説明

毛髪用塗布具

【課題】薬剤を外部に吐出する吐出開口を備えてなる櫛歯部とブラシ歯部を備えてなる毛髪用塗布具において、塗布具からの薬剤の垂れ落ちを抑制することができる毛髪用塗布具を提供する。
【解決手段】薬剤が充填される容器本体12、及び容器本体12の開口端部12aに連結されるとともに、ブラシ歯部16と容器本体12を挟持圧縮することにより薬剤が吐出される吐出開口が形成されている櫛歯部15とが互いに背面を対向するように配設されている櫛体13を備える毛髪用塗布具11において、ブラシ歯部16及び櫛歯部15との間に吐出開口より吐出された薬剤を保持する凹部13aが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪用塗布具に関し、詳しくはブラシ歯部の基台及び薬剤吐出開口を有する櫛歯部との間に薬剤保持部を設けることにより、塗布具からの薬剤垂れ落ち抑制効果等の向上を図った毛髪用塗布具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ファッションの1つとして、染毛剤により毛髪の色を変えたり、脱色剤や脱染剤により毛髪の色を落としたり、パーマ処理剤により毛髪にウェーブをかける等、各種毛髪処理剤(薬剤)により毛髪に変化を施すことが広く定着している。前記毛髪処理剤は各個人で毛髪用塗布具を用いて毛髪に塗布することができる。
【0003】
前記薬剤の毛髪用塗布具として、従来より特許文献1〜3に記載される毛髪用塗布具が知られている。特許文献1に記載される毛髪用塗布具は、薬剤を収容する容器本体と薬剤吐出開口が形成されている平板状の櫛歯部からなる薬剤吐出用の櫛体とを備えている。容器本体内の薬剤は容器本体を挟持圧縮することにより薬剤吐出口から櫛歯部外部へ吐出される。しかしながら、前記平板状の櫛歯部からなる櫛体では毛髪の表面全体に薬剤を塗布するには優れているものの、生え際等の細かい部分に対しては塗布しにくいものであった。また、毛髪の根元付近に塗布するには何度もコーミングしなければならず、時間がかかり、さらに毛髪や頭皮への物理的なダメージも大きかった。しかも、各個人で薬剤を塗布する作業は目では見えない部分の作業が多く、特許文献1に開示される毛髪用塗布具の構成では毛髪全体を均一に塗布することは困難であった。
【0004】
そこで、特許文献2に記載される毛髪用塗布具は、薬剤を外部に吐出する櫛体において、薬剤を吐出可能な大きな櫛歯部と薬剤を吐出可能な小さな櫛歯部とを有し、それらの背面が対向するように配設されている。しかしながら、薬剤を吐出可能な小さな櫛を備えることで生え際等の細かい部分に塗布するには優れているものの、毛髪の全体を均一に塗布するには有用なものではなかった。
【0005】
そこで、特許文献3に記載される毛髪塗布具は、毛髪表面に残る薬剤を毛髪根元付近にまで押し込むための短いブラシ歯を備えている。しかしながら、薬剤を塗布する作業は手が汚れるため、それぞれの機能を持った櫛及びブラシの2本を、作業中に持ち替えることは煩雑であるという問題があった。上記の問題を解決するために、特許文献1に記載されている薬剤吐出用の櫛体と、特許文献3に記載されている薬剤を押し込むブラシとを互いに背面が対向するように組み合わせ、一つの塗布具において櫛部とブラシ歯部を持つ毛髪用塗布具を形成することも可能である。
【特許文献1】特開平9−023922号公報
【特許文献2】特開平8−196329号公報
【特許文献3】特開2003−033226号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、毛髪全体を頭皮表面方向にブラシで梳くという作業は毛髪に付着した薬剤からの抵抗を受けるため、薬剤を少しずつ櫛又はブラシで押さえ込んで上下方向に移動させるよりも力が必要となる。それにより、薬剤が充填される容器本体が強く把持されると、薬剤吐出用の櫛体から薬剤が漏れ出てしまい、予期せぬところに薬剤が垂れて汚染するという問題があった。
【0007】
