説明

気泡混入珪酸カルシウム硬化体

【課題】強度特性及び耐水性に優れ、かつ複雑な制御を必要とせず低コストで軽量化できる気泡混入珪酸カルシウム硬化体を提供すること。
【解決手段】(A)比重0.2〜0.8g/cm3
(B)10〜45μmの範囲における細孔の容積が、10〜300μmの範囲における細孔の容積に対して、水銀圧入法で測定して、50vol%以上、
(C)JIS R 2115で測定した通気率が0.5mL・cm/sec・cm2・cmH2O以下
である気泡混入珪酸カルシウム硬化体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強度特性及び耐水性に優れた気泡混入珪酸カルシウム硬化体に関する。
【背景技術】
【0002】
珪酸カルシウム系建材は、不燃性、寸法安定性、化学的安定性に優れることから、建築分野において幅広く利用されている。特に、気泡を混入した珪酸カルシウム系建材は、建築物の軽量化・高機能化等の要望から、ビルや住宅の内・外装材、吸音材及び断熱材として普及している。
【0003】
これらの気泡混入珪酸カルシウム系建材は、界面活性剤によるミックスフォーム、プレフォーム又はAl発泡等により、200〜1000μm程度の気孔を含み、軽量、吸音、断熱等の特性を発現するものである。しかし、その一方で、この気孔により製品の曲げ強度、耐衝撃性(角欠け性)等が低下してしまうという問題がある。
【0004】
このため、珪酸カルシウム基材に、有機合成繊維、無機繊維等の繊維を補強剤として均質に分散させることにより、強度低下を防止し、耐衝撃性を確保することが行なわれていた(特許文献1、特許文献2)。
しかしながら、珪酸カルシウム系建材は、製造時に高温・高圧養生(オートクレーブ養生)を行なうため、使用される繊維は耐湿熱性の高い繊維に限定され、このような繊維は一般的に高価であることから、原材料コストが高くなる。
【0005】
このため、繊維によることなく、高強度化を実現すべく、種々の検討が行なわれ、トバモライトの結晶性を高めた珪酸カルシウム硬化体(特許文献3)や、硬化体内の気孔形状や気孔径を特定化した珪酸カルシウム硬化体(特許文献4、特許文献5)等が提案されている。
【0006】
特許文献3には、セメント等の石灰質原料や珪酸質原料を微粉化して水熱反応性を高めることにより、高結晶性のトバモライトが合成され、硬化体強度が向上する技術が提案されている。しかしながら、反応性を高めるためにセメント等の原料を微粉化して使用すると、スラリーの粘性が増加して成形性が著しく低下するおそれがあり、これを防止するためには、減水剤、流動化剤等の混和剤が多量に必要となる。また、一般に流通している原料に比べ、微粉化した原料は粉砕に多大なエネルギーと時間を要することから、原料コストが増大する。
【0007】
また、特許文献4には、有機系の発泡粒子を混入し、250℃以下で加熱処理することにより、独立気泡を形成させる軽量気泡セメント成型体の製造方法が提案されている。この方法によれば、加熱処理によって発泡粒子が溶融し、発泡粒子跡に独立気泡が形成されることにより、高強度の軽量気泡コンクリートが得られるが、発泡粒子は高価であり、また溶融させなければならないため、製造面でもコスト高となる。
【0008】
特許文献5では、硬化体断面において200μm以上の気孔を実質的になくし、かつミクロフィブリル化したパルプ繊維を使用することにより、珪酸カルシウム硬化体の高強度化を図っている。しかし、泡沫によって気孔を形成させる手法では、200μm以下の気泡を均質に作製することは事実上困難であり、具体的な作成方法は記載されていない。一般に、気泡の除去方法として消泡剤の使用が知られている。しかし、消泡剤の消泡作用は、その添加量に対して大変敏感であり、また完全に気泡をなくすか又は巻き込み気泡を発生させないために使用するのが一般的であり、200μm以上の気泡のみを除去するためには、その添加量の調整が極めて難しい。
【特許文献1】特開昭56−37266号公報
【特許文献2】特開平9−263461号公報
