説明

比重針固定台およびヘモグロビン測定装置

【課題】 比重針の比重針固定台への載置操作から検体滴下操作までの作業を効率良く行うことができる比重針固定台およびそれを用いたヘモグロビン測定装置を提供する。
【解決手段】 基台2に固定された比重針ガイド部3に、検体滴下部の方向へ前方に延出する前方延出部4を、軸体17を介して回転自在に取り付け、検体を収容した比重針31を前方延出部4を含む比重針載置部に載置し、比重針31を、前方延出部4と共に、軸体17を回転軸としてその針先31aが下方へ向かうように回転させることにより、比重針31から検体を滴下させるようにした。また、比重針31を、前方延出部4の針基支持部31bと、後方延出部8のチューブ支持部8aの2点で支持すると共に、弾性部材によって前方延出部4が常時は基台2と略平行に保持されるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体を収容した比重針から、所定位置へ該検体を滴下させる比重針固定台およびそれを用いたヘモグロビン測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
献血を行う際には、事前に血液比重測定、ヘモグロビン測定等により、予め定められた基準に基づき検査を行っている。このうち、ヘモグロビン測定では採血した検体中のオキシヘモグロビン濃度を吸光度分析により測定して貧血等の有無について検査を行っている。このヘモグロビン測定を行うためのヘモグロビン測定装置には、採血した検体を収容した比重針を固定し、所定位置へ該検体を滴下させるための比重針固定台が設けられている(特許文献1、2)。
【0003】
本出願人により提案された特許文献1の比重針固定台では、基台に対して回動台を回動自在に取り付け、比重針をこの回動台に対して固定部材によって装着固定した後、この回動台を下方から支持し、基台上を回動中心方向へ移動可能に設けられたスライダを、回動台の下側に対して摺動させながら回動中心方向へ移動させることにより、回動台を所定位置まで回動させ、回動台に固定された比重針の針先から検体を滴下させるようにしている。
【特許文献1】特願2003−182795号明細書
【特許文献2】特開2002−40019号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の比重針固定台では、固定部材により回動台に比重針を固定し、次にスライダを操作する構成としているが、実際の使用時には多数の検体を一時に処理することを要する場合が多く、このような場合には検体滴下の作業をできるだけ効率よく行うことができることが望ましい。また、比重針を固定、回転する機構の構造をさらに簡素化し、その製作および調整を容易にできることが望ましい。
【0005】
また、上記の比重針固定台では、比重針を回動台に対して固定部材で固定する必要があることから、例えば比重針を固定部材に固定する際に、誤って検体が滴下するまで比重針を傾けてしまったり、比重針のチューブに加重が加わることで誤滴下をしてしまったりすることを防止するために、比重針の固定作業に関して慎重な取り扱いが求められる。
【0006】
また、比重針固定台が取り付けられるヘモグロビン測定装置本体には、比重針からの検体の滴下を検知するセンサが設けられているが、このセンサが検体等により汚れることを防止するために、検体が滴下する経路の周囲には滴下カバーが設けられている。この滴下カバーが汚れると、センサが誤動作することがあり、定期的に滴下カバーを清掃する必要がある。しかし、従来の比重針固定台では、滴下カバーの清掃を行うにはヘモグロビン測定装置本体から基台ごと比重針固定台を取り外し、滴下カバーを清掃した後に再度基台をヘモグロビン測定装置本体に取り付ける必要があり、保守作業が容易ではなかった。
【0007】
本発明は上記したような従来技術における問題点を解決するためになされたものであり、比重針の比重針固定台への載置操作から検体滴下操作までの作業を効率良く行うことができる比重針固定台およびヘモグロビン測定装置を提供することを目的としている。
【0008】
本発明は、比重針を回転する機構が簡易な構造で構成され、その製作および調整を容易
に行うことができる比重針固定台およびヘモグロビン測定装置を提供することを目的としている。
【0009】
本発明は、比重針固定台への載置時における比重針への取り扱いが容易であり、検体の誤滴下を充分に防止可能な比重針固定台およびヘモグロビン測定装置を提供することを目的としている。
【0010】
