペプチドの存在は、多量体イムノアドヘシンへのアセンブリーのために重要である。mRNAを翻訳すると、シグナルペプチド切断により、それぞれのタンパク質は植物中の小胞体(ER)中に蓄積すると予想される。ERおよびゴルジ体において、多量体イムノアドヘシン中へのアセンブリーが起こると予想され、次いでアセンブルした分子が細胞から分泌される。
【0209】
12.アセンブルしたATRイムノアドヘシンの精製
アセンブルしたATRイムノアドヘシンの精製は、本質的に、前掲の実施例3のICAM-1イムノアドヘシンについて記載した通り実施することができる。
【0210】
13.ATRイムノアドヘシンは哺乳類動物細胞の毒素作用を抑制する
上記の発現カセットを利用してアセンブルしたイムノアドヘシンを生産し、それを植物抽出物から精製する。精製したイムノアドヘシンを、簡単なバイオアッセイでCHO-K1細胞を死滅から保護するために使用する。CHO-K1細胞は、その細胞表面上にPAが結合する受容体を有するが、毒素に感受性はない。該細胞は、PAおよびLFN-DTA(ジフテリア毒素の触媒性A鎖と連結したLFのN末端255アミノ酸から成る融合タンパク質)を用いてチャレンジすると死滅する。この組換え毒素は、自然のLFおよびOFタンパク質の結合と進入に必要である、同LF-PA受容体相互作用を利用する。イムノアドヘシンの保護作用を試験するために、CHO-K1細胞を、一定(毒性の)量のPAおよびLFN-DTAの存在のもとで増加する量のATR-IgA2と混合し、そしてその後のタンパク質合成に対する効果を測定する。ATR-IgA2は毒素作用の有効なインヒビターであり、可溶ATRより低いモル濃度で毒素作用を抑制する。
【0211】
14.ATRイムノアドヘシンはヒト被験者における毒素作用を抑制する
精製イムノアドヘシンを製薬上許容されるバッファー中で調製し、炭疽に感染したヒト被験者に投与する。投与経路は吸入エーロゾルとしてまたは注射としてのいずれであってもよい。通常なら死に至るであろう感染後期段階の被験者がイムノアドヘシンによって毒素作用から保護される。
【0212】
15.代替のATRイムノアドヘシン発現カセットの構築
ヒトATR(アミノ酸24-320)の全細胞外部分をコードするカセットをPCRクローニングにより調製する。具体的には、878bpの断片をプラスミドATR(Bradleyら, 2001)、またはプラスミドTEM8(St Croixら, 2000)のいずれかから, 次のオリゴヌクレオチドプライマー:

を用いて増幅する。
【0213】
第2プライマー(配列番号96)は、ATR細胞外ドメインのコード領域の3'末端にSac I部位を導入するように設計する(実線下線)。PCRはPfuポリメラーゼ(Stratagene)を用いて実施し、誤差の蓄積を少なくする。121bpの第2断片は5'非翻訳領域および植物シグナルペプチドを含み、プラスミドδATG-TOPO#4からオリゴヌクレオチドプライマーs:

を用いて増幅する。
【0214】
第1プライマー(配列番号93)は、PCR断片の5'末端にKpn I部位を導入するよう設計する(実線下線)。2つのPCR断片は20ntの相補配列(点線下線)を有する。2つのPCR断片を一緒に混合し、981bpの断片を配列番号93と配列番号96を用いて増幅する。得られるPCR断片を植物発現カセット中にクローニングし、部分的ATR細胞外ドメインと同じ方法(実施例1)でヒトIgA2との遺伝子融合物を形成する。
この同じ方法を用いる代替の構築物はアミノ酸41-227を増幅しうる。
【0215】
以上の実施例は本発明の態様および実施形態を限定するものでなく単に代表するものである。引用した全ての文献は本発明が関係する技術分野の技術レベルを示す。それぞれの文献の開示は参照により本明細書に、それぞれが参照によりその全文が個々に組み入れられたのと同じ程度に組み入れられるが、いずれの文献も先行技術として認めるものではない。
【0216】
当業者は、本発明が目的を実施しかつ記述した利点、ならびにそれらに固有の利点を得るように十分適合させていることを容易に理解しうる。記載した方法および組成物は好ましい実施形態を説明し、例示であり、そして本発明の範囲についての制限を意図していない。ある特定の改変および他の利用が当業者にはありうるのであって、これらは、請求の範囲に規定した、本発明の精神内に包含される。
【0217】
当業者には、本発明の範囲と精神から逸脱することなく、本発明に様々な置換と改善がなしうることは容易に明らかであろう。従って、かかるさらなる実施形態は本発明および次の請求の範囲内にある。
【0218】
説明として本明細書に記載した本発明は、本明細書に明確に開示してないいずれの1以上の要素、1以上の限定がなくとも適切に実施することができる。使用されている用語および表現は説明の用語として使用されていて限定の用語として使用されていない、そして示しかつ記載した特性、またはその部分のいずれの同等物を排除するかかる用語および発現の使用も意図していない。本発明の請求の範囲内に様々な改変が可能であることは認識される。従って、本発明は好ましい実施形態により特定して開示されているが、本明細書に開示した概念の最適の特性、修飾および改変は当業者により再分類されうること、およびかかる修飾および改変は本明細書および添付の請求項により定義した本発明の範囲内であると考えられることは理解されなければならない。
【0219】
さらに、本発明の特性または態様はMarkushグループまたは他の代わりのグルーピングの用語で記載される場合、当業者は本発明はまた、その場合、Markushグループまたは他のグループのいずれかの個々のメンバーまたはメンバーのサブグループ、および適当に個々のメンバーの排除の用語で記載されていることを認識するであろう。
【0220】
他の実施形態は以下の請求項内にある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キメラ毒素受容体タンパク質を含んでなるイムノアドヘシンであって、上記キメラ毒素受容体タンパク質が、免疫グロブリン重鎖の少なくとも一部分と連結した毒素受容体タンパク質;ならびに上記キメラ毒素受容体タンパク質と結合したJ鎖および分泌成分を含んでなる上記イムノアドヘシン。
【請求項2】
上記毒素受容体タンパク質が炭疽毒素受容体の細胞外ドメインまたはそのいずれかの部分を含んでなる炭疽毒素受容体タンパク質である、請求項1に記載のイムノアドヘシン。
【請求項3】
上記免疫グロブリン重鎖がIgA、IgA1、IgA2、IgM、およびキメラ免疫グロブリン重鎖からなる群から選択される、請求項1に記載のイムノアドヘシン。
【請求項4】
少なくとも1つのさらなるキメラ炭疽毒素受容体タンパク質を含んでなる、請求項2に記載のイムノアドヘシン。
【請求項5】
上記炭疽毒素受容体タンパク質が炭疽毒素受容体タンパク質の細胞外ドメインのいずれかの部分を含んでなり;そして上記免疫グロブリン重鎖がIgA2重鎖の少なくとも一部分を含んでなる、請求項2に記載のイムノアドヘシン。
【請求項6】
トランスジェニック植物に発現した、請求項1に記載のイムノアドヘシン。
【請求項7】
単子葉類植物に発現した、請求項1に記載のイムノアドヘシン。
【請求項8】
双子葉類植物に発現した、請求項1に記載のイムノアドヘシン。
【請求項9】
全てのタンパク質がヒトのタンパク質である、請求項1に記載のイムノアドヘシン。
【請求項10】
植物、脊椎動物、または無脊椎動物から誘導された異種細胞に発現した、請求項1に記載のイムノアドヘシン。
【請求項11】
哺乳類動物細胞に発現した、請求項1に記載のイムノアドヘシン。
【請求項12】
毛状根培養物に発現した、請求項1に記載のイムノアドヘシン。
【請求項13】
組織培養物の植物細胞に発現した、請求項1に記載のイムノアドヘシン。
【請求項14】
キメラ細菌またはウイルス毒素受容体タンパク質を含んでなるイムノアドヘシンであって、上記キメラ毒素受容体タンパク質が免疫グロブリン重鎖の少なくとも一部分と連結した毒素受容体タンパク質を含んでなり、上記イムノアドヘシンが植物特異的グルコシル化を有する、上記イムノアドヘシン。
【請求項15】
上記毒素受容体タンパク質が炭疽毒素受容体タンパク質である、請求項14に記載のイムノアドヘシン。
