説明

気体分離膜

【課題】
高い酸素透過速度と高い酸素窒素選択率を有する分離膜を提供すること。
【解決手段】
湿式相分離法により製造され、気孔率が20%以上80%以下、平均孔径1nm以上100nm以下、100℃における突き刺し強度が2〜50Nのポリオレフィンを主成分とする高分子微多孔膜と、該膜の少なくとも一方の表面および/または内部に、平均膜厚が0.01μm以上0.4μm未満のフッ素系気体分離性樹脂を主成分として含む気体分離性薄膜とを有する気体分離膜であって、酸素窒素分離係数が1.4以上であることを特徴とする気体分離膜。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた気体分離性能を有する気体分離膜に関する。
【背景技術】
【0002】
膜による気体分離法は、他の気体分離法に比べてエネルギー効率が高く、また装置の構造が簡単であるなどの特徴を有するため、各種気体の分離に応用されている。
【0003】
気体分離膜の最も一般的な形態は、多孔質支持膜の表面上に気体分離性樹脂の薄膜を形成したものである。この形態は、膜にある程度の強度を付与しつつ、気体の透過量を多く持たせることに有効である。この多孔質支持膜として、例えば特許文献1では限外ろ過膜の構造を有する膜が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平6−96107号公報
【特許文献2】特開2002−122049号公報
【特許文献3】国際公開第90/15662号パンフレット
【特許文献4】特開平10−99665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の膜ではポリオルガノシロキサン系樹脂を使用しているため、気体透過速度に課題があった。
【0006】
また、近年気体分離膜のなかでも酸素と窒素の透過性の違いを利用した分離膜を、内燃機関システムに利用することが試みられている(特許文献2)。この利用法によると、内燃機関の排出ガスの浄化や燃料消費率の向上に有効で、最近の排気ガスや炭酸ガスによる環境問題を比較的容易に解決することができると考えられているため注目されている。
【0007】
ところが、従来からある気体分離膜をこのような用途に用いた場合、十分な膜の性能を発揮させることができなかった。すなわち、内燃機関システムでは他の使用法に比べて、1)膜に加わる圧力が高い、2)膜の使用環境温度が高い、という厳しい条件が加えられる。このため、膜が破れたり変形することにより、膜の性能が十分発揮できなかった。例えば、特許文献1に開示されている気体分離膜は室温程度で使用することを想定しているため、支持膜の強度が不十分であり、気体分離性樹脂の劣化が顕著であった。
【0008】
また、特許文献3には、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、またはポリオレフィン樹脂よりなる多孔質支持膜の片面にアモルファスフッ素樹脂が被覆された気体分離膜が開示されている。しかしながらこの文献には、気体分離性樹脂の能力を最大限に発揮させる方法について具体的な開示がないため、気体透過性能を十分に得ることはできなかった。
【0009】
さらに、特許文献4には、パーフルオロジオキソール二元共重合体を製膜し、さらに溶融圧縮成形して得られる単層の気体分離膜が記載されている。この分離膜は、酸素窒素分離係数が1.4以上と気体分離性能が高い。しかしながら、この膜の機械的強度を高める目的で膜厚を大きくすると、気体性能は低くなる。このため、実用的な分離膜モジュールを構成するには難点があった。
【0010】
本発明は、気体透過性能や気体分離性など、気体分離膜としての性能に優れる気体分離膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、気体分離膜の構造に着目して鋭意研究した結果、特定の多孔質支持膜と特定の気体分離性薄膜を組み合わせた気体分離膜が、気体透過性能や気体分離性などの気体分離性能に優れることを見出し、本発明をなすに至った。すなわち本発明は、以下のとおりである。
【0012】
(1)多孔質支持膜と気体分離性樹脂を主成分として含む気体分離性薄膜とを有し、酸素透過速度が100GPU以上、酸素窒素分離係数が1.1以上であることを特徴とする気体分離膜。
(2)多孔質支持膜が気孔率が20%以上80%以下である高分子微多孔膜であり、該高分子微多孔膜の少なくとも一方の表面及び/又は内部に、平均膜厚が0.01μm以上5μm以下の気体分離性薄膜を有し、気体分離性樹脂の酸素窒素分離係数が1.5以上であることを特徴とする上記1の気体分離膜。
(3)多孔質支持膜が気孔率が20%以上80%以下である高分子微多孔膜であり、該高分子微多孔膜の少なくとも一方の表面及び/又は内部に、0.01g/m以上10g/m以下の量の気体分離性樹脂が薄膜を構成し、該気体分離性樹脂の酸素窒素分離係数が1.5以上であることを特徴とする上記1の気体分離膜。
(4)高分子微多孔膜が、ポリオレフィンを主成分として形成された微多孔膜である上記2または3に記載の気体分離膜。
(5)高分子微多孔膜が湿式分離法により製造されたポリオレフィン微多孔膜であることを特徴とする上記4に記載の気体分離膜。
(6)高分子微多孔膜が、粘度平均分子量30万以上400万以下の超高分子量ポリエチレン、粘度平均分子量が10万以上300万以下のポリプロピレンから選択された1種又は2種を含有する上記4または5に記載の気体分離膜。
(7)高分子微多孔膜が、網目構造状のミクロフィブリルから構成された微多孔膜である上記2〜6のいずれか1項に記載の気体分離膜。
(8)高分子微多孔膜の膜厚が5μm以上200μm以下である上記2〜7のいずれか1項に記載の気体分離膜。
(9)高分子微多孔膜の気液法による平均孔径が1nm以上300nm以下である上記2〜8のいずれか1項に記載の気体分離膜。
(10)高分子微多孔膜の平均孔径が0.01〜0.3μmであり、プルラン法による孔径分布指数が1.1〜1.5である上記2〜9のいずれか1項に記載の気体分離膜。
(11)高分子微多孔膜の透気度が50〜1500秒である上記2〜10のいずれか1項に記載の気体分離膜。
(12)高分子微多孔膜の100℃における突き刺し強度が1〜50Nである上記2〜11のいずれか1項に記載の気体分離膜。
(13)高分子微多孔膜の100℃での熱収縮率が、縦、横方向ともに5%以下である上記1〜12のいずれか1項に記載の気体分離膜。
(14)気体分離性樹脂がフッ素系樹脂からなるフッ素系気体分離性薄膜であることを特徴とする上記1〜13のいずれか1項に記載の気体分離性膜。
(15)気体分離性樹脂が、酸素窒素分離係数1.5以上のフッ素系樹脂である上記1〜14のいずれか1項に記載の気体分離膜。
(16)気体分離性樹脂が、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソールとテトラフルオロエチレンの共重合体である上記1〜15のいずれか1項に記載の気体分離膜。
(17)気体分離性薄膜の膜厚が0.01μm以上1μm未満である上記1〜16のいずれか1項に記載の気体分離膜。
(18)0.01g/m以上10g/m以下の量の気体分離性樹脂が薄膜をなしていることを特徴とする上記1〜17のいずれか1項に記載の気体分離膜。
(19)100℃での熱収縮率が、縦、横方向ともに5%以下である上記1〜18のいずれか1項に記載の気体分離膜。
(20)100℃における突き刺し強度が1〜50Nである上記1〜19のいずれか1項に記載の気体分離膜。
(21)酸素窒素分離係数が1.5以上であることを特徴とする上記1〜20の気体分離膜。
(22)上記1〜21のいずれかに記載の気体分離膜を用いた窒素富化膜。
(23)上記1〜21のいずれかに記載の気体分離膜を用いた酸素富化膜。
(24)高分子樹脂の融点以上の温度で該高分子樹脂を可塑剤に溶解して溶液を得た後、該高分子樹脂の結晶化温度以下の温度に前記溶液を冷却してゲルを得、該ゲルを用いて成膜する成膜工程と、該成膜工程で得られた膜を4倍以上の延伸倍率で二軸延伸して延伸膜とする延伸工程と、該延伸工程で得られた延伸膜から可塑剤を除去する可塑剤除去工程と、該可塑剤除去工程で得られた高分子微多孔膜に、気体分離性樹脂の溶液を塗布して乾燥する塗布乾燥工程と、を含むことを特徴とする上記1〜21のいずれかに記載の気体分離膜の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、高い酸素透過速度と高い酸素窒素選択率を有する分離膜を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について、その好ましい形態を中心に、詳細を説明する。
【0015】
