説明

気体製造装置

【課題】電解効率が高く、気体の回収口が装置の上方に限定されない気体製造装置を提供する。
【解決手段】気体製造装置23は、有孔の第1電解用電極8と、第2電解用電極7と、第1電解用電極8に接触し、かつ、電解液に接触可能なイオン交換部13と、第1気体排出口20とを備え、第1電解用電極8と第2電解用電極7との間に電圧を印加し、かつ、前記イオン交換部13が電解液に接触したとき、前記イオン交換部13は、電解液25に含まれるイオンがイオン伝導するように構成され、第1電解用電極8は、前記イオン交換部13をイオン伝導したイオンから第1気体を発生するように構成され、かつ、この第1気体が第1電解用電極8内の孔を導通し第1気体排出口20から排出するように構成されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、化石燃料の使用に伴う地球温暖化および化石燃料資源自体の枯渇の懸念から、環境に優しく、かつ無尽蔵なエネルギー供給の可能性を持つ再生可能エネルギーの利用が注目を集め、開発も盛んに行われている。再生可能エネルギーとしては太陽光、風力、水力、地熱等があり、これらのエネルギーにより電力を作り出す技術は実用化もされてきている。中でも太陽光は地上において、どこでも得ることが可能なエネルギー源であり、太陽光により電力を作る太陽電池は世界各地に設置され、現在ではまだ少数ではあるが、一般家庭にも普及しつつある。しかし、太陽光によるエネルギー供給は季節や、気候の変動により一定しないという欠点があり、この変動を平滑化することが課題である。この課題を解決するための方法のひとつとして、太陽から得たエネルギーを別の物質、例えば液体燃料や、水素等のガスに変換して、保存するという方法が考えられている。
【0003】
これらの太陽光エネルギーからの変換物質の中でも水素は燃やすと水が出来るだけで、地球温暖化の原因となる二酸化炭素や有害な窒素酸化物などを排出しない為、将来のエネルギーとして期待されている。水素ガス生成については、メタン等の化石燃料から生成する方法と水を電気分解して生成する方法が試みられているが、CO2の排出を伴わない後者が最終的な手段であり、中でも安定的かつ地域普遍的な手段としては太陽光発電を利用した水の電気分解による水素ガス生成がもっとも確実な手段であると言われている。これにより太陽光エネルギーは化学的なエネルギーとして貯蔵出来ることとなり、太陽光エネルギーの利用範囲を大きく広げることになる。
【0004】
なお、太陽光エネルギーからより直接的に水素を生成する方法として光触媒(本多藤島効果)による水素ガス生成も研究されているが、現在まだ太陽エネルギーのわずか3%程度を占めるに過ぎない紫外線領域の光しか利用できない等の問題があり実用化の目処は立っていない。その他原子力を利用した水の熱分解による水素の生成やバイオマスを利用した水素ガス生成が試みられているが、まだ研究段階である。また、太陽電池と水電解装置とを組み合わせた水電解システムも提案されている(例えば、特許文献1)。
【0005】
一方、従来の水の電気分解装置では、触媒を担持した多孔質の電解用電極を電解液に浸漬させた状態で水素および酸素を発生させている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2004−504934公報
【特許文献2】特開2004−353033公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来の電気分解装置では、電極を電解液に浸漬させるため、発生する気体を気泡として回収する必要があり、この気泡が電極表面に滞留し電解効率を低下させている。また、気泡は浮力により電解液中を上昇するため、気体の回収口が装置の上方に限定されている。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、電解効率が高く、気体の回収口が装置の上方に限定されない気体製造装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、有孔の第1電解用電極と、第2電解用電極と、第1電解用電極に接触し、かつ、電解液に接触可能なイオン交換部と、第1気体排出口とを備え、第1電解用電極と第2電解用電極との間に電圧を印加し、かつ、前記イオン交換部が電解液に接触したとき、前記イオン交換部は、電解液に含まれるイオンがイオン伝導するように構成され、第1電解用電極は、前記イオン交換部をイオン伝導したイオンから第1気体を発生するように構成され、かつ、この第1気体が第1電解用電極内の孔を導通し第1気体排出口から排出するように構成されることを特徴とする気体製造装置を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、第1電解用電極において、イオン交換部をイオン伝導したイオンから第1気体を発生させることができるため、第1電解用電極を電解液に浸漬させる必要がない。このため、第1電解用電極の表面に第1気体が滞留することにより電解効率が低下することがなく、また、第1気体を装置の上方以外の第1気体排出口から回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態の気体製造装置の構成を示す概略断面図である。
【図2】図1の点線で囲んだ範囲Aの拡大図であり、本発明の一実施形態の気体製造装置を説明するための概念図である。
【図3】本発明の一実施形態の気体製造装置の構成を示す概略上面図である。
【図4】図3の点線A−Aにおける概略断面図である。
【図5】本発明の一実施形態の気体製造装置の構成を示す概略裏面図である。
【図6】本発明の一実施形態の気体製造装置の構成を示す概略断面図である。
【図7】本発明の一実施形態の気体製造装置の構成を示す概略断面図である。
【図8】本発明の一実施形態の気体製造装置の構成を示す概略断面図である。
【図9】本発明の一実施形態の気体製造装置の構成を示す概略断面図である。
【図10】本発明の一実施形態の気体製造装置の構成を示す概略断面図である。
【図11】本発明の一実施形態の気体製造装置の構成を示す概略断面図である。
【図12】本発明の一実施形態の気体製造装置の構成を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の気体製造装置は、有孔の第1電解用電極と、第2電解用電極と、第1電解用電極に接触し、かつ、電解液に接触可能なイオン交換部と、第1気体排出口とを備え、第1電解用電極と第2電解用電極との間に電圧を印加し、かつ、前記イオン交換部が電解液に接触したとき、前記イオン交換部は、電解液に含まれるイオンがイオン伝導するように構成され、第1電解用電極は、前記イオン交換部をイオン伝導したイオンから第1気体を発生するように構成され、かつ、この第1気体が第1電解用電極内の孔を導通し第1気体排出口から排出するように構成されることを特徴とする。
【0012】
本発明の気体製造装置において、第1電解用電極は、多孔性を有することが好ましい。
このような構成によれば、第1電解用電極の表面積を大きくすることができ、第1気体の発生効率を高くすることができる。
本発明の気体製造装置において、前記イオン交換部は、電解液に対する遮液性を有し、かつ、第1電解用電極を覆うように設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、第1電解用電極が電解液に浸漬されることを防止することができる。
本発明の気体製造装置において、前記イオン交換部は、電解液中のイオンとイオン結合することができるイオン交換基を有することが好ましい。
このような構成によれば、第1電解用電極と第2電解用電極との間に生じる電界により電解液中のイオンがイオン交換部をイオン伝導することができる。
本発明の気体製造装置において、第1電解用電極は、触媒が担持された導電性多孔質体を含むことが好ましい。
このような構成によれば、第1気体が発生する反応の触媒面積を大きくことができる。
【0013】
本発明の気体製造装置において、第1電解用電極は、その表面にイオン交換樹脂からなる塗布膜を有することが好ましい。
このような構成によれば、第1電解用電極内の孔表面にイオン交換部をイオン伝導したイオンが存在することができ、前記孔で第1気体を発生させることができる。
本発明の気体製造装置において、第1電解用電極は、その表面に前記イオン交換部をイオン伝導したイオンとイオン結合することができるイオン交換基を有することが好ましい。
このような構成によれば、第1電解用電極内の孔表面にイオン交換部をイオン伝導したイオンが存在することができ、前記孔で第1気体を発生させることができる。
本発明の気体製造装置において、光電変換部をさらに備え、前記光電変換部は、受光することにより生じる起電力を第1電解用電極と第2電解用電極との間に出力するように構成され、第1電解用電極および第2電解用電極は、前記起電力を利用して、電解液からそれぞれ第1気体および第2気体を発生させるように構成されることが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部が受光することにより生じる起電力により第1気体および第2気体を発生させることができる。
【0014】
本発明の気体製造装置において、第1電解用電極と前記光電変換部との間に気体流路をさらに備え、前記気体流路は、第1電解用電極内の孔を導通した第1気体を第1気体排出口へ導通するように構成されることが好ましい。
このような構成によれば、第1気体をより効率的に回収することができる。
本発明の気体製造装置において、前記光電変換部は、受光面およびその裏面を有し、第1電解用電極および第2電解用電極は、前記光電変換部の裏面側に設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部の受光面側に電解液や電解用電極を設ける必要がなく、光電変換部への光の入射量を多くすることができる。
本発明の気体製造装置において、前記光電変換部は、受光することにより前記光電変換部の受光面とその裏面との間に起電力が生じ、第1電解用電極および第2電解用電極のうち、一方は前記裏面と電気的に接続し、他方は第1導電部を介して前記受光面と電気的に接続することが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部に積層構造のものを用いることができる。
【0015】
本発明の気体製造装置において、第1電解用電極および第2電解用電極のうち少なくとも一方は、前記光電変換部の裏面上に絶縁部を介して設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、リーク電流が生じることを防止することができる。
本発明の気体製造装置において、第1導電部は、前記光電変換部の受光面と接触する第1電極と、第1電極と第1電解用電極または第2電解用電極とを電気的に接続する第2導電部とを含むことが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部の受光面と、第1電解用電極または第2電解用電極とを電気的に接続することができる。
