説明

気泡含有セメント系材料及びそれを用いた空洞形成方法

【課題】型枠を用いることなく、セメント系硬化体からなる構造物を施工し、その下部に容易に空洞を形成することのできるセメント系材料、及びこのものを用いて空洞を形成する方法を提供する。
【解決手段】
セメント、水及び気泡、あるいはセメント、鉱物質微紛体及び/又は砂、水及び気泡を含む液面上施工用のセメント系材料であって、(a)密度が液面を形成する液体の密度よりも小さいこと、(b)シリンダー法によるフロー値が120〜200mmであること、及び(c)硬化後の一軸圧縮強度が0.3〜1.5N/mm2である気泡含有セメント系材料、並びに被空洞形成部に液体を充填し、その液面上に形成された所定形状の空間部に、前記気泡含有セメント系材料を打設し、硬化させたのち、前記液体を排出する空洞形成方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気泡含有セメント系材料及びそれを用いた空洞形成方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、液面上施工用のセメントエアミルク又はエアモルタルからなり、かつ液面を形成する液体よりも小さい密度を有し、液面上空間部に打設して硬化させることができる気泡含有セメント系材料、及びこのセメント系材料を、被空洞形成部に充填された液体の液面上空間部に打設して硬化させたのち、該液体を排出することにより、型枠などを必要とせずに、容易に空洞を形成し得る方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、セメント系材料を用いて、下部に空洞を形成する場合には、予め除去可能な型枠を作製し、そこへセメント系材料を打設して硬化させたのち、型枠を除去する方法が主に用いられている。
しかしながら、このような方法においては、型枠を除去するためのスペースが必要となる上、形成する空洞によっては、型枠の作製や取り付け、あるいは除去が困難になる場合がある。
ところで、気泡を含有するセメント系材料としてセメントエアミルクやエアモルタルなどが知られている。
【0003】
セメントエアミルクは、セメントに水を加え、起泡処理を施してなるものであって、例えば土木建造物の裏込め、空隙充填、軽量盛土及び埋立てなどに好適に用いられる。このようなセメントエアミルクについては、例えば高流動性、材料/水分離又は材料/気泡分離に対する防止性を有し、充填性、施工性に優れ、したがって、所望の単位体積重量及び強度を有する硬化体を得ることができるセメントエアミルクの製造方法、具体的には、セメントに、予め、メタカオリンを含む無機系の添加物を混合してセメント系混合物を調製し、これに水を加えてセメントミルクを得、このセメントミルクに起泡処理を施して、シリンダー法によるフロー値を200〜500mmに調整するセメントエアミルクの製造方法が開示されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
また、エアモルタルは、セメント、細骨材及び水を含む混合物に起泡処理を施してなるものであって、例えば基礎下空隙充填工法、シールドセグメント裏込め工法及び地中空洞埋戻し工法などに好適に用いられる。このようなエアモルタルについては、例えばセメント1〜5重量%、鉱物質微粉末10〜30重量%、砂45〜65重量%及び水20〜25重量%を含有し、かつ気泡が25〜45%(v/v)混入されている基礎下空隙充填用気泡モルタル(例えば、特許文献2参照)、あるいは、施工性が良好で、水が存在する場所やひび割れ等の空隙のある場所に充填しても材料分離や逸流することなく施工することが可能であるエアモルタル、具体的には、気泡を含むモルタル、水溶性ポリマー及び減水剤を含有してなるエアモルタルが開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
しかしながら、これらのセメントエアミルクやエアモルタルは、前記した用途に用いられるセメント系材料であって、水などの液体の液面上に打設して硬化させる用途に用いられるものではない。
このように、セメントエアミルクやエアモルタルを水などの液体の液面上に打設して硬化させる技術は、これまで見出されていない。
【0006】
【特許文献1】特開2003−112959号公報
【特許文献2】特許第2649092号公報
【特許文献3】特開2001−146488号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような状況下で、型枠を用いることなく、セメント系硬化体からなる構造物を施工し、その下部に容易に空洞を形成することのできるセメント系材料、及びこのものを用いて空洞を形成する方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、型枠の代わりに液面を利用することに着目し、液面を形成する液体よりも密度が小さいセメントエアミルク又はエアモルタルが、液面上施工用のセメント系材料として、その目的に適合し得ることを見出した。
