説明

気体溶解装置

【課題】たとえ入口部で気体が過剰に供給されていても、気泡が除去され、且つ気体を高い濃度で均一に溶解した気体溶解液を、大幅に省エネルギー化して製造できるようにする。
【解決手段】 通路内を流動する液体に気体を注入する気体注入部10と、気体注入部10の下流側に配置され、液体に気体を注入した気液混合液に圧力を加える加圧部14と、加圧部14の下流側に配置された回転空間32と、回転空間32の回転軸心の近傍位置と外部空間及び/または加圧部14の上流側の通路とを連通する連通部52,54を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水等の液体に空気等の気体を溶解させて、単位質量当りについて所望の気体の溶解濃度を増加させた液体を製造する気体溶解装置に関する。本発明の気体溶解装置は、例えば、使用環境下において過飽和状態にまで気体を溶解させた液体を、河川、湖沼または養殖用水槽等に供給することにより、水中の溶存酸素量を高めて水質を改善し、種々の有用な生物が繁殖しやすくしたり、オゾンの溶解度を高めたオゾン水など、医療等に用いるために有益な気体を溶解させた液体を製造したりするのに用いられる。本発明において、溶解濃度とは、ある物質(溶質)が他の物質(溶媒)に実際に溶解している溶液中における溶質の濃度のことを言う。これは、溶解度と言う用語の意味が“溶質が溶媒に溶解する限度を言い、飽和溶液中における溶質の濃度で表わされる”ことと、区別するためである。
【背景技術】
【0002】
液体の酸素等の気体溶解濃度を増加させるための装置として、例えば、液体をポンプで供給して加圧するとともに、気体を液体に混入して溶解させた後に、吐出ノズルに設けたメッシュや多孔板によって、液体を急激に減圧させて微細な気泡を発生させるようにしたものが知られている(特許文献1〜4等参照)。これらは、最終的に微細気泡が混在する液体を得るために、予め気体の液体中での溶解濃度を高めておくという技術であって、例えば、エジェクタなどを用いて気体を微細化された気泡として液体中に取り込んだ後、高圧に保たれた気体溶解タンクなどを用いて液体中に気体を溶解させるようにしている。
【0003】
これらの技術は、いずれも気体の溶解濃度を高めた液体を得たり、微細気泡が混在する液体を得たりするための技術であって、液体中の気体溶解濃度を増加させるための装置において、その省エネルギー化を図った技術ではない。
【0004】
一方、例えば酸素を大量に溶解した水を効率よく、即ち、相対的に少ない投入エネルギーにより生成することができれば、河川や湖沼の水質改善が一層実施し易くなり、環境改善を図ることができる。このような効果を奏する為には、必ずしも酸素を気泡として供給する必要はなく、水中での酸素の溶解濃度(溶存酸素量)を高めればよい。従来、このような有用な気体を対象として、必ずしも気泡発生に至ることを要件とすることなく、専らそれら気体の液体中への溶解濃度を増大することを目的とした装置について十分な開発が成されているとは言えず、従って、そのような気体溶解装置の省エネルギー化について開示している文献も極めて少ない。
【0005】
気体を液体に加圧溶解させ、その後、微細気泡を発生させるタイプの微細気泡発生装置では、気体を溶解させた液体中に気泡が混ざった状態のまま、即ち気体が液体中に残留した状態のまま、例えば外部の水槽への微細気泡発生機構を備えた吐出口に液体を導くと、吐出される流体中の微細気泡の発生量が少なくなってしまう。そのため、特許文献2においては、気泡の混在した液体がリリーフ弁の付いたタンク(気体溶解装置)を通過するように流路を構成することで、高圧下において気体を液体に溶解させるとともに、溶解されずに気体のまま残留した余剰気体を大気に排出して、気体が溶解した液体のみを吐出口に導くようにしている。また、特許文献4においては、気液溶解タンクの下流側配管を流れる液体中に気泡の状態で(液体に溶解することなく)残留している気体を気体分離部により分離して収集し、この収集された気体を、戻し管を介してエジェクタで吸引して再度気液溶解タンクに導いて液中に溶解させるように構成するとともに、外部にある水槽に、少なくとも大きな気泡が混入しないようにしている。
【0006】
なお、膜分離装置等において、エネルギー回収、即ち動力回収を図ったものとして、ポンプと水車を直結してエネルギーを回収することが開示されている(特許文献5参照)。
【特許文献1】特開2002−86018号公報
【特許文献2】特開2003−265938号公報
【特許文献3】特開平4−295361号公報
【特許文献4】特開2001−347145号公報
【特許文献5】特開平8−294619号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
静止した液体に気体を溶解させるためには、一般的に多くの時間が必要である。このため、気体が液体に溶解する速度を増すために種々の方法が採られている。気体が液体に溶解する速度は、液体の気体に対する溶解度と気液界面から離れた液体中に現に溶解している気体の溶解濃度との差に比例し、気液界面の液体は、溶解度まで気体を溶解しており、且つ液体に溶解する気体の溶解度は、気体の圧力に比例して増加する。このため、気体が液体に溶解する速度は、気体の圧力が高いほど速くなる。また、気体と液体の界面面積が大きいほど、気体が液体に溶解する速度は速くなる。このように、気体が液体に溶解する速度は、一つ目には溶解度と気液界面から離れた位置にある液体中に現に溶解している気体の溶解濃度との差に、二つ目には気体の圧力に、三つ目には気体と液体の界面面積にそれぞれ比例的に増加するので、気体の液体中の溶解濃度も増加する。
【0008】
そこで、まず気体の入った液体の圧力を高めることで、気体が液体に溶解する速度を上げることができる。この場合、気体の圧力を上げるとともに、液体の圧力も同時に上げることとなる。また、気体が液体に溶解する速度は気液界面の面積に比例する。液体に対する気体の量を多くしたり、液体に混入する気泡の径を小さくして気泡の個数を多くしたりすることで、気液界面の面積を増すことができ、さらに気体と液体を撹拌することで、気体と液体の混合を良くすることができる。
【0009】
気体及び液体の圧力を高めて溶解濃度を増加させる気体溶解装置においては、短時間に高速に気体を液体に溶解させるために、加圧部の上流で液体に入れる気体の量を液体に対して過大にすると、加圧後においても液体に溶解させることができなかった気体が液体中に残留し、これが吐出側の、例えば外部の水槽に吐出されてしまう。このように、気体溶解装置の気体溶解液の出口においても、液体に溶解されずに気体の状態で気体が残留している場合には、気体溶解装置の外部水槽への吐出部に、例え微細気泡発生機構が構成されていたとしても、微細気泡の発生量は少なくなり、大きな気泡が発生し易くなるという現象が生じる。このため、例えば、外部の水槽に気体溶解液を吐出するノズルより上流にある場所において液体に溶解していない余剰気体を取除く必要がある。
【0010】
ここで気体溶解装置と言う表現の意味について説明する。例えば、特許文献1に示す微細気泡発生装置では、循環ポンプにより水槽から液体を吸引しエジェクタに向けて吐出するとともに、気体を液体に混入して気液溶解タンクで溶解させ、気体を溶解した液を水槽に向けて吐出管で導く構成としており、これは、上記で述べた気体溶解装置なる用語が内包する意味の一つの具体例である。即ち、特許文献1に記載の装置によれば、吐出管において既に気体を溶解する液体が得られているので、ここまでの構成で気体溶解装置が形成されている。特許文献1に記載の装置は、気体溶解装置の吐出部に、更に微細気泡を発生させるためのノズル本体を配置しているので、装置全体としては、気体溶解装置にとどまらず、加圧溶解式微細気泡発生装置となっている。
【0011】
従来の上記の微細気泡発生装置及び気体溶解装置のうち、特許文献1に示す装置にあっては、気体を液体に溶解する加圧タンク(気体溶解タンク)の気体の量(水位)を測定するセンサや、加圧タンクの上流において混入する気体の量をコントロールする制御部が必要となって、部品点数の増加に繋がる。特許文献2に示す装置にあっては、リリーフ弁の付いたタンク(気体溶解装置)を通過させて気体を液体に溶解させるとともに、高圧部で余剰気体を外部に排出するようにしており、この場合、例えば特許文献1において必要とした水位センサや制御部が不要となるものの、リリーフ弁を設ける必要があり、やはり部品が多くなる。
【0012】