本発明の気体製造装置において、第2導電部は、前記光電変換部を貫通するコンタクトホールに設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部の受光面と、第1電解用電極または第2電解用電極とを電気的に接続する配線の距離をより短くすることができる。
【0016】
本発明の気体製造装置において、前記絶縁部は、前記光電変換部の側面を覆うように設けられ、第2導電部は、前記絶縁部の前記光電変換部の側面を覆う部分の上に設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部の側面上に設けられた第2導電部を介して、光電変換部の受光面と、第1電解用電極または第2電解用電極とを電気的に接続することができる。
本発明の気体製造装置において、前記光電変換部は、受光することにより前記裏面の第1および第2区域間に電位差が生じ、第1区域は、第1電解用電極と電気的に接続し、第2区域は、第2電解用電極と電気的に接続することが好ましい。
このような構成によれば、第1および第2区域と光電変換部の裏面上に設ける第1電解用電極および第2電解用電極とを容易に電気的に接続することができ、製造コストを低減することができる。
本発明の気体製造装置において、前記光電変換部は、n型半導体部およびp型半導体部を有する少なくとも1つの半導体材料からなり、第1および第2区域のうち、一方は前記n型半導体部の一部であり、他方は前記p型半導体部の一部であることが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部にpn接合、pin接合、npp+接合またはpnn+接合を形成することができ、光電変換部が受光することにより、光電変換部の裏面の第1および第2区域間に電位差を生じさせることができる。
【0017】
本発明の気体製造装置において、前記光電変換部の裏面と第1電解用電極との間の一部および前記裏面と第2電解用電極との間の一部に設けられた絶縁部をさらに備え、第1電解用電極および第2電解用電極は、それぞれ前記絶縁部が設けられていない第1および第2区域を介して前記n型半導体部または前記p型半導体部と電気的に接続することが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部が受光することにより形成される電子およびホールを効率よく分離することができ、光電変換効率をより高くすることができる。
本発明の気体製造装置において、透光性基板をさらに備え、前記光電変換部は、前記受光面が前記透光性基板側となるように前記透光性基板上に設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部を透光性基板上に形成することができる。
本発明の気体製造装置において、前記光電変換部は、p型半導体層およびn型半導体層を含む光電変換層を有することが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部をpn接合などを有する半導体で形成することができる。
【0018】
本発明の気体製造装置において、前記光電変換部は、直列接続した複数の光電変換層を含み、前記複数の光電変換層は、受光することにより生じる起電力を第1電解用電極および第2電解用電極に供給することが好ましい。
このような構成によれば、水の電気分解に必要な電圧を容易に第1電解用電極と第2電解用電極に供給することができる。
本発明の気体製造装置において、各光電変換層は、第3導電部により直列接続されたことが好ましい。
このような構成によれば、並列に並べられた各光電変換層を直列接続することができる。
本発明の気体製造装置において、第3導電部は、前記光電変換層の受光面側に設けられた透光性電極と、前記光電変換層の裏面側に設けられた裏面電極とを含むことが好ましい。
このような構成によれば、並列に並べられた各光電変換層を直列接続することができる。
【0019】
本発明の気体製造装置において、第1電解用電極は、電解液からH2を発生させる水素発生部であり、第2電解用電極は、電解液からO2を発生させる酸素発生部であり、前記水素発生部および前記酸素発生部は、それぞれ水素発生触媒および酸素発生触媒を含むことが好ましい。
このような構成によれば、本発明の気体製造装置により燃料電池の燃料となる水素を製造することができる。また、各触媒を含むことにより、電解液の電気分解反応が進行する速度を速くすることができる。
本発明の気体製造装置において、前記水素発生部は、水素発生触媒としてPt、Ir、Ru、Pd、Rh、Au、Fe、NiおよびSeのうち少なくとも1つを含むことが好ましい。
このような構成によれば、水素発生部において効率よく水素を発生させることができる。
【0020】
本発明の気体製造装置において、前記酸素発生部は、酸素発生触媒としてMn、Ca、Zn、CoおよびIrのうち少なくとも1つを含むことが好ましい。
このような構成によれば、酸素発生部おいて酸素を効率よく発生させることができる。
本発明の気体製造装置において、前記イオン交換部または第2電解用電極を浸漬させる電解液を貯留可能な電解液室をさらに備えることが好ましい。
このような構成によれば、イオン交換部に第1気体となるイオンを供給することができる。
本発明の気体製造装置において、背面基板と、受光面およびその裏面を有する光電変換部を備え、前記電解液室は、前記光電変換部の裏面と前記背面基板との間に設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、イオン交換部に接する電解液室を設けることができる。
【0021】
以下、本発明の一実施形態を図面を用いて説明する。図面や以下の記述中で示す構成は、例示であって、本発明の範囲は、図面や以下の記述中で示すものに限定されない。
図1は本発明の一実施形態の気体製造装置の構成を示す概略断面図であり、図2は、図1に示した気体製造装置における点線Aで囲んだ範囲の拡大図であり、第1気体を水素とした場合の前記気体製造装置を説明するための概念図である。
【0022】
本実施形態の気体製造装置23は、有孔の第1電解用電極8と、第2電解用電極7と、第1電解用電極8に接触し、かつ、電解液に接触可能なイオン交換部13と、第1気体排出口20とを備え、第1電解用電極8と第2電解用電極7との間に電圧を印加し、かつ、イオン交換部13が電解液と接触したとき、イオン交換部13は、電解液に含まれるイオンがイオン伝導するように構成され、第1電解用電極8は、イオン交換部13をイオン伝導したイオンから第1気体を発生するように構成され、かつ、この第1気体が第1電解用電極8内の孔45を導通し第1気体排出口20から排出するように構成されることを特徴とする。
【0023】
また、本実施形態の気体製造装置23は、受光することにより生じる起電力を第1電解用電極8と第2電解用電極7との間に出力する光電変換部を含んでもよい。
図3は、光電変換部を含む本発明の一実施形態の気体製造装置の概略上面図であり、図4は、図3の点線A−Aにおける概略断面図であり、図5は、光電変換部を含む本発明の一実施形態の気体製造装置の概略裏面図である。なお、図5は、天板14を省略している。また、図6〜図12は、それぞれ本発明の一実施形態の気体製造装置の概略断面図であり、それぞれ図3に対応する。
光電変換部2を含む本実施形態の気体製造装置23は、光電変換部2は、受光することにより生じる起電力を第1電解用電極8と第2電解用電極7との間に出力するように構成され、第1電解用電極8および第2電解用電極7は、前記起電力を利用して、電解液からそれぞれ第1気体および第2気体を発生させるように構成されることを特徴とする。
また、本実施形態の気体製造装置23は、透光性基板1をさらに備えてもよい。
【0024】
1.イオン交換部
イオン交換部13は、第1電解用電極8に接触し、かつ、電解液に接触可能に設けられる。例えば、図1、2、4、6〜12のようにイオン交換部13の一方の面が第1電解用電極8に接触するように設けられ、他方の面が電解液室15に接するように設けることができる。
イオン交換部13は、イオン交換体からなり、電解液室15に貯留する電解液に含まれるイオンに対するイオン導電性を有すれば特に限定されないが、例えば、イオン交換膜で構成することができる。このことにより、イオン交換部が、電解液に対する遮液性を有することが可能であり、第1電解用電極が電解液に浸漬することを防止することが可能である。イオン交換膜としては、例えば、ナフィオン(登録商標)が挙げられる。また、イオン交換部13は、第1電解用電極8を覆うように設けることができる。このことにより、第1電解用電極8が電解液に浸漬することを防止することができ、また、イオン交換部13と第1電解用電極8との接触面積を大きくすることができる。
【0025】
イオン交換部13は、電解液室15に貯留される電解液中のイオンとイオン結合することができるイオン交換基を有することができる。このことにより、イオン交換部13は、電解液に含まれるイオンをイオン伝導することができる。また、イオン交換部13は、第1電解用電極8と第2電解用電極7との間に電圧が印加された場合、第1電解用電極8と第2電解用電極7との間に形成される電界により、電解液に含まれるイオンがイオン交換部13をイオン伝導するように設けることができる。例えば、図1、11、12のように第1電解用電極8と第2電解用電極7の対向する2つの面の間にイオン交換部13を設けることができ、また、例えば、図4、6〜10のように第1電解用電極8と第2電解用電極7とが並列に設けられ、第1電解用電極8を覆うようにイオン交換部13を設けることができる。
【0026】
イオン交換部13を構成するイオン交換体としては、第1気体の原料となるイオンをイオン伝導するものであれば特に限定されず、プロトン伝導性膜、カチオン交換膜、アニオン交換膜等を使用できる。
【0027】
プロトン伝導性膜の材質としては、プロトン伝導性を有しかつ電気的絶縁性を有する材質であれば特に限定されず、高分子膜、無機膜又はコンポジット膜を用いることができる。
【0028】
高分子膜としては、例えば、パーフルオロスルホン酸系電解質膜である、デュポン社製のナフィオン(登録商標)、旭化成社製のアシプレックス(登録商標)、旭硝子社製のフレミオン(登録商標)等の膜や、ポリスチレンスルホン酸、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン等の炭化水素系電解質膜等が挙げられる。
【0029】
