説明

毛髪処理用組成物

【課題】
酸化染毛剤又は脱色剤等の毛髪処理用組成物において毛髪が受ける損傷を低減し、一般的な蛋白加水分解物よりも臭いが少なく、染色性等の優れた特性を提供することにある。
【解決手段】
加水分解していない純粋なケラチン及び又は加水分解ケラチンを酸化染毛剤又は脱色剤等の毛髪処理用組成物に配合することで、染毛時の染色性に優れ、毛髪の過度な損傷を低減する効果を提供する。本発明のケラチンまたは加水分解ケラチンはシスチン中のジスルフィド部分がS−スルフォン化システインとなっており、そのS−スルフォン化システインが毛髪ケラチン中のシスチンから生成するS−スルフォン化システインと反応してジスルフィド結合を回復し、システイン酸の生成を抑制することが可能となり、毛髪が受けるダメージを低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪の酸化染毛剤又は脱色剤等の毛髪を処理する毛髪処理用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、染毛剤としては酸化染料中間体とアルカリ剤を含有する第一剤と酸化剤を含有する第二剤からなり2剤式の酸化染毛剤が多い。この染毛剤は第一剤中に含まれるアンモニア等のアルカリ剤によって、毛髪を膨潤させて低分子の酸化染料中間体を毛髪中に浸透させて、毛髪の中で第二剤中に含まれる過酸化水素等の酸化剤によって酸化重合を行わせることによって、発色して毛髪を染着する。第一剤に配合しているアルカリ剤によって過酸化水素が分解してラジカルが発生する。このラジカルによって毛髪中のメラニン色素を分解して毛髪を明るくして、毛髪を様々な色調に染毛することが出来る。脱色剤はアルカリ剤を含有する第一剤と酸化剤を含有する第二剤からなる2剤式の脱色剤と第三剤として渦硫酸アンモニウム等の酸化性物質を用いる3剤式の脱色剤がある。第一剤中に含まれるアンモニア等のアルカリ剤によって、毛髪を膨潤させて薬剤を浸透しやすくして、アルカリ剤と酸化剤が反応して分解しラジカルが発生する。このラジカルによって毛髪中のメラニン色素を分解して毛髪を脱色して明るくするものである。こういった染毛剤や脱色剤等の施術過程において、毛髪に過度なダメージをうけるため、毛髪ダメージの低減と更なる染色性向上のためにケラチンやコラーゲン等の蛋白加水分解物を配合することが提案されている。また、酸化染毛剤や脱色剤中に蛋白加水分解物を配合せずに、施術前の毛髪のダメージ度合いに応じて前処理剤として適当な分子量の蛋白加水分解物を組み合わせて塗布する等の様々な施術が提案され、実用化されている。
【特許文献1】特開平2000−336020
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は酸化染毛剤又は脱色剤等の毛髪処理用組成物において、染色性を向上し、毛髪の過度な損傷を防ぐ等の特性を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
従来、染毛剤や脱色剤又はパーマ剤において蛋白加水分解物を第一剤に配合して施術することや施術前に毛髪のダメージに応じて適当な分子量の蛋白加水分解物を選択し塗布を行ってから施術することは公知の事実であるが、蛋白質等を種々検討した結果、加水分解していない純粋なケラチン及び加水分解ケラチンにおいて、ケラチン中のシスチンのジスルフィド部分をS−スルフォン化システインにして、脱色剤や酸化染毛剤施術時に0.01から20重量%配合することによって、脱色剤や酸化染毛剤の高アルカリ配合に従来の加水分解ケラチンを配合したときに見られるシスチンのジスルフィド結合のS−S結合が切れて硫黄を含んだ低分子量の化合物が生成し特異臭が発生する事がなくなり、施術時に毛髪が受ける過度なダメージを低減し、均一に染め上がる等の良好な効果を見出し、本発明を開発するに至った。
【発明の効果】
【0005】
請求項1、2、3、4、5記載のケラチンを配合することにより毛髪の損傷を防ぎ、染色性が均一になり向上する。また蛋白加水分解物配合時に感じる特異臭が少ない等の特性を脱色剤又は酸化染毛剤等の毛髪処理用組成物に提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に配合するケラチンの製造方法は以下に説明する。
羊毛ケラチンに亜硫酸ナトリウムを反応させてケラチン中のシスチンをS−スルフォン化システインとする。これをホモジナイザーで処理して、可溶化ケラチンが得られる。このケラチン中のシスチンはS−スルフォン化システインとなっている。
本発明に使用されるケラチンとしてはクローダジャパン株式会社が販売しているケラテック IFP-HMWが挙げられる。
本発明の脱色剤又は酸化染毛剤に於ける含有量は総量で0.1〜20.0重量%。好ましくは1.0〜15.0重量%である。
【0007】
本発明に配合する加水分解ケラチンの製造方法は以下に説明する。
羊毛ケラチンに亜硫酸ナトリウムを反応させてケラチン中のシスチンをS−スルフォン化システインとする。これを酵素等で加水分解処理して得られる。
本発明に使用される加水分解ケラチンとしてはクローダジャパン株式会社が販売しているケラテックPepが挙げられる。
本発明の脱色剤又は酸化染毛剤に於ける含有量は総量で0.1〜20.0重量%。好ましくは1.0〜15.0重量%である。
【0008】
脱色剤や酸化染毛剤で使用される過酸化水素が施術時にアルカリによって分解し、発生するラジカルによって毛髪を構成しているケラチン中のシスチンと反応してS−スルフォン化システインを経てシステイン酸を生成する。システイン酸を生成することで毛髪が親水性になり、毛髪の櫛通りが悪くなり、またケラチンプロテイン繊維間の架橋(ジスルフィド結合)が切れることによる毛髪強度低下の原因のひとつとなっている。本発明のケラチンまたは加水分解ケラチンはシスチン部分がS−スルフォン化システインとなっており、そのS−スルフォン化システインが毛髪ケラチン中のシスチンから生成するS−スルフォン化システインと反応してジスルフィド結合を回復し、システイン酸の生成を抑制することが出来る。この効果は上記以外にヘアトリートメント及びコンディショナー等のヘアダイやパーマ施術後の毛髪を最終的に処理する組成物にも応用可能である。
【0009】
本発明の組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、前記必須成分の他に、界面活性剤、天然油脂、鉱物油、合成エステル、保湿剤、皮膜形成剤、酸化防止剤、防腐剤、香料等を配合することが可能である。
【実施例】
【0010】
次に本発明を実施例及び比較例によって更に具体的かつ詳細に説明するが、本発明はこの実施例によって限定されない。なお、以下に記載する数値はいずれも重量%である。
【0011】
表−1の処方で酸化染毛剤第一剤を調整し、第一剤の臭いの評価や毛髪に施術後の染色性、均染性、毛髪の損傷の試験を行った。10人のパネラーによる臭いの評価、毛髪の引っ張り強度および40日での安定性試験を表−2にまとめた。ケラテック IFP-HMW及び又はケラテックPepを配合した酸化染毛剤は20日後、結晶の析出や分離もなく、市販品の加水分解ケラチンに比べ特異臭も感じることなく安定であった。また、施術後の染色性及び均染性が良好で毛髪の損傷も少ない結果が得られるなど優れた効果がある。
【0012】
【表−1】