また、被空洞形成部に液体を充填し、その液面上の空間部に前記セメント系材料を打設して硬化させたのち、該液体を排出することにより、空洞を容易に形成し得ることを見出した。
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0009】
すなわち、本発明は、
(1)セメント、水及び気泡を含む液面上施工用のセメント系材料であって、(a)密度が液面を形成する液体の密度よりも小さいことを特徴とする気泡含有セメント系材料;
(2)セメント、鉱物質微粉体及び/又は砂、水及び気泡を含む液面上施工用のセメント系材料であって、密度が液面を形成する液体の密度よりも小さいことを特徴とする気泡含有セメント系材料;
(3)シリンダー法によるフロー値が120〜200mmである上記(1)又は(2)に記載の気泡含有セメント系材料;
(4)硬化後の一軸圧縮強度が0.3〜1.5N/mm2である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の気泡含有セメント系材料;
(5)鉱物質微粉体とセメントとの使用割合が、質量比で50:50〜90:10である上記(2)〜(4)のいずれかに記載の気泡含有セメント系材料;
(6)鉱物質微粉体が、炭酸カルシウムを80質量%以上含有し、かつ粉末度が2500〜6000cm2/gの石灰石微粉体である上記(2)〜(5)のいずれかに記載の気泡含有セメント系材料;
(7)砂とセメントとの使用割合が、質量比で0:100〜40:60である上記(2)〜(6)のいずれかに記載の気泡含有セメント系材料;
(8)さらに、起泡剤を含む上記(1)〜(7)のいずれかに記載の気泡含有セメント系材料;
(9)さらに、減水剤を含む上記(1)〜(8)のいずれかに記載の気泡含有セメント系材料;及び
(10)被空洞形成部に液体を充填し、その液面上に形成された所定形状の空間部に、上記(1)〜(9)のいずれかに記載の気泡含有セメント系材料を打設し、硬化させたのち、前記液体を排出することを特徴とする空洞形成方法;
を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、液面上施工用のセメントエアミルク又はエアモルタルからなり、かつ液面を形成する液体よりも小さい密度を有し、液面上空間部に打設して硬化させることができる気泡含有セメント系材料を提供することができる。
また、前記気泡含有セメント系材料を、被空洞形成部に充填された液体の液面上空間部に打設して硬化させたのち、該液体を排出することにより、型枠などを必要とせずに、容易に空洞を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の気泡含有セメント系材料には、以下に示す2つの態様、すなわち(1)セメント、水及び気泡を含む液面上施工用のセメント系材料(以下、セメントエアミルクと称することがある。)、及び(2)セメント、鉱物質微粉体及び/又は砂、水及び気泡を含む液面上施工用のセメント系材料(以下、エアモルタルと称することがある。)がある。
前記セメントエアミルク及びエアモルタルに用いられるセメントについては特に制限はなく、例えば普通セメント、早強セメント、超早強セメント、白色セメント、及び耐硫酸塩セメントなどの各種ポルトランドセメント、並びに、これらの少なくとも1種と、高炉スラグ、及び/又はフライアッシュなどとの混合物からなる混合セメントから選ぶことができる。
前記セメントエアミルクにおいて、セメントと水の割合は、フロー値及び硬化体の強度の点から、質量比で70:30〜30:70が好ましく、特に60:40〜40:60が好ましい。
【0012】
前記エアモルタルにおいては、細骨材として鉱物質微粉体及び/又は砂が用いられる。当該鉱物質微粉体は、セメントの配合量を調節するために配合される。この鉱物質微粉体としては、炭酸カルシウムを80質量%以上含有し、粉末度が2500〜6000cm2/g程度である石灰石微粉体が好適である。この粉末度が上記の範囲にあれば、エアモルタルは適度の粘性を有し、モルタル材料の分離を抑制し得ると共に、他の材料との混和も容易となる。
砂としては、通常この分野で用いられる川砂、砂利、山砂、珪砂、寒水石、砕砂などが使用できる。特に、その最大粒径が2.5mm以下のものが好適に使用される。
