説明

気化冷却装置

【課題】 冷却流体によってぬれた箇所とぬれない箇所の境界面が発生しないようにして、水垢の析出を防ぎ、熱交換効率の低下を防止することできる気化冷却装置を提供する。
【解決手段】 反応釜1のジャケット部2に冷却用循環通路3を接続する。冷却用循環通路3は、バルブ4を介してエゼクタ6と接続する。反応釜1の外表面に複数の区画スペース26,27,28,29を形成する。それぞれの区画スペース26,27,28,29に対向して冷却管3,5,22,24を配置する。
冷却管3,5から供給される冷却流体は、区画スペース26,27だけをぬれた状態とし、区画スペース28,29は全くぬれない状態として、水垢の析出を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換室内を吸引手段により低圧状態として、供給する冷却流体の蒸発潜熱によって被冷却物を気化冷却する気化冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
気化冷却装置は、冷却水供給管の先端に冷却水噴射ノズルを複数個取り付けて、この噴射ノズルから冷却水を熱交換室へ噴射することによって、冷却水が熱交換室から熱を奪って蒸発・気化することにより、被冷却物を気化冷却することができるものである。
【0003】
この気化冷却装置においては、被冷却物を徐冷する場合に、複数の冷却水噴射ノズルの数を少なくして徐冷を行うのであるが、このように噴射ノズルを少なくすると、熱交換室表面に冷却水によってぬれた箇所とぬれない箇所が混在して、それらの箇所の境界面に水垢等が析出して熱交換効率を低下させてしまう問題があった。
【特許文献1】実用新案登録第2517217号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
解決しようとする課題は、冷却水によってぬれた箇所とぬれない箇所の境界面が発生しないようにして、水垢の析出を防ぎ、熱交換効率の低下を防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、被冷却物を冷却する熱交換室と、当該熱交換室に冷却流体を供給する冷却流体供給管と、当該冷却流体供給管の先端部に冷却流体を噴射する複数の噴射ノズルを取り付けると共に、熱交換室を吸引手段と接続して、冷却流体の蒸発潜熱によって被冷却物を気化冷却するものにおいて、複数の噴射ノズルに対向した熱交換室表面に、衝立状の区画壁で区画された区画スペースを形成したものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の気化冷却装置は、複数の噴射ノズルに対向した熱交換室表面に、区画壁で区画された区画スペースを形成したことにより、この区画スペースに対向した噴射ノズルから冷却流体が噴射される区画スペースはその全体がぬれた状態となり、一方、噴射ノズルから冷却流体が噴射されない区画スペースはその全体がぬれない状態となることによって、ぬれた箇所とぬれない箇所の境界面が発生することがなく、水垢の析出を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、複数の噴射ノズルに対向して区画スペースを形成するものであるが、これらの組み合わせは、噴射ノズル1個に対して1個の区画スペースを対向させることも、あるいは、1個の区画スペースに対して複数個の噴射ノズルを対向させることもできる。
【実施例1】
【0008】
本実施例においては、熱交換室として気化冷却を行う反応釜1を用いた例を示す。反応釜1の内部に入れた図示しない被冷却物を、ジャケット部2に供給する冷却流体によって冷却するものである。
【0009】
反応釜1のほぼ全周にわたりジャケット部2を形成し、ジャケット部2の右側方から冷却用循環通路3に弁部材としてのバルブ4を取り付けてエゼクタ6と接続する。エゼクタ6のディフューザ部7をタンク8に接続する。タンク8の側方を管路9で循環ポンプ10と接続し、更に管路11でエゼクタ6のノズル部12と連通する。
【0010】
管路11を分岐して冷却用循環通路3を接続する。冷却用循環通路3も分岐して分岐管5をジャケット部2の反対側に接続する。分岐管5にもバルブ15を取り付ける。
【0011】
図1における反応釜1とジャケット部2のA−A線断面拡大図を図2に示す。この図2に示すように、本実施例においては、冷却用循環通路3を分岐して合計4本の冷却管3,5,22,24を取り付ける。冷却管22,24にもバルブ25,17を取り付ける。