無機膜としては、例えば、リン酸ガラス、硫酸水素セシウム、ポリタングストリン酸、ポリリン酸アンモニウム等からなる膜が挙げられる。コンポジット膜としては、スルホン化ポリイミド系ポリマー、タングステン酸等の無機物とポリイミド等の有機物とのコンポジット等からなる膜が挙げられ、具体的にはゴア社製のゴアセレクト膜(登録商標)や細孔フィリング電解質膜等が挙げられる。さらに、高温環境下(例えば、100℃以上)で使用する場合には、スルホン化ポリイミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、スルホン化ポリベンゾイミダゾール、ホスホン化ポリベンゾイミダゾール、硫酸水素セシウム、ポリリン酸アンモニウム等が挙げられる。
【0030】
カチオン交換膜としては、カチオンを移動させることができる固体高分子電解質であればよい。具体的には、パーフルオロカーボンスルフォン酸膜や、パーフルオロカーボンカルボン酸膜等のフッ素系イオン交換膜、リン酸を含浸させたポリベンズイミダゾール膜、ポリスチレンスルホン酸膜、スルホン酸化スチレン・ビニルベンゼン共重合体膜等が挙げられる。
【0031】
支持電解質溶液のアニオン輸率が高い場合には、アニオン交換膜の使用が好ましい。アニオン交換膜としては、アニオンの移動可能な固体高分子電解質を使用できる。具体的には、ポリオルトフェニレンジアミン膜、アンモニウム塩誘導体基を有するフッ素系イオン交換膜、アンモニウム塩誘導体基を有するビニルベンゼンポリマー膜、クロロメチルスチレン・ビニルベンゼン共重合体をアミノ化した膜等が挙げられる。
【0032】
イオン交換部13をイオン伝導するイオンは、第1気体となるものであれば陽イオンでも陰イオンでもよいが、例えば、水素イオン(H+)である。ここでは、イオン交換部13がプロトン伝導性を有する場合について図1、2を用いて説明する。
第1電解用電極8が負極となり、第2電解用電極7が正極となるように電圧を印加した場合、第1電解用電極8と第2電解用電極7との間に電界が形成され、電界中の陽イオンは第1電解用電極8方向に移動し、負イオンは第2電解用電極7方向に移動する。図2の場合では、電解液中の水素イオン(H+)またはヒドロニウムイオン(H3+)は、イオン交換部13方向に移動し、イオン交換部13が有するイオン交換基(R−SO3-)(固定イオン)とイオン結合し、対立イオン(H+)となることができる。この対立イオンとなったH+は、第1電解用電極8と第2電解用電極7との間の電界によりイオン交換部13をイオン伝導し、第1電解用電極8の表面にまでイオン伝導することができ、第1電解用電極8の表面でH2となることができる。
【0033】
2.第1電解用電極および第2電解用電極
第1電解用電極8および第2電解用電極7は、例えば、図1のようにその間に電圧を印加できるように設けられる。また、第1電解用電極8および第2電解用電極7は、例えば、図4、6〜12のように光電変換部2とそれぞれ電気的に接続し、光電変換部2が受光することにより生じる起電力が第1電解用電極8および第2電解用電極7に出力されるように電気的に接続することができるように設けることができる。
第1電解用電極8は、孔を有する。孔を有する第1電解用電極8としては、例えば、多孔性を有する電極や格子状の電極や粒子が充填されたような構造を有する電極や布状の電極などである。ここで第1電解用電極8が有する孔とは、第1電解用電極8の内部に形成され、第1電解用電極8の表面に導通しているものをいう。
第1電解用電極8は特に多孔性を有することが好ましい。このことにより、第1電解用電極8の表面積を広くすることができ、第1気体の発生効率を高くすることができる。第1電解用電極8としては、たとえば、多孔性カーボンなどを用いることができる。
【0034】
第1電解用電極8は、イオン交換部13に接触する。このことにより、イオン交換部13をイオン伝導したイオンが第1電解用電極8の表面で反応することができ、前記イオンから第1気体を発生させることができる。
また、第1電解用電極8は、内部に孔を有する。発生させた第1気体は、この孔を導通し、第1気体排出口20から排出することができる。このため、第1電解用電極8で発生させた第1気体を効率よく回収することができる。また、第1気体を気泡とすることなく回収できるため、第1気体排出口20を装置の側部や下部に設けることもできる。
【0035】
また、第1電解用電極8は、その表面にイオン交換樹脂からなる塗布膜43を有することができる。このイオン交換樹脂に含まれるイオン交換基(固定イオン)と、イオン交換部13をイオン伝導したイオンがイオン結合する場合、このイオンが塗布膜43をイオン伝導し、第1電解用電極8内の孔に移動することができる。このため、イオン交換部13をイオン伝導したイオンが第1電解用電極8内の多くの孔45で第1気体となることができ、電解効率を高くすることができる。具体的には、触媒を担持した多孔性カーボンとイオン交換樹脂を混合することにより、第1電解用電極8の表面に塗布膜43を形成することができる。
【0036】
また、第1電解用電極8は、その表面にイオン交換部13をイオン伝導したイオンとイオン結合することができるイオン交換基を表面基として有することができる。このことにより、イオン交換部13をイオン伝導したイオンは、第1電解用電極8表面のイオン交換基とイオン結合することができ、このイオンが第1電解用電極8表面をイオン伝導することができる。このため、イオン交換部13をイオン伝導したイオンが第1電解用電極8内の多くの孔45で第1気体となることができ、電解効率を高くすることができる。また、第1電解用電極8内の孔45であって、イオン交換樹脂が入り込むことができないような小さい細孔であっても、イオン交換基を表面基として修飾することが可能である。このため、第1気体が発生する反応が生じる第1電解用電極8の表面積をより広くすることができ、電解効率をより高くすることができる。第1気体が水素の場合、第1電解用電極8表面のイオン交換基は、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基などが挙げられる。これらの官能基は、プロトン解離性を有するためである。これらの官能基は、多孔性の第1電解用電極8を表面処理することにより形成することができる。より具体的には、イオン交換基がスルホン酸基とした場合、第1電解用電極8となる多孔性カーボンを硫酸、発煙硫酸などで表面処理することにより、多孔性カーボンの表面にスルホン酸基を形成することができる。
【0037】
第1気体が水素ガスとした場合について図2を用いてより具体的に説明する。例えば、イオン交換部13をイオン伝導したH+は、第1電解用電極8表面の塗布膜43に含まれるイオン交換基(−SO3-)または第1電解用電極8の表面基であるイオン交換基(−SO3-)とイオン結合し、第1電解用電極8の表面をイオン伝導し、第1電解用電極8内の孔45に担持された触媒42表面で水素ガスとなることができる。この水素ガスは、孔45を導通し、第1気体排出口20から回収することができる。なお、この水素ガスは、気泡となることなく回収することができるため、第1気体排出口20は、装置の上方に設ける必要がなく装置の側部や下方に設けることもできる。
【0038】
次に、本実施形態の気体製造装置23が光電変換部2を備え、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1電解用電極8と第2電解用電極7との間に出力することができるように設けられた場合について説明する。
【0039】
第1電解用電極8および第2電解用電極7は、光電変換部2の裏面の上に設けることができる。このことにより、第1電解用電極8および第2電解用電極7は光電変換部2に入射する光を遮ることはない。また、光電変換部2が受光することにより、受光面とその裏面との間に起電力が生じる場合、第1電解用電極8および第2電解用電極7のうち一方は、光電変換部2の受光面と電気的に接続し、他方は光電変換部2の裏面と電気的に接続することができる。例えば、図4、6〜8、11、12のように、第1電解用電極8が光電変換部2の裏面と電気的に接続し、第2電解用電極7が光電変換部2の受光面と電気的に接続することができる。なお、この電気的接続関係は逆であってもよい。なお、リーク電流が生じることを防止するために、第1電解用電極8と光電変換部2との間、または第2電解用電極7と光電変換部2との間に絶縁部11を設けることができる。また、このような絶縁部11を設けた場合、絶縁部11と第1電解用電極8との間または絶縁部11と第2電解用電極7との間に導電部をもうけることができる。このことにより内部抵抗を小さくすることができる。
【0040】
ここでは、第1電解用電極8が光電変換部2の裏面と電気的に接続し、第2電解用電極7が光電変換部2の受光面と電気的に接続する場合について説明する。
第1電解用電極8は、光電変換部2の裏面上に形成することにより光電変換部2の裏面と電気的に接続することができる。また、図4、6〜8、11のように光電変換部2の裏面上に第2電極5を形成し、第2電極5上に第1電解用電極8を形成してもよい。このことにより、内部抵抗を小さくすることができる。
【0041】
第2電解用電極7は、第1導電部9を介して光電変換部2の受光面と電気的に接続してもよい。
第1導電部9は、例えば、図7、11のように光電変換部2の受光面と接触するように設けられた第1電極4のみからなってもよい。この場合、光電変換部2の側面を覆うように絶縁部11が設けられ、第2電解用電極7が、光電変換部2の側面を覆う絶縁部11の上に設けられてもよい。
【0042】
また、第1導電部9は、光電変換部2の受光面と接触するように設けられた第1電極4と、第2導電部10からなってもよい。第2導電部10としては、例えば、図4、6のように光電変換部2を貫通するコンタクトホール内に設けられた導電体であってもよく、図8のように第1電極4上および第2電解用電極7と光電変換部2との間に設けられた絶縁部11上に設けられた導電体層であってもよく、図12のように光電変換部2の側面上に設けられた導電体であってもよい。
【0043】
また、光電変換部2が受光することにより光電変換部2の第1区域と第2区域との間に起電力が生じる場合、第1電解用電極8および第2電解用電極7のうち一方は、第1区域と電気的に接続し、他方は、第2区域と電気的に接続することができる。例えば、図9、10のように、第1電解用電極8は、光電変換部2に含まれるn型半導体部37と電気的に接続することができ、第2電解用電極7は、p型半導体部36と電気的に接続することができる。この電気的接続関係は逆であってもよい。
【0044】
第1電解用電極8および第2電解用電極7は、図4、6〜10のように光電変換部2の裏面上に並列に設けられてもよく、図11のように光電変換部2の裏面上に絶縁部11を挟んで積層されてもよく、図12のように光電変換部2の裏面側に電解液室15を挟んで対向するように設けられてもよい。
第1電解用電極8と第2電解用電極7を光電変換部2の裏面上に並列に設けた場合、光電変換部2と電解用電極との間の配線距離を短くすることができ、内部抵抗を小さくすることができる。
第1電解用電極8と第2電解用電極7とを図11のように積層した場合、第1電解用電極8と第2電解用電極7を大きく設けることができる。また、絶縁部11に電解液透過性を有する絶縁体を用いることにより、イオン交換部13に電解液を接触させることができる。
