説明

毒性の低下した治療剤

本発明は、血清アルブミン結合ペプチド(SABP)、標的化因子および細胞傷害性因子を含む、毒性の低下した治療剤に関する。また、本発明は、因子の毒性を低下させる方法および毒性の低下した治療剤を用いる処置方法にも関する。本発明により、少なくとも1つの血清アルブミン結合ドメイン(SABM)、少なくとも1つの標的化因子(TA)および少なくとも1つの細胞傷害性因子(CA)を含む、コンジュゲート分子が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、米国特許施行規則1.53(b)(1)の下で出願され、米国特許法119(e)の下で仮出願第60/641,534号(2005年1月5日出願)および仮出願第60/616,507号(2004年10月5日)に対する優先権を主張する、通常出願である。仮出願第60/641,534号および仮出願第60/616,507号の内容は、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、インビボでの毒性の低下した新規な治療剤、それを含む組成物、インビボにおいて治療剤の毒性を低下させる方法、および該新規な治療剤を投与することを含む患者を処置するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
抗体−薬物コンジュゲート(ADC)を用いて、細胞傷害性または静細胞剤、すなわち、癌の処置において腫瘍細胞を殺しまたは阻害する薬物を局所的に送達する試みがなされてきた(非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3;特許文献1)。理論的には、薬物部位は腫瘍に対して標的化され、内部化され、ここで、これらの未コンジュゲート化薬物剤の全身投与は、正常な細胞に対して許容できないレベルの毒性をもたらしかねない(非特許文献4;非特許文献5)。
【0004】
ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体は共に、ADCを作成するのに用いられてきた(非特許文献6)。これらの方法で用いられる薬物は、ダウノマイシン、ドキソルビシン、メトトレキセートおよびビンデジンを含む(非特許文献6)。抗体−トキシンコンジュゲーとで用いられるトキシンは、ジフテリアトキシン、リシンのような植物トキシン、ゲルダナマイシンのような低分子トキシン(非特許文献7;非特許文献8;非特許文献9),メイタンシノイド(特許文献2:非特許文献10)、およびカリケアミシン(非特許文献11;非特許文献12)を含む。より最近では、オーリスタチンペプチド、オーリスタチンE(AE)およびモノメチルオーリスタチン(MMAE)およびドラスタチンの合成アナログ(特許文献3)は全長抗体にコンジュゲートされてきた(例えば、非特許文献11;非特許文献12;非特許文献13;特許文献4;特許文献5;非特許文献14;非特許文献15;特許文献6;非特許文献14)。オーリスタチンEの改変体もまた特許文献7;特許文献8に開示されている。
【0005】
ZEVALIN(登録商標)(イブリツモマブチウキセタン、Biogen Idec Inc.)は、正常および悪性Bリンパ球の表面に見出されるCD20抗原に対して向けられたネズミIgG1カッパーモノクローナル抗体、およびチオ尿素リンカー−キレーターによって結合された111Inたまは90Y放射性同位体から構成される抗体−放射性同位体コンジュゲートである(非特許文献16;非特許文献17;非特許文献18;非特許文献19)。ZEVALIN(登録商標)はB細胞の非ホジキンリンパ腫(NHL)に対する活性を有するが、投与の結果、ほとんどの患者においてひどくかつ延長された血球減少症がもたらされる。MYLOTARGTM(ゲムツズマブオゾガマイシン、Wyeth Pharmaceuticals)カリケアミシンに連結されたCD33抗体から構成される抗体薬物コンジュゲートは、注射による急性骨髄性白血病の処置について2000年に認可された(非特許文献20;特許文献9;特許文献10;特許文献11;特許文献12;特許文献13;特許文献14;特許文献15;特許文献16)。カンツズマブメルタンシン(Immunogen,Inc.)、ジスルフィドリンカーSPPを介して、メイタンシノイド薬物部位DM1に連結されたhuC242抗体から構成される抗体薬物コンジュゲート(非特許文献21)は、結腸、膵臓、胃その他のような、CanAgを発現する癌の処置に関してII相試験に進みつつある。MLN−2704(Millennium Pharm.,BZL Biologics,Immunogen Inc.)、メイタンシノイド薬物部位DM1に連結された抗前立腺特異的膜抗原(PSMA)モノクローナル抗体から構成される抗体薬物コンジュゲートは、前立腺腫瘍の潜在的使用のために開発中である。
【0006】
低分子または生物学的治療剤の半減期を改良するために、種々の方法が試みられている。例えば、グリコシル化部位が分子に導入されており(非特許文献22)、分子はPEGとコンジュゲートされて(非特許文献23;非特許文献24;非特許文献25)、サイズを増大させ、排出半減期を増大させている。ある者は、ヒト血清アルブミンを用いて、薬物の治療用途を改良しようと試みてきた。例えば、アルブミンは低分子(非特許文献26;非特許文献27;非特許文献28);CD4(非特許文献29);IgGのFc部分(非特許文献30)、IL−2(非特許文献31)および抗gp72抗体およびメトトレキセート分子の間のブリッジ(非特許文献32)に結合されてきた。
【0007】
また、アルブミン結合ポリペプチドの使用も調べられてきた。StreptococcalプロテインGからのアルブミン結合ドメインに融合されたヒト可溶性補体受容体1型(sCR1)の延長されたインビボ半減期が報告されている(非特許文献33)。プロテインGの標識されたアルブミン結合ドメインが記載されている(特許文献17)。いくつかのファージディスプレイ−由来アルブミン結合ペプチドが出願人によって記載されている(特許文献18、特許文献19、および非特許文献34参照。理論においては、血清アルブミン結合ペプチドが、インビボにおいて血清アルブミンと非共有結合的に会合する。それ自体、血清アルブミン結合ペプチドは、必然的に、血清アルブミンそれ自体のインビボサイクリングメカニズムから段階的に除去される。
【特許文献1】米国特許第4975278号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第1391213号明細書
【特許文献3】国際公開第02/088172号パンフレット
【特許文献4】米国特許出願公開第2004/0018194号明細書
【特許文献5】国際公開第04/032828号パンフレット
【特許文献6】国際公開第03/043583号パンフレット
【特許文献7】米国特許第5767237号明細書
【特許文献8】米国特許第6124431号明細書
【特許文献9】米国特許第4970198号明細書
【特許文献10】米国特許第5079233号明細書
【特許文献11】米国特許第5585089号明細書
【特許文献12】米国特許第5606040号明細書
【特許文献13】米国特許第5693762号明細書
【特許文献14】米国特許第5739116号明細書
【特許文献15】米国特許第5767285号明細書
【特許文献16】米国特許第5773001号明細書
【特許文献17】欧州特許出願公開第486525号明細書
【特許文献18】国際公開第01/45746号パンフレット
【特許文献19】米国特許出願公開第2004/0001827号明細書
【非特許文献1】Payne,G.(2003)Cancer Cell 3:207−212
【非特許文献2】Syrigos and Epenetos(1999)Anticancer Research 19:605−614
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【非特許文献7】Mandoerら,(2000)J.of the Nat.Cancer Inst.92(19):1573−1581
【非特許文献8】Mandlerら(2000)Bioorganic & Med.Chem.Letters 10:1025−1028
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【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以下に記載する発明は、標的化因子/細胞傷害性因子とのコンジュゲートの関係で、アルブミン結合ペプチドの予期せぬことに有利な用途に取り組む。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の要旨)
本発明は、少なくとも1つの血清アルブミン−結合部位(SABM)、標的化因子(TA)および細胞傷害性因子(CA)の共有結合組合せを含むコンジュゲート分子に関する。1つの実施形態によると、該コンジュゲート分子は2以上のCAを含む。実施形態によると、該コンジュゲート分子は2以上のTAを含む。
【0010】
本発明の1つの実施形態によると、SABMはDICLPRWGCLWの配列(配列番号8)に対して少なくとも50%同一であるアミノ酸配列を含み、ここで、該アミノ酸配列はCys残基の間に5つのアミノ酸残基と共に2つのCys残基を有する。1つの実施形態によると、該アミノ酸残基は少なくとも60%同一性、少なくとも70%同一性、少なくとも80%同一性、少なくとも85%同一性、少なくとも90%同一性、少なくとも95%同一性、少なくとも98%同一性および少なくとも99%同一性からなる群から選択される配列番号8に対するパーセント同一性を有する。
【0011】
もう1つの実施形態になると、該SABMはDICLPRWGCLWのアミノ酸配列(配列番号8)の改変体を含み、そこでは、配列番号8の残基のうちの残基のいずれか1〜5残基が、Cys残基を除いて、異なるアミノ酸残基で置換されている。
【0012】
もう1つの実施形態によると、該SABMは:
Xaa−Xaa−Cys−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−Cys−Xaa−Xaa
Phe−Cys−Xaa−Asp−Trp−Pro−Xaa−Xaa−Xaa−Ser−Cys[配列番号1]
Val−Cys−Tyr−Xaa−Xaa−Xaa−Ile−Cys−Phe[配列番号2]
Cys−Tyr−Xaal−Pro−Gly−Xaa−Cys[配列番号3]
Asp−Xaa−Cys−Leu−Pro−Xaa−Trp−Gly−Cys−Leu−Trp−[配列番号4]
Trp−Cys−Asp−Xaa−Xaa−Luc−Xaa−Ala−Xaa−Asp−Leu−Cys[配列番号5]
Asp−Leu−Val−Xaa−Leu−Gly−Leu−Glu−Cys−Trp[配列番号6]
CXXGPXXXXC[配列番号21]
XXXXCXXGPXXXXCXXXX[配列番号22]
CXXXXXXCXXXXXXCCXXXCXXXXXXC[配列番号23]
CCXXXCXXXXXXC[配列番号24]
CCXXXXXCXXXXCXXXXCC[配列番号25]
CXCXXXXXXXCXXXCXXXXXX[配列番号26]
XXXXXDXCLPXWGCLWXXXX[配列番号155]
XXXXDXCLPXWGCLWXXX[配列番号156]
DXCLPXWGCLW[配列番号423]
XXXXDICLPRWGCLWXXX[配列番号424]
XXXXXDICLPRWGCLWXXXX[配列番号425]
XXEMCYFPGICWMXX[配列番号426]
XXDLCLRDWGCLWXX[配列番号427]
よりなる群から選択される直鎖状または環状アミノ酸配列を含み、ここで、Xは任意のアミノ酸残基である。
【0013】
1つの好ましい実施形態によると、前記した一般式のSABM配列、特に配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4は、N末端(Xaa)におけるさらなるアミノ酸およびC末端(Xaa)におけるさらなるアミノ酸を含み、ここで、Xaaはアミノ酸であって、xおよびzは0(ゼロ)よりも大きい、またはそれに等しい、一般には100未満、好ましくは10未満、より好ましくは0、1、2、3、4または5、より好ましくは4または5の合計数であり、XaaはIle、Phe、TyrおよびValよりなる群から選択される。1つの実施形態において、本発明は、配列DICLPRWGCLW[配列番号8]を含むアルブミン結合ペプチドの使用に関する。1つの実施形態によると、SABMは配列番号7〜20,27〜154および157〜421よりなる群から選択されるアミノ酸配列のいずれか1つを含む。1つの好ましい実施形態によると、SABMは配列番号7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19および20よりなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0014】
もう1つの実施形態によると、SABMは以下のアミノ酸配列:Xaa−Cys−Xaa−Cys−Xaaを含み、ここで、i、jおよびkの合計は約25以下であって、Xaaは任意のアミノ酸残基である。1つの好ましい実施形態によると、i、jおよびkの合計は約18残基以下である。もう1つの好ましい実施形態によると、i、jおよびkの合計は約11残基以下である。
【0015】
もう1つの実施形態によると、SAMBは表1〜9に記載されたペプチド配列のいずれか1つを含む。
【0016】
本発明の1つの実施形態によると、前記SABM配列は、約100μM以下であるKでもって血清アルブミンに結合する。もう1つの実施形態によると、Kは約10μM以下、約1μM以下、約500nM以下、約100nM以下、約50nM以下、および約10nM以下よりなる群から選択される。
【0017】
もう1つの実施形態によると、TAは標的細胞表面タンパク質に結合することができるアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、ここで、TAは細胞表面タンパク質、接着または抗体、または細胞表面タンパク質に結合することができる前記のいずれかの1つの断片に対するリガンドであるアミノ酸配列を含む。1つの実施形態によると、標的とすべき細胞表面タンパク質はB細胞表面マーカーである。もう1つの実施形態によると、標的とすべき受容体はHER2、CD20、EGFR、PDGFR、BR3、Flt−1、KDRおよびEphB2よりなる群から選択される。もう1つの実施形態によると、TAはそれらの受容体のいずれか1つに対して向けられる抗体である。好ましい実施形態によると、該抗体は以下の:Fab、F(ab)、scFvおよびダイアボディーのうちのいずれか1つの形態である。もう1つの実施形態によると、TAは本明細書中に記載されたVHまたはVL配列(例えば、配列番号428および429の抗原−結合部分を含む抗HER2抗体)を含む。
【0018】
1つの実施形態によると、該抗HER2抗体は配列番号428および429の可変領域を含む。1つの実施形態によると、該抗HER2抗体は配列番号428の軽鎖可変領域の改変体を含み、ここで、Kabatナンバリングシステムに従って番号付けしたQ27(V);D28(V)、N30(V)、T31(V)、A32(V)、Y49(V)、F53(V)、Y55(V)、R66(V)、H91(V)、Y92(V)およびT94(V)よりなる群から選択されるアミノ酸の少なくとも1以上はアラニン以外の任意のアミノ酸で置換されている。1つの実施形態によると、該抗HER2抗体は配列番号428の軽鎖可変領域の改変体を含み、ここで、D28(V)Q;D28(V)G;N30(V)S;T31(V)S;A32(V)G;Y49(V)W、Y49(V)D;Y49(V)V;F53(V)W;F53(V)V;F53(V)Q;Y55(V)W;R66(V)N;H91(V)F;H91(V)Y;Y92(V)WおよびT94(V)Sよりなる群から選択される置換を有する。1つの実施形態によると、該抗HER2抗体は配列番号428の軽鎖可変領域の改変体を含み、ここで、該可変領域は少なくとも3つの置換Y49(V)D;F53(V)WおよびY55(V)Wを含む。1つの実施形態によると、該抗HER2抗体は配列番号428の軽鎖可変領域の改変体を含み、ここで、該可変領域は少なくとも3つの置換N30(V)S;H91(V)FおよびY92(V)Wを含む。
【0019】
1つの実施形態によると、該抗HER2抗体は配列番号429の重鎖可変領域の改変体を含み、Kabatナンバリングシステムに従って番号付けしたW95(V)、D98(V)F100(V)Y100a(V)およびY102(V)よりなる群から選択されるアミノ酸の少なくとも1以上は、アラニン以外の任意のアミノ酸で置換されている。1つの実施形態によると、該抗HER2抗体は配列番号429の重鎖可変領域の改変体を含み、ここで、該可変領域はW95(V)Y、D98(V)W、、D98(V)R、D98(V)K、D98(V)H、F100(V)P、F100(V)L、F100(V)M、F100(V)W、Y100(V)F、Y102(V)V、Y102(V)KおよびY102(V)Lよりなる群から選択される少なくとも1以上の置換を含む。1つの実施形態によると、該抗HER2抗体は配列番号429の重鎖可変配列の改変体を含み、ここで、該可変領域は少なくとも置換F100(V)PおよびY102(V)Kを含む。1つの実施形態によると、該抗HER2抗体は配列番号429の重鎖可変配列の改変体を含み、ここで、該可変領域は、少なくとも、F100(V)PおよびY102(V)Lの置換を含む。
【0020】
1つの実施形態によると、該抗HER2抗体は、軽鎖可変配列の配列番号428および重鎖可変配列の配列番号429の改変体を含み、ここで、Kadatナンバリングシステムに従って番号付けした、D28(V)、N30(V)、T31(V);A32(V);Y49(V)、F53(V)、Y55(V)、R66(V)、H91(V)、Y92(V)、T94(V)、W95(V)、D98(V)、F100(V);Y100a(V)およびY102(V)よりなる群から選択されるアミノ酸の少なくとも1以上は、アラニン以外の任意のアミノ酸で置換されている。1つの実施形態によると、該抗HER2抗体は、軽鎖可変配列の配列番号428および重鎖可変配列の配列番号429の改変体を含み、それは、以下の置換D28(V)Q;D28(V)G;N30(V)S;T31(V)S;A32(V)G;Y49(V)W、Y49(V)D、Y49(V)V、F53(V)W、F53(V)V、F53(V)Q、Y55(V)W、R66(V)N、H91(V)F、H91(V)Y、Y92(V)W、T94(V)S、W95(V)Y、D98(VH)W、D98(V)R、D98(V)K、D98(V)H、F100(V)P、F100(V)L、F100(V)M、Y100a(V)F、Y102(V)V、Y102(V)KおよびY102(V)Lの少なくとも1以上を含む。1つの実施形態によると、該抗HER2抗体は軽鎖可変配列の配列番号428および重鎖可変配列の配列番号429の改変体を含み、これは、以下の置換Y49(V)D、F53(V)W、Y55(V)W、F100(V)PおよびY102(V)Kを少なくとも含む。1つの実施形態によると、該抗HER2抗体は軽鎖可変配列の配列番号428および重鎖可変配列の配列番号429の改変体を含み、これは、少なくとも以下の置換Y49(V)D、F53(V)W、Y55(V)W、F100(V)PおよびY102(V)Lを含む。もう1つの実施形態によると、該抗HER2抗体は2003年4月9日に出願された米国特許公開番号第2003/0228663 A1;WO 03/087131;Carterら,(1992)PNAS89:4285−4289に開示されたいずれかの抗HER2抗体であり、その刊行物をここに引用して明示的に援用する。
【0021】
1つの実施形態によると、TAは、細胞の外側表面のタンパク質に結合する能力以外のさらなる生物活性を有する。もう1つの実施形態によると、該他の生物活性は、該細胞を介するリガンド−媒介細胞シグナリングブロックする能力である。もう1つの実施形態によると、該他の生物活性は、標的化細胞のアポトーシスを誘導する能力である。もう1つの実施形態によるとTAは、10uM以下、1uM以下、500nm以下、100nm以下および10nm以下よりなる群から選択されるKdでもって、注目する細胞上のタンパク質に結合するポリペプチドである。
【0022】
1つの実施形態において、TAが結合する注目する細胞上のタンパク質は、通常の細胞と比較して癌細胞で過剰発現される。もう1つの実施形態によると、TAによって標的化される細胞は腫瘍細胞のような病原性細胞である。
【0023】
1つの好ましい実施形態によると、該細胞傷害性因子はモノメチルオーリスタチン(MMAE)である。
【0024】
もう1つの好ましい実施形態によると、該コンジュゲート分子は、該SABMおよび標的化因子または細胞傷害性因子の間に位置するリンカー部分を含む。1つの実施形態において、外リンカー部分はアミノ酸配列:GGGS(配列番号422)を含む。
【0025】
もう1つの実施形態によると、該SABMはヒトアルブミンに結合する。もう1つの実施形態によると該SABMは、TAの可変重鎖または可変軽鎖のN−またはC末端領域にコンジュゲートしている。
【0026】
本発明は、薬学的キャリアに混合されたコンジュゲート分子を含む組成物を提供する。また、本発明は、医薬の製造における該コンジュゲート分子の使用も提供する。
【0027】
また、本発明は、治療剤にコンジュゲートした血清アルブミン結合部分(SABM)を持つ治療剤を生産する工程を含む治療剤の毒性を低下させる方法も提供する。該方法は、さらに、SABMを含まない治療剤と、SABMを有する治療剤の毒性を比較する工程を含むことができる。1つの実施形態によると該方法は、さらに、治療剤:SABMコンジュゲートの毒性を測定する工程を含む。
【0028】
本発明は、治療上有効量の本発明によるコンジュゲート分子を哺乳動物に投与することを含む哺乳動物において治療剤の毒性を低下させる方法を提供する。1つの実施形態によると、該方法は、さらに、治療剤:SABMコンジュゲートの毒性を測定する工程を含む。1つの好ましい実施形態によると、該哺乳動物は自己免疫疾患または癌に罹っている。
【0029】
本発明は、腫瘍を有する哺乳動物を、腫瘍細胞または種陽の周囲の血管系に結合する本発明のコンジュゲート分子の治療上有効量で処置する工程を含む哺乳動物において腫瘍を処置する方法を提供する。また、本発明は、治療上有効量の本発明のコンジュゲート分子で、自己免疫疾患を有する哺乳動物を処置する工程を含む哺乳動物において自己免疫障害を処置する方法を提供する。1つの好ましい実施形態によると、該コンジュゲート分子は、自己免疫障害に寄与する、またはそれを引き起こすB細胞に結合する。また、本発明は、治療上有効量の本発明のコンジュゲート分子で、自己免疫障害を有する哺乳動物を処置する工程を含む、哺乳動物において細胞増殖性障害を処置する方法を提供する。もう1つの実施形態において、本発明は、治療上有効量の、B細胞に結合する本発明のコンジュゲート分子で哺乳動物を処置する工程を含む、哺乳動物においてB細胞を枯渇させる方法を提供する。
【0030】
1つの実施形態によると、本発明の処置方法は、さらに、哺乳動物においてコンジュゲート分子の毒性を測定する工程を含む。
【0031】
1つの実施形態によると、毒性は、体重喪失、造血系毒性、腎臓毒性、肝臓毒性、胃腸毒性、骨髄細胞から末梢血液への造血系先祖細胞の減少した動員、貧血、骨髄抑制、汎血球減少症、血小板減少症、好中球減少症、リンパ球減少症、口内炎、脱毛症、頭痛、および筋肉痛よりなる群のいずれか1つとして発現される。
【0032】
また、本発明は、容器、本発明のコンジュゲート分子を含む該容器内の組成物、治療上有効量を投与するための指示を含むパッケージ添付文書を備える製品も提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
(I.定義)
用語「血清アルブミン結合ペプチド」または「血清アルブミン結合部分」(「SABM」)とは、血清アルブミンに結合するアミノ酸配列を含む化合物またはポリペプチドをいう。1つの好ましい実施形態によると、SABMはヒト血清アルブミンに結合する。1つの実施形態によると、SABMは、ウサギ、ラット、マウスまたはヒト血清アルブミンに結合する配列表に引用された配列のいずれか1つの少なくとも1つを含む。もう1つの実施形態によると、SABMは、血清アルブミンの複数種に結合する配列表に引用された配列のいずれか1つの少なくとも1つを含む。1つの実施形態によると、SABMは、ウサギ、ラット、マウスおよびヒト血清アルブミンのいずれか1つ、または組合せに結合する、表1〜9に引用された配列のいずれか1つの少なくとも1つを含む。もう1つの実施形態によると、SABMは、血清アルブミンの複数種に結合する、表1〜9に引用された配列のいずれか1つの少なくとも1つを含む。多種バインダーの例は、少なくともヒトおよびラット血清アルブミンに結合するSABM;少なくともヒト、ラットおよびウサギ血清アルブミンに結合するもの;少なくともヒトおよびウサギ血清アルブミンに結合するもの;および少なくともヒトおよびマウス血清アルブミンに結合するものを含む。
【0034】
