説明

比較電極

【課題】内部液の流出速度を設計変更により容易に調節することができ、所望の液間電位と製品寿命を有したものにできる比較電極を提供する。
【解決手段】内部電極3及び内部液2が収容される収容体1と、前記内部液2と前記収容体1の外部にある試料液Sとを電気的に接続する細管状の塩橋部5と、を備え、前記塩橋部5が、液体を含水可能な素材からなる内側管51と、前記内側管51の外側に設けられ、液体を通さない素材からなる外側管52とを具備し、前記塩橋部5の少なくとも一部が、前記収容体1内部へと突出して前記内部液2に浸っており、前記内部液2の外部への流出速度を、前記内側管51が前記外側管52から前記収容体1内部へと露出している長さ寸法である第1長さ寸法lと、前記外側管52の長さ寸法である第2長さ寸法Lとの比率によって調節する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極電位の算出や電気化学測定の基準となる比較電極に関するものである。
【背景技術】
【0002】
pH測定やイオン種の測定等において基準となる比較電極は、基本構造として、銀/塩化銀電極等の内部電極とKClの飽和溶液等の内部液とを収容する支持管と、前記支持管の先端部に形成された液絡部とを有している。そして、前記液絡部を介して前記内部液を前記試料液へとわずかずつ流出させることにより電気的な接続が保たれるように構成されている。
【0003】
ところで、このような比較電極では、試料液と内部液の接触により生じる液間電位が小さいことと、製品寿命が長いことが求められている。液間電位と製品寿命を決める重要なパラメータとしては前記内部液の流出速度がある。より具体的には、流出速度が大きいと液間電位は小さくなるものの早く内部液が消費されるため製品寿命は短くなり、逆に流出速度が小さい場合には、製品寿命は長くなるものの液間電位は大きくなってしまうというトレードオフの関係がある。
【0004】
このような比較電極の性能を左右する内部液の流出速度やその他の内部抵抗や試料液による内部液の汚染されにくさ等と言った種々の性能は、前記液絡部の構造に大きな影響を受けるため、用途や要求に応じて様々な形態の液絡部が使用される。前記液絡部の具体的な構成としては、図9に示すように(a)支持管の先端に設けた1〜10mm程度の穴を塞ぐように多孔質セラミックをはめ込んだセラミック形、(b)支持管の先端に直径数10μ程度の微小穴を設けたピンホール形、(c)支持管の先端部側面に穴を形成しておき、その穴を覆うように円筒状のガラス製スリーブを被せることで、ガラスの摺り合わせを利用したスリーブ形、(d)支持管が2重構造となっており、例えば外側の支持管の液絡部はセラミック形、内側の支持管の液絡部はピンホール型等にしたダブルジャンクション形等、様々な形式がある。
【0005】
また、これら以外にも例えば特許文献1に示されるような内部液と試料液とを塩橋を介して接続することもある。具体的には特許文献1には比較電極と測定電極とをセットにした複合電極が示されており、そのうちの比較電極は、内部電極と内部液とを収容した収容体と、収容体から外側へと取り付けられた再生セルロース中空糸単体からなる可撓性細管であり、中空部に内部液を保持するとともに中空糸自体にも内部液をしみこませた塩橋部と、を備え、前記塩橋部の先端において試料液と内部液の境界である液絡部が形成されるようにしたものである。このように構成することで、試料液と収容体内部の内部液とが直接接触することを防ぎ、汚染されないようにするとともに、電極から離れた箇所での測定を容易にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平3−28928号公報
【0007】
しかしながら、様々な形態の液絡部や塩橋が使用されているものの、内部液の流出速度を調節して、所望の液間電位と製品寿命を有した比較電極となるようにそれぞれの設計パラメータを変更することは実際には難しい。例えば、(a)のセラミック形の液絡部であれば、多孔質セラミックが支持管に嵌っている長さや、空隙率等を変更する、(b)のピンホール形であれば、微小穴の直径や深さを変更する、(c)のスリーブ形であれば、摺り合わせの粗度や摺り合わせの面積等が変更する設計パラメータとして挙げることができる。これらの設計パラメータは一見すると容易に変更可能なようにも見えるが、例えば穴の深さを変更しようとしても実際には液絡部の形成される支持管の厚みが規定であるため変更不能である、あるいは、無理に変更してしまうと支持管を含む比較電極全体の設計変更を行わなければならなるといった制約があるため自由には変更しづらく流出速度を調整することは意外に難しい。
