説明

気泡発生方法及びオゾン水生成方法

【課題】低濃度の薬剤を用いて効率良く微細な気泡を水性液体流中に分散させて発生させることを可能とする。
【解決手段】水性液体流中に気体を導入し、導入された気体を微細な気泡として水性液体流中に分散させて発生させる気泡発生方法であって、水性液体流中に気体を導入する手前で、気体中に気泡の発生を補助する薬剤を投入し、この薬剤が、少なくとも水/オクタノール分配係数LogPが0以上、2.3以下である有機化合物を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細な気泡を水性液体流中に分散させて発生させる気泡発生方法、並びにそのような気泡発生方法を用いてオゾン水を生成するオゾン水生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、水などの水性液体流中で気泡を発生させる方法としては、ノズルや多孔板などの微小孔から気体を水性液体流中に噴出させる方法や、液体表面の気体を噴流で巻き込む或いは高速液流中に気体を吹き出むなどの剪断力を利用した方法等がある。また、このような機械的な気泡発生方法以外にも、化学的な気泡発生方法として、界面活性剤などを用いる方法もある。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、水槽内に気泡水流を噴出する気泡水流発生装置において、界面活性剤及び消泡剤を用いて微細気泡を得ると共に、発生後の気泡を消滅させ易くする技術が開示されている。
【0004】
一方、下記特許文献2には、気泡発生槽と、該槽内に入れられた水と、該水中に気泡を発生させるための気泡発生手段とからなる気泡発生装置及びその気泡発生方法として、特定の有機カルボン酸を含む水を使用することによって、より微小な気泡を得ることができ、液面に浮上した気泡がすぐ消えるようにする技術が開示されている。
【0005】
一方、下記特許文献3には、界面活性剤の作用により生成した多数の微小気泡の合体を抑制しながら該微小気泡を放出させる技術が開示されている。
【0006】
ところで、このような気泡発生方法は、例えば水にオゾンを溶解、分散させたオゾン水を生成する場合に適用されている。この場合、オゾンは水に溶解しにくいといった特性を有するため、オゾンガスをより微細な気泡として水中に分散させることで、より多くのオゾンを水に溶解させることが可能となる。すなわち、オゾン水を生成する場合には、水にオゾンガスを導入し、このオゾンガスによる微細な気泡を水中に分散させて発生させることが好ましい。
【0007】
このため、水に微細な気泡の分散を補助する薬剤を投入することも行われている。例えば下記特許文献4には、槽に薬剤を溶解した水をはり、散気管を用いてオゾンガスの気泡を吹き込みながらオゾン水を生成することが開示されている。
【0008】
しかしながら、従来の方法では、薬剤の添加量を増やさないと気泡の微細化が促進されなかったり、薬剤がオゾンと反応してオゾンが無駄に使われたりすることがあり、その分だけ薬剤の濃度を高める必要があるなど、低濃度の薬剤を用いて効率良く微細な気泡を液体中に分散させて発生させることについては特に考慮されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平4−279163号公報
【特許文献2】特開2004−283683号公報
【特許文献3】特開2003−230824号公報
【特許文献4】国際公開第07/040260号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、低濃度の薬剤を用いて効率良く微細な気泡を水性液体流中に分散させて発生させることを可能とした気泡発生方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、そのような気泡発生方法を用いて、オゾン水を効率良く生成することを可能としたオゾン水生成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、水性液体流中に気体を導入し、導入された気体を微細な気泡として水性液体流中に分散させて発生させる気泡発生方法であって、水性液体流中に気体を導入する手前で、気体中に気泡の発生を補助する薬剤を投入し、この薬剤が、少なくとも水/オクタノール分配係数LogPが0以上、2.3以下である有機化合物を含むことを特徴とする気泡発生方法である。