1つの好ましい実施形態によると、SABMペプチドは、アルブミンに結合することができる非天然アミノ酸配列である。本発明に関連するSABMは、約50未満のアミノ酸残基、好ましくは約40未満のアミノ酸残基の拘束された(すなわち、例えば、ベータ−ターンまたはベータ−プリーツシートを開始するアミノ酸の存在としての構造のいくつかのエレメントを有する、あるいは例えば、ジスルフィド−結合Cys残基の存在によって環化された)、または拘束されていない(直鎖状)アミノ酸配列であり得る。約40未満のアミノ酸残基のSABMのうち、好ましいのは、約10および約30の間のアミノ酸残基のSABM、特に、約20アミノ酸残基のSABMである。しかしながら、本開示を読むに際して、当業者であれば、それは特定のSABMの長さではなく、本発明のSABMを区別するアルブミンに結合するその能力であることを認識するであろう。
【0035】
本発明の「標的化因子」「TA」は、もしTAがインビトロおよび好ましくはインビボで標的分子を担う特異的細胞型のような標的分子に「進む」、「結合する」または「標的化する」のであれば、十分な親和性および特異性でもって、細胞の表面の標的分子に結合するであろう(例えば、the use of the term “homes to”,“homeing”,and “targets”in Pasqualini and Rouslahti,1996 Nature,380:364−366およびArapら,1998 Science,279:377−380参照)。一般に、TAは、約10マイクロM未満、好ましくは約100nM未満、約10nM未満の解離定数Kによって特徴付けられる親和性でもって標的分子に結合するであろう。しかしながら、約1nM未満、好ましくは約1pMおよび1nMの間の標的分子に対する親和性を有するポリペプチドまたは低分子は、等しく、本発明の関係内のTAであるようである。好ましくは、TAはポリペプチド(例えば、抗体)である。一般に、前記したように特定の標的分子に結合するTAは、当該分野で公知の多数の技術のいずれかによって単離し、同定することができる。
【0036】
TAは、ファージ−ディスプレイ由来抗体のような、天然に生じる、ならびに天然に生じないアミノ酸残基を含有し得る前記したアミノ酸配列である。特定のアミノ酸またはペプチドの構造を模倣する非アミノ酸化学構造を含むいわゆる「ペプチドミメティック」および「ペプチドアナログ」は、本発明の関係内のTAであり得る。そのようなミメティックまたはアナログは、一般には、それらのペプチドカウンターパートに見出される適切な空間的向きで存在する、サイズ、電荷または疎水性のような同様な物理的特徴を呈するものとして特徴付けられる。ペプチドミメティック化合物の具体的な例は、アミノ酸の1以上の間のアミド結合が、例えば、当外分野で良く知られたように炭素−炭素結合または他の結合によって置き換えられた化合物である(例えば、Sawyer,1995、In:Peptide Based Drug Design pp.378−422,ACS,Washington DC参照)。
【0037】
「B細胞表面マーカー」または「B細胞表面抗原」は、本明細書中においては、それに結合するアンタゴニストで標的化できるB細胞の表面で発現される抗原である。例示的なB細胞表面マーカーはCD10、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD24、CD37、CD40、CD53、CD72、CD73、CD74、CDw75、CDw76、CD77、CDw78、CD79a、CD79b、CD80、CD81、CD82、CD83、CDw84、CD85およびCD86白血球表面マーカーを含む(記載については、The Leukocyte Antigen Facts Book、第二版、1997年編、BarclayらAcademic Press,Harcourt Brace & Co.,New York参照)。他のB細胞表面マーカーは、RP105、FcRH2、CD79A、C79B、CR2、CCR6、CD72、P2X5、HLA−DOB、CXCR5、FCER2、BR3、BTLA、NAG14(aka LRRC4)、SLGC16270(ala LOC283663)、FcRH1、IRTA2、ATWD578(aka MGC15619)、FcRH3、IRTA1、FcRH6(aka LOC343413)およびBCMA(aka TNFRSF17)を含む。
【0038】
特に注目するB細胞表面マーカーは、哺乳動物の他の非B細胞組織と比較して、B細胞で優先的に発現され、前駆体B細胞および成熟B細胞双方で発現され得る。好ましいB細胞表面マーカーは、本明細書中においては、CD20およびCD22である。
【0039】
「CD20」抗原は、末梢血液またはリンパ系器官からのB細胞の90%を超えるものの表面に見出される非グリコシル化リンタンパク質である。CD20は、初期プレ−B細胞発生の間に発現され、原形質分化まで留まる。CD20は正常なB細胞ならびに悪性B細胞双方上に存在する。文献中でのCD20に対する他の名称は「B−リンパ球−制限抗原」B1および「Bp35」を含む。CD20抗原は、例えば、ClarkらPNAS(USA)82:1766(1985)に記載されている。ヒトCD20アミノ酸配列はThe Leukocyte Antigen Facts,Barclayらsupra、182頁、およびEMBL Genbank、受託番号第X12530およびSwissprotP11836に示される。
【0040】
BL−CAM Lyb8としても知られた「CD22」抗原は、約130(還元)〜140kD(非還元)の分子量を持つ1型の一体的膜糖タンパク質である。それはB−リンパ球の細胞質および細胞膜双方で発現される。CD22抗原は、初期に、CD19抗原とほぼ同一段階でB細胞リンパ球分化で出現する。他のB細胞マーカーとは異なり、CD22膜発現は、成熟B細胞(CD22+)および原形質細胞(CD22−)の間よりなる後期分化段階に制限される。CD22抗原は、例えば、WilsonらJ.Exp.Med.173:137(1991)およびWilsonらJ.Immunol.150:5013(1993)に記載されている。
【0041】
「CD19」抗原とは、例えば、HD237−CD19またはB4抗体によって同定される抗原をいう(KieselらLeukemia Research II、12:1119(1987))。CD19は、原形質細胞への最終分化に丁度先立った時点まで、プロ−B、プレ−B、未成熟および成熟、活性化およびメモリーB細胞で見出される。CD19またはCD20は造血幹細胞または原形質細胞で発現される。CD19へのアンタゴニストの結合は、CD19抗原の内部化を引き起こし得る。ヒトCD19アミノ酸配列はThe Leukocyte Antigen Facts,Barclayらsupra、180頁、およびEMBL Genbank、受託番号第M28170およびSwissprotP11836に示される。
【0042】
本明細書中で用いられる場合、「B細胞枯渇」とは、処理前のレベルと比較して、薬物または抗体処理後における動物またはヒトでのB細胞レベルの低下をいう。B細胞レベルは、完全な血液カウントを得ることによって、公知のB細胞マーカーについてのFACS分析染色によって、および実験実施例に記載されたような方法によって、よく知られたアッセイを用いて測定可能である。B細胞枯渇は部分的または完全であり得る。1つの実施形態において、B細胞を発現するCD20の枯渇は少なくとも25%である。薬物を枯渇させるB細胞を受ける患者において、薬物が患者の体の中を循環している時間の間、およびB細胞の回復の時間の間にはB細胞は一般に枯渇している。
【0043】
従って、本発明の範囲内にある用語「アミノ酸」はその最も広い意味で用いられ、天然に生じるLアルファ−アミノ酸もしくは残基を含むことを意味する。天然に生ずるアミノ酸についての通常に用いられる1文字3文字略語がここでは用いられる(Lehniger,A.L.,1975,Biochemistry,第2編、pp.71−92、Worth Publishers,New York)。標準的な1文字暗号および標準的な3文字暗号の間の対応性は当業者によく知られており、ここに再度掲げる:A=Ala;C=Cys;D=Asp;E=Glu;F=Phe;G=Gly;H=His;I=Ile;K=Lys;L=Leu;M=Met;N=Asn;P=Pro;Q=Gln;R=Arg;S=Ser;T=Thr;V=Val;W=Trp;Y=Tyr。該用語は、アミノ酸アナログ、ノルロイシンのような通常はタンパク質に取り込まれない天然に生じるアミノ酸、およびアミノ酸に特徴的は当該分野で知られた特性を有する化学的に合成された化合物のような、D−アミノ酸ならびに化学的に修飾されたアミノ酸を含む。例えば、天然PheまたはProと、ペプチド化合物の同一立体配座制限を可能とするフェニルアラニンまたはプロリンのアナログまたはミメティックは、アミノ酸の定義内に含まれる。そのようなアナログおよびミメティックは、本明細書中においては、アミノ酸の「機能的同等体」をいう。アミノ酸の他の例は、ここに引用して援用する、Robcrts and Vellaccio,1983,In:The Peptides:Analysis,Synthesis,Biology、Gross and Meiehofer、eds.,Vol.5p.341、Academic−Press、Inc.,N.Y.によってリストされている。
【0044】
例えば、標準的な固相合成技術によって合成されたSABMおよびTAは、遺伝子によってコードされたアミノ酸に制限されない。遺伝暗号によってコードされない通常に遭遇するアミノ酸は、例えば、GluおよびAspの代わりの2−アミノアジピン酸(Aad);GluおよびAspの代わりの2−アミノピメリン酸(Apm);Met、Leu、および他の脂肪族アミノ酸の代わりの2−アミノ酪酸(Abu);Met、Leuおよび他の脂肪族アミノ酸の代わりの2−アミノヘプタン酸(Ahe);Glyの代わりの2−アミノイソ酪酸(Aib);Val、およびLeuおよびIleの代わりのシクロヘキシルアラニン(Cha);ArgおよびLysの代わりのホモアルギニン(Har);Lys、ArgおよびHisの代わりの2,3−ジアミノプロピオン酸(Dpr);Gly、Pro、およびAllaの代わりのN−エチルグリシン(EtGly);Gly、ProおよびAlaの代わりのN−エチルグリシン(EtGly);Asn、およびGlnの代わりのN−エチルアスパラギン(EtAsn);Lysの代わりのヒドロキシルリシン(Hyl);Lysの代わりのアロヒドロキシルリシン(AHyl);Pro、Ser、およびThrの代わりの3−(および4)−ヒロドキシプロリン(3Hyp、4Hyp);Ile、Leu、およびValの代わりのアローイソロイシン(AIle);Alaの代わりのp−アミジノフェニルアラニン;Gly、Pro、およびAlaの代わりのN−メチルグリシン(MeGly、サルコシン);Ileの代わりのN−メチルイソロイシン(MeIle);Metおよび他の脂肪族アミノ酸の代わりのノルバリン(Nva);Metおよび他の脂肪族アミノ酸の代わりのノルロイシン(Nle);Lys、ArgおよびHisの代わりのオルニチン(Orn);Thr、AsnおよびGlnの代わりのシトルリン(Cit)およびメチオニンスルフォキシド(MSO);Pheの代わりのN−メチルフェニルアラニン(MePhe)、トリメチルフェニルアラニン、ハロ(F、Cl、Br、およびI)フェニルアラニン、トリフルオロフェニルアラニンのような国際公開番号WO 90/01940に記載されたものを含む。
【0045】
本発明の関係内にあるSABMおよびTAは「作成する」ことができ、すなわち、非天然または天然に生じないTAであり得る。「非天然」または「天然に生じない」とは、特定のSABMのアミノ酸配列が天然で見出されないことを意味する。すなわち、非天然または天然に生じないTAまたはSABMのアミノ酸配列は、天然に生じるタンパク質またはポリペプチドのアミノ酸配列に対応する必要はない。この変形のTAまたはSABMは、当業者によく知られたものを含めた種々の技術を用いて製造し、または選択することができる。例えば、拘束された、または拘束されていないペプチドライブラリーは、例えば、当該分野で標準的な技術を利用してランダムに生じさせ、ディスプレイさせることができる。Lowmanら,1998、Biochemistry 37:8870−8878。
【0046】
SABMおよびTA、および細胞傷害性因子は、本発明の関係で用いる場合、相互に「コンジュゲート」することができる。用語「コンジュゲートされた」は、当該分野で知られた共有結合または付着または連結の全ての方法を含むようにその最も広い意味で用いられる。例えば、典型的な実施形態において、SABMはタンパク質であって、TAはSABMに対してC末端側またはN末端側のアミノ酸延長である。加えて、短いアミノ酸リンカー配列は、タンパク質治療剤およびSABMの間に存在することができる。このシナリオにおいて、SABM、任意のリンカーおよびTAは、後に記載する短いポリペプチドをコードする任意のリンカー配列に(DNA配列が連続的であって、読枠内にある意味で)操作可能に連結されたSABMをコードする配列、およびTAをコードする配列を含む核酸によってコードされるであろう。この典型的なシナリオにおいて、SABMは、所望により、リンカー配列を介して、TAに「コンジュゲート」していると考えられる。関連する実施形態において、SABMアミノ酸配列はTAアミノ酸配列のセクションを中断し、または置き換えることができ、但し、もちろん、SABMアミノ酸配列の挿入はタンパク質治療剤の機能に干渉しないものとする。さらなる典型的な実施形態において、SABMは、化学的なコンジュゲーションによってTAに、または所望によりリンカー配列を介して他の治療剤に連結される。典型的には、本発明によると、SABMは、標的活性を認識するTAの能力に干渉しないTAの中央のどこかの箇所にあるアミノ酸の側鎖を介してTAに連結される。ここで、再度、SABMはTAに「コンジュゲート」していると考えられる。
【0047】
用語「抗体」は最も広い意味で用いられ、それらが所望の生物学的活性を呈する限りは、(全長モノクローナル抗体を含めた)モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多特異的抗体(例えば、二特異的抗体)、および抗体断片を具体的にはカバーする。
【0048】
本発明の抗体の「機能的断片」は、一般には、無傷抗体の抗原結合もしくは可変領域、またはFcR結合能力を保有する抗体のFc領域を含めた、無傷抗体の部分を含む。抗体断片の例は、直鎖状抗体;単鎖抗体分子;および抗体断片から形成された多特異的抗体を含む。
【0049】
用語「モノクローナル抗体」とは、本明細書中で用いられる場合、実質的に均一な抗体の集団から得られた抗体をいい、すなわち、該集団を含む個々の抗体は、少量で存在できる可能な天然に生じる突然変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、各々は、1または2の抗原性部位、典型的には1つの部位に対して向けられる。さらに、異なる決定基(エピトープ)に対していくつかの異なる抗体が向けられるように、抗原に対する動物に由来する慣用的な(ポリクローナル)抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は抗原上の単一の決定基に対して向けられる。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体は、それらが他の免疫グロブリンによって汚染されないハイブリドーマ培養によって合成される点で有利である。修飾語「モノクローナル」は、抗体の実質的に均一な集団から得られる抗体の特徴を示し、いずれかの特定の方法による抗体の生産を必要とすると解釈されるべきできない。例えば、本発明に従って用いるべきモノクローナル抗体は、Kohlerら,Nature,256:495 (1975)によって最初に記載されたハイブリドーマ方法によって作成することができるか、あるいは組換えDNA方法によって作成することができる(例えば、米国特許第4,816,567号参照)。また、「モノクローナル抗体」は、例えば、Clacksonら,Nature,352:624−628(1991)およびMarksら,J.Mol.Biol.,222:581−597(1991)に記載された技術を用いてファージ抗体ライブラリーから単離することができる。
【0050】
モノクローナル抗体は、本明細書中においては、具体的には、重鎖および/または軽鎖の一部が、特定の種に由来する、または特定の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一である、またはそれに対して相同であり、他方、鎖の残りはもう一つの種に由来する、またはもう1つの抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一であり、またはそれに対して相同である「キメラ」抗体(免疫グロブリン)、ならびにそれらが所望の生物学的活性を呈する限りはそのような抗体の断片を含む(米国特許第4,816,567;Morrisonら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851−6855(1984))。キメラ抗体を作成する方法は当該分野で公知である。
【0051】
非ヒト(例えば、ネズミ)抗体の「ヒト化」形態は、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、あるいは非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含有する(Fv、Fab、Fab’、F(ab’)、または抗体の他の抗原−結合サブ配列のような)その断片である。ほとんどの場合、ヒト化抗体は、受容者の相補性−決定領域(CDR)が、所望の特異性、親和性、および能力を有するマウス、ラットまたはウサギのような非ヒト種(ドナー抗体)からの残基によって置き換えられたヒト免疫グロブリン(受容者抗体)である。ある場合には、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置き換えられている。さらに、ヒト化抗体は、受容体抗体において、または輸入されるCDRまたはフレームワーク配列いずれにおいても見出されない残基を含むことができる。これらの修飾を行って、さらに抗体の性能を磨き、最大化する。一般には、ヒト化抗体は、超可変ループの全てまたは実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンのそれに対応し、FR領域の全てまたは実質的に全てがヒト免疫グロブリン配列のそれであるが、FR領域は、結合親和性を改良する1以上のアミノ酸置換を含むことができる。少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含む。FRにおけるこれらのアミノ酸置換の数は、典型的には、H鎖においては6以下であり、L鎖のおいては3以下である。ヒト化抗体は、最適には、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも部分、典型的には、ヒト免疫グロブリンのそれを含むであろう。さらなる詳細については、Jonesら,Nature,321:522−525(1986);Reichmannら,Nature,332:323−329(1988);Presta,Curr.Op.Struct.Biol.,2:593−596(1992)参照。ヒト化抗体は、PRIMATIZED(登録商標)抗体を含み、そこでは、抗体の抗原−結合領域は、例えば、注目する抗原でマカック属サルを免疫化することによって生産される抗体に由来する。ヒト化抗体を作成する方法は当該分野で公知である。
【0052】
ヒト抗体は、ファージ−ディスプレーライブラリーを含めた、当該分野で公知の種々の技術を用いて生産することもできる。Hoogenboom and Winter,J.Mol.Biol.,227:381(1991);Marksら,J.Mol.Biol.,222:581(1991)。ColeらおよびBoernerらの技術もまた、ヒトモノクローナル抗体の調製のために利用できる。Coleら,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,p.77(1985);Boernerら,J.Immunol.,147(1):86−95(1991)。
【0053】
本明細書中で用いられる場合、用語「イムノアドヘシン」は、異種タンパク質(「アドヘシン」)の結合特異性を、免疫グロブリン定常ドメインのエフェクター機能と組み合わせる抗体様分子を示す。構造的には、イムノアドヘシンは、抗体の抗原認識および結合部位以外である(すなわち、「異種」である)所望の結合特異性を持つアミノ酸配列、および免疫グロブリン定常ドメイン配列の融合を含む。免疫イムノアドヘシンのアドヘシン部分は、典型的には、受容体またはリガンドの少なくとも結合部位を含む連続アミノ酸配列である。イムノアドヘシンにおける免疫グロブリン定常ドメインは、IgG−1、IgG−2、IgG−3、またはIgG−4サブタイプ、IgA(IgA−1およびIgA−2を含む)、IgE、IgDまたはIgMのようないずれかの免疫グロブリンから得ることができる。
【0054】
「融合タンパク質」および「融合ポリペプチド」とは、一緒に共有結合した少なくとも2つの部分を有するポリペプチドをいい、ここで、該部分の各々は異なる特性を有するポリペプチドである。該特性はインビトロまたはインビボのような生物学的特性であり得る。該特性は標的分子への結合、反応の触媒などのような単純な化学的または物理的特性でもあり得る。該部分は、単一の結合したペプチドによって直接的に、または1以上のアミノ酸残基を含有するペプチドリンカーを介して連結することができる。一般には、該部分およびリンカーは相互に読枠内にあるであろう。
【0055】
「単離された」ポリペプチドまたは抗体は、その天然環境の成分から同定され、分離されおよび/または回収されたものである。その天然環境の汚染成分はポリペプチドまたは抗体についての診断または治療用途に干渉するであろう物質であり、酵素、ホルモン、および他のタンパク質性または非タンパク質性溶質を含む事ができる。好ましい実施形態において、抗体は(1)Lowry方法によって測定して、抗体の95重量%よりも大、最も好ましくは、99重量%よりも大まで、(2)スピンニングカップセケネーターの使用によってN末端または内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに十分な程度まで、または(3)クーマシーブルー、または好ましくは銀染色を用い、還元または非還元条件下でSDS−PAGEによって均質となるまで精製されるであろう。単離された抗体は、組換え細胞内にイン・サイチュで抗体を含む。というのは、抗体の天然環境の少なくとも1つの成分は存在しないからである。しかしながら、通常、単離された抗体は少なくとも1つの精製工程によって調製されるであろう。
【0056】
ヒト化抗ErbB2(HER2)抗体は、引用してここに明示的に援用する米国特許第5,821,337号の表3に記載されたhuMAb4D5−1、huMAb4D5−2、huMAb4D5−3、huMAb4D5−4、huMAb4D5−5、huMAb4D5−6、huMAb4D5−7およびhuMAb4D5−8(HERCEPTIN7);ヒト化520C9(WO 93/21319)および同時係属出願第09/811115号に記載されたヒト化2C4抗体、およびここに引用して援用するWO 03/087131および米国特許公開番号2003/0228663に開示された抗HER2改変体の可変領域を含む抗体を含む。開示を通じて、用語「huMAb4D5−8」および「hu4D5−8」は相互交換可能に用いられる。
【0057】
用語「細胞傷害性因子」は、本明細書中で用いられる場合、細胞の機能を阻害し、妨げ、および/または細胞の破壊を引き起こす物質をいう。細胞傷害性因子は、細胞表面に必ずしも結合することなく、内部化でき、および/または細胞の外側から細胞増殖を阻害することができるべきである。1つの好ましい実施形態によると、該剤は小さな分子である。もう1つの実施形態によると、細胞傷害性因子の活性な部分は1100kD以下である。該用語は、放射性同位体(例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、Bi213、P32およびLuの放射性同位体)、化学療法剤、例えば、メトトレキセート、アドリアマイシン、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド)、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、ダウノルビシン、または他のインターカレーティング剤、ヌクレオ溶解性酵素のような酵素およびその断片、抗体、および低分子トキシンまたは細菌、真菌、または植物または動物起源の酵素的に活性なトキシンのようなトキシン(その断片および/またはその改変体を含む(例えば、MMAE))、および後に開示する種々の抗腫瘍または抗癌剤または増殖阻害剤を含むことを意図する。他の細胞傷害性因子は後に記載する。一つの好ましい実施形態によると、細胞傷害性因子は放射性同位体ではない。
【0058】