【0013】
【表−2】

【0014】
評価項目
安定性の評価 :
温度40℃の恒温機に第一剤を静置・保存する。保存30日後の外観性状を目視で評価した。
臭いの評価 :
第一剤調整後、得られた第一剤の臭気について以下の基準で評価した。
評価 評価指標
◎ 加水分解ケラチン由来の特異臭をほとんど感じない。
○ 若干加水分解ケラチン由来の特異臭を感じる。
△ 加水分解ケラチンの臭いを感じる。
× 著しく加水分解ケラチンの特異臭を強く感じる。
染色性の評価 :
第一剤及び過酸化水素6%水溶液を重量比で1:1に混合し、得られた混合物10gをビューラックス製人毛白毛束(BM-W)長さ10cm、重さ1gに塗布して温度30℃で20分間放置した後、ぬるま湯で十分すすぎ、シャンプー後ドライヤーで乾燥する。染色性を目視で以下の基準で評価した。
評価 評価基準
◎ オレンジ色に濃く染まっている。
○ オレンジ色に染まっている。
△ あまり染まっていない。
× ほとんど染まっていない。
均染性の評価 :
第一剤及び過酸化水素6%水溶液を重量比で1:1に混合し、得られた混合物10gをビューラックス製人毛白毛束(BM-W)長さ10cm、重さ1gに塗布して温度30℃で20分間放置した後、ぬるま湯で十分すすぎ、シャンプー後ドライヤーで乾燥する。目視で以下の基準で評価した。
評価 評価基準
◎ ムラがなく均一に染まっている。
○ ほぼムラがなく均一に染まっている。
△ ややムラがある。
× ムラがある。
毛髪の損傷評価 :
長さ15cm、5gの人毛毛束を用意して、調整した縮毛矯正剤を20g塗布し、なじませて温度30℃で15分間放置する。15分後、ぬるま湯ですすいだ後タオルドライを行い、ガラス板に毛髪をまっすぐになるように一本ずつ並べてテープ等で張り付けた後、臭素酸ナトリウム6%水溶液に浸積させて温度30℃で15分間静置する。15分後毛髪を取り出してぬるま湯ですすいだ後タオルドライを行い、温度20℃湿度65%の環境に48時間静置・乾燥する。48時間後に引っ張り試験器(INSTRON 5569型)で毛髪が切れる最大瞬間応力を測定して毛髪の損傷評価とした
評価 測定値
◎ 応力1.4N以上
○ 応力1.2〜1.4N
△ 応力1.0〜1.2N
× 応力1.0N以下

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケラチン及び/または加水分解ケラチンをそれぞれ0.01〜20.0重量%含有する酸化染毛剤又は脱色剤等に適する毛髪処理用組成物。
【請求項2】
含有するケラチンが加水分解していないケラチンであることを特徴とする請求項1に記載した酸化染毛剤又は脱色剤等に適する毛髪処理用組成物。
【請求項3】
ケラチンの分子量が30,000〜60,000であることを特徴とする請求項1、2に記載した酸化染毛剤又は脱色剤等に適する毛髪処理用組成物。
【請求項4】
含有するケラチン及び加水分解ケラチン中のシスチンの少なくとも一部がS−スルフォン化システインとして存在することを特徴とする請求項1、2、3に記載した酸化染毛剤又は脱色剤等に適する毛髪処理用組成物。
【請求項5】
加水分解ケラチンの分子量が3〜4000であることを特徴とする請求項1、2、3、4に記載した酸化染毛剤又は脱色剤等に適する毛髪処理用組成物。

【公開番号】特開2006−273782(P2006−273782A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−97634(P2005−97634)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000104995)クローダジャパン株式会社 (35)
【Fターム(参考)】