【0012】
また、請求項2に係る発明は、水性液体として、水を導入し、気体として、オゾン、窒素、酸素、空気のうち何れかを含むガスを導入することを特徴とする請求項1に記載の気泡発生方法である。
【0013】
また、請求項3に係る発明は、薬剤を水溶液の状態で水性流体流中に投入することを特徴とする請求項1又は2に記載の気泡発生方法である。
【0014】
また、請求項4に係る発明は、薬剤が、トリアセチン、ジアセトキシプロパン、ブタンジオールジアセタート、ペンタンジオールジアセタート、酢酸ブチル、酢酸プロピル、プロパノール、ブタノール、ペンタノールの中から選ばれる少なくとも1種又は2種以上を含むことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の気泡発生方法である。
【0015】
また、請求項5に係る発明は、薬剤が、トリアセチン、ジアセトキシプロパン、ブタンジオールジアセタート、ペンタンジオールジアセタートの中から選ばれる少なくとも1種又は2種以上を含むことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の気泡発生方法である。
【0016】
また、請求項6に係る発明は、水溶液中に含まれる薬剤の濃度を0.1質量%以上とすることを特徴とする請求項3〜5の何れか一項に記載の気泡発生方法である。
【0017】
また、請求項7に係る発明は、気体にエジェクタを介して薬剤を導入し、気体と薬剤との混相流とし、この混相流をエジェクタを介して水性液体流中に導入することを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の気泡発生方法である。
【0018】
また、請求項8に係る発明は、水流中にオゾンガスを導入し、水にオゾンを溶解、分散させたオゾン水を生成するオゾン水生成方法であって、請求項1〜7の何れか一項に記載の気泡発生方法を用いて、オゾン水を生成することを特徴とするオゾン水生成方法である。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明では、水性液体流中に気体を導入する手前で、気体に微細な気泡の分散を補助する薬剤を投入することで、従来よりも低濃度の薬剤を用いて効率良く微細な気泡を水性液体流中に分散させて発生させることが可能である。したがって、本発明を用いて、オゾンガスをより微細な気泡として水中に分散させることで、水にオゾンを溶解、分散させたオゾン水を効率良く生成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明を適用したガス発生方法を説明するための模式図である。
【図2】図2は、薬剤投入部の具体例を示すブロック図である。
【図3】図3は、オゾン発生器の具体例を示すブロック図である。
【図4】図4は、第1の実施例で用いた実験装置を示す模式図である。
【図5】図5は、図4中のAの位置から薬剤を投入した場合の水槽内を撮影した写真である。
【図6】図6は、図4中のBの位置から薬剤を投入した場合の水槽内を撮影した写真で
【図7】図7は、第2の実施例で用いた実験装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
なお、本実施形態では、本発明による気泡発生方法をオゾン水の生成に適用した場合を例に挙げて説明する。
【0022】
先ず、本発明を適用した気泡発生方法について説明する。
本発明を適用した気泡発生方法は、水性液体流中に気体を導入し、導入された気体を微細な気泡として水性液体流中に分散させて発生させる方法であって、水性液体流中に気体を導入する手前で、気体中に気泡の発生を補助する薬剤を投入することを特徴とする。
【0023】
ここで、本発明で使用される水性液体としては、水を主成分とする液体であれば特に制限されないものの、水を95質量%以上含むものが好ましく、水を99.5質量%以上含むものがより好ましく、水であることが更に好ましい。水としては、例えば水道水や、イオン交換水、海水、超純水などを挙げることができる。
【0024】
また、水性液体としては、上述した水の他にも、本発明の効果を奏する範囲で、例えば、エタノール、グリセリン、糖類、塩類、ポリエチレングリコールなどの水/オクタノール分配係数LogPが0未満の化合物を含むものを用いることができる。
【0025】