「化学療法剤」は、癌の処置で有用な化学化合物である。化学療法剤の例はチオテパCYTOXAN(登録商標)、シクロホスファミドのようなアルキル化剤;ブスルファン、イムプロスルファンおよびピポスルファンのようなアルキルスルホネート;ベンゾドーパ、カルボクオン、メツレドーパ、およびウレドーパのようなアジリジン;代替物、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミドおよびトリメチロールメラミンを含めたエチレンイミンおよびメチルアメルアミン;アセトゲニン(特に、ブラタシンおよびブラタシノン);(合成アナログトポテカンを含めた)カンプトテシン;ブセリオスタチン;カリスタチン;(そのアドゼレシン、カルデレシンおよびビゼレシン合成アナログを含めた)CC−1065;クリプトフィシン(特に、クリプトフィシン1およびクリプトフィシン8)ドラスタチン;(合成アナログ、KW−2189およびCB1−TM1を含めた)ドゥオカルマイシン;エレウテロギン;パンクラチスタチン;サルコジックチイン;スポンギスタチン;クロラムブシル、クロルナファジン、コロホスファミド、エストラムスチン、シフオスファミド、メクロレタミン、メクロレタミン塩酸オキサイド、メルファラン、ノベムビチン、フェネステリン、プレドミムスチン、トロフォスファミド、ウラシルマスタードのようなナイトロジェンマスタード;カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ドムスチン、ニムスチン、およびラミムヌスチンのようなニトロ尿素;エネジーン抗生物質(例えば、カリケアミシン、特にカリケアミシンガンマ1IおよびカリケアミシンオメガI1)(例えば、Agnew,Chem Intl.Ed.Engl.,33:183−186(1994))のような抗生物質;ジネミシンAを含めたジネミシン;クロドロネートのようなビスホスホネート;エスペラミシン;並びにネオカルジノスタチンクロモフオーレおよび関連クロモタンパク質エネジーン抗生物質クロモフオーレ)、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オオテラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、ADRIMYCIN(登録商標)、ドキソルビシン(モルホリノ−ドキソルビシン、シアノモルホリノ−ドキソルビシン、2−ピロリノ−ドキソルビシンおよびデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシンCのようなマイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピウロマイシン、ケラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、チュウバーシジン、ウベニメックス、ジノスタチン、ゾルビシン;メトトレキセートおよび5−フルオロウラシル(5−FU)のような抗代謝産物;デノプテリン、メトトレキセート、プテロプテリン、トリメトレキセートのような葉酸アナログ;フルダダビン、6−メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンのようなピリンアナログ;アンシタビン、アザシチジン、6−アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルルビジン、クノシタビン、フロクオリジンのようなビリミジンアナログ;カルスペロン、ドロモスタノロンプロピオネート、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンのようなアンドロゲン;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンのような抗アドレナール;フロリン酸のような葉酸補充物;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキセート;レフオファミン;デメコルシン;ジアジクオン;エルフォルニチン;エリプチニイルアセテート;アネポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダイニン;メイタンシンおよびアンサミトシンのようなメイテンシノイド;マイトグアゾン;マイトキサントロン;モピダンモール;ニトラクリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリム酸;2−エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)、多糖複合体(JHS Natural Products,Eugene,OR);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2’,2’’−トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特に、T−2トキシン、ベラクリンA、ロリジンAおよびアンギジン);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;マイトブロニトール;マイトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara−C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えば、TAXOL(登録商標)パクリタキセル(Bristol−Myers Squibb Oncology,Princeton,N.J.)、ABRAXANETMクロモフオール−フリー、パクリタキセルのアルブミン−作成ナノ粒子処方(American Pharmaceutical Partners Schaumberg,Illinois)、およびTAXOTERE(登録商標)ドキセタキセル(Rhone−Poulenc Rorer,Antony,France);クロランブシル;GEMZAR(登録商標)ゲムシタビン;6−チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキセート;シスプラチンおよびカルボプラチンのような白金アナログ;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP−16);イフオスフアミド;マイトキサントロン;ビンクリスチン;NAVELBINE(登録商標)ビノレルビン;ノバントロン;テニポシド;エダトレキセート;ダウノマイシン;アミノプテリン;キセローダ;イバンドロンネート;CPT−11;トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸のようなレチノイド;カペシタピン;オキサリプラチン処理養生法を含めたオキサリプラチン(FLOFOX);PKC−アルファ、Raf、H−RasおよびEGFR(例えば、エルドチミブ(TarcevaTM))の阻害剤、および前記のいずれかの医薬上許容される塩、酸または誘導体を含む。
【0059】
「増殖阻害剤」は、本明細書中で用いる場合、インビトロおよび/またはインビボで細胞の増殖を阻害する化合物または組成物をいう。かくして、増殖阻害剤は、S相において細胞のパーセンテージを有意に低下させるものであり得る。増殖阻害剤の例は、GI阻止およびM−相阻止を誘導する剤のような、(S相以外の箇所で)細胞周期の進行をブロックする剤を含む。古典的なM−相ブロッカーはビンカ(ビンクリスチンおよびビンブラスチン)、TAXOL(登録商標)パクリタキセルおよびドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシド、およびブレオマイシンのようなトポII阻害剤を含む。GIを阻止するそれらの剤はS−相阻止に溢れる。例えば、タノキシフェン、プレドニゾン、ダカルバジン、メクロレタミン、シスプラチン、メトトレキセート、5−フルオロウラシル、およびara−CのようなDNAアルキル化剤。さらなる情報は、Murakainiら(W B Saunders:Philadelphia,1995)、特に13ページによるThe Molecular Basis of Cancer,Mendelsohn and Israel.eds.,Chapter 1,entitled “Cell cycle regulation,oncogenes,and antieioplastic drugs”に見出すことができる。
【0060】
「増殖阻害」剤の例は、上皮増殖因子阻害剤(EGFR)アンタゴニスト(例えば、チロシンキナーゼ阻害剤)、HERI/EGFR阻害剤(例えば、エルロチニブ(TarccvaTM))、血小板由来増殖因子阻害剤(例えば、GlecvecTM(イマチニブメシレート))、COX−2阻害剤(例えば、セレコキシル)、および他の生物活性および有機化学剤などを含む。
【0061】
用語「治療上有効量」とは、対象において病気または障害を「緩和」または「処置]するのに有効なコンジュゲート分子の量をいう。コンジュゲート分子が成長を妨げ、および/または存在する癌細胞を殺傷する程度に、それは静細胞的および/または細胞傷害性であり得る。
【0062】
「処置」とは、病気または障害の軽減または緩和をいう。処置を必要とする者は、障害をすでに持つ者、ならびに障害を予防すべきものを含む。もし治療量の本発明の方法によるコンジュゲートを受けた後に、対象が特定の病気の1以上の症状および徴候の観察可能なおよび/または測定可能な低下または不存在を示すならば、対象は癌または自己免疫疾患について首尾よく「処置」されている。例えば、癌では、癌細胞の数の低下または癌細胞の不存在;腫瘍サイズの低下;腫瘍転移の阻害(すなわち、幾分示し、好ましくは停止させることを);幾分の、腫瘍成長の阻害;特定の癌に関連する徴候の1以上の、幾分の、緩解の長さの増加、および/または救済の長さの増加;低下した罹患率および死亡率および生活論点の質の改善。病気の症状または徴候の低下もまた患者によって感じることができる。処置は、消失と定義される完全な応答、または部分的応答を達成することかでき、こに、腫瘍のサイズは、好ましくは50%を超えて、より好ましくは75%だけ減少する。もし患者が安定な病気を経験すれば、患者はやはり処置され例えば、考えられる。好ましい実施形態において、癌患者は1年後に、好ましくは15ヶ月後に癌において依然として進行がない。病気における成功した処置および改善を評価するためのこれらのパラメータは、当該分野において適切な技量の医師が精通したルーチン的手法によって容易に測定できる。好ましい実施形態において、SABMを欠く同一コンジュゲート分子を受けて処置できる対象よりも小さな副作用を経験しつつ、対象は病気からの改善を示す。
【0063】
用語「癌」および「癌性」とは、調節されていない細胞増殖によって典型的には特徴付けられる哺乳動物における生理学的疾患をいい、またはそれを記載する。癌の例は、限定されるものではないが、癌腫、リンパ腫、細胞腫、肉腫、および白血病またはリンパ系悪性疾患を含む。そのような癌のより特別な例は扁平細胞癌(例えば、上皮扁平細胞癌)小細胞肺癌、非小細胞を含めた肺癌、肺の腺癌および肺の扁平細胞癌腫、腹膜の癌、肝臓細胞癌、胃腸癌を含めた胃癌、膵臓癌、神経膠芽細胞腫、頚癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、生殖系管の癌、肝細胞癌、乳癌、結腸癌、直腸癌、結直腸癌、内膜または子宮癌腫、唾液腺癌腫、腎臓癌、前立腺癌、外陰癌、甲状腺癌、肝臓癌種、肛門癌腫、陰茎癌、メラノーマ、多発性骨髄腫およびB細胞リンパ腫、脳、ならびに頭部および首癌、および関連する転移を含む。
【0064】
用語「細胞増殖障害」および「増殖性障害」とは、ある程度の異常な細胞増殖に関連する障害をいう。一つの実施形態において、細胞増殖性障害は癌である。
【0065】
「腫瘍」とは、本明細書中で用いられる場合、悪性または良性であるかを問わず、全ての新形成細胞成長および増殖、および全てのプレー癌性および癌性細胞および組織をいう。
【0066】
B細胞調節自己免疫疾患は関節炎(慢性関節リウマチ、若年性関節リウマチ、変形性関節症、乾癬性関節炎)、乾癬、アトピー性皮膚炎を含めた皮膚炎;慢性自己免疫蕁麻疹、多発性筋炎/皮膚筋炎、毒性表皮壊死症、全身性強皮症および硬化症、炎症性腸疾患(IBD)に関連する応答(クローン病、潰瘍性結腸炎)、呼吸逼迫症候群、成人呼吸促進症候群(ARDS)、髄膜炎、アレルギー性鼻炎、脳炎、ブドウ膜炎、結腸炎、糸球体腎炎、アレルギー疾患、湿疹、喘息、T細胞の浸潤および慢性炎症性応答に関連する疾患、アテローム性動脈硬化症、自己免疫心筋炎、白血球接着不全、全身性エリテマトーデス(SLE)、狼瘡(腎炎、非腎臓、ジスコイド、脱毛症を含む)、若年性開始糖尿病、多発性硬化症、アレルギー性脳脊髄炎、サイトカインおよびT−リンパ球によって媒介される急性および遅延過敏症に関連する免疫応答、結核、サルコイドーシス、ウエグナー肉芽腫症を含めた肉芽腫症、顆粒球減少症、脈管炎(ANCAを含む)、再生不良性貧血、クーム陽性貧血、ダイヤモンドブラックファン貧血、免疫溶血性貧血(AIHA)を含めた免疫溶血性貧血、悪性貧血、純粋赤血球細胞形成不全(PRCA)、第VIII因子不全、ヘモフィリアA、自己免疫好中球減少症、汎血球減少症、白血球減少症、白血球漏出に関連する病気、CNS炎症障害、多発性器官負傷症候群、重症筋無力症、抗原−抗体複合体媒介病、抗糸球体基底膜病、抗リン脂質抗体症候群、アレルギー性神経炎、ベーチェット病、キャッスルマン症候群、グッドパスツール症候群、ランバート−イートン筋無力症症候群、レイノルド症候群、シェーングレン症候群、スティーブン−ジョンソン症候群、固体器官トランスプラント拒絶(高パネル反応性抗体力価、組織におけるIgA沈積に対する予備処理を含む)、移植片−対−宿主病(GVHD)、水疱性類天疱瘡、天疱瘡(全て尋常性、葉状を含む)、自己免疫多発性内分泌障害、ライター病、スティフマン症候群、巨細胞動脈炎、免疫複合体腎炎、IgA腎臓障害、IgM多発性腎臓障害またはIgM媒介神経障害、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、自己免疫血小板減少症、自己免疫精巣炎および卵巣炎を含めた精巣および卵巣の自己免疫疾患、原発性甲状腺機能低下症;自己免疫甲状腺炎を含めた自己免疫内分泌病、慢性甲状腺炎(橋本甲状線炎)、亜急性甲状腺炎、特発性甲状腺機能低下症、アジソン病、グラーベ病、自己免疫多腺症候群(または多腺内分泌障害症候群)、インスリン−依存性真性糖尿病(IDDM)ともいわれるI型糖尿病、およびシェーハン症候群;自己免疫肝炎、リンパ性間隙性肺炎(HIV)、閉塞性細気管支炎(非トランスプラント) vs NSIP、ギアン−バレー症候群、大血管の脈管炎(リウマチ性多筋痛および巨細胞(高安)動脈炎)、中血管脈管炎(川崎病および結節性多動脈炎を含む)、強直性脊椎炎、ベルガー病(IgA腎臓障害)、迅速進行糸球体腎炎、原発性胆汁性肝硬変、腹腔スプルー(グルテン腸障害)、クリオグロブリン血証、ALS,冠動脈病を含む。
【0067】
B細胞新生物はリンパ球支配ホジキン病(LPHD)を含めたCD20−陽性ホジキン病;非ホジキンリンパ腫(NHL);小胞中心細胞(FCC)リンパ腫;急性リンパ球白血病(ALL);慢性リンパ球白血病(CLL);毛様細胞白血病を含む。該非ホジキンリンパ腫は低グレード/小胞非ホジキンリンパ腫(NHL)、小リンパ球(SL)NHL、中グレード/小胞NHL、中グレード散漫NHL、高グレード免疫芽球NHL、高グレードリンパ芽球NHL、高グレード小非切断細胞NHL、バルキー病NHL、形質細胞性リンパ球リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、AIDS−関連リンパ腫およびワルデンルトロムマクログロブリン血症を含む。これらの癌の再発の処置もまた考えられる。LPHDは、放射線または化学療法治療にもかかわらず頻繁に再発する傾向があるホジキン病のタイプであり、CD20−陽性悪性細胞によって特徴付けられる。CLLは4つの主なタイプの白血病の1つである。リンパ球と呼ばれる成熟B細胞の癌であるCLLは、血液、骨髄およびリンパ組織中への細胞の進行性蓄積によって発現される。無痛リンパ腫はゆっくりと成長する治癒できない病気であり、ここで、平均的な患者は緩解および再発の多数時期の後6年および10年の間生存する。
【0068】
処置の目的では、「哺乳動物」とは、ヒト、イヌ、ウマ、ネコ、ウシなどのような、家畜動物および農場動物、および動物園、スポーツまたはペット動物を含めた哺乳動物として分類されるいずれの動物もいう。好ましくは、該哺乳動物はヒトである。本発明に従って処置されるべき対象は哺乳動物である。
【0069】
「障害」は、本発明のコンジュゲート分子を含む組成物での処置から利益を受けるいずれかの疾患である。これは、問題とする障害について哺乳動物で素因となる病理学的状態を含めた慢性および急性障害または病気を含む。
【0070】
Goodman and Gillman’s The Pharmaceutical Basis of Therapeutics,pp.21−25 Alfred Goodman Gilman,Louis S.Goodman,and Alfred Gilman,eds.,6th ed.1980に記載されているように、「排泄半減期」をその通常の意味で用いる。簡単に述べると、該用語は、薬物排泄のタイムコースの定量的尺度を含むことを意味する。ほとんどの薬物の排泄は指数関数的である(すなわち、一次キネティックスに従う)。というのは、薬物の濃度は、通常、排泄プロセスの飽和に必要なものに近づかないからである。指数関数的プロセスの速度は、単位時間当たりの分率変化を表すその速度定数kによって、またはプロセスの50%完了に必要な時間であるその半減期t1/2によって表すことができる。これらの2つの定数の単位は、各々、時間−1および時間である。一次速度定数および反応の半減期は単純に関連し(kxt 1/2=0.693)、それに従って相互交換可能である。一次排泄キメティックスは、薬物の一定分率が単位時間当たりに失われるので、薬物濃度 vs 時間のlogのプロットは、全ての時点において、最初の分布相に続いて(すなわち、薬物の吸収および分布が完了した後)直鎖状である。薬物排泄のための半減期は、そのようなグラフから正確に決定することができる。本発明の1つの好ましい実施形態によると、本発明のコンジュゲート分子は、SABMを欠くコンジュゲート分子よりも長い半減期および低い毒性を有する。
【0071】
「トランスフェクション」とは、いずれかのコーディング配列が事実発現されるか否かを問わず、宿主細胞による発現ベクターの摂取をいう。トランスフェクションの多数の方法、例えば、CaPO沈殿およびエレクトロポレーションが当業者に知られている。成功したトランスフェクションは、このベクターの操作のいずれかの表示が宿主細胞内で起こる場合に一般的には認識される。
【0072】
「形質転換」は、DNAが染色体外エレメントとして、または染色体インテグラントによってのいずれかの複製可能なように該DNAを生物に導入することを意味する。用いる宿主細胞に応じて、形質転換は、そのような細胞に対して適切な標準的技術を用いてなされる。Sambrookら,1989,Molecular Cloning (第二編)、Colod Spring Harbor Laboratory,NYのセクション1.82に記載された、塩化カルシウムを使用するカルシウム処理が、一般には、原核生物、または実質的細胞壁バリアーを含有する他の細胞で用いられる。Shawら,1983 Gene,23:315および1989年6月29日に公開されたWO89/05859によって記載されているように、Agrobacterium tumefaciensでの感染がある種の植物細胞の形質転換で用いられる。そのような細胞壁なくしての哺乳動物細胞では、Sambrookら,supraのセクション16.30〜16.37に記載されたリン酸カルシウム沈殿方法が好ましい。哺乳動物宿主細胞系形質転換の一般的態様は、1983年8月16日に発酵された米国特許第4,399,216号においてAxelによって記載されている。酵母への形質転換は、典型的には、Van Solingenら,1977,J.Bact.,130:946およびHsiaoら,1979,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA),76:3829の方法に従って行われる。しかしながら、核注入、エレクトロポレーションによる、またはプロトプラスト融合によるなどの、DNAを細胞に導入するための他の方法を用いることもできる。
【0073】
本明細書中で用いられる場合、用語「肺投与」とは、吸入による肺を通じての本発明の処方の投与をいう。本明細書中で用いられる場合、用語「吸入」とは、空気の肺胞への摂取をいう。特別な例において、摂取は、吸入しつつ本発明の処方の自己−投与によって、または、例えば、レスピレーターを着用した患者へのレスピレーターを介しての投与によって行うことができる。本発明の処方に関連して用いられる用語「吸入」は、「肺投与」と同義である。
【0074】
本明細書中で用いられる場合、用語「非経口」とは、腸以外による身体への本発明の化合物の導入、特に、静脈内(i.v.)、動脈内(i.a.)、腹腔内(i.p.)、筋肉内(i.m.)、心室内、および皮下(s.c.)経路をいう。
【0075】
本明細書中で用いられる場合、用語「エアロゾル」とは、空気中の懸濁液をいう。特に、エアロゾルとは、本発明の処方の粒子化、および空気中へのその懸濁をいう。本発明によると、エアロゾル処方は、エアロゾル化、すなわち、吸入または肺投与のための空気中への粒子化および懸濁に適した本発明の化合物を含む処方である。
【0076】
(II.発明を実施するための態様)
(A.SABM)
本発明の関係内でのSABMはアルブミンに結合する。血清アルブミンに結合する好ましいSABMは直鎖状および環状ペプチド、好ましくは、以下の式を含む環状ペプチド化合物を含み、あるいは以下の式のペプチドと、特定の哺乳動物種の血清アルブミンを結合させるにつき競合するペプチドである:
Xaa−Xaa−Cys−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−Cys−Xaa−Xaa
Phe−Cys−Xaa−Asp−Trp−Pro−Xaa−Xaa−Xaa−Ser−Cys[配列番号1]
Val−Cys−Tyr−Xaa−Xaa−Xaa−Ile−Cys−Phe[配列番号2]
Cys−Tyr−Xaa−Pro−Gly−Xaa−Cys[配列番号3]
およびAsp−Xaa−Cys−Leu−Pro−Xaa−Trp−Gly−Cys−Leu−Trp−[配列番号4]。
【0077】
好ましいのは、N末端におけるさらなるアミノ酸(Xaa)、およびC末端におけるさらなるアミノ酸(Xaa)を含む前記一般式のペプチド化合物であり、ここで、Xaaはアミノ酸であってxおよびzは0(ゼロ)よりも大きな、またはそれに等しい、一般には100未満の、好ましくは10未満の全数、より好ましくは0、1、2、3、4または5、より好ましくは4または5であり、ここで、XaaはIle、Phe、TyrおよびValよりなる群から選択される。
【0078】
血清アルブミンに結合するさらに好ましいSABMは、以下の一般式の関係で本明細書中に記載されたように同定され:
Trp−Cys−Asp−Xaa−Xaa−Lec−Xaa−Ala−Xaa−Asp−Leu−Cys[配列番号5]およびAsp−Leu−Val−Xaa−Leu−Gly−Leu−Glu−Cys−Trp[配列番号6]
ここで、さらなるアミノ酸はN末端に存在でき(Xaa)、さらなるアミノ酸はC末端に存在でき(Xaa)、およびここで、Xaaはアミノ酸であって、xおよびzはゼロよりも大きいかまたは等しい、一般には100未満、好ましくは10未満の全数、より好ましくは0、1、2、3、4または5、より好ましくは4または5である。
【0079】
本発明のこの態様に従って、以下の実施例、特に、哺乳動物血清アルブミンに結合するペプチドリガンドを選択するための特別な例示的ペプチドおよび適したアミノ酸を示すそこに含まれる表を参照する。好ましい態様において、いくつかの種にわたる血清アルブミンに結合するSABMを選択するための表7を参照する。
【0080】
本発明のこの態様に従う好ましい化合物は:
DLCLRDWGCLW[配列番号7]
DICLPRWGCLW[配列番号8]
MEDICLPRWGCLWGD[配列番号9]
QRLMEDICLPRWGCLWEDDE[配列番号10]
QGLIGDICLPRWGCLWGRSV[配列番号11]
QGLIGDICLPRWGCLWGRSVK[配列番号12]
EDICLPRWGCLWEDD[配列番号13]
RLMEDICLPRWGCLWEDD[配列番号14]
MEDICLPRWGCLWEDD[配列番号15]
MEDICLPRWGCLWED[配列番号16]
RLMEDICLARWGCLWEDD[配列番号17]
EVRSFCTRWPAEKSCKPLRG[配列番号18]
RAPESFVCYWETICFERSEQ[配列番号19]
EMCYFPGICWM[配列番号20]
を含む。
【0081】
好ましい実施形態において、本発明のSABMはヒト血清アルブミンに結合し、以下に示す一般式を有するSABMとインビトロアッセイにおいてヒト血清アルブミンの結合につき競合するそれらの能力によって同定することができ、ここで、さらなるアミノ酸はN末端に(Xaa)およびC末端に(Xaa)に存在でき:
