説明

毛髪等の塵芥除去方法及び塵芥除去装置

【目的】物品に絡み付いた毛髪や糸くず等の細かな塵芥を物品に損傷を与えずに自動除去して、物品再生作業効率の向上を図ることのできる塵芥除去方法及び塵芥除去装置を提供することである。
【構成】フックライナー11は、搬送コンベア2との間隙にマットMを通過させるとき、マットに付着した塵芥を除去部材のフック16bに絡め取らせて除去する塵芥除去機能を有する。フックライナー11は両面型面状ファスナー16による除去部材を有し、両面型面状ファスナー16のいずれか一方の面のフック16bが毛髪等の除去により消耗したとき、裏返して取り替えることにより他方の面のフック16bによる塵埃除去を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば清掃用物品に付着した毛髪や糸くず等の細かな塵芥を除去する塵芥除去方法及び塵芥除去装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の清掃用物品、例えば、玄関マットやフロアマット、クロス等はレンタル商品として提供され、レンタル業者によって回収され、再生処理されて繰り返し使用されている。
【0003】
清掃用物品の再生処理は、例えばレンタルマットの場合、特許文献1に開示されているマット洗浄機などを用いて洗浄して行われている。特許文献1のマット洗浄機はパイル側の表面に圧力波を与え、パイル間の砂、泥、汚れ及び異物を落とす圧力波式洗浄機である。特に、特許文献2には洗浄処理を経てモップのパイルに残留した毛髪を毛髪処理剤により除去する除去方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−239490号公報
【特許文献2】特開平7−48594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のマット洗浄機による洗浄では、パイル側の表面に圧力波を直接衝突させて、パイル間の砂や泥等を落としているが、パイル間に絡み付いた毛髪や糸くず等の細かな塵芥を完全に除去するのが難しく残留した。圧力波を強くすれば、かかる毛髪や糸くず等もほぼ除去することも可能であるが、パイルに損傷を与えてしまい商品価値が低下するおそれがあった。また、特許文献2に開示された毛髪処理剤による薬剤処理を過度に行うとパイル等を劣化させるおそれがあった。従って、従来の洗浄工程の後には、残存した毛髪等を除去するための、手作業による毛髪等の除去作業工程を必要としており、再生作業の効率が向上しないといった問題を生じていた。
【0006】
本発明の目的は、上記課題に鑑み、物品に絡み付いた毛髪や糸くず等の細かな塵芥を物品に損傷を与えずに自動除去して、物品再生作業効率の向上を図ることのできる塵芥除去方法及び塵芥除去装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記課題につき鋭意検討した結果、毛髪の自動除去に際して、金属ブラシや櫛歯状硬質部材によってパイルから毛髪等を掻き取ると、パイル等を痛めると共に、物品搬送過程での摩擦抵抗が大きすぎて自動化に適さないことが判明し、一方ファスナーに使用されているフック状係合素子が比較的ソフトタッチで接触しパイルと絡み合って毛髪等の除去を円滑に行える知見を得るに至った。本発明はかかる知見に基づきなされたものであり、本発明の第1の形態は、毛髪や糸くず等の細かな塵芥の付着した物品から前記塵芥を除去する塵芥除去方法であって、前記塵芥を絡め取るためのフック状又は鉤状の除去部材を回転周面に形成した回転体を回動自在に支持すると共に前記物品の搬送面に対向配置し、前記物品を前記回転体と前記搬送面の間を通過させながら、前記塵芥を前記除去部材に絡め取らせて除去することを特徴とする塵芥除去方法である。
【0008】
本発明の第2の形態は、第1の形態において、前記回転体を前記回動自在の状態で前記搬送面に対して上下方向に移動可能に配置した塵芥除去方法である。
【0009】
本発明の第3の形態は、第1又は第2の形態において、前記搬送面の搬送方向の前後に亘って張設され、中間部を前記回転体の下端側に接触させた線材を配設し、前記線材により前記物品の前記回転体への巻き込みを防止した塵芥除去方法である。
【0010】
本発明の第4の形態は、第3の形態において、前記物品が通過する側の前記回転体の通過側側面と前記線材の間に、当接部材を配設し、前記通過側に回り込む前記物品の前端部を前記当接部材に当接させて前記搬送方向側に案内して、前記巻き込みを防止した塵芥除去方法である。