第1電解用電極8と第2電解用電極7とを図12のように設けた場合、第1電解用電極8と第2電解用電極7を大きく設けることができる。また、第2気体を気泡として容易に上昇させることができるため、第2気体が第2電解用電極7表面に滞留することを防止することができる。
【0045】
また、電解液を水溶液とした場合、第1電解用電極8を水素発生部とし、第2電解用電極7を酸素発生部とすることができる。この場合、本実施形態の気体製造装置23により、水素および酸素を製造することができる。
【0046】
3.水素発生部
水素発生部は、電解液からH2を発生させる部分であり、第1電解用電極8とすることができる。また、水素発生部は、電解液(プロトン)からH2が発生する反応の触媒42を含んでもよい。このことにより、電解液(プロトン)からH2が発生する反応の反応速度を大きくすることができる。水素発生部は、電解液からH2が発生する反応の多孔質、格子状、布状などの触媒のみからなってもよく、この触媒が多孔質、格子状、布状などの担持体に担持されたものであってもよい。また、水素発生部は、触媒が担持された多孔質の導電体であってもよい。このことにより、触媒表面積を大きくすることができる。さらに、水素発生部は、水素発生触媒としてPt、Ir、Ru、Pd、Rh、Au、Fe、NiおよびSeのうち少なくとも1つを含んでもよい。このような構成によれば、第1電解用電極8と第2電解用電極7との間に印加された電力により、より速い反応速度で水素を発生させることができる。
【0047】
電解液(プロトン)からH2が発生する反応の触媒(水素発生触媒)は、2つのプロトンと2つの電子から1分子の水素への変換を促進する触媒であり、化学的に安定であり、水素生成過電圧が小さい材料を用いることができる。例えば、水素に対して触媒活性を有するPt,Ir,Ru,Pd,Rh,Au等の白金族金属およびその合金あるいは化合物、水素生成酵素であるヒドロゲナーゼの活性中心を構成するFe,Ni,Seの合金あるいは化合物、およびこれらの組み合わせ等を好適に用いることが可能である。中でもPtおよびPtを含有するナノ構造体は水素発生過電圧が小さく好適に用いることが可能である。光照射により水素発生反応が確認されるCdS,CdSe,ZnS,ZrO2などの材料を用いることもできる。
水素発生触媒を担持する有孔の導電体としては、多孔質金属、多孔質カーボンなどが挙げられる。例えば、多孔質カーボン表面に触媒金属などを含む溶液を塗布し、乾燥、熱処理することにより、多孔質カーボン表面に触媒を担持することができる。
【0048】
4.酸素発生部
酸素発生部は、電解液からO2を発生させる部分であり、第2電解用電極7とすることができる。また、酸素発生部は、電解液からO2が発生する反応の触媒を含んでもよい。このことにより、電解液からO2が発生する反応の反応速度を大きくすることができる。また、酸素発生部は、電解液からO2が発生する反応の触媒のみからなってもよく、この触媒が担持体に担持されたものであってもよい。また、酸素発生部は、光電変換部2の受光面の面積より大きい触媒表面積を有してもよい。このことにより、電解液からO2が発生する反応をより速い反応速度とすることができる。また、酸素発生部は、触媒が担持された多孔質の導電体であってもよい。このことにより、触媒表面積を大きくすることができる。また、光電変換部2と酸素発生部に含まれる触媒との間に電流が流れることによる電位の変化を抑制することができる。さらに、酸素発生部は、酸素発生触媒としてMn、Ca、Zn、CoおよびIrのうち少なくとも1つを含んでもよい。このような構成によれば、第1電解用電極8と第2電解用電極7との間に印加された電力により、より速い反応速度で酸素を発生させることができる。
【0049】
電解液からO2が発生する反応の触媒(酸素発生触媒)は、2つの水分子から1分子の酸素および4つのプロトンと4つの電子への変換を促進する触媒であり、化学的に安定であり、酸素発生過電圧が小さい材料を用いることができる。例えば、光を用い水から酸素発生を行う反応を触媒する酵素であるPhotosystem IIの活性中心を担うMn,Ca,Zn,Coを含む酸化物あるいは化合物や、Pt,RuO2,IrO2等の白金族金属を含む化合物や、Ti,Zr,Nb,Ta,W,Ce,Fe,Ni等の遷移金属を含む酸化物あるいは化合物、および上記材料の組み合わせ等を用いることが可能である。中でも酸化イリジウム、酸化マンガン、酸化コバルト、リン酸コバルトは、過電圧が小さく酸素発生効率が高いことから好適に用いることができる。
【0050】
酸素発生触媒を直接光電変換部2の表面に担持することは可能であるが、反応面積をより大きくし気体生成速度を向上させるために、触媒を導電体に担持することができる。触媒を担持する導電体としては、金属材料、炭素質材料、導電性を有する無機材料等が挙げられる。
【0051】
金属材料としては、電子伝導性を有し、酸性雰囲気下で耐腐食性を有する材料が好ましい。具体的には、Au、Pt、Pd等の貴金属、Ti、Ta、W、Nb、Ni、Al、Cr、Ag、Cu、Zn、Su、Si等の金属並びにこれらの金属の窒化物および炭化物、ステンレス鋼、Cu−Cr、Ni−Cr、Ti−Pt等の合金が挙げられる。金属材料には、Pt、Ti、Au、Ag、Cu、Ni、Wからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素を含むことが、他の化学的な副反応が少ないという観点から、より好ましい。これら金属材料は、比較的電気抵抗が小さく、面方向に電流を取り出しても電圧の低下を抑制することができる。また、Cu、Ag、Zn等の酸性雰囲気下での耐腐食性に乏しい金属材料を用いる場合には、Au、Pt、Pd等の耐腐食性を有する貴金属および金属、カーボン、グラファイト、グラッシーカーボン、導電性高分子、導電性窒化物、導電性炭化物、導電性酸化物等によって耐腐食性に乏しい金属の表面をコーティングしてもよい。
【0052】
炭素質材料としては、化学的に安定で導電性を有する材料が好ましい。例えば、アセチレンブラック、バルカン、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、VGCF、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、フラーレン等の炭素粉末や炭素繊維が挙げられる。
【0053】
導電性を有する無機材料としては、例えば、In−Zn−O(IZO)、In−Sn−O(ITO)、ZnO−Al、Zn−Sn−O、SnO2、酸化アンチモンドープ酸化スズが挙げられる。
【0054】
なお、導電性高分子としては、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリパラフェニレン、ポリパラフェニレンビニレン等が挙げられ、導電性窒化物としては、窒化炭素、窒化ケイ素、窒化ガリウム、窒化インジウム、窒化ゲルマニウム、窒化チタニウム、窒化ジルコニウム、窒化タリウム等が挙げられ、導電性炭化物としては、炭化タンタル、炭化ケイ素、炭化ジルコニウム、炭化チタニウム、炭化モリブデン、炭化ニオブ、炭化鉄、炭化ニッケル、炭化ハフニウム、炭化タングステン、炭化バナジウム、炭化クロム等が挙げられ、導電性酸化物としては、酸化スズ、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化アンチモンドープ酸化スズ等が挙げられる。
【0055】
酸素発生触媒を担持する導電体の構造としては、板状、箔状、棒状、メッシュ状、ラス板状、多孔質板状、多孔質棒状、織布状、不織布状、繊維状、フェルト状が好適に使用できる。また、フェルト状電極の表面を溝状に圧着した溝付き導電体は、電気抵抗と電極液の流動抵抗を低減できるので好適である。
【0056】
水素発生触媒および酸素発生触媒の単独の触媒活性が小さい場合、助触媒を用いることも可能である。例えば、Ni,Cr,Rh,Mo,Co,Seの酸化物あるいは化合物などが挙げられる。
【0057】
なお、酸素発生触媒の担持方法は、導電体もしくは半導体に直接塗布する方法や、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法等のPVD法、CVD法等の乾式塗工法、電析法など、材料により適宜その手法を変え作製ことが可能である。光電変換部と触媒の間に適宜導電物質を担持することが可能である。また酸素発生のための触媒活性が十分でない場合、金属やカーボン等の多孔質体や繊維状物質、ナノ粒子等に担持することにより反応表面積を大きくし、酸素発生速度を向上させることが可能である。
【0058】
5.光電変換部
光電変換部2は、受光面および裏面を有し、光電変換部2の裏面の側に第1電解用電極8と第2電解用電極7を設けることができる。なお、受光面とは、光電変換するための光を受光する面であり、裏面とは、受光面の裏の面である。また、光電変換部2は、第1電極4が設けられた透光性基板1の上に受光面を下にして設けることができる。
【0059】
光電変換部2は、入射光により電荷分離することができ、起電力が生じるものであれば、特に限定されないが、例えば、シリコン系半導体を用いた光電変換部、化合物半導体を用いた光電変換部、色素増感剤を利用した光電変換部、有機薄膜を用いた光電変換部などである。
光電変換部2は、受光することにより受光面と裏面との間に起電力が生じるものでもよく、また、受光することにより裏面の第1区域と第2区域との間に起電力が生じるものであってもよい。光電変換部2が受光面と裏面との間に起電力が生じるものである場合、例えば、図4、6〜8、11、12のように電気的に接続することにより光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1電解用電極8と第2電解用電極7との間に出力することができる。また、光電変換部2が裏面の第1区域と第2区域との間に起電力が生じるものである場合、例えば、図9、10のように電気的に接続することにより光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1電解用電極8と第2電解用電極7との間に出力することができる。
【0060】
光電変換部2は、光を受光することにより、水素発生部および酸素発生部においてそれぞれ水素と酸素が発生するために必要な起電力が生じる材料を使用することができる。水素発生部と酸素発生部の電位差は、水分解のための理論電圧(1.23V)より大きくする必要があり、そのためには光電変換部2で十分大きな電位差を生み出す必要がある。そのため光電変換部2は、pn接合など起電力を生じさせる部分を二接合以上直列に接続することが好ましい。
【0061】