ここでいう気体分離膜は、多孔質支持膜と気体分離性樹脂を主成分として含む気体分離性薄膜とを有する。好ましくは、多孔質支持膜の表面及び/又は内部に、前記気体分離性薄膜が存在する形態を有する。なお、本明細書中において「主成分」とは、構成成分の60wt%以上、好ましくは70wt%以上、さらに好ましくは80wt%以上、最も好ましくは90wt%以上含まれていることをいう。
【0016】
[多孔質支持膜]
ここでいう多孔質支持膜とは、膜の表裏をつなぐ貫通した微細な穴を有する膜からなる支持体であり、その形状、素材は問わない。例えば、中空糸状多孔質支持膜、フィルム状多孔質支持膜、不織布状支持膜があげられ、フィルム状であることが好ましい。また、柔軟、かつ軽量であること、さらには大面積化が可能であることから高分子微多孔膜(以下、単に微多孔膜という。)が好ましい。素材としては、アセテート、ポリテトラフルオロエチレン、ガラス繊維、ポリオレフィン、ポリエーテルサルホン、セルロースなどが例示できる。
【0017】
微多孔膜の成分は、上記構造及び物性を達成するものであれば特に限定されないが、気体分離性樹脂溶液を塗工する際の作業性の点からポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンを主成分とすることが好ましく、ポリエチレンを主成分とする微多孔膜を用いることがさらに好ましい。
【0018】
ここでで用いるポリエチレンとしては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなどを挙げることができ、これらは1種のみでも2種以上を組み合わせて使用することもできる。またホモポリマーのみならず、エチレンとプロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテンなどのαオレフィンとの共重合体などのコポリマー;あるいはグラフトポリマーなども使用できる。また、これらの混合物であってもかまわない。また、上記ポリオレフィンの分子量は、10万以上が好ましい。
【0019】
また、これらのポリエチレン成分に加え、耐熱性付与の目的で超高分子量ポリエチレンを加えることもできる。耐熱性や強度を付与することにより、高温環境下で気体分離膜を使用した場合にも寸法や形状の安定性が向上する。ここで超高分子量ポリエチレンとは、粘度平均分子量が30万以上であるポリエチレンである。ポリエチレンのホモポリマーのみならず、エチレン単位に対してプロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテン等のα−オレフィンの単位を4モル%以下の割合で含む共重合体(線状共重合ポリエチレン)であってもよい。
【0020】
超高分子量ポリエチレンの粘度平均分子量は、加工しやすさなどの観点から400万以下が好ましく、より好ましくは50万〜250万である。この中から数種類の超高分子量ポリエチレンを選択してブレンドしてもかまわない。中でも、粘度平均分子量150万以上500万未満、50万以上150万未満、30万以上50万未満のポリエチレンの中から二種類または三種類を混合すると、混合するポリエチレン同士の親和性が増し、耐熱性などの性能を十分に引き出すことができるので好ましい。この平均分子量は、多段重合や樹脂のブレンドなどによって調整することができる。好ましくは重量平均分子量100万以上の超高分子量ポリエチレンと重量平均分子量50万以下の高密度ポリエチレンのブレンド物である。
【0021】
超高分子量ポリエチレンの含有量は、加工のしやすさから、微多孔膜を構成する樹脂の全重量に対して、5〜100wt%が好ましく、より好ましくは10〜50wt%、さらに好ましくは10〜40wt%である。
【0022】
気体分離膜に強度や耐熱性が必要とされる場合、必要に応じてポリプロピレンを加えることができる。使用しうるポリプロピレンとしては、アイソタクチックポリプロピレン、アタクチックポリプロピレン、プロピレン・エチレン共重合体、1−ブテン・プロピレン共重合体などが使用できる。好ましくは90%以上のアイソタクチックインデックスを有するポリプロピレンがあげられる。また、その粘度平均分子量は10万以上300万以下であることが好ましく、15万以上200万以下がより好ましく、20万以上100万以下が特に好ましい。
【0023】
ポリプロピレンを添加する場合、その含有比率は、微多孔膜を構成する樹脂の全重量に対して3〜50wt%とするとよく、より好ましくは5〜40wt%、さらに好ましくは5〜30wt%である。
【0024】
なお、ここでいう分子量とはゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography)により求められる分子量のことである。
【0025】
さらに、上記の樹脂成分に加えて、無機充填材、酸化防止剤などの成分を加えることもできる。
【0026】
無機充填物としては、シリカ、マイカ、タルク等が挙げられ、それらを単独で用いても或いは混合物で用いてもよい。無機充填材の含量は、微多孔膜の全重量に対して、好ましくは5〜80wt%、より好ましくは10〜60wt%、さらに好ましくは20〜50wt%である。ただし、機械的強度が特に要求される場合には、無機充填材の使用量は0.1wt%未満にすると好ましく、より好ましくは0.05wt%未満である。この範囲にとどめることにより、長時間使用した場合にも微小クラックが生成することがなく、微多孔膜の強度が維持できる。
【0027】
さらには、網目構造状のミクロフィブリルより形成された高分子微多孔膜であると、孔径が微細となるために特に好ましい。網目構造上のミクロフィブリルにより構成された微多孔膜であることにより、孔径が小さく、孔径分布が狭くなるため、気体分離性薄膜の形成が容易になるので、膜厚をより薄くすることができる。
【0028】
ここで網目構造状のミクロフィブリルとは、延伸により高度に配向することにより得られた微多孔膜に見られる微細な連続構造体をいい、紐状又は繊維状等の形状を呈するものである。微多孔膜の表面構造はミクロフィブリルが均一に分散した網目構造からなることが好ましい。このように均一に分散することにより、該網目構造状のミクロフィブリルは実質的に密着することなく、ミクロフィブリル相互間に間隙を形成しつつ、交差、連結、又は枝分かれして三次元的な網目構造を形成する。その結果、ミクロフィブリルによって区分された微細な間隙(以下、ミクロフィブリル間隔という。)からなる表面構造を有する高分子微多孔膜となる。
【0029】
ミクロフィブリル構造を有する微多孔膜である場合、このミクロフィブリル間隙が微多孔膜の孔となる。この場合、該空隙の間隔を微多孔膜の孔径と定義することができる。該空隙の形状は、円形、楕円形、多角形、不定形など種々の構造が採用可能であるが、その大きさが均一であることが、良好な透過性と気体分離性樹脂の均一な薄膜を得る上で好ましい。ミクロフィブリルの太さは、フィブリル全体の80%以上が、20nm以上200nm以下であることが好ましい。このフィブリルの形状は走査型電子顕微鏡(SEM)を観察することにより測定することができる。
【0030】
このような構造を有する微多孔膜としては、湿式相分離法により製造されたポリオレフィン微多孔膜や、乾式法により製造されたポリオレフィン微多孔膜などが挙げられる。生産性に優れ、また、上記のミクロフィブリルが均一に分散した網目構造が得やすいことから、湿式相分離法により製造されたポリオレフィン微多孔膜がより好ましい。
【0031】
微多孔膜の膜厚は、機械強度と透過性のバランスが良好であることから、5μm以上200μm以下が好ましい。膜厚の下限は10μm以上がより好ましく、15μm以上が更に好ましい。膜厚の上限は200μm以下がより好ましく、100μm以下が更に好ましく、80μm以下が最も好ましい。
【0032】
微多孔膜の気孔率は、透過性と機械的強度を十分に確保しうることから、20%以上80%以下が好ましく、気孔率の下限は30%以上がより好ましく、40%以上が更に好ましい。気孔率の上限は70%以下がより好ましい。気孔率は実施例で後述する方法で求めることができる。
【0033】
微多孔膜の透気度は、膜の欠点がない状態で透過性をより高く維持できることから、50秒以上1500秒以下が好ましい。透気度の下限は70秒以上がより好ましく、100秒以上が更に好ましい。透気度の上限は1000秒以下がより好ましく、800秒以下が更に好ましい。透気度はJIS P−8117に準拠するガーレー式透気度計にて測定することができる。
【0034】
微多孔膜の平均孔径は、透過性と機械的強度を十分に確保しやすく、また、分離係数が適当範囲となることから、気液法で1nm以上10000nm以下が好ましい。孔径の下限は5nm以上がより好ましく、10nm以上が更に好ましい。孔径の上限は5000nm以下がより好ましく、1000nm以下が更に好ましく、500nm以下がより更に好ましく、300nmがさらに一層好ましく、200nm未満がよりさらに一層好ましく、100nm以下が最も好ましい。