【0011】
本発明の第5の形態は、第1〜第4のいずれかの形態において、前記除去部材は、基材面に前記フックを密集して形成した面状ファスナーからなる塵芥除去方法である。
【0012】
本発明の第6の形態は、第1〜第5のいずれかの形態において、前記除去部材は、基材面の表裏に前記フックを密集して形成した両面型面状ファスナーからなり、基材面にループを密集して形成した取着用面状ファスナーを前記回転体の本体に取着し、前記両面型面状ファスナーのいずれか一方の面の前記フックを前記ループに係合させて取着し、他方の面の前記フックにより前記塵芥の除去を行う塵芥除去方法である。
【0013】
本発明の第7の形態は、第1〜第6のいずれかの形態において、前記物品はカーペット、クロス、マット、払拭体のいずれかのダストコントロール製品である塵芥除去方法である。
【0014】
本発明の第8の形態は、毛髪や糸くず等の塵芥の付着した物品から前記塵芥を除去する塵芥除去装置であって、前記塵芥を絡め取るためのフック状又は鉤状の除去部材を回転周面に形成した回転体と、前記回転体を回動自在に支持する支持部材と、前記搬送面と前記回転体の間に前記物品を搬送面に沿って搬送する搬送装置とを有し、前記物品を前記搬送面と前記回転体の間を通過させながら、前記塵芥を前記除去部材に絡め取らせて除去する塵芥除去装置である。
【0015】
本発明の第9の形態は、第8の形態において、前記回転体を前記回動自在の状態で前記搬送面に対して上下方向に移動可能に配置した塵芥除去装置である。
【0016】
本発明の第10の形態は、第8又は第9の形態において、前記搬送面の搬送方向の前後に亘って張設され、中間部を前記回転体の下端側に接触させた線材を配設し、前記線材により前記物品の前記回転体への巻き込みを防止した塵芥除去装置である。
【0017】
本発明の第11の形態は、第10の形態において、前記線材を前記中間部を下側にして下向きに凸状に張設し、少なくとも前記線材の一端側に張力調整部を設けた塵芥除去装置である。
【0018】
本発明の第12の形態は、第10又は第11の形態において、前記物品が通過する側の前記回転体の通過側側面と前記線材の間に配設した当接部材を備え、前記通過側に回り込む前記物品の前端部を前記当接部材に当接させて前記搬送方向側に案内して、前記巻き込みを防止した塵芥除去装置である。
【0019】
本発明の第13の形態は、第8〜第12のいずれかの形態において、前記除去部材は、基材面に前記フックを密集して形成した面状ファスナーからなる塵芥除去装置である。
【0020】
本発明の第14の形態は、第8〜第13のいずれかの形態において、前記除去部材は、基材面の表裏に前記フックを密集して形成した両面型面状ファスナーからなり、基材面にループを密集して形成した取着用面状ファスナーを前記回転体の本体に取着し、前記両面型面状ファスナーのいずれか一方の面の前記フックを前記ループに係合させて取着し、他方の面の前記フックにより前記塵芥の除去を行う塵芥除去装置である。
【0021】
本発明の第15の形態は、第8〜第14のいずれかの形態において、前記物品はカーペット、クロス、マット、払拭体のいずれかのダストコントロール製品である塵芥除去装置である。
【発明の効果】
【0022】
本発明の第1の形態によれば、前記塵芥を絡め取るためのフック状又は鉤状の除去部材を回転周面に形成した前記回転体を回動自在に支持すると共に前記物品の搬送面に対向配置し、前記物品を前記回転体と前記搬送面の間を通過させながら、前記塵芥を前記除去部材に絡め取らせて除去するので、毛髪や糸くず等の細かな塵芥を物品に損傷を与えずに自動除去して、物品再生作業効率の向上を図ることができる。
【0023】
前記除去部材には、フック状係合素子が形設されたファスナーに限定されず、前記回転体と前記搬送面の間を通過するときの摩擦抵抗の大きすぎないフック状又は鉤状の部材を使用することができる。前記搬送面は搬送コンベア機構や搬送チェーン機構からなる搬送装置により形成することができる。
【0024】
本発明は、カーペット、クロス、マット、払拭体等のダストコントロール製品を主な除去処理対象とするが、その他に不要な毛髪等が付着しやすい室内用敷物等にも適用することができる。
【0025】