【請求項16】
上記イムノアドヘシンがさらに上記キメラ炭疽毒素受容体タンパク質と結合したJ鎖および分泌成分を含んでなる、請求項15に記載のイムノアドヘシン。
【請求項17】
上記炭疽毒素受容体タンパク質が炭疽毒素受容体の細胞外ドメインまたはそのいずれかの部分を含んでなる、請求項15に記載のイムノアドヘシン。
【請求項18】
上記免疫グロブリン重鎖がIgA、IgA1、IgA2、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgD、IgE、IgM、およびキメラ免疫グロブリン重鎖からなる群から選択される、請求項14に記載のイムノアドヘシン。
【請求項19】
少なくとも1つのさらなるキメラ毒素受容体タンパク質を含んでなる、請求項14または15に記載のイムノアドヘシン。
【請求項20】
上記毒素受容体タンパク質が上記毒素受容体タンパク質の細胞外ドメインのいずれかの部分を含んでなり;そして上記免疫グロブリン重鎖がIgA2重鎖の少なくとも一部分を含んでなる、請求項14または15に記載のイムノアドヘシン。
【請求項21】
全てのタンパク質がヒトのまたは感染および/または発病中のヒト宿主に関連した、請求項14に記載のイムノアドヘシン。
【請求項22】
植物、脊椎動物、または無脊椎動物から誘導された異種細胞中に発現した、請求項14に記載のイムノアドヘシン。
【請求項23】
毛状根培養物に発現した、請求項14に記載のイムノアドヘシン。
【請求項24】
組織培養物の植物細胞に発現した、請求項14に記載のイムノアドヘシン。
【請求項25】
トランスジェニック植物に発現した、請求項14に記載のイムノアドヘシン。
【請求項26】
単子葉類植物に発現した、請求項14に記載のイムノアドヘシン。
【請求項27】
双子葉類植物に発現した、請求項14に記載のイムノアドヘシン。
【請求項28】
イムノアドヘシンおよび植物材料を含んでなる組成物であって、上記イムノアドヘシンがキメラ毒素受容体タンパク質を含んでなり、上記キメラ毒素受容体タンパク質が免疫グロブリン重鎖の少なくとも一部分と連結している、上記組成物。
【請求項29】
さらに上記キメラ毒素受容体タンパク質とともにJ鎖および分泌成分を含んでなる、請求項28の組成物。
【請求項30】
上記キメラ毒素受容体タンパク質が上記毒素受容体タンパク質の細胞外ドメインのいずれかの部分を含んでなり;そして上記イムノアドヘシンが植物特異的グリコシル化を有する、請求項28の組成物。
【請求項31】
上記免疫グロブリン重鎖がIgA、IgA1、IgA2、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgD、IgE、IgM、およびキメラ免疫グロブリン重鎖からなる群から選択される、請求項27の組成物。
【請求項32】
少なくとも1つのさらなるキメラ毒素受容体タンパク質を含んでなる、請求項27の組成物。
【請求項33】
上記毒素受容体タンパク質が上記毒素受容体タンパク質の細胞外ドメインのいずれかの部分を含んでなり;そして上記免疫グロブリン重鎖がIgA2重鎖の少なくとも一部分を含んでなる、請求項27の組成物。
【請求項34】
上記毒素受容体タンパク質が炭疽毒素受容体タンパク質である、請求項28〜33のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項35】
ウイルスまたは細菌抗原の宿主細胞との結合を低下させる方法であって、上記抗原を請求項1、14または27に記載のイムノアドヘシンと接触させ、上記イムノアドヘシンを上記抗原と結合させ、そしてそれらの毒性活性を低下させることを含んでなる上記方法。
【請求項36】
ウイルスまたは細菌病原体の死亡率および罹患率を低下させる方法であって、上記ウイルスまたは細菌病原体の抗原を請求項1、14または27に記載のイムノアドヘシンと接触させ、上記イムノアドヘシンを上記抗原と結合させ、そしてそれらの毒性活性を低下させることを含んでなる上記方法。
【請求項37】
ヒト被験者における細菌またはウイルス毒素による死亡率および罹患率を低下させる方法であって、上記被験者に請求項1、14または27に記載のイムノアドヘシンの有効量を投与し、上記イムノアドヘシンを上記抗原と結合させ、そしてそれらの毒性活性を低下させることを含んでなる上記方法。
【請求項38】
上記毒素が炭疽PA毒素である、請求項35〜37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
請求項1、14または27に記載のイムノアドヘシンを製薬上許容されるバッファー中に含んでなる医薬組成物。
【請求項40】
植物プロモーターと機能しうる形で連結されたキメラ毒素受容体タンパク質をコードする遺伝子を含んでなる発現ベクターであって、上記キメラ毒素受容体タンパク質が免疫グロブリン重鎖の少なくとも一部分と連結している上記発現ベクター。
【請求項41】
上記毒素受容体タンパク質が炭疽毒素受容体タンパク質である、請求項40に記載の発現ベクター。
【請求項42】
上記キメラ受容体タンパク質がICAM-1を含んでなる、請求項1、14、19、20、28、35、36、37、39および40のいずれか1項に記載のイムノアドヘシン、組成物、または方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図7E】
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【図7F】
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【図7G】
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【図7H】
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【図7I】
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【図7J】
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【図7K】
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【図7L】
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【図7M】
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【図7N】
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【図7O】
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【図7P】
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【図7Q】
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【図7R】
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【図7S】
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【図7T】
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【図7U】
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【図7V】
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【図7W】
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【図7X】
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【図7Y】
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【図7Z】