本発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、薬剤を外部に吐出する吐出開口を備えてなる櫛歯部とブラシ歯部を備えてなる毛髪用塗布具において、塗布具からの薬剤の垂れ落ちを抑制することができる毛髪用塗布具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の毛髪用塗布具は、薬剤が充填される容器本体、及び前記容器本体の開口端部に連結されるとともに、ブラシ歯部と、前記容器本体を挟持圧縮することにより薬剤が吐出される吐出開口が形成されている櫛歯部とが互いに背面を対向するように配設されている櫛体を備える毛髪用塗布具において、前記ブラシ歯部及び櫛歯部との間に前記吐出開口より吐出された薬剤を保持する薬剤保持部が形成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記薬剤保持部は、凹部であることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、前記薬剤保持部は、前記ブラシ歯部と櫛歯部間の長手方向において、前記櫛歯部の基台面の長手方向の長さより略同一又は長く形成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、前記薬剤保持部は、少なくとも前記ブラシ歯部の背面によって形成されていることを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、前記ブラシ歯部の長手方向の長さが、前記櫛歯部の長手方向の長さと略同一又は長いことを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、前記ブラシ歯部の基台の幅が、前記櫛歯部の基台の幅よりも2〜20mm大きいものであることを特徴とする。
請求項7に記載の発明は、前記容器本体は、有底筒状に構成されるとともに、前記ブラシ歯部の基台面が前記容器本体の軸線に対し、5〜30°の角度で上向きに傾斜していることを特徴とする。
【0012】
請求項8に記載の発明は、前記ブラシ歯部は、複数のブラシ歯を有してなり、該複数のブラシ歯は、頭皮に接触させた際、ブラシ歯部の基台面の長手方向と頭皮表面が略平行状態になるように基台面上に立設されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、塗布具からの薬剤の垂れ落ちを抑制することができる毛髪用塗布具を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明の毛髪用塗布具を具体化した一実施形態を図1〜10に基づいて詳細に説明する。
図1〜3に示されるように本実施形態の毛髪用塗布具11は、薬剤が充填されるとともに把持部としての役割を有する容器本体12及び該容器本体12中の薬剤を毛髪に塗布・なじませるための櫛体13から構成されている。さらに、櫛体13は櫛体本体14及び該櫛体本体14に固定される櫛歯部15とブラシ歯部16とから構成されている。櫛歯部15は容器本体12中の薬剤を外部に吐出するための吐出開口15aが形成されている。毛髪用塗布具11は櫛歯部15によって薬剤を毛髪に塗布することができるとともにブラシ歯部16によって毛髪に塗布された薬剤を頭髪全体になじませることができる。
【0015】
容器本体12は有底円筒状に成形され、容器上端には薬剤を充填又は吐出するための開口端部12aが形成されている(図1,4参照)。容器本体12は手で挟持・押圧することによって容易に変形・収縮し、手を離すことによって元の形状に復元するように可撓性を有する材料で構成されることが好ましい。容器本体12を構成する材料は公知の合成樹脂を適用することができ、例えばガス透過性を有する高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン(PP)等が挙げられる。また、容器本体12の壁面は、単層でも二種以上の樹脂層を積層したものでもよく、さらには二種以上の樹脂材料を混合重合したものであってもよい。また、ガス透過性を有する材料を使用することで、毛髪化粧料に例えば過酸化水素などの分解ガスを発生する成分が含まれている場合であっても容器本体12の破裂を十分に防止することができる。
【0016】
櫛体13は、有蓋筒状の櫛体本体14及び該櫛体本体14の軸線Xを挟んでそれぞれの背面を対向するように配設される櫛歯部15とブラシ歯部16から構成されている(図1,6,7参照)。櫛体本体14の内部には通路14aが形成され、櫛体本体14の下端開口部14bと容器本体12の開口端部12aとが例えば螺合等により連結されることにより、容器本体12の内部と通路14aが連通される。また、櫛体13は櫛歯部15とブラシ歯部16の背面間において薬剤保持部としての凹部13aが設けられている。