【0035】
なお、気孔率、透気度、および孔径分布は、膜の製造条件を制御することにより上記の範囲に調整することができる。
【0036】
プルラン法による孔径分布指数DIは、後述の実施例に記載されたプルラン法により測定される最大孔径Dと平均孔径Dの比(DI=D/D)である。1.1〜2.4が好ましく、1.1〜1.5であると気体の分離係数が高くなるのでより好ましい。さらに好ましくは1.1〜1.4である。この理由は定かではないが、孔径分布指数が1近辺であると、気体分離性素材からなる薄膜層が均一な構造となり、破れにくくなるためであると推察される。微多孔膜の平均孔径の測定方法、およびプルラン法は、特許3009495号公報にさらに詳細に説明されている。
【0037】
このように、微多孔膜の平均孔径と孔径分布指数を適度な範囲にすることにより、気体分離膜の透過性能と分離性能をより満足な範囲に設定することが可能となる。
【0038】
微多孔膜の機械的強度は、突き刺し強度を指標とすることができる。気体分離膜の室温での突き刺し強度は2N以上50N以下が好ましい。この範囲であると、高圧力のかかる使用環境下においても十分な強度を得ることができる上、モジュール化も容易に行うことができる。3N以上がより好ましく、4N以上がさらに好ましい。30N以下がより好ましく、20N以下が更に好ましい。
【0039】
また、微多孔膜の100℃での突き刺し強度は1N以上50N以下であることが好ましく、より好ましくは2N以上50N以下である。この範囲であると、モジュール化が容易である上に、高温での使用環境においても十分な強度を維持することができる気体分離膜が得られる。より好ましくは3N以上30N以下であり、4N以上20N以下が更に好ましい。
【0040】
微多孔膜の室温および100℃での突き刺し強度を上記の範囲に調整するためには、微多孔膜を構成する樹脂の組成と分子量などを調整すればよい。
【0041】
微多孔膜の熱収縮率は、縦(MD)方向及び横(TD)方向ともに、100℃では0%以上5%以下が好ましく、より好ましくは120℃で0%以上20%以下である。この範囲であることにより、モジュールとして加工した場合に、孔の閉塞や分離性能の低下などの問題が生じにくい。またモジュールを高温下で使用した場合においても、孔の閉塞が起こりにくくなる。さらに好ましくは135℃での熱収縮率が0%以上40%以下である。この熱収縮率を有する微多孔膜を得るためは、微多孔膜を製造する際、延伸倍率や熱処理温度などの成膜条件を制御することにより調整することができる。また、熱収縮率の測定方法は、後述の実施例の方法に従って測定する。
【0042】
なお、上述の微多孔膜は上記任意の成分の、複数の微多孔膜からなる積層体であってもかまわない。
【0043】
[気体分離性樹脂]
ここでいう気体分離性薄膜は、気体分離性樹脂を主成分として含むものである。この気体分離性樹脂とは、混合気体から特定の気体を優先的に透過させる性質を持った樹脂を指す。使用しうる気体分離性樹脂の例としては、気体分離性能を有する樹脂であれば特に限定されるものではない。例えば、フッ素系樹脂、シリコン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリアクリル系樹脂などが挙げられる。中でも気体透過性が好ましい範囲であることから、フッ素系の樹脂であることが好ましく、より好ましくはパーフルオロアモルファスポリマーであることが好ましい。この中でも、気体透過速度が向上することから、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソールの共重合体が好ましく、より好ましくは、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソールとテトラフルオロエチレンの共重合体である。その中でもジオキソールのモル%が40%以上95%以下であることが好ましく、より好ましくは50%以上90%以下、更に好ましくは64%以上88%以下である。
【0044】
気体分離性樹脂の気体透過性能は、透過速度(透過流束)、透過係数および分離係数αで表現することが出来る。ここで、透過速度は単位時間、単位面積、単位分圧差における気体透過量のことであり、単位はGPU(Gas permeation unit)=10−6cm(STP)/cm・sec・cmHgである。更に、単位膜厚あたりの透過速度を透過係数といい、単位はバーラー(barrer)=10−10cm(STP)cm/cm・seccmHgである。透過速度が膜物性であるのに対して透過係数は素材物性である。透過係数に優れる樹脂であっても、必要十分な薄膜化適性を兼ね備えない場合は気体分離に適さないため注意を要する。薄膜化適性を有するかどうかは、気体分離性樹脂、気体分離性樹脂溶液、多孔質支持体の組合せにも依存する。従って、これらを適宜組合せることにより選択する。例えば、気体分離性樹脂としてフッ素系樹脂、その溶媒としてフッ素系溶媒、微多孔膜としてポリオレフィン微多孔膜の組合せとした場合、気体分離性樹脂の薄膜化が容易となるので、特に好ましい。
【0045】
さらに、分離係数αは任意の二種上の気体の透過係数、もしくは透過速度の比をいう。
【0046】
気体分離性樹脂の透過係数と分離係数は、目的とする用途に応じて適切に選択すればよい。例えばガスの浄化に用いる場合は、以下の酸素透過性能を有することが好ましい。すなわち、気体分離性樹脂の酸素透過係数が100barrer以上であることが好ましく、200barrer以上がより好ましく、500barrer以上が更に好ましく、1000barrer以上がより更に好ましく、1500barrer以上が特に好ましく、2000barrer以上が極めて好ましく、2500barrer以上が最も好ましい。また、通常得られる気体分離性樹脂の気体透過係数を考慮すると、100,000barrer以下である。
【0047】
本発明の気体分離膜を酸素と窒素の分離に用いる場合は、気体分離性樹脂の酸素と窒素の分離係数α(=RO/RN)は、分離効率が向上することから1.1以上が好ましい。実用的なモジュールの大きさを考慮すると、1.4以上がより好ましい。さらに好ましくは1.5以上であり、1.8以上がより更に好ましく、2.0以上がより更に一層好ましく、2.2以上が特に好ましく、2.4以上が極めて好ましく、2.6以上が最も好ましい。通常得られる気体分離性樹脂の気体透過係数を考慮すると、の上限は16以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましい。
【0048】
上記の透過係数、および分離係数は、気体分離性樹脂の厚みなどに左右されずに素材そのものの透過性能を測るため、厚みが既知で、欠陥が無い膜を用いて測定する必要がある。したがって、まず20〜100μm程度の厚みにキャストし、素材それ自身のみからなり、平滑で気泡を含まない自立膜を作成する。得られた膜をJIS−Z−1707に基づいて測定することにより、透過係数および分離係数を求めることができる。
【0049】
[気体分離性薄膜]
気体分離性薄膜の平均膜厚は、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)で観察される画面を用いて測定することができる。また、その他の方法として、気体分離性薄膜の平均膜厚は、支持膜が平滑な表面をもち、気体分離性樹脂がその表面に均一に成膜していると仮定して塗工量と比重から計算により求めることもできる。
【0050】
気体分離性薄膜の平均膜厚は、透過性の観点から5μm以下であることが好ましく、気体透過速度が良好な点で2μm以下がより好ましく、更に好ましくは1μm未満であり、最も好ましくは0.4μm以下である。また、耐久性の観点から0.01μm以上が好ましく、0.03μm以上が更に好ましい。
【0051】
また、上記の気体分離性薄膜の厚みは、耐久性の観点から微多孔膜の平均孔径の1倍以上が好ましく、2倍以上が更に好ましく、3倍以上が特に好ましい。また、透過性の観点から100倍以下が好ましく、80倍以下が更に好ましく、50倍以下が特に好ましい。
【0052】
なお、気体性樹脂の微多孔膜上の存在量、すなわち塗工量は、気体透過速度が良好な範囲となることから、10g/m以下であることが好ましい。より好ましくは4g/m以下であり、さらに好ましくは2g/m以下である。また、塗工量の耐久性の面から0.01g/m以上が好ましく、さらに好ましくは、0.06g/mである。
【0053】
[気体分離膜]
ここでいう気体分離膜は、多孔質支持膜と、この表面及び/又は内部に存在する気体分離性樹脂を主成分として含む気体分離性薄膜の複合構造を有する。
【0054】