また、特許文献3や特許文献4に示す装置のように、気体と液体を分離する機能を持つタンクから気体を配管で加圧タンク(気体を液体に溶解させるためのタンク)の上流に戻すようにした場合、気体を液体に溶解する加圧タンク内の気体の量が多くなり過ぎると、外部の水槽に気体が大きな気泡として排出される。これを防ぐためには、特許文献1に示すように、気体を液体に溶解する加圧タンク(気体溶解タンク)の気体の量(水位)をセンサを用いて測定して、該加圧タンクの上流において混入する気体の量をコントロールする必要があり、装置が複雑になる。
【0013】
更に、上記各従来例にあっては、地上の重力によって生じる気泡にかかる浮力で液体に溶解していない気泡を取除くようにしているため、気泡の分離が悪く、液体から気泡を完全に取り除けない恐れがある。しかも、液体と気体を加圧して気体を液体に溶解させた後に、液体の吐出部に設けた吐出ノズル内のメッシュや多孔板によって、液体を急激に減圧させて液体中に微細な気泡を発生させているため、液体吐出部で非常に大きな損失が発生している。
【0014】
本発明は、余剰気体を加圧タンクの外部へ自動的に排出ためのリリーフ弁や、加圧タンク内の水位を検知して加圧タンクの外部から入る気体の量を加圧タンク内の水位に合わせてコントロールする制御部を備える必要を無くし、気体注入口で気体を過剰に注入しても液体中の気体の溶解濃度は所定の値に維持され、且つ気体の当該過剰分が気体溶解装置の吐出口から吐出されることの無いようにしたものである。
【0015】
上記のように、最終的に気泡、特に微細気泡を発生させる装置は、従来、主として微細気泡を発生する段階においてエネルギー損失が大きく、換言すれば、気泡を生成するために投入されるエネルギーを回収することができず、このため、省エネルギー化が困難であった。他方、前記のように、必ずしも気泡発生を伴うことなく、例えば酸素等の有用な気体の液体中での溶解濃度を高めるだけで良い場合もある。
【0016】
本発明は上記事情に鑑みて成されてもので、余剰気体を加圧タンクの外部へ自動的に排出するためのリリーフ弁や、加圧タンク内の水位を検知して加圧タンク外部から入る気体の量を加圧タンク内の水位に合わせてコントロールする制御部を備える必要を無くし、液体への気体の溶解速度を速くし、溶解していない気体(即ち気泡)を十分に除去し、かつ気体注入口で気体を過剰に注入しても当該気体の過剰分が気体溶解液と共に気体のまま吐出されること無く、液体の気体溶解濃度を所定の値に維持でき、しかも装置に投入した機械的エネルギーを回収することにより損失の抑制を図り、もって気体の溶解濃度の大きい有用な、例えば水などの液体を製造するための省エネルギー化された気体溶解装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述したように、気体が液体に溶解する速度は、一つ目には溶解度と気液界面から離れた位置にある液体中に現に溶解している気体の溶解濃度との差に(気液界面における液中には気体が溶解度まで溶解している)、二つ目には気体の圧力に、三つ目には気体と液体の界面面積にそれぞれ比例的に増加する。一般的に言って、液体中に当初気泡として存在した気体は、時間が経過するにつれて液体に溶解して液体中の気体の溶解濃度が増加し、気液界面から離れた位置にある液体中に現に溶解している気体の溶解濃度との差が少なくなる。また気泡が小さくなって気体と液体の界面面積が小さくなるため、気体が液体に溶解する速度は時間が経過するにつれて遅くなる。
【0018】
図1に、一例として、空気泡が水に溶解していくときの気泡径と気泡体積の時間変化を示す。絶対静圧が0.4MPaの場合、空気は体積組成として酸素が20.9%で、窒素が79.1%とし、最初水中に空気その他の気体が全く溶解していない状態から、空気中の窒素により水がほぼ飽和するために必要な初期気泡ボイド率θmaxは1.678%となる。本発明で気泡ボイド率とは、気体と液体とが完全に均一に(それぞれ気相、液相のままで)混合した流体のある一定体積に占める気体(気泡)の体積のことを言い、気体と液体の混合物に占める気体の体積の割合である(なお空気として前記組成を仮定したので、先に飽和状態に達する窒素について考察した)。
【0019】
図1は、初期気泡ボイド率θの最大値θmax=1.678%から、θmaxの50%である初期気泡ボイド率θ=0.839%までの間の4通りで、水中に空気その他の気体が全く溶解していない状態からの気泡径と気泡体積の時間変化を示す。気泡の体積が初期体積の0.4倍に減少する、すなわち体積の6割が液体に溶解するのに要する時間は、初期気泡ボイド率θ=0.839%からθ=1.678%の範囲で約40秒とほぼ同一である。これに対して、例えば初期気泡ボイド率がθ=1.678%のときは、気体が水に完全に溶解するまでに805秒かかり、初期気泡ボイド率がθ=0.839%のときは255秒かかる。すなわち、気体を液体に完全に溶解させるための時間を短縮するためには、液体に混入する気体の初期気泡ボイド率を比較的小さい値に抑えることが効果的であることが判る。
【0020】
一方、気体が液体に溶解する速度は、気液界面の面積に比例する。このため、液体に混入させる気泡の大きさが同じであれば、液体に混入させる気体の量を増すと、気液界面の面積が増加し、短時間で気体が液体に溶解する量は増加する。しかし、液体に混入させる気体の量を増すと、例えば気体を含む液体を加圧して気体を液体に溶解させる溶解装置においては、その溶解装置の減圧部の入口において、溶解せずに残った気体が存在するようになり、溶解せずに残った気体が溶解装置の出口から大きな気泡として吐出されてしまう可能性が大きい。
【0021】
液体中に大きな気泡と小さな気泡がある場合、気泡に作用する液体の表面張力のために、小さな気泡の方が気泡内の圧力の上昇が大きくなり、小さな気泡内の気体の方が大きな気泡内の気体より液体に溶解し易くなる。この結果、小さい気泡の周りにおける液体中に溶解した気体の溶解濃度の方が、大きな気泡の周りにおける液体中に溶解した気体の溶解濃度より高くなる。そして、小さい気泡の周りの液体が大きな気泡の周りへ、例えば拡散して移動して、大きな気泡の周りの液体における気体の溶解濃度が、大きな気泡内の圧力に対応する飽和溶解濃度(溶解度)より高くなると、液体中に溶解していた気体が大きな気泡内へ気体として放出されて大きな気泡が更に大きくなる。このため、気泡径が互いに大きく異なる気泡が混在すると、小さい気泡が大きい気泡に次々と統合されてしまう。そのため、気体溶解装置の内部では加圧部の入口から減圧部の入口に至るまで、いずれの場所においてもある気泡の気泡径がその周辺に存在する他の気泡の気泡径と大きく異なるような、即ち相対的に大きい気泡が存在しないようにするのが良い。また、減圧部の入口においては、液体中に気泡が残ることが無いようにする必要がある。
【0022】
気体が液体に溶解する速度は気体の圧力に比例する。そのため、本発明では、まず、気体を混入した液体を加圧部を用いて加圧して気体の液体中への溶解速度を増し、単位質量の液体当たりに溶解する気体の量を増加させている。液体を加圧する加圧部としては、ターボ形のポンプ、渦流ポンプまたは回転通路が好ましく用いられる。また、気体を混入した液体が加圧されている時間が長いほど液体中への気体の溶解が進み、液体中の気体の溶解濃度が高くなる。このため、加圧部のすぐ下流に更にタンクを設けるようにしてもよい。
【0023】
次に、減圧部の入口で未だ液体に溶解していない余剰気体を取除くため、換言すれば、未溶解の気体が減圧部の入口まで至ることの無いようにするため、本発明では、加圧部(例えば、ターボ形のポンプ、渦流ポンプまたは回転通路など)の下流側に回転空間を設けるとともに、連通部を設けている。この連通部は、回転空間の回転軸心の近傍位置にその一端を開口させ、他端は加圧部の上流側通路及び気体溶解装置の外部空間の少なくとも一方に開口させている。これにより、加圧部に流入して加圧された後、または加圧後の高圧状態下に一定時間保持された後であって、もしも効果的対策がとられない場合に減圧部の入口で未だ気泡として残留していたはずの気体を回転空間から抽出し、連通部を経由して外部に排出するか、または、例えば高価な気体である場合には再度液体に溶解させるべく、加圧部の上流側の通路に導き、そこで液体中に混入させる。
【0024】
本発明で余剰気体とは、気体を混入された液体が加圧部に流入して加圧された後、または加圧後の高圧状態下に一定時間保持された後においてもなお液体に溶解せず気泡の状態で存在する気体のことを意味している。この余剰気体は、連通部を経由して、例えば大気中に放出させられるか、または必要に応じて加圧部の上流側の通路に戻され、再度液体中に溶解させるべく再循環させられる。