マット等の物品においては、その表面に形設したパイル等により物品の厚さが物品自体も含めて種々異なるため、前記回転体と前記搬送面との間隔を固定したときには、厚い物品を通過させる際に、前記除去部材との摩擦抵抗が大きくなり、前記除去部材が噛み込んで通過不良や物品が前記回転体に巻き込まれたりするおそれを生ずる。そこで、本発明の第2の形態によれば、前記回転体を前記回動自在の状態で前記搬送面に対して上下方向に移動可能に配置することにより、厚みの大きい物品が搬送された場合には前記回転体がその物品からの抗力を受けて上方に移動して前記除去部材との摩擦抵抗を緩和して過度の噛み込みを防止し、円滑な物品搬送及び塵埃除去を行うことができる。
【0026】
本発明の第3の形態によれば、前記搬送面の搬送方向の前後に亘って張設され、中間部を前記回転体の下端側に接触させた線材を配設し、前記線材により前記物品の前記回転体への巻き込みを防止するので、前記物品の前進側端部が前記除去部材と係合して前記回転体の通過側に巻き込まれかけても前記線材に当接して、前記回転体の通過時に速やかに分離され、円滑な物品搬送及び塵埃除去を行うことができる。
【0027】
前記物品の可撓性の大きい素材からなる場合などにおいては、前記物品の前進側端部が前記除去部材と係合して前記通過側に巻き込まれかけたとき、前記線材に当接しても分離されずに、前記回転体に巻き付いてしまう事態を生ずる。そこで、本発明の第4の形態によれば、前記物品が通過する側の前記回転体の通過側側面と前記線材の間に、当接部材を配設し、前記通過側に回り込む前記物品の前端部を前記当接部材に当接させて前記搬送方向側に案内して、前記巻き込みを防止するので、前記当接部材への当接により前記物品の前端部と前記除去部材との係合を強制的に解除して剥離し、より確実に物品搬送及び塵埃除去の円滑化を実現することができる。
【0028】
本発明の第5の形態によれば、前記除去部材は、基材面に前記フックを密集して形成した面状ファスナーからなるので、前記フック(係合素子)がソフトタッチで接触してパイル等と絡み合って毛髪等の除去を円滑に行え、しかも前記回転体に巻き付けて装着でき、簡易に前記フックを前記回転周面に形成することができる。
【0029】
本発明の第6の形態によれば、前記除去部材は、基材面の表裏に前記フックを密集して形成した両面型面状ファスナーからなり、基材面にループを密集して形成した取着用面状ファスナーを前記回転体の本体に取着し、前記両面型面状ファスナーのいずれか一方の面の前記フックを前記ループに係合させて取着し、他方の面の前記フックにより前記塵芥の除去を行うので、前記両面型面状ファスナーのいずれか一方の面の前記フックが毛髪等の除去により消耗したとき、裏返して前記取着用面状ファスナーに取着することにより他方の面の前記フックによる塵埃除去を行え、前記除去部材の在庫削減を実現して効率的な塵埃除去作業を行うことができる。
【0030】
本発明の第7の形態によれば、前記物品として、カーペット、クロス、マット、払拭体のいずれかのダストコントロール製品に適用することにより、例えば、これらをレンタル商品として使用する際の再生処理作業の効率化、省人化及び再生処理費用の削減の向上に寄与する。
【0031】
本発明の第8の形態によれば、前記塵芥を絡め取るためのフック状又は鉤状の除去部材を回転周面に形成した前記回転体を前記支持部材により回動自在に支持すると共に前記物品の搬送面に対向配置し、前記物品を前記搬送装置の搬送駆動により前記回転体と前記搬送面の間を通過させながら、前記塵芥を前記除去部材に絡め取らせて除去するので、毛髪や糸くず等の細かな塵芥を物品に損傷を与えずに自動除去して、物品再生作業効率の向上を図ることのできる塵芥除去装置を提供することが可能となる。
【0032】
本発明の第9の形態によれば、前記回転体を前記回動自在の状態で前記搬送面に対して上下方向に移動可能に配置することにより、厚みの大きい物品が搬送された場合には前記回転体がその物品からの抗力を受けて上方に移動して前記除去部材との摩擦抵抗を緩和して過度の噛み込みを防止し、円滑な物品搬送及び塵埃除去を行うことのできる塵芥除去装置を提供することが可能となる。
【0033】
本発明の第10の形態によれば、前記搬送面の搬送方向の前後に亘って張設され、中間部を前記回転体の下端側に接触させた線材を配設し、前記線材により前記物品の前記回転体への巻き込みを防止するので、前記物品の前進側端部が前記除去部材と係合して前記回転体の通過側に巻き込まれかけても前記線材に当接して、前記回転体の通過時に速やかに分離され、円滑な物品搬送及び塵埃除去を行うことのできる塵芥除去装置を提供することが可能となる。
【0034】
本発明の第11の形態によれば、前記線材を前記中間部を下側にして下向きに凸状に張設し、少なくとも前記線材の一端側に設けた張力調整部により、前記中間部が弛まずに前記除去部材に埋没する適切な状態に張力調整を行え、円滑な物品搬送及び塵埃除去を行うことのできる塵芥除去装置を提供することが可能となる。
