説明

毛羽検査装置

【目的】 織布の毛羽を織布の走行速度に拘らず、しかも異なる品種が連続的に流れる工程においても品種毎にオンラインで検査できる毛羽検査装置を提供する。
【構成】 CCDカメラ3からの電気信号のレベルを利得可変増幅器7により織布4の走行速度に応じて変化させてから、分別器9で毛羽検出出力を取り出すようにしたので、織布4の速度が変化しても毛羽検査を正確に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は走行する織布の毛羽をオンラインで検査する毛羽検査装置に関する。
【0002】
【従来の技術】ガラス繊維や炭素繊維や合成繊維等を用いた織布の製造工程ではヤーンが接触している部品により擦られ単糸が切れること等によって織布の表面に毛羽ができやすい。
【0003】また、原糸の製造工程において、紡糸時や撚糸時に既に毛羽が発生していることも織布の毛羽の原因である。
【0004】特にガラス繊維は折れ易く毛羽ができやすいため、これまでバインダーやサイジング剤等の改良、製織工程の条件改良等がなされてきている。
【0005】一方、ガラス織布が絶縁補強基材として用いられているプリント配線板の製造工程でプリプレグと銅箔を積層する際に毛羽などによってできたプリプレグ表面の突起が銅箔を傷つけ正常な回路形成ができない等のトラブルの原因となっており、プリント配線板の高密度化が進むに従ってさらに改良が求められている。
【0006】しかし、これまでガラス織布の毛羽は細く小さいため目視では走行するガラス織布の毛羽を検査することが困難であり、検査工程で停止して検査せざるを得ずガラス織布の全長にわたって検査することは不可能であった。
【0007】従って、バインダーやサイジング剤等の改良や製織工程の条件改良等をおこなってもその効果を定量的に確認できず、十分な検討ができなかった。
【0008】通常、ガラス織布の毛羽の発生状態は全幅にわたって集中発生する場合と、織布の幅方向の右サイドまたは左サイドに連続して集中発生する場合と、幅方向または長さ方向に筋状に連続発生する場合と、全体的にランダムに発生する場合とに分けられる。
【0009】工程品質管理や製品品質保証を行うためにはこれらの毛羽発生状態を適確につかむ必要がある。
【0010】従来の毛羽検査技術では、直径が10μm以下で長さが10mm以下の毛羽の発生状態を検査することが困難であった。
【0011】最近、特開昭62−108136号公報において、特開昭58−214577号公報および特開昭58−76571号公報に開示されたレーザーによる毛羽検出方法と特公昭53−37950号公報に開示された織物の欠点の検出方法とを組み合せた織物の毛羽検出方法および装置が開示されている。
【0012】この方法ではレーザー光源の前に設けたレンズでレーザー光を平行に広げ毛羽のみを照射する方法が記載されているが、レーザー光を広げるとレーザーの照射強度が低下し毛羽からの散乱光の強度が低下するので、検出し難くなるという問題がある。
【0013】さらに、織布を直接照射しない範囲で毛羽のみを照射する位置で照射することが記載されているが、織布が振動し難いロール上でも通常はロール自身が振動しているので、織布を照射しないためには織布表面から離して照射する必要がある。従って、短い毛羽にはレーザー光が照射されないことになり、短い毛羽は検出できない。しかも、通常、織布表面の毛羽は織布に垂直に立っていることは少なく、ほとんどが傾いているので、織布表面に沿って傾いている毛羽は長い毛羽であっても検出できないと言う問題がある。
【0014】また、この方法ではガラス織布が走行している場合には走行速度によって毛羽がレーザー光を散乱している時間が変わることによりCCDカメラの受光量が変わり、従って、CCDカメラからの電気信号のレベルが変化し、正常な検査結果が得られない。
【0015】通常、製織工程では織機での製織速度が数10m/hrと遅いので、織機の台数が多く、織機上で検査するためには織機の台数分だけ検査装置が必要になり、現実的ではない。そこで、少ない台数の検査装置で全数検査するためには、織布のバインダーやサイジング剤を除去するヒートクリーニング工程や織布にシランカップリング剤等の表面処理をする仕上げ工程で検査することが望ましい。
【0016】通常、ヒートクリーニング工程や仕上げ工程では織布の走行速度は30m/min以上でロール状に巻かれた織布が連続的に処理されている。また、織布の走行速度は品種毎に異なっているのが普通である。
