説明

気化器のオートチョーク装置

【課題】気化器のオートチョーク装置について、コストの高騰やレイアウト上の制限を伴うことなく、エンジンの暖機状態に応じてチョーク機能を適切に発揮できるようにする。
【解決手段】チョークバルブ32と、吸気通路2から延設されて負圧導入路を形成する負圧導入管36a,36b,36cと、その末端に接続され吸気負圧の変動により作動してチョークバルブ32の開閉を行う負圧アクチュエータである完爆開弁機構33とを備えて、エンジン始動時に閉弁しているチョークバルブ32をエンジン始動後の吸気負圧の増大で完爆開弁機構33が作動して開弁するオートチョーク装置において、負圧導入管36cの完爆開弁機構33上流側に負圧導入路を開閉する温度感応性の開閉弁35aを配設して、所定レベル以上に暖機している場合にのみ開閉弁35aを開いて完爆開弁機構33が作動可能な状態にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気化器のオートチョーク装置に関し、殊に、エンジン始動後に負圧アクチュエータが作動してチョーク状態を解除する気化器のオートチョーク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
気化器を備えたエンジンの燃料供給システムにおいては、気化器を貫通した吸気通路上流部をエンジン始動時にチョークバルブで閉じることにより、燃料通路に負圧を印加して燃料を吸い上げ、エンジンに供給するチョーク機構を有しているのが一般的であり、このチョーク機構は手動で開閉操作するマニュアル式のものが広く普及している。
【0003】
このマニュアル式のチョーク機構では、エンジン始動後に人がチョークバルブを開いてチョーク状態を解除するところ、低温時は始動後にエンジンが暖まるまで待ってから解除するが、暖機完了後のエンジンではエンジン始動直後にチョーク状態を解除する必要があり、エンジンの暖機状態に応じてチョークバルブの開度を調整する手間を要することになる。
【0004】
一方、このような操作を行う必要のない機構も知られており、例えばエンジン始動後の吸気負圧を負圧アクチュエータに導入してチョークバルブを開く方式のオートチョーク装置も普及している。この装置の場合、エンジン暖機状態に関係なくエンジン始動により吸気負圧が所定レベルに達した時点で作動してチョーク状態を解除してしまうことから、暖機前にエンジンを停止させてしまう懸念がある。
【0005】
その対策として、負圧導入路にオリフィス(遅延バルブ)を配置して負圧アクチュエータの作動を遅延させることも試みられているが、エンジンが充分に暖機するまで作動を遅延させることは困難である。これに対し、例えば特開平6−81715号公報に記載されているように、前述の負圧アクチュエータにヒータ付渦巻きバイメタルからなる電熱開弁機構を追加して、始動時のチョークバルブ全閉状態から始動直後に負圧アクチュエータで一定角度バルブを開き、その後、ヒータ通電によるバイメタルの変形でバルブを全開角まで開く方式のオートチョーク装置も知られている。
【0006】
しかしながら、この装置は構成部品が多く構成が複雑であるために、高コストであることに加えレイアウトの自由度が低くなりやすく、且つ、バイメタル作動用のヒータに使用する電源が必要になることから、低廉且つ簡易な構成が求められる気化器にあっては条件的に不利となりやすく、採用機種が限定されてしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−81715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような問題を解決しようとするものであり、気化器のオートチョーク装置について、コストの高騰やレイアウト上の制限を伴うことなく、エンジンの暖機状態に応じてチョーク機能を適切に発揮できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明は、気化器を貫通した吸気通路内に配設されるチョークバルブと、吸気通路から延設されて負圧導入路を形成する負圧導入管と、この負圧導入管末端に接続され吸気負圧の変動により作動してチョークバルブの開閉を行う負圧アクチュエータとを備えて、エンジン始動時に閉弁しているチョークバルブをエンジン始動後の吸気負圧の増大により負圧アクチュエータが作動して開弁するオートチョーク装置において、負圧導入管の負圧アクチュエータ上流側には負圧導入路を開閉する温度感応性の開閉弁が配設されており、エンジンが所定レベル以上に暖機している場合にのみ開閉弁を開いて負圧アクチュエータを作動可能な状態にすることとした。