本発明は、検体を一定条件で正確に滴下することができる比重針固定台およびヘモグロビン測定装置を提供することを目的としている。
本発明は、検体滴下部周辺の保守作業が容易な比重針固定台およびヘモグロビン測定装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の比重針固定台は、基台と、
前記基台に固定された比重針ガイド部と、
前記比重針ガイド部に軸体を介して回転自在に取り付けられ、前記比重針ガイド部から検体滴下部の方向へ前方に延出する前方延出部が設けられた比重針載置部とを備え、
検体を収容した比重針を前記比重針載置部に載置し、前記比重針を、前記前方延出部と共に、前記軸体を回転軸としてその針先が下方へ向かうように回転させることにより、前記比重針から前記検体を滴下させるようにしたことを特徴とする。
【0012】
上記の発明では、比重針を比重針載置部に載置し、次いで比重針を手指等で把持しながら前方延出部と共に下方へ押して回転させることによって比重針から検体を滴下させるようにしている。
【0013】
したがって、比重針の比重針固定台への載置操作から検体滴下操作までの一連の作業を連続した作業として行えるため、本発明の比重針固定台は作業性が良く、効率的に検査を行うことができる。
【0014】
また、比重針を回転する機構が、比重針載置部と比重針ガイド部とからなる簡易な構造で構成されているので、その製作および調整を容易に行うことができる。
本発明の比重針固定台は、前記比重針載置部に、前記比重針ガイド部から前記検体滴下部とは逆方向へ後方に延出し、前記比重針を載置した際にその後部側を支持する後方延出部が設けられていることを特徴とする。
【0015】
上記の発明では、比重針の針基等の前部側を前方延出部で支持するとともに、チューブ等の後部側を後方延出部で支持するようにしている。例えば、前方延出部の先端部で比重針の針基を支持し、後方延出部の所定位置で比重針のチューブを支持し、これらの2箇所で比重針を支持することによって、チューブに加重が掛かることが無く、例えばチューブが湾曲している場合であっても検体の誤滴下を防止することができる。また、前方延出部と後方延出部とが基台に対して略平行に、互いに反対方向へ延び出すように設置したことにより、容易に比重針を載置することができる。
【0016】
本発明の比重針固定台は、前記比重針載置部の前記前方延出部を前記基台と略平行に支持し、前記前方延出部を下方へ回転させた際に、回転方向とは逆方向へ弾性力を作用する弾性部材が設けられていることを特徴とする。
【0017】
上記の発明では、前方延出部は弾性部材の弾性力で基台と略平行に保たれているので、上記のように前方延出部と後方延出部の2箇所で比重針を支持する場合、比重針の形状に応じて前方延出部が弾性力に抗して適宜に回転移動し、これによって比重針の変形を吸収
しながら前方延出部に対して所定配置で比重針を載置することができる。したがって、比重針の比重針載置部への載置時における比重針への取り扱いが容易であり、慎重な取り扱いを要せずとも比重針からの誤滴下を防止できる。
【0018】
本発明の比重針固定台は、前記比重針ガイド部に、前記比重針載置部の前記前方延出部を下方へ回転させた際に、該前方延出部に嵌合される被嵌合部が設けられていることを特徴とする。
【0019】
上記の発明では、比重針を前方延出部と共に回転方向へ押し下げた際に、比重針ガイド部に設けられた、前方延出部に対応する横幅を有する凹状の被嵌合部に前方延出部が嵌め合わされる。これによって、比重針を載置した比重針載置部の前方延出部を回転させて比重針から検体を滴下させる際に、回転する比重針の横方向への動きが被嵌合部により規制されるので、比重針が横ぶれすることが無く、検体を決められた位置へ正確に滴下することができる。
【0020】
本発明の比重針固定台は、前記比重針ガイド部に、前記比重針載置部の前記前方延出部を下方へ回転させて該前方延出部が所定角度まで傾斜した際に該前方延出部に当接し、検体滴下時における前記比重針の傾斜角度を規定するテーパ面が設けられていることを特徴とする。
【0021】
上記の発明では、比重針を前方延出部と共に回転方向へ押し下げた際に、前方延出部が、比重針ガイド部に設けられたテーパ面に所定の傾斜角度で突き当たる。前方延出部がテーパ面に突き当てられた状態で、手指等で比重針を保持しながら検体を滴下させることにより、検体滴下時における比重針の傾斜角度が常に一定となるように規定することができる。したがって、検体を決められた位置へ正確に滴下することができる。
【0022】