【0035】
本発明の第12の形態によれば、前記物品が通過する側の前記回転体の通過側側面と前記線材の間に、当接部材を配設し、前記通過側に回り込む前記物品の前端部を前記当接部材に当接させて前記搬送方向側に案内して、前記巻き込みを防止するので、前記当接部材への当接により前記物品の前端部と前記除去部材との係合を強制的に解除して剥離し、より確実に物品搬送及び塵埃除去の円滑化を実現することのできる塵芥除去装置を提供することが可能となる。
【0036】
本発明の第13の形態によれば、前記除去部材は、基材面に前記フックを密集して形成した面状ファスナーからなるので、前記フック(係合素子)がソフトタッチで接触してパイル等と絡み合って毛髪等の除去を円滑に行え、しかも前記回転体に巻き付けて装着でき、簡易に前記フックを前記回転周面に形成することのできる塵芥除去装置を提供することが可能となる。
【0037】
本発明の第14の形態によれば、前記除去部材は、基材面の表裏に前記フックを密集して形成した両面型面状ファスナーからなり、基材面にループを密集して形成した取着用面状ファスナーを前記回転体の本体に取着し、前記両面型面状ファスナーのいずれか一方の面の前記フックを前記ループに係合させて取着し、他方の面の前記フックにより前記塵芥の除去を行うので、前記両面型面状ファスナーのいずれか一方の面の前記フックが毛髪等の除去により消耗したとき、裏返して前記取着用面状ファスナーに取着することにより他方の面の前記フックによる塵埃除去を行え、前記除去部材の在庫削減を実現して効率的な塵埃除去作業を行うことのできる塵芥除去装置を提供することが可能となる。
【0038】
本発明の第15の形態によれば、前記物品として、カーペット、クロス、マット、払拭体のいずれかのダストコントロール製品に適用することにより、例えば、これらをレンタル商品として使用する際の再生処理作業の効率化、省人化及び再生処理費用の削減の向上を図ることのできる塵芥除去装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施形態である塵埃除去装置3を設置したマット処理装置の側面構成図である。
【図2】塵埃除去装置3の平面図である。
【図3】塵埃除去装置3に用いるフックライナー11の構成図である。
【図4】フックライナー11の軸支構造及びワイヤ調整機構の側面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明の実施形態に係る塵埃除去装置を図面を参照して以下に説明する。
本実施形態は、パイルmが多数、基材bの表面に植設されたレンタル用マットMの再生処理工程における、表面処理剤塗布部4の手前に塵埃除去装置3を設置した設置例である。
図1は塵埃除去装置3を設置した表面処理剤塗布用マット処理装置の側面構成図である。
【0041】
表面処理剤塗布用マット処理装置は、架台1上部に設置された搬送コンベア2、搬送コンベア2の搬送面に配置された塵埃除去装置3及び表面処理剤塗布部4からなる。前記搬送面は作業床面6に対して作業者がマットMを搬入しやすい高さに、架台1の脚部5の長さにより設定されている。表面処理剤塗布部4は、搬送コンベア2を挟んで対向配置された塗布ローラ4a及び押圧ローラ4b、塗布ローラ4aのローラ面に対向し、コーティングオイルタンク4cから供給されるシリコンオイル(表面処理剤)を滴下塗布するディスペンサノズル4dからなる。マット洗浄機(図示せず)による洗浄工程において、パイル間の砂、泥、汚れ及び異物を落とされたマットMは、搬送コンベア2の搬送面に載置される。マットMは搬送されながら塵埃除去装置3を通過して毛髪等の細かな塵芥が除去された後、塵埃除去装置3に近接して配設された表面処理剤塗布部4の塗布ローラ4a側に押圧ローラ4bにより押圧されてパイルに表面処理剤が塗布されて搬出されていく。
【0042】
搬送コンベア2は複数個の無端ベルトからなり、各ベルトは搬出側の駆動ローラ7と搬入側の従動ローラ8間に巻回され、互いに所定間隔をおいて並列している。搬送コンベア2は単一の無端ベルトで構成されてもよい。駆動ローラ7側にはテンションローラ9が配設されている。駆動ローラ7は駆動モータ(図示せず)に連結され、駆動モータの駆動により回転し、搬送コンベア2を矢印方向、つまり搬入側から搬出側に回動させる。搬出側には、処理済みマットの回収台車10が配置される。
【0043】
図2は塵埃除去装置3の平面図である。