【0017】
凹部13aは、櫛歯部15の背面15b、ブラシ歯部16の背面16a及び櫛体本体14の外面14cによって構成されている。凹部13aは櫛体本体14の軸線Xに対し、前後両側面において、ブラシ歯部16と櫛歯部15間の長手方向に形成されている。凹部13aはブラシ歯部16を用いて薬剤を毛髪になじませる際、櫛歯部15が凹部13aを挟んでブラシ歯部16の上方に位置するよう配設されている(図8参照)。ブラシ歯部16の使用時において、把持部としての容器本体12を押圧したときに、吐出開口15aから漏れ出てきた薬剤17が凹部13a内側に収容される(図9参照)。かかる構成により、凹部13aはブラシ歯部16の使用時において、櫛歯部15の吐出開口15aから櫛歯部15の背面15bへ流れ出てきた薬剤が毛髪用塗布具11から垂れ落ちるのを抑制することができる。
【0018】
櫛歯部15は、複数の櫛歯15cと該櫛歯15cを立設する櫛歯用の基台15dとから構成されている。該櫛歯15cは正面形状が略三角形状の一定の厚みを有する板状に成形され、容器本体12の軸線方向に沿って一定間隔で1列に配列されている。櫛歯15cが板状に成形されることにより、櫛歯15c間において薬剤は自身の表面張力により保持されるため、薬剤保持力が向上する。櫛歯15cが正面形状を略三角形状に成形されることにより、髪を掻き分けやすくなり、薬剤の塗布性が向上する。尚、櫛歯15cは容器本体12の軸線Xに対して、平行方向に複数列に配列してもよい。かかる構成により、毛髪を掻き分けやすくなるとともに薬剤の塗布ムラが減り、より容易に薬剤を塗布することができる。頭皮のダメージ低減の観点より、各櫛歯15cの先端を曲面に形成することが好ましい。
【0019】
薬剤を外部に吐出する吐出開口15aは、該櫛歯15cの上端部付近において板面垂直方向に貫通形成されている。櫛歯15c内は、板面平行方向に貫通されるとともに櫛体本体14内の通路14aと連通される櫛歯内通路15fが形成されている。該櫛歯内通路15fは吐出開口15aと連通されている(図6,7参照)。容器本体12内の薬剤は櫛体本体14内の通路14a及び櫛歯内通路15fを通って吐出開口15aから外部に吐出される。凹部13aの長手方向の長さは、櫛歯部15の基台面15eの長手方向の長さより略同一又は長くなるように成形されている。櫛歯部15の基台面15eからブラシ歯部16側へ垂れ落ちた薬剤をより効果的に確実に抑制することができる。
【0020】
ブラシ歯部16は、ブラシ歯16bと該ブラシ歯16bを立設させるブラシ歯用の基台16cとから構成されている。ブラシ歯部16の背面16aは、凹部13aの一部を構成する。かかる構成により、吐出開口15aから漏れ出てきたより多くの薬剤をより確実に保持することができる。ブラシ歯用の基台16cは、ブラシ歯16bが立設される基台面16dが、容器本体12の軸線Xに対し、上向きに5〜30°の角度で傾斜するように櫛体本体14に固定されている(図1,4,5)。尚、櫛体本体14の軸線Xと容器本体12の軸線Xは同一である。この角度でブラシ歯部16を毛髪用塗布具11に固定することにより、容器本体12を把持した手指がブラシ歯部16の基台面16dの延長面と交差しにくくなる。かかる構成により、ブラシ歯16bを頭皮に当接させた際、頭部に容器本体12を把持した手指が接触しにくくなるため、容器本体12を持った手が自然な状態になる(図8参照)。したがって、薬剤の塗布性が向上するため、容器本体12にかかる無駄な力を低減させることができる。それにより、薬剤の吐出開口15aからの吐出を抑制することができる。容器本体12を把持する手の手首の角度をより自然な状態にして、薬剤の垂れ落ちをより防止するために、ブラシ歯部16の角度を10〜20°にすることがより好ましく、さらに好ましくは10〜15°である。この角度が5°未満であると容器本体12の軸線Xに対して基台面16dが平行に近づくため、塗布中に手指が頭部に触れ易くなる。一方、前記角度が30°よりも大きいと、容器本体12を把持する手の手首が不自然な状態になるために、手に無駄な力が入ることにより塗布性が低下する。それにより薬剤が吐出開口15aから流出及び垂れ落ちを招くおそれがある。
【0021】
