説明

気密コンパクト

【課題】プッシュピースの押し込みが簡単で操作性に優れ、しかも、蓋体と中蓋とを確実に開けることができる使い勝手のよい新規な気密コンパクトを提供する。
【解決手段】本発明のコンパクトは、内容物を充填する中皿2と、この中皿2を配設する容器本体1と、この容器本体1に枢軸S1を介して開閉可能に保持され閉じ状態において当該容器本体1に係合する蓋体4と、枢軸を介して開閉可能に保持され中皿2を気密状態に維持する中蓋6と、押し込みにより蓋体4の係合を解除するプッシュピース5とを備える。プッシュピース5は、押し込み操作を行う押圧部5aと、この押圧部5aに繋がり容器本体1内にスライド可能に保持される延長部5cとを備え、中皿2は、この中皿2の側壁2fに連結される基部7aを有してプッシュピース5の押し込みに伴う当該延長部5cの潜り込みにより上側に弾性変形して中蓋6を押し上げる押上げ片7を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓋体を有する容器本体内に、内容物を充填する中皿を配設し、更に、この中皿を中蓋によって気密状態に維持する二重構造の気密コンパクトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
こうしたコンパクトは、主に、揮発成分を含んだ内容物を収納するのに用いられ、こうした内容物としては、例えば、ファンデーションやアイシャドー等の化粧料がある。
【0003】
また、気密性を高めるための従来の構造としては、内容物を充填する蓋体付きの中皿と、この蓋体付きの中皿を収納する蓋体付きの容器本体とを別途設け、容器本体の蓋体(外蓋)を閉じる時に、この外蓋によって中皿の蓋体(中蓋)を中皿の開口部に押し付けることにより、気密性を高める構造が採用されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特許第3778308号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の従来気密コンパクトは、使い勝手の改善を目的として、容器本体側に回転可能に組み込まれたプッシュピースに、外蓋を押し上げて容器本体との係合を解除する第1解除部と、中蓋を押し上げて中皿との係合を解除する第2解除部とを設け、外蓋と中蓋とを同時に開放する仕組みになっている。
【0005】
しかしながら、こうした構造のコンパクトは、プッシュピースを回転させることで当該プッシュピースが直接中蓋を押し上げる構成であるため、プッシュピースを操作するに当たり、プッシュピースの押圧部に対する押し込み位置を考慮しないと、プッシュピースに加える押し込み力に比べて中蓋を押し上げる力として得られる力が小さく、中蓋と中皿との係合を解除しにくい場合がある。
【0006】
これに対し、プッシュピースの押圧部を広く確保しプッシュピースの回転位置と使用者の押し位置との間の距離を長くすれば、比較的軽い押し込み力で中蓋を押し上げることができるが、コンパクトに対してプッシュピースの押圧部が占める割合を考慮すれば、プッシュピースの押圧部を広く確保しても、プッシュピースを回転させたときに得られる押上げ力はそれほど大きくならない。
【0007】
本発明の解決すべき課題は、蓋体と容器本体との係合を解除するプッシュピースを利用して、中皿に一体に設けた解除部を作動させ中蓋を押し上げて中皿との係合を解除する構成としていることにあり、
その目的とするところは、プッシュピースの押し込みが簡単で操作性に優れ、しかも、中皿に形成した解除部を確実に作動させて蓋体と中蓋とを確実に開けることができる使い勝手のよい新規な気密コンパクトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明である気密コンパクトは、内容物を充填する中皿と、この中皿を配設する容器本体と、この容器本体に枢軸を介して開閉可能に保持され閉じ状態において当該容器本体に係合する蓋体と、枢軸を介して開閉可能に保持され前記中皿を気密状態に維持する中蓋と、押し込みにより蓋体の係合を解除するプッシュピースとを備える気密コンパクトにおいて、前記プッシュピースは、押し込み操作を行う押圧部と、この押圧部に繋がり前記容器本体内にスライド可能に保持される延長部とを備え、前記中皿は、この中皿の側壁に連結される基部を有して前記プッシュピースの押し込みに伴う当該延長部の潜り込みにより上側に弾性変形して前記中蓋を押し上げる押上げ片を備えることを特徴とするものである。
