説明

気密コンパクト

【課題】一回の操作で容器本体の蓋体と中皿の中蓋を開放できる使い勝手のよい気密コンパクトを提供する。
【解決手段】容器本体1に枢軸を介して開閉可能に保持された蓋体4と、この蓋体4とは別体の枢軸S2を介して個別に開閉可能に保持され該中皿2を気密状態に維持する中蓋6と、容器本体1に配置されその押し込みにて容器本体との連係を解除して蓋体を開放するプッシュピースを備えた気密コンパクトにおいて、 前記中蓋6を開閉可能に保持する枢軸S2の対向位置に、該枢軸S2の軸芯に平行な軸芯を有し回動可能に軸支した中蓋連係解除用の回動子7を設ける。そして、該回動子7に、中蓋6の下端縁に当接する先端部を備えたアーム9と、容器本体の底壁に向けて垂下する操作片10配設し、プッシュピース5に、その押し込みに合わせてスライドさせ、操作片10を回動子7の軸芯の周りに揺動させて押し上げアーム9の先端部で中蓋6を押し上げて中皿との連係を解除する凸部11を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファンデーションやアイシャドー等の化粧料を収納する気密性の高いコンパクトに関するものであり、該コンパクトの使い勝手の改善を図ろうとするものである。
【背景技術】
【0002】
ファンデーションやアイシャドー等の化粧料は近年、揮発成分を含んだものが多用されている。そして、このような揮発成分を含んだ化粧料はその揮散が避けられないので気密性の高いコンパクトが使用されている。
【0003】
気密性を高めるための具体的な構造としては、従来、コンパクトの内側に中蓋を備えたレフィルタイプの容器(中皿)を別途に配置し、蓋体を閉じる時に、該蓋体によって中蓋を中皿の開口部に押しつける構造が採用されていた(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005-168666号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような従来のコンパクトは、その使用に際しては、容器の本体部分の蓋を開ける以外に中皿の蓋を開ける二回の開放操作が必要であり、使い勝手がよいとはいえないものであった。
【0005】
本発明の課題は、容器本体の蓋体を開放するのと同時に中皿の蓋を開放することができる使い勝手のよい新規な気密コンパクトを提案するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、化粧料を充填する中皿を、パフ等の塗布具を収納する収納空間とともに配設した容器本体と、この容器本体に枢軸を介して開閉可能に保持された蓋体と、この蓋体とは別体の枢軸を介して個別に開閉可能に保持され該中皿を気密状態に維持する中蓋と、容器本体に配置されその押し込みにて容器本体との連係を解除して蓋体を開放するプッシュピースを備えた気密コンパクトであって、
前記中蓋を開閉可能に保持する枢軸の対向位置に、該枢軸の軸芯に平行な軸芯をもち回動可能に軸支した中蓋連係解除用の回動子を設け、
該回動子に、中蓋の下端縁に当接する先端部を備えたアームと、容器本体の底壁に向けて垂下する操作片を配設してなり、
前記プッシュピースに、その押し込みに合わせてスライドさせ該操作片を回動子の軸芯の周りに揺動させる凸部を設け、
該凸部は、プッシュピースの押し込み度合いに応じて操作片の揺動角度を漸次に変動させる傾斜辺を有することを特徴とする気密コンパクトである。
【発明の効果】
【0007】
プッシュピースを押し込むと、凸部の傾斜辺が操作片に当接して揺動し該回動子が回動する。この回動に伴い押し上げアームが中皿の中蓋を押し上げるため容器本体の蓋体と同時に中皿の中蓋が開くことになり、一回の操作で内容物の取出しが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明を具体的に説明する。
図1〜4は本発明にしたがう気密コンパクトの実施の形態を示したものであり、図1は平面図(蓋体は表示せず)、図2は図1のA-A断面図、図3は図1のB-B断面図であり、図4は図1の要部を一部断面で示した図である。
【0009】
図における番号1はコンパクトの基本骨格をなす容器本体である。容器本体1は一対の短辺1a、1bと一対の長辺1c、1dからなる矩形状のものを例として示してあり、その内側にはフレーム1eによりパフ等の塗布具を収納する凹部(収納空間)Mが区画形成されている。上記長辺1c、1dのうち長辺1d側には、後述する蓋体(4)から垂下するフック(4a)と連係する爪部1g及び該爪部1gの下方で上面を傾斜面とする前方への突出部1hが立設されている。
【0010】
また、2は容器本体1の凹部Mに隣接して配置された中皿である(図2参照)。この中皿2は揮発成分を含む内容物(化粧料)が充填されており、レフィル容器として機能するように容器本体1に着脱自在に配置されている。
【0011】
3は中皿2の外壁下部に一体的に設けられた爪部(図2参照)であり、容器本体1の台座1fの爪部1f′に係合して中皿2を容器本体1に固定保持する。
【0012】
4は容器本体1の長辺1cに枢軸S1を介して開閉可能に保持された蓋体である(図2、図3参照)。この蓋体4の裏面にはフック4aが設けられている(図3参照)。
【0013】
また、5は長辺1dにおいて外側へ向けて弾性支持されたプッシュピースである(図1、図3参照)。このプッシュピース5の押圧面の背面には該プッシュピース5の押し込み操作により突出部1hに沿ってフック4aを押上げて爪部1gとの連係を解除して蓋体4の開放を可能とする押圧片5aが一体に設けられている(図3参照)。
【0014】