【0008】
また、特許文献1のような中空糸単体で形成された塩橋を用いた場合でも、中空糸の材質等だけで内部液の流出速度が略決定されてしまうため、やはり設計の自由度はそれほど高くはないという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述したような問題点を鑑みてなされたものであり、内部液の流出速度を設計変更により容易に調節することができ、所望の液間電位と製品寿命を有したものにできる比較電極を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明の比較電極は、内部電極及び内部液が収容される収容体と、前記内部液と前記収容体の外部にある試料液とを電気的に接続する細管状の塩橋部と、を備え、前記塩橋部が、液体を含水可能な素材からなる内側管と、前記内側管の外側に設けられ、液体を通さない素材からなる外側管とを具備し、前記塩橋部の少なくとも一部が、前記収容体内部へと突出して前記内部液に浸っており、前記内部液の外部への流出速度が、前記内側管が前記外側管から前記収容体内部へと露出している長さ寸法である第1長さ寸法と、前記外側管の長さ寸法である第2長さ寸法との比率によって調節されることを特徴とする。ここで「比較電極」とは、参照電極、照合電極、基準電極等とも呼ばれるものであり、基本的に同じものを指す。
【0011】
このようなものであれば、含水可能な内側管と液体を通さない外側管とからなる塩橋部について、前記収容体の内部へと突出しているそれぞれの長さ寸法の比率を変更するだけで、前記内部液の外部への流出速度を調節することができるので、収容体自体の設計変更をしなくてもよく、容易に流出速度を変えるための設計変更をすることができる。つまり、所望の液間電位と製品寿命を有した比較電極とするために、従来からある製品の規格や材質等を大きく変更する必要が無く、収容体や全体に関する制約がないため流出速度に関して設計自由度を高いものにすることができる。従って、様々な液間電位と製品寿命の比較電極を容易に設計することが可能となるので、様々な用途や要望に応じた比較電極を作ることが可能となる。
【0012】
このように収容体内部における内側管と外側管の長さ寸法の比率を変更することで流出速度が調節できる理由としては、内側管が収容体内において内部液と接触する面積が大きくなると内部液が浸み出す速度が大きくなり、外側管が長くなると内部液が液絡部まで到達するのにかかる時間が長くなるといった作用を適宜各長さ寸法の比率により変更することができるからであると考えられる。
【0013】
また、前記細管状の塩橋部は、内側管が含水可能な素材により形成されているので、常に内部液を塩橋部内に保持しておき、試料液と収容体内の内部液との電気的な接続を保つことができる。従って、仮に内側管の内部が気泡により塞がれることがあったとしても、絶縁状態となることはなく、測定中にデータの無い点が表れる等の不具合を防ぐことができ、測定の信頼性を保つことができる。加えて、前記含水可能な内側管が中空部分を有しているので、内側管において目詰まりが起こり寿命が短くなってしまうという不具合も防ぐことができる。
【0014】
内部液の流出速度を調整するための具体的な構成としては、前記流出速度の目標値が大きく設定されるほど、前記第1長さ寸法の前記第2長さ寸法に対する比率が大きく設定されるものであればよい。
【0015】
内部液の流出速度を調整するための別の具体的な構成としては、前記流出速度の目標値が大きく設定されるほど、前記内側管又は前記外側管の内径が大きく設定されるものであればよい。
【0016】
製造される部材の寸法を変更するのではなく、容易に流出速度を変更するための具体的な態様としては、前記流出速度の目標値が大きく設定されるほど、前記内部液の粘度が小さく設定されるものであればよい。また、前記内側管の透水性を大きく設定する事により、同等の効果を得ることができる。
【0017】
より流出速度の調整をするための自由度を大きくするとともに、比較電極を微小領域でも接触させることができるようにするには、細管状の前記塩橋部が前記収容体から外部にも突出しているものであればよい。