【0010】
このように、吸気通路から負圧アクチュエータに至る負圧導入路の途中に温度感応性の開閉弁を設けただけの簡易な構成により、エンジンの暖機状態に応じて負圧アクチュエータを作動可能な状態にして適切なチョーク機能を発揮できるものとなる。
【0011】
また、斯かる気化器のオートチョーク装置において、その開閉弁は、所定の温度になると変形するバイメタル製の部材により弁体の開閉動作を行うものであって、エンジン放熱部位に近接配置されていることを特徴としたものとすれば、最小限の追加部品による簡易な構成により、エンジンの暖機状態に応じて負圧導入路を確実に開閉することができる。
【0012】
さらに、上述した気化器のオートチョーク装置において、その負圧アクチュエータはダイヤフラムを内装した完爆開弁機構であり、そのチョークバルブが完爆開弁機構の作動停止によるダイヤフラムの復元により自動的に閉弁位置に戻ることを特徴としたものすれば、エンジン停止により確実にチョーク状態に戻すことができる。
【発明の効果】
【0013】
負圧導入管の途中に温度感応性の開閉弁を設けてエンジンの暖機により負圧アクチュエータが作動可能になるものとした本発明によると、コストの高騰やレイアウト上の制限を伴うことなく、エンジンの暖機状態に応じてチョーク機能を適切に発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明における実施の形態のオートチョーク装置を配設したエンジンの燃料供給システムの構成図である。
【図2】(A)は図1のオートチョーク装置のエンジン暖機前運転時の状態を示す構成図であり、(B)は図1のオートチョーク装置のエンジン暖機後運転時の状態を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を説明する。
【0016】
図1は、本実施の形態である気化器3のオートチョーク装置を配設したエンジン1の燃料供給システムを簡略化して示した構成図である。エンジン1の吸気通路2には、スロットルバルブ31,チョークバルブ32を備えた気化器3が配設されており、図示を省略した燃料タンクから燃料を導入して吸気通路2の吸気負圧により燃料を吸い出してエンジン1に供給するようになっている。
【0017】
チョークバルブ32の弁軸端部側にはレバー32aが付設されて、ロッド33b等のリンク部材を介し負圧アクチュエータである完爆開弁機構33に連結されており、これに吸気通路2の所定部分から延設された負圧導入管36a,36b,36cの末端側が接続されている。そして、この完爆開弁機構33が、通常は閉弁しているチョークバルブ32を、エンジンが完爆して吸気負圧が所定レベルに達している間は開弁させてチョーク状態を解除するようになっており、このこと自体は従来例にも共通した周知の技術である。
【0018】
しかしながら、上述したように、斯かる従来の構成のみではエンジン始動後に充分に暖機されていない状態であってもすぐにチョーク状態が解除されることから、エンジン停止を招く懸念が大きかった。そこで、本発明においては、その負圧導入管36a,36bの間に、これによる負圧導入路を開閉する温度感応性の開閉弁35aを備えた開閉弁機構35を介装してエンジン1のエンジンヘッド部分に配置したことにより、エンジン1が所定レベル以上に暖機している場合にのみ開閉弁35aを開いて完爆開弁機構33を作動可能な状態にするものとしており、この点が特徴部分となっている。したがって、本実施の形態のオートチョーク装置は、チョークバルブ32、アーム32a、ロッド33b、完爆開弁機構33、負圧導入管36a,36b,36cからなる周知のオートチョーク装置に、開閉弁機構35を追加してなるものである。
【0019】
その開閉弁機構35における温度感応性の開閉弁35aは、図のように基端側を固定されたバイメタル製の支持部材35bの先端側で弁体350が揺動可能に支持されており、所定の温度以上になることで支持部材35bが先端側を反るように変形して弁体350を弁シート351からリフトして開弁し、所定の温度未満になると支持部材35bが元に戻って閉弁するような設定となっている。
【0020】
即ち、この支持部材35bを構成するバイメタルを、チョークの必要ないエンジン暖機状態に至った場合の雰囲気温度にて変形するように設定し、この開閉弁機構35をエンジン暖機状態と温度的に連動しやすい位置である図示したエンジンヘッド又は排気管等のエンジン放熱部に近接して配置しておくことにより、エンジン暖機状態に応じて適切にチョークバルブを開閉可能なものとなる。