【0009】
本発明によれば、押上げ片の弾性変形を可能とする構成としては、例えば、当該押上げ片を弾性材料で構成して材料の物性により弾性変形を実現し、又は、押上げ片と基部との間に薄肉部を形成して形状により弾性変形を実現する構成が挙げられる。また、蓋体の枢軸と中蓋の枢軸とは、別体として構成し、又は、同一の枢軸として構成することができる。
【0010】
本発明に係る押上げ片は、その先端部を前記基部を挟んで前記プッシュピースよりも遠い側に配置される構成とすることができる。また、本発明に係る押上げ片は、その先端部を前記基部よりもプッシュピースに近い側に配置される構成としてもよい。
【0011】
また、本発明において、前記押上げ片は、前記プッシュピースの潜り込みを補助する斜面を有してなることが好ましい。更に、前記プッシュピースは、このプッシュピースの延長部に、潜り込みを補助する斜面を有してなることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、プッシュピースを押し込むことにより、蓋体と容器本体との係合を解除する一方で、その延長部が中皿に繋がる押上げ片の下側に潜り込んで押圧することにより当該押上げ片を上側に弾性変形させる。これにより、中皿に繋がる押上げ片が当該中皿と係合する中蓋を押し上げるので、容器本体と蓋体との係合と併せて中皿と中蓋との係合も解除することができる。
【0013】
しかも、従来は、プッシュピースを回転させることで当該プッシュピースが直接中蓋を押し上げる構成であるため、プッシュピースを操作するに当たり、プッシュピースの押圧部に対する押し込み位置を考慮しなければ、プッシュピースに加える力に比べて中蓋を押し上げる力が不足して中皿と中蓋との係合が解除しにくい場合があるのに対し、本発明は、プッシュピースが容器本体をスライドして押上げ片の下側に潜り込み当該押上げ片で間接的に中蓋を押し上げる構成であるため、プッシュピースを操作するに当たり、プッシュピースに対する押し込み位置を考慮することなく、単にプッシュピースを押し込めば、中皿と中蓋との係合を解除できる。
【0014】
従って、本発明によれば、プッシュピースの押し込みが簡単で操作性に優れ、しかも、蓋体と中蓋とを確実に開けることができて使い勝手もよい。
【0015】
本発明において、前記押上げ片の先端部を、前記基部を挟んで前記プッシュピースよりも遠い側に配置すれば、押上げ片の基部下面と容器本体底部とによりプッシュピース延長部を案内することが可能となり、これにより該延長部の弾性変形等に伴う押上げ片へ付与すべき力の減衰を防止することができ、押上げ片の確実な作動を得ることができる。
【0016】
また、本発明において、前記押上げ片の先端部を、前記基部よりもプッシュピースに近い側に配置すれば、プッシュピース延長部を短く設定することが可能となり、これにより該延長部の弾性変形等を奏することなく押上げ片への力の付与を確実に伝達でき、押上げ片の確実な作動を得ることができる。
【0017】
加えて、本発明に係る押上げ片に、プッシュピースの潜り込みを補助する斜面を形成すれば、プッシュピースが潜り込み易くなり、操作性が一層向上する。
【0018】
また、本発明に係るプッシュピースの延長部に、潜り込みを補助する斜面を形成しても、プッシュピースが潜り込み易くなり、操作性が一層向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の好適な形態を詳細に説明する。
【0020】
図1,2はそれぞれ、本発明の第一の形態である化粧用コンパクトを示す平面図及び、図1のA−A断面図である。また図3(a),(b)はそれぞれ、図1のB−B断面図及び同図(a)に示す状態から中皿と中蓋との係合が解除された状態を示す要部断面図である。
【0021】
符号1は、本形態である化粧用コンパクトの基本骨格をなす容器本体である。容器本体1は、対向する一対の短辺1a,1bと、対向する一対の長辺1c,1dと、これら4辺を一体に繋ぐ底部1eからなる矩形のものであり、その内側には、薄板状のフレームfが配置されている。フレームfには台座faが形成されており、この台座faを介して、容器本体1には、破線で示すパフ等の塗布具Mを収納する凹部(収納空間)R1と、後述の中皿2を収納する凹部とが区画形成されている。
【0022】