塵埃除去装置3は、マットMのパイルmに付着した毛髪や糸くず等の塵芥を除去するためのフックライナー11と、フックライナー11を回動自在に支持する支持部材12を有する。図2の42は、上部枠部1A、1Bに内設された従動ローラ8の軸受部を示す。
【0044】
図3はフックライナー11の構成を示す。
フックライナー11は前記塵芥を絡め取るためのフック状又は鉤状の除去部材を回転周面に形成した回転ローラ(回転体)20からなる。回転ローラ20は中空円筒ローラからなる。回転ローラ20の両側面には円盤体21が熔着され、両端の円盤体21には同軸状に回転軸18が突設されている。
【0045】
前記除去部材は、基材16aの表裏面にフック(係合素子)16bを密集して形成した両面型面状ファスナー16からなる。両面型面状ファスナー16は片面にフックを密集して形成した面状ファスナーの一組からなり、各面状ファスナーの基材16a同士を接合して縫着し、表裏面にフック16bを起毛した形態を有する。
【0046】
両面型面状ファスナー16の回転ローラ20への取着状態を図3の拡大部Aに示す。回転ローラ20のローラ表面には、取着用面状ファスナー14が接着剤層15を介して接合されている。取着用面状ファスナー14はラバー材13と、ラバー材13の表面に密集して縫製加工されたループ14aからなる。
両面型面状ファスナー16は、いずれか一方の面のフック16bを取着用面状ファスナー14のループ14aに係合させて回転ローラ20に取着されている。両面型面状ファスナー16は回転ローラ20の約1/4の円周幅を有し、4枚の両面型面状ファスナー16が僅かな隙間17をあけて回転ローラ20の全面を覆うように取着されている。勿論、1枚の両面型面状ファスナーにより回転ローラ20の全面を覆って取着することができる。
なお、取着用面状ファスナー14には、基布にループを密集形成した面状ファスナーを用い、その基布をラバーシートに縫着又は接着した形態のものを使用することができる。
【0047】
フックライナー11は、搬送コンベア2との間隙にマットMを通過させるとき、マットに付着した塵芥を除去部材のフック16bに絡め取らせて除去する塵芥除去機能を有する。また、フックライナー11は、両面型面状ファスナー16による除去部材を有しており、両面型面状ファスナー16のいずれか一方の面のフック16bが毛髪等の除去により消耗したとき、裏返して取着用面状ファスナー14に取着して取り替えることにより他方の面のフック16bによる塵埃除去を行え、前記除去部材の在庫削減を実現して効率的な塵埃除去作業を行うことができる。両面のフック16bを十分に使用した後は、フック16bに絡み取った毛髪等を櫛やブラシで掻き取りながら真空掃除機により吸引除去して簡易に再生できるので、両面型面状ファスナー16を再利用することが可能となる。
【0048】
回転ローラ20は外径80mmのSUS製パイプからなり、回転軸18の外径は20mmである。フックライナー11の自重総量は約14Kgである。回転軸18は一対の支持部材12により回動自在に支持されている。
【0049】
図4はフックライナー11の軸支構造(4A)及びワイヤ調整機構(4B)の側面構成を示す。
一対の支持部材12は、図2に示すように、搬送コンベア2の両側部に設けた架台1の上部枠部1A、1Bに起立して互いに対向配置されている。
【0050】
支持部材12は、3本の縦溝22、24、26を刻設したSUS製板材からなる。支持部材12の底部12aは架台1に固着するためにL字形に折り曲げられており、各底部12aにて各支持部材12の縦溝22、24、26が互いに対向して架台1の上部枠部1A、1Bにビス止め固定されている。中央の縦溝22の底部には回転軸18を回動自在に支持する円弧部23が形成されている。縦溝22の溝幅は、回転軸18が上下方向に摺動可能な幅に形成されている。縦溝22の前後に配置された縦溝24、26には、夫々、マットの巻き込み防止用ワイヤ28を張設するための支持軸29、30を夫々、遊動自在に支持する円弧部25、27が形成されている。縦溝24、26の溝幅は、支持軸29、30が夫々、遊挿可能な幅に形成されている。なお、縦溝22は鉛直方向に刻設されているが、搬入側に傾斜させて形成してもよい。
【0051】