【0025】
回転容器内では液体が回転すると半径方向に圧力勾配が発生する。本発明で回転容器とは、ターボ形ポンプや水車の羽根車、回転空間または回転通路などのような一定の中心回りを回転する構造体を指す。回転している液体中に気泡がある場合、気泡には回転の中心方向に浮力が作用する。気泡を球形と仮定して、気泡の半径をR、気泡の抗力係数をC、液体の密度をρ、液体の絶対静圧をp、回転容器の回転中心を中心としたときの当該気泡の中心の半径方向の座標をr、回転容器内で気泡が回転の中心方向に進む際の回転の半径方向の分速度であって、該回転の半径方向の液体の分速度に対する相対速度をUb,r0とすると、気泡が回転の中心方向に進もうとする浮力と、気泡が回転の中心方向に進むのを妨げる抗力との釣合は次の式(1)で表される。
【数1】

【0026】
いま、一例として、液体が回転容器と同じ回転速度で回転する場合、液体の回転角速度をω、回転中心の絶対静圧をpとすると、液体の回転容器の半径方向の圧力勾配は式(2)で、圧力は式(3)で表される。
【数2】

【数3】

【0027】
一方、地球上で静止した液体中に気泡がある場合、鉛直下向き方向の座標をz、重力加速度をg=9.8m/s、静止した液体中を気泡が上昇する速度をUb,stとすれば、気泡が鉛直方向上向きに進もうとする浮力と、気泡が鉛直方向上向きに進むのを妨げる抗力との釣合は次の式(4)で表される。なお気泡を構成する気体の密度は実質的には問題とならないから、式(4)ではこれを無視している。
【数4】

【0028】
したがって、式(1)、式(2)及び式(4)から、地球上で静止した液体中を気泡が上昇する速度Ub,stに対する、回転容器内で気泡が回転の中心方向に進む際の液体に対する前記相対速度Ub,r0の比は次の式(5)で表される。
【数5】

なお、回転速度をNrpmとすると、回転角速度は ω=2πN/60である。
【0029】
通常良く用いられる回転速度N=1500rpmの場合、半径0.397mm以上で静止液体中より回転容器内の液体中の気泡の分離速度(気泡の液体に対する相対速度)の方が速くなり、半径0.1mでは15.9倍になる。回転速度N=3000rmpの場合は、半径r=0.0993mm以上で静止液体中より回転容器内の液体中の気泡の分離速度の方が速くなり、半径0.1mでは31.8倍になる。換言すれば、気泡に働く浮力は、静止液体中より回転する液体中の方が圧倒的に大きいため、回転する液体中の気泡は、静止液体中より高速で液体中を移動し分離されることとなる。一般的に使用されている、例えばターボ形ポンプの寸法を想起すれば、浮力による静止液体中の気泡の分離速度と回転する液体中の気泡の分離速度とが等しくなる半径0.397mm及び0.0993mmは十分に小さい。このため、ほぼ全ての領域で静止液体中より回転容器内の液体中の気泡の分離速度の方が速くなる。したがって、従来の静止液体中において行う余剰気体を分離する方法より、十分かつ速やかに余剰気体の分離を行えるようになる。
【0030】
液体が回転している場合、液体中の気泡は、液体に対して液体の回転中心の方向に進む。このため、気泡が液体に対して回転中心の方向に進む速度より速く液体が半径方向外向きに進めば、気泡は、液体によって半径方向外向きに搬送される。例えば、加圧部をポンプで構成した場合、このポンプのインペラ内において、液体に対する気泡の回転中心方向の速度より速く液体を半径方向外向きに流せば、気泡は、インペラ入口に留まることなく、液体によって半径方向外向きに搬送され、インペラの上流で液体に混入させた気泡を高圧な領域に進ませることができる。一方、回転空間内では半径方向外向きの液体の流れを気泡が液体に対して回転中心の方向に進む速度より遅くすることによって、気泡は液体に押し流されることなく回転空間の回転中心近傍に留まるから気泡は液体から分離される。
【0031】
上述のように、従来のように重力を利用する方法に比べ、回転空間内で気泡分離を行うと余剰気体の分離速度がより速くなるため、気体溶解装置の加圧部の出口、またはタンク出口で吐出される液体中に含まれる気泡が十分に分離され、回転空間の下流には気泡がなくなる。したがって減圧部の入口では気泡は無い。
【0032】
減圧部の上流側に位置する回転空間の外周部に邪魔板を配置すると、加圧部にて加圧された、または加圧後の高圧状態下に一定時間保持された気液混合液は、回転空間の半径方向外側(回転中心から遠い側)から回転空間に流入し、回転中心近傍で反転して再び半径方向外側に向かって流動して減圧部の入口に至る。このとき、即ち気液混合液が半径方向外側に向かって流動するとき、液体中の気泡に働く液体の流動による抗力(回転半径外側向きの力)が浮力(回転半径内側向きの力)よりも小さくなるように回転通路の流路寸法などを形成しておけば、液体中の気泡は液体に同伴して流れることなく、回転空間内部の回転軸心近傍にとどまり、連通部を経由して抽出、除去される。
【0033】
本発明では、気体が溶解した液体を気体溶解装置の外部に吐出する前に該気体溶解装置内に設けた減圧部を通過させるように構成し、このときに、当該減圧部により、加圧部に加えられた力学的エネルギーが回収されるように構成している。
【0034】
なお、液体に溶解した気体は、液体と気体の分子の境界にζ電位が発生するため、気体分子の群同士が電気的に反発し、合体しづらくなる。このため、局所的な圧力低下がない限り、気体溶解装置の外部に吐出されるまで気泡として、即ち気相状態として現れにくくなる。このようにして、有用な気体を多く溶解した、即ち溶解濃度として大きく含有した液体を少ない投入エネルギーで製造することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、例え入口部で気体が過剰に供給されていても、気泡が除去され、且つ気体を高い濃度で均一に溶解した気体溶解液を、大幅に省エネルギー化して製造することが可能な気体溶解装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図2は、本発明の実施の形態の気体溶解装置の概要を示す断面図である。この例は、加圧部及び減圧部として、共にターボ形回転機械、つまり加圧部としてポンプを、減圧部として水車をそれぞれ用いている。図2に示すように、この気体溶解装置は、通路内を流れる水等の液体に空気等の気体を注入する気体注入部10を備えた吸込管12と、この吸込管12に接続され、液体に気体を注入した気液混合液(気液混合流体)を加圧して気体の液体中への溶解を促進する加圧部としてのポンプ14と、気体が溶解した気体溶解液を減圧させて外部に吐出する減圧部としての水車16を有している。
【0037】
ポンプ(加圧部)14は、ケーシング20内に配置されたインペラ(羽根車)22を有しており、水車(減圧部)16は、ケーシング20内に配置されたランナ(羽根車)24を有している。そして、水車16側から延びる回転自在な主軸26の先端にインペラ22の主板28が、主軸26のインペラ22の主板28と所定間隔離間した位置にランナ24の主板30がそれぞれ取付けられ、両主板28,30の間に回転空間32が設けられている。これにより、主軸26の回転に伴って、ポンプ14のインペラ22、水車16のランナ24及び両主板28,30で挟まれた回転空間32が一体に回転する回転容器34が構成されている。インペラ22の主板28には羽根36が、ランナ24の主板30には羽根38がそれぞれ取付けられている。
【0038】
ポンプ14の内部には、吸込口14aから気液混合液が吸込まれ、水車16から吐出された気体溶解液は、吐出口16aから外部に吐出される。インペラ22の主板28の外周端面と該外周端面が対面するケーシング20との間には、ポンプ14のインペラ22の外周よりも下流側の流体通路と、回転空間32の上流側の流体流路とを仕切って、ポンプ14側から回転空間32側への液体の漏れを防止する仕切り板(ライナリング)40が設けられている。
【0039】
回転空間32は、回転容器34の外周端部から内方に延びる平板リング状の邪魔板42によって、ポンプ側回転空間32aと水車側回転空間32bに区画され、主軸26側で互いに連通する横断面U字状に形成されている。ポンプ14の流体出口とポンプ側回転空間32aの流体入口は、外部通路44を介して互いに連通されており、この外部通路44の一部には、断面積を拡大したタンク(断面積拡大部)46が設けられている。更に、水車側回転空間32bの流体出口と水車16の流体入口は、内部通路48を介して互いに連通されている。ケーシング20と主軸26との間はシール材50でシールされている。