符号2は、図2に示すように、容器本体1の凹部R1に隣接して嵌め込み状態に配設された中皿である。この中皿2には、揮発成分を含む化粧料(図示せず)が充填されており、中皿2そのものが、レフィル容器として機能するように、後述のように、容器本体1に対して着脱可能に配置されている。
【0023】
符号3は、中皿2の外壁下部に一体的に設けられた爪部である。一方の爪部3は、図2に示すように、フレームfの台座faに形成された爪部fnと係合し、他方の爪部3は、図2に示すように、フレームfと一体に形成され弾性変形可能な逆L字状断面の係合片1gと係合する。これにより、中皿2は、容器本体1に対して着脱可能に保持固定される。
【0024】
符号4は、容器本体1の長辺1cに枢軸S1(図3参照。)を介して開閉可能に保持される蓋体である。この蓋体4の枢軸S1と反対側の長辺1dには、容器本体1の爪部P1に着脱可能に係合するフック4aが設けられている。
【0025】
符号5は、容器本体1内にスライド可能に保持され、押し込みにより、容器本体1の爪部P1と蓋体4のフック4aとの係合を解除するプッシュピースである。
【0026】
プッシュピース5は、図3に示すように、使用者が実際に触れて押し込み操作を行う押圧部5aを有し、この押圧部5aの背面には、薄肉部を介して揺動可能に繋がる蓋体解除部5bが設けられている。
【0027】
これにより、図3(b)に示すように、プッシュピース5を押圧すると、それに繋がる解除部5bは爪部P1の基部に設けられた傾斜面に沿って上方へと滑動し、フック4aを押し上げることで、フック4aと爪部P1との係合を解除することができる。
【0028】
またプッシュピース5における押圧部5aの背面には、この押圧部5aと繋がり後述の押上げ片に向かって延在する延長部5cが設けられている。この延長部5cは、容器本体1の底部1eの内面1fにスライド可能に接触すると共に、その上方は後述の押上げ片7の基部7aにより案内されている。即ち、プッシュピース5は、延長部5cを介して容器本体1の内面1fと押上げ片7の間にスライド可能に保持されている。
【0029】
符号6は、蓋体5の枢軸S1とは異なる枢軸S2を介して中皿2に開閉可能に保持された中蓋である。この中蓋6は、図1に示すように、その周回部(以下、「フランジ」という。)6fを有し、更に、図2に示すように、フランジ6fは、中蓋6で中皿2を閉じた状態で、中皿2の側壁2fよりも外側に迫り出して下端面f1を形成する。この下端面f1には、更に、同図に示すように、当該下端面f1から爪部6aが垂下し、この爪部6aが、中蓋6を閉じた状態で中皿2の爪部2aに着脱可能に係合する。
【0030】
また、中蓋6は、蓋体4の開放状態で何らの規制を受けることなしに当該中蓋6を開放することができるように、図1に示す如く、枢軸S2が容器本体1の短辺1aに設けられた切欠部Cに配置される。なお、符号6eは、枢軸S2と対向するフランジ6fの相対端縁e6側に一体に設けられた操作板である。これにより、中蓋6は、プッシュピース5による押し込み操作とは独立して開くことができる。
【0031】
次に、符号7は、図1に示すように、中皿2の側壁2fに片持ち支持される押上げ片である。押上げ片7は、中皿2の側壁2fに連結される基部7aを有し、この基部7aに押上げ片7の先端部としての押上げ本体7bが一体に形成されている。但し、押上げ本体7bは、基部7aを挟んでプッシュピース5よりも遠い側に配置されている。
【0032】
押上げ片7の上端面f2は、図3に示すように、基部7aから押上げ本体7bにかけて平坦面で構成されている。この上端面f2は、中蓋6を閉じてプッシュピース5を押し込む前の状態(以下、「定常状態」という。)でフランジ6fの下端面f1に接触している。なお、上端面f2は、フランジ6f下端面に直接接触するのみに限らず、操作板6eから凸部を垂下して、同凸部に接触させるようにしてもよい。
【0033】
これに対し、押上げ片7の下端は、同図に示すように、押上げ本体7bが基部7aよりも下側に膨出した形状に構成されており、更に、押上げ本体7b側には、押上げ片7の先端に向かって下向きに傾斜する斜面f3が形成されている。これにより、本形態によれば、図3(a)に示す定常状態で既に、プッシュピース5の延長部5cの一部(先端部)5dが容器本体1の内面1fにスライド可能に保持されつつ、押上げ本体7bまで潜り込んだ状態にある。
【0034】