【0018】
測定箇所が入り組んでいるところであっても容易に試料液と接触させることができるようにするには、前記塩橋部が可撓性を有したものであればよい。
【0019】
前記塩橋部内にて気泡が発生した場合でも、気泡を強制的に外部へと排出できるようにするには、前記収容体が、前記収容体内部を開放又は密閉するための開閉部を備えたものであればよい。このようなものであれば、前記収容体内部を大気圧に開放することで内部液により気泡を外部に押し流すことができる。
【発明の効果】
【0020】
このように本発明の比較電極によれば、前記塩橋部を含水可能な内側管とその外側にある非透水性の外側管とで構成し、内側管と外側管が収容体の内部へと突出している長さの比率によって内部液の流出量を調節するように構成されているので、支持管自体に大幅な設計変更が必要とされない。従って、従来からある製品の形式等を踏襲しつつ、液間電位と製品寿命について非常に自由度の高い設計を行うことができるようになり、用途に応じた比較電極とすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態に係る比較電極の構造を示す模式図。
【図2】第1実施形態の比較電極における塩橋部周辺の拡大図。
【図3】第1実施形態の比較電極における塩橋部の長さを変えた場合の実験結果。
【図4】本発明の第2実施形態に係る比較電極の構造を示す模式図。
【図5】第2実施形態の比較電極における塩橋部周辺の拡大図。
【図6】本発明の第3実施形態に係る比較電極の構造を示す模式図。
【図7】本発明の第4実施形態に係る比較電極の構造を示す模式図。
【図8】第4実施形態の比較電極における塩橋部周辺の拡大図。
【図9】従来の液絡部の構成を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の第1実施形態について図面を参照して説明する。
【0023】
図1に示すように第1実施形態の比較電極100は、pH測定やイオン種の測定等において各種測定電極(図示しない)とともに用いられ、その際の基準電位を測定するためのものである。
【0024】
この比較電極100は、内部電極3及び内部液2を収容する収容体たる支持管1と、前記支持管1の基端を塞ぐように設けてあるキャップ部6と、前記支持管1の先端部において前記支持管1の内部側へと突出させ、前記内部液2に浸漬するようにしてある塩橋部5とを備えたものである。
【0025】
前記支持管1は例えばガラス製のものであり、その先端部に前記塩橋部5を取り付けるための取付穴が形成されており、前記塩橋部5がブッシュ8により当該支持管1の内部側へと突出するように取り付けてある。また、前記支持管1の中央部には内部電極3が収容されており、使用状態すなわち支持管1の先端側を下向きにした際において前記内部電極3が前記内部液2に浸漬するようにしてある。さらに、支持管1を下向きにした際の内部液2の液面よりも上方の支持管1側面には、開口とゴムキャップ72により開閉部7が形成してある。この開閉部7は、内部液2が減少した際に内部液2を補充するための補充口として使われる他、二通りの使い方ができる。ひとつの使用方法はゴムキャップ72によって密閉しておくことにより、内部液2が試料液Sへと拡散により流れていくようにするものであり、もうひとつの使用方法は、ゴムキャップ2をはずして補充口を開口しておくことにより、内部液2が試料液Sへと主に水頭圧によって流れていくようにするものである。このようにして、塩橋部5に気泡等が生じた際には、ゴムキャップ72を開放して水頭圧により気泡を強制的に支持管1の外部へと排出する。
【0026】
前記内部電極3は、いわゆる銀/塩化銀電極であり、内部の銀線を被覆するように塩化銀膜を形成してあるものである。そしてこの内部電極3から支持管1の基端側へのキャップ部6へと延びる信号線4により外部へと基準電位の測定に必要な電気信号が出力されるようにしてある。前記内部液2は、KClの高濃度水溶液である。前記内部液2の粘性は例えば塩橋部5を介して試料液Sへと流出する流出速度を調整するために、高分子によりゲル化する等して調整してもよい。
【0027】