多孔質支持膜の表面及び/又は内部に気体分離性薄膜を有するとは、多孔質支持膜の表面上の少なくとも一方の表面上に気体分離性樹脂の皮膜が形成されるか、多孔質支持膜の内部のミクロフィブリル間隙に気体分離性樹脂の皮膜が形成され、微多孔膜と気体分離性樹脂皮膜が互いに密着している構造である。気体分離性薄膜は多孔質支持膜の表面、あるいは内部全体にわたって存在している方が好ましい。
【0055】
気体分離膜の平均膜厚は、耐久性と加工性のバランスから、5μm以上200μm以下が好ましく、より好ましくは10μm以上150μm以下、より好ましくは、15μm以上100μm以下である。
【0056】
気体分離膜の酸素透過速度は実用的モジュールの大きさの観点からは、100GPU以上が好ましく、200GPU以上がより好ましく、500GPU以上が更に好ましく、700GPU以上が特に好ましい。その上限は入手可能な素材を考慮すると100,000GPU以下である。実用的な観点からは10,000GPU以下が好ましい。
【0057】
気体分離膜の酸素と窒素の分離係数α(=RO2/RN2)は、分離効率が向上することから1.1以上が好ましく、1.4以上がさらに好ましく、1.5以上がより好ましく、1.8以上が更に好ましく、2.0以上がより更に好ましい。実用性の点を考慮すると、その上限は16以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましい。
【0058】
なお、前記の酸素透過速度、および分離係数は80℃で加熱処理後も上記の範囲を維持しうることが好ましい。この範囲に維持するためには、微多孔膜の樹脂を耐熱性の樹脂とするなどの方法が挙げられる。
【0059】
上記の透過速度、透過係数と分離係数は、微多孔膜の孔径と気体分離性樹脂の選択、および気体分離性膜厚の厚みを制御することにより、調整することができる。孔径が小さく、孔径分布は狭い方が気体分離性樹脂の薄膜化が容易となる。また、膜厚は薄い方が気体透過速度が大きくなる。
【0060】
上記の気体透過速度、分離係数、透過係数、透過速度の測定および80℃での加熱処理条件は、後述する実施例の方法に従えばよい。
【0061】
気体分離膜の機械的強度は、突き刺し強度を指標とすることができる。気体分離膜の室温での突き刺し強度は2N以上50N以下が好ましい。この範囲であると、高圧力のかかる使用環境下においても十分な強度を得ることができる上、モジュール化も容易に行うことができる。3N以上がより好ましく、4N以上がさらに好ましい。30N以下がより好ましく、20N以下が更に好ましい。
【0062】
また、気体分離膜の耐熱性は、100℃での突き刺し強度を指標とすることもできる。気体分離膜の100℃での突き刺し強度は、1N以上50N以下であることが好ましく、より好ましくは2N以上50N以下である。この範囲であると、モジュール化が容易である上に、高温での使用環境においても十分な強度を維持することができる。より好ましくは3N以上30N以下であり、4N以上20N以下が更に好ましい。
【0063】
気体分離膜の室温および100℃での突き刺し強度を上記の範囲に調整するためには、微多孔膜を構成する樹脂の組成と分子量などを調整すればよい。
【0064】
気体分離膜の熱収縮率は、縦(MD)方向及び横(TD)方向ともに、100℃では0%以上5%以下が好ましく、より好ましくは120℃で0%以上20%以下である。この範囲であることにより、モジュールとして加工した場合に、孔の閉塞や分離性能の低下などの問題が生じにくい。またモジュールを高温下で使用した場合においても、孔の閉塞が起こりにくくなる。さらに好ましくは135℃での熱収縮率が0%以上40%以下である。この熱収縮率は、微多孔膜を製造する際、延伸倍率や熱処理温度などの成膜条件を制御することにより調整することができる。また、熱収縮率の測定方法は、後述の実施例の方法に従って測定する。
【0065】
[多孔質支持膜の製法]
前述の多孔質支持膜には乾式法や湿式法により得られた微多孔膜が使用可能である。特に湿式法により得られた微多孔膜は、気孔率が良好で孔径分布指数が小さい微多孔膜が得られるので好ましい。このような微多孔膜の製法には、以下のような相分離法と二軸延伸を組み合わせた製法が、上記のような構造や物性を得ることができるため好ましい。
【0066】
すなわち、微多孔膜を構成する成分の混合物を、含まれる樹脂成分の融点以上の温度で、可塑剤(溶媒)に溶解する。ここで得られた溶液を、含まれる樹脂の結晶化温度以下にまで冷却して高分子ゲルを生成させる。次に該高分子ゲルを用いて成膜を行い(成膜工程)、得られた膜を二軸延伸する。(延伸工程)その後、膜から可塑剤を除去する。(可塑剤除去工程)このように、成膜工程と可塑剤除去工程が含まれる微多孔膜の製法を相分離法という。
【0067】
以下、主成分がポリエチレンである場合の微多孔膜の製造方法を詳細に説明する。可塑剤としては、その沸点以下の温度でポリエチレンと均一な溶液を形成し得る有機化合物を用いる。その具体例として、デカリン、キシレン、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、デシルアルコール、ノニルアルコール、ジフェニルエーテル、n−デカン、n−ドデカン、流動パラフィンなどのパラフィン油などが挙げられる。これらのうちパラフィン油、ジオクチルフタレート、デカリンが好ましい。高分子ゲル中の可塑剤の割合は特に限定はされないが、好ましくは20%〜90%、より好ましくは50%〜80%である。この範囲であると、適当な気孔率を有する微多孔膜を連続成形で得ることが容易となる。
【0068】
成膜方法は、特に限定されないが、例えば以下の方法が挙げられる。まず、押出機に原料の樹脂粉末と可塑剤とを供給し、両者を200℃程度の温度で溶融混錬する。次に、通常のハンガーコートダイ、Tダイから冷却ロールの上へキャストすることによって数十μmから数mmの膜厚のシートを連続的に成形する方法である。成形方法としては、プレスにより冷却固化させたり、Tダイにより成形する方法が好ましいが、Tダイにより成形する方法がより好ましい。
【0069】
次に、得られたシートを少なくとも一軸方向に延伸することによって延伸膜とする。延伸方法は特に限定はされないが、テンター法、ロール法、圧延法等が使用できる。このうち、テンター法による同時二軸延伸が特に好ましい。延伸温度は常温から高分子ゲルの融点までの温度で行うことができ、好ましくは80〜140℃、さらに好ましくは100〜130℃である。延伸倍率は面積による倍率で4〜400倍が好ましく、より好ましくは8〜200倍、さらに好ましくは16〜100倍である。この範囲であると、強度が十分で気孔率が適当な微多孔膜を得ることができる。また、延伸が容易であるため、生産性もよい。
【0070】
さらに、延伸膜から可塑剤を除去することによって微多孔膜を得る。可塑剤の除去方法は特に限定されない。例えば可塑剤としてパラフィン油やジオクチルフタレートを使用する場合は、これらを塩化メチレンやメチルエチルケトン等の有機溶媒で抽出すればよい。そして、有機溶媒を抽出後の膜をその融解温度以下の温度で加熱乾燥することによってより十分に除去することができる。また、例えば可塑剤としてデカリン等の低沸点化合物を使用する場合は、微多孔膜の融解温度以下の温度で加熱乾燥するだけで除去することができる。いずれの場合も膜の収縮による物性の低下を防ぐため、膜を固定するなどして拘束しながら可塑剤を除去することが好ましい。
【0071】
透過性を改善したり寸法安定性を高めるため、必要に応じて、上記で得られた微多孔膜に融解温度以下の温度で熱処理を施すことも好ましい。
【0072】
[気体分離膜の製法]
気体分離膜を製造する方法は特に限定されるものではない。本発明の目的を達成するには、0.01wt%以上50wt%以下の濃度の気体分離性樹脂溶液を微多孔膜表面に塗工し、気体分離性薄膜を形成する方法が好ましい。より好ましくは、10wt%以下であり、気体分離性樹脂溶液の濃度を低濃度にすることにより、微多孔膜に薄い皮膜を形成することができる。気体分離性樹脂を溶解させる溶媒としては、使用する気体分離性樹脂の良溶媒でかつ室温から300℃の範囲に沸点を有する溶媒を選択するとよい。例えば、フッ素系気体分離性樹脂を使用する場合は、フッ素系溶剤が好ましく、炭化水素系気体分離性樹脂を使用する場合には、炭化水素系の溶剤が好ましい。
【0073】
なお、このような低濃度溶液を使用すると、微多孔膜内に気体分離性樹脂が入り込んでしまい、均一な薄い皮膜が微多孔膜表面にできにくい場合があるので、使用する微多孔膜の孔径、表面張力、溶解パラメーターにあわせて、気体分離性樹脂の濃度、表面張力、分子量、溶解パラメーター、溶媒の粘度、極性、表面張力等を調整することが好ましい。例えば、気体分離性樹脂の分子量を高くしたり、気体分離性樹脂と相互作用の強い溶媒を用いると多孔体表面に皮膜が形成されやすくなるので好ましい。このように、気体分離性樹脂の分子量、溶媒の種類、溶液の粘度、および塗布量を適宜選択して組み合わせることにより、微多孔膜表面に破れ等が起こりにくい信頼性の高い極薄い皮膜を形成させることができる。