気泡の分散を補助する薬剤としては、少なくとも水/オクタノール分配係数LogPが0以上、2.3以下である有機化合物を含むものを用いることが好ましい。また、より優れた気泡の分散効果を得るためには、水への溶解度が低い薬剤を用いることが好ましく、具体的にはLogPが0.2以上の薬剤を用いることがより好ましい。一方、気泡分散効果を発揮するためには、適度な水溶性が必要である。また、薬剤を水溶液として使用する場合には、この水溶液から有機化合物が分離せず、より高い濃度の水溶液を維持するため、LogPが1.9未満の薬剤を用いることがより好ましい。
【0026】
また、水溶性液体には、濡れ性向上のため泡沫が安定化しないほど少量の界面活性剤を添加してもよい。この界面活性剤としては、例えば、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、アルコールエトキシレート、脂肪酸及びその塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩などを挙げることができる。その中でも特に、炭素数10以下のアルキル鎖を持つものは、泡沫としての安定性が低いため好適に用いることができ、例えばモノカプリリンの添加は、濡れ性の向上に非常に有効である。
【0027】
具体的に使用する薬剤としては、例えば、トリアセチン、モノブチリン、ジアセトキシプロパン、ブタンジオールジアセタート、ペンタンジオールジアセタート、ギ酸プロピル、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸ペンチル、酢酸3−メチルブチルなどのエステル基を持つもの、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、2−フェノキシエタノールなどの水酸基を持つもの、4−メチル−2−ペンタノン、2−ブタノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのカルボニル基をもつもの、酢酸1−エトキシ−2−プロパノール、酢酸2−(2−n−ブトキシエトキシ)エチル、ブチルカルビトール、ブチルセルソルブ、セロソルブアセテートなどのエーテル基を持つものが優れている。また、オゾンとの反応性が低いことから、例えば、トリアセチン、ジアセトキシプロパン、ブタンジオールジアセタート、ペンタンジオールジアセタート、ギ酸プロピル、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸ペンチルなどエステル類が優れている。さらに、揮発性の少ないエステル基を2つ以上もつトリアセチンや、ジアセトキシプロパン、ブタンジオールジアセタート、ペンタンジオールジアセタートなどが好ましく、その中でも揮発性が非常に低いトリアセチン(沸点259℃)が最も好ましい。これらの薬剤は、原液又は水溶液の状態で用いることができるが、より少量の薬剤を定量的に投入し易い点では、水溶液として使用することが好ましい。
【0028】
なお、水/オクタノール分配係数LogPについては、いくつかの算出方法が知られているが、本発明では、LogPとして計算機によるシミュレーションより算出した値を使用した。具体的には、Advanced Chemistry Development(ACD/Labs)社製のLogP予測ソフトウェアACD/LogP DBを使用し、化学構造式からLogP(水/オクタノール系分配係数)を算出した値を使用した。
【0029】
上述した本発明による気泡発生方法をオゾン水の生成に適用する場合には、水流中にオゾンガスを導入する手前で、オゾンガスに微細な気泡の分散を補助する上記薬剤を投入する。
【0030】
ここで、本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、以下の(1)〜(3)の知見を得ると共に、同じ薬剤濃度であっても薬剤を投入する位置によって、気泡の微細化状態が大きく変化することを見出した。
【0031】
(1) 水にオゾンガスを導入するアスピレータ(エジェクタ)に近い位置に薬剤を投入したときに気泡の微細化が起こり、遠い位置に薬剤を投入したときには気泡の微細化が起こらなかった。
(2) 薬剤を水溶液として投入し、気泡の微細化が起きなかったアスピレータから遠い位置であっても、薬剤を原液(高濃度)で導入した場合は、気泡の微細化が起きた。
(3) 槽に薬剤を溶解した水をはり、散気管を用いてオゾンガスの気泡を吹き込みながらオゾン水を生成する方法(A方法)に比べて、オゾンガスをアスピレータで連続的に水流の中に吹き込んでオゾン水を生成する方法(B方法)では、より低濃度の薬剤で気泡の微細化を行うことができた。