DXCLPXWGCLW[配列番号4]
FCXDWPXXXSC[配列番号1]
VCYXXXICF[配列番号2]
CYXPGXCX[配列番号3]
ここで、Xaaはアミノ酸であり、xおよびzは好ましくは4または5であって、XaaはIle、Phe、TyrおよびValよりなる群から選択される。
【0082】
特別な実施形態において、本発明のSABMは前記にて本明細書中に記載された配列番号7〜20に表されたSABMのいずれかと競合し、好ましくは、ヒト血清アルブミンへの結合につき配列番号10と競合するであろう。
【0083】
前記から認識されるように、用語「競合する」および「競合する能力」は相対的用語である。かくして、該用語は、本発明のSABMを記載するのに用いる場合、本明細書中に記載された標準的な競合アッセイにおいて、50μMで存在する場合、好ましくは1μM、より好ましくは100nMで存在する場合、好ましくは、1nM以下で存在する場合、配列酢番号:10によって表されるペプチドの結合の50%阻害を生じるSABMをいう。しかしながら、約1nM未満の、好ましくは約1pMおよび1nMの間の血清アルブミンに対する親和性を有するSABMは、同等に、本発明の関係内のSABMであるようである。
【0084】
ペプチドまたは他の化合物が本明細書中に記載されたように血清アルブミンへの結合につきSABMと競合する「能力」を有するか否かを判断するためのインビトロアッセイ系では、当業者は、多数の標準的な競合アッセイのいずれかを使用することができる。競合結合アッセイは、限定された量のリガンドとの競合につきテスト試料分析物と競合する標識された標準の能力に依拠する。テスト試料中の分析物の量は、リガンドに結合するようになる標準の量に逆比例する。
【0085】
かくして、当業者は、限定されるものではないが、少数の名称を挙げれば、ラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素イムノアッセイ(EIA)、好ましくは酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、「サンドイッチ」イムノアッセイ、イムノラジオメトリックアッセイ、蛍光イムノアッセイ、および免疫電気泳動アッセイのような技術を用いる競合アッセイシステムを含む手法をしようして、アルブミンへの結合についてSABMと競合する能力を有するか否かを決定することができる。
【0086】
これらの目的では、選択されたSABMを検出可能な部位で標識し(検出可能に標識されたSABMを以後「トレーサー」と呼ぶ)、アルブミンへの結合についての候補化合物との競合アッセイで用いる。多数の検出可能な標識が入手可能であり、これは好ましくは以下のカテゴリーに分類することができる:
(a)35S、14C、125I、Hおよび131Iのような放射性同位体。SABMは、例えば、Coligenら,1991,eds.,Current Protocols in Immunology,Volums 1 and 2,Wiley−Interscience,New York,N.Y.に記載された技術を用いて放射性同位体で標識することができる。放射能はシンチレーションカウンティングを用いて測定することができる。
【0087】
(b)希土類キレート(ユーロピウムキレート)またはフルオレセインおよびその誘導体、ローダミンおよびその誘導体、ダンシル、リスサミン、フィコエリスリン、およびテキサスレッドのような蛍光標識が入手可能である。蛍光標識は、例えば、Current Protocols in Immunology,supraに開示された技術を用いてペプチド化合物にコンジュゲートすることができる。蛍光はフルオリメーターを用いて定量することができる。
【0088】
(c)種々の酵素−基質標識が入手可能であり、米国特許第4,275,149号はこれらのいくつかのレビューを提供する。該酵素は好ましくは、種々の技術を用いて測定することができる発色性基質の化学的変化を触媒する。例えば、該酵素は、分光学的に測定できる基質における色の変化を触媒することができる。別法として、該酵素は基質の蛍光またはケミルミネセンスを変化させることができる。蛍光の変化を定量する技術は先に記載した。ケミルミネセント基質は化学反応によって電子的に励起されたようになり、次いで、光を発することができ、これは(例えば、ケミルミノメーターを用いて)測定することができ、あるいはエネルギーを蛍光アクセプターに与える。酵素標識の例はルシフェラーゼ(例えば、ホタルルシフェラーゼおよび細菌ルシフェラーゼ;米国特許第4,737,456号)、ルシフェリン、2,3−ジヒドロフタラジンジオン、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ウレアーゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)のようなペルオキシダーゼ、アルカリ性ホスファターゼ、ベータ−ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチウム、サッカリドオキシダーゼ(例えば、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、およびグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ)、(ウリカーゼおよびキサンチンオキシダーゼのような)複素環オキシダーゼ、ラクトペルオキシダーゼ、ミクロペルオキシダーゼなどを含む。
【0089】
酵素−基質組合せの例は、例えば:
(i)基質としての水素ペルオキシダーゼとホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)、ここで、該水素ペルオキシダーゼは色素前駆体(例えば、ABTS、オルトフェニレンジアミン(OPD)または3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン塩酸(TMB))を酸化する;
(ii)発色性基質としてのリン酸パラ−ニトロフェニルとアルカリ性ホスファターゼ(AP);および
(iii)発色性基質(例えば、p−ニトロフェニル−β−D−ガラクトシダーゼ)または発蛍光性基質4−メチルウンベリフェリル−β−D−ガラクトシダーゼとβ−D−ガラクトシダーゼ(β−D−Gal)。
【0090】
特別なアッセイによると、種々の濃度の未標識候補化合物の存在下で、トレーサーを固定化標的と共にインキュベートする。増大する濃度の成功した候補化合物は、トレーサーの固定化標への結合と効果的に競合する。最大−結合とトレーサーの50%が置き換わる未標識候補化合物の濃度を「IC50」といい、候補化合物のIgG結合親和性を反映する。従って、1mMのIC50を持つ候補化合物は、1μMのIC50を持つ候補化合物よりも標的に対する実質的に弱い相互作用を呈する。
【0091】
いくつかのファージディスプレイELISAアッセイにおいて、突然変異した(「mut」)配列の結合親和性を、Cunninghamら,1994,EMBO J.13:2508に記載された方法を用いて対照(「con」)ペプチドと直接的に比較し、パラメータEC50によって特徴付けられる。アッセイは、EC50(con)/EC50(mut)がK(con)/K(mut)に近似する条件下で行った。
【0092】
従って、本発明は、記載されたインビトロアッセイにおけるヒト血清アルブミン結合のようなアルブミンにつき「競合する能力を有する」化合物を提供する。好ましくは、該化合物は1μM未満のヒト血清アルブミンのような標的につきIC50を有する。これらの化合物の中で好ましいのは、約100nM未満、好ましくは約10nM未満、または約1nM未満のIC50を有する化合物である。本発明のこの態様によるより好ましい実施形態において、化合物は、約100pM未満、より好ましくは約10pM未満のヒト血清アルブミンのような標的分子についてのIC50を呈する。
【0093】
本明細書中に記載したSABMと競合する候補化合物の能力の測定のための好ましいインビトロアッセイは以下の通りであり、実施例により十分に記載する。好ましい実施形態において、候補化合物はペプチドである。ヒト血清アルブミンへの結合につき標識されたSABMトレーサーと競合する候補化合物の能力は、ELISAを用いてモニターする。緩衝液中の候補化合物の希釈物を、トレーサーと共に(実施例セクションに記載した)ヒト血清アルブミンを被覆したマイクロタイタプレートに1時間で加える。マイクロタイタプレートを洗浄緩衝液で洗浄し、ヒト血清アルブミンに結合したトレーサーの量を測地する。
【0094】
(B.SABM:TA:細胞傷害性因子の組合せ)
SABMをTA:細胞傷害性因子に連結させて、各成分(すなわち、少なくとも3つの異なる成分)の少なくとも1つを含むコンジュゲート分子を形成する。各成分を、所望により、フレキシブルなリンカードメインを介して相互に連結することができる。
【0095】
結合のタイプおよびその製造方法に依存して、SABMドメインはそのN−またはC末端を介してTAのN−またはC末端に連結することができる。例えば、組換え技術を介して本発明のコンジュゲート分子を調製する場合、SABMをコードする核酸を、所望により、リンカードメインを介して、TA配列をコードする核酸に操作可能に連結する。典型的には、構築物は、SABMのC末端をTAのN末端に連結した融合タンパク質をコードする。しかしながら、特に、合成技術を使用する場合、例えば、SABMのN末端をTAのN−またはC末端に連結する融合も可能である。
【0096】
いくつかの場合、SABMドメインは、そのN−またはC末端においてTAに連結されるよりはむしろTA分子内に挿入しても良い。この立体配置を用いて、SABMドメインおよびTAの機能が維持される限りは、本発明を実施することができる。例えば、その標的に結合する免疫グロブリンの能力に干渉することなく、SABMを免疫グロブリンの非結合軽鎖CDRに挿入することができる。SABMドメイン挿入を収容することができるTA分子の領域は、経験的に(すなわち、ランダムに挿入部位を選択し、TAの機能につき得られたコンジュゲートをアッセイすることによって)、あるいは(例えば、タンパク質であるTAにつき)関連TA分子のファミリー内の配列比較によって同定して、低配列相同性の領域を突き止めることができる。低配列相同性領域は、よく保存された領域よりもSABMドメインの挿入をより許容するようである。その三次元構造が(例えば、X−線結晶学またはNMR実験から)知られたTAでは、三次元構造は、SABM挿入部位に関するガイドラインを提供することができる。例えば、高移動性(すなわち、高温または「B」因子)を持つループまたは領域は、構造の高度に秩序だった領域、またはリガンド結合または触媒に関与する領域よりもSABMドメイン挿入を収容するようである。
【0097】
(C.リンカードメイン)
SABMドメインは、所望により、リンカーを介してTAに連結される。本発明のコンジュゲート分子のリンカー成分は必ずしも参画しないが、コンジュゲート分子の機能に寄与することができる。従って、リンカードメインは、TAおよびSABMドメインの間の空間的ブリッジを供する分子のいずれかの群と定義される。
【0098】
リンカードメインは可変長さおよび造りのものとすることができるが、空間ブリッジを作り出すのに重要なのはリンカードメインの長さであって、その構造ではない。リンカードメインは、好ましくは、コンジュゲート分子のSABMを、立体および/または立体配座制限が実質的になくして、標的分子に結合させる。従って、リンカードメインの長さは、コンジュゲート分子の2つの「機能的」ドメイン、すなわち、SABMおよびTAの特徴に依存する。
【0099】
当業者であれば、原子の種々の組合せが、種々の結合の間の既知の距離に基づいて可変長の分子を供することは認識するであろう。例えば、Morrison and Boyd,1997,Organic Chemistry,3rd Ed.,Allyn and Bacon,Ine.,Boston,MA参照。リンカードメインは、可変長のペプチドであって良い。ペプチドのアミノ酸組成は、リンカーの特徴および長さを決定する。好ましい実施形態において、リンカー分子はフレキシブルな親水性ポリペプチド鎖を含む。例示的なリンカードメインは、後の実施例セクションに記載されたもののような1以上のGlyおよび/またはSer残基を含む。
【0100】
(D.組換え合成)
本発明は、SABM、あるいはSABMおよび本明細書中に記載したポリペプチドTAを含むコンジュゲート分子をコードする単離された核酸、好ましくはDNAを含む組成物を含む。本発明のペプチドをコードするDNAは、当該分野で公知の種々の方法によって調製することができる。これらの方法は、限定されるものではないが、トリエステル、ホスファイト、ホスホルアミド、およびH・ホスホネート化学合成方法のような、(その全開示をここに引用して援用する)Engelsら1989,Agnew.Chem.Int.Ed.Engl.28:716−734に記載された方法のいずれかによる化学合成を含む。1つの実施形態において、発現宿主細胞により好まれるコドンを、コーディングDNAの設計で用いる。別法として、該ペプチドをコードするDNAは、部位特異的突然変異誘発(Kunkelら,1991,Methods Enzymol.,204:125−139;Carterら1986,Nucl.Acids Res.13:4331;Zollerら1982,Nucl.Acids Res.10:6487)、カセット突然変異誘発(Wellsら1985,Gene 34:315)、制限選択突然変異誘発(Carter,1991,In:Directed Mutagenesis: A Practical Approach,M.J.McPherson,ed.,IRL Press,Oxford)等のような、組換えDNA技術を用いることによって1以上の改変体をコードするように改変することができる。
【0101】
前記した好ましい態様によると、核酸は、標的分子に結合できるSABMをコードする。標的分子は、例えば、限定されるものではないが、血清アルブミン、免疫グロブリン、アトリポタンパク質またはトランスフェリンのような血漿タンパク質または赤血球またはリンパ球の表面に見出されるタンパク質を含めた、種々の血清因子のような細胞外分子を含み、但し、勿論、細胞表面タンパク質へのSABMの結合は、細胞の正常な機能に実質的に干渉しないものとする。本発明で用いるのに好ましいものは、所望の親和性でもって、例えば、高親和性でもって、またはSABMに融合した生物活性分子の有用な組織摂取および核酸を容易とする親和性でもって、血清アルブミンに結合するSABMである。
【0102】
本発明のもう1つの好ましい態様によると、核酸は、SABM配列およびTAを含むコンジュゲート分子をコードする。本発明のこの態様において、TAは、処置または診断剤として有用ないずれかのポリペプチド化合物、例えば、酵素、ホルモン、サイトカイン、抗体、または抗体断片を含むことができる。本発明のこの態様に従う核酸分子はコンジュゲート分子をコードし、SABM配列をコードする核酸分子は、生物学的に活性な剤をコードする核酸に(DNA配列が連続的であって、読枠内にある意味で)操作可能に連結している。所望により、これらのDNA配列は、リンカードメインアミノ酸配列をコードする核酸配列を介して連結することができる。
【0103】
この態様によると、本発明は、さらに、本発明のペプチドをコードするDNA分子に操作可能に連結した発現制御配列、DNA分子を含むプラスミドのような発現ベクターを含み、ここで、該制御配列は、該ベクターで形質転換された宿主細胞、および該ベクターで形質転換された宿主細胞によって認識される。一般に、プラスミドベクターは、宿主細胞に適合する腫に由来する複製および制御配列を含有する。該ベクターは、通常、複製部位、並びに形質転換された細胞において表現型選択を供することができるタンパク質をコードする配列を担う。
【0104】
原核生物宿主での発現のためには、適切なベクターはpBR322(ATCC番号37,017)、phGH107(ATCC番号40,011)、pBO475、pS0132、pRIT5、pRIT20もしくはpRIT30シリーズにおけるいずれかのベクター(Nilsson and Abrahmsen 1990,Meth.Enzymol.185:144−161)、pRIT2T、pKK233−2、pDR540、およびpPL−ラムダを含む。本発明の発現ベクターを含有する原核生物宿主細胞はE.coli K12株294(ATCC番号31,446)、E.coli株JM101(Messingら1981,Nucl.Acid Res.9:309)、E.coli株B.E.coli株 1776(ATCC番号31537)、E.coli c600、E.coli W3110(F−、ガンマ−、プロトトロフィー、ATCC番号27,325)、E.coli株27C7(W3110、tonA、phoA EI5、(argF−lac)169、ptr3、degP41、ompT、kan)(米国特許第5,288,931号、ATCC番号55,244)、Bacillus subtilis、Salmonella typhimurium、Serratia marcesans、およびPseudomonas種を含む。
【0105】
原核生物に加えて、酵母のような真核生物、または多細胞生物に由来する細胞を宿主細胞として用いることができる。通常のベーカーズ酵母またはSaccharomyces cerevisiaeのような酵母宿主細胞での発現では、適切なベクターは2−ミクロンプラスミドに基づくエピソームにより複製するベクター、組込みベクター、および酵母人工染色体(YAC)ベクターを含む。Sf9細胞のような昆虫宿主細胞における発現では、適切なベクターはバキュロウイルスベクターを含む。植物宿主細胞、特にタバコのような双子葉植物宿主での発現では、適切な発現ベクターはAgrobacterium tumefaciensのTiプラスミドに由来するベクターを含む。
【0106】
有用な哺乳動物宿主細胞の例はSV40によって形質転換されたサル腎臓CV1系(COS−7、ATCC CRL 1651);ヒト肺性腎臓系(293、または懸濁培養での増殖のためにサブクローンされた293細胞、Grahamら1977,J.Gen Virol.36:59);ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL 10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/−DHFR(CHO、Urlaub and Chasin 1980,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77:4216);マウスsertoli細胞(TM4,Mather 1980,Biol.Reprod.23:243−251);サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO−76、ATCC CRL−1587);ヒト頚癌腫細胞(HELA、ATCC CCL 2);イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL 34);バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75);ヒト肝臓細胞(Hep G2、HB8065);サル乳房腫瘍(MMT 060562、ATCC CCL51);TRI細胞(Matherら1982,Annals N.Y.Acad.Sci.383:44−68);MRC 5細胞;FS4細胞;およびヒト肝臓腫細胞系(Hep G2)を含む。哺乳動物宿主細胞の発現では、有用なベクターはSV40に由来するベクター、pRK5およびpRK7(Suvaら1987,Science 237:893−896;EP 307,247(3/15/89)、EP 278,776(8/17/88))を含めた、pRKベクターのようなサイトメガロウイルスに由来するベクター、ワクシニアウイルスまたは他のポックスウイルスに由来するベクター、およびモロニーネズミ白血病ウイルス(MoMLV)に由来するベクターのようなレトロウイルスベクターを含む。
【0107】
所望により、注目するペプチドをコードするDNAは、分泌リーダー配列に操作可能に連結され、宿主細胞による発現産物の培養基への分泌をもたらす。分泌リーダー配列の例はSTII、ecotin、lamB、ヘルペスGD、lpp、アルカリ性ホスファターゼ、インベルターゼ、およびアルファ因子を含む。また、本明細書中で用いるのに適したのは、プロテインAの36アミノ酸リーダー配列である(Abrahmsenら1985,BMBO J.4:3901)。
【0108】
宿主細胞は、本発明の前記した発現またはクローニングベクターでトランスフェクトし、好ましくは形質転換し、プロモーターを誘導し、形質転換体を選択し、または所望の配列をコードする遺伝子を増幅するために適切には修飾された慣用的栄養培地中で培養する。
【0109】
本発明のペプチドを生産するのに用いられる原核生物宿主細胞は、一般には、Sambrookら,supraに記載されているように培養することができる。
【0110】
本発明のペプチドを生産するのに用いる哺乳動物宿主細胞は、種々の培地中で培養することができる。ハムのF10(Sigma)、最小必須培地((MEM)、Sigama)、RPMI−1640(Sigma)、およびダルベッコの修飾イーグル培地((DMEM)、Sigma)、のような商業的に入手可能な培地は、宿主細胞を培養するのに適している。加えて、当該分野で記載された培地のいずれか(例えば、ここに引用して各々の開示を援用するHam and Wallace,1979,Meth.Enz.58:44;Barnes and Sato 1980,Anal.Biochem.102:255,米国特許第4,767,704号;第4,657,866号;第4,927,762号;または第4,560,655号;WO 90/03430;WO 87/00195;米国再発行特許第30,985号;または米国特許第5,122,469号)を、宿主細胞のための培養基として用いることができる。これらの培地のいずれも必要であれば、ホルモンおよび/または(インスリン、トランスフェリン、または上皮増殖因子のような)他の増殖因子、(塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、およびホスフェートのような)塩、(HEPESのような)緩衝液、(アデノシンおよびチミジンのような)ヌクレオシド、(ゲンタマイシンTM薬物のような)抗生物質、(マイクロモラー範囲の最終濃度で通常存在させる無機化合物として提示される)痕跡量元素、およびグルコースまたは同等なエネルギー源を補足することができる。いずれの他の必要な補充物も、当業者に知られているであろう適切な濃度で含めることができる。温度、pH等のような培養条件は、発現のために選択された宿主細胞で従前に用いられていたものであり、当業者に明らかであろう。
【0111】
本開示で言及される宿主細胞は、インビトロ培養、ならびに宿主動物内にある細胞を含む。
【0112】
(E.化学合成)
本発明のSABMを生産するもう1つの方法は化学合成を含む。これは当該分野でよく知られた方法を用いることによって達成することができる(Kelley and Winkler,1990,In:Genetic Engineering Principles and Methods,Setlow,J.K.ed.,Plenum Press,N.Y.,Vol.12,pp 1−19;Stewart,et al.,1984,J.M.Young,J.D.,Solid Phase Peptide Synthesis,Pierce Chemical Co.,Rockford,IL.参照;また、米国特許第4,105,603号;第3,972,859号;第3,842,067号;および第3,862,925号参照)。
【0113】
本発明のSABMは、固相ペプチド合成を用いて便宜には調製することができる。Merrifield,1964,J.Am.Chem.Soc.85:2149;Houghten,1985,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:5132。また、固相ペプチド合成を用いて、もしTAがポリペプチドであるか、またはそれを含むならば、本発明のコンジュゲート分子組成物を調製することができる。
【0114】
固相合成は、保護されたアミノ酸を不活性な固体支持体にカップリングさせることによって、生成直後のペプチドのカルボキシ末端で起こる。不活性な固体支持体は、初期アミノ酸のC末端用のアンカーとして働くことができるいずれかのマクロ分子であり得る。典型的には、マクロ分子支持体は、Stewart and Young,supraの第2ページおよび第4ページの図−1および1−2に示された架橋ポリマー樹脂(例えば、ポリアミドまたはポリスチレン樹脂)である。1つの実施形態において、C末端アミノ酸をポリスチレン樹脂にカップリングさせて、ベンジルエステルを形成する。マクロ分子支持体は、ペプチドアンカーリンクが、ペプチド合成においてブロックされたアミノ酸のアルファ−アミノ基を保護するのに用いる条件下で安定するように選択される。もし塩基−不安定アルファ−保護基を用いるならば、ペプチドおよび固体支持体の間で酸−不安定リンクを用いるのが望ましい。例えば、酸−不安定エーテル樹脂は、Stewart and Young,supraの第16ページに記載された塩基−不安定Fmoc−アミノ酸ペプチド合成で効果的である。別法として、酸分解に異なって不安定なペプチドアンカーリンクおよびα−保護基を用いることができる。例えば、フェニルアセトアミドメチル(Pam)樹脂のようなアミノメチル樹脂は、Stewart and Young,supraの第11〜12ページに記載されたBoc−アミノ酸ペプチド合成と一緒になってよく働く。