【0040】
主軸26の内部には、回転空間32の主軸26側最深部(回転軸心の近傍位置)で一端を開口し、軸心に沿って吸込管12の方向に延びて、ポンプ14の吸込口14a付近で他端が開口する第1連通部としての連通孔52が設けられている。更に、外部から吸込管12の内方に延び、鉤状に屈曲し連通孔(第1連通部)52の開口端に向けて開口する第2連通部としての気体排出管54が備えられ、この気体排出管(第2連通部)54の開口端部には、連通孔52の周囲を囲繞する外管56が連結されている。
【0041】
これにより、この例では、気体排出管54の屈曲部54aと吸込管12との間に、流路断面積を減少させて背後の圧力を減少させる絞り部58が形成され、連通孔52は、この絞り部58の背後の圧力が減少した所で開口するようになっており、更に、外管56の内部に連通孔52と連通する気体循環口60が設けられている。気体排出管54には、流量調整弁62が設けられている。
【0042】
この例では、連通孔(第1連通部)52と気体排出管(第2連通部)54で、回転空間32内の液体(気体溶解液)中に含まれる余剰気体(気泡)を入口流路に戻して循環させる機能と、この余剰気体を外部に排出する機能の双方の機能を有する連通部が構成されている。なお、連通孔52のみで、回転空間32内の液体中に含まれる余剰気体を循環させる機能のみを有する連通部を構成したり、連通孔52と気体排出管54とを、例えば図示しないシール部を介して連結して、余剰気体を外部に排出する機能のみを有する連通部を構成したりしてもよい。
【0043】
これにより、主軸26の回転に伴って、回転容器34、すなわちポンプ14のインペラ22、水車16のランナ24及び両主板28,30で挟まれた回転空間32が一体に回転する。このポンプ14のインペラ22の回転に伴って、吸込管12内を流れ、気体注入部10から気体を注入した液体(気液混合液)が吸込口14aからポンプ14の内部に吸込まれ、インペラ22で昇圧されてポンプ14から吐出される。このように、気液混合液が昇圧されることで、気液混合液中の気体の液体中への溶解が促進される。加圧された気液混合液は、ポンプ14を出て外部通路44のタンク46内に流入し、このタンク46内に所定時間滞留する。これによって、気液混合液中の気体が液体中に溶解する。
【0044】
この気体が液体中に溶解した気体溶解液は、回転空間32の回転に伴って、外部通路44からポンプ側回転空間32aに流入し、回転空間32に沿って流れて、水車側回転空間32bから流出する。この時、液体(気体溶解液)中に溶解せずに気泡として残った気体が液体から分離、抽出される。従って、水車側回転空間においては、気体溶解液中に気泡は含まれない。そして、水車側回転空間32bから流出した液体(気体溶解液)は、水車16のランナ24の回転に伴って、内部通路48から水車16の内部に吸込まれ、ランナ24を通過するときに減圧されると共に、ランナ24により気体溶解液から力学的エネルギーが回収されて、水車16の吐出口16aから外部に吐出される。吐出口16aから外部に吐出された気体溶解液は、例えば過飽和状態にまで気体が溶解された液体として使用される。
【0045】
ここで、回転空間32内の外周に邪魔板42を設け、気体を溶解させた液体が水車16の入口に短絡しないようにすることで、液体中に気泡として残っている余剰気体を液体から完全に排出することができる。即ち、タンク46内で気体を溶解した液体は、邪魔板42によって軸方向に区画されたポンプ側回転空間32aに流入して、半径方向の中心側に向かって流れる。このため、この時、液体中に気泡があれば、その気泡には周囲の液体から回転軸心の中心側に向く浮力が作用し、これによって、気泡は回転空間32の軸心近傍に集まる。その後、液体は、回転空間32の主軸26の近傍で折り返し、半径方向外側に向けて流れ、水車側回転空間32bから内部通路48を経て水車16側に流出する。水車側回転空間32bを半径方向外側に向かって流れる液体により気泡に加わる抗力の向きは半径方向外向きだが、この抗力の値が浮力よりも小さいので、一旦回転空間32の中心に集まった気泡は、そこに滞留して下流に向けて流出することはない。
【0046】
そして、回転空間32の主軸26の近傍に集まった気泡(即ち余剰気体)は、連通孔(第1連通部)52を通ってポンプ14の上流に戻されて再度循環させられるか、または更に気体排出管(第2連通部)54を通って外部に排出される。
【0047】
なお、水車16のランナ24の主板30は、回転空間32の内の軸心近傍に集まった液体中の気泡を外部に吐出させない役割を果たすため、この主板30として、内部に貫通孔のない平板状のものが使用される。つまり、この主板30の特に軸心近傍に穴が貫通していると、液体中に気泡は、その穴を通ってランナ24の下流に流入し、そのまま出口から吐出されてしまう可能性がある。
【0048】
この例によれば、ある一定の寸法範囲内で適切な大きさに揃えられた気泡を均一に分散させて混入させた気体混合液を、吸込口14aからポンプ(加圧部)14に供給すれば、液体は、ポンプ14で素早く加圧されるので、ポンプ14の出口である高圧下(例えば、タンク46内)においても、気泡の寸法の均一性、分散の均一性は保たれる。したがって、気体が液体中に溶解し易い環境が形成される。こうしてポンプ14を出た後、液体中への気体の溶解はどこも均一に進行する。したがって、例えば、気体溶解濃度が相互に異なる液体の混在による、前述したような、気泡の寸法的成長(大きな気泡ができてしまう)などの不具合を良好に抑制できる。
【0049】
気体の液体に対する量が過剰であり、気泡として気体が液体中に残留した場合には、回転空間32に形成された気泡分離機構により、液体中の余剰な気体は液体から抽出されて除去される。これにより、水車16の吐出口16aにおいて、気泡がなく気体溶解濃度の高い液体を得ることができる。なお、気体溶解装置の下流に従来の微細気泡発生装置において用いられている多孔質体や金網や多孔板等の減圧のための抵抗体を配置し、気体溶解液を通過させることで、均一な大きさの微細な気泡を得るようにすることもできる。
【0050】
回転容器34の絶対静圧分布の一例を、回転容器34の主軸26の中心における絶対静圧をほぼ大気圧で0.1MPa、液体が水で密度ρを1000kg/m、回転速度を通常よく用いられる1500rpm及び3000rpmとし、式(3)を用いて求めて図3に示す。図3に示すように、回転容器34内の絶対静圧は、軸中心(回転中心)から外周に向けて急速に高圧になる。したがって、気泡が略均一な大きさで均一に分散して混入された液体の圧力を素早く上昇させることができ、これによって、昇圧後においても、気泡寸法の均一性や分散の均一性を維持した状態で液体を昇圧することができる。
【0051】
この例において、液体に溶解させることができない余剰空気を、回転空間32で自動的に液体から抽出して除去し、これによって、吐出口16aから、気泡が無く、かつ気体溶解濃度が高い液体を吐出させることができる理由を以下に説明する。
【0052】
ポンプ(加圧部)14の入口近傍での気体の混入した液体の静圧の値(a)と、ポンプ14の出口側、例えばタンク46における静圧の値(b)と、回転空間32の中で静圧が最小となる部分である軸心近傍での静圧の値(c)と、出口部における静圧の値(d)との相互関係、即ちこれらの4ヶ所における静圧の値(a)〜(d)の相互関係を、液体中の余剰気体が外部へ好ましく抽出し排除できるような値に決める。特に、回転空間32内の主軸26の近傍での静圧の値(c)の決定が重要である。
【0053】
次に、液体から分離、抽出した余剰気体を大気中に排出する場合について述べると、ポンプ(加圧部)14の入口近傍での気体の混入した液体の静圧の値(a)と、出口部での静圧の値(d)を大略大気圧に等しくする。また、回転空間32の中で静圧が最小になるのは、回転空間32内の回転中心からの半径方向の距離が最小となる位置であることを考慮して、静圧の値(c)が大気圧よりも所望の値だけ高くなるように、回転空間32における余剰空気抽出口の位置を定める。こうして、余剰空気抽出口の位置が回転空間32中の最小の静圧となる場所であって、そこの静圧の値が大気圧よりも所望の値だけ高ければ、余剰の気体を余すことなく液体から抽出し除去できる。タンク46での静圧の値(b)は、出口から吐出される液体中に溶解される気体の溶解濃度が所望の値となるように選べばよいのであって、余剰空気の抽出機能と直接の関係はない。