【0032】
上記(1)〜(3)の知見から、理由は定かではないものの、配管中の水流に添加した薬剤の水溶液が完全に混合され希釈される前に気体を導入したときに気泡の微細化が起こるものと考えられる。また、薬剤を原液の状態で用いた場合は、アスピレータからより離れた位置から投入しても気泡の微細化が起こることが確認されている。これは、薬剤の溶解速度が遅いため、アスピレータに導入され時点で薬剤が溶けきらなかったためと考えられる。
【0033】
以上のことから、低濃度の薬剤を用いて効率良く微細な気泡を水性液体流中に分散させて発生させるためには、薬剤が水性液体流中に均一に溶解する前に当該水性液体流中に気体を導入することが重要であることが明らかとなった。
【0034】
そこで、本発明を適用した気泡発生方法では、水性液体流中に気体を導入する手前で気体に上記微細な気泡の分散を補助する薬剤を投入する。具体的には、図1に模式的に示すように、オゾンガスにエジェクタ11を介して薬剤を含む水溶液を導入し、オゾンガスと水溶液との混相流とし、この混相流をエジェクタ12を介して水に導入する。
【0035】
このとき、薬剤水溶液中に含まれる薬剤の濃度を0.1質量%以上とすることが好ましい。薬剤水溶液中に含まれる薬剤の濃度が0.1質量%倍未満であると、気泡を微細化する効果が得られないことがある。また、より優れた気泡の分散効果を得るためには、薬剤水溶液中に含まれる薬剤の濃度を1質量%以上とすることが好ましく、更に好ましくは4質量%以上である。
【0036】
このオゾン発生装置10では、オゾンガスを微細な気泡として水中に分散させることで、オゾンを水に溶解、分散させたオゾン水を生成することができる。そして、このオゾン水は気液排出路14を介して外部へと排出されることになる。
【0037】
以上のように、本発明を適用した気泡発生方法では、水性液体流中に気体を導入する手前で、気体に微細な気泡の分散を補助する薬剤を投入することで、従来よりも低濃度の薬剤を用いて効率良く微細な気泡を水性液体流中に分散させて発生させることが可能である。したがって、本発明によれば、オゾンガスをより微細な気泡として水中に分散させることが可能なことから、水にオゾンを溶解、分散させたオゾン水を効率良く生成することが可能である。
【0038】
なお、薬剤の投入方法としては、上記図1に示す方法以外にも、例えば図2(a)に示すように、オゾンガスを導入するガス導入路3中に配置されたT字管(チーズ)4に、例えばチューブポンプなどのポンプ5を接続し、このT字管4を介してガス導入路3を流れるオゾンガス中にポンプ5で圧送された薬剤を含む水溶液を導入する方法を用いることができる。さらに、薬剤の投入方法としては、図2(b)に示すように、水が流れる液体導入路7から分岐された分岐路7aを設け、この分岐路7aに上記図2(a)に示す構成(又は上記図1に示す構成であってもよい。)を配置し、この分岐路7aを流れる水中にオゾン水を導入する方法を用いてもよい。
【0039】
また、オゾンの生成方法としては、例えば、紫外線を用いる方法や、水の電気分解による方法、放電による方法などがある。その中でも、メンテナンス性が良く、オゾン濃度のコントロール範囲が広い放電による方法を用いることが好ましい。また、放電によりオゾンを生成する場合は、原料ガスの露点が低い方がオゾンの発生に好ましく、更に酸素濃度が高い方が好ましいことが知られている。
【0040】
また、オゾン発生器としては、例えば図3(a)〜(e)に示すような構成を挙げることができる。なお、図3(a)〜(e)中に示すオゾン発生器の各部の構成については、図3中の(1)〜(7)に示すとおりである。すなわち、オゾン発生器としては、例えば、酸素ボンベや空気ボンベを用いて加圧空気や加圧酸素を導入する方式や、コンプレッサーやポンプで空気を圧送する方式、酸素濃縮器(PSA)のように酸素を濃縮してオゾンの発生効率を向上させる方式、シリカゲルやゼオライトなどの吸着剤で除湿する方式、水蒸気の透過膜を利用した膜式のエアドライヤなどを用いる方式などがあり、これらの方式を適宜組み合わせたものを用いることができる。
【0041】
また、オゾン濃度が高い場合は、空気や酸素、窒素、二酸化炭素等のオゾンに対して不活性なガスを用いて希釈する方法や、放電部の電圧や放電回数を制御しながらオゾンの発生量を抑える方法などがある。また、希釈するガスとしては、露点が低い方がオゾンの安定性から好ましい。