【0115】
初期アミノ酸を不活性な固体支持体にカップリングさせた後、初期アミノ酸のアルファ−アミノ保護基を、例えば、塩化メチレン中のトリフルオロ酢酸(TFA)で除去し、例えば、トリエチルアミン(TEA)中で中和する。初期アミノ酸のアルファ−アミノ基の脱保護に続いて、合成中の次のアルファ−アミノおよび側鎖保護基を加える。残りのアルファ−アミノ酸およびもし必要であれば、側鎖保護アミノ酸を、次いで、縮合によって所望の順序で順次カップリングさせて、固体支持体に連結された中間体化合物を得る。別法として、アミノ酸をもう1つのアミノ酸にカップリングさせて、所望のペプチドの断片を形成し、続いて、ペプチド断片を成長する固相ペプチド鎖に加えることができる。
【0116】
2つのアミノ酸、またはアミノ酸およびペプチド、またはペプチドおよびペプチドの間の縮合反応は、アキサイド(axide)方法、混合酸無水物方法、DCC(N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド)またはDIC(N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド)方法、活性エステル方法、p−ニトロフェニルエステル方法、BOP(ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス[ジメチルアミノ]ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート)方法、N−ヒドロキシコハク酸イミドエステル方法等、およびWoodward試薬K方法のような通常の縮合方法に従って行うことができる。
【0117】
アミノ酸のいずれの反応性側鎖基も適切な保護基で保護するのはペプチドの化学合成において通常である。結局は、これらの保護基は、所望のポリペプチド鎖が順次組み立てられた後に除去される。また、アミノ酸またはペプチド断片のC末端カルボキシ基が、成長する固相ポリペプチド鎖の遊離N末端アミノ基と反応する間は、アミノ酸またはポリペプチド断片上のアルファ−アミノ基の保護は通常であり、続いて、アルファ−アミノ基を選択的に除去して、次のアミノ酸またはペプチド断片を固相ポリペプチド鎖に加える。従って、ペプチド合成においては、ペプチド鎖中の所望の配列に位置するアミノ酸残基の各々を含有する中間体化合物が精製され、ここで、残りの残基は依然として側鎖保護基を運ぶのは通常である。これらの保護基は実質的に同時に除去して、固相からの除去に続いて所望のポリペプチド産物を生じさせることができる。
【0118】
アルファ−およびイプシロン−アミノ側鎖はベンジルオキシカルボニル(Zと省略される)、イソニコチニルオキシカルボニル(iNOC)、o−クロロベンジルオキシカルボニル[Z(2Cl)]、p−ニトロベンジルオキシカルボニル[Z(NO)]、p−メトキシベンジルオキシカルボニル[Z(OMe)]、t−ブトキシカルボニル(Boc)、t−アミルオキシカルボニル(Aoc)、イソボルニルオキシカルボニル、アダマンチルオキシカルボニル、2−(4−ビフェニル)−2−プロピルオキシカルボニル(Bpoc)、9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)、メチルスルホニルエトキシカルボニル(Msc)、トリフルオロアセチル、フタリル、ホルミル、2−ニトロフェニルスルフェニル(NPS)、ジフェニルホスフィノチオイル(Ppt)、およびジメチルホスフィノチオイル(Mpt)基等で保護することができる。
【0119】
カルボキシ官能基についての保護基は、ベンジルエステル(OBzl)、シクロヘキシルエステル(Chx)、4−ニトロベンジルエステル(ONb)、t−ブチルエステル(Obut)、4−ピリジルメチルエステル(OPic)等によって例示される。しばしば、アミノおよびカルボキシル基以外の官能基を保有するアルギニン、システインおよびセリンのような特別なアミノ酸は適切な保護基によって保護される。例えば、アルギニンのグアニジノ基はニトロ、p−トルエンスルホニル、ベンジルオキシカルボニル、アダマンチルオキシカルボニル、p−メトキシベンゼンスルホニル、4−メトキシ−2,6−ジメチルベンゼンスルホニル(Nds)、1,3,5−トリメチルフェニルスルホニル(Mts)等で保護することができる。システインのチオール基はp−メトキシベンジル、トリチル等で保護することができる。
【0120】
前記したブロックされたアミノ酸の多くは、Novabiochem (San Diego,CA)、Bachem CA(Torrence,CA)またはPeninsula Labs(Belmont,CA)のような商業的源から得ることができる。
【0121】
Stewart and Young,supraは、ペプチドを調製するための手法に関する詳細な情報を提供する。アルファ−アミノ基の保護は第14〜18頁に記載されており、側鎖のブロックは第18〜28ページに記載されている。アミン、ヒドロキシルおよびスルフヒドリル機能についての保護基の表は第149〜151頁に供される。
【0122】
所望のアミノ酸配列が完成された後、ペプチドを固体支持体から切断し、回収し、精製することができる。ペプチドは、ペプチド−固相連結を破壊することができる試薬によって支持体から除去し、所望により、ペプチド上のブロックされた側鎖官能基を脱保護する。1つの実施形態において、ペプチドは、いずれの残りの側鎖保護基も除去する液体フッ化水素酸(HF)での酸分解によって固相から切断される。好ましくは、ペプチドにおける残基のアルキル化(例えば、メチオニン、システインおよびチロシン残基のアルキル化)を回避するために、酸分解反応混合物はチオ−ルレゾールおよびクレゾールスカベンジャーを含有する。HF切断に続き、樹脂をエーテルで洗浄し、遊離ペプチドを、酢酸溶液の順次の洗液で固相から抽出する。合わせた洗液を凍結乾燥し、ペプチドを精製する。
【0123】
(F.コンジュゲート分子の化学的コンジュゲーション)
ある実施形態において、コンジュゲート分子は、診断または治療的用途、あるいは別法として、単一核酸においてコードすることができない立体配置にて、SABMおよびポリペプチドTAの間の融合を有する有機化合物であるTAを含むことができる。後者の実施形態は、SABMのアミノ末端およびTAのアミノ末端の間の融合、またはSABMのカルボキシ−末端およびTAのカルボキシ−末端の間の融合を含む。
【0124】
化学的コンジュゲーションを使用して、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオール)プロピオネート(SPDP)、イミノチオラン(IT)、(ジメチルアジピミデートHClのような)イミドエステルの二官能性誘導体、(ジスクシンイミジルスベレートのような)活性エステル、(グルタルアルデヒドのような)アルデヒド、(ビス(p−アジドベンゾイル)ヘキサンジアミンのような)ビス−アジド化合物、(ビス−(p−ジアゾニウムベンゾイル)−エチレンジアミンのような)ビス−ジアゾニウム誘導体、(トルエン、2,6−ジイソシアネートのような)ジイソシアネート、および(1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼンのような)ビス−活性フッ素化合物のような種々の二官能性タンパク質カップリング剤を用いてコンジュゲート分子のこれらの実施形態を調製することができる。細胞傷害性因子を抗体のようなポリペプチドにコンジュゲートするのに有用な方法は知られている。
【0125】
(G.ジスルフィド連結ペプチド)
前記したように、本発明のいくつかの実施形態は環化SABMを含む。SABMは、システイン残基の間のジスルフィド結合の形成によって環化できる。そのようなペプチドは、前記した化学合成によって作成し、次いで、ジスルフィド結合の形成で用いるいずれかの便宜な方法によって環化することができる。例えば、ペプチドは、還元形態のスルフヒドリルでの固相合成から回収し、分子内システイン濃度が分子間システイン濃度を超えて、25mM〜1uM、好ましくは500uM〜1uM、より好ましくは25uM〜1uMのペプチド濃度のように、分子内ジスルフィド結合形成を最適化した希薄溶液に溶解させ、次いで、金属カチオン、フェリシアン化カリウム、ナトリウムテトラチオネート等のような触媒にて、またはそれなくして、分子内ジスルフィド結合を生じさせるのに十分な温和な酸化剤、例えば、分子状酸素に遊離スルフヒドリル基を暴露することによって酸化することができる。別法として、ペプチドは、Peltonら,1986,J.Med.Chem.29:2370−2375に記載されたように環化することができる。
【0126】
環化は、例えば、ジスルフィド結合を形成できる第一および第二の残基、例えば、Cys、Pen、Mpr、およびMppおよびその2−アミノ基−含有同等物の間のジスルフィド結合またはラクタム結合の形成によって達成することができる。ラクタムブリッジ形成できる残基は、例えば、Asp、Glu、Lys、Orn、αβ−ジアミノ酪酸、ジアミノ酢酸、アミノ安息香酸、およびメルカプト安息香酸を含む。該化合物は、ここでは、例えば、非隣接残基の側鎖基を利用して、Cysまたは他のアミノ酸のN末端アミノ基への共有結合を形成できるラクタム結合を介して環化することができる。代替ブリッジ構造を用いて、例えば、S−S、CH−S、CH−O−CH、ラクタムエステルまたは他の結合を介して環化できるペプチドおよびペプチドミメティックスを含めた本発明の化合物を環化することもできる。
【0127】
(H.医薬組成物)
本発明のコンジュゲート分子を含む医薬組成物は、非経口、局所、経口または(エアロゾルまたは経皮のような)局所的、またはそのいずれかの組合せを含めた適切な方法で投与することができる。
【0128】
本発明の他の適切な組成物は、医薬上許容されるキャリアと共に前記したコンジュゲート分子のいずれかを含む。キャリアの性質は、投与の態様で異なる。例えば、経口投与では、固体キャリアが好ましく;静脈内投与では、液体塩溶液キャリアが一般には用いられる。
【0129】
本発明の組成物は、対象に適合する医薬上許容される成分、および本発明のタンパク質を含む。これらは、一般には、懸濁液、溶液、およびエリキシル、ならびに最も特別には、リン酸緩衝化生理食塩水、生理食塩水、ダルベッコの培地等のような生物学的緩衝液を含む。エアロゾル、あるいは澱粉、糖類、マイクロクリスタリンセルロース、希釈剤、造粒剤、滑沢剤、バインダー、崩壊剤(経口固体製剤の場合には、粉末、カプセルおよび錠剤)のようなキャリアを用いることもできる。
【0130】
本明細書中で用いられる場合、用語「医薬上許容される」とは、一般には、連邦または州政府の取締当局によって認可された、または米国薬局方、もしくは動物、より特別にはヒトで用いるための他の一般的に認められた薬局方でリストされたことを意味する。
【0131】
選択した処方は、種々の前記した緩衝液、あるいは例えば、医薬グレードのマンニトール、ラクトース、澱粉、ステアリン酸マグネシウム、ナトリウムサッカリンセルロース、炭酸マグネシウム等を含めた賦形剤でさえを用いて達成することができる。組成物の「PEG化」は、当該分野で公知の技術を用いて達成することができる(例えば、国際特許公開番号WO 92/16555、Enzonに対する米国特許第5,122,614号、および国際特許公開番号WO 92/00748参照)。
【0132】
本発明の好ましい投与の経路はエアロゾルまたは吸入形態である。分散剤または分散試薬と組み合わせた本発明の化合物は、乾燥粉末としてのエアロゾル処方にて、または希釈剤を含む溶液または懸濁液にて投与することができる。
【0133】
本明細書中で用いられる場合、用語「分散剤」とは、化合物のエアロゾル化、または肺組織におけるタンパク質の吸収、または双方を助ける剤を言う。好ましくは、分散剤は医薬上許容される。適切な分散剤は当該分野でよく知られており、限定されるものではないが、界面活性剤等を含む。例えば、液体エアロゾルを形成する溶液のアトマイゼーションによって引き起こされる、化合物、特にペプチド化合物の表面誘導凝集を低下させるのに当該分野で一般的に使用される界面活性剤を用いることができる。そのような界面活性剤の非限定的例は、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルおよびアルコール、およびポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルのような界面活性剤である。用いる界面活性剤の量は変化し、一般には、処方の約0.001重量%〜約4重量%の範囲内にある。特別な態様において、界面活性剤はポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートまたはソルビタントリオレエートである。適切な界面活性剤は当該分野でよく知られており、特定の処方、化合物の濃度、(液体処方中の)希釈剤、または(乾燥粉末処方中の)粉末の形態等に応じて、所望の特性に基づいて選択することができる。
【0134】
さらに、コンジュゲート分子、所望の治療効果、肺組織(例えば、病気になったまたは健康な肺)の質、および多数の他の因子の選択に応じて、液体または乾燥処方は後にさらに議論するさらなる成分を含むことができる。
【0135】
液体エアロゾル処方は、一般には、生理学上許容される希釈剤中にコンジュゲート分子および分散剤を含有する。本発明の乾燥粉末エアロゾル処方は、コンジュゲート分子の微粉砕固体形態、および分散剤よりなる。液体または乾燥粉末エアロゾル処方いずれかでは、該処方はエアロゾル化しなければならない。すなわち、それは液体または固体粒子に粉砕して、エアロゾル化された用量が現実に肺胞に到達するのを保証しなければならない。一般に、質量メジアン動的直径は、薬物粒子が肺胞に到達するのを保証するためには5μメートル以下であろう(Wearley,1991,Crit.Rev.in Ther.Drug Carrier Systems 8:333)。用語「エアロゾル粒子」は、肺投与に適した、すなわち、肺胞に到達する液体または固体粒子を記載するのに用いる。送達デバイスの構成、処方中のさらなる成分、および粒子特徴のような他の考慮が重要である。薬物の肺投与のこれらの態様は当該分野でよく知られており、処方の走査、エアロゾル化手段または送達デバイスの構築は、せいぜい、当業者によるルーチン的実験を必要とする。
【0136】
送達デバイスの構成に関しては、限定されるものではないが、液体処方の噴霧化、アトマイゼーションまたはポンプエアロゾル化、および乾燥粉末処方のエアロゾル化を含めた当該分野で公知のエアロゾル化のいずれかの形態を本発明の実施で用いることができる。固体処方の投与のために広く設計される送達デバイスが考えられる。もちろん、液体または乾燥粉末処方のエアロゾル化はプロペラントを必要とするであろう。プロペラントは当該分野で一般に用いられるいずれのプロペラントであっても良い。そのような有用なプロペラントの特別な非限定的例はクロロフルオロカーボン、ヒドロフルオロカーボン、ヒドロクロロフルオロカーボン、あるいはトリフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロメタノール、および1,1,1,2−テトラフルオロエタンを含めた炭化水素、またはその組合せである。
【0137】
本発明の好ましい態様において、エアロゾル化のためのデバイスは計量用量吸入器である。計量用量吸入器は、投与に応じての可変用量よりはむしろ、投与する場合の特定の用量を提供する。そのような計量用量吸入器は、液体または乾燥粉末エアロゾル処方いずれかと共に用いることができる。計量用量吸入器は当該分野でよく知られている。
【0138】
一旦コンジュゲート分子が肺に到達すれば、多数の処方−依存性因子が薬物吸収に影響する。循環レベルの化合物を必要とする病気または障害の処置においては、エアロゾル粒子サイズ、エアロゾル粒子形状、注入の存在または不存在、肺病または塞栓のような因子が化合物の吸収に影響し得るのは認識されるであろう。本明細書中で記載された処方の各々については、ある種の滑沢剤、吸収促進剤、タンパク質安定化剤または懸濁化剤が適切であり得る。これらのさらなる剤の選択は目標に応じて変化するであろう。例えば、化合物の局所送達が望まれ、または求められる場合には、吸収促進剤のような変数はあまり重要ではないであろうと認識される。
【0139】
(I.液体エアロゾル処方)
本発明の液体エアロゾル処方は、典型的には、ネブライザーで用いることができる。該ネブライザーは圧縮空気駆動性または超音波性いずれかであり得る。限定されるものではないが:Ultravent,Mallinckrodt,Inc.(St.Louis,MO);the Acorn IIネブライザー(Marquest Medical Products,Englewood CO)のような、当該分野で公知のいずれのネブライザーを本発明と共に用いることもできる。本発明と組み合わせて有用である他のネブライザーは1986年11月25日に発行された米国特許第4,624,251号;1972年11月21日に発行された第3,703,173号;1971年2月9日に発行された第3,561,444号、および1971年1月13日に発行された第4,635,627号に記載されている。
【0140】
該処方物は、キャリアを含むことができる。該キャリアは、循環系に可溶性であって、生理学的に許容されるマクロ分子であり、ここで、生理学的許容性は、当業者が治療養生法の一部として患者への該キャリアの注入を許容することを意味する。該キャリアは、好ましくは、許容される排出半減期にて循環系で比較的安定である。そのようなマクロ分子は、限定されるものではないが、大豆レシチン、オレイン酸、ソルビタントリオリエートを含み、ソルビタントリオリエートが好ましい。
【0141】
本実施形態の処方物は、タンパク質安定化に、または浸透圧の調節で有用な他の薬剤を含むこともできる。薬該剤の例は、限定されるものではないが、塩化ナトリウムまたは塩化カリウムのような塩、およびグルコース、ガラクトースまたはマンノース等のような炭水化物を含む。
【0142】
(J.エアロゾル乾燥粉末処方)
また、本医薬処方は、SABMおよび分散剤の微粉砕粉末形態を含む乾燥粉末吸入器処方として用いられるであろうことも考えられる。化合物の形態は一般には凍結乾燥粉末であろう。コンジュゲート分子の凍結乾燥形態は標準的な技術を通じて得ることができる。
【0143】
もう1つの実施形態において、乾燥粉末処方は、本発明の1以上の化合物、分散剤および増量剤を含む微粉砕粉末を含むであろう。本発明の処方と組み合わせて有用な増量剤は、デバイスからの粉末の分散を容易とする量の、ラクトース、ソルビトール、スクロースまたはマンニトールのような剤を含む。
【0144】
本明細書中で引用した(特許および特許出願を含めた)全ての刊行物は、ここに引用してその全体を援用する。
【0145】
本明細書および特許請求の範囲を通じて、用語「含む」あるいは「含んでいる」のような変形は、述べられた整数または整数の群を含むことを意味するが、他のいずれかの整数または整数の群を排除しないと理解されるであろう。
【0146】
以下の実施例は説明のために掲げるのであって、限定するものではない。明細書中における全ての引用の開示はここに明示的に引用して援用する。
【実施例】
【0147】
(実施例1−材料)
これらの実験では、p185HER2(HER2)の細胞外ドメインに結合するヒト化抗体のFabを、アルブミン結合ペプチド(AB)を含むように組換えにより作成した。本実験で用いた抗体の可変領域の配列、hurnAb4D5−8はCarterら,(1992) PNAS 89:4285−4289に見出すことができる。以前、ヒト化Fabはネズミモノクローナル抗体muMAb4D5(ここでは、4D5)から誘導されており、このモノクローナル抗体は、Manassas,VirginiaのAmerican Type Culture Collectionに寄託されたハイブリドーマによって生産され、ATCCアクセション番号CRL 10463を有する。ヒト化抗Her−2抗体を作成する方法、および例示的可変ドメイン配列の同一性は、例えば、米国特許第5,821,337号および第6,054,297号、およびCarterら,(1992) PNAS 89:4285−4289に提供される。
【0148】
アルブミン結合ペプチド(「AB」)、QRLMEDICLPRWGCLWEDDF(配列番号1)をコードするアミノ酸配列は、リンカー配列GGGS(配列番号422)をコードする核酸配列を介して、Fabをコードする核酸配列に連結された。リンカーをコードする核酸配列はFabの重鎖C末端KTHT残基に連結された。対照として、その軽鎖を通じてABに融合したD3H44抗体の可変領域を含有する抗組織因子Fabは、組換えDNAエンジニアリングによって構築した。Presta,L.,et al.,(2001) Thromb.Haemost.85:379−389 for D3H44 amino acid sequence参照。
【0149】
得られた構築物を発現させ、融合タンパク質(「AB.Fab4D5−H」または「rhuABFabATFL」)としてE.Coliから分泌させ、次いで、単離し、精製した。次に、融合タンパク質をモノメチルオーリスタチン(MMAE)にコンジュゲートさせた。腫瘍効率実験では、融合タンパク質を、マレイミド部位およびパラ−アミノベンジルカルバモイル(PAB)スペーサーを有するバリン−シトルリン(val−citまたはvc)ジペプチドリンカー試薬を介してMMAEに連結させた。MMAEを抗体に結合させる方法の例については、Klussman,Kら,(2004) Bioconjugate Chem.15:765:773参照。毒性実験では、融合タンパク質を、例えば、アセチルチオ酢酸スクシンイミジル(Sata)を用いてそれらのリジンを通じてマレイミドカプロイルの活性化された誘導体で修飾されたMMAEとのコンジュゲーションを介してMMAEに結合させて、遊離チオールを生じさせ、続いて、バリン−シトルリン−MMAE(「vc−MMAE」)にコンジュゲートさせた。得られたAB.Fab4D5−Hに対するMMAEの比率は一般には4:1と高いおよび0.1と低い比率にてほぼ1:1の平均であり、従って、0〜4のMMAE部位の間は露出したリジン上にランダムに分布しており、総じての平均はAB.Fab4D5−H当たり約1のMMAEである。
【0150】
(実施例2−MMAEコンジュゲートでの効率実験)
AB.Fab−4D5−H−MMAEコンジュゲートは、確立されたMMTB−HER2トランスジェニック乳房腫瘍(Fo5)に対してテストした。この腫瘍系はHerceptin(登録商標)に対しては非応答性であるが、Herceptin(登録商標)−MC−vc−PAB−MMAEコンジュゲートに対してはよく応答する。
【0151】
1650μgのMMAE/m rhuAB.Fab−4D5−H−vc−MMAE(すなわち、ABを含む)、rhuFab4D5vcMMAE(すなわち、ABを含まない)、またはrhuABFabATFL−vc−MMAE(陰性対照)の単一静脈内用量を、mMMTV−HER2 Fo5腫瘍担持マウスに与えた。各処理マウスは100および200mmの間の平均腫瘍容量を有した。MMAE−コンジュゲーテッド分子またはリン酸緩衝生理食塩水(「ビヒクル」)を実験の0日目に投与し、腫瘍測定を1週間に2回17日間行った。公知の効果的なMMAEコンジュゲートであるHerceptin(登録商標)−MC−vc−PAB−MMAEは、1245μg/mのMMAEの用量において比較のために実行した。腫瘍倍化時間に基づく対数細胞殺傷分析を行った。該対数細胞殺傷分析は、腫瘍が、処理が対照と比較して開始される後にサイズが倍となるのに必要な時間に基づいて腫瘍成長遅延の数学的計算を用いる。数学的方程式は:
{(腫瘍倍化時間)−(対照についての平均倍化時間)}/{3.32×(対照についての平均倍化時間)}
である。
【0152】
図1は、rhuAB.Fab4D5−H−vc−MMAEおよびHerceptin(登録商標)−MC−vc−PAB−MMAE群の間で有意な差を示さず(p=0.0001)、他方、陰性MMAE対照Fab、rhuABFabATFL−vc−MMAEはフィッシャーのPSLDによってビヒクル対照とは有意に異ならなかった(p=0.6)。
【0153】
(実施例3−IgG−MMAE、F(ab’)−MMAEコンジュゲートおよび遊離MMAEの毒性)
75〜80グラムの間の体重のメスSpraque−Dawey(SD)ラット(Charles River Laboratories,Hollister,CA)を以下の実験で用いて、遊離MMAE、Fab−MMAEおよびF(ab’)−MMAEコンジュゲートの毒性を比較した。
【0154】
投与群:
【0155】
【表1A】