押上げ片7は、中皿2と一体に構成されており、中皿2と同一の合成樹脂等の変形及び復元が可能な弾性材料からなる。これにより、プッシュピース5を容器本体1内に押し込んで中皿2に繋がる押上げ片7をスライドさせると、押プッシュピース5の延長部5cの先端部5dが押上げ本体7bの斜面f3に沿って下側に潜り込み、基部7aを基点に押上げ片7を上側に押し上げる。これは結果として、中蓋6と接触する押上げ片7が当該中蓋6を押し上げることであるから、中皿2の爪部2aと中蓋6の爪部6aとの係合は、図3(b)に示すように、解除される。
【0035】
図2に示す符号Sは、中蓋6の裏側に配置されたシール部材である。このシール部材Sは、ゴムやエラストマー等の軟質部材からなり、中蓋6が中皿2に合わさった際に当該中皿2を気密状態に保持する。
【0036】
また符号Pは、中蓋6の上部(好適には、フック6aの上部)に設けられた凸部である。この凸部Pは、蓋体4を閉じた時に、中蓋6を中皿2に向けて押圧するための押し代を確保するためのものであり、蓋体4の裏面に鏡が取り付けられている場合には鏡を介して押圧される。
【0037】
次に、本形態であるコンパクトの作用効果を説明する。
【0038】
蓋体4は、図3に示すように、そのフック4aが容器本体1の爪部P1に係合しているときは完全に閉じられており、中皿2は気密状態に維持されている。
【0039】
ここで使用者がプッシュピース5を押上げ片7に向かって押し込むと、プッシュピース5の蓋体解除部5bが蓋体4のフック4aを押し上げて容器本体1の爪部P1との係合を解除する。
【0040】
また、プッシュピース5を押上げ片7に向かって押し込むことは同時に、プッシュピース5の延長部5cの先端部5dが中皿2に繋がる押上げ片7の押上げ本体7bと容器本体1の内面1fとの間に潜り込んで押上げ片7を、基部7aを基点に上側に押し上げる。すると、結果的に、図3(b)の矢印に示すように、中蓋6の下端面f1に接触している押上げ片7(本体7a)が中蓋6を押し上げる。これにより、プッシュピース5を押圧すると、容器本体1と蓋体4との係合を解除することに加え、中皿2の爪部2aと中蓋6の爪部6aとの係合も解除できる。
【0041】
従って、本形態の化粧用コンパクトによれば、プッシュピース5を容器本体1内に押し込むだけで、蓋体4と中蓋6とを一緒に開くことができる。
【0042】
しかも、従来は、プッシュピース5を回転させることで当該プッシュピース5が直接中蓋6を押し上げる構成であるため、プッシュピース5を操作するに当たり、プッシュピース5の押圧部5aに対する押し込み位置を考慮しなければ、プッシュピース5に加える力に比べて中蓋6を押し上げる力が不足して中皿2と中蓋6との係合が解除しにくい場合があるのに対し、本発明に従うコンパクトは、プッシュピース5が容器本体1をスライドして押上げ片7の下側に潜り込み当該押上げ片7で間接的に中蓋6を押し上げる構成であるため、プッシュピース5を操作するに当たり、プッシュピース5の押圧部5aに対する押し込み位置を考慮することなく、単にプッシュピース5を押し込めば、中皿2と中蓋6との係合を解除できる。
【0043】
従って、本形態の化粧用コンパクトによれば、プッシュピース5の押し込みが簡単で操作性に優れ、しかも、蓋体4と中蓋6とを確実に開けることができて使い勝手もよい。
【0044】
また、本形態の化粧用コンパクトは、押上げ本体7bを、基部7aを挟んでプッシュピース5よりも遠い側に配置したことから、押上げ片7の基部7a下面と容器本体1の底部1eの内面1fとによりプッシュピース5の延長部5cを案内することが可能となり、これにより該延長部5cの弾性変形等に伴う押上げ片7へ付与すべき力の減衰を防止することができ、押上げ片7の確実な作動を得ることができる。
【0045】
加えて、本形態の化粧用コンパクトは、押上げ本体7bに、プッシュピース5の潜り込みを補助する斜面f3を形成したことから、プッシュピース5が潜り込み易くなり、操作性が一層向上する。
【0046】
図4は、本発明に係る化粧用コンパクトに採用される他のレフィル容器を、その中蓋6が開いた状態で示す斜視図である。図5(a),(b)はそれぞれ、同レフィル容器を採用した本発明の第二の形態である化粧用コンパクトの要部を図1のB−B断面で示す要部断面図及び同図(a)に示す状態から中皿2と中蓋6との係合が解除された状態を示す要部断面図である。
【0047】
なお、図1〜3にて説明した第一の形態と同一部分は同一符号をもってその説明を省略する。
【0048】
本形態の押上げ片7は、中皿2の側壁2fに連結される基部7aを有し、この基部7aに押上げ本体7bが薄肉部7cを介して一体に形成されている。また、押上げ本体7bは、基部7bよりもプッシュピース5に近い側に配置されている。