【0074】
塗工の方法としては、例えば、フィルム状の微多孔膜の片面あるいは両面に所定量の気体透過性樹脂溶液を塗布し、乾燥させる方法が好ましい。この時の塗布方法は、ディップ塗工法、グラビア塗工法、ダイ塗工法、噴霧塗工法等が好ましい。また、ディップ塗工法では、フィルム状の微多孔膜を気体分離性樹脂溶液の入った槽に浸漬したのち、リバースロールやキスロール等で、所定の気体分離性樹脂皮膜が形成されるように微多孔膜表面の溶液量を調整してから、乾燥させる方法が特に好ましい。
【0075】
さらに、気体分離性薄膜と多孔質支持膜の密着性を向上させるために、微多孔膜表面を放電等の処理をすることが好ましい。
【0076】
[気体分離膜の効果および用途]
このような特徴ある支持膜と気体分離性樹脂を複合した気体分離膜は、従来にない気体分離性能を有しているので、各種気体分離用の膜として使用可能である。中でも、窒素富化膜あるいは酸素富化膜として使用すると有用である。条件によっては強度と耐熱性、および、耐熱条件下での気体分離性を維持しうる膜を得ることも可能である。このように優れた性能を有する気体分離膜は、例えばガス浄化用の気体分離膜として利用することができる。
【0077】
[気体分離モジュール]
気体分離膜は、フィルム状の膜を使用する一般的な気体分離モジュールに使用可能であり、特にモジュール形状を限定しない。本発明の気体分離膜はプリーツ形状に加工して使用されることが好ましい。
【実施例】
【0078】
以下に、本発明を実施例等を用いて更に具体的に説明するが、本発明はこられの実施例等により何ら限定されるものではない。なお、実施例及び比較例において示される特性の試験方法、および処理方法は次のとおりである。
【0079】
(1)走査型電子顕微鏡(SEM)の観察条件
走査型電子顕微鏡(SEM)観察は、以下の条件で行なった。
試料: 微多孔膜を適当な大きさに切り出して試料台に固定し、6nm程度のOsコーティングを施し、検鏡用サンプルとした。
装置: HITACHI S−4700
加速電圧:1kV
MODE:Ultra High Resolution
検出器: Upper
(2)微多孔膜の表面構造
(1)の条件に従い、走査型電子顕微鏡(SEM)観察により決定した。
【0080】
(3)微多孔膜の膜厚
ダイヤルゲージ(尾崎製作所:「PEACOCK No.25」(商標))にて測定した。
【0081】
(4)微多孔膜の気孔率
微多孔膜から10cm角のサンプルをとり、その体積と質量から次式を用いて計算した。なお、樹脂密度(g/cm)はASTM−D1505に準拠し、密度勾配法により測定した。
気孔率(%)=(体積(cm)−質量(g)/ポリマー組成物の密度)/体積(cm)×100
(5)微多孔膜及び気体分離膜の突刺強度(室温)
カトーテック株式会社製「KES−G5ハンディー圧縮試験器」(商標)を用いて、針先端の曲率半径0.5mm、突き刺し速度2mm/secの条件で突き刺し試験を行い、最大突き刺し荷重(N)を測定した。
【0082】
(6)微多孔膜及び気体分離膜の突刺強度(100℃)
微多孔膜または気体分離膜を、内径13mm、外径25mmのステンレス製ワッシャ2枚で挟み込み、周囲4点をクリップで止めた後、100℃のシリコンオイル(信越化学工業:KF−96−10CS)に浸漬し、1分後に(5)と同様の手法で突き刺し強度を測定した。
【0083】
(7)微多孔膜の透気度
JIS P−8117準拠のガーレー式透気度計にて測定した。
【0084】
(8)気体分離膜上の気体分離性樹脂薄膜の厚さ(D[μm])
気体分離性薄膜の微多孔膜への単位面積(投影面積A[m])あたりの付着目付け量(塗工量W[kg])と、気体分離性樹脂の公知密度(ρ[kgm−3])から気体分離膜の平均膜厚を以下の計算式で算出した。
D=[W/(ρ・A)]・10
(9)気体分離膜の気体透過性
気体分離膜を直径47mmの円形に切り取り、ステンレス製ホルダー(アドバンテック社製、KS−47Fホルダー)に固定した。ホルダーの一次側から99.9%以上の酸素、もしくは99.9%以上の窒素を所定の圧力で加圧した。2次側の雰囲気が酸素99%以上、もしくは窒素99%以上に置換されていることを酸素濃度計で確認した後、透過した気体の量を石鹸膜流量計で測定した。透過した気体量、気温、大気圧から標準状態における透過速度(GPU:Gas permeation unit=10−6cm(STP)/cmseccmHg)を計算し、酸素と窒素の透過速度の比から分離係数αを計算した。
【0085】
(10)平均孔径(μm)
キャピラリー内部の流体は、流体の平均自由工程がキャピラリーの孔径より大きいときはクヌーセンの流れに、小さいときはポアズイユの流れに従うことが知られている。
そこで微多孔膜の透気度測定における空気の流れがクヌーセンの流れに、また微多孔膜の透水度測定における水の流れがポアズイユの流れに従うと仮定して、下記の条件により平均孔径d(μm)を算出した。
すなわち、空気の透過速度定数Rgas(m/(m・sec・Pa))、水の透過速度定数Rliq(m/(m・sec・Pa))、空気の分子速度ν(m/sec)、水の粘度η(Pa・sec)、標準圧力Ps(=101325Pa)、気孔率ε(%)、膜厚L(μm)を次式にあてはめることにより求めることができる。
d=2ν×(Rliq/Rgas)×(16η/3Ps)×10
ここで、Rgasは透気度(sec)から次式を用いて求められる。
Rgas=0.0001/(透気度×(6.424×10−4)×(0.01276×101325))
またRliqは透水度(m/(m・sec・Pa))から次式を用いて求められる。Rliq=透水度/100
なお、透水度は以下のように求められる。直径41mmのステンレス製の透液セルに、あらかじめアルコールに浸しておいた微多孔膜をセットし、該膜のアルコールを水で洗浄した後、約50000Paの差圧で水を透過させ、120sec間経過した際の透水量(cm)から、単位時間・単位圧力・単位面積当たりの透水量を計算し、これを透水度とした。
【0086】
(11)微多孔膜の熱収縮率(%)
微多孔膜から縦(機械方向)および横(幅方向)ともに10cm角で試料を切り取り、該試料の四方を拘束しない状態で所定の温度(100℃、120℃、135℃)に加熱された熱風循環式オーブンに入れ、2時間加熱後取り出し30分間静置した。その後試料の縦(機械方向)および横(幅方向)の寸法を計測し算出した。
【0087】
(12)粘度平均分子量
デカヒドロナフタリンに試料を溶解させて試料溶液を作製した。これを135℃に調整された動粘度測定用恒温槽(トーマス科学機器(株)製)内でキャノンフェンスケ粘度計(SO100)を用いて極限粘度[η]を測定した。得られた[η]を用いて次のChiangの式により粘度平均分子量Mvを算出した。
[η]=6.77×10−4Mv0.67
(13)気体分離膜の熱処理
気体分離膜を縦(機械方向)および横(幅方向)ともに10cm角で試料を切り出し、該試料の四方を拘束しない状態で100℃に加熱された熱風循環式オーブンに入れ、1000時間加熱後取り出し30分間静置した。
【0088】
(14)プルラン法による孔径分布指数
特許第3009495号に開示されている手法を用いて測定した。即ち、
平均孔径:平膜モジュールを用い、380mmHgの差圧下で0.05重量%のプルラン(昭和電工(株)製)の水溶液を循環させた。このときに、濾液中に含まれるプルランの濃度を示差屈折率測定から求めた。そして、次式により計算した阻止率が50%になるプルランの分子量の値から、Floryの理論を利用して、孔径を換算した。
プルランの阻止率={1−(濾液中のプルラン濃度/原液中のプルラン濃度)}×100溶液状態にある鎖状高分子は球状の糸まり状で、その直径dは、分子鎖の両末端の2乗平均距離[γ2]に対して、近似的に〔d/2〕=[γ2]・・・(1)の関係にあると考えて良い。高分子溶液における粘性と分子鎖の広がりに関するFloryの理論によると、高分子の種類に無関係に固有粘度[η]M=2.1×1021[γ2]3/2・・・(2)が成立するので、式(1)及び(2)により、固有粘度[η]の測定値と、阻止率が50%になる分子量Mとから鎖状高分子の直径dを算出することができる。このdを微多孔膜の平均孔径Dとした。
また、上記による測定において、阻止率が90%となるプルランの分子量の値から同様に孔径を換算し、最大孔径とした。
さらに、微多孔膜の孔径分布指数は、上記の結果を用いて、次の式で算出した。
DIp(プルラン法による孔径分布指数)=最大孔径D[(μm)]/平均孔径D[(μm)]
(15)水銀ポロシメーターによる(水銀圧入法)による細孔直径分布