光電変換を行う材料は、シリコン系半導体、化合物半導体、有機材料をベースとしたものなどが挙げられるが、いずれの光電変換材料も使用することが可能である。また、起電力を大きくするために、これらの光電変換材料を積層することが可能である。積層する場合には同一材料で多接合構造を形成することが可能であるが、光学的バンドギャップの異なる複数の光電変換層を積層し、各々の光電変換層の低感度波長領域を相互に補完することにより、広い波長領域にわたり入射光を効率よく吸収することが可能となる。これらの複数の光電変換層は、それぞれ異なるバンドギャップを有することが好ましい。このような構成によれば、光電変換部で生じる起電力をより大きくすることができ、電解液をより効率的に電気分解することができる。
【0062】
また、光電変換層間の直列接続特性の改善や、光電変換部2で発生する光電流の整合のために、層間に透明導電膜等の導電体を介在させることが可能である。これにより光電変換部2の劣化を抑制することが可能となる。
光電変換部2は、図8、10のように、並べて形成した光電変換層を第3導電部33により直列接続したものであってもよい。また、光電変換層28が受光面側と裏面側との間に起電力が生じる場合、図8のように光電変換層28の受光面側に設けた透光性電極30と光電変換層28の裏面側に設けた裏面電極31とを電気的に接続することにより第3導電部33を形成することができる。なお、透光性電極30は、第1電極4と同様の方法に形成することが可能である。また、透光性基板1上にCVD法またはスパッタリング法により透光性導電膜を形成し、透光性導電膜をレーザスクライブ加工することにより、第1電極4と透光性電極30を同時に形成することもできる。裏面電極31は、第2電極5と同様の方法で形成可能である。また、透光性電極30と裏面電極31とを電気的に接続する方法は、例えば、光電変換層28にコンタクトホールを形成する方法であってもよく、裏面電極31の一部が透光性電極30の一部の上に形成する方法であってもよい。
また、光電変換層が裏面側の異なる領域間に起電力を生じさせる場合、図10のように第3導電部33を形成することができる。
光電変換部2の例を以下に具体的に説明する。また、光電変換部2は、これらを組み合わせたものでもよい。また、以下の光電変換部2の例は、矛盾しない限り光電変換層とすることもできる。
【0063】
5−1.シリコン系半導体を用いた光電変換部
シリコン系半導体を用いた光電変換部2は、例えば、単結晶型、多結晶型、アモルファス型、球状シリコン型、及びこれらを組み合わせたもの等が挙げられる。いずれもp型半導体とn型半導体が接合したpn接合を有することができる。また、p型半導体とn型半導体との間にi型半導体を設けたpin接合を有するものとすることもできる。また、pn接合を複数有するもの、pin接合を複数有するもの、pn接合とpin接合を有するものとすることもできる。
シリコン系半導体とは、シリコンを含む半導体であり、例えば、シリコン、シリコンカーバイド、シリコンゲルマニウムなどである。また、シリコンなどにn型不純物またはp型不純物が添加されたものも含み、また、結晶質、非晶質、微結晶のものも含む。
また、シリコン系半導体を用いた光電変換部2は、透光性基板1の上に形成された薄膜または厚膜の光電変換層であってもよく、また、シリコンウェハなどのウェハにpn接合またはpin接合を形成したものでもよく、また、pn接合またはpin接合を形成したウェハの上に薄膜の光電変換層を形成したものでもよい。
【0064】
シリコン系半導体を用いた光電変換部2の形成例を以下に示す。
透光性基板1上に積層した第1電極4上に、第1導電型半導体層をプラズマCVD法等の方法で形成する。この第1導電型半導体層としては、導電型決定不純物原子濃度が1×1018〜5×1021/cm3程度ドープされた、p+型またはn+型の非晶質Si薄膜、または多結晶あるいは微結晶Si薄膜とする。第1導電型半導体層の材料としては、Siに限らず、SiCあるいはSiGe,Six1-x等の化合物を用いることも可能である。
【0065】
このように形成された第1導電型半導体層上に、結晶質Si系光活性層として多結晶あるいは微結晶の結晶質Si薄膜をプラズマCVD法等の方法で形成する。なお、導電型は第1導電型半導体よりドーピング濃度が低い第1導電型とするか、あるいはi型とする。結晶質Si系光活性層の材料としては、Siに限らず、SiCあるいはSiGe,Six1-x等の化合物を用いることも可能である。
【0066】
次に、結晶質Si系光活性層上に半導体接合を形成するため、第1導電型半導体層とは反対導電型である第2導電型半導体層をプラズマCVD等の方法で形成する。この第2導電型半導体層としては、導電型決定不純物原子が1×1018〜5×1021/cm3程度ドープされた、n+型またはp+型の非晶質Si薄膜、または多結晶あるいは微結晶Si薄膜とする。第2導電型半導体層の材料としては、Siに限らず、SiCあるいはSiGe,Six1-x等の化合物を用いることも可能である。また接合特性をより改善するために、結晶質Si系光活性層と第2導電型半導体層との間に、実質的にi型の非単結晶Si系薄膜を挿入することも可能である。このようにして、受光面に最も近い光電変換層を一層積層することができる。
【0067】
続けて第二層目の光電変換層を形成する。第二層目の光電変換層は、第1導電型半導体層、結晶質Si系光活性層、第2導電型半導体層からなり、それぞれの層は、第一層目の光電変換層中の対応する第1導電型半導体層、結晶質Si系光活性層、第2導電型半導体層と同様に形成する。二層のタンデムで水分解に十分な電位を得ることができない場合は、三層あるいはそれ以上の層状構造を取ることが好ましい。ただし第二層目の光電変換層の結晶質Si系光活性層の体積結晶化分率は、第一層目の結晶質Si系光活性層と比較すると高くすることが好ましい。三層以上積層する場合も同様に下層と比較すると体積結晶化分率を高くすることが好ましい。これは、長波長域での吸収が大きくなり、分光感度が長波長側にシフトし、同じSi材料を用いて光活性層を構成した場合においても、広い波長域で感度を向上させることが可能となるためである。すなわち、結晶化率の異なるSiでタンデム構造にすることにより、分光感度が広くなり、光の高効率利用が可能となる。このとき低結晶化率材料を受光面側にしないと高効率とならない。また結晶化率が40%以下に下がるとアモルファス成分が増え、劣化が生じてしまう。なおこの例では、光電変換層を積層することにより直列接続した各光電変換層からなる光電変換部2を説明したが、図11、13のように並べて設けた光電変換層を直列接続させることによっても光電変換部2を形成することができる。
【0068】
次に、シリコン基板を用いた光電変換部2の形成例を以下に示す。
シリコン基板としては、単結晶シリコン基板または多結晶シリコン基板などを用いることができ、p型であっても、n型であっても、i型であってもよい。このシリコン基板の一部にPなどのn型不純物を熱拡散またはイオン注入などによりドープすることによりn型半導体領域37を形成し、シリコン基板のほかの一部にBなどのp型不純物を熱拡散またはイオン注入などによりドープすることによりp型半導体領域36を形成することができる。このことにより、シリコン基板にpn接合、pin接合、npp+接合またはpnn+接合などを形成することができ、光電変換部2を形成することができる。
【0069】
n型半導体領域37およびp型半導体領域36は、図9、10のようにシリコン基板にそれぞれ1つの領域を形成することができ、n型半導体領域37およびp型半導体領域36のうちどちらか一方を複数形成することもできる。また、図10のようにn型半導体領域37およびp型半導体領域36を形成したシリコン基板を並べて設置し、第3導電部33により直列接続することにより光電変換部2を形成することもできる。
なお、ここではシリコン基板を用いて説明したが、pn接合、pin接合、npp+接合またはpnn+接合などを形成することができる他の半導体基板を用いてもよい。また、n型半導体領域37およびp型半導体領域36を形成することができれば、半導体基板に限定されず、基板上に形成された半導体層であってもよい。
【0070】
5−2.化合物半導体を用いた光電変換部
化合物半導体を用いた光電変換部は、例えば、III−V族元素で構成されるGaP、GaAsやInP、InAs、II−VI族元素で構成されるCdTe/CdS、I−III−VI族で構成されるCIGS(Copper Indium Gallium DiSelenide)などを用いpn接合を形成したものが挙げられる。
【0071】
化合物半導体を用いた光電変換部の製造方法の一例を以下に示すが、本製造方法では、製膜処理等はすべて有機金属気相成長法(MOCVD;Metal Organic Chemical Vapor Deposition)装置を使って連続して行われる。III族元素の材料としては、例えばトリメチルガリウム、トリメチルアルミニウム、トリメチルインジウムなどの有機金属が水素をキャリアガスとして成長装置に供給される。V族元素の材料としては、例えばアルシン(AsH3)、ホスフィン(PH3)、スチビン(SbH3)等のガスが使われる。p型不純物またはn型不純物のドーパントとしては、例えばp型化にはジエチルジンク、またはn型化には、モノシラン(SiH4)やジシラン(Si26)、セレン化水素(H2Se)等が利用される。これらの原料ガスを、例えば700℃に加熱された基板上に供給することにより熱分解させ、所望の化合物半導体材料膜をエピタキシャル成長させることが可能である。これら成長層の組成は導入するガス組成により、また膜厚はガスの導入時間によって制御することが可能である。これらの光電変換部を多接合積層する場合は、層間での格子定数を可能な限り合わせることにより、結晶性に優れた成長層を形成することができ、光電変換効率を向上することが可能となる。
【0072】
pn接合を形成した部分以外にも、例えば受光面側に公知の窓層や、非受光面側に公知の電界層等を設けることによりキャリア収集効率を高める工夫を有してもよい。また不純物の拡散を防止するためのバッファ層を有していてもよい。
【0073】
5−3.色素増感剤を利用した光電変換部
色素増感剤を利用した光電変換部は、例えば、主に多孔質半導体、色素増感剤、電解質、溶媒などにより構成される。
多孔質半導体を構成する材料としては、例えば、酸化チタン、酸化タングステン、酸化亜鉛、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、硫化カドミウム等公知の半導体から1種類以上を選択することが可能である。多孔質半導体を基板上に形成する方法としては、半導体粒子を含有するペーストをスクリーン印刷法、インクジェット法等で塗布し乾燥もしくは焼成する方法や、原料ガスを用いたCVD法等により製膜する方法、PVD法、蒸着法、スパッタ法、ゾルゲル法、電気化学的な酸化還元反応を利用した方法等が挙げられる。
【0074】
多孔質半導体に吸着する色素増感剤としては、可視光領域および赤外光領域に吸収を持つ種々の色素を用いることが可能である。ここで、多孔質半導体に色素を強固に吸着させるには、色素分子中にカルボン酸基、カルボン酸無水基、アルコキシ基、スルホン酸基、ヒドロキシル基、ヒドロキシルアルキル基、エステル基、メルカプト基、ホスホニル基等が存在することが好ましい。これらの官能基は、励起状態の色素と多孔質半導体の伝導帯との間の電子移動を容易にする電気的結合を提供する。