ブラシ歯部16の長手方向の長さは、櫛歯部15の長手方向の長さと略同一又は長くなるように構成されている。かかる構成により、薬剤が塗布された部分に全面に対応して、毛髪を梳かしなじませることができる。それによって何度も毛髪を梳かす必要がない。ブラシ歯部用の基台面16dは幅方向の中央部においてブラシ歯16b方向に盛り上がった湾曲形状になるように構成されている(図4,5)。それにより、基台面16dを毛髪上でスライドさせた際(ブラシ歯部16使用時)、薬剤が基台面16dの幅方向中央部において毛髪中に押し込まれる。ブラシ歯16bの長さは、基台面16dから3〜8mmになるよう形成されている。かかる長さに形成することにより、薬剤を毛髪中に押し込む、なじませ効果を増加させることができる。なじませ効果の向上のためには3〜6mmがより好ましい。3mmよりも短いと、毛髪のボリュームによって毛髪の根元にまでブラシ歯16bの先端が到達しない可能性がある。一方、8mmよりも長いと、なじませ効果が低下する。
【0022】
ブラシ歯部用の基台16cの幅は、櫛歯部15の幅よりも大きくなるように形成されている。基台16cの背面16aによって形成されている凹部13aの表面積を大きくすることができる。基台16cの幅と櫛歯部15の幅との差は、2〜20mmとなるよう形成されることが好ましく、より好ましくは5〜10mmである。2mmよりも小さいとブラシ歯部16が斜めになったときに効果的に薬剤を受け止めることができない。一方、幅の差が20mmよりも大きいとブラシ歯部16使用時における薬剤のなじませ効果が低下するとともに、ブラシ歯部16が邪魔となり櫛歯部15の使用時における櫛歯部15の使用状態を確認することが困難となる。尚、図2に示されるように、櫛歯部15側から櫛体13を見た場合、櫛歯部15の左右両側面から飛び出ているブラシ歯部16の背面16a領域は同一であることが好ましい。
【0023】
複数のブラシ歯16bはブラシ歯部用の基台面16dの長手方向と頭皮表面が略平行状態で頭皮に接触するように立設されている(図4,5参照)。基台面16d上に立設される複数のブラシ歯16bの先端は、同一平面上(頭皮22上)に存在するよう形成される(図10参照)。ブラシ歯部16使用時において、ブラシ歯16bの先端を頭皮22に接触させながら移動させる際、安定に毛髪22a全体に薬剤17aを塗布することができる。ブラシ歯部16において、頭皮22の同一平面上において接触するブラシ歯16b間に、長さの短い歯16eを立設させてもよい。ブラシ歯部16により毛髪22aを梳いたとき、薬剤17aを容易に絡め取ることができるとともに、毛髪22aを掻き分けやすくなり、毛髪22a根元付近の塗りむらを低減することができる。ブラシ歯部16の基台面16d上に立設しているブラシ歯16bは、それぞれの隣り合うブラシ歯16b間の距離が4〜8mmとなるように形成されることが好ましい。かかる構成により、毛髪22a表面に付着した薬剤17aを漏れなく絡め取りながら毛髪上になじませることができる。さらに薬剤が付着した毛髪を梳くときの抵抗が少なくなる。
【0024】
櫛体本体14、櫛歯部15、及びブラシ歯部16から構成される櫛体13は、PP(ポリプロピレン)、LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)、LDPE(低密度ポリエチレン)、MDPE(中密度ポリエチレン)、HDPE(高密度ポリエチレン)、ABS(アクリロニトリル−スチレン共重合体とアクリロニトリル−スチレン共重合体を混合したもの)、AS(アクリロニトリル−スチレン共重合体)、PS(ポリスチレン)、PC(ポリカーボネート)等の合成樹脂材料、及びそれらを混合したものにより、それぞれ形成することができる。これらの中でも引っ張り強さや伸び率が高いことからPP、LLDPE、LDPE、MDPE及びHDPEが好ましい。また、単層でも二種以上の樹脂層を積層したものでもよく、あるいは二種以上の樹脂材料を混合重合したものでもよい。その他、ブラシ歯部16はゴム等の弾性体により形成されていてもよい。弾性体で形成することにより、頭の形に容易にフィットし、毛髪根元付近に薬剤を確実に押し込むことができる。また、頭皮の刺激低減効果も高くなる。ブラシ歯部16の基台16cを弾性体により形成し、ブラシ歯16bを上述した合成樹脂材料により形成してもよい。かかる構成により、毛髪上を滑らかにブラシ歯16bが移動するとともに、頭の形に容易にフィットさせることもできる。
【0025】
以上詳述した本実施形態の毛髪用塗布具11によれば、以下のような効果が発揮される。
