説明

毛髪の成長を刺激するための頭皮光治療装置

本発明は、頭皮上の毛髪の成長を刺激するための携帯用毛髪治療装置を提供しており、この装置は、ハンドル部分およびヘッド部分を含むハウジングと、ヘッド部分に固着された近位端部、ヘッド部分から延びる長手方向の長さ、および先端セクション内で終端する遠位端部を各々が有する、複数の中空の尖部と、ハウジング内に配設され、光を出力するように構成された光源と、光を、光源から尖部を通すようにかつ光誘導手段の軸に沿って通すための光誘導手段と、尖部の遠位端部に位置する光学装置とを備え、光学装置が、これらに入射した光を、全体的な光誘導手段の軸に対して横方向に向きを変えるように構成されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭皮治療装置に関し、より詳細には、光を使用して毛髪の成長を刺激する携帯用頭皮治療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光によるバイオ刺激は、頭皮に刺激をもたらすための方法として認識されており、この方法は、毛髪の自然成長を刺激することに関して有益かつ治療的な効果を有する。たとえば、低レベルのレーザー光は、頭皮上の毛包上に放射されたとき、頭皮の生理学的状態を高め、毛髪の成長を促すと考えられている。発光ダイオード(LED)などの非コヒーレント光源もまた、この文脈で説明されてきている。
【0003】
低レベルレーザーおよびLEDなどの光源のバイオ刺激効果を、好都合な可搬式の形式で有効利用するためにいくつかの携帯用装置が設計されてきている。
【0004】
国際公開第01/60457号は、携帯型の、くし様の装置を説明しており、この装置は、毛髪を分けるための2本の平行な歯列の間の中心に置かれた列内のレーザーダイオードセットからレーザー光線を放射する。くし歯によって毛髪を分けることは、単一のレーザー光線または複数のレーザー光線と治療される頭皮との間の接触を向上させるといわれている。
【0005】
国際公開第02/102228号は、段階式光線分割反射体をさらに含む類似の装置を記載しており、段階式光線分割反射体は、1本または複数本のレーザー光線を分割して1本のレーザーが個人の頭皮のあるセグメントにわたって分配される複数のレーザー光線を同時にもたらすことを可能にする。光線分割反射体は、レーザー源と機械的に整合され、レーザー光線が光線分割反射体の頂点を通り過ぎるにつれてレーザー光線の一部分を機械的に屈折させるジグザグ構造を有する。レーザー光線の一部分は、ユーザーの頭皮に向かって投射する反射されたレーザー光線のラインを形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第01/60457号
【特許文献2】国際公開第02/102228号
【特許文献3】米国特許第5,303,722号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
使用時、国際公開第01/60457号および国際公開第02/102228号で記載された装置は、平行な光線の狭いストリップをくしハウジングから頭皮上に放射する。これは、小さい別個の光線スポットの狭いストリップを治療下の表面上に作り出す。頭皮照射のこのパターンに関連する問題は、頭皮に施与されたときの光線スポットのサイズおよび間隔により、治療下の表面内に存在する毛包のある割合が、不適切に照射されるまたは全く放射されないことがあることである。この割合は、毛包の密度が高いところの領域に特に重要となり得る。対象の領域にわたって装置を繰り返し通過させることは満足のいく解決策ではなく、その理由は、頭皮の赤み、乾燥および剥離などのより有害な状態がレーザー治療の恩恵を上回るより先にヒトの頭皮に施与され得るレーザー出力の量に対する総量限度が存在するからである。
【0008】
本発明の目的は、光を使用して毛髪の成長を刺激する携帯用頭皮治療装置から送出された頭皮照射のパターンを改良させることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、光を複数の中空の尖部(tine)を通すように通し、その光を尖部の端部から治療される頭皮の表面上に外向きに広げる構成を用いることによって不均一または不適切な頭皮の照射の問題を解決する。
【0010】