本発明の比重針固定台は、前記前方延出部の先端部に、前記比重針の針基に対応した形状を有し、該針基と嵌合することにより前記比重針の軸を中心とする回転を規制する針基支持部が設けられていることを特徴とする。
【0023】
上記の発明では、比重針を比重針載置部に載置した際に、比重針の針基がその形状に対応した形状に嵌合することにより、比重針載置部に対して常に一定の配置で比重針を載置することができる。また、比重針の軸を中心とする回転が規制されるので、比重針の針先の、針先方向から見た軸径方向の配置が常に所定の同一位置となり、常に一定条件にて検体を滴下することができる。
【0024】
本発明の比重針固定台は、前記基台と着脱可能に設けられ、前記基台から取り外した際に前記検体滴下部の上方を開放する保守用部材を備えることを特徴とする。
上記の発明では、基台と着脱可能に設けられた保守用部材を取り外すことによって、検体滴下部の上方が開放される。前述したように、ヘモグロビン測定装置本体の検体滴下部周辺に設けられた樹脂製滴下カバーが検体等で汚染されると、検体の滴下を光学的な手段等により検出するセンサが誤動作することがあり、定期的に滴下カバーを保守点検する必要がある。この際、保守点検時には基台ごと取り外すことを要せず、保守用部材だけを基台から取り外して滴下カバー等の検体滴下部周辺の点検、清掃を行い、保守点検後には保守用部材を基台に再度装着すればよく、検体滴下部周辺の清掃を容易に行うことができる。
【0025】
本発明のヘモグロビン測定装置は、上記した比重針固定台を備えている。
【発明の効果】
【0026】
本発明の比重針固定台およびヘモグロビン測定装置によれば、比重針の比重針固定台への載置操作から検体滴下操作までの作業を効率良く行うことができる。
本発明の比重針固定台およびヘモグロビン測定装置によれば、その製作および調整を容易に行うことができる。
【0027】
本発明の比重針固定台およびヘモグロビン測定装置によれば、比重針への取り扱いが容易であり、検体の誤滴下を充分に防止することができる。
本発明の比重針固定台およびヘモグロビン測定装置によれば、検体を一定条件で正確に滴下することができる。
【0028】
本発明の比重針固定台およびヘモグロビン測定装置によれば、検体滴下部の保守作業が容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、図面を参照しながら本発明を説明する。図1は、本発明の比重針固定台の実施形態を示した斜視図、図2は、この比重針固定台に比重針を載置した状態を示した斜視図、図3は、この比重針固定台の図2とは逆側から見た一部分解斜視図、図4は、この比重針固定台の分解斜視図である。
【0030】
図1に示したように、本実施形態の比重針固定台1では、基台2に比重針ガイド部3が固定され、検体滴下部の方向へ前方に延出する前方延出部4と、検体滴下部とは逆方向へ後方に延出する後方延出部8とが、この比重針ガイド部3に対して軸体17を介して取り付けられている。図2に示したように、検体を収容した比重針31は、これらの前方延出部4および後方延出部8からなる比重針載置部に載置される。
【0031】
前方延出部4は、軸体17を介して比重針ガイド部3に下方へ回転自在に取り付けられており、図3および図4に示したねじりコイルばね19の弾性力によって常時は基台2と略平行に支持されている。即ち、前方延出部4は、ねじりコイルばね19の弾性力に抗して押し下げることにより下方へ回転させることができ、下方への押圧力を解除すれば、ねじりコイルばね19の弾性力によって元の平行位置に戻るようになっている。前方延出部4の先端部には、比重針31を載置した際にその針基31bを支持する針基支持部5が設けられている。
【0032】
図1の後方延出部8は、比重針ガイド部3の側面部に対して一方の軸体止め輪18(図4)で押さえられた状態で、軸体17を介して、比重針ガイド部3に対して半固定状態で回動可能に取り付けられている。比重針ガイド部3の側面部には、基台2と略平行な段差を有する図4の段差部24が形成され、後方延出部8は、その下部側が段差部24に当接することにより基台2と略平行に支持される。
【0033】
図2に示したように、比重針31は、針基支持部5でその針基31bが支持され、後方延出部8の後端側に形成されたチューブ支持部8aでチューブ31cが支持された状態で載置される。これらの2箇所で比重針を支持しているので、チューブ31cに加重が掛かることが無く、例えばチューブが湾曲している場合であっても載置操作時における検体の誤滴下を防止することができる。
【0034】