6は蓋体4とは別体の枢軸S2を介して中皿2に開閉可能に保持された中蓋である(図1、2参照)。この中蓋6は蓋体4の開放状態で何らの規制を受けることなしに該中蓋6を開放することができるように、枢軸S2が容器本体1の短辺1aに設けられた切欠部hに配置される(図1参照)。
【0015】
また、図2、図3における7は中蓋6の枢軸S2の対向位置に設けられた中蓋6と中皿2との連係を解除する中蓋連係解除用の回動子、8a、8bは回動子7を回動可能に軸支する一対の受け部材である。この受け部材8a、8bは容器本体1の底面から一体に立設され、その上端に凹部を有しその凹部に回動子7を嵌合、配置するものであって、該凹部に回動子7を配置することによりその軸芯(7′)(図3参照)が枢軸Sの軸芯と平行になる。
【0016】
9は回動子7に一体成形された押上げアームである(図2、4参照)。この押上げアーム9は中蓋6に向けて突出するように設けられており、中蓋6の下端縁6aに形成された凸部rの下面に当接する先端部を備える。10は同じく回動子7に一体成形され容器本体1の底壁1dに向けて垂下する操作片(図2参照)、11はプッシュピース5に一体的に設けられた凸部である(図3、4参照)。この凸部11はプッシュピース5の押し込みに合わせてスライドしその当接により操作片10を回動子7の軸芯7′の周りに揺動させるカムの如き機能を有するものであり、プッシュピース5の押し込み度合いに応じて操作片10の揺動角度を漸次に変動させる傾斜辺11aを有している。図5に回動子7とプッシュピース5の配置状況を示す。
【0017】
12は中蓋6の裏側に配置されるシール部材である(図2参照)。このシール部材12はゴムやエラストマー等の軟質部材からなっており、該中蓋6が中皿2に合わさった際に該中皿2を気密状態に保持する。
【0018】
13は中蓋6のフランジの上面に設けられた凸部である(図1〜3参照)。この凸部13は蓋体4を閉じた時に蓋体4の裏面(図示の例では裏面に配置された鏡)を介して中蓋6を中皿2に向けて押圧する押し代を確保する。
【0019】
蓋体4のフック4aが容器本体1の爪部1gに連係している図3に示すような状態では蓋体4は完全に閉じた状態にある。プッシュピース5を押圧するとそれにつながる押圧片5aは爪部1gの基部に設けられた突出部1hの傾斜面に沿って上方へと滑動し、これによりフック4aが押し上げられることとなりフック4aと爪部1gとの連係が解除される。
【0020】
このときプッシュピース5に設けられた凸部11はスライドしてその傾斜辺11aが操作片10に当接し回動子7の軸芯7′の周りに該操作片10が揺動(回動子7が回動する)する。これに伴い押し上げアーム9の先端部が上方へと移動し中蓋6が押し上げられて中皿2との連係が解除される。
【0021】
蓋体4、中蓋6は同時に開放する場合を例として示したが、蓋体4を開放したのち中蓋6を開放するようにしてもよく、その設定は、プッシュピース5の押圧片5bのストロークあるいは凸部11の傾斜辺11aにおける角度を適宜変更することにより行う。
【産業上の利用可能性】
【0022】
一回の操作で容器本体の蓋体と中皿の中蓋を開放することができる使い勝手のよい気密コンパクトが提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明にしたがう気密コンパクトの実施形態を示した平面図である。
【図2】図1に示した気密コンパクトのA-A断面を示した図である。
【図3】図1に示した気密コンパクトのB-B断面を示した図である。
【図4】図2の要部を拡大して示した図である。
【図5】回動子とプッシュピースの配置状況を示した図である。
【符号の説明】
【0024】
1 容器本体
1a 短辺
1b 短辺
1c 長辺
1d 長辺
1e フレーム
1f 台座
1f′爪部
1g 爪部
1h 突出部
2 中皿
3 爪部
4 蓋体
4a フック
5 プッシュピース
5a 押圧片
6 中蓋
6a 下端縁
7 回動子
8a 受け部材
8b 受け部材
9 アーム
10 操作片
11 凸部
11a 傾斜辺
12 シール部材
13 凸部
r 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧料を充填する中皿を、パフ等の塗布具を収納する収納空間とともに配設した容器本体と、この容器本体に枢軸を介して開閉可能に保持された蓋体と、この蓋体とは別体の枢軸を介して個別に開閉可能に保持され該中皿を気密状態に維持する中蓋と、容器本体に配置されその押し込みにて容器本体との連係を解除して蓋体を開放するプッシュピースを備えた気密コンパクトであって、
前記中蓋を開閉可能に保持する枢軸の対向位置に、該枢軸の軸芯に平行な軸芯を有し回動可能に軸支した中蓋連係解除用の回動子を設け、
該回動子に、中蓋の下端縁に当接する先端部を備えた押し上げアームと、容器本体の底壁に向けて垂下する操作片を配設してなり、
前記プッシュピースに、その押し込みに合わせてスライドさせ、該操作片を回動子の軸芯の周りに揺動させる凸部を設け、
該凸部は、プッシュピースの押し込み度合いに応じて操作片の揺動角度を漸次に変動させる傾斜辺を有することを特徴とする気密コンパクト。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−264303(P2008−264303A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−113101(P2007−113101)
【出願日】平成19年4月23日(2007.4.23)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】