【0049】
この押上げ片7の上端面f2も、図5(a)に示すように、基部7aから押上げ本体7bにかけて平坦面で構成されており、定常状態でフランジ6fの下端面f1に接触している。なお、上端面f2は、第一の形態と同じくフランジ6f下端面に直接接触するのみに限らず、操作板6eから凸部を垂下して、同凸部に接触させるようにしてもよい。
【0050】
これに対し、押上げ片7の下端も、同図に示すように、押上げ本体7bが基部7aよりも下側に膨出した形状に構成されており、更に、押上げ本体7b側には、押上げ片7の先端(プッシュピース5側)に向かって上向きに傾斜する斜面f4が形成されている。これにより、本形態によれば、図5(a)に示す定常状態で既に、プッシュピース5の延長部5cの先端部5dが容器本体1の内面1fにスライド可能に保持されつつ、押上げ本体7bまで潜り込んだ状態にある。
【0051】
これにより、プッシュピース5を容器本体1内に押し込んでスライドさせると、プッシュピース5の先端部5dが押上げ本体7bの斜面f4に沿って下側に潜り込み基部7aを基点に押上げ本体7bを上側に押し上げる。これも結果として、押上げ片7が中蓋6を押し上げることであるから、中皿2の爪部2aと中蓋6の爪部6aとの係合は、図5(b)に示すように、解除される。
【0052】
従って、本形態の化粧用コンパクトによっても、プッシュピース5の押し込みが簡単で操作性に優れ、しかも、蓋体4と中蓋6とを確実に開けることができて使い勝手もよい。
【0053】
また、本形態の化粧用コンパクトは、押上げ片7を、基部7aよりもプッシュピース5に近い側に配置したことから、プッシュピース5の延長部5cを短く設定することが可能となり、これにより該延長部5cの弾性変形等を奏することなく押上げ片7への力の付与を確実に伝達でき、押上げ片7の確実な作動を得ることができる。
【0054】
更に、本発明の化粧用コンパクトは、押上げ本体7bに形成した傾斜f4に加え、プッシュピース5の延長部5cの先端部5dに、潜り込みを補助する斜面f5を形成したことから、プッシュピース5が更に潜り込み易くなり、操作性がより一層向上する。
【0055】
ところで、従来のように、プッシュピース5で直接中蓋6を押し上げる構成では、中皿2や中蓋6の設計変更等により中皿2と中蓋6との係合方法が変更される場合、中蓋6に対する押上げ力の変更に併せてプッシュピース5やこれ保持する容器本体1も設計変更しなければならないという煩雑さがある。
【0056】
これに対し、本発明は、プッシュピース5が中蓋6を直接押し上げることで中皿2との係合を解除するのではなく、容器本体1に対して押し込まれたプッシュピース5の延長部5cが、中皿2に繋がる押上げ片7の下側に潜り込んで上側に弾性変形させることにより、この押上げ片7が中蓋6を押し上げることで解除されることから、中皿2や中蓋6を設計変更した場合にも、プッシュピース5やこれ保持する容器本体1を大きく設計変更する必要が無く、そのまま流用することができる。
【0057】
上述したところは、本発明の好適な形態をしたものであるが、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0058】
例えば、プッシュピース5の先端部5dと押上げ本体7bとの位置も、中皿2と中蓋6とのレイアウトに応じて適宜変更することができる。また、コンパクト全体の小型化を考慮すれば、プッシュピース5の延長部5cは、本形態のように、コンパクトが定常状態において、押上げ片7に既に潜り込んだ構成であることが好ましいが、定常状態にて潜り込ませることに限定する必要はない。
【0059】
更に、本形態では、中蓋6を中皿2に開閉可能に組み付けたが、中蓋6は、枢軸S2を容器本体1又はフレームfに設け、容器本体1又はフレームfに回転可能に組み付けてもよい。加えて、蓋体4の枢軸S1と中蓋6の枢軸S2とは、上述した各形態のように、別体として構成するだけでなく、同一の枢軸として構成してもよい。
【0060】
また、上述の第一及び第二の形態に採用されている各構成、例えば、押上げ片7が弾性材料からなることや押上げ片7の向き等はそれぞれ、コンパクトの用途等に応じて適宜組み合わせて使用することができる。
【0061】
また、第二の形態として例示した押上げ片7に形成した薄肉部7cを第一の形態に採用することも可能であり、逆に、第二の形態において薄肉部7cを削除した構成とすることもできる。
【0062】