【0054】
上記説明において、回転空間32内での余剰気体を液体から抽出するための位置は、静圧の値(c)が回転空間32の中で最小となる部分である旨述べたが、一般的には、必ずしも静圧の値(c)が最小となる場所でなくても良い。例えば、ポンプ14の吸込口14aから水車16の吐出口16aに至るまでの液体の流路において、流路を横軸とし縦軸に流路の各位置における静圧の値を採用した2次元のグラフを考えたときに、静圧の値が極小となる部分が(例えば、回転空間を軸方向に2つ直列に配置した場合のように)2箇所以上あれば、そのうち1箇所または複数箇所から液体中の余剰空気を抽出するように構成しても良い。このような場合は、静圧が極小の値となる場所とは言えるが、必ずしも最小の値となる場所ではない。さらに、静圧が回転空間の中で最小または極小となる位置から液体中の余剰気体を抽出するように気体溶解装置を構成すれば、事実上完全に余剰気体を液体から排出できるということから好ましいが、もし吐出口において、吐出液の中に一定の割合で気泡を含んでいることを許すならば、回転空間32内での余剰気体抽出の位置は、前記の位置に限られないことは勿論である。
【0055】
上記の説明において、ポンプ(加圧部)14の入口近傍での静圧の値(a)と、水車(減圧部)の出口における静圧の値(d)とが大略大気圧に等しい場合を述べたが、これらの静圧の値が大気圧とは異なった値であっても、回転空間32で液体中の余剰気体を外部に排出できる原理は同等である。このことは、上記静圧の値(a)や(d)が大気圧よりも高い場合に容易に理解される。一方、上記静圧の値(a)や(d)が大気圧よりも低い場合においても、外部への余剰気体の排出口を、例えば流量調整弁62を経由して真空ポンプにより圧力を低く保った容器(図示せず)に接続し、余剰気体を該容器に導き真空ポンプを運転することで、余剰気体の排出を行うことができる。
【0056】
以上説明したように、この気体溶解装置によれば、気液分離のための制御装置などの機構が必要なく、余剰気体を自動的に気体溶解装置の外部に排出することができるから、気泡が無く所望の気体溶解濃度を有する液体を得ることができ、気体溶解装置の構成も簡素化できる。
【0057】
この例にあっては、上記説明において回転空間32内の液体から抽出し除去した余剰気体を、連通孔(第1連通部)52及び気体排出管(第2連通部)54を介して、大気中に排出させるか、またはその余剰気体の一部または全部を再度ポンプ14の入口に戻し液体に混入させることにより、当該気体を液体中に再循環させて溶解させるようにしている。
【0058】
例えば、液体が水、液体に混入する気体が空気で、空気中の酸素を水に溶解したい場合、窒素より酸素の方が水に溶解しやすいため、ポンプ(加圧部)14を出た後に水に溶解せずに残っている気体中の酸素の割合は、初期混入時における気体中の酸素の割合より低くなる。このように、気体中の窒素の割合が増すため、液体中の残留気体を再循環させて用いることなく外部に排出し、ポンプ14の上流で新鮮な空気を水に混入した方が、水中の酸素の溶解は速くなる。一方、例えば、液体に混入する気体が、純酸素、オゾンまたは二酸化炭素のように、高価な気体であったり、大気中に放出しない方が良い気体であったりする場合は、液体中に溶解せずに残っている気体を再度循環させて利用することが望ましい。
【0059】
この例によれば、気体排出管(第2連通部)54に設けた流量調整弁62を開放することで、回転空間32内の液体から抽出し除去した余剰気体の一部または全部を大気中に排出させ、流量調整弁62を閉じることで、余剰気体を再度ポンプ14の入口に戻し液体に混入させることで、上記要請に答えることができる。
【0060】
次に、この気体溶解装置によれば、動力回収ができるとともに、微細気泡を発生させることを要件としないため、それに関する損失がなく、省エネルギー運転が可能であることを説明する。
【0061】
ポンプ(加圧部)14のインペラ22または水車(減圧部)16のランナ24において、ポンプ14または水車16に入る流体の単位質量当りの角運動量をI、ポンプ14または水車16から出る流体の単位質量当りの角運動量をIとし、回転体(インペラ22またはランナ24)の回転角速度をωとすると、流体中の角運動量の変化と回転体が必要な動力L、及び理論揚程Hthの関係から、式(6)が成り立つ。
【数6】

ここに、ρは流体の密度、Qは流体の体積流量、U及びUはそれぞれ回転体の入口及び外周端の周速度、Cu1及びCu2はそれぞれ回転体の入口及び外周端を通過する流体の周方向速度、gは重力加速度である。
【0062】
下記の例のように、加圧部及び減圧部として回転通路を使用した場合、この回転通路(回転体)の入口部及び最外周部の周速度U及びUは次の通りとなる。即ち、回転通路とは、一定の回転軸心のまわりに回転する通路であって、通常、その入口部(流体吸込部)と出口部(流体吐出部)において、通路の中心が回転軸心と同一であり、入口部と出口部との間に、通路の中心が回転軸心から回転半径方向で最も離れた位置(最外周部)がある。
【0063】
ここで回転軸心、即ち回転中心を中心として回転の半径方向の座標をrとすると、回転通路の入口部の周速度Uは、前記入口部での通路の回転軸心に垂直な断面上において、中心から始めて半径rまでに通路内を通過する流体の質量流量を半径rに対して積分したときに、当該通路断面を通過する流体の全質量流量の半分となる半径における回転通路の周方向速度である。周速度がUとなる当該半径の一例を図5においてRT1として示す。
【0064】
回転通路の最外周部(回転中心から回転半径方向で最も離れた回転通路部)の周速度Uは、上記の通り回転軸心から最も離れた通路部分の回転軸心に垂直な断面上において、当該断面上に現れた通路の最も回転中心側(例えば図5においてRで示している)から始めて半径rまでに断面内を通過する流体の質量流量を半径rに対して積分したときに当該断面を通過する流体の全質量流量の半分となる半径における回転通路の周方向速度である。周速度がUとなる当該半径の一例を図5においてRT2として示す。
【0065】
また図4には、回転通路の入口部及び最外周部それぞれの前記断面上において現れた通路の断面における質量流量の半径rに対する積分値が前記両部分共通に説明されている。例えば、回転通路の最外周部について述べると、図4の“通路断面における回転中心側半径”とは図5で示すR1であり、同様に“通路断面における回転外周側半径”とはR2である。また図4では、前記それぞれの断面において全質量流量の半分となる位置の回転中心からの回転半径方向距離即ち座標rの値がRTとして示されている。従って、回転通路の回転角速度をωとすれば、周速度U及びUはそれぞれRT1ω及びRT2ωで示される。
【0066】
回転通路(回転体)の入口部及び最外周部(回転中心から回転半径方向で最も離れた回転通路部)を通過する流体の周方向速度Cu1及びCu2は、次の通りとなる。即ち、回転通路の入口部を通過する流体の周方向速度Cu1は、前記入口部での通路の中心、即ち回転軸心に垂直な断面上において、中心から始めて半径rまでに通路内を通過する流体の質量流量を半径rに対して積分したときに、当該断面を通過する流体の全質量流量の半分となる半径における回転通路内流体の周方向速度であり、例えば入口で流体に予旋回がなければ、回転通路の入口を通過する流体の周方向速度Cu1=0(零)である。回転通路の最外周部(回転中心から回転半径方向で最も離れた回転通路部)を通過する流体の周方向速度Cu2は、上記の通り回転軸心から最も離れた通路部分の回転軸心に垂直な断面上において、当該断面上に現れた通路の最も回転中心側(例えば図5においてRで示している)から始めて半径rまでに断面内を通過する流体の質量流量を半径rに対して積分したときに当該断面を通過する流体の全質量流量の半分となる半径における回転通路内流体の周方向速度である。
【0067】
回転通路は、前記入口部から出口部へと向かう間において、分岐しその後再び合流するように構成しても良く、その場合には前記周速度U、流体の周方向速度Cu2に関しては、分岐したそれぞれの回転通路に対して前記と同様に求めることが出来る。
【0068】
式(6)において、回転体(インペラ22またはランナ24)が必要な動力Lが正の場合は、回転体に動力が与えられ、回転体から流体に角運動量が与えられて流体が加圧される。回転体が必要な動力Lが負の場合は、流体が回転体に角運動量を与え、回転体により動力が回収されて流体が減圧される。即ち、ポンプ(加圧部)14のインペラ22で流体に与えられた角運動量が、流体から角運動量として水車(減圧部)16のランナ24に返還される。これは、言い換えれば、ポンプ(加圧部)14において流体に対して与えられたエネルギーが、流体から水車(減圧部)16に返還されるということであり、これにより、動力が回収される。