【特許文献3】特開平5−286780号公報
【特許文献4】特開平2−145492号公報
【特許文献5】特開2001−58888号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は、強度特性及び耐水性に優れ、かつ複雑な制御を必要とせず低コストで軽量化できる気泡混入珪酸カルシウム硬化体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
斯かる実情に鑑み、本発明者らは、鋭意検討した結果、特定の細孔容積及び通気率を有する気泡混入珪酸カルシウム硬化体が、強度特性及び耐水性に優れることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明は、(A)比重0.2〜0.8g/cm3
(B)10〜45μmの範囲における細孔の容積が、10〜300μmの範囲における細孔の容積に対して、水銀圧入法で測定して、50vol%以上、
(C)JIS R 2115で測定した通気率が0.5mL・cm/sec・cm2・cmH2O以下
である気泡混入珪酸カルシウム硬化体を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の気泡混入珪酸カルシウム硬化体は、強度特性及び耐水性に優れたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の硬化体は、(A)比重が0.2〜0.8g/cm3、好ましくは0.3〜0.7g/cm3のものである。比重は、直方体の型枠にスラリーを流し込み硬化させた硬化体の質量と、ノギスにて計測した硬化体の縦、横及び厚みの寸法を用いて求められる。
【0014】
また、(B)10〜45μmの範囲における細孔の容積が、10〜300μmの範囲における細孔の容積に対して、水銀圧入法で測定して、50vol%以上、好ましくは60vol%以上である。この細孔容積の割合が50vol%未満では、十分な強度及び耐水性が得られない。
水銀圧入法(ポロシメータ)とは、珪酸カルシウム硬化体内部に水銀を圧入させ、そのときの圧力と侵入量の関係から、細孔径の分布を0.001〜300μmの範囲で測定するものである。
本発明において対象とする細孔径分布が10〜300μmの範囲は、気泡によって形成された気孔であることを示す。
【0015】
また、本発明の硬化体は、(C)JIS R 2115の「耐火れんがの通気率の試験方法」に従って測定した通気率が0.5mL・cm/sec・cm2・cmH2O以下、好ましくは0.25mL・cm/sec・cm2・cmH2O以下のものである。
この通気率は、硬化体の表面から裏面への空気の透過しやすさを示す指標である。硬化体の気孔同士が連通しているほど空気は透過しやすく、通気率は高い値を示す。逆に、独立気孔を形成している場合、通気率は低い値を示す。
この通気率が0.5mL・cm/sec・cm2・cmH2Oを超えると、独立気泡の存在率が低くなり、強度や耐水性が低下してしまう。
【0016】
このような硬化体は、例えば、セメント原料、珪酸質原料、水、気泡、混和剤並びにポリ硫酸第二鉄及び/又はポリ硫酸アルミニウムを含有するスラリーを、硬化させることにより、製造することができる。
ここで用いられるセメント原料としては、セメント単独、あるいはセメント、消石灰及び生石灰の混合物を使用することができる。セメント成分としては、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱セメント等のJIS R 5201に規定されているセメントのほか、JIS R TR 0002に規定されているエコセメントを使用することができる。また、セメントと消石灰及び生石灰の混合割合は、目的とする製品の性能等に応じて、選択することができる。
【0017】
珪酸質原料としては、珪石粉、珪石砂、高炉スラグ、フライアッシュ、シリカフューム等が挙げられ、目的とする製品の性能に応じて、種類及び配合量を選択することができる。