【0075】
これらの官能基を含有する色素として、例えば、ルテニウムビピリジン系色素、キノン系色素、キノンイミン系色素、アゾ系色素、キナクリドン系色素、スクアリリウム系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、トリフェニルメタン系色素、キサンテン系色素、ポルフィリン系色素、フタロシアニン系色素、ベリレン系色素、インジゴ系色素、ナフタロシアニン系色素等が挙げられる。
【0076】
多孔質半導体への色素の吸着方法としては、例えば多孔質半導体を、色素を溶解した溶液(色素吸着用溶液)に浸漬する方法が挙げられる。色素吸着用溶液に用いられる溶媒としては、色素を溶解するものであれば特に制限されず、具体的には、エタノール、メタノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトニトリル等の窒素化合物類、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン等の芳香族炭化水素、酢酸エチル等のエステル類、水等を挙げることができる。
【0077】
電解質は、酸化還元対とこれを保持する液体または高分子ゲル等固体の媒体からなる。
酸化還元対としては一般に、鉄系、コバルト系等の金属類や塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン物質が好適に用いられ、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム等の金属ヨウ化物とヨウ素の組み合わせが好ましく用いられる。さらに、ジメチルプロピルイミダゾールアイオダイド等のイミダゾール塩等を混入することもできる。
【0078】
また、溶媒としては、プロピレンカーボネート等のカーボネート化合物、アセトニトリル等のニトリル化合物、エタノール、メタノール等のアルコール、その他、水や非プロトン極性物質等が用いられるが、中でも、カーボネート化合物やニトリル化合物が好適に用いられる。
【0079】
5−4.有機薄膜を用いた光電変換部
有機薄膜を用いた光電変換部は、電子供与性および電子受容性を持つ有機半導体材料で構成される電子正孔輸送層、または電子受容性を有する電子輸送層と電子供与性を有する正孔輸送層とが積層されたものであってもよい。
電子供与性の有機半導体材料としては、電子供与体としての機能を有するものであれば特に限定されないが、塗布法により製膜できることが好ましく、中でも電子供与性の導電性高分子が好適に使用される。
【0080】
ここで導電性高分子とはπ共役高分子を示し、炭素−炭素またはヘテロ原子を含む二重結合または三重結合が、単結合と交互に連なったπ共役系からなり、半導体的性質を示すものをさす。
【0081】
電子供与性の導電性高分子材料としては、例えばポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリチオフェン、ポリカルバゾール、ポリビニルカルバゾール、ポリシラン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリフルオレン、ポリビニルピレン、ポリビニルアントラセン、およびこれらの誘導体、共重合体、あるいはフタロシアニン含有ポリマー、カルバゾール含有ポリマー、有機金属ポリマー等が挙げられる。中でも、チオフェン−フルオレン共重合体、ポリアルキルチオフェン、フェニレンエチニレン−フェニレンビニレン共重合体、フルオレン−フェニレンビニレン共重合体、チオフェン−フェニレンビニレン共重合体等が好適に利用される。
【0082】
電子受容性の有機半導体材料としては、電子受容体としての機能を有するものであれば特に限定されないが、塗布法により製膜できることが好ましく、中でも電子供与性の導電性高分子が好適に使用される。
電子受容性の導電性高分子としては、例えばポリフェニレンビニレン、ポリフルオレン、およびこれらの誘導体、共重合体、あるいはカーボンナノチューブ、フラーレンおよびこれらの誘導体、CN基またはCF3基含有ポリマーおよびそれらの−CF3置換ポリマー等が挙げられる。
【0083】
また、電子供与性化合物がドープされた電子受容性の有機半導体材料や、電子受容性化合物がドープされた電子供与性の有機半導体材料等を用いることが可能である。電子供与性化合物がドープされる電子受容性の導電性高分子材料としては、上述の電子受容性の導電性高分子材料を挙げることができる。ドープされる電子供与性化合物としては、例えばLi、K、Ca、Cs等のアルカリ金属やアルカリ土類金属のようなルイス塩基を用いることができる。なお、ルイス塩基は電子供与体として作用する。また、電子受容性化合物がドープされる電子供与性の導電性高分子材料としては、上述した電子供与性の導電性高分子材料を挙げることができる。ドープされる電子受容性化合物としては、例えばFeCl3、AlCl3、AlBr3、AsF6やハロゲン化合物のようなルイス酸を用いることができる。なお、ルイス酸は電子受容体として作用する。
【0084】
上記にて示した光電変換部2においては、第一義的には太陽光を受光させ光電変換を行うことを想定しているが、用途により蛍光灯や白熱灯、LED、特定の熱源から発せられる光等の人工光を照射し光電変換を行うことも可能である。
【0085】
6.気体流路
気体流路17は、第1電解用電極8と光電変換部2との間に設けることができる。また、気体流路17は、第1電解用電極8内の孔45を導通した第1気体を第1気体排出口20へ導通させることができるように設けることができる。具体的には、図6のように気体流路17を設けることができる。気体流路17を設けることにより、第1電解用電極8で生成した第1気体を速やかに第1気体排出口20から回収することができ、第1電解用電極8内の細孔で第1気体の分圧が高くなることを防止することができる。また、気体流路17の代わりに、導電性多孔質からなる気体導通部を設けることもできる。
【0086】
7.透光性基板
透光性基板1は、光電変換部2を備える本実施形態の気体製造装置23が備えてもよい。また、光電変換部2は、受光面が透光性基板1側となるように透光性の透光性基板1の上に設けられてもよい。なお、光電変換部2が、半導体基板などからなり一定の強度を有する場合、透光性基板1は省略することが可能である。また、光電変換部2が樹脂フィルムなど柔軟性を有する材料の上に形成可能な場合、透光性基板1は省略することができる。
【0087】
また、透光性基板1は、光電変換部2を構成するための土台となる部材である。また、太陽光を光電変換部2の受光面で受光するためには、透明であり光透過率が高いことが好ましいが、光電変換部2へ効率的な光の入射が可能な構造であれば、光透過率に制限はない。
光透過率が高い基板材料として、例えば、ソーダガラス、石英ガラス、パイレックス(登録商標)、合成石英板等の透明なリジッド材、あるいは透明樹脂板やフィルム材等が好適に用いられる。化学的および物理的安定性を備える点より、ガラス基板を用いることが好ましい。
透光性基板1の光電変換部2側の表面には、入射した光が光電変換部2の表面で有効に乱反射されるように、微細な凹凸構造に形成することができる。この微細な凹凸構造は、例えば反応性イオンエッチング(RIE)処理もしくはブラスト処理等の公知の方法により形成することが可能である。
【0088】
8.第1導電部
第1導電部9は、第1電解用電極8または第2電解用電極7と光電変換部2の受光面とを電気的に接続させることができる。また、第1導電部9は、1つの部材からなってもよく、第1電極4と第2導電部10からなってもよい。
第1導電部9が1つの部材からなる場合としては、例えば、光電変換部2の受光面と第1電解用電極8または第2電解用電極7を電気的に接続させる金属配線などである。また、例えば、Agからなる金属配線である。また、この金属配線は、光電変換部2に入射する光を減少させいないように、フィンガー電極のような形状を有してもよい。第1導電部9は、透光性基板1の光電変換部2側に設けられてもよく、光電変換部2の受光面に設けられてもよい。また、第1導電部9を例えば図7のように、第1電極4とし、第2電解用電極7を第1電極4と接触するように設けてもよい。
【0089】
9.第1電極
第1電極4は、透光性基板1の上に設けることができ、光電変換部2の受光面と接触するように設けることができる。また、第1電極4は透光性を有してもよい。また、第1電極4は、透光性基板1を省略可能の場合、光電変換部2の受光面に直接設けられてもよい。第1電極4を設けることにより、光電変換部2の受光面と第1電解用電極8または第2電解用電極7との間に流れる電流を大きくすることができる。第1電極4は、図4のように光電変換部2の受光面全面上に設けられてもよく、図8のように光電変換部2の受光面の一部の上のみに設けられてもよい。
第1電極4は、例えば、ITO、SnO2などの透明導電膜からなってもよく、Ag、Auなどの金属のフィンガー電極からなってもよい。
【0090】
以下に第1電極4を透明導電膜とした場合について説明する。
第1電極4には、一般に透明電極として使用されているものを用いることが可能である。具体的にはIn−Zn−O(IZO)、In−Sn−O(ITO)、ZnO−Al、Zn−Sn−O、SnO2等を挙げることができる。なお本透明導電膜は、太陽光の光線透過率が85%以上、中でも90%以上、特に92%以上であることが好ましい。このことにより光電変換部2が光を効率的に吸収することができるためである。
透明導電膜の作成方法としては公知の方法を用いることができ、スパッタリング、真空蒸着、ゾルゲル法、クラスタービーム蒸着法、PLD(Pulse Laser Deposition)法などが挙げられる。
【0091】
10.第2電極
第2電極5は、光電変換部2の裏面上に設けることができる。第2電極5を設けることにより、光電変換部2の裏面の電位とこの裏面と電気的に接続する第1または第2電解用電極の電位をほぼ同じにすることができ、オーミックロスを低減することができる。また、光電変換部2の裏面とこの裏面と電気的に接続する第1または第2電解用電極との間に流れる電流を大きくすることができる。このことにより、光電変換部2で生じた起電力により第1気体および第2気体をより効率的に発生させることができる。また、第2電極5は、電解液に対する耐食性および電解液に対する遮液性を有することが好ましい。このことにより、電解液による光電変換部2の腐食を防止することができる。
第2電極5は、導電性を有すれば特に限定されないが、例えば、金属薄膜であり、また、例えば、Al、Ag、Auなどの薄膜である。これらは、例えば、スパッタリングなどにより形成することができる。また、例えば、In−Zn−O(IZO)、In−Sn−O(ITO)、ZnO−Al、Zn−Sn−O、SnO2等の透明導電膜である。