【0042】
なお、本発明は、上記実施形態のものに必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、本発明は、上述したオゾン水を生成する場合に限らず、例えば、窒素、酸素、空気などの気体を微細な気泡として水性液体流中に分散させて発生させる場合にも適用可能である。
【実施例】
【0043】
以下、実施例により本発明の効果をより明らかなものとする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
【0044】
(第1の実施例)
第1の実施例では、例えば図4に示すような実験装置を用いて、薬剤を投入する位置によって、水にオゾンガスを導入した際の気泡の発生状態について測定した。
【0045】
具体的に、この実験装置は、エジェクタ(アズワン社製、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製アスピレータ)21の流入口に内径6mmの配管22を接続し、この配管22を通して渦巻きポンプ(エレポン化工社製、SL−5SN)23により水を3L/minで導入した。また、エジェクタ21の吸込口に内径4mmの配管24を接続し、この配管24を通してエアーポンプ(水作社製、SSPP−2S)25によりオゾン含有空気(オゾンガス)を100ml/minで導入した。また、エジェクタ21の流出口に内径6mmの配管26の一端を接続し、他端を水をはった水槽(3Lガラスビーカー)27内に配置した。そして、水槽27内の水は配管28を通して外部へと排出される。
【0046】
薬剤の投入位置は、エジェクタ21の手前4cmの位置に配置されたエジェクタ29を介して薬剤を含む水溶液をオゾンガスに導入する位置(A)と、渦巻きポンプ23の手前20cmの位置(B)とした。薬剤には、6重量%のトリアセチン水溶液を用いた。この薬剤を定量送液ポンプ(東京理化器社製、マイクロチューブポンプMP−3)に接続された内径1mmの配管を通して各位置から1mL/minで導入した。
【0047】
そして、図4中に示すAの位置から薬剤を投入したときの水槽27内を撮影した写真を図5に示す。
図5に示すように、Aの位置から薬剤を投入した場合には、微細な気泡が水中に分散して発生していることがわかる。また、Aの位置から薬剤を投入した場合は、薬剤の濃度が5〜50ppm程度で微細な気泡が水中に分散して発生することがわかった(目視観察による)。
【0048】
一方、図4中に示すBの位置から薬剤を投入したときの水槽27内を撮影した写真を図6に示す。
図6に示すように、Bの位置から薬剤を投入した場合には、気泡が粗く気泡の分散も小さいことがわかる。また、Bの位置から薬剤を投入した場合は、微細な気泡を水中に分散させて発生させるのに、薬剤の濃度が50〜5000ppm程度必要であることがわかった(目視観察による)。
【0049】
(第2の実施例)
第2の実施例では、例えば図7に示すような実験装置を用いて、上記図6に示す実験装置よりもスケールを拡大した場合の気泡の発生状態及びオゾン濃度について測定した。
【0050】
具体的に、この実験装置では、マグネットポンプ(日機装エイコー社製、CP−70)31の流入口に内径28mmの配管32の一端を接続する共に、流出口に内径28mmの配管33の一端を接続し、これら配管32,33の他端を水をはった水槽(160Lポリプロピレン水槽)34内に配置する。そして、これらの配管32,33を通して水槽34内の水をマグネットポンプ31により100L/minで循環させた。また、エジェクタ(IBS社製、ポリフッ化ビニリデン製エジェクタ)35の流入口に内径20mmの配管36の一端を接続すると共に、流出口に内径6mmの配管37の一端を接続し、これら配管36,37の他端を配管33に接続することで、これらの配管36,37を通して配管33から分岐された水をエジェクタ35に30L/minで導入した。さらに、エジェクタ35の吸込口に内径6mmの配管38を接続し、この配管38を通してオゾン発生器39から供給されるオゾン含有空気(オゾンガス)をエジェクタ35に3L/minで導入した。
【0051】