投与群:
Herceptin(登録商標)−val−cit−MMAEでは、μg MMAE/m2はMMAEのMWとして718、およびHerceptin(登録商標)のMWとして145167を用いて計算した。Herceptin(登録商標)F(AB’)−val−cit−MMAEでは、μg MMAE/m2はMMAEのMWとして718、およびHerceptin(登録商標)F(ab’)2のMWとして100000を用いて計算した。体表面積は以下のように計算した:[{(グラムで表した体重に0.667を掛ける)×11.8}/10000]。(Guidance for Industry and Reviewers.Estimating the Safety Starting Dose in Clinical Trials for Therapeutics in Adult Healthy Volunteers.U.S.Department of Health and Human Services Food and Drug Administration,Center for Drug Evaluation and Research (CDER),Center for Biologics Evaluation and Research(CBER),2002年12月)。
【0156】
該用量溶液は、(PBS中に希釈した)10mL/kgの用量容量にて実験1日目に単一静脈内ボーラスを尾−静脈注射によって投与した。一般的な臨床的観察は毎日行った。罹患率および死亡率チェックは毎日2回行った(AMおよびPM)。動物の体重は実験1日目およびその後毎日投与前に測定した。全血は、血液学パラメータ(例えば、平均血清ASTレベル、ALTレベル、GGTレベルおよびビリルビンレベル)および異なる細胞カウント(例えば、平均白血球細胞カウントおよび血小板カウント)のために、EDTA含有チューブ中に集めた。全血は臨床的化学パラメータのために血清セパレータチューブに集めた。血液試料は、実験−4日目、実験3日目および検視において5日目に投与前に集めた。また、全血は検死においてリチウムヘパリン含有チューブに集め、血漿を後の分析のために−70℃で凍結した。以下の組織を検死において集めた:肝臓、腎臓、心臓、胸腺、脾臓、脳、胸骨、および胃、大腸および小腸を含めたGI管のセクション。検視において脾臓および胸腺のみを秤量した。全ての統計学的分析は、片側ANOVA、Tukey検定(SigmaStat 2.03 Software)を用いて5日目の体重に対して行った。
【0157】
実験3日目に、投与群4および5(各々、27.14mg/kgのHerceptin(登録商標)F(ab’)2−val−cit−MMAEおよび516ug/kg遊離MMAE)の動物は死にかけていた。全ての群4および5の動物はひどく昏睡しており、ほとんどは尿生殖器領域において黄色の排出物を有した。これらの投与群における動物を3日目に検死した。実験5日目に、投与群3(10.83mg/kg Herceptin(登録商標)F(ab’)2−val−cit−MMAE)における動物もまた尿生殖器領域において黄色の排出物を有した。
【0158】
臨床化学および血液学データの完全な組(ベースライン、3日目および5日目)は群1〜3に対して利用できるに過ぎず;5日目のデータは群4および5については利用できない。というのは、これらの動物は、有意な罹患率または体重喪失のため3日目に検視したからである。また、これは、5日目に終えた動物で観察されたものと知見を比較する場合に、これらの動物の組織学変化の解釈で考慮されなければならない。
【0159】
3日目に、群4(高用量のHerceptin(登録商標)F(ab)’2)および群5(遊離MMAE)の動物は、肝臓関連血清酵素(ALT、ASTおよびGGT)における最高の上昇、および最低の血小板および白血球細胞のカウントを示した。ASTおよびALTにおける上昇は2つの群において同様であったが、群4は、群5よりもGGTおよび全ビリルビンにおいて有意に高い上昇を示した。GGTおよび全ビリルビンの上昇は、分泌肝臓機能または胆汁系に関する問題を示し得る。組織学的評価は、この観察に対する形態学的相関を示さず、遊離MMAE vs イムノコンジュゲートのPK特徴の差がこの知見を説明できるか否かは明らかでない。低用量Herceptin(登録商標)F(ab’)2−vc−MMAE群3は、3日目において肝臓機能テストの一過性上昇を示し、これは、5日目までにベースラインレベルに戻った。しかしながら、血小板および白血球細胞カウントは回復の徴候なくして5日目に減少したままであった。全長イムノコンジュゲートHerceptin(登録商標)−vc−MMAE(MMAEの用量は群4および5に合致する)で処理した動物は、減少した肝臓機能テストおよび白血球減少症および血小板減少症の典型的な毒物学プロフィールを示した。ビリルビンを例外として、全てのパラメータは5日間の期間にわたって進行を示したが、3日目に変化は群4および5におけるよりも群2においてひどくはなかった。形態学的には群2〜5で観察された毒性のパターンは同一であって、以前の実験で見られたものに合致した。限定された数の器官のみを評価したが、臨床的病理学データは、他の部位における有意な器官−特異的損傷を示唆しない。形態学的変化は群3(低用量Herceptin(登録商標)F(ab’)2)において最もひどくなく、群4および5(高用量Herceptin(登録商標)F(ab’)2および遊離MMAE)において最もひどかった。該変化は骨髄低細胞性、顕著なアポトーシス活性を伴う胸腺萎縮、変化する程度の粘膜変性および萎縮を伴う腸粘膜での増大した数の有糸分裂およびアポトーシス細胞、および肝細胞および胆管上皮中の増大した数の有糸分裂およびアポトーシス細胞を含んだ。また、群2、4および5の動物は、肝臓細胞の脱落、および肝臓壊死の偶然の領域の証拠を示した。
【0160】
投与群4および5(各々27.14mg/kg Herceptin(登録商標)cit−MMAEおよび516ug/kg遊離MMAE)における動物は、各々、1日目の体重と比較して、3日目までに14.5および12グラムの体重を喪失した。匹敵する量のMMAE(2105ug MMAE/m2)を投与した群2動物での体重の減少は、群4および5の動物程はひどくなかった。図2に示すように、遊離MMAEの養生法の結果、(血清アルブミン結合タンパク質無しの)Fa(b’)2養生法と同様な体重喪失プロフィールをもたらした。体重の喪失は毒性のインジケータである。
【0161】
まとめると、Herceptin(登録商標)F(ab’)2−val−cit−MMAE(リジン)は用量依存的に急性毒性を引き起こした。高用量Herceptin(登録商標)F(ab’)2−val−cit−MMAEにおける動物は、Herceptin(登録商標)−val−cit−MMAEと同一の薬物の量を受けた動物と比較して有意に大きな体重喪失を示した。高用量のHerceptin(登録商標)F(ab’)2−val−cit−MMAEと匹敵する用量(2150ug/m2)で遊離MMAEを投与した動物は、匹敵する体重喪失、および肝臓関連血清酵素レベルおよび白血球細胞および血小板カウントの変化を有した。該知見は、チューブリン形成を阻害する剤の投与と合致する(Wood KW,Cornwhell WD,and Jackson JR.Past and future of the mitotic spindle as an oncology target. Current Opinion in Pharmacology,1:370−377,2001)。
【0162】
(実施例4−MMAE−Fabコンジュゲートでの毒性実験)
Herceptin(登録商標)−モノメチルオーリスタチン(MMAE)イムノコンジュゲート、Fab4D5−MMAEおよびAB.Fab4D5−H−MMAEイムノコンジュゲートの毒性を雌Sprague−Dawleyラット(80〜100g)において比較した。
【0163】
雌ラットに、(PBS中に希釈した)10mg/kgの投与容量にて尾−静脈注射を介して同等の用量(2105ug MMAE/m)を投与した。全ての投与溶液は単一ボーラス注射として投与した。
投与群:
1=PBS、6匹の雌
2=20.2mg/kgのHerceptin(登録商標)−val−cit−MMAE、6匹の雌
3=5.7mg/kgのFab4D5−vc−MMAE
4=14.24mg/kgのFab4D5−vc−MMAE、6匹の雌
5=7.85mg/kgのAB.Fab4D5−H−vc−MMAE
6=19.62mg/kgのAB.Fab4D5−H−vc−MMAE、6匹の雌
先の実験において、2105ug MMAE/m用量のHerceptin(登録商標)−val−cit−MMAEの結果、中程度にひどかった肝臓関連血清酵素レベルおよび血液学パラメータの変化がもたらされた。また、5.7mg/kgのrhuFab4D5−val−cit−MMAEおよび7.85mg/kgのrhuFab4D5−H−val−cit−MMAEの用量を本実験で投与してほぼ840ugのMMAE/mのMMAE暴露を与えた。
【0164】
これらのアッセイにおいて、血液試料(ほぼ500ul)は、一般には臨床化学および血液学のために研究−3日目(投与前)および3日目に、イソフルオラン麻酔下で眼窩後洞を介して集めた。また、ケタミン麻酔下で下大静脈を介して検死において5日目に血液を集めた。臨床的観察および体重の記録を毎日1回行い、ケージ側死亡率チェックは毎日2回行った(am−pm)。死にかけた動物を安楽死させた。
【0165】
実験5日目の検死の間に、ラットの血液を、臨床化学および血液学のために腹部大動脈を介して集めた。以下の組織を集めた:心臓、肺、気管、肝臓、腎臓、胸腺、脾臓、脳、腋窩リンパ節、全胃腸管、皮膚、泌尿器系膀胱、および骨髄。加えて、肝臓、胸腺、脾臓、および脳について器官重量を記録した。検死において、肝臓、脾臓および胸腺を秤量した。テストは、動物体重、白血球細胞カウント、血小板カウント、ASTレベル、ALTレベル、GGTレベル、血清ビリルビンレベルの群平均変化についてのテストを含んだ。
【0166】
実験4日目に、投与群3および4(5.7および14.25mg/kg rhuFab4D5−val−cit−MMAE)における動物は中程度の立毛を有し、動物の多くは昏睡していた。14.25mg/kgのrhuFab4D5−val−cit−MMAE投与群における2匹の動物は4日目に死にかけており、検死した。
【0167】
オーリスタチンEコンジュゲーテッド全長抗体(Herceptin(登録商標)−MC−val−cit−PAB−MMAE、群2)は、先の実験で見られた同一の毒性プロフィールを示した:肝臓機能テストは3日目および5日目に上昇しGGTを例外として、5日目までに回復の証拠を示した。同一動物は、5日目の実験の間に進行性好中球減少症および血小板減少症を示した。2つのタイプの抗体断片(rhuFab4D5およびrhuFab 4D5−H)で処理した動物は用量−依存性毒性を示した。3日目および5日目の肝臓関連血清酵素レベルは、群3および5(各々、低用量のrhuFab 4D5およびrhuFab 4D5−H)についてのビヒクル−処理動物と実質的に同一である。群5(rhuFab4D5−H−val−cit−MMAE)の動物においてASTおよびALTの非常に温和な上昇があったが、この変化が統計学的に有意であるか否かおよびそれが現実に肝臓毒性を表すか否かは明らかではない。群3(低用量のrhuFab4D5−val−cit−MMAE)における動物は、5日目に非常に温和な血小板減少症、および白血球の50%減少を示し、他方、群5における動物は5日目に(3日目における温和な一過的な減衰後)正常な白血球カウントおよび5日目に温和な血小板減少症を示した。群4および6(各々、高用量のrhuFab 4D5およびrhuFab 4D5−H)における動物は3日目および5日目に毒性の明瞭な徴候を示した。毒性は群4においてよりひどいように見え、2匹の動物は罹患の徴候に基づいて4日目に安楽死させた。AST、ALTおよびGGTのレベルは、双方の時点において、群2または6(匹敵する薬物用量のHerceptin(登録商標)−val−cit−MMAEおよびrhuFab4D5−H−val−cit−MMAE)よりも群4の動物においてより高い。該レベルは群2よりも群6の動物において僅かに低い。群4および6の動物は、5日目に顕著な血小板減少症および白血球減少症を示した。該レベルは群2の動物において観察されたものよりも低く、群6における動物は群4における動物よりもわずかに良好であるように見える。
【0168】
組織病理学的評価の結果は、臨床的観察(体重測定)および臨床病理学データと非常によく相関する。群2、3、4および6における動物は顕著に低細胞骨髄を示し;再生の徴候は群3の動物において存在するに過ぎない。対照的に、群5における動物は正常近くの細胞性の骨髄を示す。同様な知見は胸腺で観察され;群2、4および6の動物は顕著な萎縮およびアポトーシス活性を示し、他方、群3および5の動物は有意なアポトーシス活性のない温和な萎縮を示す。肝臓、小腸および大腸における変化は定量するのがより困難であるが、これらの器官における有糸分裂および/またはアポトーシス細胞の数は、群3および5におけるよりも群2、4および6の動物で大きいように見える。壊死の小さな領域は群4の2匹の動物で観察されるに過ぎない。興味深いことに、(ビヒクル−処理動物に加えて)群5における動物のみが、肝臓での髄質外造血の小さな病巣を保有し、これらの動物における遊離薬物のより低いレベルを示唆する。臨床病理学または組織病理学データは、全長抗体コンジュゲートで処理した動物と比較して、Fabイムノコンジュゲートで処理した動物における毒性の異なるパターンのいずれの証拠も示さない。
【0169】
抗体断片の2つの型で処理した動物は用量−依存性毒性を示した。高用量のrhuFab 4D5−val−cit−MMAEおよびrhuFab 4D5−H−val−cit−MMAE(アルブミン結合ペプチドを含有)を投与した動物は、3日目および5日目に毒性の明瞭な徴候を示した。毒性はrhuFab 4D5群においてよりひどいように見え、2匹の動物は死にかけていたので4日目に安楽死させた。組織病理学評価の結果は、臨床的観察(体重測定)および臨床病理学データと非常によく相関する。臨床病理学または組織病理学データは、全長抗体コンジュゲートで処理した動物と比較して、Fabイムノコンジュゲートで処理した動物における毒性の異なるパターンのいずれの証拠も示さなかった。該知見は、チューブリン形成を阻害する剤の投与と合致する(Woodら,2001)。
【0170】
図3は、アルブミン結合ペプチドは薬物コンジュゲートの毒性を改変できることを示す。Ab.Fab4D5−H−vc−MMAE(アルブミン結合ペプチドを含有)実験5日目にFab4D5−vc−MMAEよりもラットにおいて有意に毒性が低かった。5.7mg/kgのrhuFab4D5−val−cit−MMAEおよび7.85mg/kgのrhuFab4D5−H−val−cit−MMAEを投与した動物(群3および5)における体重の群平均変化は、相互に有意に異ならなかった。投与群2、4および6(各々、20.2mg/kgのHerceptin(登録商標)−val−cit−MMAE、14.24mg/kgのrhuFab4D5−val−cit−MMAE、および19.62mg/kgのrhuFab4D5−H−val−cit−MMAE)は、全て、2105ug/M2のMMAEを受けた。群2および4の動物における体重の群平均減少は、群6の動物よりもひどかった。
【0171】
(実施例5−表面プラズモン共鳴による親和性測定)
SAペプチドおよびアルブムの間の結合親和性は、BIAcore 3000(BIAcore,Inc.,Piscataway,NJ)を用いて得られた。アルブミンは、ほぼ5000共鳴ユニット(RU)でのアミンカップリングを用いてCM5チップ中に捕獲した。SAペプチド(0、0.625、1,25、2.5、5および10μM)は、30秒間で、20μl/分の流速で注入した。結合したペプチドは、10mMグリシン、pH3を用いるマトリックス再生前に5分間解離させた。
【0172】
カップリングしていない細胞を通過する注入からのシグナルを、時間の関数としての結合したペプチドの量に対応するセンソングランを生じさせるために固定化細胞のそれから差し引いた。0.05%TWEEN−20Tを含有するPBSである実行緩衝液を全ての試料の希釈で用いた。BIAcoreキネティック評価ソフトウェア(v3.1)を用いて、1対1の結合モデルを用い、会合および解離速度から解離定数(K)を決定した。
【0173】
ヒト(HAS)、ウサギ(BuSA)、ラット(RSA)、およびマウス(MSA)アルブミンを結合させるための選択されたペプチドの親和性はBIAcoreアッセイならびにSA08ペプチド競合アッセイによって評価した。表8にて以下に示されたデータは、競合アッセイで得られたIC50値がBIAcoreアッセイで得られたKdと好都合に匹敵したことを示す。ウサギアルブミンを結合させるためのコンセンサスペプチドを表すペプチドSA15は、競合アッセイにおいて最低のIC50値、およびウサギアルブミンでの表面プラズモン共鳴による最高の親和性を有した。SA06と同一であるが、Alaに改変された双方のCys残基を有する直鎖状ペプチドは、50μMよりも大きなIC50を有し、ジスルフィドの重要性を示す。
【0174】
(実施例6−相対的Kdの測定)
(緒言:)
タンパク質間の結合能力を評価するにおいて、ELISAは選り抜きの方法である。高度に特異的でかつ定量的なアッセイを開発することが容易であることから、ELISAは広く適用される。しかしながら、タンパク質が固体表面に直接的に固定化される様式では、変性または曖昧な結合エピトープによる潜在的人工物が起こり得る。
【0175】
アルブミンに対するFab分子(Fab−H)にコンジュゲートしたアルブミン結合ペプチドの親和性を測定するために、我々は2つのタイプのELISAを開発した。最初の様式はウェル表面へのアルブミンの吸着を含むものであり、結合したFabはヤギ−抗huFab−HRPで検出される。第2の様式は、溶液中のアルブミンとFab−Hとの結合を含み、解離定数(Kd)を測定する。第2のアッセイの基本的な原理は、一定濃度のFab−Hを変化させる量のアルブミンに結合させて、溶液中で平衡に到達させ、アルブミンで被覆されたELISAウェル中の未結合Fab−Hを測定するものである。Kd値は、Scatchard分析を用いてデータを分析することによって決定することができる(Munsonら,1980、Anal.Biochem.,107:220)。
【0176】
(材料および方法:)
(材料:)
マウスアルブミン−凍結乾燥形態、カタログ番号A3139
ラットアルブミン−凍結乾燥形態、カタログ番号A6414
ウサギアルブミン−凍結乾燥形態、カタログ番号A0639
1mg/mlのアルブミン溶液は、10mgを10mlのPBSに溶解させることによって調製した。溶液は4℃で貯蔵する。
アッセイ緩衝液:PBS+0.5%鶏卵アルブミン(Sigma #A5503(+)5%Tween20,PH7.4)。
【0177】
(直接的結合ELISAアッセイ)
マウス、ラットまたはウサギアルブミン(Sigma)を、2μg/mlにて、NUNC Maxsiorp96−ウェルプレートに4℃にて一晩固定化した。コーティング溶液の除去の後、プレートを結合緩衝液(PBS,0.5%オボアルブミンおよび0.05%Tween20)で25℃にて1時間ブロックした。結合緩衝液中の系列希釈Fab−Hxをウェル当たり100ulで加え、被覆されたアルブミンに25℃にて30分間結合させた。ウェルを0.05%PBS/Tween20で洗浄することによって未結合Fab−Hxを除去し、結合したFab−Hx分子を、25℃でのヤギ抗ヒトFab’2−HRPとの1時間のインキュベーションによって検出した。次いで、結合したHRPを、テトラメチルベンジジン(TMB)/Hの溶液で測定した。15分のインキュベーションの後、1Mリン酸を加えることによって反応をクエンチした。450nmにおける吸光度を、650nmの参照波長で読んだ。
【0178】
(Kd(プレインキュベーションでの溶液結合)ELISAアッセイ)
固定された濃度のFab−H(前記結合ELISAにおいて測定)を、まず、アッセイ緩衝液中の変化させる濃度のアルブミンと共に溶液中でインキュベートした。室温での2時間以上のインキュベーションの後、100μlの混合物をアルブミン被覆ELISAプレートに移した。次いで、前記したように、直接的結合ELISAによって、遊離Fab−Hxの濃度を測定した。
【0179】
Fab−Hの固定された濃度およびアルブミンの出発濃度を以下の表にリストする。アルブミンは8つのポイントで1:3系列希釈した。
【0180】
【表1B】