前記塩橋部5は、細管の内部に内部液2を保持するようにしてあるとともに、その先端部において、前記内部液2と試料液Sとの境界である液絡部9が形成される。そして、前記塩橋部5は、液体を含水可能な素材からなる内側管と、前記内側管の外側に設けられ、液体を通さない素材からなる外側管とを具備するものである。より具体的には、図2の拡大図に示すように含水性チューブ51を内側管として、その外側を非透水性の被覆チューブ52で被覆して塩橋部5としてある。すなわち、前記塩橋部5は中心に概略細円筒形状の中空部と、その中空部の側周面を覆うように含水性チューブ51が設けてあり、さらに前記含水性チューブ51の外側が被覆チューブ52で覆われる構造となっている。加えて、この塩橋部5における内側管である含水性チューブ51及び外側管である被覆チューブ52が支持管1内部に突出している長さ寸法又は各長さ寸法の比率により内部液2の流出速度が前記内部液2の外部への流出速度が調整される。より具体的には、内部液2の流出速度の目標値が大きく設定されるほど、前記第1長さ寸法lの前記第2長寸法Lに対する比率を大きく設定する構成となっている。
【0028】
前記含水性チューブ51は、水溶液を含浸・透過する高分子物質により形成してあり、例えば中空糸等である。ここで、含水性チューブ51に用いる高分子としては多孔性、親水性高分子であればよい。より具体的には、多孔性高分子としては、ポリビニルアルコールやポリアセチルセルロース等、親水性の高分子としてはフッ素系高分子イオン交換体等が適用できる。
【0029】
前記被覆チューブ52は、水を通さない物質により前記含水性チューブ51の前記支持管1先端側からその途中までを被覆するようにしてある。前記被覆チューブ52の素材としては例えば塩化ビニルやシリコンゴム等の高分子が挙げられる。また含水性チューブ51及び被覆チューブ52は上述したような高分子により形成されていることから、可撓性を有するものである。
【0030】
このように構成した比較電極100において特に前記塩橋部5の含水性チューブ51と前記被覆チューブ52が前記支持管1内へと突出させる寸法を調整することにより、内部液2の外部への流出速度を調整して、ひいては液間電位、製品寿命の設計ができる。図2の拡大図に示すように前記含水性チューブ51が前記被覆チューブ52から露出している長さ寸法である第1長さ寸法をl、被覆チューブ52の長さ寸法である第2長さ寸法をLとして、これらの長さ寸法の比率を変えることにより流出速度を調整する。各長さ寸法の比率を変えて、内部抵抗、流出速度、液間電位及び応答速度について測定した結果を図3に示す。
【0031】
図3(a)に示すように、含水性チューブ51の露出している長さ寸法である第1長さ寸法lを共通とした上で、被覆チューブ52が支持管1内部へと突出している長さ寸法である第2長さ寸法Lを異ならせて各種項目について測定している。図3(a)に示すように被覆チューブ52を長くするほど内部液2の流出速度が大きくなることが分かる。
【0032】
また、図3(b)に示すように各種標準液に対する液間電位は全体的な傾向として、前記含水性チューブ51に対して被覆チューブ52の長さ寸法Lが小さいほど、液間電位が小さくなることがわかる。また図3(c)に示すように応答速度に関しても被覆チューブ52の長さ寸法Lが小さいほど、安定するまでの応答速度が速くなることも分かる。
【0033】
これらの結果から前記含水性チューブ51と被覆チューブ52の長さ寸法をそれぞれ調節するだけで内部液2の流出速度を調節できることがわかる。つまり、内部液2の流出速度を調整するためには塩橋部5の各チューブの長さを調節するだけでよいので、支持管1等の構造上の制約を受けにくく、従来よりも設計の自由度が高い。また、流出速度だけでなく、電解質濃度の寿命、塩橋部5の汚染(目詰まり)、内部液2による試料液Sの汚染等といった要素を勘案してもよく、その場合、含水性チューブ51の各種寸法、性質、被覆チューブ52の長さ、内部液2の粘度によりさらに調節することができる。
【0034】
具体的には、内部液2の流出速度の目標値を大きく設定されるほど、含水性チューブ51の内径寸法を大きく、厚み寸法を小さく、長さ寸法を短く、透水性を大きく設定することで調整することができる。
【0035】
さらに、前記塩橋部5は中空部に気泡が入ったとしても前記含水性チューブ51には常に内部液2が保持されているため、試料液S、塩橋部5、内部液2、内部電極3間で電気的な接続を保つことができる。従って、pH測定等の途中で、気泡により短絡が生じて欠測が生じるといった事態は避けることができ、測定の信頼性を高めることができる。