回転ローラ20の回転軸18には、支持部材12の板厚の間隔をあけて、回転軸18より拡径の軸支用フランジ盤19の一組が形成されている。回転ローラ20は両端の一組の軸支用フランジ盤19の各間隙を縦溝22に嵌入して、一対の支持部材12に軸支される。回転軸18はフックライナー11の自重により円弧部23に当接して軸支される。回転ローラ20を支持部材12に軸支した状態で、フックライナー11は図2に示すように、搬送コンベア2の搬送方向に直交して配設されている。一組の軸支用フランジ盤19により縦溝22周辺の板材を挟み込むので、フリー回転可能な回転ローラ20が脱離することなく軸支することができる。
【0052】
フックライナー11は、搬送コンベア2の搬送面に対し、搬送コンベア2による搬送力を受けて前進移動するマットMが通過可能な間隔をあけて対向配置されている。フックライナー11の回転軸18は、縦溝22に嵌入され上下移動自在に保持されているので、厚みの大きいマットMや部分的に厚みが大きいマットMが搬送された場合にあっても、フックライナー11がマットMからの抗力を受けて上方に移動して前記除去部材との摩擦抵抗を緩和して過度の噛み込みを防止し、円滑な物品搬送及び塵埃除去を行うことができる。
【0053】
マットMの素材は可撓性を有しており、塵芥除去の際にフック16bに係合したままフックライナー11に巻き付くおそれがあるので、本実施形態では、巻き込み防止用ワイヤ28及びスクレーパ35を配設して、フックライナー11への巻き込み防止機能を付加している。
【0054】
巻き込み防止用ワイヤ28は0.8mm径のSUS線材からなり、その中間部を下側にして下向き凸状に、フックライナー11の搬送方向前後に亘って、支持軸29、30間に張設されている。巻き込み防止用ワイヤ28の前端部33は締付具34によりループ状に形成されている。支持軸29の外周面にはワイヤ線材が埋没可能なワイヤ溝が刻設されており、そのワイヤ溝に前端部33のループ部分が収設されている。(4B)に示すように、支持軸30には軸芯を貫通する貫通穴30aが穿設されており、巻き込み防止用ワイヤ28の後端部が貫通穴30aを挿通して、コイルばね37を介してストッパ部材38に係止されている。コイルばね37は支持軸30の外周面とストッパ部材38の間に介在して、フックライナー11の下方に亘り支持軸29、30間に張設された巻き込み防止用ワイヤ28の張力を一定に保持している。コイルばね37とストッパ部材38はストッパ部材38から引き出す前記後端部の長さを調整することにより、巻き込み防止用ワイヤ28の張力を可変設定できる張力調整部を構成している。この張力調整部による張力調整により、巻き込み防止用ワイヤ28の中間部が弛まずにフック16bに埋没する適切な状態に張力調整を行うことができる。フック16bは基材16aからの高さ1.5〜1.7mmを有し、また、巻き込み防止用ワイヤ28のワイヤ径0.8mmを考慮して、フックライナー11の下端側で0.7〜0.9mmの高さ分のフック16bが巻き込み防止用ワイヤ28から突出するよう弛みなく張力調整するのが好ましい。巻き込み防止用ワイヤ28及び前記張力調整部は、巻き込み防止効果を高めるうえで複数配置するのが好ましく、所定の間隔をおいて複数組、前記搬送面上に並設されている。
【0055】
搬送面の搬送方向の前後に亘って巻き込み防止用ワイヤ28を張設することにより、搬入マットMの前端部がフック16bに係合したままフックライナー11に巻き付いても、巻き込み防止用ワイヤ28に当接してフックライナー11の通過時に速やかに分離され、円滑な物品搬送及び塵埃除去を行うことができる。
【0056】
更に、マットの巻き込み防止をより確実にするために、スクレーパ35がフックライナー11の搬出側に配設されている。スクレーパ35は、フックライナー11のマット通過側側面と巻き込み防止用ワイヤ28との間に、巻き込み防止用ワイヤ28に近設して、前記搬送面を横断状に配置された当接板からなる。スクレーパ35の下端縁はフックライナー11に近設配置されると共に、スクレーパ35は巻き込み防止用ワイヤ28の傾斜方向に傾斜して並設され、図2に示すように、支持軸30に所定間隔をあけて配設された固定部材36にビス止め固定されている。
【0057】
図4の(4C)は固定部材36の側面を示す。固定部材36は一対のカップリング49を介して支持軸30に固定されている。カップリング49は支持軸30の外径と同径の内径を有した半割状の軸連結用継手である。一対のカップリング49は互いに突き合わせた状態で支持軸30に外嵌され、内側凹部にてビス50によりビス止めされて支持軸30に固着されている。
固定部材36は支持軸30の外側面に当接して外嵌される半月状円弧部43を有し、下方側のカップリング49の側部にビス止めするためのビス穴45が2個穿設されたステー板からなる。カップリング49の側部にはビス穴45に対応する2個のビス穴が穿設されている。