結果:
ELISAを用いる親和性測定は、最初、1985年にFriguetらによって公開された。我々は、Kdを測定するにおいて、およびHER2 ECDに対するヒト化抗体を選択するにおいてこの技術を用いてきた(Carterら,Proc.Natl.Acad.Sci.89,4285,1992)。
【0181】
一般に、結合平衡実験は、抗体の濃度は解離定数の値近くまたはそれよりも低いことを必要とする。解離定数は先験的に未知であるので、従って、遊離Fab−Hxを測定するのに用いる結合ELISAにおいて十分な吸光度を与える全Fab−H濃度を選択するのがベストである。この濃度は、直接的結合ELISAにおいてFab−Hxを滴定することができることによって決定した。
【0182】
抗体−アルブミンが平衡に到達したことを確認するために、Fab−Hをウサギアルブミンと共に1時間、2時間および一晩インキュベートし、次いで、反応混合物を結合ELISAにおいて検定した。平衡は2時間のインキュベーションの後に到達した。
【0183】
遊離Fab−Hがウェル中の被覆されたアルブミンに結合するのに必要な最適時間を決定するために、Ab−アルブミン混合物をウェル中の被覆アルブミンと共に15、30、45、60および120分インキュベートした。このアッセイに基づき、30分は、全ての遊離Fab−Hに結合するのに必要な時間の最小量であると判断された。Kd(プレインキュベーションでの溶液結合)ELISAアッセイの結果を表10に示す。
【0184】
【表1C】