【0012】
冷却管3,5,22,24のジャケット部2側端部には図示はしないがそれぞれ噴射ノズルを取り付けると共に、各噴射ノズルに対向する反応釜1外表面の位置に区画スペース26,27,28,29を設ける。区画スペース26,27,28,29は、反応釜1の外表面に取り付けた衝立状の区画壁31,32,33,34で形成する。それぞれの区画壁31,32,33,34は、反応釜1外表面でジャケット部2の上端部からほぼ下端部へ至る間に形成すると共に、その外周側端部はジャケット部2の内周壁に接触しないように取り付けて、冷却管3,5,22,24から供給される冷却流体が、隣の区画スペースにかからないようにすると共に、ジャケット部2内で気化した蒸気を吸引することの妨げとならないようにする。
【0013】
本実施例においては、4つの区画スペース26,27,28,29を設けた例を示したが、区画スペースの数は、反応釜1の大きさや形状により2つだけでも、あるいは、4つ以上でも設けることができる。
【0014】
図1におけるタンク8内の冷却水等の液体が循環ポンプ10で循環され、管路11からエゼクタ6のノズル部12を通ってタンク8内へと循環する。タンク8の左側上部には、冷却流体補給管13を接続する。冷却流体補給管13を分岐して冷却流体分岐管14を接続し、冷却用循環通路3と連通する。
【0015】
ジャケット部2の下端部に、気化蒸気及び冷却流体の排出管19を接続する。排出管19には、開閉弁20と、蒸気は排出することがなく液体だけを自動的に出口側へ排出することのできる蒸気トラップ21を並行に配置して、エゼクタ6のノズル部12の吸引部と接続する。
【0016】
循環ポンプ10の吐出側には、余剰流体排出管23を接続して、タンク8内の液位を所定範囲に維持することができるようにする。
【0017】
反応釜1内の被熱交換物を冷却する場合は、循環ポンプ10を駆動してタンク8内の冷却流体の一部を冷却用循環通路3からジャケット部2へ供給すると共に、エゼクタ6にも冷却流体を供給してエゼクタ6で吸引力を発生させることにより、ジャケット部2内を所定の圧力状態、例えば、大気圧以下の真空状態、とすることによって、冷却流体が反応釜1内の被冷却物の熱を奪って蒸発することにより、その蒸発潜熱によって気化冷却することができるものである。ジャケット部2で被冷却物の熱を奪って蒸発気化した気化蒸気及び冷却流体の残りは、開閉弁20並びに蒸気トラップ21からエゼクタ6に吸引されタンク8に至る。
【0018】
図2において、例えば、冷却管3と5からだけ冷却流体を供給する場合は、区画スペース26と27内の反応釜1の外表面だけの全体がぬれた状態となり、一方、区画スペース28と29の部分は全くぬれない状態となることによって、ぬれた箇所とぬれない箇所の境界面が発生することがなく、従って、水垢の析出を防止することができる。
【0019】
反応釜1内の被冷却物を急冷却しなければならない場合は、図1における冷却流体分岐管14からタンク8を介することなく直接に冷却用循環通路3へ、所定の低温度の冷却流体を供給することによって、被冷却物を急冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の気化冷却装置の実施例を示す構成図。
【図2】図1におけるA−A線断面拡大図。
【符号の説明】
【0021】
1 反応釜
2 ジャケット部
3 冷却用循環通路
4 バルブ
5 冷却管
6 エゼクタ
8 タンク
10 循環ポンプ
12 ノズル部
13 冷却流体補給管
14 冷却流体分岐管
20 開閉弁
21 蒸気トラップ
22 冷却管
23 余剰流体排出管
24 冷却管
26,27,28,29 区画スペース
30,31,32,33 区画壁


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被冷却物を冷却する熱交換室と、当該熱交換室に冷却流体を供給する冷却流体供給管と、当該冷却流体供給管の先端部に冷却流体を噴射する複数の噴射ノズルを取り付けると共に、熱交換室を吸引手段と接続して、冷却流体の蒸発潜熱によって被冷却物を気化冷却するものにおいて、複数の噴射ノズルに対向した熱交換室表面に、衝立状の区画壁で区画された区画スペースを形成したことを特徴とする気化冷却装置。


【図1】
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【図2】
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