【0017】このような工程では織布の走行速度によって検査結果が変化するとロール間の比較等定量的な検査ができないことになる。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】このように、従来の技術では、走行する織布の毛羽本数およびその位置や毛羽発生状態をオンラインで検査することは困難であった。
【0019】そこで、本発明の目的は、走行する織布、特に30m/min以上のスピードで走行する織布の毛羽を織布の走行速度に拘らず、しかも異なる品種が連続的に流れる工程においても品種毎にオンラインで検査できる毛羽検査装置を提供することにある。
【0020】
【課題を解決するための手段】かかる問題点を解決するために、本発明は、走行する織布の表面上を織布の幅方向とほぼ平行に光ビームを照射する投光器と、前記光ビームが前記織布の表面の毛羽によって散乱されて得られる散乱光を受光して電気信号に変換するCCDカメラと、該CCDカメラからの電気信号を前記織布の走行速度に従って変化する利得で増幅する利得可変増幅器と、該利得可変増幅器により増幅された電気信号のうち所定レベル以上の信号を分別して毛羽検出出力を取り出す分別器とを具備したことを特徴とする。
【0021】
【作用】本発明によれば、CCDカメラからの電気信号のレベルを利得可変増幅器によって織布の走行速度に応じて変化させることにより、織布の走行速度が変化してもそれに応じて毛羽検査結果が変化しないので、正常に検査できるようになり、従って品種毎に走行速度が変化する工程においても織布の毛羽本数およびその位置や毛羽発生状態をオンラインで検査できる。
【0022】
【実施例】以下、図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。
【0023】図2および図3は図1の実施例における投光器およびCCDカメラの配置例を示す図である。
【0024】図1は本発明毛羽検査装置の一実施例を示すブロック図である。
【0025】ここで、1は投光器、2は投光器1からの出力ビーム、3は受光器としてのCCDカメラ、4はガラス織布、5は毛羽、6はガラス織布4を案内するロール、7はCCDカメラ3からの毛羽検出出力を受ける利得可変増幅器、8は増幅器7の出力をA/D変換するA/D変換器、9はA/D変換器8からのデジタル出力のうちあるしきい値以上のレベルの信号を毛羽検出出力として取り出す分別器、10は分別器9の出力に対して1次演算を施す1次演算器、11は1次演算器10の出力に対して2次演算を施す2次演算器、12は2次演算器11の出力を表示する表示器、13は2次演算器11の出力を印刷する印刷器、14はロール6の回転に応じてパルスを発生し、ガラス織布4の継目、すなわち最初の位置からの長さをパルスの個数の形態で出力するパルス発振形のロータリーエンコーダによる測長器、15は測長器14からの出力パルスの時間隔に応じてガラス織布4の速度を測定する速度変換器、16は継目検知器であり、ガラス織布4の最初の位置を示す継目を検出する。測長器14としてのエンコーダはロール6と協力して回動し、継目検知器16からのスタート出力により起動されてロール6の回転に応じてパルスを発生し、ガラス織布4の継目、すなわち最初の位置からの長さをパルスの個数の形態で出力する。利得可変増幅器7の利得を、速度変換器15からの織布4の走行速度を示す信号により変化させる。
【0026】異なる品種の織布がつながれて連続して高速で走行する工程においては、各々ロール状に巻かれた品種の交換毎に、例えば2000m長毎に検査の開始および停止を行う必要がある。このような異なる品種の継目を継目検知器16によって検知し、自動的に検査の停止および開始を行うと共に予め登録した品種名に変更することができる。
【0027】継目検知器16としては、投光器および受光器からなる光電センサーを用いることができ、透過形、反射形のいずれでもよい。
【0028】レーザー光は指向性が高く強い散乱光が得られ易いので、投光器1としてレーザー光源を用いるのが好ましい。かかるレーザーとしては半導体レーザー、He−Neレーザー等が用いられる。これらのレーザービーム2の光径としては、毛羽の直径より10倍以上大きな光径のものが毛羽によってレーザー光が遮蔽されにくく好ましい。レーザーの出力としては高ければ高い程毛羽によって散乱される散乱光が強くなり、CCDカメラの受光量が増すので検出しやすくなり好ましい。走行する直径が10μm以下の細い毛羽を検出するためには5mw以上が好ましい。