【0036】
次に図4に記載の第2実施形態の比較電極100について説明する。なお、以下の説明では前記第1実施形態の比較電極100の各部材と対応する部材には同じ符号を付すこととする。
【0037】
この第2実施形態の比較電極100は、前記第1実施形態とは異なり、塩橋部5を支持管1の内部だけでなく外部へも突出させてある。より具体的には、前記支持管1の先端部が鋭角円錐状に先細らせてあり、その頂点に前記塩橋部5を通すための穴が形成してある。さらに、前記支持管1の先端部の外壁表面と、前記支持管1の先端部の近傍において前記支持管1から外部へと突出している前記塩橋部5の一部を覆うように接続チューブを設けて、前記塩橋部5の内部側へと突出している長さ寸法を固定するようにしてある。前記接続チューブRは概略漏斗状の形状をしており、前記支持管1と前記塩橋部5とに内部液2が漏れることなく密に接触して各部材を固定するためのものである。
【0038】
このように構成された第2実施形態の比較電極100であれば、可撓性を有した塩橋部5を試料液Sへの接触部分とすることができる。従って、前記塩橋部5を細管状に形成することによりごく微量の試料液Sであっても接触させることができ、基準電位を測定することができる。
【0039】
また、図5の拡大図に示すように塩橋部5のうち支持管1の内部へと突出している部分の長さを調節することにより前記内部液2の外部への流出速度を調節することができる。ここで、第2実施形態における含水性チューブ51が被覆チューブ52から露出している第1長さ寸法l及び被覆チューブ52の長さ寸法である第2長さ寸法Lは前記第1実施形態と同様に定義できる。特に、第2長さ寸法Lに関しては、図5に示すように前記被覆チューブ52の外側が前記支持管1内において、内部液2と接触している部分と支持管1の外側へと出ている部分を含む寸法として定義している。前記第1実施形態と同様に、第1長さ寸法l及び第2長さ寸法Lとを調節することで、同様の傾向で流出速度を調節することができる。
【0040】
次に図6に記載の第3実施形態の比較電極100について説明する。この第3実施形態でも前記第1実施形態の比較電極100と対応する部材には同じ符号を付すこととする。
【0041】
図6に示す第3実施形態の比較電極100は、測定電極である半導体型pH電極Mと組みわせた複合電極200の一部として用いられているものである。前記複合電極200は、棒状で中空の筐体の内部を中央部の壁M2により、長手方向に2つの部屋に区切ることで、前記半導体型pH電極M用の空間と比較電極100用の空間とが形成してある。前記筐体の先端部において、前記筐体の側面方向に前記半導体型pH電極Mの感応部M1と、比較電極100の液絡部9が上下方向に並んで形成してある。前記液絡部9から比較電極100用の空間内部へと、塩橋部5が突出させてある。
【0042】
ここで、前記塩橋部5は、液絡部9から横方向に延びた後その可撓性を理由してL字型に曲げられたあと、筐体内の内部電極3側へと延びるように配置してある。このように、前記塩橋部5が可撓性を有するとともに、気泡による断線を防ぐことが可能な含水性チューブ51を有しているので、複合電極のような極小の空間内に比較電極100を構成しなければならない場合でも好適に用いることができる。しかも、このように比較電極100として使用できる空間が限られており、内部液2の流出速度を調節するための設計変更が困難である場合でも、前記塩橋部5の第1長さ寸法及び第2長さ寸法は比較電極100用の空間の制約を受けにくいので、容易に流出速度の調整を行うことができる。
【0043】
次に図7に記載の第4実施形態について説明する。この第4実施形態でも前記第1実施形態の比較電極100と対応する部材には同じ符号を付すこととする。
【0044】