【0092】
11.絶縁部
絶縁部11は、本実施形態の気体製造装置23にリーク電流が生じることを防止するために設けることができる。例えば、絶縁部11は、光電変換部2の裏面と第2電解用電極7との間に設けることができる。また、絶縁部11は、第1電解用電極8と第2電解用電極7との間に設けることもできる。さらに、絶縁部11は、第1導電部9と光電変換部2との間、第2導電部10と光電変換部2との間、および第2導電部10と第2電極5との間に設けることができる。
絶縁部11を設けることにより、光電変換部2が受光することにより生じた起電力を第1電解用電極8および第2電解用電極7に出力をすることができ、リーク電流をより小さくすることができる。
【0093】
また、絶縁部11は、図7、8、11のように光電変換部2の側面を覆うように形成することができる。このことにより、光電変換部2の側面を覆った絶縁部11の上に第2電解用電極7または第2導電部10を形成することができ、リーク電流が発生することを防止することができる。
また、光電変換部2が図9、10のように、光電変換部2の裏面の異なる領域間で起電力を生じさせる場合、絶縁部11は、第1電解用電極8および第2電解用電極7と光電変換部2の裏面との間に設けることができ、第1電解用電極8と光電変換部2の裏面の一部とを電気的に接続させるための開口および第2電解用電極7と光電変換部2の裏面の一部とを電気的に接続させるための開口を有することができる。
また、絶縁部11は、電解液に対する耐食性および電解液に対する遮液性を有することが好ましい。このことにより、電解液による光電変換部2の腐食を防止することができる。
【0094】
絶縁部11としては、有機材料、無機材料を問わず用いることが可能であり、例えば、ポリアミド、ポリイミド、ポリアリーレン、芳香族ビニル化合物、フッ素系重合体、アクリル系重合体、ビニルアミド系重合体等の有機ポリマー、無機系材料としては、Al23等の金属酸化物、多孔質性シリカ膜等のSiO2や、フッ素添加シリコン酸化膜(FSG)、SiOC、HSQ(Hydrogen Silsesquioxane)膜、SiNx、シラノール(Si(OH)4)をアルコール等の溶媒に溶かし塗布・加熱することにより製膜する方法を用いることが可能である。
【0095】
絶縁部11を形成する方法としては、絶縁性材料を含有するペーストをスクリーン印刷法、インクジェット法、スピンコーティング法等で塗布し乾燥もしくは焼成する方法や、原料ガスを用いたCVD法等により製膜する方法、PVD法、蒸着法、スパッタ法、ゾルゲル法を利用した方法等が挙げられる。
なお、絶縁部11を光電変換部2と第1電解用電極8または第2電解用電極7との間に設けた場合、絶縁部11と第1電解用電極8または第2電解用電極7との間に導電層を設けることができる。このことにより、内部抵抗をより小さくすることができる。この導電層は例えばスパッタリングやCVD法により形成することができる。
【0096】
12.第2導電部
第2導電部10は、第1電極4と第1電解用電極8または第2電解用電極7とにそれぞれ接触するように設けることができる。第2導電部10を設けることにより、容易に光電変換部2の受光面に接触した第1電極4と第1電解用電極8または第2電解用電極7とを電気的に接続することができる。
【0097】
第2導電部10は、光電変換部2を貫通するコンタクトホールに設けられてもよい。このことにより、第2導電部10を設けることによる光電変換部2の受光面の面積の減少をより小さくすることができる。また、このことにより、光電変換部2の受光面と第1電解用電極8または第2電解用電極7との間の電流経路を短くすることができ、より効率的に第1気体または第2気体を発生させることができる。
また、第2導電部10が設けられたコンタクトホールは、1つまたは複数でもよく、円形の断面を有してもよい。また、光電変換部2の受光面と平行なコンタクトホールの断面積(コンタクトホールが複数の場合、その断面積の総計)は、光電変換部2の受光面の面積を100%としたとき、0.1%以上10%以下とすることができ、好ましくは、0.5%以上8%以下、さらに好ましくは、1%以上6%以下とすることができる。このような構成によれば、第2導電部を設けたことによる光電変換部の受光面の面積の減少を少なくすることができる。
また、第2導電部10は、光電変換部2が形成されていない領域に設けられてもよい。
さらに、第2導電部10は、光電変換部2の側面を覆うように設けられてもよい。
【0098】
第2導電部10の材料は、導電性を有しているものであれば特に制限されない。導電性粒子を含有するペースト、例えばカーボンペースト、Agペースト等をスクリーン印刷法、インクジェット法等で塗布し乾燥もしくは焼成する方法や、原料ガスを用いたCVD法等により製膜する方法、PVD法、蒸着法、スパッタ法、ゾルゲル法、電気化学的な酸化還元反応を利用した方法等が挙げられる。
【0099】
13.天板、外箱
天板14は、第1電解用電極8および第2電解用電極7の上に透光性基板1と対向するように設けることができる。また、天板14は、第1電解用電極8および第2電解用電極7と天板14との間に空間が設けられるように設けることができる。また、天板14は、外箱16の一部であってもよい。
【0100】
また、天板14は、電解液室15を構成し、生成した第2気体などを閉じ込めるために構成される材料であり、機密性が高い物質が求められる。透明なものであっても不透明なものであっても特に限定されるものではないが、天板としては特に限定されず、例えば石英ガラス、パイレックス(登録商標)、合成石英板等の透明なリジッド材、あるいは透明樹脂板、透明樹脂フィルムなどを挙げることができる。中でも、ガスの透過性がなく、化学的物理的に安定な物質である点でガラス材を用いることが好ましい。
【0101】
外箱16は、光電変換部2、第1気体発生部8、第2気体発生部7などを収容することができ、電解液室15を形成することができるものであれば特に限定されない。また、外箱16は天板14を有することができる。
外箱16は耐熱性、および耐食性を備えていることが望ましい。外箱16は例えばステンレス鋼等の鋼材または、ジルコニア、アルミナ等のセラミック、フェノール樹脂、メラミン樹脂(MF)、ガラス繊維強化ポリアミド樹脂等の合成樹脂を用いることが好ましい。
【0102】
14.シール材
シール材は、透光性基板1と天板14または外箱16を接着し、気体製造装置23内の電解液および気体製造装置23内で生成した第1気体および第2気体を密閉するための材料である。シール材は、例えば、紫外線硬化性接着剤、熱硬化性接着剤等が好適に使用されるが、その種類は限定されるものではない。紫外線硬化性の接着剤としては、200〜400nmの波長を持つ光を照射することにより重合が起こり光照射後数秒で硬化反応が起こる樹脂であり、ラジカル重合型とカチオン重合型に分けられ、ラジカル重合型樹脂としてはアクリルレート、不飽和ポリエステル、カチオン重合型としては、エポキシ、オキセタン、ビニルエーテル等が挙げられる。また熱硬化性の高分子接着剤としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、熱硬化性ポリイミド等の有機樹脂が挙げられる。熱硬化性の高分子接着剤は、熱圧着時に圧力を掛けた状態で加熱重合し、その後、加圧したまま、室温まで冷却することにより、各部材を良好に接合させるため、締め付け部材等を要しない。また、有機樹脂に加えて、ガラス基板に対して密着性の高いハイブリッド材料を用いることが可能である。ハイブリッド材料を用いることによって、弾性率や硬度等の力学的特性が向上し、耐熱性や耐薬品性が飛躍的に向上する。ハイブリッド材料は、無機コロイド粒子と有機バインダ樹脂とから構成される。例えば、シリカなどの無機コロイド粒子と、エポキシ樹脂、ポリウレタンアクリレート樹脂やポリエステルアクリレート樹脂などの有機バインダ樹脂とから構成されるものが挙げられる。
【0103】
ここではシール材と記しているが、透光性基板1と天板14または外箱16を接着させる機能を有するものであれば限定されず、樹脂製あるいは金属製のガスケットを用い外部からネジ等の部材を用いて物理的に圧力を加え機密性を高める方法等を適宜用いることも可能である。
【0104】
15.電解液室
電解液室15は、イオン交換部13および第2電解用電極7に接するように設けることができる。例えば、図1、12のように、イオン交換部13と第2電解用電極7との間に設けられてもよく、図4、6〜10のようにイオン交換部13および第2電解用電極7と天板14との間に設けられてもよく、図11のように第2電解用電極7と天板14との間に設けられてもよい。
生成した第2気体の気泡が効率よく第2電解用電極7から離れるように、電解液室15の内部で電解液を循環させるような例えばポンプやファン、熱による対流発生装置などの簡易装置を備え付けることも可能である。
【0105】
16.給水口、第1気体排出口、第2気体排出口
給水口18は、気体製造装置23に含まれる外箱16の一部に開口を作ることにより設けることができる。給水口18は、電解液を補充するために配置され、その配置箇所および形状は、電解液が効率よく気体製造装置へ供給されさえすれば、特に限定されるものではないが、流動性および供給の容易性の観点から、気体製造装置下部に設置することが好ましい。
【0106】
また、第2気体排出口19は、給水口18を下側にして気体製造装置23を設置したとき、気体製造装置23の上側の部分の外箱16に開口を作ることにより設けることができる。第1気体はイオン交換部13により第2気体と分離することができ気泡とならないため、第1気体排出口20は、外箱16に第1電解用電極8に導通する開口を作ることにより設けることができる。第1気体は、気泡とはならないため、第1気体排出口20は、気体製造装置23の下側に設けてもよく、側面に設けてもよく、上側に設けてもよい。
【0107】
このように給水口18、第1気体排出口20、第2気体排出口19を設けることにより、気体製造装置23を光電変換部2の受光面が上向きの状態で水平面に対し傾斜し、給水口18が下側になり第2気体排出口19が上側になるように設置することができる。このように設置することにより、給水口18から電解液を気体製造装置23内に導入し、電解液室15を電解液で満たすことができる。この状態で、気体製造装置23に光を入射させることにより、第1電解用電極8および第2電解用電極7でそれぞれ、連続して第1気体および第2気体を発生させることができる。この発生した第1気体および第2気体は、イオン交換部13により分離されており、第1気体は第1気体排出口20から回収することができ、第2気体は、気泡として電解液中を上昇し、第2気体排出口19から回収することができる。
【0108】
17.電解液
電解液は、第1気体および第2気体の原料となる液体である。第1気体および第2気体が水素ガスおよび酸素ガスの場合、電解液は、電解質を含む水溶液であり、例えば、0.1MのH2SO4を含む電解液、0.1Mリン酸カリウム緩衝液などである。