また、前方延出部4は、図3のねじりコイルばね19の弾性力で基台2と略平行に保たれているので、比重針31を手指で把持して載置する際に、比重針31の形状に応じて前方延出部4がねじりコイルばね19の弾性力に抗して適宜に回転移動し、これによって比重針31の変形を吸収しながら前方延出部4に対して所定配置で比重針31を固定することができる。
【0035】
前方延出部4の先端部に設けられた針基支持部5には、比重針31の針基31bの断面形状である略十字形状に対応した凹形状が形成されている。即ち、針基31bの断面下半分の下方突出部および一対の側方突出部が形成された部分に対応する略T字状の被嵌合部が形成されており、この被嵌合部に針基31bを嵌め合わせることにより、比重針載置部に対して常に一定の配置で比重針31が載置される。また、比重針31の軸を中心とする回転が規制されるので、比重針31の針先31aの、針先方向から見た軸径方向の配置が常に所定の同一位置となるように固定される。これによって、常に一定条件にて検体を滴下することができる。
【0036】
検体を収容した図2の比重針31を比重針載置部に手指で載置した後、手指を離さずにそのまま比重針31を前方延出部4と共に押し下げ、軸体17を回転軸としてその針先31aが下方へ向かうように回転させることにより、比重針31から検体を滴下させる。具体的には、比重針31の針基31bの近傍を指で下方に押し下げ、前方延出部4の下部側が比重針ガイド部3に形成された図3のテーパ面22に突き当たるまで回転させることにより、検体を針先31aから検体滴下孔12を介してその下方の検体滴下部(図示せず)に滴下する。
【0037】
この検体滴下時における比重針31の傾斜角度を規定するテーパ面22が基台2に対して成す角度は、好ましくは15〜30度である。
検体を収容した比重針31を前方延出部4と共に押し下げた際に、前方延出部4を構成する前方延出部材6(図4)は、比重針ガイド部に設けられた被嵌合部(嵌合溝23)に嵌合し、これにより回転する比重針31の横方向への動きを規制するようにしている。嵌合溝23の横幅は、これに嵌合する前方延出部材6の横幅と略同一となるように形成され、嵌合時には前方延出部材6が嵌合溝23の側面に対して摺動しながら嵌入するようになっている。
【0038】
このように、検体滴下時における比重針31の回転角度を上記のテーパ面22で規定するとともに、嵌合溝23で比重針31の横ぶれを規制しているので、検体を決められた位置へ正確に滴下することができる。
【0039】
以下、図4の分解斜視図により本実施形態の比重針固定台1の構成を詳述する。比重針ガイド部3は、第1の上側ガイド部材3a、第2の上側ガイド部材3bおよび下側ガイド部材3cからなり、下側ガイド部材3cは取り付けねじ27で基台2に取り付けられ、その前部には回転時に前方延出部材6に嵌合される嵌合溝23が形成されている。
【0040】
第1の上側ガイド部材3aと、下側ガイド部材3cとは、取り付けねじ28で互いに固定される。第1の上側ガイド部材3aには、回転時に前方延出部材6に当接する図3のテーパ面22と、ねじりコイルばね19が係止される係止部21が形成されている。
【0041】
第1の上側ガイド部材3aと、第2の上側ガイド部材3bとは、取り付けねじ26で互いに固定される。第2の上側ガイド部材3bには、後方延出部材9を支持する段差部24が形成されている。
【0042】
前方延出部4は、前方延出部材6と針基支持部材7とからなり、これらは取り付けねじ25で互いに固定される。前方延出部材6の後端側は、軸体17を介して第1の上側ガイド部材3aと第2の上側ガイド部材3bに取り付けられる。
【0043】
後方延出部8を構成する後方延出部材9の材質には、金属等を使用することができ、その後端側には比重針31のチューブ31cを支持するためのチューブ支持部8aが、例え
ば金属部材を屈曲させることにより形成されている。
【0044】
基台2の四方の角部近傍には、比重針固定台1を後述するヘモグロビン測定装置本体へねじで取り付けるための取り付け孔16が形成されている。基台2の前方には、ヘモグロビン測定装置本体に設けられた図7の滴下カバー42の保守点検を容易とするために、保守用部材11が基台2に対して着脱可能に設けられている。13は、保守用部材11をねじで固定するための保守用部材固定孔である。なお本実施形態では、基台2、前方延出部4の構成部材、比重針ガイド部3の構成部材、保守用部材11等は、樹脂材で形成したものを使用している。
【0045】
図5および図6は、本発明のヘモグロビン測定装置の実施形態を示した斜視図、図7は検体滴下部周辺の構成を示した図(図6のA部を拡大した図)である。図5および図6に示したヘモグロビン測定装置51は、上述した比重針固定台1を装置本体に取り付けて構成されている。