薬剤の投入位置は、配管28の位置(A)と、マグネットポンプ31の手前30cmの位置(B)とした。薬剤には、5重量%のトリアセチン水溶液を用いた。この薬剤を定量送液ポンプ(東京理化器社製、マイクロチューブポンプMP−3)に接続された内径3.7mmの配管を通して各位置から16mL/minで導入した。さらに、最初に薬剤160mLを水槽34に均一に溶解した場合も実験した(位置(C)とする)。なお、このCの位置では、A,Bの位置において開始後10分に相当する量の薬剤を投入した。
【0052】
そして、これら図7中に示すA,B,Cの位置から薬剤を投入したときの「泡の細かさ」及び「オゾン濃度」についての評価を行った。その評価結果を表1に示す。
【0053】
なお、表1中における「泡の細かさ」については、目視観察により、微細化が確認されたものを○、その他を×とした。一方、「オゾン濃度」については、ヤマト科学社製の送液ポンプ7520−40を用いて水槽34内の水を1L/minで循環させながら、荏原実業製の溶存オゾンモニタELP−100を用いて水に溶存するオゾンの濃度を測定した。なお、このとき測定した溶存オゾン濃度は、運転から5分後の値である。また、オゾン発生器39から供給されるオゾン含有ガス中のオゾン濃度については、荏原実業株式会社製のEG−600を用いて0.5体積%で一定となるように調整した、一方、オゾン含有ガスの流量については、コフロック社製のMODEL5100マスフローコントローラを用いて3L/minで一定となるように調整した。
【0054】
【表1】

【0055】
表1に示すように、B,Cの位置から薬剤を投入した場合は、気泡が微細化せず、Aの位置から薬剤を投入した場合は、投入後直ぐに気泡が微細化した。
【符号の説明】
【0056】
21…エジェクタ 22…配管(液体導入路) 24…配管(気体導入路) 29…エジェクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性液体流中に気体を導入し、導入された気体を微細な気泡として前記水性液体流中に分散させて発生させる気泡発生方法であって、
前記水性液体流中に気体を導入する手前で、前記気体中に前記気泡の発生を補助する薬剤を投入し、この薬剤が、少なくとも水/オクタノール分配係数LogPが0以上、2.3以下である有機化合物を含むことを特徴とする気泡発生方法。
【請求項2】
前記水性液体として、水を導入し、
前記気体として、オゾン、窒素、酸素、空気のうち何れかを含むガスを導入することを特徴とする請求項1に記載の気泡発生方法。
【請求項3】
前記薬剤を水溶液の状態で前記水性流体流中に投入することを特徴とする請求項1又は2に記載の気泡発生方法。
【請求項4】
前記薬剤が、トリアセチン、ジアセトキシプロパン、ブタンジオールジアセタート、ペンタンジオールジアセタート、酢酸ブチル、酢酸プロピル、プロパノール、ブタノール、ペンタノールの中から選ばれる少なくとも1種又は2種以上を含むことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の気泡発生方法。
【請求項5】
前記薬剤が、トリアセチン、ジアセトキシプロパン、ブタンジオールジアセタート、ペンタンジオールジアセタートの中から選ばれる少なくとも1種又は2種以上を含むことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の気泡発生方法。
【請求項6】
前記水溶液中に含まれる薬剤の濃度を0.1質量%以上とすることを特徴とする請求項3〜5の何れか一項に記載の気泡発生方法。
【請求項7】
前記気体にエジェクタを介して前記薬剤を導入し、前記気体と前記薬剤との混相流とし、この混相流をエジェクタを介して前記水性液体流中に導入することを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の気泡発生方法。
【請求項8】
水流中にオゾンガスを導入し、水にオゾンを溶解、分散させたオゾン水を生成するオゾン水生成方法であって、
請求項1〜7の何れか一項に記載の気泡発生方法を用いて、オゾン水を生成することを特徴とするオゾン水生成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−158671(P2010−158671A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−279540(P2009−279540)
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【出願人】(000115429)ライオンハイジーン株式会社 (11)
【Fターム(参考)】