【0058】
円弧部43の直径ラインに沿って延長した先端部に、ステー板面より直角に折曲されたスクレーパ固定部44が一体形成されている。スクレーパ固定部44にはスクレーパ35固定用ビス穴46が2個穿設されている。各ビス穴46に対応して、スクレーパ35にもビス穴が穿設されている。半月状円弧部43を支持軸30の外側面に当接して外嵌した状態で、下方側のカップリング49の側部のビス穴とビス穴45を位置合わせして、ビス48により螺着することにより、固定部材36はカップリング49を介して支持軸30に固定される。この固定により、固定部材36は巻き込み防止用ワイヤ28の張設角度と同様の傾斜角で傾斜配置される。更に、上方よりビス穴46に対応したスクレーパ35のビス穴を位置合わせして、ビス47によりビス止めしてスクレーパ35が固定部材36に固着される。スクレーパ35の固定部材36への固着により、巻き込み防止用ワイヤ28の傾斜方向に沿って斜めに設置される。なお、スクレーパ35の前端縁をフックライナー11の下端近傍まで接近させて配設することができる。
【0059】
スクレーパ35をフックライナー11のマット通過側側面と巻き込み防止用ワイヤ28の間に配設することにより、搬入マットが巻き込み防止用ワイヤ28の間を潜って通過側に回り込もうとしても、マット前端部がスクレーパ35に当接して搬出側に案内され、マット前端部とフック16bとの係合を強制的に解除して剥離し、より確実に物品搬送及び塵埃除去の円滑化を実現することができる。
【0060】
搬送面の清掃やフックライナー11のフック切替等の作業時には、支持部材12の縦溝22に沿って上方から取り出すことができる。架台1の最前端には、フックライナー受部41が設置されている。一対のフックライナー受部41は、夫々上部枠部1A、1Bに固着されており、各フックライナー受部41は支持部材12と同様の回転軸18の受溝が形成されている。取り出したフックライナー11をフックライナー受部41の受溝に回転軸18を嵌入、移載して、フック切替作業や付着物の清掃作業を行うことができる。フックライナー受部41を架台1の最前端の空きスペースを利用して設置でき、作業スペースの削減を図ることができる。
また、ストッパ部材38の係止を解除することにより巻き込み防止用ワイヤ28による支持軸29、30間の連結を解除することができる。図4の(4A)に示すように、縦溝22の両側部を上方に延設して、支持軸29、30を支持軸移載用の受部39、40を設けることにより作業スペースの削減を図ることができる。受部39、40は縦溝24、26と同様の受溝により形成することができる。
【0061】
本実施形態では、塵埃除去装置3を表面処理剤塗布部4の直前に設置して、搬送コンベア2を共用して毛髪等の除去処理及び表面処理剤塗布処理をマットMを搬送しながら連続処理可能にしている。本発明においては、塵埃除去装置3と同様の塵埃除去装置を専用のマット搬送装置と共に単独の装置として構成することができる。
【0062】
尚、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲における種々変形例、設計変更などをその技術的範囲内に包含するものであることは云うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明によれば、カーペット、クロス、マット、払拭体等の物品に付着した毛髪等の細かな塵芥除去を物品に損傷を与えることなく自動除去して、再生作業効率の向上を図ることのできる塵芥除去装置を実現することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 架台
1A 上部枠部
1B 上部枠部
2 搬送コンベア
3 塵埃除去装置
4 表面処理剤塗布部
4a 塗布ローラ
4b 押圧ローラ
4c コーティングオイルタンク
4d ディスペンサノズル
5 脚部
6 作業床面
7 駆動ローラ
8 従動ローラ
9 テンションローラ
10 回収台車
11 フックライナー
12 支持部材
12a 底部
13 ラバー材
14 取着用面状ファスナー
14a ループ
15 接着剤層
16 両面型面状ファスナー
16a 基材
16b フック
17 隙間
18 回転軸
19 軸支用フランジ盤
20 回転ローラ
21 円盤体
22 縦溝
23 円弧部
24 縦溝
25 円弧部
26 縦溝
27 円弧部
28 巻き込み防止用ワイヤ
29 支持軸
30 支持軸
30a 貫通穴
31 保持用フランジ盤
32 保持用フランジ盤
33 前端部