【0046】
ヘモグロビン測定装置51の前部の挿入孔から、長手方向に等間隔で複数のウェルが設けられた長尺の検体板53が挿入される。検体板53は、その幅方向の一端側の側端部に沿って形成されたラック歯が、装置51に設けられた移送用のピニオンに噛合され、他端側の側端部が装置51に設けられたガイド部に案内された状態で、ステッピングモータを駆動源とする駆動機構でこのピニオンを回転させることにより、装置51の手前側と、奥側のヘモグロビン測定部との間を移送される。
【0047】
このヘモグロビン測定装置51による検体の測定は次のように行われる。最初に、検体が均一に拡散するように白布が設置された空のウェルがヘモグロビン測定部に配置されるように検体板53を移送し、検体を滴下されていない空のウェルを測定する。なお、検体板53のラック歯が形成された側とは逆側の側端部には、所定間隔を置いて切り欠き部が形成されており、この切り欠き部のエッジによる光反射の変調を位置検出用センサにより光学的に検出することによってウェルがヘモグロビン測定部に配置されたことを検出する。
【0048】
次いで、このウェルが図5の検体滴下孔12の直下の位置の検体滴下部に配置されるように検体板53を移送し、比重針固定台1に載置された比重針31から検体滴下孔12を通してウェルへ検体を滴下する。なお、上記と同様に、検体板53の側端部に形成された切り欠き部のエッジによる光反射の変調を、別途の位置検出用センサで光学的に検出することによりウェルの中心部が検体滴下部の中心部に位置したことを検出する。
【0049】
また、比重針31から滴下された検体は、検体滴下孔12を通過し、アクリル樹脂等の透明な材質で形成された図7の滴下カバー42を通過するが、この際、検体が滴下カバー42を通過したことを、検体滴下検出センサ41が光学的に検出する。
【0050】
検体滴下検出センサ41によりウェルへの検体滴下が検出されると、このウェルが再びヘモグロビン測定部に配置されるように検体板53が移送され、検体に測定光を照射してそのヘモグロビン濃度を吸光度法により測定する。測定結果(ヘモグロビン濃度:g/l)は図5の表示部52に表示される。
【0051】
これらの一連の操作(空のウェルの測定、検体滴下、検体測定)は、検体板53に設けられた各ウェルについても同様に行われる。測定開始等は押しボタンにより指示できるようになっており、検体番号、測定数、および測定準備中、測定中等の表示が表示部52に表示されるようになっている。
【0052】
図7の検体滴下検出センサ41は、滴下カバー42が検体等で汚染されると誤検出するおそれがあるため、これによる誤動作を防止するために、定期的に滴下カバー42を点検し、必要に応じて清掃する必要がある。本実施形態では、図1〜図4にも示したように、検体滴下部の上方となる位置に、比重針固定台1の基台2に対して着脱可能な保守用部材11を設け、滴下カバー42の保守点検時には保守用部材11を基台2から取り外すことによって簡便に検体滴下部の上方を開放し、滴下カバー42の保守点検を容易に行えるようにしている。
【0053】
本実施形態では、図4の分解斜視図に示したように、基台2における保守用部材11の装着部位の内側周縁に沿って形成された凸条の突出部15を、保守用部材11の外側周縁に沿って形成された凹条の溝部14に嵌め合せることによって、保守用部材11を基台2に対して装着するようにしている。図6に示したように、保守点検時には保守用部材11を基台2から取り外して滴下カバー42の点検、清掃を行い、保守点検後には図4の突出部15を溝部14に嵌め合せることによって保守用部材11を基台2に再び装着すればよく、容易に保守点検が行えるようになっている。
【0054】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されることはなく、その要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形、変更が可能である。例えば、針基支持部5の被嵌合部の形状は、載置する比重針31の針基31bの形状に応じて、比重針31の軸を中心とする回転が規制される形状であれば他の形状であってもよい。
【0055】
比重針固定台1を構成する各部材は、場合に応じて適宜の材質で構成することができる。
前方延出部4を支持する弾性部材は、ねじりコイルばね19以外のものであってもよい。
【0056】