更には、押上げ片7の斜面f3(f4)とプッシュピース5の延長部5cの先端部5dの端部(角部)又は同先端部に形成した斜面f5との組合せは、図示のものに限るものではなく、押上げ片7及びプッシュピース5の延長部5cの先端部5dそれぞれにおいて、斜面と角部とを適宜組み合わせて構成することができる。
【0063】
蓋体4、中蓋6は同時に開放する場合を例として示したが、蓋体4を開放したのち中蓋6を開放するようにしてもよく、その設定は、プッシュピース5の延長部5cのストロークあるいは斜面f3(f4)における角度を適宜変更することにより行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
一回の操作で容器本体の蓋体と中皿の中蓋を開放することができると共に中蓋のみを別個独立の操作で開くことができる使い勝手のよい気密コンパクトが提供できる。また、本発明は、化粧料コンパクト以外にも、軟膏や錠剤を内容物とする薬品容器等各種容器としても適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の第一の形態である化粧用コンパクトを示す平面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】(a),(b)はそれぞれ、図1のB−B断面図及び同図(a)に示す状態から中皿と中蓋との係合が解除された状態を示す要部断面図である。
【図4】本発明に係る化粧用コンパクトに採用される他のレフィル容器を、その中蓋が開いた状態で示す斜視図である。
【図5】(a),(b)はそれぞれ、図4のレフィル容器を採用した本発明の第二の形態である化粧用コンパクトの要部を図1のB−B断面で示す要部断面図及び同図(a)に示す状態から中皿と中蓋との係合が解除された状態を示す要部断面図である。
【符号の説明】
【0066】
1 容器本体
1a 容器本体短辺
1b 容器本体短辺
1c 容器本体長辺
1d 容器本体長辺
1e 容器本体底部
f フレーム
fa フレーム台座
fn フレーム爪部(中皿固定用)
2 中皿
2a 中皿爪部(中蓋固定用)
3 中皿爪部(中皿固定用)
4 蓋体(外蓋)
5 プッシュピース
5a 押圧部
5b 押上げ部
5c 延長部
5d 先端部
6 中蓋
6a 中皿爪部
7 押上げ片
7a 押上げ基部
7b 押上げ本体
7c 薄肉部
S シール部材
P 押し代確保用突部
f1 フランジ下端面
f2 押上げ片上端面
f3 押上げ片側傾面
f4 押上げ片側傾面
f5 プッシュピース側斜面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物を充填する中皿と、この中皿を配設する容器本体と、この容器本体に枢軸を介して開閉可能に保持され閉じ状態において当該容器本体に係合する蓋体と、枢軸を介して開閉可能に保持され前記中皿を気密状態に維持する中蓋と、押し込みにより蓋体の係合を解除するプッシュピースとを備える気密コンパクトにおいて、
前記プッシュピースは、押し込み操作を行う押圧部と、この押圧部に繋がり前記容器本体内にスライド可能に保持される延長部とを備え、
前記中皿は、この中皿の側壁に連結される基部を有して前記プッシュピースの押し込みに伴う当該延長部の潜り込みにより上側に弾性変形して前記中蓋を押し上げる押上げ片を備えることを特徴とする気密コンパクト。
【請求項2】
前記押上げ片は、その先端部を前記基部を挟んで前記プッシュピースよりも遠い側に配置されてなる請求項1に記載の、気密コンパクト。
【請求項3】
前記押上げ片は、その先端部を前記基部よりもプッシュピースに近い側に配置されてなる請求項1に記載の、気密コンパクト。
【請求項4】
前記押上げ片は、前記プッシュピースの潜り込みを補助する斜面を有してなる請求項1乃至3のいずれかに記載の、気密コンパクト。
【請求項5】
前記プッシュピースは、このプッシュピースの延長部に、潜り込みを補助する斜面を有してなる請求項1乃至4のいずれかに記載の、気密コンパクト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−272064(P2008−272064A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−116958(P2007−116958)
【出願日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】