【0029】図2および図3に示すように、投光器1は、そのレーザービーム2の照射位置、すなわち検査位置が、織布4が振動しにくいロール6の最上部の上方にくるようにするのが検出精度の点から好ましい。すなわち、織布4がレーザービーム2の光径より大きく振動すると、毛羽5がレーザー光2で照射されなくなり、検出できなくなるから好ましくない。
【0030】しかし、通常の工程では、ロール6自体も0.1mmから0.2mm程度振動しており、ロール6が振動しないような理想的な工程を実現することは困難である。そこで、ロール6が振動しても短い毛羽や織布表面に沿って傾いている毛羽も検出できるようにレーザー光2を織布4にも照射することが好ましい。すなわち、これによれば、レーザービーム2の光径の範囲内でロール6が振動しても毛羽5を照射することができるので、振動の影響に拘らずに検出できる。
【0031】従って、レーザー光2は織布4の幅方向に対して厳密に平行ではなく、使用するレーザー光源1からのレーザー光2の広がり角度の範囲内でほぼ平行に照射するものとする。
【0032】また、織布4の表面の毛羽5の傾き方によってレーザー光2の散乱のされ方が異なる。そこで、織布の片側から照射するよりは、図3に示すように、織布4の両側にレーザー光源1を設けて両側から照射する方が、毛羽の形態(毛羽の傾き)の影響を受けにくいので、好ましい。
【0033】CCDカメラ3の位置としては、図2に示すように、レーザービーム2に平行な位置でロール6上方の測定部の位置で引いた接線に対してθ=−5°から195°の位置が好ましく、θ=−5°から70°およびθ=140°から195°の位置がさらに好ましい。すなわち、θ=−5°から195°の範囲からはずれると毛羽5によって散乱されたレーザー光がCCDカメラ3に入り難くなる。また、θ=70°から140°の範囲の位置では、毛羽5による散乱以外に織布4の表面からの散乱光がCCDカメラ3に入りやすくなる。
【0034】CCDカメラ3としては、ラインセンサーカメラやエリアセンサーカメラを用いることができるが、連続して走行する織布を検査するためにはラインセンサーカメラが好ましい。
【0035】すなわち、エリアーセンサーカメラでは画像処理によって毛羽の形態(長さ、太さ、傾き等)を検査するのには適しているが、連続して走行する織布では毛羽の個数が膨大であり、画像処理する時間がかかりすぎてオンラインで検査するには現実的でない。
【0036】エリアーセンサーカメラに比べてラインセンサーカメラは同じ画素当りの分解能でカメラ1台当りの視野を広く設定でき、少ない台数で検査できる。
【0037】CCDカメラ3のセンサーの画素数およびCCDカメラ3の台数は検査する毛羽のサイズと必要な画素当りの分解能によって通常は決められる。
【0038】しかし、織布表面上の毛羽の形態は様々であり、その形態によってレーザーの散乱のされ方は異なる。例えば、織布表面に垂直に立っている毛羽はほとんどなく、通常は傾いており、その傾き方によってレーザー光の散乱のされ方が変化するため、毛羽の長さの正確な測定は困難である。
【0039】さらに、毛羽の長さがカメラの画素当りの分解能以上であった場合、同一の毛羽を複数の画素で検出することになり、毛羽の本数を正確に知ることはできない。
【0040】本発明実施例では、織布の経糸のピッチが0.4mmから1mmであることから、経糸上に連続している毛羽を検出することができるように、画素当りの分解能を0.4mmより小さくなるように設定した。
【0041】例えば、2048画素のラインセンサーカメラを用いた場合は、2台で1500mm幅の織布の全幅を検査することができる。
【0042】毛羽の本数は、画素毎の検出結果を演算することで求めることもできるが、上記のような問題があることや、データ量が膨大になるために高速で走行する工程でオンラインで検出することが困難であることから、毛羽発生パターンを明確に捉えられるように、次のような2段階の処理方式を採用した。
【0043】まず、1次演算器10に分別器9からの毛羽検出出力と、測長器14からの測長パルスと、継目検出器16からの継目検出出力とを供給し、継目出力上りスタートとして、織布4の幅をm分割して予め設定した幅方向の単位毎に毛羽の有無を判定し、その判定処理を長さ方向の単位にわたって繰り返して、その長さ方向の単位毎に全幅での毛羽の個数とその幅方向の位置を演算する。
【0044】次に、1次演算器10からの出力を2次演算器11に供給し、ここで、織布4の幅をn分割(n>m)して得た検査幅毎に長さ方向の設定間隔毎の毛羽の集計値を積算すると共に、長さ方向および幅方向のそれぞれにおいて、設定個数以上に連続した毛羽の個数を演算する。