保守用部材11と基台2との装着構造は、例えば基台2に被嵌合凹部を設け、保守用部材11に嵌合凸部を設けたものであってもよく、着脱が容易な構造であればその他の装着構造であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の比重針固定台の実施形態を示した斜視図である。
【図2】図1の比重針固定台に比重針を載置した状態を示した斜視図である。
【図3】図2の比重針を載置した状態を示した比重針固定台を、図2とは逆側から見た一部分解斜視図である。
【図4】図1の比重針固定台の分解斜視図である。
【図5】本発明のヘモグロビン測定装置の実施形態を示した斜視図である。
【図6】本発明のヘモグロビン測定装置の実施形態を示した図6と同様な斜視図であり、保守用部材を取り外した状態を示す。
【図7】検体滴下部周辺の構成を示した図(図6のA部を拡大した図)である。
【符号の説明】
【0058】
1 比重針固定台
2 基台
3 比重針ガイド部
3a 第1の上側ガイド部材
3b 第2の上側ガイド部材
3c 下側ガイド部材
4 前方延出部
5 針基支持部
6 前方延出部材
7 針基支持部材
8 後方延出部
8a チューブ支持部
9 後方延出部材
11 保守用部材
12 検体滴下孔
13 保守用部材固定孔
14 溝部
15 突出部
16 取り付け孔
17 軸体
18 軸体止め輪
19 ねじりコイルばね
21 係止部
22 テーパ面
23 嵌合溝
24 段差部
25 取り付けねじ
26 取り付けねじ
27 取り付けねじ
28 取り付けねじ
31 比重針
31a 針先
31b 針基
31c チューブ
41 検体滴下検出センサ
42 滴下カバー
51 ヘモグロビン測定装置
52 表示部
53 検体板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台と、
前記基台に固定された比重針ガイド部と、
前記比重針ガイド部に軸体を介して回転自在に取り付けられ、前記比重針ガイド部から検体滴下部の方向へ前方に延出する前方延出部が設けられた比重針載置部とを備え、
検体を収容した比重針を前記比重針載置部に載置し、前記比重針を、前記前方延出部と共に、前記軸体を回転軸としてその針先が下方へ向かうように回転させることにより、前記比重針から前記検体を滴下させるようにしたことを特徴とする比重針固定台。
【請求項2】
前記比重針載置部に、前記比重針ガイド部から前記検体滴下部とは逆方向へ後方に延出し、前記比重針を載置した際にその後部側を支持する後方延出部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の比重針固定台。
【請求項3】
前記比重針載置部の前記前方延出部を前記基台と略平行に支持し、前記前方延出部を下方へ回転させた際に、回転方向とは逆方向へ弾性力を作用する弾性部材が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の比重針固定台。
【請求項4】
前記比重針ガイド部に、前記比重針載置部の前記前方延出部を下方へ回転させた際に、該前方延出部に嵌合される被嵌合部が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の比重針固定台。
【請求項5】
前記比重針ガイド部に、前記比重針載置部の前記前方延出部を下方へ回転させて該前方延出部が所定角度まで傾斜した際に該前方延出部に当接し、検体滴下時における前記比重針の傾斜角度を規定するテーパ面が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の比重針固定台。
【請求項6】
前記前方延出部の先端部に、前記比重針の針基に対応した形状を有し、該針基と嵌合することにより前記比重針の軸を中心とする回転を規制する針基支持部が設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の比重針固定台。
【請求項7】
前記基台と着脱可能に設けられ、前記基台から取り外した際に前記検体滴下部の上方を開放する保守用部材を備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の比重針固定台。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の比重針固定台を備えることを特徴とするヘモグロビン測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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