(1)本実施形態では、ブラシ歯部16と吐出開口15aが形成されている櫛歯部15とが互いに背面を対向するように配設されている櫛体13を備える毛髪用塗布具11において、ブラシ歯部16と櫛歯部15との間に吐出開口15aより吐出された薬剤を保持する薬剤保持部としての凹部13aを形成した。したがって、毛髪用塗布具11からの薬剤の垂れ落ちを抑制することができ、予期せぬところに薬剤が垂れ落ちて周囲への汚染を防止することができる。
【0026】
(2)本実施形態では、薬剤保持部を櫛歯部15の背面15b、ブラシ歯部16の背面16a及び櫛体本体14の外面14cによって形成される凹部13aとして構成した。したがって、櫛歯部15の吐出開口15aから漏れ出てきた薬剤17が凹部13a内に収容されるため、毛髪用塗布具11からの薬剤17の垂れ落ちを確実に抑制することができる。
【0027】
(3)本実施形態では、凹部13aはブラシ歯部16と櫛歯部15間の長手方向において、櫛歯部15の基台面15eの長手方向の長さより略同一又は長くなるように形成した。したがって、櫛歯部15の基台面15eからブラシ歯部16側へ漏れ出てきた薬剤をより確実に抑制することができる。
【0028】
(4)本実施形態では、凹部13aを構成する内面の一部は、ブラシ歯部16の背面16aによって形成されている。したがって、櫛体本体14において櫛歯部15の対向位置にブラシ歯部を取り付けることによって凹部13aを作成することが可能であるため、薬液保持部の形成が容易である。
【0029】
(5)本実施形態では、ブラシ歯部16の長手方向の長さが、櫛歯部15の長手方向の長さと略同一又は長くなるよう形成した。したがって、櫛歯部15で薬剤が付着された毛髪部分をブラシ歯部16で何度も梳く必要がないため、容器本体12に付与される力を低減させることができる。また、ブラシ歯部16で梳くことによる頭皮や毛髪への物理的なダメージを減らすことができる。また、ブラシ歯部16の背面16aが凹部13aの一部として構成されることに関連して、確実に薬剤の垂れ落ちを抑制することができる。
【0030】
(6)本実施形態では、ブラシ歯部16の基台16cの幅が、櫛歯部15の幅よりも2〜20mm大きくなるよう形成した。したがって、ブラシ歯部16の背面16aが凹部13aの一部として構成されることに関連して、より確実に櫛歯部15の吐出開口15aから垂れ落ちてきた薬剤を受け止めることができる。
【0031】
(7)本実施形態では、ブラシ歯部16の基台面16dが容器本体12の軸線Xに対し、5〜30°の角度で上向きに傾斜するように形成した。したがって、基台面16dの延長面と容器本体12を把持した手指が交差しにくくなる。そのため、塗布中に手指が頭皮面に触れにくく持ちやすいため、手が自然な状態になり無駄な力が容器本体12に付与されない。頭部の薬剤による汚染を抑制することができる。
【0032】
(8)本実施形態では、複数のブラシ歯16bはブラシ歯部16用の基台面16dの長手方向と頭皮表面が略平行状態で頭皮に接触するように立設した。したがって、ブラシ歯部16使用時において、ブラシ歯16bの先端を頭皮に接触させながら移動させる際、安定して毛髪全体に薬剤を塗布することができる。容器本体12に無駄な力が付与されないため、頭部の薬剤による汚染を抑制することができる。つまり、頭の形に沿ったブラシ歯部16の移動は、複数のブラシ歯16bによる頭皮上への接触を維持するのみで、基台面16dの安定した平行移動が可能となるため、より少ない動作で毛髪全体に薬剤を塗布することができる。このように塗布に必要な動作を少なくすることができるため、余分な力を必要とせず、誤って容器本体12を把持して内部の薬剤が漏れ出てくるのを抑制することができる。また、ブラシ歯16bが形成される面が頭皮22と略平行であるため、ブラシ歯部16から頭皮に与える刺激を分散・低減させることができる。
【0033】
(9)本実施形態では、薬剤を吐出及び塗布するための櫛歯部15と毛髪表面に塗布された薬剤を毛髪根元付近にまで押し込んで均一化するブラシ歯部16を1つの櫛体13に取り付けた。したがって、薬剤塗布作業において、複数の櫛を持ち変える必要がなく、周囲への汚染を防止することができるとともに、塗布作業が容易になる。
【0034】
なお、上記実施形態は以下のように変更して構成することもできる。