【0021】
このように、負圧アクチュエータに負圧を導入する負圧導入路の途中に、温度感応式の開閉弁を追加しただけの簡易な構成により、コストの高騰を伴うことなく、また、レイアウトの自由度を低下させることなく、エンジン暖機状態に応じてチョーク機能を適切に発揮させることができ、始動直後にチョーク状態を解除することによるエンジン停止の事態を回避可能なものとなる。尚、本実施の形態では負圧導入管36b,36cの間に遅延バルブ34を介装しており、完爆開弁機構33の作動を多少遅延させるようになっている。
【0022】
次に、図2を用いて本実施の形態によるオートチョーク装置の機能を詳細に説明する。図2(A)を参照して、このときエンジン1は始動しているが、その時点でエンジン1は充分に暖機されてはいない低温状態にある。そのため、エンジン1の暖機状態をダイレクトに反映するエンジンヘッド部分に付設した開閉弁機構35におけるバイメタル製の支持部材35bは変形しておらず、開閉弁35aは閉弁状態を維持している。
【0023】
したがって、エンジン1の運転により吸気通路2が所定レベル以上の負圧になっても、その負圧導入路は開閉弁35aにより遮断されており、完爆開弁機構33が作動せずチョークバルブ32は閉弁位置のままであり、チョーク状態を維持してエンジン停止を回避している。尚、この場合エンジン始動後に供給燃料の過濃を防止するため、図のようにチョークバルブ32の弁軸にセルフリリーフ機構32bを設けてチョークバルブ32が一定角度だけ開弁するようにしてもよい。
【0024】
一方、図2(B)はエンジン始動後である程度暖機が進んだ状態を示しており、開閉弁機構35におけるバイメタル製の支持部材35bは、設定温度に達したことにより弁体350をリフトする方向に変形しており、負圧導入路は開通している。そして、所定レベル以上に増大した吸気通路2の吸気負圧が導入されたことで完爆開弁機構33が作動し、チョークバルブ32を全開角まで開弁させてチョーク状態を解除しており、適切な燃料供給及び良好なエンジン運転状態を確保している。
【0025】
以上、述べたように、気化器のオートチョーク装置について、本発明により、コストの高騰やレイアウト上の過剰な制限を伴うことなく、エンジンの暖機状態に応じてチョーク機能を適切に発揮できるものとなった。
【符号の説明】
【0026】
1 エンジン、2 吸気通路、3 気化器、32 チョークバルブ、33 完爆開弁機構、33a ダイヤフラム、35 開閉弁機構、35a 開閉弁、36a,36b,36c 負圧導入管、35b 支持部材



【特許請求の範囲】
【請求項1】
気化器を貫通した吸気通路内に配設されるチョークバルブと、前記吸気通路から延設されて負圧導入路を形成する負圧導入管と、該負圧導入管末端に接続され吸気負圧の変動により作動してチョークバルブの開閉を行う負圧アクチュエータとを備えて、エンジン始動時に閉弁している前記チョークバルブをエンジン始動後の前記吸気負圧の増大により前記負圧アクチュエータが作動して開弁するオートチョーク装置において、前記負圧導入管の前記負圧アクチュエータ上流側に前記負圧導入路を開閉する温度感応性の開閉弁が配設されており、エンジンが所定レベル以上に暖機している場合にのみ前記開閉弁を開いて前記負圧アクチュエータが作動可能な状態になることを特徴とする気化器のオートチョーク装置。
【請求項2】
前記開閉弁は、所定の温度になると変形するバイメタル製の部材により弁体の開閉動作を行うものであってエンジン放熱部位に近接配置されていることを特徴とする請求項1に記載した気化器のオートチョーク装置。
【請求項3】
前記負圧アクチュエータはダイヤフラムを内装した完爆開弁機構であり、前記チョークバルブが前記完爆開弁機構の作動停止による前記ダイヤフラムの復元により自動的に閉弁位置に戻る、ことを特徴とする請求項1または2に記載した気化器のオートチョーク装置。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−169221(P2011−169221A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33404(P2010−33404)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(000153122)株式会社ニッキ (296)
【Fターム(参考)】