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【図7AA】
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【図7BB】
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【図7CC】
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【図7DD】
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【図7EE】
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【図7FF】
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【図7GG】
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【図7HH】
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【図7II】
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【図7JJ】
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【図7KK】
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【図7LL】
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【図8A−1】
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【図8A−2】
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【図8A−3】
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【図8A−4】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D−1】
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【図8D−2】
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【図8E−1】
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【図8E−2】
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【図8E−3】
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【図8F−1】
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【図8F−2】
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【図8F−3】
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【図8F−4】
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【図8F−5】
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【図8F−6】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図9−3】
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【図9−4】
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【図9−5】
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【図9−6】
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【図9−7】
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【図9−8】
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【図10−1】
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【図10−2】
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【図10−3】
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【図10−4】
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【図11−1】
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【図11−2】
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【図11−3】
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【図11−4】
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【図11−5】
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【図11−6】
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【図11−7】
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【図11−8】
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【図12−1】
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【図12−2】
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【図12−3】
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【図12−4】
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【図12−5】
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【図12−6】
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【図12−7】
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【図12−8】
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【図12−9】
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【公開番号】特開2010−241817(P2010−241817A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−126596(P2010−126596)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【分割の表示】特願2003−564542(P2003−564542)の分割
【原出願日】平成14年10月25日(2002.10.25)
【出願人】(504159925)プラネット バイオテクノロジー,インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】