【0018】
セメント原料と珪酸質原料の混合割合は、CaO/SiO2のモル比換算で、0.5〜0.9であるのが、珪酸カルシウム硬化体の主成分となるトバモライトが十分に生成され、十分な強度が得られるので好ましい。
【0019】
水は、一般的な水道水や工業水を使用することができる。配合量は、セメント原料及び珪酸質原料の合計100質量部に対して20〜70質量部、特に30〜60質量部であるのが好ましく、目的とする硬化体の比重、強度等を勘案して決定される。
【0020】
本発明において、気泡をスラリーに混入するには、界面活性剤及び/又は蛋白質系起泡剤を含む水溶液からプレフォーミングする方法や、起泡剤を直接スラリーに投入して発泡させるミックスフォームなどを使用することができる。
起泡剤として用いる界面活性剤としては、通常用いられるものであれば特に制限されないが、例えば、マレイン化樹脂系、高級アルコール硫酸塩系、アルキルアリルスルホン酸塩系、アルキル硫酸エステル塩系、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩等が挙げられる。また、蛋白質系起泡剤も特に制限されないが、例えば、ゼラチン、カゼイン等が挙げられる。
【0021】
また、ポリビニルアルコールやグリセリン等の気泡安定剤を併用することもできる。その場合、気泡安定剤は10〜100倍に希釈して使用するのが好ましい。
気泡の混合量は、目的とする製品比重に応じて適宜決定される。
【0022】
本発明において、ポリ硫酸第二鉄及び/又はポリ硫酸アルミニウムは、気泡調整剤として用いられる。ポリ硫酸第二鉄は、〔Fe2(OH)n(SO4)3-n/2mで表され、ポリ硫酸アルミニウムは、〔Al2(OH)n(SO4)3-n/2mで表される化合物であり、単独又は組み合わせて用いることができる。特に、ポリ硫酸第二鉄を単独で用いるのが、入手しやすさ等の点から好ましい。
【0023】
ポリ硫酸第二鉄及び/又はポリ硫酸アルミニウムは、セメント原料100質量部に対して、鉄イオン及び/又はアルミニウムイオン換算の合計で、0.2〜0.75質量部、特に0.2〜0.5質量部用いるのが、十分な気泡調整効果が得られるとともに、成形状態も良好となるので好ましい。
【0024】
本発明においては、上記のような原料を混合して調製したスラリーの粘度が、50dPa・s以上、特に50〜90dPa・sであるのが、スラリーを流し込む観点から好ましい。粘度は、原料を混合して均一になったスラリーについて、30℃において、B型粘度計を用いて測定される。
スラリーをこのような粘度に調整するために、例えば、減水剤、凝結促進剤、スラリー流動化剤、スラリー粘性調整剤、分散剤等の各種混和剤を添加することができる。
【0025】
減水剤としては、セメントスラリーの流動性改善を目的に使用されるものであれば特に制限されず、例えば、ナフタレンスルホン酸系、ポリカルボン酸系、リグニンスルホン酸系のものを使用することができる。これらのうち、セメントの水和反応を遅延する性質を有するものについては、凝結促進剤や、スラリー粘性調整剤と併用して、前記粘度に調整するのが好ましい。
【0026】
凝結促進剤としては、通常用いられる硫酸カルシウム(石膏)、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、塩化カルシウム等の無機系化合物や、アーウィン化合物、カルシウムアルミネート化合物などが挙げられる。
【0027】
スラリー粘性調整剤としては、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
【0028】
また、スラリーの養生温度を制御して、セメント原料の硬化速度をコントロールすることにより、スラリーの粘度を調整することもできる。養生温度により制御する場合、その養生温度は、20〜80℃、特に40〜70℃であるのが好ましい。
【0029】
本発明においては、補強繊維を配合することもでき、ポリ硫酸第二鉄及び/又は硫酸アルミニウムの有する凝集作用により、繊維の表面に水硬性原料等の粉体原料が吸着され、強度を飛躍的に向上させることができる。