第4実施形態の比較電極100では、図7に示すように前記塩橋部5の内側管が含水性チューブ51である点は第1実施形態の比較電極100と共通しているが、外側管が被覆チューブではなく支持管1の一部を利用して構成されている点が異なる。より具体的には、前記支持管1が、内部液2及び内部電極3の収容されている基端側収容部11(請求項での収容体に相当)と、前記支持管1の先端側であり、前記基端側収容部延びる細管状の外側管52とから構成してある。この外側管の内側周面に接するように前記含水性チューブ51が前記外側管の先端から基端側へと延び、前記基端側収容部の内部へと当該含水性チューブ51の一部が突出するように構成してある。つまり、図8の拡大図に示すように内部液2のある収容体内部に外側管が突出する寸法である第2長さ寸法をゼロとした場合を示している。このようなものであっても、前記基端側収容体の内部へと露出している含水性チューブ51の長さを調節することにより、内部液2の流出速度を調節することができる。言い換えると、本発明の第1長さ寸法と第2長さ寸法の比率を調節するとは、外側管が収容体内部へと突出する長さである第2長さ寸法をゼロとして、内側管の露出する長さである第1長さ寸法のみを適宜調節することも含む概念であり、第4実施形態はその具体例を示しているものである。
【0045】
その他の実施形態について説明する。
【0046】
前記収容体は、各実施形態では支持管等の管状のものであったが、その他の形状であっても構わず、要するに内部液と内部電極が内部に収容されているものであればよい。また、前記塩橋部は可撓性を有するものであったが、例えば内側管が含水性のものであり、外側管が非透水性のものであれば、可撓性を有しないものであっても構わない。加えて、比較電極はpH測定だけに用いられるものではなく、各種イオンの測定において用いられても構わない。
【0047】
内部液の流出速度を調整するための構成としては、前記内側管が前記外側管から前記収容体内部へと露出している長さ寸法である第1長さ寸法と、前記外側管が前記収容体内部へと突出している長さ寸法である第3長さ寸法との比率によって調節されるものであってもよい。このようなものであれば、収容体内部における塩橋部の長さ寸法に関連するものであるからより精密に流出速度の調整を行うことができる。
【0048】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて、様々な変形や実施形態の組み合わせを行っても構わない。
【符号の説明】
【0049】
100・・・比較電極
1 ・・・支持管(収容体)
2 ・・・内部液
3 ・・・内部電極
5 ・・・塩橋部
51 ・・・内側管
52 ・・・外側管
7 ・・・開閉部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部電極及び内部液が収容される収容体と、
前記内部液と前記収容体の外部にある試料液とを電気的に接続する細管状の塩橋部と、を備え、
前記塩橋部が、液体を含水可能な素材からなる内側管と、前記内側管の外側に設けられ、液体を通さない素材からなる外側管とを具備し、
前記塩橋部の少なくとも一部が、前記収容体内部へと突出して前記内部液に浸っており、
前記内部液の外部への流出速度が、前記内側管が前記外側管から前記収容体内部へと露出している長さ寸法である第1長さ寸法と、前記外側管の長さ寸法である第2長さ寸法との比率によって調節されることを特徴とする比較電極。
【請求項2】
前記流出速度の目標値が大きく設定されるほど、前記第1長さ寸法の前記第2長さ寸法に対する比率が大きく設定される請求項1記載の比較電極。
【請求項3】
前記流出速度の目標値が大きく設定されるほど、前記内側管又は前記外側管の内径が大きく設定される請求項1又は2記載の比較電極。
【請求項4】
前記流出速度の目標値が大きく設定されるほど、前記内部液の粘度が小さく設定される請求項1、2又は3記載の比較電極。
【請求項5】
前記塩橋部が前記収容体から外部にも突出している請求項1、2、3又は4記載の比較電極。
【請求項6】
前記塩橋部が可撓性を有したものである請求項1、2、3、4又は5記載の比較電極。
【請求項7】
前記収容体が、前記収容体内部を開放又は密閉するための開閉部を備えた請求項1、2、3、4、5又は6記載の比較電極。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−132681(P2012−132681A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−282371(P2010−282371)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(000155023)株式会社堀場製作所 (638)