米国特許第5,303,722号明細書は、複数のくし歯と、光を光源からくしを通ってくし歯内に戻るように誘導するための装置と、光をくし歯から放射するための装置とを含む光くしを記載している。しかしながら、米国特許第5,303,722号明細書の装置の目的は、くし歯の間に位置する毛髪を選択的に照射して漂白することであり、頭皮ではない。くし歯の先端部内では、光を、頭皮から離れてくし歯の間の中間空間に入るように誘導するために、凹面鏡が使用される。
【0011】
本発明は、頭皮上の毛髪の成長を刺激するための携帯用毛髪治療装置を提供しており、この装置は、
ハンドル部分およびヘッド部分を含むハウジングと、
ヘッド部分に固着された近位端部、ヘッド部分から延びる長手方向の長さ、および先端セクション内で終端する遠位端部を各々が有する、複数の中空の尖部と、
ハウジング内に配設され、光を出力するように構成された光源と、
光を、光源から尖部を通すようにかつ光誘導手段の軸に沿って通すための光誘導手段と、
尖部の遠位端部に位置する光学装置とを備え、
光学装置が、これらに入射した光を、全体的な光ガイド手段の軸に対して横方向に向きを変えるように構成されることを特徴とする。
【0012】
ハンドル部分は、ユーザーによる装置の把持を容易にする任意の構造でよい。たとえば、ハンドル部分は、ハウジングの細長いセクションによって形成されてもよく、あるいは代替的に、装置がユーザーの手によって保持され得るようにハウジング上に設けられたストラップであってもよい。
【0013】
中空の尖部は、毛髪を分けるように働いて、光を頭皮の表面に到達させることができる。尖部はまた、光が、光誘導手段によって通される構造も提供する。尖部の長手方向の長さは、尖部がこれらの機能を実施できるようにする任意の材料から形成されてもよい。好ましくは、尖部の長手方向の長さは、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリカーボネイト、ポリ塩化ビニル、または類似の特性を有する他の材料などのほぼ剛性の材料から形成される。
【0014】
個々の尖部は、0.5から5cmの範囲の、好ましくは約1から2cmの長手方向の長さを有してもよい。
【0015】
個々の尖部は、0.5から5mmの範囲の、好ましくは約1から2mmの直径を有してもよい。
【0016】
特に好ましい実施形態では、尖部の先端セクションは、(熱可塑性エラストマー、ゴムまたは類似の特性を有する他の材料など)の軟質で可撓性の材料から形成される。これは、ユーザーの毛髪を梳かす、またはユーザーの頭皮をマッサージする際に心地よい感触を与える。この目的のため、尖部の先端セクションの端部を丸めることが好ましい。
【0017】
尖部は、1から3列、好ましくは2から3列の矩形の配列で好ましくは配置される。
【0018】
装置はまた、上記で説明されたものに加えて、光を含まない尖部をさらに含んでもよい。そのような光を含まない尖部は、毛髪を分けること、頭皮を露出させること、頭皮のマッサージまたは同様のことなどを助けるように働いてもよい。
【0019】
装置は、ハウジング内に配設され、光を出力するように構成された光源を備える。適切な光源は、光を可視スペクトルまたは赤外線スペクトルから送出することができる、低出力レーザー、発光ダイオード、または低出力半導体レーザーを含む。好ましい光源の例は、約600nmから約l000nmの範囲の波長、および約lmW/cmから約150mW/cmの範囲の強度を有する低出力レーザーである。そのようなレーザーは、レーザー光線を作り出すレージング媒体が中に入れられている小さい円筒状のユニットおよびレージング媒体を通り抜ける電流を制御し処理する電子装置である完全なモジュールとして市販されている。他の好ましい光源は、約620から690nmの範囲の波長、および約lmW/cmから約150mW/cmの範囲の強度を有する発光ダイオードである。
【0020】
光源は、連続光またはパルス光を送出してもよく、主電源、バッテリーまたはその両方によって電力供給され得る。バッテリー電力は、装置の可搬性に有利である。バッテリーは、充電式でも使い捨てでもよいが、好ましくは充電式である。
【0021】
上記で説明された光源の任意のものを組み合わせて、複数で、または組み立てて使用されてもよい。たとえば、上記で説明された複数のレーザーモジュールが、尖部の近位端部にあるハウジング内に配設されてもよい。
【0022】