ここで、補強繊維とは、補強効果、加工性付与、軽量化、増量を目的に用いられるもので、例えば、木片や木質繊維等の木質フィラー、パルプ繊維、無機質繊維、有機合成繊維などが挙げられる。これらの繊維の種類及び配合量は、目的とする製品の性能に応じて適宜選択することができる。
【0030】
このようにして得られたスラリーを型枠流し込み成形法や、連続流し込み成形法等で成形することにより、本発明の硬化体を得ることができる。流し込み成形法は、例えば、コンベアによって移動している所望形状の型枠にスラリーを流し込み、スラリーが移動しながら硬化する成形法である。
【0031】
成形して得られた硬化体は、そのまま、あるいは必要に応じて切断加工や切削加工を施した後、オートクレーブによって養生させる。オートクレーブ養生は160〜180℃で6時間以上行なうのが好ましい。
【実施例】
【0032】
次に、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明は、これら実施例により限定されるものではない。
【0033】
まず、実施例において用いた原料を以下に示す。
(1)セメント:早強セメント(太平洋セメント社製)
(2)珪石粉:工業用珪石(群馬産;ブレーン比表面積3000cm2/g)
(3)水:水道水
(4)減水剤:ポリカルボン酸系減水剤
(コアフロー、太平洋マテリアル社製;固形分濃度50質量%)
(5)ポリ硫酸第二鉄:日鉄鉱業社製(Fe含有率11質量%)
(6)ポリ硫酸アルミニウム:工業用乾燥水酸化アルミニウムと工業用硫酸を原料として用い、オートクレーブにて140℃、0.4MPaで2時間保持して反応させた。Al3+濃度は14.0質量%であった。
(7)速硬基材:アーウィン系速硬材。電気炉を用いて常法により製造したアーウィン(3CaO・3Al2O3・CaSO4)、2CaO・SiO2 及び4CaO・Al2O3・Fe2O3 をそれぞれ60質量%、30質量%及び5質量%含み、ブレーン比表面積3800cm2/gに調整したもの。
【0034】
(8)起泡剤:ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩(エマールD3D、花王社製)
(9)パルプ繊維:クロフトン(モーリ社製)
(10)増粘剤:ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ハイメトローズ90SH-4000、信越化学社製)
(11)凝結調整剤:塩化アルミニウム(試薬1級、関東化学社製)
(12)凝結調整剤:硫酸第一鉄(試薬1級、関東化学社製)
(13)凝結調整剤:硫酸第二鉄(試薬1級、関東化学社製)
(14)凝結調整剤:工業用無水石膏(旭ガラス社製)
【0035】
次に、実施例で用いた測定方法を示す。
(1)比重:
得られた気泡混入珪酸カルシウム硬化体から、縦5cm×横23cm×厚さ3cmの試験体を切り出した。この試験体の縦、横、厚さ(cm)をノギスで計測し、さらに質量(g)を測定して、下記式より比重を算出した。
比重(g/cm3)=(質量)/((縦)×(横)×(厚さ))
【0036】
(2)細孔容積比:
オートクレーブ養生後、絶乾状態にした硬化体から、7mm×7mm×7mmの角片を試験体として切り出した後、数個を専用のカラムに詰め込み、水銀圧入法により細孔容積を測定した。測定後、10〜45μmの範囲における細孔容積(a)、10〜300μmの範囲における細孔容積(b)をそれぞれ求め、下記式より細孔容積比を算出した。
細孔容積比(vol%)=((a)/(b))×100
【0037】
(3)通気率:
オートクレーブ養生後、絶乾状態にした硬化体から、直径50mm、厚さ30mmの円柱を切り出して試験体とした。この試験体を用い、JIS R 2115「耐火れんがの通気率の試験方法」に従って通気率を測定した。
【0038】
(4)スラリー粘度:
気泡混入スラリーを150mLビーカーに採取し、30℃において、B型粘度計(ビスコテスターVT-04、リオン社製)を用いてスラリー粘度を測定した。
【0039】
(5)成形性:
気泡混入スラリーを、JIS R 5201に規定されているフローテーブル上に設置した直径60mm、高さ60mmのアクリル製パイプコーンに充填した。コーン流し込み後60秒後に静かにフローコーンを引抜き、スラリーの広がりを、ノギスを用いて測定し、フロー値(mm)とした。このフロー値が160mm以上で、さらに型枠に流し込んだときのスラリーの充填具合を目視観察して問題がない場合を「良好」、またどちらか一方に不具合がある場合を「不良」とした。
【0040】
(6)曲げ強度・比強度:
得られた気泡混入珪酸カルシウム硬化体から、縦5cm×横23cm×厚さ3cmの試験体を切り出し、インストロン万能試験機を用い、3点曲げにて載荷し、支点間距離20cm、載荷速度0.5mm/minで測定した。得られた破壊荷重より、下記式に基づき、曲げ強度及び比強度を算出した。
【0041】
曲げ強度(N/mm2
=3×(破壊荷重)×(スパン:200)/2/(幅:50mm)/(厚さ:30mm)
比強度(N/mm2)=(曲げ強度)/(比重)/(比重)
【0042】
(7)吸水率:
得られた気泡混入珪酸カルシウム硬化体から、縦5cm×横10cm×厚さ3cmの試験体を切り出し、絶乾状態にした試験体の質量(G1)、吸水30分後の試験体の質量(G2)を測定した。下記式より、吸水率を算出した。
吸水率(%)=〔((G2)−(G1))/G1〕×100
【0043】
実施例1〜3及び比較例1〜3
早強セメント17質量部、速硬基材26.5質量部、珪石粉53質量部、無水石膏3.5質量部及び増粘剤0.2質量部を予備混合し、粉体原料とした。この粉体原料に、実施例1〜3は、水50質量部、減水剤0.5質量部及びポリ硫酸第二鉄水溶液2.78質量部(Fe換算で0.65質量部)を、比較例1〜3はポリ硫酸第二鉄水溶液を無添加で、ハンドミキサーにて1分間混合し、回転式発泡機を用いて起泡剤溶液(起泡剤濃度2質量%)と空気によりプレフォームした気泡(気泡比重0.1)を、硬化体の比重が0.65、0.5、0.4になるよう投入し、気泡混入スラリーを得た。この気泡混入スラリーを、25cm×35cm×4cmのプラスチック製型枠に流し込み、30℃で24時間養生後、脱型し、さらにオートクレーブで180℃、10時間養生を行ない、気泡混入珪酸カルシウム硬化体を得た。
得られた硬化体について、比重、細孔容積比、通気率、曲げ強度、比強度及び吸水率を測定した。結果を表1に示す。
【0044】
【表1】

【0045】
表1の結果より、ポリ硫酸第二鉄を添加した実施例1〜3では、細孔容積比が60%以上、通気率が0.5mL・cm/sec・cm2・cmH2O以下となり、同じ比重の比較例1〜3に比べ、曲げ強度が向上していた。また、吸水率も低く、耐水性が向上した。
【0046】
実施例4〜7及び比較例4〜6
実施例4及び5は、早強セメント13質量部、速硬基材30質量部、珪石粉53質量部、無水石膏4質量部及び増粘剤0.2質量部を予備混合し、粉体原料とした。この粉体原料に、水50質量部、減水剤0.5質量部及び実施例4はポリ硫酸第二鉄水溶液1.75質量部(Fe換算で0.45質量部)、実施例5はポリ硫酸第二鉄水溶液2.78質量部(Fe換算で0.65質量部)を加え、ハンドミキサーにて1分間混合し、回転式発泡機を用いて起泡剤溶液(起泡剤濃度2質量%)と空気によりプレフォームした気泡(気泡比重0.1)を、硬化体の比重が0.6になるよう投入し、気泡混入スラリーを得た。この気泡混入スラリーを、型枠に流し込み、60℃で30分養生後、実施例1〜3と同様にオートクレーブ養生を行ない、気泡混入珪酸カルシウム硬化体を得た。
【0047】