測定装置として島津オートポア9220(島津製作所)を用い、試料の支持体フィルム約0.15gを約を25mm幅に裁断し、これを折りたたんで標準セルに採り、初期圧20kPa(約3psia、細孔直径60μm相当)の条件で測定した。測定ポイントを130ポイントとし、log等間隔に設定した。データは、横軸を細孔直径の対数とし、縦軸をlog微分細孔容積で整理した。計算式は以下のとおりである。
V(n)[mL/g]: 積分細孔容積 D(n)[μm]:細孔直径
ΔV[mL/g]=V(n)−V(n+1):差分容積
dV/dlogD[mL/g]=ΔV/logD(n)−logD(n+1):
log微分細孔容積
Dm[μm]:モード径(log微分細孔容積曲線の最大値に対応する細孔直径)
1/2[μm]:モード径ピークの半値幅。モード径に対応するlog微分細孔容積値の半分の値を与える細孔径Da、Dbをモード径ピークから読み取りW1/2=Da−Dbとする。
DIHg(水銀ポロシメータによる細孔直径分布)=W1/2/Dm
(16)粘度平均分子量
デカヒドロナフタリンに試料を溶解させ試料溶液を作製し、135℃に調整された動粘度測定用恒温槽(トーマス科学機器(株)製)内でキャノンフェンスケ粘度計(SO100)を用いて極限粘度[η]を測定した。得られた極限粘度[η]を用いて次のChiangの式により粘度平均分子量Mvを算出した。
[η]=6.77×10−4Mv0.67
(17)気体分離膜の加圧・加熱処理
上記(9)で測定した気体分離膜を、ホルダーに固定したまま、1次側から200kPa(ゲージ圧)の圧縮空気を印加し、80℃に加熱された熱風循環式オーブンにホルダーごと入れ、1000時間加熱後取り出し30分間静置した。
【0089】
(18)微多孔膜中の無機充填材含量
蛍光X線装置により、無機充填材の含量を求めた。
【0090】
(19)気体分離膜の加圧、加熱処理
上記(10)で測定した気体分離膜を、ホルダーに固定したまま、1次側から200kPa(ゲージ圧)の圧縮空気を印加し、80℃に加熱された熱風循環式オーブンにホルダーごと入れ、1000時間加熱後取り出し30分間静置した。
【0091】
(20)気体分離性樹脂溶液の調整
沸点97℃のパーフルオロ溶媒(3M社製、フロリナートFC−77)に1.0重量%の濃度で、パーフルオロアモルファスポリマー(デュポン社製、テフロン(登録商標)AF1600、密度1.78g/cm)を溶解した。
【0092】
[参考例]
多孔質支持膜として以下の微多孔膜を作成した。
【0093】
[参考例1−1]
高密度ポリエチレン(粘度平均分子量28万)100重量部、および、酸化防止剤を0.3重量部を混合した。この混合物を二軸押出機にフィーダーを介して投入した。さらに流動パラフィン(37.78℃における動粘度75.9cSt)を100重量部、サイドフィードで押し出し機に注入して200℃で溶融混練した。得られた高分子ゲルを押出機先端に設置したTダイから押出した後、ただちに25℃に冷却したキャストロールで冷却固化させ、厚さ1.9mmのシートを成膜した。
【0094】
このシートを120℃で同時二軸延伸機で7×7倍に延伸した。その後、この延伸シートをメチルエチルケトンに浸漬し、流動パラフィンを抽出することにより除去後、乾燥させて微多孔膜を得た。さらに、これを125℃で熱固定した。得られた微多孔膜は、膜厚40μm、目付け24g/m、気孔率40%、透気度800秒、平均孔径50んm、突き刺し強度9.5Nであった。これを微多孔膜1−1とした。また、上記(1)(2)の方法によりこの膜の表面構造を観察したところ、ミクロフィブリル構造が観察された。
【0095】
[参考例1−2]
高密度ポリエチレン(粘度平均分子量28万)95重量部、ポリプロピレン(粘度平均分子量25万)5重量部、および酸化防止剤を0.3重量部混合した。この混合物を二軸押出機にフィーダーを介して投入した。さらに流動パラフィン(37.78℃における動粘度75.9cSt)を100重量部、サイドフィードで押し出し機に注入して200℃で溶融混練した。得られた高分子ゲルを押出機先端に設置したTダイから押出した後、ただちに25℃に冷却したキャストロールで冷却固化させ、厚さ1.3mmのシートを成膜した。
【0096】
このシートを120℃で同時二軸延伸機で7×7倍に延伸した。その後、この延伸シートをメチルエチルケトンに浸漬し、流動パラフィンを抽出することにより除去後、乾燥させて微多孔膜を得た。さらに、これを125℃で熱固定した。得られた微多孔膜は、膜厚20μm、目付け12g/m、気孔率40%、透気度300秒、平均孔径70nm、突き刺し強度5.0Nであった。これを微多孔膜1−2とした。また、上記(1)(2)の方法によりこの膜の表面構造を観察したところ、ミクロフィブリル構造が観察された。
【0097】
[参考例1−3]
超高分子量ポリエチレン(粘度平均分子量200万)7重量部、高密度ポリエチレン(粘度平均分子量28万)28重量部、および酸化防止剤を0.3重量部混合した。この混合物を二軸押出機にフィーダーを介して投入した。さらに流動パラフィン(37.78℃における動粘度75.9cSt)を前記混合物に対して65重量部、サイドフィードで押し出し機に注入して200℃で溶融混練した。得られた高分子ゲルを、押出機先端に設置したTダイから押出した後、ただちに25℃に冷却したキャストロールで冷却固化させ、厚さ1.2mmのシートを成膜した。
【0098】
このシートを120℃で同時二軸延伸機で7×7倍に延伸した後、この延伸シートをメチルエチルケトンに浸漬し、流動パラフィンを抽出することにより除去後、乾燥して微多孔膜を得た。さらに、これを125℃で熱固定した。得られた微多孔膜は、膜厚16μm、目付け0.9g/m、気孔率40%、透気度300秒、平均孔径50nm、突き刺し強度5.5Nであった。これを微多孔膜1−3とした。また、上記(1)(2)の方法によりこの膜の表面構造を観察したところ、ミクロフィブリル構造が観察された。
【0099】
[参考例1−4]
高密度ポリエチレン(粘度平均分子量28万)60重量部、微粉シリカ40重量部、および酸化防止剤を該組成物に対して0.3重量部混合した。この混合物を二軸押出機にフィーダーを介して投入した。さらに流動パラフィン(37.78℃における動粘度75.9cSt)を100重量部、サイドフィードで押し出し機に注入して200℃で溶融混練した。得られた高分子ゲルを押出機先端に設置したTダイから押出した後、ただちに25℃に冷却したキャストロールで冷却固化させ、厚さ1mmのシートを成膜した。
【0100】
このシートを120℃で同時二軸延伸機で7×7倍に延伸した。その後、この延伸フィルムをメチルエチルケトンに浸漬し、流動パラフィンを抽出することにより除去後、乾燥して微多孔膜を得た。されに、これを140℃で熱固定した。得られた微多孔膜は、膜厚16μm、目付け10.6g/m、気孔率41%、透気度130秒、平均孔径100nm、突き刺し強度4.5Nであった。これを微多孔膜1−4とした。また、上記(1)(2)の方法によりこの膜の表面構造を観察したところ、ミクロフィブリル構造が観察された。
【0101】
[参考例1−5]
高密度ポリエチレン(粘度平均分子量28万)40重量部、および、この高密度ポリエチレンに対して酸化防止剤を0.3重量部混合した。この混合物を二軸押出機にフィーダーを介して投入した。さらに流動パラフィン(37.78℃における動粘度75.9cSt)を前記混合物に対して60重量部、二軸混練機で200℃で溶融混練した。得られた高分子ゲルをプレスで冷却固化させ、厚さ1mmのシートを成膜した。このシートを金枠に挟んで固定した。その後、塩化メチレン中に浸漬して、流動パラフィンを抽出することにより除去した。この後、該原反シートを二軸延伸機にセットし、120℃で5×5倍に延伸した。さらに、これを125℃で熱固定をした。得られた微多孔膜は、膜厚20μm、目付け10.0g/m、気孔率48%、透気度130秒、平均孔径0.1μm、突き刺し強度2.5Nであった。これを微多孔膜1−5とした。また、上記(1)(2)に従って観察したところ、ミクロフィブリル構造は見られず、葉脈状の不均一な孔構造であることが確認された。
【0102】
[参考例2−1]
高密度ポリエチレン(粘度平均分子量28万)100重量部、酸化防止剤を0.3重量部混合した。この混合物を二軸押出機にフィーダーを介して投入した。さらに流動パラフィン(37.78℃における動粘度75.9cSt)100重量部をサイドフィードで押し出し機に注入して200℃で溶融混練した。得られた高分子ゲルを、押出機先端に設置したTダイから押出した後、ただちに25℃に冷却したキャストロールで冷却固化させ、厚さ1.3mmのシートを成膜した。
【0103】