エアモルタルにおいて、鉱物質微粉体とセメントとの含有割合は、質量比で、50:50〜90:10の範囲が好ましい。該含有割合が上記範囲にあれば、硬化体の強度、流動性及び経済性が適度にバランスして好ましい。より好ましい含有割合は60:40〜85:15である。
また、砂とセメントとの含有割合は、エアモルタルの密度及び砂の分離の抑制などの面から、質量比で0:100〜40:60好ましく、特に0:100〜20:80が好ましい。
このエアモルタルにおける水の含有量は、エアモルタルのフロー値及び硬化体の強度などの面から、通常20〜40質量%程度、好ましくは25〜35質量%である。
【0013】
本発明のセメントエアミルク及びエアモルタルにおいては、所望により、従来セメント系材料に使用されている公知の各種混和剤、例えば減水剤、遅延剤及び急結剤などから選ばれる少なくとも1種を含有させることができる。この場合、その含有量は、セメントに対して、それぞれ5質量%以下であることが好ましい。前記混和剤の中では、特に減水剤を含有させるのがよい。
本発明で用いる減水剤については特に制限はなく、従来公知の減水剤の中から任意の減水剤を適宣選択して使用することができる。この減水剤としては、例えばリグニンスルホン酸塩又はその誘導体、アルキルアリールスルホン酸ホルマリン縮合物、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、メラミンスルホン酸ホルマリン縮合物、及びポリカルボン酸系高分子化合物等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中で、瞬時に増粘する面から、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、リグニンスルホン酸塩、及びアルキルアリールスルホン酸ホルマリン縮合物が好ましく、減水剤として、2種以上を使用する場合はこれらを含むことが好ましい。減水剤の使用量は特に限定されるものではないが、通常、セメント100質量部に対して、0.05〜5質量部が好ましい。減水剤の使用量がこの範囲にあれば増粘効果が発揮されると共に、硬化体の強度も良好である。減水剤のより好ましい使用量は0.1〜3質量部である。
【0014】
前記減水剤は、均一に混合できる面や輸送しやすさなどから、水溶液の形態で用いることが好ましい。水溶液の濃度については特に制限はないが、できるだけ高濃度にすることが好ましい。
また、急結剤としては、アルミン酸塩系、硫酸塩系、炭酸塩系、ケイ酸塩系、及びカルシウムアルミネート系等がある。これらのうち、凝結性や強度発現性の面からカルシウムアルミネート系が好ましい。カルシウムアルミネート系は単独でも急結剤として使用できるが、アルミン酸塩、硫酸塩、及び炭酸塩などの無機塩と併用することも可能である。これらのうち、無機塩としては硫酸塩である石膏が好ましい。この急結剤を使用することにより、減水剤によるセメントの水和遅延を改善することができる。
【0015】
本発明のセメントエアミルク及びエアモルタルは液面上施工用であり、したがって、その密度は、液面を形成する液体の密度より小さいことを要す。例えば、前記液体が水である場合には、該セメントエアミルク及びエアモルタルの密度は1g/cm3未満である。しかし、この密度が小さすぎると気泡量が多くなりすぎて硬化体の強度が低くなる。したがって、液体が水の場合、セメントエアミルクの好ましい密度は0.4〜0.8g/cm3であり、より好ましい密度は0.45〜0.7g/cm3である。一方、エアモルタルの好ましい密度は0.7〜0.95g/cm3であり、より好ましい密度は0.75〜0.9g/cm3である。
【0016】
また、本発明のセメントエアミルク及びエアモルタルにおいては、シリンダー法によるフロー値が120〜200mmであることが好ましい。このフロー値が120mm以上であればセメントエアミルクやエアモルタルのポンプ圧送が可能であり、200mm以下であればセメントエアミルクやエアモルタルの材料/水分離や材料/気泡分離が生じにくくなり、均一な硬化体を得ることが可能である。より好ましいフロー値は、130〜190mmである。
なお、このシリンダー法によるフロー値は、下記の方法で測定される値である。
<シリンダー法によるフロー値の測定>
水平なアクリル板上に、内径80mm、高さ80mmの円筒を置き、セメントエアミルク又はエアモルタルを入れて、円筒を引き上げた際に生じる円形状の広がりの長・短径を測定し、その平均値を求める。
【0017】
さらに、本発明のセメントエアミルク及びエアモルタルにおいては、硬化後の一軸圧縮強度が0.3〜1.5N/mm2であることが好ましい。この一軸圧縮強度が上記の範囲にあれば、硬化体の機械的強度が実用上十分であると共に、再掘削も容易である。より好ましい硬化後の一軸圧縮強度は0.5〜1.5N/mm2である。