・図11に示されるように、薬剤保持部としての凹部13aは、内部にスポンジ等の弾性体21(吸収体)がはめ込まれていてもよい。それによって、櫛歯部15の吐出開口15aから垂れ落ちてきた薬剤を吸収体に吸収・保持させることができるため、より確実に塗布具からの垂れ落ちを抑制することができる。
【0035】
・図12に示されるように、薬剤保持部としての凹部13aは、該凹部13a内に小さい凸部18が形成されていてもよい。該小さい凸部18は凹部13a中のどこに形成されていても良く、好ましくはブラシ歯部用の基台16cの上下左右の端縁部がよい。それによって、垂れ落ちてきた薬剤をさらにより確実に受け止めることができ、塗布具からの垂れ落ち抑制効果が向上する。
【0036】
・上記実施形態では、薬剤保持部を櫛歯部15の背面15b、ブラシ歯部16の背面16a及び櫛体本体14の外面14cの3側面からなる凹部13aを形成した。しかしながら、凹部の形状は特に限定されず、例えば図13(a)に示されるように、薬剤保持部は断面形状が、三角形状の凹部13bとして構成してもよい。また、図13(b)に示されるように、櫛歯部19の側面と同一平面上にある櫛体本体14の側面14dとブラシ歯部用の基台16cの背面16aとによって凹部13cを形成してもよい。
【0037】
・上記実施形態では、薬剤保持部を櫛体本体14の側面において凹部として構成した。しかしながら、薬剤保持部は、薬液が流出する距離を長くすることができる形状であれば特に限定されない。例えば図14に示されるように櫛体本体14側面から突出する凸部20の形状であってもよい。かかる構成により、櫛体本体14の側面における表面積が増大するため、薬液が流出する距離が長くなり、凹部形状と同様に薬液の垂れ落ちを防止することができる。
【0038】
・薬剤保持部の形状は、櫛体本体14の軸線を中心として両側面において対称でなくてもよい。
・上記実施形態では、凹部13aは櫛歯部15の基台面15eの長手方向の長さより略同一又は長くなるよう構成した。しかしながら、凹部13aは、櫛体本体14の長手方向の一部に形成されていてもよい。
【0039】
・ブラシ歯部用の基台16cの断面形状は、特に限定されず、例えば楕円形状等であってもよい。
・ブラシ歯部16の背面16aは、幅方向の両端縁部に向かうにしたがって、櫛歯部15側に反り返った湾曲形状であってもよい。それによって、櫛歯部15の吐出開口15aから垂れ落ちてきた薬剤をより確実に受け止めることができる。
【0040】
・ブラシ歯16bの側面は、毛髪移動方向に対し鋭角に形成されてもよい。かかる構成により、毛髪を掻き分ける抵抗が軽減し、容器本体12の把持力を低減させることができる。
【0041】
・ブラシ歯16bの先端は、曲面又は球状に構成してもよい。かかる構成により、頭皮をなぞる際の抵抗が軽減され、容器本体12の把持力を低減することができる。また、頭部にかかる圧力も低減でき、頭皮刺激低下につながる。
【0042】
・櫛体本体14が有底筒状の容器本体12の軸線Xに対し傾斜させることにより、ブラシ歯部16の基台面16dを容器本体12の軸線Xに対して傾斜させてもよい。
・本実施形態において、櫛歯部15とブラシ歯部16は背面を対向させて、両基台面同士が幅方向に平行になるように配設した(図1参照)。しかしながら、背面を対向させて構成すればよく、両基台面同士が幅方向に平行に構成されていなくてもよい。
【0043】
・薬剤吐出のための吐出開口及び容器本体に連通する通路をブラシ歯部16にも形成してもよい。それによって、薬剤の吐出が不足した部分に、薬剤を少量ずつ吐出しながら塗布していく(手直し)することができる。
【0044】
・容器本体12に収容する薬剤の粘度は特に限定されない。また、薬剤の種類は、染毛剤、パーマ剤、シャンプー、トリートメント、リンス、育毛剤等の毛髪化粧料等、クリーム状、ゲル状、ペースト状、液状等、特に限定されない。
【0045】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
(a)前記ブラシ歯部は、幅方向中央部において盛り上がった湾曲形状の基台面であって、該基台面に立設される前記ブラシ歯は、先端が同一平面上になるよう前記基台面から垂直方向に立設されることを特徴とする毛髪用塗布具。したがって、複数のブラシ歯の先端部によって形成される平面(頭皮接触面)の面積を大きくすることができる。それにより、頭皮上にかかる圧力が減少し、頭皮刺激が低減される。また、塗布の抵抗によりブラシ歯部16が倒れたりせず、安定に塗布できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本実施形態における毛髪用塗布具を示す側面図。