このシートを120℃で同時二軸延伸機で7×7倍に延伸した後、この延伸フィルムをメチルエチルケトンに浸漬し、流動パラフィンを抽出することにより除去後、乾燥させて微多孔膜を得た。さらに、これを130℃で熱固定した。得られた膜を微多孔膜2−1とした。また、上記(1)(2)の方法によりこの膜の表面構造を観察したところ、ミクロフィブリル構造が観察された。
【0104】
[参考例2−2]
高密度ポリエチレン(粘度平均分子量28万)95重量部、ポリプロピレン(粘度平均分子量25万)5重量部、および酸化防止剤を0.3重量部混合した。この混合物を二軸押出機にフィーダーを介して投入した。さらに流動パラフィン(37.78℃における動粘度75.9cSt)100重量部をサイドフィードで押し出し機に注入して200℃で溶融混練した。得られた高分子ゲルを押出機先端に設置したTダイから押出した後、ただちに25℃に冷却したキャストロールで冷却固化させ、厚さ1.3mmのシートを成膜した。
【0105】
このシートを120℃で同時二軸延伸機で7×7倍に延伸した後、この延伸フィルムをメチルエチルケトンに浸漬し、流動パラフィンを抽出することにより除去後、乾燥して微多孔膜を得た。さらに、これを135℃で熱固定した。得られた膜を微多孔膜2−2とした。また、上記(1)(2)の方法によりこの膜の表面構造を観察したところ、ミクロフィブリル構造が観察された。
【0106】
[参考例2−3]
超高分子量ポリエチレン(粘度平均分子量100万)30重量部、および酸化防止剤を0.3重量部混合した。この混合物を二軸押出機にフィーダーを介して投入した。さらに流動パラフィン(37.78℃における動粘度75.9cSt)を70重量部を、サイドフィードで押し出し機に注入して200℃で溶融混練した。得られた高分子ゲルを、押出機先端に設置したTダイから押出した後、ただちに25℃に冷却したキャストロールで冷却固化させ、厚さ0.8mmのシートを成膜した。
【0107】
このシートを130℃で同時二軸延伸機で5×5倍に延伸した。その後、この延伸フィルムをメチルエチルケトンに浸漬し、流動パラフィンを抽出することにより除去後、乾燥させて微多孔膜を得た。さらに、これを140℃で熱固定した。得られた膜を微多孔膜2−3とした。また、上記(1)(2)の方法によりこの膜の表面構造を観察したところ、ミクロフィブリル構造が観察された。
【0108】
[参考例2−4]
高密度ポリエチレン(粘度平均分子量28万)100重量部、および酸化防止剤を0.3重量部混合した。この混合物を二軸押出機にフィーダーを介して投入した。さらに流動パラフィン(37.78℃における動粘度75.9cSt)を100重量部、サイドフィードで押し出し機に注入して200℃で溶融混練した。得られた高分子ゲルを、押出機先端に設置したTダイから押出した後、ただちに25℃に冷却したキャストロールで冷却固化させ、厚さ1.3mmのシートを成膜した。
【0109】
このシートを120℃で同時二軸延伸機で7×7倍に延伸した後、この延伸フィルムをメチルエチルケトンに浸漬し、流動パラフィンを抽出することにより除去後、乾燥させて微多孔膜を得た。得られた膜を微多孔膜2−4とした。また、上記(1)(2)の方法によりこの膜の表面構造を観察したところ、ミクロフィブリル構造が観察された。
【0110】
[参考例3−1]
高密度ポリエチレン(粘度平均分子量28万)70重量部、ポリプロピレン(粘度平均分子量25万)30重量部、および酸化防止剤を0.3重量部混合した。この混合物を二軸押出機にフィーダーを介して投入した。さらに流動パラフィン(37.78℃における動粘度75.9cSt)を前記混合物に対して100重量部をサイドフィードで押し出し機に注入して200℃で溶融混練した。得られた高分子ゲルを押出機先端に設置したTダイから押出した後、ただちに25℃に冷却したキャストロールで冷却固化させ、厚さ1.3mmのシートを成膜した。
【0111】
このシートを120℃で同時二軸延伸機で7×7倍に延伸した後、この延伸フィルムをメチルエチルケトンに浸漬し、流動パラフィンを抽出することにより除去後、乾燥させて微多孔膜を得た。さらに、これを125℃で熱固定した。得られた膜を微多孔膜3−1とした。また、上記(1)(2)の方法によりこの膜の表面構造を観察したところ、ミクロフィブリル構造が観察された。
【0112】
[参考例3−2]
原料樹脂を高密度ポリエチレン(粘度平均分子量28万)50重量部、およびポリプロピレン(粘度平均分子量25万)50重量部とした以外は、参考例3−1と同様の手法で微多孔膜を作成した。得られた膜を微多孔膜3−2とした。また、上記(1)(2)の方法によりこの膜の表面構造を観察したところ、ミクロフィブリル構造が観察された。
【0113】
[参考例3−3]
高密度ポリエチレン(粘度平均分子量28万)40重量部、および、酸化防止剤を0.3重量部、流動パラフィン(37.78℃における動粘度75.9cSt)60重量部、混合した。この混合物を二軸混練機にフィーダーを介して投入し、200℃で溶融混練した。得られた高分子ゲルをプレスで冷却固化させ、厚さ1mmのシートを成膜した。このシートを金枠に挟んで固定し、塩化メチレン中に浸漬して、流動パラフィンを抽出することにより除去した。この後、該原反シートを二軸延伸機にセットし、115℃で5×5倍に延伸し、さらに125℃で熱固定をした。得られた膜を微多孔膜3−3とした。また、上記(1)(2)の方法によりこの膜の表面構造を観察したところ、ミクロフィブリル構造は見られず、葉脈状の不均一な孔構造であることが確認された。
【0114】
[参考例4−1]
超高分子量ポリエチレン(粘度平均分子量200万)20重量部、高密度ポリエチレン(粘度平均分子量28万)20重量部、およびフタル酸ジオクチル(DOP)を42重量部、無機充填材として微粉シリカ18重量部を混合して造粒した。これをT−ダイを装着した二軸押出機に投入し、200℃で溶融混練した。得られた高分子ゲルを、押出し厚さ100μmのシート状に成膜した。該成形物からメチルエチルケトンを用いてDOPを完全に抽出することにより除去した後、苛性ソーダ水溶液(20%、60℃)に10分間浸漬することで微粉シリカを抽出除去し微多孔膜とした。該微多孔膜を2枚重ねて120℃に加熱のもと、縦方向に5倍延伸した後、横方向に2倍延伸した。得られた膜の無機充填材含量は0.05重量%未満であった。また、得られた微多孔膜は、膜厚25μm、気孔率48%、透気度90秒、突き刺し強度4.1Nであった。この膜を微多孔膜4−1とした。また、上記(1)(2)の方法によりこの膜の表面構造を観察したところ、ミクロフィブリル構造が観察された。
【0115】
[参考例4−2]
微粉シリカの抽出条件を、苛性ソーダ水溶液(20%、60℃)に3分間浸漬とした以外は参考例4−1と同様に微多孔膜を作成した。得られた膜の無機充填材含量は1.2重量%であった。この膜を微多孔膜4−2とした。また、上記(1)(2)の方法によりこの膜の表面構造を観察したところ、ミクロフィブリル構造が観察された。
[参考例5−1]
粘度平均分子量200万の超高分子量ポリエチレン21重量部、粘度平均分子量28万の高密度ポリエチレン20重量部、フタル酸ジオクチル(DOP)を42重量部、無機充填材として微粉シリカ18重量部を混合して造粒した。これをT−ダイを装着した二軸押出機に投入し、200℃で溶融混練した。得られた高分子ゲルを、押出し厚さ100μmのシート状に成膜した。該成形物からメチルエチルケトンを用いてDOPを完全に抽出することにより除去した後、苛性ソーダ水溶液(20%、60℃)に10分間浸漬することで微粉シリカを抽出除去し微多孔膜とした。この微多孔膜を2枚重ねて120℃に加熱のもと、縦方向に7倍延伸した後、横方向に7倍延伸した。得られた膜を微多孔膜5−1とした。この膜の無機充填材含量は0.05重量%未満であった。また、膜物性は、膜厚25μm、気孔率48%、透気度90秒、突き刺し強度4.1Nであった。さらに、上記(1)(2)の方法によりこの膜の表面構造を観察したところ、ミクロフィブリル構造が観察された。
【0116】
[実施例1]
微多孔膜1−1の片表面のみに、ディップ塗工プ法により(20)に記載の方法で調整した溶液を塗工速度0.5m/minで塗工し、80℃で乾燥させることにより気体分離膜を得た。得られた膜について上記の条件に基づき各種の性能について測定した。その構成および性能を表1に示す。
【0117】
[実施例2〜5]
微多孔膜1−1の代えて微多孔膜1−2〜1−5をそれぞれ使用した以外は、実施例1と同様の手法で気体分離膜を得た。得られた膜について上記の条件に基づき各種の性能について測定した。その構成および性能を表1に示す。
【0118】
[実施例6]
微多孔膜1−1に代えて市販のポリエーテルスルホン製限外ろ過膜(American Membrane Corporation社製Accupor−30、平均孔径0.03μm)を使用した以外は、実施例1と同様の手法で気体分離膜を得た。得られた膜について上記の条件に基づき各種の性能について測定した。その構成および性能を表1に示す。