なお、本発明における「硬化後の一軸圧縮強度」は、セメントエアミルク又はエアモルタルを、直径5cm、高さ10cmの円柱体に成形して、JIS A 1216に規定されている土の一軸圧縮強度試験方法で測定されたものである。
【0018】
次に、本発明のセメントエアミルク及びエアモルタルを製造する方法について説明する。
セメントエアミルク及びエアモルタルの製造方法に特に制限はなく、従来公知の方法を用いることができる。例えばセメント又はセメント系混合物に水を添加し、さらに必要に応じ各種混和剤を加えてセメントミルクやモルタルの調製し、これに起泡処理を施すことにより、セメントエアミルクやエアモルタルが得られる。前記セメントミルクやモルタルの調製と起泡処理は、順次に行ってもよいし、同時に行なってもよい。
起泡処理の方法としては、例えばミキサー中でセメントミルクやモルタルと起泡剤とを激しく攪拌して、気泡をセメントミルクやモルタル中に含有させる方法、あるいは起泡剤を含む水溶液を空気と共に発泡機に供給して発泡させて得られた気泡、例えばシェビングクリーム状の泡を、セメントミルクやモルタルに均一かつ連続的に混入する方法などを用いることができる。これらの方法の中で、後者の方法が好適である。
【0019】
このようにして得られたセメントエアミルクやエアモルタル中の気泡の量は、セメントエアミルクやエアモルタルの密度が、それぞれ前述した範囲になるように調整される。
気泡の大きさは、粒子径が10〜1000μm程度であることが好ましい。粒子径が上記範囲にあれば、気泡は消泡しにくく、かつ分散性が良好である。
前記起泡剤については、特に制限はなく、従来公知の起泡剤の中から任意のものを適宣選択して用いることができる。該起泡剤としては、例えば各種のアニオン性、カチオン性、ノニオン性、両性などの界面活性剤、あるいはタンパク質誘導体などが挙げられる。これらの起泡剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合せて用いてもよい。
このようにして得られたセメントエアミルクやエアモルタルからなる本発明の気泡含有セメント系材料は、液面上施工用として用いられ、例えば以下に示す空洞の形成に用いることができる。
【0020】
次に、前述の本発明の気泡含有セメント系材料を用いて、空洞を形成させる方法について説明する。
本発明の空洞形成方法によれば、被空洞形成部に液体を充填し、その液面上に形成された所定形状の空間部に、前述の本発明の気泡含有セメント系材料を打設し、硬化させたのち、前記液体を排出することにより、空洞を形成させる。
この方法において、被空洞形成部に充填される液体としては、通常水道水、海水、湖水、河川水、地下水などの水が用いられる。本発明においては、液面上に形成された所定形状の空間部に打設される気泡含有セメント系材料として、密度が前記液体よりも小さいセメントエアミルク又はエアモルタルが用いられるため、これらは液面下に沈むことがない。
また、使用するセメントエアミルク又はエアモルタルは、シリンダー法によるフロー値が120〜200mm程度に制御されているため、材料/水分離や材料/気泡分離が生じにくく均質な硬化体が得られる。
【0021】
セメント系材料を用いて、下部に空洞を形成する場合、これまで、予め除去可能な型枠を作製し、そこへセメント系材料を打設して硬化させたのち、型枠を除去する方法が主に用いられてきた。
このような従来の方法においては、型枠を除去するためのスペースが必要となる上、形成する空洞によっては、型枠の作製や取り付け、あるいは除去が困難になる場合があった。
これに対し、本発明の空洞形成方法においては、液面上施工用のセメント系材料として液面を形成する液体よりも密度の小さいセメントエアミルク又はエアモルタルを用い、液面を型枠代わりに利用して液面上空間部に打説し、硬化させたのち、前記液体を排出して空洞を形成させる。したがって本発明の方法は、型枠を必要としないため、型枠を用いる場合に生じる前記問題を解決することができる。
【0022】
さらに、本発明の方法においては、液体を用い、その液面上に気泡含有セメント系材料(セメントエアミルク又はエアモルタル)を打設し、硬化後該液体を排出して空洞を形成させるため、いかなる形状の空洞も容易に形成することができる。
空洞の具体的な形成方法としては、例えばU字溝などの両端を遮断して、水などの液体を流し込み、その液面上にセメントエアミルク又はエアモルタルを打設し、硬化させたのち、下部の液体を排出することにより、空洞を形成する方法などを挙げることができる。
本発明の空洞形成方法は、上部にセメント系硬化体からなる構造物が施工されてなる空洞であれば、いかなる空洞に対しても適用することができる。例えば側溝、農業用水路、地下道などの形成に適用することができる。
【実施例】