【0069】
なお、ポンプ14の下流側であって、水車16の上流側に、気泡が混入した液体を長時間に亘って高圧状態に維持するためのタンク46を設けることにより、気体が一層多量に液体中に溶解し、その結果、気体溶解濃度の高い液体を得ることができる。また、タンク46を経過してもなお液体中に気泡が残っている場合は、回転空間32に連通する連通孔52を通して、液体中の気泡が排除され、吐出口16aでは気泡のない液体が得られる。
【0070】
次に、回転空間32内の液体から抽出、回収された気体をポンプ14の入口に導き、再度液体中に溶解させるべく循環させる原理を説明する。
先ず、流体の流路において、例えば流路の途中に突き出した物体を設けると、その突き出した物体の背後の圧力が低下する。また、流路を絞っても、即ち流路断面積を減少させることによっても圧力が低下する。そのため、一端が回転空間32の軸心近傍に開口し、他端がポンプ14の上流側の流路に突き出した構造物の直後か、あるいはポンプ14の上流側の流路を絞った所に開口する連通部を設けることで、回転空間32内の圧力が低い場合でも、ポンプ14の上流側に位置する連通部の開口部における圧力を回転空間32内の圧力より下げることができる。
【0071】
この例によれば、一端が回転空間32の軸心近傍に開口し、他端がポンプ14の上流側の絞り部58に開口する連通孔(第1連通部)52を設けることで、回転空間32内の液体に含まれる余剰空気(気泡)を、連通孔52を通して、減圧されたポンプ14の上流側に導き、気体循環口60から放出して、この余剰気体をポンプ14の上流側の液体に混入させて再度循環させることができる。換言すれば、何度でも繰り返し循環させることが出来る。
【0072】
この例のように、ターボ形減圧部として水車を用いる場合は、水車のランナの外周端から中心軸近傍に向けて気体が溶解した液体を導いて、すなわちターボ形加圧部の場合とは逆の向きに気体が溶解した液体を導いて、液体の圧力を低下させるときに水車によって従来は回収される事の無かった高圧液体が持っているエネルギーを回収する。このことは、以下の例においても同様である。
【0073】
図5及び図6は、本発明の他の実施の形態の気体溶解装置の概要を示す断面図である。この例は、加圧部及び減圧部として回転通路を用いている。つまり、この気液溶解装置は、両端の水平部を結ぶ線を回転軸心とした、回転自在な略U字状の回転通路70を有し、この回転通路70の上流側の回転通路を、回転に伴って気体を含む気液混合液に作用する遠心力で気液混合液を加圧する加圧部72、下流側の回転通路を、回転に伴って気体を溶解させた気体溶解液に作用する遠心力で気体溶解液を減圧させる減圧部74としている。そして、この加圧部(回転通路)72と減圧部(回転通路)74との間に、一対の仕切り壁76で仕切られ、邪魔板78で横断面U字状とした回転空間80が設けられている。
【0074】
回転通路70の回転空間80と減圧部74との間に仕切り壁76を設けることで、回転空間80内の液体中に含まれの気泡が回転空間80の外部に吐出されることを防止することができる。
【0075】
回転通路70の加圧部72側の端部は、気体注入部82を有する吸込管84に連結され、減圧部74側の端部は、気体を溶解し減圧部74で減圧された気体溶解液を吐出す吐出管86に連結されている。吸込管84と回転通路70との間はシール材88でシールされ、吐出管86と回転通路70との間のシール材90でシールされている。回転通路70は、その両端の水平部において、一対の軸受92を介して回転自在に支承されており、またその水平部には、被動歯車または被動プーリ94が取付けられている。これによって、回転通路70は、駆動歯車または駆動プーリ(図示せず)の駆動に伴って、被動歯車または被動プーリ94を介して、両端の水平部を回転軸心として回転する。
【0076】
更に、回転空間80の回転軸心の近傍位置で一端を開口し、軸心に沿って吸込管84の方向に延びて該吸込管84と回転通路70との接続部付近で他端が開口する第1連通部としての連通管96と、外部から吸込管84の内方に延び、鉤状に屈曲し連通管(第1連通部)96の開口端に向けて開口する第2連通部としての気体排出管98が備えられている。この気体排出管98には、流量調整弁100が設けられている。
【0077】
これにより、この例では、気体排出管98の屈曲部98aと吸込管84との間に、流路の断面積を減少させて背後の圧力を減少させる絞り部102が形成され、連通管96は、この絞り部102の背後の圧力が減少した所で開口するようになっており、更に、連通管96と気体排出管98との間に気体循環口104が設けられている。
【0078】
この例によれば、回転通路70の回転に伴って、気体注入部82から気体を注入した気液混合液(気液混合流体)が吸込管84から回転通路70の内部に吸込まれ、加圧部72に沿って流れる途中で遠心力を受けて加圧され、これによって、気体の液体中への溶解が促進される。つまり、加圧部(回転通路)72をある回転速度で回転させることにより、その中を流れる液体に発生する遠心力を利用し、加圧部72で気体を気泡として含む液体の圧力を遠心力により高圧に昇圧させ、気体が液体に溶解しやすくして、高圧中で気体を液体中に溶解させる。そして、気液混合液(気液混合流体)は、回転空間80内に流入し、回転空間80に沿って流れる。この時、前述の例とほぼ同様に、液体(気体溶解液)中に溶解せずに気泡として残った気体が液体から分離、抽出され、この分離、抽出された気体は、連通管96を通して、回転通路70の入口部に戻されるか、または更に気体排出管98を通して、外部に排出される。回転空間80に沿って流れる間で、液体中の気泡が除かれた液体(気体溶解液)は、減圧部74内に流入し、減圧部74に沿って流れる途中で、遠心力の作用で減圧され、吐出管86から外部に吐出される。
【0079】
このように、加圧部72及び減圧部74を備えて一体に回転する回転通路70を用いることで、加圧時に加圧部(回転通路)72で与えられた力学的エネルギーの一部が、流体を介して、減圧部(回転通路)74に返還されるので、動力回収が図れることになる。動力回収は、原理的にいえば、前述の例における、ポンプ(加圧部)14のインペラ22あるいは水車(減圧部)16のランナ24と同じである。
【0080】
即ち、加圧部72では、エネルギーが構造物(回転通路)から液体に伝達され、かつ加圧部72の回転で生じた遠心力により液体(及び気体)の圧力を上昇させる。これとちょうど反対に、減圧部74においては、液体から構造物に力学的エネルギーが回収されると同時に、減圧部74の内圧は、回転半径方向の距離の減少とともに低下する。回転通路70は、加圧部72と減圧部74とが一体に作られているから、前述の例におけるインペラ22とランナ24の関係と同様にして、エネルギーの回収ができ、省エネルギー化を図ることができる。
【0081】
図7は、本発明の更に他の実施の形態の気体溶解装置の概要を示す断面図である。この例は、加圧部として渦流ポンプを、減圧部として回転通路をそれぞれ使用するとともに、加圧部、減圧部及び加圧部と減圧部との間に設けられる回転空間を一体構造としている。つまり、加圧部を構成する渦流ポンプ110の羽根車、減圧部を構成する回転通路112、及び渦流ポンプ(加圧部)110と回転通路(減圧部)112との間に配置される回転空間114は、モータ116の駆動に伴って回転する主軸118と一体に回転し、これによって、回転容器120が構成されている。
【0082】
この例において、動力の回収は、流体の主軸118の周方向に沿った速度成分を利用して、即ち、回転の角運動量の形で行われるため、回転通路112には、半径方向に延びる羽根122が備えられ、回転空間114にも、半径方向に延びる羽根124が設けられている。この羽根122,124は、回転通路112と回転空間114を仕切る仕切板126の前後両面に設けられ、この仕切板126と渦流ポンプ110の主板128は、回転空間114内の羽根124によって、互いに連結されている。
【0083】
渦流ポンプ110の吸込口130には、図示しない吸込管が連結され、また、渦流ポンプ110のポンプケーシング132と主軸118との間は、シール材134でシールされている。ポンプケーシング132の開口端部には、回転容器120の周囲を包囲する流路ケーシング136が連結され、両ケーシング132,136の連結部もシール材138でシールされている。更に、流路ケーシング136の内周面の、回転空間114の幅方向のほぼ中央に対応する位置に、中空リング状で、回転空間114の内方に達する邪魔板140が取付けられている。