実施例6及び7は、早強セメント31.7質量部、速硬基材13.5質量部、珪石粉53質量部、無水石膏1.8質量部及び増粘剤0.2質量部を予備混合し、粉体原料とした。この粉体原料に、水50質量部、減水剤0.5質量部及びポリ硫酸アルミニウム水溶液を、実施例6は0.81質量部(Al換算で0.25質量部)、実施例7は1.29質量部(Al換算で0.4質量部)を加え、ハンドミキサーにて1分間混合し、回転式発泡機を用いて起泡剤溶液(起泡剤濃度2質量%)と空気によりプレフォームした気泡(気泡比重0.1)を、硬化体の比重が0.55及び0.7になるよう投入し、気泡混入スラリーを得た。この気泡混入スラリーを、型枠に流し込み、実施例6は60℃、実施例7は80℃で30分養生後、実施例1〜3と同様にオートクレーブ養生を行ない、気泡混入珪酸カルシウム硬化体を得た。
【0048】
比較例4は、ポリ硫酸第二鉄を用いない以外は実施例4と同様にして、硬化体を作製した。
【0049】
比較例5及び6は、早強セメント31.7質量部、速硬基材13.5質量部、珪石粉53質量部、無水石膏1.8質量部及び増粘剤0.2質量部を予備混合し、粉体原料とした。この粉体原料に、水50質量部、減水剤0.5質量部及びポリ硫酸第二鉄水溶液を、比較例5は0.61質量部(Fe換算で0.15質量部)、比較例6は3.1質量部(Fe換算で0.75質量部)を加え、ハンドミキサーにて1分間混合し、回転式発泡機を用いて起泡剤溶液(起泡剤濃度2質量%)と空気によりプレフォームした気泡(気泡比重0.1)を、硬化体の比重が0.7及び0.6になるよう投入し、気泡混入スラリーを得た。この気泡混入スラリーを、型枠に流し込み、60℃で30分養生後、実施例1〜3と同様にオートクレーブ養生を行ない、気泡混入珪酸カルシウム硬化体を得た。
【0050】
硬化前のスラリー粘性及び成形性、さらに、得られた硬化体について、比重、細孔容積比、通気率、曲げ強度、比強度及び吸水率を測定した。結果を表2に示す。
【0051】
【表2】

【0052】
表2の結果より、実施例4〜7の硬化体はいずれも、曲げ強度及び耐水性が向上していた。
【0053】
試験例1
実施例1及び比較例1で得られた気泡混入珪酸カルシウム硬化体について、硬化体中の気泡の状態を顕微鏡により観察した。結果を図1及び図2に示す。
実施例1で得られた気泡混入珪酸カルシウム硬化体は、細かい気泡が均一にかつ独立して分散していることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】実施例1で得られた気泡混入珪酸カルシウム硬化体の顕微鏡写真を示す図である。
【図2】比較例1で得られた気泡混入珪酸カルシウム硬化体の顕微鏡写真を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)比重0.2〜0.8g/cm3
(B)10〜45μmの範囲における細孔の容積が、10〜300μmの範囲における細孔の容積に対して、水銀圧入法で測定して、50vol%以上、
(C)JIS R 2115で測定した通気率が0.5mL・cm/sec・cm2・cmH2O以下
である気泡混入珪酸カルシウム硬化体。
【請求項2】
ポリ硫酸第二鉄及び/又はポリ硫酸アルミニウムを含有する請求項1記載の気泡混入珪酸カルシウム硬化体。
【請求項3】
セメント原料、珪酸質原料、水、気泡、混和剤並びにポリ硫酸第二鉄及び/又はポリ硫酸アルミニウムを含有するスラリーを硬化させて得られ、当該スラリーの粘度が50dPa・s以上である請求項1又は2記載の気泡混入珪酸カルシウム硬化体。
【請求項4】
ポリ硫酸第二鉄及び/又はポリ硫酸アルミニウムを、セメント原料100質量部に対して、鉄イオン及び/又はアルミニウムイオン換算の合計で0.2〜0.75質量部含有する請求項3記載の気泡混入珪酸カルシウム硬化体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−74659(P2008−74659A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−255273(P2006−255273)
【出願日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【Fターム(参考)】