光誘導手段は、光をハウジングから尖部を通すように働く。好ましくは、光ガイド手段は、1つの光源または複数の光源から尖部内に入り尖部を抜けて延びる光ファイバーのシステムによって構成される。光ファイバーを形成するために使用される適切な材料は、石英ガラス、ガラスまたはポリメタクリル酸メチルなどの光学ポリマーを含んでもよい。光ファイバーは、個々の尖部を通って1つずつ延びてもよく、あるいは束で設けられてもよい。
【0023】
光学装置は、これらに対する光の入射を、尖部の遠位端部から治療される頭皮の表面上に外向きに広げるように構成される。「外向きに」は、光線が、頭皮上の尖部のフットプリントの外側を通るように頭皮上に投射されることを意味している。言い換えれば、光学モディファイアーが、尖部の全体軸から光を拡散する。これは、頭皮の表面上の光のカバーレッジを向上させ、ユーザーが同じ領域にわたって繰り返しとくことによって頭皮を火傷させるという機会を減少させる。
【0024】
光学装置は、通常、これらに対する光の入射を、制御された方法で所望の方向(複数可)に広げることができる1つまたは複数の光学構成要素を含み、それにより、所定の形状の光線のフットプリントが、標的表面上に作り出される。「光線のフットプリント」は、任意の瞬間において光線によって照射された標的表面の領域を意味しており、言い換えれば、光線と標的表面の交差部分を意味する。
【0025】
好ましい光学構成要素の例は、レンズ、光ファイバー、鏡、透過材料、半透過材料、プリズム、反射コーティング、反射溝、ビームスプリッター、光チャネルまたは格子を含む。
【0026】
最も好ましくは、光学モディファイアーはレンズである。
【0027】
上記で説明された光学構成要素の任意のものを組み合わせて、複数で、組み立てて使用されてもよい。
【0028】
光学装置は、尖部の遠位端部に位置する。装置から送出された頭皮照射のパターンを最適化するために、光学装置は、尖部の実際の端部地点からわずかに上流側に位置することが好ましい。このわずかな空間により、光学装置によって尖部の遠位端部から広げられた光が、尖部が頭皮にあてられたときに軟質の頭皮表面内に「埋められる」ことがないことが確実になる。
【0029】
したがって、好ましい尖部の構造では、光学装置は、尖部の先端セクションに隣接する領域内に、装置のヘッド部分の方向に配設される。
【0030】
好ましくは、光学モディファイアーは、尖部の遠位端部から2から10mmに、より好ましくは4から6mmに配設される。
【0031】
特に好ましい尖部構造は、ほぼ剛性の長手方向の長さおよび軟質の可撓性の先端セクションを有し、このとき光学装置は、これら2つの構成要素部分の間の境界面に位置している。
【0032】
光学装置は、光を、尖部の遠位端部から治療される頭皮の表面上に外向きに広げるように構成される。光学装置は、照射の最適なパターンを標的の頭皮表面に送出するように働く。「照射の最適なパターン」とは、一般的に、照射が、標的表面の総面積の少なくとも60%、好ましくは少なくとも80%をカバーするように標的表面にわたって広げられるパターンを意味する。照射の好ましいパターンは、定形またはほぼ定形の空間分布を有する。
【0033】
好ましい構築では、尖部の光学装置は、これらが、円形光線のフットプリントの配列を標的の頭皮表面上に作り出すように構成される。配列内の個々のフットプリント間で大きく重複することを回避することが好ましい。したがって、各々の個々のフットプリントが、配列内でそれに隣接するこれらのフットプリントとの境を接することが好ましい。個々の光線のフットプリントは、代替的に四角形、多角形、または照射の最適パターンを送出するのに適した任意の他の形状でもよい。
【0034】
次に、本発明の実施形態が、以下の非限定的な図を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】頭皮の表面にあてられた本発明の毛髪治療装置の部分的な概略断面図である。
【図2】使用時における、図1の装置の部分的な概略上面図であり、装置によって作り出された光線のフットプリントのパターンを示している。