【0119】
【表1】

【0120】
[実施例7]
微多孔膜2−1の片表面のみに、ディップ法により上記溶液を塗工速度0.5m/minで塗工し、80℃で乾燥させることにより気体分離膜を得た。得られた膜について上記の条件に基づき各種の性能について測定した。その構成および性能を表2に示す。
【0121】
[実施例8〜10]
微多孔膜2−2、2−3、2−4をそれぞれ使用した以外は、実施例5と同様の手法で気体分離膜を得た。得られた膜について上記の条件に基づき各種の性能について測定した。その構成および性能を表2に示す。
【0122】
[実施例11]
微多孔膜3−1の片面のみに、ディップ法で上記溶液を塗工速度0.5m/minで塗工し、80℃で乾燥させることにより気体分離膜を得た。得られた膜について上記の条件に基づき各種の性能について測定した。その構成および性能を表2に示す。
【0123】
[実施例12]
微多孔膜3−1に代えて微多孔膜3−2を使用した以外は、実施例8と同様の方法で気体分離膜を得た。得られた膜について上記の条件に基づき各種の性能について測定した。その構成および性能を表2に示す。
【0124】
[実施例13]
微多孔膜3−1に代えて微多孔膜3−3を使用した以外は、実施例8と同様の方法で気体分離膜を得た。得られた膜について上記の条件に基づき各種の性能について測定した。その構成および性能を表2に示す。
表2に示したとおり、加圧処理後に分離係数が大きく低下していた。気体分離膜の表面を観察したところ、微多孔膜表面にコーティングした気体分離ポリマー層に、微小の孔が生じていることがわかった。
【0125】
【表2】

【0126】
[実施例14]
微多孔膜4−1の片表面のみに、ディップ法で上記溶液を塗工速度0.5m/minで塗工し、80℃で乾燥させることにより気体分離膜を得た。得られた膜の構成および性能を表3に示す。
【0127】
[実施例15]
微多孔膜4−1に代えて微多孔膜2を使用した以外は、実施例10と同様の方法で気体分離膜を得た。得られた膜について上記の条件に基づき各種の性能について測定した。その構成および性能を表3に示す。
[比較例1]
253℃のガラス転移温度を有するパーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソールとテトラフルオロエチレンとの二元共重合体からなる樹脂を圧縮成型することにより、25mmの厚さを有する膜を製造した。このフィルムの厚さは25μmであり、酸素の透過係数は990barrer、窒素の透過係数は490barrerであった。酸素の透過速度は40GPUであった。結果を表3に示す。
[比較例2]
微多孔膜4−2を支持膜として使用し、その片表面に、環構造を有する含フッ素系ポリマー(TefronAF2400 Dupont社製)1重量部を溶剤(フロリナートFC−75 3M社製)49重量部に溶解した溶液を、ディップ法によって乾燥厚みが5μmになるようにコーティングした。得られた膜の構成および性能を表3示す。
【0128】
[実施例16]
微多孔膜3−1に代えて微多孔膜5−1を使用した以外は、実施例11と同様の方法で気体分離膜を得た。得られた膜について上記の条件に基づき各種の性能について測定した。その構成および性能を表3に示す。
【0129】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0130】
本発明による気体分離膜は、化学プロセス、空調、燃焼炉などに使用される気体分離膜として使用することができる。に多く用いられる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質支持膜と気体分離性樹脂を主成分として含む気体分離性薄膜とを有し、酸素透過速度が100GPU以上、酸素窒素分離係数が1.1以上であることを特徴とする気体分離膜。
【請求項2】
多孔質支持膜が気孔率が20%以上80%以下である高分子微多孔膜であり、該高分子微多孔膜の少なくとも一方の表面及び/又は内部に、平均膜厚が0.01μm以上5μm以下の気体分離性薄膜を有し、気体分離性樹脂の酸素窒素分離係数が1.5以上であることを特徴とする請求項1の気体分離膜。
【請求項3】
多孔質支持膜が気孔率が20%以上80%以下である高分子微多孔膜であり、該高分子微多孔膜の少なくとも一方の表面及び/又は内部に、0.01g/m以上10g/m以下の量の気体分離性樹脂が薄膜を構成し、該樹脂の酸素窒素分離係数が1.5以上であることを特徴とする請求項1の気体分離膜。
【請求項4】
高分子微多孔膜が、ポリオレフィンを主成分として形成された微多孔膜である請求項2または3に記載の気体分離膜。
【請求項5】
高分子微多孔膜が湿式分離法により製造されたポリオレフィン微多孔膜であることを特徴とする請求項4に記載の気体分離膜。
【請求項6】
高分子微多孔膜が、粘度平均分子量30万以上400万以下の超高分子量ポリエチレン、粘度平均分子量が10万以上300万以下のポリプロピレンから選択された1種又は2種を含有する請求項4または5に記載の気体分離膜。
【請求項7】
高分子微多孔膜が、網目構造状のミクロフィブリルから構成された微多孔膜である請求項2〜6のいずれか1項に記載の気体分離膜。
【請求項8】
高分子微多孔膜の膜厚が5μm以上200μm以下である請求項2〜7のいずれか1項に記載の気体分離膜。
【請求項9】
高分子微多孔膜の気液法による平均孔径が1nm以上300nm以下である請求項2〜8のいずれか1項に記載の気体分離膜。
【請求項10】
高分子微多孔膜の平均孔径が0.01〜0.3μmであり、プルラン法による孔径分布指数が1.1〜1.5である請求項2〜9のいずれか1項に記載の気体分離膜。
【請求項11】
高分子微多孔膜の透気度が50〜1500秒である請求項2〜10のいずれか1項に記載の気体分離膜。
【請求項12】
高分子微多孔膜の100℃における突き刺し強度が1〜50Nである請求項2〜11のいずれか1項に記載の気体分離膜。
【請求項13】
高分子微多孔膜の100℃での熱収縮率が、縦、横方向ともに5%以下である請求項2〜12のいずれか1項に記載の気体分離膜。
【請求項14】
気体分離性樹脂がフッ素系樹脂からなるフッ素系気体分離性薄膜であることを特徴とする請求項の1〜13のいずれか1項に記載の気体分離性膜。
【請求項15】
気体分離性樹脂が、酸素窒素分離係数1.5以上のフッ素系樹脂である請求項1〜14のいずれか1項に記載の気体分離膜。
【請求項16】
気体分離性樹脂が、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソールとテトラフルオロエチレンの共重合体である請求項1〜15のいずれか1項に記載の気体分離膜。
【請求項17】
気体分離性薄膜の膜厚が0.01μm以上1μm未満である請求項1〜16のいずれか1項に記載の気体分離膜。
【請求項18】
0.01g/m以上10g/m以下の量の気体分離性樹脂が薄膜をなしていることを特徴とする請求項1〜17のいずれか1項に記載の気体分離膜。
【請求項19】
100℃での熱収縮率が、縦、横方向ともに5%以下である請求項1〜18のいずれか1項に記載の気体分離膜。
【請求項20】
100℃における突き刺し強度が1〜50Nである請求項1〜19のいずれか1項に記載の気体分離膜。
【請求項21】
酸素窒素分離係数が1.5以上であることを特徴とする請求項1〜20の気体分離膜。
【請求項22】
請求項1〜21のいずれかに記載の気体分離膜を用いた窒素富化膜。
【請求項23】
請求項1〜21のいずれかに記載の気体分離膜を用いた酸素富化膜。
【請求項24】
高分子樹脂の融点以上の温度で該高分子樹脂を可塑剤に溶解して溶液を得た後、該高分子樹脂の結晶化温度以下の温度に前記溶液を冷却してゲルを得、該ゲルを用いて成膜する成膜工程と、該成膜工程で得られた膜を4倍以上の延伸倍率で二軸延伸して延伸膜とする延伸工程と、該延伸工程で得られた延伸膜から可塑剤を除去する可塑剤除去工程と、該可塑剤除去工程で得られた高分子微多孔膜に、気体分離性樹脂の溶液を塗布して乾燥する塗布乾燥工程と、を含むことを特徴とする請求項1〜21のいずれかに記載の気体分離膜の製造方法。


【公開番号】特開2013−91065(P2013−91065A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−24455(P2013−24455)
【出願日】平成25年2月12日(2013.2.12)
【分割の表示】特願2008−513234(P2008−513234)の分割
【原出願日】平成19年4月25日(2007.4.25)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】