【0084】
回転容器120と流路ケーシング136との間には、渦流ポンプ110の吐出口142と回転空間114を連通させる内部流路144と、回転空間114と回転通路112を連通させる内部流路146がそれぞれ設けられている。更に、流路ケーシング136の反モータ側端部は、円筒状部136aが形成され、この円筒状部136aに吐出管148が連結されている。この連結部も、シール材150によりシールされている。
【0085】
また、回転空間114の軸心付近で一端を開口し、渦流ポンプ110の吸込口130で他端を開口する第1連通部152が備えられ、この第1連通部152に流量調整弁154が設けられている。更に、気体を外部に排気する第2連通部156が第1連通部152から分岐して備えられ、この第2連通部156にも流量調整弁158が設けられている。
【0086】
この例においては、気泡を含んだ液体は、渦流ポンプ110によって圧力が上げられ気体の液体中への溶解が進行しながら回転空間114に入る。前述のように、回転空間114に入った液体に溶解せずに気泡のまま残留した気体は、回転空間114の軸心近傍に集められ、第1連通部152から渦流ポンプ110内に戻されるか、または第1連通部152及び第2連通部156から外部に排出される。そして、気体を溶解した圧力の高い液体は、回転通路112を経由して減圧されながら、吐出管148に至る。この減圧過程で、液体は、回転通路112をその一部とする回転容器120に力学的エネルギーを与えるので、エネルギー回収をすることができる。
【0087】
なお、上記減圧過程での力学的エネルギーの回収は、回転角運動量の形で行われるので、回転通路(減圧部)112に、回転の半径方向に延びるように形成された羽根122を有することが好ましい。
【0088】
この例では、回転空間114と回転通路(減圧部)112の2つの部分において、図5及び図6に示す例の回転空間80と回転通路(減圧部)74と同様な作用効果を得ることが出来る。即ち、加圧部の役割は、図5及び図6に示す例では回転通路72が担っているのに対し、図7に示す例では渦流ポンプ110が担っている点において異なっているものの、回転空間において液体から余剰気体としての気泡を分離、抽出できること、回転通路(減圧部)において力学的エネルギーが回収できることの原理は、図5及び図6に示す例と同様である。ここで、回転通路(減圧部)112及び回転空間114の内部には、半径方向に伸び、周方向に複数形成された羽根122,124があるが、この羽根122,124で仕切られた、軸垂直平面において扇状をした空間の一つ一つが、図5及び図6に示す例における回転通路(減圧部)及び回転空間に相当する。換言すれば、図7に示す例は、図5及び図6に示す回転通路が回転軸心を共通としてそのまわりに複数個集合したものと考えることもできる。
【0089】
また、この例では、流量調整弁154,158をそれぞれ設けた第1連通部152と第2連通部156を備えることで、回転空間114内の液体に含まれる余剰気体を渦流ポンプ110に戻して循環させる流量を調整したり、この余剰気体を外部大気中に排出する流量を調整したりできるようにしている。つまり、第1連通部152の回転空間114側開口部の圧力が外部の圧力(通常は大気圧)よりも高ければ、流量調整弁154,158を開閉することで、回転空間114内の液体に含まれる余剰気体を渦流ポンプ110に戻したり、外部大気中に排出する流量を調整したりできる。第1連通部152の回転空間114側開口部の圧力が大気圧以下のときは、第2連通部156を真空ポンプに接続することで、余剰空気を外部に排出させることができる。なお、第1連通部152及び第2連通部156の一方に流量調整弁を設けるようにしてもよい。
【0090】
図8乃至図10は、本発明の更に他の実施の形態の気体溶解装置の概要を示す。この例は、加圧部を渦流ポンプで、減圧部を水車でそれぞれ構成し、渦流ポンプに回転空間を一体に設けている。更に、渦流ポンプの主軸と水車の主軸を別体として、ベルトを介して、両主軸を同時に回転させるようにしている。
【0091】
つまり、加圧部としての渦流ポンプ200の主軸202は、モータ204の駆動に伴って回転し、ケーシング206に設けた吸込口208から渦流ポンプ200の内部に吸込んだ気液混合流体を加圧するようになっており、この渦流ポンプ200のケーシング206の内部に位置して、渦流ポンプ200の吐出口210に連通する回転空間212が設けられている。この回転空間212の内部には、主軸202と一体に回転する羽根214が放射状に配置され、主軸202とケーシング206との間はシール材216によりシールされている。
【0092】
一方、減圧部を構成する水車220は、主軸222の回転に伴って、羽根224を有するランナ226が回転するように構成されており、渦流ポンプ200の主軸202に取付けた駆動プーリ228と水車220の主軸222に取付けた従動プーリ230との間にベルト232が掛け渡されている。これにより、モータ204の回転に伴って、渦流ポンプ200の主軸202と水車220の主軸222が同時に回転する。水車220の主軸222とケーシング234との間はシール材236でシールされ、水車220で減圧された液体(気体溶解液)は、水車220の吐出口240から外部に吐出されて利用される。
なお、歯車やチェーンなどを介して渦流ポンプ200の主軸202と水車220の主軸222との間で回転トルクの伝達をするように構成してもよい。
【0093】
渦流ポンプ200のケーシング206に設けられた、回転空間212の下流側の吐出口242と水車220の吸込口244は、外部通路246で連通されている。また回転空間212の軸心付近で一端を開口し、渦流ポンプ200の吸込口208で他端を開口する第1連通部250が備えられ、この第1連通部250に流量調整弁252が設けられている。更に、気体を外部に排気する第2連通部254が第1連通部250から分岐して備えられ、この第2連通部254にも流量調整弁256が設けられている。
【0094】
この例の回転空間212では、半径方向外側から気泡を含む液体を該回転空間212内に導き、気泡のみを回転空間212の軸心の近傍に集めるようにしている。即ち、この例では、回転空間212内において、液体に含まれる気泡に半径方向中心向きに大きな浮力が作用するため、気泡は、軸心に向かって集まってくる。このようにして、余剰な気泡を除去した液体のみが、外部通路246を経由してランナ226を備えた水車220に流入し、力学的エネルギーが水車220に与えられるとともに、液体自身は減圧されて吐出口240から吐出される。なお、吐出口240の下流に多孔質体や金網や多孔板等を設けて気体が溶解した液体を通過させることにより、微細な気泡を得ることが出来ることは勿論である。
【0095】
この例のように、渦流ポンプ(加圧部)200の下流側に回転空間212を該渦流ポンプ200と一体に設けた場合、回転空間212を通過して吐出される気体を溶解した液体を、ランナ226を有する水車220を備えた減圧部に導いて動力回収を行った後、気体溶解装置の外部に取り出すことが可能になる。この場合、回転空間212中の流体の動きとして、気体を溶解した液体の大部分は回転空間212の中心に向かって進むことは無く、一方、液体に溶解せず気体のまま存在していた気泡が回転空間212の中心に向かって移動する。これは、気泡には回転空間212の半径方向中心側に向けて強い浮力が働き、気泡は半径方向中心向きに移動するからである。このようにして、液体中に残留していた気泡が抽出された後に液体が外部に吐出されるので、気泡を含まない余剰気体を分離した液体を得ることができる。因みに、こうして得られた気体を溶解する液体を、多孔質体や金網や多孔板等を通過させるように流路を構成すれば、従来よりも微細な気泡を発生させることもできる。
【0096】
回転空間212内に流入した液体からから抽出、回収された気体は、前述と同様に、第1連通部250から渦流ポンプ200内に戻されるか、または第1連通部250及び第2連通部254から外部に排気される。
【0097】
図11乃至図13は、本発明の更に他の実施の形態の気体溶解装置を示す。この例は、加圧部を渦流ポンプで、減圧部を水車でそれぞれ構成し、水車に回転空間を一体に設けている。更に、渦流ポンプの主軸と水車の主軸を別体として、ベルトを介して、両主軸が同時に回転するようにしている。