【図3】頭皮の表面上にある、使用時の図1の装置の尖部の遠位端部の拡大された概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1から図3に示されるように、毛髪治療装置10は、ヘッド部分13に接続された(一部が図示されている)ハンドル部分12から形成されたハウジング11を有する。4つの中空の尖部14の2本の平行な列が、ヘッド部分13に接続され、ヘッド部分13から下向きに突出している。各々の個々の尖部14は、ヘッド部分13に固着された近位端部14aと、ヘッド部分13から延びる剛性の長手方向の長さ14bと、遠位端部14cとを有する。尖部の遠位端部14cは、丸められた軟質の可撓性先端セクション15で終端する。レンズ組立体16が、長手方向長さ14bと可撓性先端セクション15の間に挿入される。
【0037】
使用時、装置10は、頭皮17の一領域にあてられ、このとき可撓性先端セクション15は、頭皮の表面18にあてられている。光ファイバー19のシステムは、光を、光源(図示せず)からハンドル部分12を抜けてヘッド部分13内に入り、尖部14の各々を抜けて下ってレンズ組立体16に向かうように通す。レンズ組立体16への光の入射は、レンズ組立体16によって外向き方向に尖部14の遠位端部14cから頭皮の表面18上に広げられる。(図3上で21として示される)レンズ組立体16からの光の出現は、円形光線のフットプリントの配列を(図2上で20として示される)表面18上に作り出す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドル部分およびヘッド部分を含むハウジングと、
ヘッド部分に固着された近位端部、ヘッド部分から延びる長手方向の長さ、および先端セクション内で終端する遠位端部を各々が有する、複数の中空の尖部と、
ハウジング内に配設され、光を出力するように構成された光源と、
光を、光源から尖部を通すようにかつ光誘導手段の軸に沿って通すための光誘導手段と、
尖部の遠位端部に位置する光学装置とを備える、頭皮上の毛髪の成長を刺激するための携帯用毛髪治療装置であって、
光学装置が、これらに入射した光を、全体的な光誘導手段の軸に対して横方向に向きを変えるように構成されることを特徴とする、装置。
【請求項2】
尖部の長手方向の長さが、ほぼ剛性の材料から形成される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
尖部の先端セクションが、軟質かつ可撓性の材料から形成される、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
光源が、約600nmから約1000nmの範囲の波長および約lmW/cmから約150mW/cmの範囲の強度を有する低出力レーザー、約620から690nmの範囲の波長および約lmW/cmから約150mW/cmの範囲の強度を有する発光ダイオード、あるいはその組合せである、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
光誘導手段が、1つの光源または複数の光源から尖部内に入り尖部を抜けて延びる光ファイバーのシステムによって構成される、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
光学装置が、尖部の遠位先端部から2から10mmに配設される、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
光学モディファイアーが、レンズ、光ファイバー、鏡、透過材料、半透過材料、プリズム、反射コーティング、反射溝、ビームスプリッター、光チャネルまたは格子から選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
光学モディファイアーが、レンズである、請求項1から6のいずれかに記載の装置。
【請求項9】
光学装置が、円形の光線のフットプリントの配列を標的の頭皮表面上に作り出すように構成される、請求項1から8のいずれか一項に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−506266(P2012−506266A)
【公表日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−532501(P2011−532501)
【出願日】平成20年10月22日(2008.10.22)
【国際出願番号】PCT/EP2008/064305
【国際公開番号】WO2010/045973
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(590003065)ユニリーバー・ナームローゼ・ベンノートシヤープ (494)
【Fターム(参考)】