34 締付具
35 スクレーパ
36 固定部
37 コイルばね
38 ストッパ部材
39 支持軸受部
40 支持軸受部
41 フックライナー受部
42 軸受部
43 円弧部
44 スクレーパ固定部
45 ビス穴
46 ビス穴
47 ビス
48 ビス
49 カップリング
50 ビス
M マット
m パイル
b 基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
毛髪や糸くず等の細かな塵芥の付着した物品から前記塵芥を除去する塵芥除去方法であって、前記塵芥を絡め取るためのフック状又は鉤状の除去部材を回転周面に形成した回転体を回動自在に支持すると共に前記物品の搬送面に対向配置し、前記物品を前記回転体と前記搬送面の間を通過させながら、前記塵芥を前記除去部材に絡め取らせて除去することを特徴とする塵芥除去方法。
【請求項2】
前記回転体を前記回動自在の状態で前記搬送面に対して上下方向に移動可能に配置した請求項1に記載の塵芥除去方法。
【請求項3】
前記搬送面の搬送方向の前後に亘って張設され、中間部を前記回転体の下端側に接触させた線材を配設し、前記線材により前記物品の前記回転体への巻き込みを防止した請求項1又は2に記載の塵芥除去方法。
【請求項4】
前記物品が通過する側の前記回転体の通過側側面と前記線材の間に、当接部材を配設し、前記通過側に回り込む前記物品の前端部を前記当接部材に当接させて前記搬送方向側に案内して、前記巻き込みを防止した請求項3に記載の塵芥除去方法。
【請求項5】
前記除去部材は、基材面に前記フックを密集して形成した面状ファスナーからなる請求項1〜4のいずれかに記載の塵芥除去方法。
【請求項6】
前記除去部材は、基材面の表裏に前記フックを密集して形成した両面型面状ファスナーからなり、基材面にループを密集して形成した取着用面状ファスナーを前記回転体の本体に取着し、前記両面型面状ファスナーのいずれか一方の面の前記フックを前記ループに係合させて取着し、他方の面の前記フックにより前記塵芥の除去を行う請求項1〜5のいずれかに記載の塵芥除去方法。
【請求項7】
前記物品はカーペット、クロス、マット、払拭体のいずれかのダストコントロール製品である請求項1〜6のいずれかに記載の塵芥除去方法。
【請求項8】
毛髪や糸くず等の塵芥の付着した物品から前記塵芥を除去する塵芥除去装置であって、前記塵芥を絡め取るためのフック状又は鉤状の除去部材を回転周面に形成した回転体と、前記回転体を回動自在に支持する支持部材と、前記搬送面と前記回転体の間に前記物品を搬送面に沿って搬送する搬送装置とを有し、前記物品を前記搬送面と前記回転体の間を通過させながら、前記塵芥を前記除去部材に絡め取らせて除去することを特徴とする塵芥除去装置。
【請求項9】
前記回転体を前記回動自在の状態で前記搬送面に対して上下方向に移動可能に配置した請求項8に記載の塵芥除去装置。
【請求項10】
前記搬送面の搬送方向の前後に亘って張設され、中間部を前記回転体の下端側に接触させた線材を配設し、前記線材により前記物品の前記回転体への巻き込みを防止した請求項8又は9に記載の塵芥除去装置。
【請求項11】
前記線材を前記中間部を下側にして下向きに凸状に張設し、少なくとも前記線材の一端側に張力調整部を設けた請求項10に記載の塵芥除去装置。
【請求項12】
前記物品が通過する側の前記回転体の通過側側面と前記線材の間に配設した当接部材を備え、前記通過側に回り込む前記物品の前端部を前記当接部材に当接させて前記搬送方向側に案内して、前記巻き込みを防止した請求項10又は11に記載の塵芥除去装置。
【請求項13】
前記除去部材は、基材面に前記フックを密集して形成した面状ファスナーからなる請求項8〜12のいずれかに記載の塵芥除去装置。
【請求項14】
前記除去部材は、基材面の表裏に前記フックを密集して形成した両面型面状ファスナーからなり、基材面にループを密集して形成した取着用面状ファスナーを前記回転体の本体に取着し、前記両面型面状ファスナーのいずれか一方の面の前記フックを前記ループに係合させて取着し、他方の面の前記フックにより前記塵芥の除去を行う請求項8〜13のいずれかに記載の塵芥除去装置。
【請求項15】
前記物品はカーペット、クロス、マット、払拭体のいずれかのダストコントロール製品である請求項8〜14のいずれかに記載の塵芥除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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