【0023】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、エアモルタル及びセメントエアミルクの性状を、以下に示す方法に従って求めた。
(1)ブリージング率
土木学会基準(JSCE−1986:プレパックドコンクリートの注入モルタルのブリージング率及び膨張率試験方法)に基づき行った。
(2)フロー値
明細書本文記載の方法に従って、シリンダー法によるフロー値を測定する。
(3)一軸圧縮強度
7日及び28日経過後の硬化体について、明細書本文記載の方法に従って測定する。
【0024】
実施例1
高炉セメントB種115kg、石灰石微粉体(CaCO3含有量90質量%以上、粉末度2500cm2/g)461kg、水230kg及び減水剤[花王社製、商品名「マイティ3000R」]0.46kgを混練してモルタルを調製した。
一方、水21.5kgに、起泡剤[第一化成社製、商品名「スミシールドAS―1」]0.93kgを溶解させてなる水溶液を発泡機[住友大阪セメント社製、型名「UC―2型」]に供給して発泡させ、この発泡液を発泡機から、前記モルタルに直接に混入して、密度0.84g/cm3のエアモルタルを調製した。
このエアモルタルの性状を、各成分含有量とともに第1表に示す。
なお、このエアモルタルは、材料分離は起こらず、かつ水面上に打設した場合に、水の濁りは認められなかった。
【0025】
実施例2
高炉セメントB種268kg、水219kg及び減水剤(前出)0.45kgを混練してセメントミルクを調製した。
一方、水26.5kgに、起泡剤(前出)1.15kgを溶解させてなる水溶液を発泡機(前出)に供給して発泡させ、この発泡液を発泡機から、前記セメントミルクに直接混入して、密度0.52g/cm3のセメントエアミルクを調製した。
このセメントエアミルクの性状を、各成分含有量と共に第1表に示す。
なお、このセメントエアミルクは、材料分離は起こらず、かつ水面上に打設した場合に水の濁りは認められなかった。
【0026】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の気泡含有セメント系材料は、液面上施工用のセメントエアミルク又はエアモルタルからなり、かつ液面を形成する液体よりも小さい密度を有し、液面上空間部に打設して硬化させることができる。この気泡含有セメント系材料を被空洞形成部に充填された液体の液面上空間部に打設して硬化させたのち、該液体を排出することにより、型枠などを必要とせずに、容易に空洞を形成することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント、水及び気泡を含む液面上施工用のセメント系材料であって、密度が液面を形成する液体の密度よりも小さいことを特徴とする気泡含有セメント系材料。
【請求項2】
セメント、鉱物質微粉体及び/又は砂、水及び気泡を含む液面上施工用のセメント系材料であって、密度が液面を形成する液体の密度よりも小さいことを特徴とする気泡含有セメント系材料。
【請求項3】
シリンダー法によるフロー値が120〜200mmである請求項1又は2に記載の気泡含有セメント系材料。
【請求項4】
硬化後の一軸圧縮強度が0.3〜1.5N/mm2である請求項1〜3のいずれかに記載の気泡含有セメント系材料。
【請求項5】
鉱物質微粉体とセメントとの使用割合が、質量比で50:50〜90:10である請求項2〜4のいずれかに記載の気泡含有セメント系材料。
【請求項6】
鉱物質微粉体が、炭酸カルシウムを80質量%以上含有し、かつ粉末度が2500〜6000cm2/gの石灰石微粉体である請求項2〜5のいずれかに記載の気泡含有セメント系材料。
【請求項7】
砂とセメントとの使用割合が、質量比で0:100〜40:60である請求項2〜6のいずれかに記載の気泡含有セメント系材料。
【請求項8】
さらに、起泡剤を含む請求項1〜7のいずれかに記載の気泡含有セメント系材料。
【請求項9】
さらに、減水剤を含む請求項1〜8のいずれかに記載の気泡含有セメント系材料。
【請求項10】
被空洞形成部に液体を充填し、その液面上に形成された所定形状の空間部に、請求項1〜9のいずれかに記載の気泡含有セメント系材料を打設し、硬化させたのち、前記液体を排出することを特徴とする空洞形成方法。

【公開番号】特開2007−51023(P2007−51023A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−237138(P2005−237138)
【出願日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【出願人】(000133881)株式会社テノックス (62)
【Fターム(参考)】