【0098】
つまり、加圧部としての渦流ポンプ300の主軸302は、モータ304の駆動に伴って回転し、ケーシング306に設けた吸込口308から渦流ポンプ300の内部に吸込んだ気液混合流体を加圧し、この加圧して気体を溶解させた液体(気体溶解液)を吐出口310から回転空間332に向けて吐出すようになっている。渦流ポンプ300の主軸302とケーシング306との間はシール材312によりシールされている。
【0099】
一方、減圧部を構成する水車320は、主軸322の回転に伴って、羽根324を有するランナ326が回転するように構成されており、このケーシング328内のランナ326の上流側に、放射状に延びて主軸322の回転に伴って回転する羽根330を有する回転空間332が設けられている。水車320の主軸322とケーシング328との間はシール材334でシールされている。そして、渦流ポンプ300の主軸302に取付けた駆動プーリ336と水車320の主軸322に取付けた従動プーリ338との間にベルト340が掛け渡され、これにより、モータ304の回転に伴って、渦流ポンプ300の主軸302と水車320の主軸322が同時に回転する。水車320の主軸322とケーシング328との間はシール材334でシールされ、水車320で減圧された液体(気体溶解液)は、水車320の吐出口344から外部に排出されて利用される。
なお、歯車やチェーンなどを介して、渦流ポンプ300の主軸302と水車320の主軸322との間で回転トルクの伝達をするように構成してもよい。
【0100】
渦流ポンプ300のケーシング306に設けられた吐出口310と水車320のケーシング328に設けられた吸込口346は、外部通路348で連通されている。また回転空間332の軸心付近で一端を開口し、水車320の主軸322の内部を貫通して延びて、渦流ポンプ300の吸込口308で他端を開口する第1連通部350が備えられ、この第1連通部350に流量調整弁352が設けられている。更に、気体を外部に排気する第2連通部354が第1連通部350から分岐して備えられ、この第2連通部354にも流量調整弁356が設けられている。
【0101】
この例における回転空間332は、図8乃至図10で示す例と同様な作用により、気泡のみを軸心の近傍に集めて抽出することができる。このため、渦流ポンプ(加圧部)300で加圧された後であっても、液体に溶解することなく残留した気泡があるとき、その気泡は、第1連通部350を経て渦流ポンプ300に戻されるか、または第1連通部350及び第2連通部354を経て外部に排出される。この例において、外部通路348を経て回転空間332及び水車320に流入する液体は、先ず回転空間332の入口を経由する。このため、回転空間332内に流入した液体中に残留していた気泡は、回転空間332の中心に向かって流れることになり、ランナ326を備えた水車320の吸込口358に至った液体には気泡が含まれていない。そして、この液体が水車320で力学的エネルギーを該水車320に与えつつ、自身は減圧されて吐出口344より吐出される。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】静止している液体中に気泡がある場合の気泡径及び気泡体積の時間的変化を示すグラフである。
【図2】本発明の実施の形態の気体溶解装置の概要を示す断面図である。
【図3】液体が角速度一定で回転した場合の半径方向の絶対静圧分布を示すグラフである。
【図4】回転軸心から全質量流量の半分となる半径までの回転半径方向の距離を示す図である。
【図5】本発明の他の実施の形態の気体溶解装置の概要を示す断面図である。
【図6】図5のA−A線断面図である。
【図7】本発明の更に他の実施の形態の気体溶解装置の概要を示す断面図である。
【図8】本発明の更に他の実施の形態の気体溶解装置の概要を示す断面図である。
【図9】図8のA−A線断面図である。
【図10】図8のB−B線断面図である。
【図11】本発明の他の実施の形態の気体溶解装置の概要を示す断面図である。
【図12】図11のA−A線断面図である。
【図13】図11のB−B線断面図である。
【符号の説明】
【0103】
10 気体注入部
12 吸込管
14 ポンプ(加圧部)
16 水車(減圧部)
22 インペラ
24 ランナ
26 主軸
32 回転空間
32a ポンプ側回転空間
32b 水車側回転空間
34 回転容器
42 邪魔板
46 タンク
48 内部通路
52 連通孔(連通部)
54 気体排出管(連通部)
56 外管
58 絞り部
60 気体循環口
62 流量調整弁
70 回転通路
72 加圧部(回転通路)
74 減圧部(回転通路)
78 邪魔板
80 回転空間
82 気体注入部
84 吸込管
86 吐出管
96 連通管(連通部)
98 気体排出管(連通部)
104 気体循環口
110 渦流ポンプ(加圧部)
112 回転通路
114 回転空間
120 回転容器
130 吸込口
132 ポンプケーシング
136 流路ケーシング
140 邪魔板
142 吐出口
148 吐出管
152、156 連通部
200 渦流ポンプ(加圧部)
208 吸込口
210 吐出口
212 回転空間
220 水車(減圧部)
226 ランナ
240 吐出口
246 外部通路
250,254 連通部
300 渦流ポンプ(加圧部)
308 吸込口
310 吐出口
320 水車(減圧部)
326 ランナ
332 回転空間
344 吐出口
346 吸込口
348 外部通路
350,354 連通部
358 吸込口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通路内を流動する液体に気体を注入する気体注入部と、
前記気体注入部の下流側に配置され、前記液体に気体を注入した気液混合液に圧力を加える加圧部と、
前記加圧部の下流側に配置された回転空間と、
前記回転空間の回転軸心の近傍位置と外部空間及び/または前記加圧部の上流側の通路とを連通する連通部を有することを特徴とする気体溶解装置。
【請求項2】
通路内を流動する液体に気体を注入する気体注入部と、
前記気体注入部の下流側に配置され、前記液体に気体を注入した気液混合液に圧力を加える加圧部と、
前記加圧部の下流側に配置された回転空間と、
前記回転空間の回転軸心の近傍位置と外部空間及び/または前記加圧部の上流側の通路とを連通する連通部と、
前記回転空間の下流側に配置され、前記加圧部に加えられる力学的エネルギーの一部を回収しながら、前記気体を溶解させた気体溶解液の圧力を減少させる減圧部を有することを特徴とする気体溶解装置。
【請求項3】
前記加圧部として、インペラを備えたポンプ、渦流ポンプまたは回転通路を用いることを特徴とする請求項1または2に記載の気体溶解装置。
【請求項4】
前記減圧部として、ランナを備えた水車または回転通路を用いることを特徴とする請求項2に記載の気体溶解装置。
【請求項5】
前記回転空間の外周側に、前記加圧部の出口側の通路から前記減圧部の入口側の通路へ液体が短絡して流れることを防止する邪魔板を設けたことを特徴とする請求項2に記載の気体溶解装置。
【請求項6】
前記回転空間の回転軸心の近傍位置と前記加圧部の上流側の通路とを連通する連通部を有し、該連通部は、前記加圧部の上流側の通路に突き出した構造物の直後、または前記加圧部の上流側において通路の断面積を減少させた所で開口していることを特徴とする請求項1または2に記載の気体溶解装置。
【請求項7】
前記回転空間は、該回転空間の上流に配置された加圧部と一体に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の気体溶解装置。
【請求項8】
前記回転空間は、該回転空間の下流に配置された減圧部と一体に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の気体溶解装置。
【請求項9】
前記連通部は、前記回転空間の回転軸心の近傍位置と外部空間、及び前記回転空間の回転軸心の近傍位置と前記加圧部の上流側の通路とをそれぞれ連通するように設けられ、これらの連通部の少なくとも一方に流量調整弁を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の気体溶解装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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