説明

気泡含有エポキシ樹脂成形品の成形方法及び気泡含有エポキシ樹脂成形品

【課題】エポキシ樹脂に対して発泡剤、中空フィラーやマイクロバルーン等を添加することなく、簡単に気泡を含有させた比重の少ない気泡含有エポキシ樹脂成形品を提供する。
【解決手段】エポキシ樹脂と、桐油と無水マレイン酸を反応させて変性した変性桐油を、混合、攪拌して気泡を含有させた後、硬化させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂硬化剤を用いた気泡含有エポキシ樹脂成形品の成形方法及び気泡含有エポキシ樹脂成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エポキシ樹脂成形品の比重を少なくする方法として、エポキシ樹脂組成物に添加剤として発泡剤を添加して発泡させる方法が用いられている。このエポキシ樹脂組成物に発泡剤を添加して発泡させる方法は、発泡調整が難しい等の成形上の問題、また、エポキシ樹脂成形品の発泡セルが均一でなかったり成形品強度が低い等の問題があった。
【0003】
これらの問題を解決する目的で、中空フィラー、マイクロバルーン等を添加する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。これらの方法によれば、成形品の比重を小さくすることができ、その結果成形品の重量を軽くすることができる点では優れているが、コスト面、成形品の強度の面では未だ満足のいくものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−284559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、従来の問題点を解消して、エポキシ樹脂組成物に対して発泡剤、中空フィラーやマイクロバルーン等を添加することなく、簡単に気泡を含有させた比重の少ないエポキシ樹脂成形品を得ることができる気泡含有エポキシ樹脂成形品の成形方法及び気泡含有エポキシ樹脂成形品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下のことを特徴としている。
【0007】
第1に、エポキシ樹脂と、桐油と無水マレイン酸を反応させて変性した変性桐油を必須成分とするエポキシ樹脂硬化剤とを含有する樹脂組成物を、混合、攪拌して樹脂組成物中に気泡を含有させた後、硬化させる気泡含有エポキシ樹脂成形品の成形方法である。
【0008】
第2に、上記第1の気泡含有エポキシ樹脂成形品の成形方法において、気泡を含有させる方法が気泡の吹き込みである。
【0009】
第3に、上記第1または第2の気泡含有エポキシ樹脂成形品の成形方法により成形された気泡含有エポキシ樹脂成形品である。
【発明の効果】
【0010】
上記第1の発明の桐油と無水マレイン酸を反応させて変性した変性桐油を必須成分とするエポキシ樹脂硬化剤を、主剤であるエポキシ樹脂と混合、攪拌して気泡を含有させた後、硬化させることにより、簡単に気泡を含有させた比重の少ない気泡含有エポキシ樹脂成形品を得ることができる。
【0011】
第2の発明によれば、上記第1の発明の気泡含有エポキシ樹脂成形品の成形方法において、気泡の吹き込みにより気泡を含有させることができるので。気泡の含有量の調整を容易にすることができる。
【0012】
第3の発明によれば、上記第1または第2の発明の気泡含有エポキシ樹脂成形品の成形方法により成形された気泡含有エポキシ樹脂成形品であるので、主剤であるエポキシ樹脂に発泡剤、中空フィラーやマイクロバルーン等を添加することなく、簡単に気泡を含有させた比重の少ない気泡含有エポキシ樹脂成形品を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0014】
本発明のエポキシ樹脂硬化剤の必須成分である変性桐油は、桐油と無水マレイン酸とを混合して反応させることにより得ることができる。
【0015】
本発明の変成桐油に用いられる桐油は、通常一般に入手可能な桐油を用いることができ、例えば、トウダイグサ科の支那油やアブラギリの種子から得られるもの等を挙げることができる。
【0016】
また本発明に用いられる無水マレイン酸は、エポキシ樹脂硬化剤として一般に入手可能な無水マレイン酸を用いることができる。
【0017】
一般に桐油の主成分は3箇所の共役二重結合を持つため、量論的には桐油1分子に対して3分子の無水マレイン酸が反応すると考えられる。このことと、桐油の平均分子量が約900、無水マレイン酸の分子量が98であることから、桐油100質量部に対して無水マレイン酸33質量部を反応させればよいことになる。しかしながら桐油は天然由来であり、その他の類似化合物を含むため実際の共役二重結合の数に幅があることや、また、柔軟性や耐熱性を付与する目的で桐油と無水マレイン酸との配合比を適宜変更することも可能であることから、変成桐油の配合割合は、桐油100質量部に対して、無水マレイン酸を10〜100質量部の範囲で配合することができる。無水マレイン酸の配合量が10質量部未満であると、変性桐油中の酸無水物量が少ないため、十分にエポキシ樹脂との結合が出来ず、硬化不良を起こしやすくなり、配合量が100質量部を超えると桐油と反応せずに残った無水マレイン酸がエポキシ樹脂と優先的に反応してしまい、変性桐油とエポキシ樹脂との結合が阻害されやすくなる。
【0018】
本発明の変性桐油は、上記配合量で配合したものを加熱して反応させることにより得ることができ、加熱温度は15〜80℃である。
【0019】