【0185】
【表1D】

【0186】
【表1E】

【0187】
【表1F】

【0188】
【表1G】

【0189】
【表1H】

【0190】
【表1I】

【0191】
【表1J】

【0192】
【表1K】

【0193】
【表1L】

【0194】
【表1M】

【0195】
【表1N】

【0196】
【表1】

【0197】
【表2−1】

【0198】
【表2−2】

【0199】
【表2−3】

【0200】
【表2−4】

【0201】
【表2−5】

【0202】
【表3】

【0203】
【表4−1】

【0204】
【表4−2】

【0205】
【表4−3】

【0206】
【表4−4】

【0207】
【表5−1】

【0208】
【表5−2】

【0209】
【表5−3】

【0210】
【表6】

【0211】
【表7】

【0212】
【表8】

【0213】
【表9】

【0214】
【表10】

【図面の簡単な説明】
【0215】
【図1】図1は、対照ビヒクル(丸)、Herceptin(登録商標)−vc−Pab−MMAE(四角)、Ab.Fab4D5−H−vc−PAB−MMAE(菱形)、Fab3D4−vc−PAB−MMAE(三角)およびAb.FabControl−vc−PAB−MMAE(塗り潰ぶしていない丸)の注射後の経時的な腫瘍容量を示す。
【図2】図2は、Herceptin(登録商標)−vc−MMAE(四角)、Herceptin(登録商標)−F(ab’)4D5−vc−MMAE(十字形)、遊離MMAE(丸)の投与後における体重の群変化を示す。
【図3】図3は、Herceptin(登録商標)−vc−MMAE(菱形)、Fab4D5−vc−MMAE(三角)、AB.Fab4D5−vc−MMAE(丸)およびPBS(四角)の投与後における体重の変化を示す。
【図4】図4は、ヒト化抗HER2抗体の軽鎖可変ドメイン[配列番号428]およびヒト化抗HER2抗体の重鎖可変ドメイン[配列番号429]のアミノ酸配列を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの血清アルブミン結合ドメイン(SABM)、少なくとも1つの標的化因子(TA)および少なくとも1つの細胞傷害性因子(CA)を含む、コンジュゲート分子。
【請求項2】
前記SABMがDICLPRWGCLW(配列番号8)の配列と少なくとも50%同一であるアミノ酸配列を含み、該アミノ酸配列が2つのCys残基を有し、該2つのCys残基の間に5つのアミノ酸残基を有する、請求項1に記載のコンジュゲート分子。
【請求項3】
該SABMがDICLPRWGCLW(配列番号8)のアミノ酸配列の改変体を含み、ここで、前記Cys残基を除いて、配列番号8の残基のうちの残基のいずれか1〜5残基が異なるアミノ酸残基で置換された、請求項1に記載のコンジュゲート分子。
【請求項4】
前記SABMが:
Xaa−Xaa−Cys−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−Cys−Xaa−Xaa
Phe−Cys−Xaa−Asp−Trp−Pro−Xaa−Xaa−Xaa−Ser−Cys[配列番号1]
Val−Cys−Tyr−Xaa−Xaa−Xaa−Ile−Cys−Phe[配列番号2]
Cys−Tyr−Xaal−Pro−Gly−Xaa−Cys[配列番号3]
Asp−Xaa−Cys−Leu−Pro−Xaa−Trp−Gly−Cys−Leu−Trp−[配列番号4]
Trp−Cys−Asp−Xaa−Xaa−Luc−Xaa−Ala−Xaa−Asp−Leu−Cys[配列番号5]
Asp−Leu−Val−Xaa−Leu−Gly−Leu−Glu−Cys−Trp[配列番号6]
CXXGPXXXXC[配列番号21]
XXXXCXXGPXXXXCXXXX[配列番号22]
CXXXXXXCXXXXXXCCXXXCXXXXXXC[配列番号23]
CCXXXCXXXXXXC[配列番号24]
CCXXXXXCXXXXCXXXXCC[配列番号25]
CXCXXXXXXXCXXXCXXXXXX[配列番号26]
XXXXXDXCLPXWGCLWXXXX[配列番号155]
XXXXDXCLPXWGCLWXXX[配列番号156]
DXCLPXWGCLW[配列番号423]
XXXXDICLPRWGCLWXXX[配列番号424]
XXXXXDICLPRWGCLWXXXX[配列番号425]
XXEMCYFPGICWMXX[配列番号426]
XXDLCLRDWGCLWXX[配列番号427]
よりなる群から選択される直鎖状または環状のアミノ酸配列を含み、ここで、Xは任意のアミノ酸残基である、請求項1に記載のコンジュゲート分子。
【請求項5】
前記SABMが、配列番号7〜20、27〜154および157〜421よりなる群から選択されるアミノ酸配列のいずれか1つを含む、請求項1に記載のコンジュゲート分子。
【請求項6】
前記SABMが、配列番号7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18,19および20よりなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のコンジュゲート分子。
【請求項7】
前記SABMが表1〜9に記載されたペプチド配列のいずれか1つを含む、請求項1に記載のコンジュゲート分子。
【請求項8】
前記SABMが、約100μM以下であるKでもって血清アルブミンに結合する、請求項1に記載のコンジュゲート分子。
【請求項9】
前記TAが抗体である、請求項1に記載のコンジュゲート分子。
【請求項10】
前記抗体がFab、F(ab)、scFvまたはダイアボディーである、請求項9に記載のコンジュゲート分子。
【請求項11】
前記TAが、癌において上昇する細胞表面タンパク質に結合する、請求項1に記載のコンジュゲート分子。
【請求項12】
前記細胞表面タンパク質がHER2、PSMA、PCMA、KDRおよびFlt−1である、請求項11に記載のコンジュゲート分子。
【請求項13】
前記細胞表面タンパク質がB細胞表面マーカーである、請求項11に記載のコンジュゲート分子。
【請求項14】
前記B細胞表面マーカーである細胞表面タンパク質が、CD20またはBR3である、請求項11に記載のコンジュゲート分子。
【請求項15】
前記TAが抗HER2抗体である、請求項1に記載のコンジュゲート分子。
【請求項16】
前記TAが、配列番号428のVL配列および配列番号429のVH配列を有する抗体である、請求項15に記載のコンジュゲート分子。
【請求項17】
前記TAが、配列番号428および配列番号429を含む抗HER2抗体の改変体配列を含む、請求項15に記載のコンジュゲート分子。
【請求項18】
前記細胞傷害性因子がモノメチルオーリスタチン(MMAE)である、請求項1に記載のコンジュゲート分子。
【請求項19】
前記SABMと標的化因子または細胞傷害性因子との間に位置するリンカー部分がGGGSである、請求項1に記載のコンジュゲート分子。
【請求項20】
前記SABMがヒトアルブミンに結合する、請求項1に記載のコンジュゲート分子。
【請求項21】
治療用の薬学的キャリアと混合された請求項1に記載のコンジュゲート分子を含む、組成物。
【請求項22】
治療剤にコンジュゲートした血清アルブミン結合部分(SABM)を含む治療剤を生産する工程を包含する、治療剤の毒性を低下させるための方法。
【請求項23】
治療上有効量の請求項1に記載のコンジュゲート分子を哺乳動物に投与する工程を包含する、哺乳動物における治療剤の毒性を低下させるための方法。
【請求項24】
さらに、インビボにおいて治療剤:SABMコンジュゲートの毒性を測定する工程をさらに包含する、請求項22または請求項23に記載の方法。
【請求項25】
治療上有効量の請求項1記載のコンジュゲート分子によって、癌を有する哺乳動物を処置する工程を包含する、哺乳動物において癌を処置する方法。
【請求項26】
治療上有効量の、自己免疫障害に寄与するかまたはそれを引き起こすB細胞に結合する請求項1記載のコンジュゲート分子によって、自己免疫障害を有する哺乳動物を処置する工程を含む、哺乳動物において自己免疫障害を処置する方法。
【請求項27】
容器、請求項1記載のコンジュゲート分子を含む該容器内の組成物、治療上有効な用量を投与するための指示を含むパッケージ添付文書を備える、製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−515889(P2008−515889A)
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−535700(P2007−535700)
【出願日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【国際出願番号】PCT/US2005/033952
【国際公開番号】WO2006/041641
【国際公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(596168317)ジェネンテック・インコーポレーテッド (372)
【氏名又は名称原語表記】GENENTECH,INC.
【Fターム(参考)】