【図2】本実施形態における毛髪用塗布具を示す櫛歯側正面図。
【図3】本実施形態における毛髪用塗布具を示すブラシ歯部側正面図。
【図4】本実施形態における毛髪用塗布具を示す平面図。
【図5】図1におけるブラシ歯部用の基台面の長手方向と平行な矢印S方向からの斜視図。
【図6】図2における要部A−A断面図。
【図7】図1におけるB−B断面図。
【図8】本実施形態における毛髪用塗布具のブラシ歯部の使用図。
【図9】薬剤が凹部内に収容された際のB−B断面図。
【図10】図1におけるブラシ歯部用の基台面の長手方向と平行な矢印S方向から見たブラシ歯部の頭皮における使用状態を示す図。
【図11】この発明の別の実施形態の毛髪用塗布具を示すB−B断面図。
【図12】この発明の別の実施形態の毛髪用塗布具を示すB−B断面図。
【図13】この発明の別の実施形態の毛髪用塗布具を示すB−B断面図。(a)及び(b)は、凹部の形状における別例を示す断面図。
【図14】この発明の別の実施形態の毛髪用塗布具を示すB−B断面図。
【符号の説明】
【0047】
11…毛髪用塗布具、12…容器本体、12a…開口端部、13…櫛体、13a,13b,13c…薬剤保持部としての凹部、14…櫛体本体、15,19…櫛歯部、15a…櫛歯部の吐出開口、15b…櫛歯部の背面、15c…櫛歯、15d…櫛歯部の基台、15e…櫛歯部の基台面、16…ブラシ歯部、16a…ブラシ歯部の背面、16b…ブラシ歯、16c…ブラシ歯部の基台、16d…ブラシ歯部の基台面、17,17a…薬剤、18…小さい凸部、19…櫛歯部、20…薬剤保持部としての凸部、22…頭皮、X…軸線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤が充填される容器本体、及び前記容器本体の開口端部に連結されるとともに、ブラシ歯部と前記容器本体を挟持圧縮することにより薬剤が吐出される吐出開口が形成されている櫛歯部とが互いに背面を対向するように配設されている櫛体を備える毛髪用塗布具において、
前記ブラシ歯部及び櫛歯部との間に前記吐出開口より吐出された薬剤を保持する薬剤保持部が形成されていることを特徴とする毛髪用塗布具。
【請求項2】
前記薬剤保持部は、凹部であることを特徴とする請求項1記載の毛髪用塗布具。
【請求項3】
前記薬剤保持部は、前記ブラシ歯部と櫛歯部間の長手方向において、前記櫛歯部の基台面の長手方向の長さより略同一又は長いことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の毛髪用塗布具。
【請求項4】
前記薬剤保持部は、少なくとも前記ブラシ歯部の背面によって形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項記載の毛髪用塗布具。
【請求項5】
前記ブラシ歯部の長手方向の長さが、前記櫛歯部の長手方向の長さと略同一又は長いことを特徴とする請求項4記載の毛髪用塗布具。
【請求項6】
前記ブラシ歯部の基台の幅が、前記櫛歯部の基台の幅よりも2〜20mm大きいものであることを特徴とする請求項4又は請求項5記載の毛髪用塗布具。
【請求項7】
前記容器本体は、有底筒状に構成されるとともに、前記ブラシ歯部の基台面が前記容器本体の軸線に対し、5〜30°の角度で上向きに傾斜していることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項記載の毛髪用塗布具。
【請求項8】
前記ブラシ歯部は、複数のブラシ歯を有してなり、該複数のブラシ歯は、頭皮に接触させた際、ブラシ歯部の基台面の長手方向と頭皮表面が略平行状態になるように基台面上に立設されることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項記載の毛髪用塗布具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−48949(P2008−48949A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−229089(P2006−229089)
【出願日】平成18年8月25日(2006.8.25)
【出願人】(000113274)ホーユー株式会社 (278)
【Fターム(参考)】