上記変性桐油は、この変性桐油のみをエポキシ樹脂硬化剤として用いることができるが、変性桐油を他の酸無水物系硬化剤と合わせて用いることもできる。他の酸無水物系硬化剤としては、一般的にエポキシ樹脂の硬化剤として用いることができる酸無水物系硬化剤であれば特に制限なく用いることができ、例えば、芳香族酸無水物(無水フタル酸、無水トリメリット酸、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、グリセロールトリス(アンヒドロトリメリテート)、無水ピロメリット酸、3,3’4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物)、環状脂肪族酸無水物(無水マレイン酸、無水コハク酸、テトロヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、アルケニル無水コハク酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸無水物)、脂肪族酸無水物、ハロゲン化酸無水物等を用いることができ、またこれらを併用して用いることもできる。
【0020】
本発明で用いられるエポキシ樹脂としては、液状であることを可能にする、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するものであれば特に制限なく用いることができる。
【0021】
このようなエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン環含有エポキシ樹脂及びこれらの水素添加型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0022】
また、本発明では、その目的を損なわない範囲で、必要に応じて他の物質を配合することもできる。例えば、着色剤、充填材、硬化促進剤、分散安定剤、低弾性化剤、カップリング剤、シリコンオイル等を配合することができる。
【0023】
上記エポキシ樹脂硬化剤の配合量は、エポキシ樹脂との化学量論上の当量比(エポキシ樹脂硬化剤当量/エポキシ基当量)が0.5〜1.5となる量であり、より好ましくは当量比が0.8〜1.2となる量である。当量比が0.5未満であると、硬化特性が低下する場合があり、当量比が1.5を超えると、成形品の耐湿性が不十分になる場合がある。
【0024】
本発明の、気泡含有エポキシ樹脂成形品の成形方法は、前記エポキシ樹脂と変性桐油を必須成分とするエポキシ樹脂硬化剤とを含有する樹脂組成物を、空気または窒素ガス等の気中で混合、攪拌して樹脂組成物中に気泡を含有させた後、硬化させる。この混合、攪拌は、ディスパー、プラネタリーミキサー、ボールミル、3本ロール等を用いておこなうことができる。
【0025】
また、本発明の気泡含有エポキシ樹脂成形品の成形方法では、前記、混合、攪拌の際に気泡を強制的に供給することにより、効率よく気泡をエポキシ樹脂に含有させることができる。
【0026】
これら強制的に気泡を供給する方法としては、多孔質体を介して気体を供給したり、気体導入路を有するベンチュリー管を通過させることにより樹脂組成物に気泡を含有させることができ、これらの気泡の供給量を調整することにより、定量的に気泡含有エポキシ樹脂成形品の比重を調整することができる。
【0027】
本発明では、上記変性桐油を用いて、上記成形方法で成形することにより、比較的長鎖の化合物である変性桐油の粘度調整機能によりエポキシ樹脂と混合した場合にエポキシ樹脂組成物を増粘させることができ、通常であれば硬化のために加熱した場合や保管中に気泡が破泡するところ、破泡を抑えることができるため、気泡含有エポキシ樹脂成形品を製造することができる。
【実施例】
【0028】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
<変性桐油の調製>
桐油:木村商事株式会社輸入の中国産桐油
無水マレイン酸:和光純薬工業株式会社製
上記に示す桐油75質量%に対し、無水マレイン酸25質量%を80℃で反応させ変性桐油を調製した。
<配合成分>
表1に示す配合成分として以下のものを使用した。なお、表1に示す配合量は質量部を表す。
エポキシ樹脂:ビスフェノールA型エポキシ樹脂 DIC製 エピクロン850
酸無水物系硬化剤:新日本理化製 リカシッドMH−700 (4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸/ヘキサヒドロ無水フタル酸=70/30)
硬化促進剤:和光純薬工業製 N,N−ジメチルベンジルアミン
シリコンオイル:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製 TSF401
<比較例の脱泡処理>
真空状態にて1時間の脱泡処理をおこなった。
<硬化物評価方法>
<外観>
硬化物を切断し、気泡の含有状態を目視により評価した。
<比重>
水中置換法により比重を測定した。
【0029】
上記、硬化物評価の結果を表1に示す。
【0030】
【表1】

【0031】
表1より、実施例1と比較例3、実施例2と比較例4の比較から、各実施例で得られた硬化物は、気泡が残存しており、比重が低下していることが確認された。
【0032】
また、比較例1と比較例2との比較から、脱泡処理せずに成形した場合、わずかに気泡が残存することはあるが、大きな効果がないことが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂と、桐油と無水マレイン酸を反応させて変性した変性桐油を必須成分とするエポキシ樹脂硬化剤とを含有する樹脂組成物を、混合、攪拌して樹脂組成物中に気泡を含有させた後、硬化させることを特徴とする気泡含有エポキシ樹脂成形品の成形方法。
【請求項2】
気泡を含有させる方法が気泡の吹き込みであることを特徴とする請求項1に記載の気泡含有エポキシ樹脂成形品の成形方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の気泡含有エポキシ樹脂成形品の成形方法により成形された気泡含有エポキシ樹脂成形品。

【公開番号】特開2011−127080(P2011−127080A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−289854(P2009−289854)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】