【0045】このようにして、本実施例では、毛羽本数による毛羽レベルの比較のみでなく、毛羽集中発生部や長さ方向や幅方向に連続して発生した筋状毛羽等の毛羽発生パターンやその位置をも捉えることができる。
【0046】なお、演算する前に、CCDカメラ3からの電気信号の大きさを、利得可変増幅器7により速度変換器15で計測した織布の走行速度に従って変化させてからA/D変換器8でデジタル信号に変換し、所定のしきい値以上のレベルの信号を分別器9で分別して取り出し、この分別された信号に基づいて演算器10および11で上述した演算を行う。
【0047】なお、図1の実施例はディスクリートな回路を用いているが、このようにする代わりに、部分9,10,11をマイクロプロセッサで構成し、そのCPUを所定のプログラムで制御することにより上述した演算処理を行うようにしてもよいこと勿論である。
【0048】図4に、織布の走行速度が30m/min以上での検査結果の一例を示す。図4において縦軸はm当たりの平均毛羽検出数、横軸はガラス織布の走行速度である。ここで、破線は利得可変増幅器を備えた本発明の装置での検査結果を示したものであり、実線は利得可変増幅器を使用しない従来例での検査結果である。
【0049】図4からわかるように、本発明実施例の装置では毛羽検出数が織布の走行速度によって変化することなく検査できている。
【0050】さらに、毛羽の分布状態を表示器12で検査しながらオンラインで表示させることができると共に、印刷器13で検査結果をn分割した検査幅毎に予め設定した間隔毎の集計値をオンラインで印刷することができ、ロール単位の集計値も印刷することができる。
【0051】本発明実施例の毛羽検査装置で60m/minで走行する織布をオンラインで検査した結果の一例を図5に示す。
【0052】図5において、縦軸は織布の走行速度が60m/minでのm当りの平均毛羽検出数、横軸はガラス織布の品種である。このガラス織布の検査幅を3分割した場合の左,中および右の各ゾーンでの平均検出数および全幅での平均検出数を各品種毎に示した。ここで、Aは全面にわたって毛羽がある欠陥品、Bは片側に毛羽がある欠陥品、Cは正常品、Dは連続毛羽のある欠陥品である。図5によれば、品種間の差および毛羽発生状態が明確に出ている。
【0053】
【発明の効果】本発明によれば、CCDカメラからの電気信号のレベルを利得可変増幅器によって織布の走行速度に応じて変化させることにより、織布の走行速度が変化してもそれに応じて毛羽検査結果が変化しないので、正常に検査でき、その結果、走行する織布の毛羽本数およびその位置や毛羽発生状態をオンラインで検査でき、工程品質管理や製品品質保証等に活用できる効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による織布の毛羽検査装置の1実施例を示すブロック図である。
【図2】本発明実施例における投光器および受光器の配置の1例を示す図である。
【図3】本発明実施例における投光器および受光器の配置の1例を示す図である。
【図4】本発明による織布の走行速度に対する補正効果の一例を示す図である。
【図5】4品種の毛羽検査結果をまとめて示す図である。
【符号の説明】
1 投光器
2 レーザービーム
3 CCDカメラ
4 ガラス織布
5 毛羽
6 ロール
7 利得可変増幅器
8 A/D変換器
9 分別器
10 1次演算器
11 2次演算器
12 表示器
13 印刷器
14 測長器
15 速度変換器
16 継目検知器

【特許請求の範囲】
【請求項1】 走行する織布の表面上を織布の幅方向とほぼ平行に光ビームを照射する投光器と、前記光ビームが前記織布の表面の毛羽によって散乱されて得られる散乱光を受光して電気信号に変換するCCDカメラと、該CCDカメラからの電気信号を前記織布の走行速度に従って変化する利得で増幅する利得可変増幅器と、該利得可変増幅器により増幅された電気信号のうち所定レベル以上の信号を分別して毛羽検出出力を取り出す分別器とを具備したことを特徴とする毛羽検査装置。

【図2】
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【図3】
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【図1】
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【図4】
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【図5】
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