【0109】
気体製造装置の作製実験および水分解実験
図6のような断面を有する気体製造装置を次のように作製した。
光電変換部2にはn型ドープしたGaAsおよびGaInP2と、p型ドープしたGaAsおよびGaInP2と積層させた化合物半導電体太陽電池を使用した。透光性基板1に光透過性および耐熱性、耐腐食性に優れる石英ガラス基板を使用した。作製方法としては、二酸化スズ(SnO2)からなる第1電極4が被膜されたガラス基板の表面にMOCVD法(有機金属気相堆積法)により、p型GaInP2を膜厚0.1μm、更にその上にp型GaAsを膜厚3.0μm、n型GaAsを膜厚0.1μm、n型GaInP2を0.05μmで順に堆積させた。その後、n型GaInP2層の表面に基板温度250℃でスパッタリング法により0.1μmの膜厚でITOを積層させた。以上により透光性基板1上にGaAsのpn接合の両側をGaInP2で挟んだヘテロ構造の半導電体太陽電池が作製できた。
【0110】
次に、第1電解用電極8である水素発生部は、触媒に白金を使用し、第2電解用電極7である酸素発生部は、触媒にはRuO2(二酸化ルテニウム)粒子を使用し、それぞれゾル―ゲル法により多孔質カーボンに担持させた。
次に、第2導電部10であるコンタクトホールと酸素発生部を光電変換部2から絶縁するための絶縁部11を形成するために、スピンコート法にて原料の塗布、焼成を行うことによりポリイミド膜を作製した。続けて、Agペーストをスクリーン印刷法にて基板上に塗布することにより第2導電部10を形成し、その上に二酸化ルテニウムを担持させた多孔質カーボンシートを配置し、加熱処理を行った。このことにより第2導電部10上に酸素発生部を形成した。
【0111】
次に、イオン交換膜からなるイオン交換部13にはナフィオンを使用し、平面状のイオン交換膜の表面に白金を担持した多孔質カーボンシートを積層し、水素発生部を形成した。続いて、イオン交換膜の水素発生部積層面の裏面に、水素発生部の端部の位置から、イオン交換膜の端部までの間隔と等しい幅のPTFE板(支持部47)を熱処理により接合した。次に、前記端部と反対側の端部を外箱16側壁面にシール材(エポキシ系樹脂)により接合した後、第4導電部49となるAg板の両端部をそれぞれ水素発生部と第2電極5にAgペーストで接合して第4導電部49とし、イオン交換膜のPTFE板を接着した部分を垂直に屈曲して、PTFE板およびイオン交換膜の端部を第2電極5にシール材により接合した。以上により気体流路17を形成した。
【0112】
外箱16はステンレス板を所望のサイズにプレス加工して成型した後、第1気体排出口20、第2気体排出口19および給水口18をそれぞれ設けた。前記外箱16に光電変換部2などを形成した透光性基板1をシール材(エポキシ系樹脂)で接合し、気体製造装置を作成した。
【0113】
次に、作製した気体製造装置を太陽光が透光性基板1に対して垂直に照射されるように装置を水平面に対して斜めに設置した。
給水口18より0.1MのH2SO4電解液を給水して電解液室15を満たした後、太陽光を照射した。
また、太陽光の照射開始から2時間後までに第1気体排出口20および第2気体排出口19から回収された気体量を蛍光センサー分析にて定量したところ、それぞれから水素、酸素が回収されていることが確認できた。また、それらの気体量は、水素0.58mol、酸素0.27molであった。
【符号の説明】
【0114】
1:透光性基板 2:光電変換部 4:第1電極 5:第2電極 7:第2電解用電極 8:第1電解用電極 9:第1導電部 10:第2導電部 11:絶縁部 13:イオン交換部 14:天板 15:電解液室 16:外箱 17:気体流路 18:給水口 19:第2気体排出口 20:第1気体排出口 23:気体製造装置 25:電解液 28:光電変換層 30:透光性電極 31:裏面電極 33:第3導電部 35:半導体部 36:p型半導体部 37:n型半導体部 40:アイソレーション 42:触媒 43:塗布膜 45:孔 47:支持部 49:第4導電部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有孔の第1電解用電極と、第2電解用電極と、第1電解用電極に接触し、かつ、電解液に接触可能なイオン交換部と、第1気体排出口とを備え、
第1電解用電極と第2電解用電極との間に電圧を印加し、かつ、前記イオン交換部が電解液に接触したとき、
前記イオン交換部は、電解液に含まれるイオンがイオン伝導するように構成され、
第1電解用電極は、前記イオン交換部をイオン伝導したイオンから第1気体を発生するように構成され、かつ、この第1気体が第1電解用電極内の孔を導通し第1気体排出口から排出するように構成されることを特徴とする気体製造装置。
【請求項2】
第1電解用電極は、多孔性を有する請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記イオン交換部は、電解液に対する遮液性を有し、かつ、第1電解用電極を覆うように設けられた請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記イオン交換部は、電解液中のイオンとイオン結合するイオン交換基を有する請求項1〜3のいずれか1つに記載の装置。
【請求項5】
第1電解用電極は、触媒が担持された導電性多孔質体を含む請求項1〜4のいずれか1つに記載の装置。
【請求項6】
第1電解用電極は、その表面にイオン交換樹脂からなる塗布膜を有する請求項1〜5のいずれか1つに記載の装置。
【請求項7】
第1電解用電極は、その表面に前記イオン交換部をイオン伝導したイオンとイオン結合するイオン交換基を有する請求項1〜6のいずれか1つに記載の装置。
【請求項8】
光電変換部をさらに備え、
前記光電変換部は、受光することにより生じる起電力を第1電解用電極と第2電解用電極との間に出力するように構成され、
第1電解用電極および第2電解用電極は、前記起電力を利用して、電解液からそれぞれ第1気体および第2気体を発生させるように構成される請求項1〜7のいずれか1つに記載の装置。
【請求項9】
第1電解用電極と前記光電変換部との間に気体流路をさらに備え、
前記気体流路は、第1電解用電極内の孔を導通した第1気体を第1気体排出口へ導通するように構成される請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記光電変換部は、受光面およびその裏面を有し、
第1電解用電極および第2電解用電極は、前記光電変換部の裏面側に設けられた請求項8または9に記載の装置。
【請求項11】
前記光電変換部は、受光することにより前記光電変換部の受光面とその裏面との間に起電力が生じ、
第1電解用電極および第2電解用電極のうち、一方は前記裏面と電気的に接続し、他方は第1導電部を介して前記受光面と電気的に接続する請求項10に記載の装置。
【請求項12】
第1電解用電極および第2電解用電極のうち少なくとも一方は、前記光電変換部の裏面上に絶縁部を介して設けられた請求項11に記載の装置。
【請求項13】
第1導電部は、前記光電変換部の受光面と接触する第1電極と、第1電極と第1電解用電極または第2電解用電極とを電気的に接続する第2導電部とを含む請求項12に記載の装置。
【請求項14】
第2導電部は、前記光電変換部を貫通するコンタクトホールに設けられた請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記絶縁部は、前記光電変換部の側面を覆うように設けられ、
第2導電部は、前記絶縁部の前記光電変換部の側面を覆う部分の上に設けられた請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記光電変換部は、受光することにより前記裏面の第1および第2区域間に電位差が生じ、
第1区域は、第1電解用電極と電気的に接続し、
第2区域は、第2電解用電極と電気的に接続する請求項10に記載の装置。
【請求項17】
前記光電変換部は、n型半導体部およびp型半導体部を有する少なくとも1つの半導体材料からなり、
第1および第2区域のうち、一方は前記n型半導体部の一部であり、他方は前記p型半導体部の一部である請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記光電変換部の裏面と第1電解用電極との間の一部および前記裏面と第2電解用電極との間の一部に設けられた絶縁部をさらに備え、
第1電解用電極および第2電解用電極は、それぞれ前記絶縁部が設けられていない第1および第2区域を介して前記n型半導体部または前記p型半導体部と電気的に接続する請求項17に記載の装置。
【請求項19】
透光性基板をさらに備え、
前記光電変換部は、前記受光面が前記透光性基板側となるように前記透光性基板上に設けられた請求項8〜18のいずれか1つに記載の装置。
【請求項20】
前記光電変換部は、p型半導体層およびn型半導体層を含む光電変換層を有する請求項8〜19のいずれか1つに記載の装置
【請求項21】
前記光電変換部は、直列接続した複数の光電変換層を含み、
前記複数の光電変換層は、受光することにより生じる起電力を第1電解用電極および第2電解用電極に供給する請求項20に記載の装置。
【請求項22】
各光電変換層は、第3導電部により直列接続された請求項21に記載の装置。
【請求項23】
第3導電部は、前記光電変換層の受光面側に設けられた透光性電極と、前記光電変換層の裏面側に設けられた裏面電極とを含む請求項22に記載の装置。
【請求項24】
第1電解用電極は、電解液からH2を発生させる水素発生部であり、
第2電解用電極は、電解液からO2を発生させる酸素発生部であり、
前記水素発生部および前記酸素発生部は、それぞれ水素発生触媒および酸素発生触媒を含む請求項1〜23のいずれか1つに記載の装置。
【請求項25】
前記水素発生部は、水素発生触媒としてPt、Ir、Ru、Pd、Rh、Au、Fe、NiおよびSeのうち少なくとも1つを含む請求項24に記載の装置。
【請求項26】
前記酸素発生部は、酸素発生触媒としてMn、Ca、Zn、CoおよびIrのうち少なくとも1つを含む請求項24または25に記載の装置。
【請求項27】
前記イオン交換部または第2電解用電極を浸漬させる電解液を貯留可能な電解液室をさらに備える請求項1〜26のいずれか1つに記載の装置。
【請求項28】
背面基板と、受光面およびその裏面を有する光電変換部を備え、
前記電解液室は、前記光電変換部の裏面と前記背面基板との間に設けられた請求項27に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−107278(P2012−107278A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−255968(P2010−255968)
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】